説明

マイクロポンプを有する自蔵創傷手当て

複合創傷手当て装置は、創傷手当て部材の中または上に収容されているマイクロポンプシステムの使用を介して、創傷の治癒を促進する。マイクロポンプシステムは、小型のポンプを含み、該小型のポンプは、大気圧よりも低い圧力を創傷に加えて、わずらわしい外部の真空源を必要とすることなく、創傷床から離れるように創傷流体または滲出物を効果的に吸い出す。従って、創傷手当てとマイクロポンプシステムとはポータブルであり、外部の真空源が使用されるときには手に入れられない患者の移動を可能にする。患者は、滲出物が創傷から除去されている間、いかなる時点においても拘束される必要はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本特許出願は、2006年9月6日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第60/714,812号の優先権と利益とを主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、開放創を処置する装置に関し、さらに詳細には、マイクロポンプシステムを有する自蔵創傷手当てに関しており、該マイクロポンプシステムは、手当ての真空領域の中に創傷の流体を吸い出し、創傷の治癒の進行を促進する。
【背景技術】
【0003】
創傷が閉鎖するまで創傷の中心に向かう、創傷に隣接した上皮および皮下の組織の移動を、創傷閉鎖は含む。残念ながら、大きな創傷または感染した創傷では、閉鎖は困難である。そのような創傷において、鬱血の領域(すなわち、組織の局所的な腫れが組織に対する血流を制限する範囲)が、創傷の表面の近くに形成される。充分な血流がなければ、創傷を囲んでいる上皮および皮下の組織は、減少した酸素と栄養としか受け取れないだけでなく、細菌感染と成功裏に戦うことがあまりできなくもなり、従って、自然に創傷を閉鎖することがあまりできなくなる。そのような創傷は、長年、医療従事者に対して課題を提示してきた。
【0004】
創傷手当てが、開放創の治癒を保護および/または促進するために、医療業界において使用されてきた。1つの技術は、陰圧療法の使用であり、吸引または真空療法としても公知である。過度の創傷流体、すなわち、滲出物が除去されることを可能にしながら、同時に、創傷を孤立させて創傷を保護し、結果として、回復時間に影響するように、様々な陰圧デバイスが開発されてきた。様々な創傷手当てが、開放創の治癒を高めるように改変されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
創傷手当てを使用するときに、継続的に対処される必要のある課題は、使用の容易さ、創傷を治癒する効率、および一定の陰圧源を含む。従って、開放創に対する陰圧創傷手当てを常に改善する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの好適な実施形態において、創傷手当て装置は、創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材と、マイクロポンプシステムとを含む。マイクロポンプシステムは、創傷床からの流体の除去を促進するために、少なくとも創傷手当て部材に大気圧よりも低い圧力を加えるマイクロポンプを含む。マイクロポンプは、好適には、創傷手当て部材に据え付けられている。好適なマイクロポンプは、約20mmHgと約500mmHgとの間の範囲にある、大気圧よりも低い圧力を生成するように適合されている。
【0007】
マイクロポンプシステムは、マイクロポンプの動作を制御する制御手段を含み得る。マイクロポンプシステムは、創傷手当て部材に対する所定の位置における圧力を検出するように、かつ、対応する信号を制御手段に送信するように適合された圧力センサをさらに含み得る。制御手段は、圧力センサによって感知された圧力に応答してマイクロポンプの出力を制御または変更するように適合されたモータコントローラを含み得る。マイクロポンプシステムはまた、マイクロポンプを作動するための電源、例えば、バッテリを含み得る。バッテリは、創傷手当て部材の中または創傷手当て部材の外側への埋込に適合され得る。再充電可能なバッテリが想定される。
【0008】
好適な創傷手当て部材は、創傷床に隣接して配置可能な下側部材と、下側部材に隣接して配置可能な上側吸収性部材と、上部部材とを含む。マイクロポンプは、少なくとも部分的には、上側吸収性部材の中に配置されている。上部部材は、粘着性の部材であり、該粘着性の部材は、創傷床または創傷床の周囲に固定されるように適合されており、創傷手当て部材と創傷床を囲む組織との間に封鎖を提供する。下側部材は、薬物、抗感染薬、殺菌剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子および栄養剤のうちの少なくとも1つ、および/またはマイクロビーズのパッキングおよび吸収性のフォームのうちの1つを含み得る。上側吸収性部材は、フォーム、不織布の複合織物、セルロース織物、高吸収性ポリマ、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される材料を含み得る。
【0009】
上部部材は、透明であり得るかまたは透明ではあり得ない閉鎖材料を含み得る。創傷手当て部材は、創傷手当て部材の中の圧力のレベルを示す視覚的圧力インジケータを含む。創傷手当て部材は、創傷手当て部材の飽和の程度を識別する飽和インジケータを含み得る。上部部材は、それと関連するアクセスドアを含み、かつ、創傷手当て部材を実質的に囲む閉じた位置と創傷手当て部材への内部アクセスを可能にする開いた位置との間で選択的に動くことができる。
【0010】
別の実施形態において、創傷手当て装置は、創傷床に対して配置可能な吸収性部材を含む創傷手当て部材と、創傷手当て部材の中に含まれるマイクロポンプシステムを含む。マイクロポンプシステムは、創傷床からの流体の除去を促進するために、大気圧よりも低い圧力を創傷床に加えるマイクロポンプと、マイクロポンプに電力を供給する移植可能または取り付け可能な電源とを含む。マイクロポンプシステムは、マイクロポンプの動作を制御する制御手段と、創傷手当て部材に対する所定の位置における圧力を検出する圧力センサとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
対象の創傷手当ての様々な実施形態が図面を参照して本明細書に記述される。
【0012】
本開示の複合創傷手当て装置は、創傷手当ての中に収容されているマイクロポンプシステムの使用を介して、創傷の治癒を促進する。マイクロポンプシステムは、小型のポンプを含み、該小型のポンプは、外部の真空源を必要とすることなく、創傷床から離れるように創傷流体または滲出物を効果的に吸い出すように、大気圧よりも低い圧力を加える。従って、創傷手当てとマイクロポンプシステムとの形式における創傷手当て装置はポータブルであり、外部の真空源が使用されるときには手に入れられない患者の移動を可能にする。患者は、滲出物が創傷から除去されている間、いかなる時点においても拘束される必要はない。
【0013】
ここで図1および図2を参照すると、本開示の好適な実施形態に従った複合創傷手当て装置10は、並列されたまたは重ねられた関係で配置された複数の層を有する創傷手当て100の形式で例示されている。複数の層は、限定するものではないが、基部または下側の層102と、パッキング層104と、粘着性の層106と、マイクロポンプシステム108を収容する吸収性層106と、閉鎖する粘着性の上部層110とを含む。
【0014】
基部層102は創傷床「w」と直接的に接触し、組織に粘着し得るかまたは非粘着性であり得る。基部層102は、一般的に、多孔性である。本明細書において使用される場合、「非粘着性」は、創傷床およびその周囲において組織に粘着しない材料を指す。本明細書において使用される場合、「多孔性」は多数の小さい穿孔または細孔を含む材料を指し、該多数の小さい穿孔または細孔は、あらゆる種類の創傷流体が上の手当て層まで材料を通過することを可能にする。創傷の滲出物が創傷床に戻るように流れないために、非粘着性の材料を通る創傷流体の通過は、好適には、一方向性である。この方向性の流れの特徴は、材料層の中に付与された方向性のアパーチャ、基部層102に対する異なる吸収作用の材料の積層、または方向性の流れを助長する特定の材料の選択の形式であり得る。二方向性の流れの材料がまた、基部層102に対して想定されており、創傷の中への流体の薬物の注入を可能にする。基部層102として使用される例示的な材料は、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によって商標XEROFLOTMの下で販売されている接触層を含む。
【0015】
さらに、ヒドロゲルおよび薬物のような薬剤が、基部層102に結合またはコーティングされ、創傷における生物汚染度を減少させ、治癒を促進し、手当ての交換または除去と関連する痛みを減少させる。薬物は、例えば、抗菌剤、成長因子、抗生物質、鎮痛剤、創面切除剤などを含む。さらに、鎮痛剤が使用されるときには、鎮痛剤は、手当ての除去または交換に先立ち、その薬剤の放出を可能にするメカニズムを含み得る。
【0016】
基部層102に近い層は、パッキング層104である。パッキング104は、創傷流体および滲出物を吸収して捕獲することを意図されている。パッキング層104として使用される例示的な材料は、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によって商標KERLIXTMの下で販売されている抗菌性の手当てを含む。パッキング層104は任意の適切な形状に形成され得るということを、当業者は認識する。形状に関する1つの好適な特性は、パッキング層104が特定の形状の創傷に適合することに適していることである。
【0017】
パッキング層104のさらなる使用は、創傷床における感染の発生率を減少させることである。従って、パッキング層104は薬物を用いて処理され得る。薬物は、例えば、殺菌剤または他の適切な抗菌剤もしくは抗菌剤の組み合わせのような抗感染剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、鎮痛剤、創面切除剤、ビタミンのような治癒因子、成長因子、栄養剤など、および等浸透圧の塩水のような因子を用いた単純な流水洗浄を含む。
【0018】
パッキング層104に近い層は、吸収性層106である。創傷手当て装置10の吸収性層106は、創傷流体および滲出物を吸収して捕獲することを意図されている。吸収性層106はまた、マイクロポンプシステムを収容する。好適には、吸収性層106は、マイクロポンプシステム108を受け入れるように事前成形または形成される。この点に関して、吸収性層106は、くぼみまたは凹所112を有しマイクロポンプ108を収容し得る。あるいは、吸収性層106は、マイクロポンプシステム108を受け取るおよび/または閉じ込めるように形成または成形されるように、積み重ねることが可能であり得る。例示的な吸収性材料は、フォーム、不織布の複合織物、セルロース織物、高吸収性ポリマ、およびそれらの組み合わせを含む。好適には、吸収性層106は、かなりの量の滲出物、例えば、最大で少なくとも100立方センチメートル(cc)以上の創傷流体を吸収し得る。吸収性層106は、複数の層を含み得る。
【0019】
吸収性層106はまた、薬物を用いて処理される。薬物は、例えば、殺菌剤または他の適切な抗菌剤もしくは抗菌剤の組み合わせのような抗感染剤、ポリヘキサメチレンビグアニド、抗生物質、鎮痛剤、ビタミンのような治癒因子、創面切除剤、成長因子、栄養剤など、および等浸透圧の塩水のような流水洗浄因子を含む。
【0020】
吸収性層106は、マイクロポンプシステム108から独立した圧力インジケータ114をさらに含み得る。圧力インジケータ114は、吸収性層106または創傷手当て装置10の境界に据え付けられ得るか、固定され得るか、または埋め込まれ得る。あるいは、圧力インジケータ114は創傷手当て100の外側にあり、圧力チューブなどを通じて創傷手当ての内側と連絡する。圧力インジケータ114は、PCB(登録商標) Piezotronicsによる商用名Dynamic IP(登録商標) Pressure Sensorの下で販売されている市販の圧力センサの形式であり得る。圧力インジケータ114は色分けされ得、デバイス上の1つの色(例えば、赤色)は、非真空状態を示し、第2の色(例えば、緑色)が適切な真空状態を示す。吸収性層106は、吸収性層106の表面に据え付けられたまたは埋め込まれた飽和インジケータ116をされに含み得る。飽和インジケータ116は、限定するものではないが、PEHANAL(登録商標)およびPANPEHA(登録商標)のようなリトマス紙を含み得、滲出物および創傷流体を有する吸収性層106の飽和のレベルまたは程度をユーザに示す。飽和インジケータ116は、ユーザが、吸収性層106の残りの容量、すなわち吸収性層106が交換を必要としているかを決定することを助ける。吸収性層106に据え付けられているかまたは埋め込まれているとして開示されているが、飽和インジケータ116は創傷手当て100の任意のコンポーネントの中に配置され得る。
【0021】
図1および図2を続けて参照すると、粘着性の上部層110は、創傷床「w」を囲む創傷手当て100の周囲を含み、創傷床「w」の周囲に封鎖を提供する。例えば、封鎖メカニズムは、創傷床「w」を囲む層に結合される任意の粘着剤であり得る。粘着剤は、創傷床「w」の皮膚を囲んでいる組織「t」、例えば、創傷周囲の範囲に許容可能な接着を提供し、接触劣化を伴うことなく、皮膚での使用に耐えることができなければならない(例えば、粘着剤は、好適には、刺激することなくかつ感作しないものであるべきである)。粘着剤は透過性であり、接触された皮膚が呼吸し水分を透過することを許容し得る。さらに、粘着剤は、加熱または所与の流体溶液もしくは化学反応のような外部刺激によって活性化または不活性化され得る。粘着剤は、例えば、Tyco Healthcare Group LPの一部門であるKendall Corp.によってUltec(登録商標) Hidrocollid DressingまたはCuragel(登録商標) Hydrogelを含む。
【0022】
粘着性の上部層110は、好適には、吸収性層106の近位に据え付けられたシートの形式である。好適には、上部層110は、吸収性層106の容易な取替えを可能にするために、吸収性層106に結合されない。好適な実施形態において、上部層110の周辺部分110Pは、基部層102の周辺部分102Pに結合され、創傷床「w」付近で組織「t」に固定される。リムーバブルライナーがまた、使用に先立ち、粘着性の層110の粘着面を保護するために使用され得ることが見込まれている。
【0023】
上部層110は、一般的には、可撓性の材料、例えば、弾力的またはエラストマーの材料であり、創傷手当て100の上部を封鎖する。例示的な可撓性の材料は、Tyco Healthcare Group LPの一部門であるKendall Corp.による商標Polyskin(登録商標) IIの下で製造されている完全にまたは部分的に透明な手当てを含む。Polyskin(登録商標) IIは透明な半透過性の材料であり、それが創傷部位からの水分の通過を可能にし、細菌および流体の汚染に対するバリアを提供する。代替案において、上部層110は水分に対して不透過性であり得る。上部層110の透明性が創傷手当ての状態、さらに詳細には、創傷手当ての層の飽和レベルの状態の視覚的しるしを提供する。さらに正確には、上部層110の透明性が、圧力インジケータ114および飽和インジケータ116のそれぞれの状態を医師に見せることを可能にする。
【0024】
上部層110はアクセスドア118を含み、創傷手当て100の内部および/または創傷床「w」へのアクセスを提供し得る。ドア118は上部層110と一体で形成されたフラップであり得るか、またはヒンジなどを介して上部層110に接続された別個のコンポーネントであり得る。ドア118は好適には再封鎖可能であり、創傷手当て100の完全性を維持し、かつ、上部層110に対する封鎖を提供する。ドア118を解放可能に封鎖する1つの適切な手段は、スナップフィット配置、舌と溝との配置、「zip lock(登録商標)」配置、粘着剤、VELCRO(登録商標)などを含む。ドア118は好適には創傷床「w」へのアクセスを提供し、医師が、創傷の状態を監視すること、吸収性層106を交換すること、マイクロポンプシステム108を交換することと、または必要に応じて、成長因子、創面切除剤、または他の創傷治癒剤のような追加の医療処置を創傷に適用することを可能にする。所望の手順が完了すると、アクセスドア118は上部層110に再封鎖され、創傷手当て100の完全性を維持する。
【0025】
ここで、図1および図2と共に、図3の概略図を参照すると、マイクロポンプシステム108が記述されている。マイクロポンプシステム108は、約1インチ〜3インチの範囲の長さと好適には約1インチを上回らない比較的小さい直径とを有する小型のポンプまたはマイクロポンプ120を含む。マイクロポンプ120は任意のタイプのポンプであり得、該任意のタイプのポンプは、生体適合性があり、かつ、適切な治療の真空レベルを維持または吸い出す。マイクロポンプ120は、吸収性層106に埋め込まれ得るか、または層106に据え付けられ得るか、または代替的に創傷手当て100の範囲の中に関連付けられ得る。本明細書において使用される場合、「治療の真空レベル」は、創傷床から離れるように創傷流体および滲出物を吸い出す真空レベルを指す。好適には、達成されるべき真空レベルは、約75mmHgと約125mmHgとの間の範囲にある。マイクロポンプ120は、使い捨て、取り外し可能、再利用可能および/または再充電可能であり得る。一般的には、マイクロポンプ120は、ダイアフラム型または蠕動型などのポンプであり、該マイクロポンプ120において、可動部分は、減圧の範囲または領域、例えば、真空の領域を創傷手当て100に作成することによって、創傷床から創傷手当ての中に滲出物を吸い出す。この減圧の範囲は、好適には、創傷床「w」と連絡し、そこから吸収性層106の中への流体の除去を促進する。マイクロポンプ120は当業者には公知の任意の手段によって作動され得る。本開示の好適な実施形態において、マイクロポンプ120は、蠕動ポンプである。1つの適切なマイクロポンプは、Piab Vacuum Products in Hingham, MAによって製造されている。好適には、蠕動ポンプは、約20mmHg〜約500mmHgの範囲にある、大気圧よりも低い圧力を生成する。
【0026】
マイクロポンプシステム108は、好適には、内部の自蔵バッテリ源122と、マイクロポンプ120付近またはマイクロポンプ120から外れた選択位置の圧力を監視する圧力センサまたはトランスデューサ124と、調整または制御手段126とを含む。制御手段126は、処理および駆動の回路網を含むモータコントローラ/ドライバ128を組み込み、圧力センサ124によって感知された圧力に応答して、マイクロポンプ120のモータに対する駆動電圧を制御または変更し得る。マイクロポンプ120のモータの出力は、制御手段126によって制御されると、増加もしくは減少、または開始もしくは停止され得る。大気圧よりも低い最適な圧力が達成されない場合には、圧力センサ124はまた、創傷閉鎖装置10内の漏れを検出することを助ける情報を提供する。調整または制御手段126はまた、視覚的、聴覚的、触覚的な感覚的警報(例えば、振動など)のような警報を有し、特定の状態(例えば、所望の真空レベル、または真空の損失)を満たしたときにユーザに示し得る。
【0027】
マイクロポンプシステム108は、好適には、創傷手当て100の中への埋込に適合されており、すなわち、マイクロポンプシステム108は、埋込可能な自蔵ユニットである。バッテリ源122と制御手段126とはマイクロポンプ120の筐体の中に造られ得る。圧力センサ124は、マイクロポンプ120の筐体の外表面に据え付けられ得るか、または筐体内のポートを介して連絡し得る。圧力センサ124はまた、マイクロポンプ118の筐体から動かされ得、例えば、マイクロポンプ120から外れた位置において吸収性の層106の中に埋め込まれ得、かつ、電気接続を介して制御手段126に接続され得る。マイクロポンプ120とバッテリ122とは、使い捨てまたは再利用可能であり得る。好適には、マイクロポンプシステム108は、例えば、一回の使用の後、完全に捨てることができ、創傷手当て100の吸収性層106と共に捨てられ得る。あるいは、マイクロポンプシステム108は、吸収性層106から取り除かれ得るか、または接続を断たれ得、創傷閉鎖100の中への配置のために別の吸収性層106の中に再設置され得る。
【0028】
マイクロポンプシステム108は無線送信手段を介して外部から制御され得ることがまた想定される。この代替の実施形態において、外部の無線周波数(RF)トランスミッタまたはアンテナ130(図3で点線で示されている)は、制御手段126と関連している受信トランスミッタ132に信号を送/受信し、マイクロポンプシステム108の機能を制御する制御手段を動作し得る。当業者は、遠隔無線周波数(RF)手段を介して動作するように、マイクロポンプシステム108を容易に適合させ得る。マイクロポンプシステム108は、コンピュータ、例えば、ハンドヘルドのPALMデバイスと通信する回路網を組み込み得る。
【0029】
使用において、創傷手当て100は、図2に示されているような創傷床「w」の中に配置される。その後、マイクロポンプ120は、創傷手当て100の中に、大気圧よりも低い圧力(すなわち、真空状態)の領域を作成することを開始させられる。マイクロポンプ120は、制御手段126と関連する手動のスイッチ130を介して開始され得るか、または圧力センサ124を介して始められ得、該圧力センサ124は、創傷手当て100の中の大気圧よりも低い圧力の欠如を検出し、対応する信号を制御手段126に送信する。次に、制御手段126はマイクロポンプ120を作動する。創傷閉鎖100の中の大気圧よりも低い圧力が増加すると、上部層110が図4に描かれた位置までつぶれる。所望のレベルの大気圧よりも低い圧力が、例えば、圧力センサ124によって検出されたときに達成されると、圧力センサ124は信号を制御手段126に送信する。制御手段126は、マイクロポンプ120の動作を終了し得るか、または代替的にマイクロポンプ120の速度または出力を変更し得る(例えば、減少させる)かのいずれかである。真空状態において、創傷流体と滲出物とが、収集されるために吸収性層106の中に吸い出される。しばらくすると、創傷手当て100は、圧力センサ124によって検出されたときに、真空状態を失くし得る。真空状態の喪失の視覚的確認がまた、上部層110を通じて真空インジケータ114を見ることによって確実にされ得る。所望の真空レベルの喪失が達成されたときには、圧力センサ124は,信号を制御手段126に送信して、マイクロポンプ120の出力を作動または増加させる。このプロセスは、創傷の治癒の間に数回継続し得る。
【0030】
上部層110を通して飽和インジケータ116を見ることによって検出されるときに、吸収性層106が完全に飽和されていると、アクセスドア118が、図5に示されているように開かれ得る。吸収性層106とマイクロポンプシステム108とがドアを通って取り除かれ得る。述べられているように、新たな吸収性層106および/または新たなマイクロポンプシステム108が、次に、ドア118を通って導入され、かつ、創傷手当て100の中に設置され得る。
【0031】
図6は、本開示の代替の実施形態を例示している。この実施形態に従って、創傷手当て200は、ビーズパッキング202と接触層204と毛管層206とパッキング層208と閉塞層210とを含む。ビーズパッキング202は、複数の抗菌ビーズ、すなわち、成長因子、薬物、抗生物質、鎮痛剤、およびビタミンのような治癒因子、成長因子、栄養剤などを有するビーズを組み込み得る。これらのビーズは、好適には、非粘着性であり、所定の期間の間、生体吸収性であり得る。あるいは、ビーズは非生体吸収性であり得る。ビーズは創傷部位の中に注入可能であり得る。複数の用途のビーズがまた想定されている。
【0032】
あるいは、接触層204は、上で述べられた基部層102と同様であり得、好適には、多孔性である。毛管層206は複数の毛管ファイバを含んでマイクロチャネルを画定し、該毛管ファイバは、液体の制御された方向性の流れを可能にして、例えば、創傷からの滲出物の排液を可能にする。これらのチャネルは、シート、フィルム、またはチューブに成形され、均一なまたはふぞろいの寸法であり得、層の長手方向に沿って伸長し得る。マイクロチャンネルは、望ましくは、1つの方向、すなわち、例えば、透析フィルタと同様な創傷排液に向けて創傷から離れる流体の流れを可能にする。パッキング層208とマイクロポンプ212とは、上で述べられた対応物と実質的に同様である。閉塞層210は、シリコンまたはヒドロゲルの材料を備え得、皮膚の接触側に粘着されかつ外側に対しては非粘着性であり得、好適には、水分/油分のある環境において粘着性がある。閉塞層210はまた、フィルムを形成する液体の材料であり得、該フィルムを形成する液体の材料は、上に記述されたものと同じ表面特性を有する手当てを覆った塗布のためのスプレーメカニズムから分配される。創傷手当て200はさらに、外部の排液キャニスタ、例えば、排液バッグへの接続のための補助ポート214をさらに組み込み得る。
【0033】
図7は、代替の創傷手当て300を例示しており、該創傷手当て300は、ビーズ層の代わりに生体適合性のフォーム302を組み込む。フォーム302は、弾性があり液体吸収性で多孔性の、ポリマを基にしたフォームであり得る。フォーム302は分配可能な液体であり得、少なくとも部分的には、結晶状の配列に凝固し、滲出物の排液を可能にする中空のチューブを画定する。フォーム302は、創傷床の中に分配され、フォームチャネルから空気を排出するために潜在的に折りたたむことができる。フォーム302は、膨張可能な親水性のフォームであり得、創傷から流体を吸収することが可能であり、創傷床の湿性を維持する。中空のチューブまたは隙間がフォーム302によって画定され、また電気、熱、冷気、および超音波を伝える手段を提供する。中空のチューブまたは隙間はまた、組織の成長のための生体活性の足場を提供する。創傷手当て300は、ポート306を介して手当て300の内側に接続されているアコーディオン状のバッグまたはキャニスタ304をさらに含む。キャニスタ304は、エネルギーを創傷の滲出物に伝えバッグの中に流体を排出するために圧縮され得る。1つの適切なシステムが、Grossらに対する同一人に譲渡された米国特許第5,549,584号に開示されており、該特許の全内容は、本明細書において参考として援用される。所望される場合には、一方向弁が、キャニスタ304に通じるポートの中に組み込まれ得る。
【0034】
創傷手当て装置は外部の手段または塗布を組み込み、組織の成長および/または治癒を刺激し得るということがさらに想定されている。例えば、超音波トランスデューサが創傷手当て装置に組み込まれ、例えば、治癒を刺激するために創傷範囲に熱または振動エネルギーを導く、および/または皮膚を通して人間の体に様々な薬剤を導入するなどの、組織の処置のための機械的エネルギーを伝え得る。酸素、化学物質、細菌、灌水および/または温度のセンサを含む他のタイプのセンサがまた、創傷手当て装置への組み込みを想定されている。創傷範囲付近での酸素の検出は、医師が創傷の治癒の状態を決定することを助ける。上昇された温度の存在が感染を示し得る。
【0035】
本開示が例示されかつ記述されてきたが、本開示の精神を全く逸脱することなく、様々な改変および置換が行われ得るので、示された詳細に限定されることは意図されていない。例えば、2006年9月7日に出願された仮特許出願第60/714,805号に対する優先権を主張する、Express Mail Certificate No.EL985194508 USの下で本明細書と共に同時に出願された同一出願人に譲渡された国際出願の主題と、2006年9月7日に出願された仮特許出願第60/714,912号に対する優先権を主張する、Express Mail Certificate No.EV879103054 USの下で本明細書と共に同時に出願された同一出願人に譲渡された特許出願の主題とが、本開示に援用される(各出願の全内容は本明細書において援用されている)ことが想定されている。従って、本明細書において開示された本発明のさらなる改変および均等物が、単に普通の実験を行って、当業者に見出され得、そのような全ての改変および均等物は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の精神および範囲を逸脱することはないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本開示の原理に従った自蔵創傷手当てとマイクロポンプシステムとの斜視図である。
【図2】図2は、創傷床の上にあり、かつ、真空が存在しない通常の膨張した状態にある創傷手当てを例示している側面断面図である。
【図3】図3は、マイクロポンプシステムの概略図である。
【図4】図4は、マイクロポンプシステムによって生成された、大気圧よりも低い圧力を受けたときの収縮した状態における創傷手当てを例示している、図2の図と同様な図である。
【図5】図5は、吸収性層および/またはマイクロポンプシステムの除去を可能にする開いた状態における、創傷手当てのアクセスドアを例示している図である。
【図6】図6は、本開示の自蔵創傷手当てとマイクロポンプシステムとの別の実施形態の側面断面図である。
【図7】図7は、本開示の自蔵創傷手当てとマイクロポンプシステムとのさらに別の実施形態の側面断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷手当て装置であって、該装置は、
創傷床に対して配置するための大きさにされた創傷手当て部材と、
該創傷床からの流体の除去を促進するために、少なくとも該創傷手当て部材に大気圧よりも低い圧力を加えるマイクロポンプを含むマイクロポンプシステムであって、該マイクロポンプは、該創傷手当て部材に据え付けられている、マイクロポンプシステムと
を備えている、創傷手当て装置。
【請求項2】
前記マイクロポンプは、約20mmHgと約500mmHgとの間の範囲にある、大気圧よりも低い圧力を生成するように適合されている、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項3】
前記マイクロポンプシステムは、該マイクロポンプの動作を制御する制御手段を含む、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項4】
前記マイクロポンプシステムは、前記創傷手当て部材に対する所定の位置における圧力を検出するように、かつ、対応する信号を前記制御手段に送信するように適合された圧力センサを含む、請求項3に記載の創傷手当て装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記圧力センサによって感知された圧力に応答して前記マイクロポンプの出力を制御または変更するように適合されたモータコントローラを含む、請求項4に記載の創傷手当て装置。
【請求項6】
前記マイクロポンプシステムは、前記マイクロポンプを作動するバッテリを含み、該バッテリは、前記創傷手当て部材の中への埋込に適合されている、請求項3に記載の創傷手当て装置。
【請求項7】
前記創傷手当て部材は、前記創傷床に隣接して配置可能な下側部材と、該下側部材に隣接して配置可能な上側吸収性部材と、上部部材とを含む、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項8】
前記マイクロポンプは、少なくとも部分的には、前記上側吸収性部材の中に配置されている、請求項7に記載の創傷手当て装置。
【請求項9】
前記上部部材は、粘着性の部材であり、該粘着性の部材は、前記創傷床の周囲に固定されるように適合されており、前記創傷手当て部材と該創傷床を囲む組織との間に封鎖を提供する、請求項8に記載の創傷手当て装置。
【請求項10】
前記下側部材は、薬物、抗感染薬、殺菌剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、創面切除剤、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子および栄養剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の創傷手当て装置。
【請求項11】
前記下側部材は、マイクロビーズのパッキングおよび吸収性フォームのうちの1つを含む、請求項7に記載の創傷手当て装置。
【請求項12】
前記上側吸収性部材は、フォーム、不織布の複合織物、セルロース織物、高吸収性ポリマ、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される材料を含む、請求項7に記載の創傷手当て装置。
【請求項13】
前記上側吸収性部材は、薬物、抗感染薬、殺菌剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子および栄養剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の創傷手当て装置。
【請求項14】
前記上部部材は、透明な材料を含む、請求項7に記載の創傷手当て装置。
【請求項15】
前記創傷手当て部材は、該創傷手当て部材の中の圧力のレベルを示す圧力インジケータを含む、請求項14に記載の創傷手当て装置。
【請求項16】
前記創傷手当て部材は、該創傷手当て部材の飽和の程度を識別する飽和インジケータを含む、請求項14に記載の創傷手当て装置。
【請求項17】
前記上部部材は、それと関連するアクセスドアを含み、かつ、前記創傷手当て部材を実質的に囲む閉じた位置と該創傷手当て部材への内部アクセスを可能にする開いた位置との間で選択的に動くことができる、請求項7に記載の創傷手当て装置。
【請求項18】
創傷手当て装置であって、該装置は、
創傷床に対して配置可能な吸収性部材を含む創傷手当て部材と、
該創傷手当て部材の中またはそれに隣接して含まれるマイクロポンプシステムであって、該マイクロポンプシステムは、該創傷床からの流体の除去を促進するために、大気圧よりも低い圧力を該創傷床に加えるマイクロポンプを含む、マイクロポンプシステムと
を備えている、創傷手当て装置。
【請求項19】
前記マイクロポンプシステムは、前記マイクロポンプに電力を供給するバッテリを含む、請求項18に記載の創傷手当て装置。
【請求項20】
前記マイクロポンプシステムは、該マイクロポンプの動作を制御する制御手段を含む、請求項19に記載の創傷手当て装置。
【請求項21】
前記マイクロポンプシステムは、前記創傷手当て部材に対する所定の位置における圧力を検出する圧力センサを含む、請求項20に記載の創傷手当て装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−506878(P2009−506878A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530192(P2008−530192)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/034827
【国際公開番号】WO2007/030601
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】