マイクロルーバー積層体、及び画像表示装置
【課題】マイクロルーバー層の光吸収部の配置の周期性によるモアレ発生と、配置の粗密による濃淡ムラ発生を共に解消すると共に、その光線制御機能を高める。また、これを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】マイクロルーバー層1が第1の層1Aと第2の層1Bとの少なくとも2層以上積層されたマイクロルーバー積層体10であり、第1の層1A及び第2の層1Bは各々、光吸収部2と光透過部3とからなり、光吸収部の平面視形状である遮光パターン2Pが、光透過部に対応する多数の開口領域Aを画成し、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域を画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、開口領域が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンとする。画像表示装置はこの積層体を備える。
【解決手段】マイクロルーバー層1が第1の層1Aと第2の層1Bとの少なくとも2層以上積層されたマイクロルーバー積層体10であり、第1の層1A及び第2の層1Bは各々、光吸収部2と光透過部3とからなり、光吸収部の平面視形状である遮光パターン2Pが、光透過部に対応する多数の開口領域Aを画成し、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域を画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、開口領域が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンとする。画像表示装置はこの積層体を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロルーバー層が複数積層されたマイクロルーバー積層体と、これを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネルなどの画像表示パネルの前面フィルタとして、マイクロルーバー層を有するマイクロルーバーシートが使われている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
図19の断面図で示す従来のマイクロルーバーシート40を構成するマイクロルーバー層41は、典型的には、断面が楔形状の柱状体からなる光吸収部42と光透過部43とが延在方向を互いに平行に交互にシート面方向に配置され、シート面に垂直な方向から見るとストライブ状となる構造を有する。同図では、光吸収部42は図面左右方向のY軸方向に一定の周期で配列されている。
画像表示パネル20の観察者V側に配置されたマイクロルーバー層41は、光吸収部42が太陽光や室内照明光などの不要な光Laは吸収し、光透過部43が必要とされる画像光Ldを画像表示パネル20側から観察者V側に透過する。
【0004】
こうした光線制御機能によって、マイクロルーバーシート40は、外光が画像光に混入して画像のコントラストが低下するのを抑制しコントラストを高めるコントラスト向上フィルタ、或いは、画像光を特定の狭い視野角内のみに出射する覗き見防止フィルタなどとして使われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−372161号公報
【特許文献2】特開2009−539139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マイクロルーバー層41の光吸収部42は、図20(A)に示す様にストライプ状にY軸方向に1次元配列した場合では、繰返周期Tyを有し、図20(B)に示す様に正方格子状にX軸方向及びY軸方向に2次元配列した場合では、繰返周期Tx及び繰返周期Tyを有する。
このため、マイクロルーバーシート40を、画像表示パネルと組み合わせて画像表示装置としたときに、マイクロルーバー層41の繰返周期と画像表示パネルを構成する画素の繰返周期とが干渉して、モアレが生じることがある。
【0007】
上記モアレは、光吸収部42の配列方向と、画像表示パネルの画素の配列方向とを一致させずに、3〜45°程度ずらす、いわゆるバイアス角を設ければ軽減させることは出来る。
ただ、最適なバイアス角は、繰返周期以外に、画素サイズ、画素間寸法など、組み合わせる画像表示パネルの設計仕様毎に異なる。このため、マイクロルーバー層41の設計仕様も画像表示パネル毎の多品種小ロット仕様となり、生産性及び製品コストの点で難があった。
【0008】
多品種小ロット仕様となる点の改善策として、製造途中では製品毎にバイアス角を決めないで、図21で示すように、連続帯状(ウェブ状)で、光吸収部42の延在方向が流れ方向MDに平行(繰返周期を有する配列方向は幅方向TDに平行)な中間製品40wから、枚葉状のマイクロルーバーシート40を、所要のバイアス角θに応じて流れ方向MDに対して斜めに切り出す方法もある。
しかし、この方法は、図21から見てとれるように、無駄部分44が多いという問題がある。
【0009】
そこで、本発明者らは、モアレが生じない様にする為に、マイクロルーバー層に於ける光吸収部の配列を、完全にランダムパターン化することを目指し、画像表示装置関連分野に於いて用いられる公知のランダムパターンを各種模索した。
【0010】
例えば、電磁波シールド用の導電性パターンとして、国際公開第2007/114076号のパンフレットでは、有機溶剤処理と酸処理とを組み合わせた化学処理によって形成した、網目状の導電性パターンを提案している。この導電性パターンは完全にランダムパターン化している。しかし、この網目状の導電性パターンではモアレは解消するが、パターン自体に粗密が存在し、その粗密による濃淡があり、画像表示パネルに適用したときに、明度の濃淡ムラが生じる。
一方、特開平11−121974号公報では、モアレ防止の為に、これも電磁波シールド用の導電性パターンではあるが、配列の周期性を一部は残し、一部はランダム化したパターンを提案している。しかし、この一部ランダム化したパターンでは、濃淡ムラは軽減するが、モアレが残る。
これらのランダムパターンに起因する濃淡ムラや残留モアレは図19や図20の如きマイクロルーバー層41に適用した場合も同様であった。
このため、従来のモアレ解消技術では、モアレの解消と、濃淡ムラの解消とを、両立させることが出来なかった。
【0011】
また、マイクロルーバー層中の光吸収部は、そのアスペクト比(高さ/幅)が大きいほど、光線制御機能が増大し高性能のマイクロルーバー機能を実現できることが知られている。しかし、実際にはその製造法、及び製造コストなどの観点から制約がある。
【0012】
以上のような問題点を解決策として、本発明者らは、特願2011−52939号にて、光吸収部を特定の非周期の遮光性メッシュとしたマイクロルーバーシートを提案した。ただ、光吸収部の配置に特定の非周期性パターンを導入することで、モアレと濃淡ムラを同時に解消できても、光吸収部自体の製造方法は、従来同様に、ワイピング法や印刷法では、高いアスペクト比を実現することは困難であった。
【0013】
すなわち、本発明の課題は、マイクロルーバー層を有するマイクロルーバーシートについて、その光吸収部の周期的配列に起因するモアレ発生を解消すると共に、その配置の粗密による濃淡ムラも解消し、これらを両立させた上で、さらに光線制御機能を高めることである。また、こうした性能を有する画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明では、次の様な構成のマイクロルーバー積層体と画像表示装置とした。
(1)光吸収部とこの光吸収部以外の部分の光透過部とからかなるマイクロルーバー層であって、
前記光吸収部をシート面に垂直な方向から見たときの平面視形状である遮光パターンが、
光透過部に対応する多数の開口領域を画成し、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口領域が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンであり、
このマイクロルーバー層を、遮光パターンが互いに独立な、第1のマイクロルーバー層と第2のマイクロルーバー層との少なくとも2層以上積層した、マイクロルーバー積層体。
(2)第1のマイクロルーバー層と第2のマイクロルーバー層との間に第1の透明基材が積層され、第2のマイクロルーバー層の前記第1のマイクロルーバー層の側とは反対側に第2の透明基材が積層された、上記(1)のマイクロルーバー積層体。
(3)上記(1)または(2)のマイクロルーバー積層体と画像表示パネルとを備える画像表示装置。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明のマイクロルーバー積層体によれば、マイクロルーバー層の光線制御機能によって、コントラスト向上機能、視野角制御機能が得られる上、マイクロルーバー層の光吸収部の遮光パターンが周期性がない特定のパターンであるために、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると共に、遮光パターンの粗密による濃淡ムラも極めて効果的に目立たなく出来、モアレ解消と濃淡ムラ解消とを両立させることができる。さらに、マイクロルーバー層を2層以上積層してあるので、積層体全体として光吸収部を高アスペクト比にしたときと同様の高い光線制御性能が得られる。
(2)本発明の画像表示装置によれば、上記したマイクロルーバー積層体の効果が得られ、モアレも濃淡ムラも共に発生せず、コントラスト向上性能や視野角制御性能において高い光線制御性能が得られる装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるマイクロルーバー積層体の一実施形態を説明する斜視図(A)と断面図(B)。
【図2】本発明によるマイクロルーバー積層体の別の実施形態を例示する断面図。
【図3】遮光パターンの一例を示す平面図。
【図4】遮光パターンに繰返周期が存在しないことを説明する平面図。
【図5】遮光パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図6】遮光パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図7】遮光パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図8】決定された母点群の分散の程度を絶対座標系と相対座標系で説明する図。
【図9】決定された母点からボロノイ図を作成して遮光パターンを決定する方法を示す図。
【図10A】本発明による遮光パターンを示す平面図。
【図10B】画像表示パネルの画素配列を示す平面図。
【図10C】図10Aと図10Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図11A】従来のマイクロルーバー層が有する遮光パターンを示す平面図。
【図11B】画像表示パネルの画素配列を示す平面図。
【図11C】図11Aと図11Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図12】光吸収部の主切断面形状の各種形状を例示する断面図。
【図13】光吸収部の主切断面形状における寸法の定義を説明する断面図。
【図14】マイクロルーバー層の積層による光線制御機能の増大を外光について説明する断面図であって、(A)は単層、(B)は2層の場合。
【図15】マイクロルーバー層の積層による光線制御機能の増大を画像光について説明する断面図であって、(A)は単層、(B)は2層の場合。
【図16】遮光パターンがマイクロルーバー積層体の寸法の1/3以上の大きさの単位パターン領域として繰り返された一例を示す平面図。
【図17】本発明による画像表示装置の実施形態例を示す断面図。
【図18】本発明による画像表示装置の別の実施形態例を示す断面図。
【図19】従来のマイクロルーバーシートに於ける光線制御作用を説明する断面図。
【図20】従来のマイクロルーバーシートの光吸収部が繰返周期を有することを説明する平面図。
【図21】従来のマイクロルーバーシートが繰返周期を有するが故にバイアス角付きのものを切り出すときに生じる無駄を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0018】
〔A〕用語の定義:
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
「シート面」とは、シート状のマイクロルーバー積層体10を全体的かつ大局的に見た場合において、この積層体10の平面方向と一致する面のことを意味する。したがって、マイクロルーバー層1A,1Bの層面と平行な面でもある。
「一方の面1p」とは第1のマイクロルーバー層1A,第2のマイクロルーバー層1Bの表裏面のうちのいずれか一方の面を意味し、「他方の面1q」は表裏面のうち「一方の面1p」ではない面を意味する。「一方の面1p」と「他方の面1q」との面それ自体の区別はない。
【0019】
「主切断面形状」とは、「シート面」に立てた法線nに平行な断面のうち、光吸収部2乃至はその遮光パターン2Pの注目部分における延在方向に直交する断面として定義される「主切断面」に於ける形状のことを意味する。
「平面視形状」とは、「シート面」に平行な面に於ける形状のことを意味する。言い換えると、「平面視形状」とは、「シート面」に立てた法線nの方向から見た形状のことを意味する。
【0020】
「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0021】
〔B〕マイクロルーバー積層体:
先ず、本発明によるマイクロルーバー積層体を、図1に示す一実施形態例を参照して説明する。
【0022】
図1(A)の斜視図及び図1(B)の断面図で例示する本発明のマイクロルーバー積層体10は、第1のマイクロルーバー層1Aと、この第1のマイクロルーバー層1Aに隣接して第2のマイクロルーバー層1Bが積層され、都合2層のマイクロルーバー層が積層された2層構成のマイクロルーバー層1を有する積層体である。
【0023】
第1のマイクロルーバー層1A、及び第2のマイクロルーバー層1Bとは、共に、その光吸収部2が、本発明に特有の非周期的な遮光パターン2Pを有する。
第1のマイクロルーバー層1A、及び第2のマイクロルーバー層1Bは、共に、光吸収部2と、この光吸収部2以外の層部分に形成された光透過部3とから構成される。
【0024】
それぞれの光吸収部2は、シート面に垂直な法線nの方向から見たときの平面視形状が、本発明特有の遮光パターン2Pとなっている。この遮光パターン2Pは第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとで、互いに独立なパターンとなっている。このため、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとが隣接して積層されていても、それぞれが有する遮光パターン2Pは、部分的には重なっても全ての部分で重なることはない。また、それぞれが有する遮光パターン2Pによって画成される光透過部3は、部分的には重なっても全ての部分で重なることはなく、光透過部3の全領域が光吸収部2と重なり光透過部3による透過性が完全に遮蔽されることはない。
【0025】
さらに、遮光パターン2Pは、光透過部3に対応する多数の開口領域Aを画成し、二つの分岐点Bの間を延びて前記開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口領域Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。
【0026】
このため、本実施形態では、上記光吸収部2は従来のような周期的配列ではなく、その遮光パターン2Pが非遮光パターンであるために、画像表示パネルと組み合わせた時に画素配列との干渉によるモアレも、遮光パターン2P自体の濃淡ムラも生じず、モアレと濃淡ムラとを極めて効果的に抑制しながら、マイクロルーバー層1による光線制御機能を発揮させることが可能となる。
しかも、マイクロルーバー層1は、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとが2層が積層された複層構成の積層体としてある為に、実質的に光吸収部2のアスペクト比を高くでき、高い光線制御機能を発揮させることができる。
【0027】
本発明のマイクロルーバー積層体10は、各種変形形態をとり得る。ここで一例を示せば、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの間に透明な層を挟んだ構成としても良い。
図2は、本発明によるマイクロルーバー積層体10の別の実施形態例を示すものであり、同図のように、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの間には、透明基材4aを積層しても良い。同図では、さらに、第2のマイクロルーバー層1Bの透明基材4aに接する側の面とは反対側の面に、別の透明基材4bを積層した形態である。
この実施形態によれば、第1のマイクロルーバー層1Aは透明基材4aに積層した中間積層体5Aとして用意し、第2のマイクロルーバー層1Bは透明基材4bに積層した中間積層体5Bとして用意し、これら中間積層体5Aと中間積層体5Bとを積層することで、マイクロルーバー積層体10を容易に製造することができる。
【0028】
以下、本発明に特徴的な遮光パターン2Pについて先ず詳細に説明し、その後で、各構成要素の材料、形成法などについて説明する。
【0029】
〔マイクロルーバー層〕
マイクロルーバー層1は、少なくとも2層の、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとからなる複層構成の層である。図1に示す本実施形態では、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの2層から、マイクロルーバー層1が構成されている。
【0030】
マイクロルーバー層1を構成する第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bは、平面視形状が前記した特定のパターンからなる遮光パターン2Pを呈する光吸収部2と、この光吸収部2以外の部分を占める光透過部3とからなる。光吸収部2が不要光を吸収し、光透過部3が必要光を透過させる。光吸収部2と光透過部3とは、第1のマイクロルーバー層1A或いは第2のマイクロルーバー層1Bをシート面に立てた法線nに平行な断面であって、任意位置で任意方向の断面において、交互に位置するようになっている。
【0031】
第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bとは互いに独立な遮光パターン2Pを有する。この遮光パターン2Pは光吸収部2の平面視形状として形成され、この光吸収部2以外の第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの部分が光透過部3となっている。
【0032】
第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bを構成する光吸収部2及び光透過部3については、従来公知の材料及び形成法によることができる。そこで、これらにつては、追って説明することとし、本発明の特徴的な要件である、光吸収部2が呈する遮光パターン2Pについて先に説明する。
【0033】
[遮光パターンとこれにより画成される開口領域]
遮光パターン2Pは、第1のマイクロルーバー層1A,或いは第2のマイクロルーバー層1Bを、層面乃至はシート面の法線方向(図でZ軸方向)から観察した場合における、光吸収部2の平面視形状である。以下、この遮光パターン2Pについて、図3および図9を主として参照しながら説明する。
【0034】
遮光パターン2Pは、図3に示す如く、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満であり、且つ、前記境界線分Lで画成された前記開口領域Aに繰返周期を持つ方向が存在しない領域を含んでなるパターンとなっている。
なお、遮光パターン2Pは、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない配列となって、モアレ防止効果が十分に発現される為には、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でないようなパターンとすると良い。好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの50%以上が互いにその面積及び形状が異なるようにする。より好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aを遮光パターン2Pの全域に亙って、全て互いにその面積及び形状が異なるようにする。これは、言い換えると、遮光パターン2Pに含まれる開口領域Aのうち、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一となる開口領域Aの形状及び面積がすべて同一ではなく、少なくとも一部は他と異なるものになると言うことを意味する。なお、ここで周囲を囲繞する境界線分Lの数とは、開口領域Aが多角形である場合は、その多角形の角数と一致する。また、以上に於いて、2つの開口領域A同士が互いに合同な図形であって且つその向きが異なる場合も、これらの2つの開口領域Aの形状は互いに異なると見做す。
【0035】
図3および図9に示すように、遮光パターン2Pのライン部Ltは、多数の分岐点Bを含んでいる。遮光パターン2Pのライン部Ltは、両端において分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成されている。すなわち、遮光パターン2Pのライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びる多数の境界線分Lから構成されている。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続されていくことにより、開口領域Aが画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分Lで囲繞され、区画されて1つの閉領域としての開口領域Aが画成されている。
【0036】
なお、図3および図9に示すように、ライン部Ltが境界線分Lのみから構成されているため、開口領域Aの内部に延び入って行き止まりとなるライン部Ltは存在しない。このような態様によれば、マイクロルーバー積層体10に十分な不要光吸収機能と高い必要光透過機能とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
【0037】
一方、モアレの発生を防止するため、本実施形態によるマイクロルーバー積層体10に於ける第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bが有する、それぞれの遮光パターン2Pでは、その全領域が、開口領域Aが繰返周期を有する方向が存在しないようになっている。モアレを確実に解消する為には、遮光パターン2Pの全領域がこのような領域のみから構成されていることが好ましい。本実施形態はこの様な構成からなる。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単に遮光パターン2Pのパターンを不規則化するのではなく、遮光パターン2Pの開口領域Aが一定の規則性を持った繰返周期で並べられた方向が存在しないように遮光パターン2Pのパターンを画成することにより、光吸収部2が周期的配列された構成の従来のマイクロルーバーシート40と、周期的画素配列を有する画像表示パネル20とを重ねた際に生じ得るモアレを、極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると判明した。
【0038】
[繰返周期の不存在]
図4は、遮光パターン2Pで画成される多数の開口領域Aが、一定の周期で配置されている領域が存在せず、繰返周期が存在しないことを説明するXY平面に平行なシート面に於ける平面図である。このシート面の面内において、同図では、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diが、ライン部Ltの境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの開口領域Aの直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1の開口領域Aに対して直線di上で隣接する別の開口領域Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、任意位置で任意方向の直線diと遭遇する多数の開口領域Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共に遮光パターン2Pとは分離して描いてある。
【0039】
この直線diを図4で図示のものから任意の位置で任意の角度回転させて別の方向について各開口領域Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。
すなわち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された開口領域Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
言い換えると、開口領域Aの配置において、任意位置を通る任意方向の仮想的線分di上での開口領域Aの寸法tiの並びの数列が非周期関数となる。すなわち、t(i)=t(i+M)となるMが存在しない(i,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
このように、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しないことを、開口領域Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない、と表現する。
【0040】
さらに、本実施形態によるマイクロルーバー積層体10の第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの光吸収部2が有する遮光パターン2Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている。このように一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、遮光パターン2Pの配列パターンを、図20(B)に示された正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、ハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nを3.0≦N<4.0とした上で、開口領域Aの配列を不規則化して、開口領域Aが繰返周期を持って並べられた方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、その結果、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0041】
なお、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、遮光パターン2P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの開口領域Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述の寸法例で開口領域Aが形成されている遮光パターン2Pにおいては、10mm×10mmの部分)に含まれる分岐点Bについて延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該遮光パターン2Pについての一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
【0042】
実際に、図3に示されたマイクロルーバー積層体10の第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの光吸収部2を構成する遮光パターン2Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、図3の遮光パターン2Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
【0043】
[画像表示パネルの画素配列との干渉によるモアレ発生状況]
図10Aには、図3に示されたような遮光パターン2Pを重ね合わせて、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとが積層されたマイクロルーバー積層体10となったときの、遮光パターン2Pdが示されている。
そして、図10Cには、図10Aに示された遮光パターン2Pdを、図10Bに示された画像表示パネル20に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図10Cからも理解され得るように、図10A示された遮光パターン2Pdを実際に作製して画像表示パネル20の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0044】
ここで、図10Bで示された画像表示パネル20の画素配列は、画像表示パネル20に於ける典型的な画素配列である。図10Bに示す様に、この画像表示パネル20では、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)RPと、緑色に発光する副画素GPと、青色に発光する副画素BPと、から構成されている。すなわち、画像表示パネル20はカラーで画像を形成することができる。図10Bに示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、それぞれ、一つの方向(図10Bでは縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、当該一つの方向に直交する方向(図10Bでは横方向)に、一つずつ、順に並べられている。なお、図10Bは、画像表示パネル20の画像形成面(出光面、即ち画面)への法線方向、言い換えると、画像表示パネル20のパネル面への法線方向から当該画像表示パネル20を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
【0045】
一方、周期的な遮光パターン42Pで画成される開口領域Aに一定の繰返周期が存在する場合のモアレ発生を例示するのが図11A〜図11Cである。ここでは、周期的な遮光パターン42Pは、一定の繰返周期を有することを明示的に示す意味で、以下において、周期的遮光パターン42Pとも言うことにする。
【0046】
図11Aに図示したものは、光吸収部42がストライプ状に形成され周期的遮光パターン42Pを有するマイクロルーバーシート40であり、本発明のマイクロルーバー積層体10とは異なるものである。
図11Cには、図11Aに示された周期的遮光パターン42Pを、図11Bに示された画像表示パネル20(図10Bで示したものと同じである)に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図11A、図11B及び図11Cからも理解され得るように、周期的遮光パターン42Pを有するマイクロルーバーシート40が画像表示パネル20の画素配列上に配置されると、光吸収部42の周期的遮光パターン42Pと画素の規則的パターンとの干渉によって、明暗の筋(図11Cに示された例では、左上から右下に延びている明暗の筋)が視認されるようになる。
【0047】
なお、図11Aおよび図11Cに示された例では、周期的遮光パターン42Pのストライプを構成する多数の直線の配列方向が、画素Pの配列方向に対して、数度傾斜している。この傾斜角をバイアス角(度)と呼称する。このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。但し、図11Cに縞状模様が視認されることからも理解され得るように、モアレ発生の程度は単にバイアス角のみで決まる訳では無く、この他、画素P及び周期的遮光パターン42Pの繰返周期比、周期的遮光パターン42Pの線幅等の要因にも依存する。周期的遮光パターン42Pのバイアス角のみでモアレを解消しようとすると、画像表示パネル20の設計仕様毎に応じてバイアス角の異なるマイクロルーバー積層体を用意する必要が有る。
【0048】
[遮光パターンのパターン形状の作成方法]
ここで、本発明固有の上記遮光パターン2Pのパターンを作製する方法の一例を以下に説明する。
【0049】
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定して遮光パターン2P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図3に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0050】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標と区別する為、頭に「絶対」を付記する)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0051】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0052】
以上の手順で、遮光パターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。遮光パターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、遮光パターン2Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0053】
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挾んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
【0054】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標形上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がRAVG−ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
なお、図8(D)からわかる様に、任意の1母点から見た他の母点の方位(角度)分布は等方的(乃至は略等方的)である。このことが、これらの母点(群)から生成される遮光パターン2Pに於ける開口領域Aの方位(角度)分布が等方的(乃至は略等方的)となることに対応する。
【0055】
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口領域Aの大きさ(乃至は開口領域Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
この様に構成することにより、遮光パターン2Pを目視した際の濃淡(明暗)ムラが、より一層、効果的に解消する。遮光パターン2Pの目視時の濃淡ムラを、実質上、目視不能とし、且つ遮光パターン2Pの非周期性によるモアレ防止性とも両立させる為には、開口領域Aの大きさDの最大値をDMAX、最小値をDMINとしたときに、当該大きさDの分布範囲ΔD=DMAX−DMINが大きさDの平均値DAVGに対して、
0.1≦ΔD/DAVG≦0.6
より好ましくは、
0.2≦ΔD/DAVG≦0.4
とする。
ここで、開口領域Aの大きさDは、全ての開口領域Aについて、以下の定義とする。
(1)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描ける場合は、この開口領域Aの外接円直径を以って、大きさDとする。
(2)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描け無い場合は、この開口領域Aに属する2分岐点B間の距離の最大値を以って、大きさDとする。
【0056】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを大きくすることができる。
【0057】
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0058】
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、遮光パターン2Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。この際、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを画成するようになる。
【0059】
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、作成された遮光パターン2Pを呈する光吸収部2によって得られる不要光吸収性能と光透過部3の必要光透過性能とを勘案して、決定される。以上のようにして、遮光パターン2Pのパターンを決定することができる。
【0060】
以上のような本実施形態によれば、マイクロルーバー積層体10の第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bにおける光吸収部2が有する遮光パターン2Pが、二つの分岐点Bの間を延びて多数の開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成されており、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっており、且つ、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しないようになっている。この結果、規則的(周期的)に画素Pが配列された画像表示パネル20に、このマイクロルーバー積層体10を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0061】
[マイクロルーバー層の構成材料]
次に、第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの構成材料について説明する。構成材料は、従来公知のマイクロルーバー層と同様とすることができる。
【0062】
光吸収部2は、母材(バインダー樹脂)と、母材中に分散された光吸収粒子とを有するものとすることができる。光吸収粒子は、可視光を吸収する機能を有した粒子である。これにより、マイクロルーバー層1において、光透過部3と光吸収部2との界面で反射せずに光吸収部2内に入射した光を光吸収粒子で吸収することができる。
【0063】
(光吸収部)
光吸収粒子としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、画像表示パネルからの放出光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用することもできる。光吸性粒子は、具体的には、カーボンブラック、グラファイト等の炭素、黒色酸化鉄、酸化銅等の金属酸化物等の顔料、アニリンブラック等の染料、或いは、これら顔料或いは染料等で着色した樹脂微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した樹脂微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく、より具体的には、カーボンブラックを含有した架橋アクリル微粒子や、カーボンブラックを含有した架橋ウレタン微粒子等が好ましく用いられる。光吸収粒子は、通常、光吸収部2中に3〜30質量%の範囲で含まれ得る。
【0064】
光吸収部2に可視光吸収機能を付与する手段は、光吸収粒子以外の手段でも良い。例えば、顔料や染料によって、金属や樹脂からなる光吸収部2の表面全体を着色することで、光吸収部2の全体として光吸収機能を発揮するようにしてもよい。
【0065】
前記母材としては、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化可能な電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などがある。
【0066】
(光吸収部の主切断面形状)
光吸収部2の主切断面形状は、図1などに示された例に限られず、例えば図12に示すように、種々の形状が可能である。
【0067】
図12(1)の光吸収部2の主切断面形状は、三角形形状となっている。この三角形形状における底辺と、第1のマイクロルーバー層1A乃至は第2のマイクロルーバー層1Bの少なくとも一方の面1pとが一致している。
図12(2)の光吸収部2の主切断面形状は、台形形状となっている。台形形状は、互いに平行な上底とこの上底よりも大きい下底と、上底及び下底を結ぶ2つの斜辺とを有する。同図の台形は等脚台形である。この台形形状における下底と、第1のマイクロルーバー層1A乃至は第2のマイクロルーバー層1Bの少なくとも一方の面1pとが一致している。
図12(3)の光吸収部2の主切断面形状は、台形形状または三角形形状の斜辺(光吸収部2と光透過部3との界面)が、1つの辺からではなく、2つの辺から構成されている。この斜辺は折れ線状である。この略台形形状の下底または略三角形における底辺が、第1のマイクロルーバー層1A乃至は第2のマイクロルーバー層1Bの少なくとも一方の面1pが一致している。さらに、図示はしないが、斜辺が3以上の線分からなる折れ線からなる形状でも良い。
図12(4)の光吸収部2の主切断面形状は、図12(3)で例示された形状において、斜辺を曲線化した形状である。
図12(5)の光吸収部2の主切断面形状は、図1などで例示した矩形状の例である。この矩形状の一辺と、第1のマイクロルーバー層1A乃至は第2のマイクロルーバー層1Bの少なくとも一方の面1pとが一致している。
【0068】
(光吸収部の主切断面形状に於ける寸法の具体例)
光吸収部2の寸法の具体例として、図13(A)を参照して、その一例を以下に示す。光吸収部2の主切断面形状に於ける最大幅Wmaxは5〜100μmとすることができる。光吸収部2の主切断面形状に於ける高さHは20〜200μmとすることができる。
この高さHと、第1のマイクロルーバー層1A乃至は第2のマイクロルーバー層1Bの総厚みTとの関係では、0.8T≦H≦Tの関係を満たすようにしてもよい。図13(B)の様に、H<Tとするときは、光透過部3はランド部3aを有するマイクロルーバー構造となる。
【0069】
(光吸収部の平面視形状に於ける寸法の具体例)
光吸収部2が不要光吸収機能をある程度確保するだけでなく、光透過部3が画像表示パネルからの画像光はある程度の高い必要光透過機能を確保する観点から、光吸収部2の遮光パターン2Pにおける多数の開口領域Aが占める領域の総割合(以下において「開口率」とも呼ぶ)は50〜90%となるように、遮光パターン2Pの線幅、つまり境界線分Lの線幅と、開口領域Aの大きさ乃至面積を調節することが好ましい。
開口領域Aの大きさDは5〜1000μmとすることができる。
【0070】
(光透過部)
光透過部3は、前述した光吸収部2における母材と同様の樹脂を用いて形成することができる。例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などの電離放射線硬化性樹脂である。
【0071】
光透過部3は、図13(B)の例では、ランド部3aを有している。ランド部3aは、光吸収部2を間に挟んでその両側の光透過部3同士を連結し一体化する連結部である。
このランド部3a上に、光吸収部2とランド部3aを除いた残りの部分の光透過部3が今後に配置される。
ランド部3aは、後述するマイクロルーバー層の製造方法に起因して、光透過部3の一部として一体的に形成され得る。ただし、光透過部3において、このランド部3aは必須ではない。したがって、ランド部3aが省略された光透過部3でも良く、この場合は、第1のマイクロルーバー層1A或いは第2のマイクロルーバー層1Bの厚みTと光吸収部2の高さHとは同じ寸法となる。
【0072】
(屈折率の設定)
光透過部3をなす材料の屈折率、及び、光吸収部2をなす材料の屈折率は、適宜選択され得る。例えば、光吸収部2の幅が観察者側に向けて広がっていく形態、つまり幅Wminの部分よりも幅Wmaxの部分の法が観察者側に近い形態、においては、光吸収部2の母材の屈折率Nb及び光透過部3をなす材料の屈折率Npは適宜の値に設計される。
【0073】
光吸収部2の母材の屈折率Nbが、光透過部3をなす材料の屈折率Npよりも小さく設定された態様の場合、画像表示パネルからの画像光のうち、光吸収部2に当たること無く光透過部3を通過する光は、そのまま吸収されること無くマイクロルーバー層1を透過する。画像光のうち光吸収部2の断面に於ける側面に当たる光は、この側面の法線に対する入射角が臨界角を超過する光は、光透過部3と光吸収部2との界面(前記側面)で吸収されること無く全反射し得る。この全反射した光が画像光の出射角度(画像表示パネルの表示面の法線に対する角度)範囲を拡大し、画像表示装置に適切な視野角を付与することが可能となる。
【0074】
一方、日光等の不要光は前記該斜面の法線に対する入射角が臨界角未満となることが多く、このため全反射しないで、入射光の殆ど(通常、入射光の95%程度)が光吸収部2の内部に侵入し、光吸収粒子に吸収される。この結果、視野角拡大効果及び外光存在下に於ける画像コントラスト向上効果の両効果を奏することができる。なお、この観点において、光透過部3と光吸収部2との界面がマイクロルーバーシート10のシート面への法線方向に対してなす角度は、0°より大きく10°以下となっていることが好ましく、0°より大きく6°以下となっていることが更に好ましい。尚、この場合、光吸収部2の母材の屈折率Nbは、光透過部3をなす材料の屈折率Npよりも0.12〜0.5だけ小さく設定することが好ましい。
【0075】
また、光吸収部2の母材の屈折率Nbが、光透過部3をなす材料の屈折率Npよりも大きく設定される態様の場合、画像光のうち、光透過部3を通過する光は、前記態様と同様に、そのまま吸収されないで透過する。一方、光吸収部2の断面に於ける側面に入射する光は、前記側面で全反射せずに吸収される。この為、画像光の出射角度範囲を縮小し(狭め)、画像表示装置の視野角を制限することが可能となる。一方、日光等の不要光は前記側面の法線に対する入射角如何によらず、全反射せずに殆どは光吸収部2の内部に侵入し吸収される。この結果、視野角抑制効果及び外光存在下に於ける画像コントラスト向上効果の両効果を奏する。この態様は、個人用途や秘密情報表示用の画像表示装置に於ける覗き見防止用途に好適である。
【0076】
[複数のマイクロルーバー層の積層による光線制御機能の増大]
図14及び図15を参照して、複数のマイクロルーバー層を積層することで光線制御機能が増大することを説明する。ここでは、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの2層を積層した形態である。
図14及び図15に於いては、光吸収部2は、その光学的挙動(作用効果)を説明するのに最低限必要な部分のみを描画し、その他の部分、構成要素は適宜図示を省略する。
【0077】
(コントラスト向上効果)
マイクロルーバー層1Aのみ単層の場合、図14(A)の如く、日光等の外光のうち外光LR1と、マイクロルーバー層1Aの(光透過部3)の一方の面1pとの間の角度範囲θR1、及び外光LL1と一方の面1pとの間の角度範囲θL1の範囲の外光が、光吸収部2の側面2Sで吸収、遮光される。
一方、画像表示パネルの画面側からマイクロルーバー層1Aの他方の面1qに入射する画像光は、図15(A)の如く、光吸収部2の外表面(画像表示パネル側の面)、すなわち、遮光領域A1,A2に入射する画像光LS1,LS2は吸収、遮光される。
但し、光吸収部2の平面視における面積占有率は少なく、通常10〜30%である為、70〜90%の画像光LTは透過光として出射する。この結果、光吸収部2による遮光量は、外光(LR1,LL1,・・・)については多く、画像光(LS1,LS2,・・・)については少なくなり、画像コントラスト(白画像輝度/黒画像輝度)は向上する。
【0078】
次に、マイクロルーバー層1Aとマイクロルーバー層1Bとを積層した図14(B)の如き本発明の形態について説明する。
マイクロルーバー層1Aのみの単層の場合には、遮光されずに透過していた外光のうち、図14(B)のLR1とLR2との間の(角度で入射する)外光、および、LL1とLL2との間の外光については、より画像表示パネル側に積層されたマイクロルーバー層1Bの光吸収部2に当たって吸収、遮光される。
すなわち、図14(B)に図示する如く、マイクロルーバー層1Aのみの単層の場合の遮光角範囲θR1+θL2よりも、マイクロルーバー層1Aおよびマイクロルーバー層1Bを積層したマイクロルーバー積層体10の遮光角範囲θR2+θL2は大きく、
θR1+θL1<θR2+θL2 ……〔式1〕
となる。
【0079】
また、画像光に対しては、図15(B)に図示される如く、マイクロルーバー層1A単層の場合の遮光領域A1+A2+・・・よりも、マイクロルーバー層1A及びマイクロルーバー層1Bを積層したマイクロルーバー積層体10の遮光領域(A1+A2+・・)+(A3+A4+A5+・・)は大きく、
(A1+A2+・・)<(A1+A2+・・)+(A3+A4+A5+・・) ……〔式2〕
となる。
【0080】
ただし、通常の設計に於ける、光吸収部2の境界線分Lの最大幅Wmax、厚み方向の高さH、および大きさDの範囲(5〜1000μm)であれば、式1に起因する外光遮光量の増分、ΔI外光(θR1+θL1→θR2+θL2)は、式2に起因する画像光遮光量の増分ΔI画像光{(A1+A2+・・)→(A1+A2+・・)+(A3+A4+A5+・・)}よりも大、すなわち、
ΔI画像光{(A1+A2+・・)→(A1+A2+・・)+(A3+A4+A5+・・)}
<ΔI外光(θR1+θL1→θR2+θL2) ……〔式3〕
となる。
よって、第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの積層体からなるマイクロルーバー積層体10の、コントラスト向上効果は、第1のマイクロルーバー層1A或いは第2のマイクロルーバー層1Bのみの単層構成の場合に比べて増大する。
【0081】
(視野角規制効果向上)
図14およぴ図15において、外光LR1,LR2,LL1,LL2を画像観察者の視線に置き変えれば、容易に理解可能なように、マイクロルーバー層1A及びマイクロルーバー層1Bを積層したマイクロルーバー積層体10を、画像表示パネルの視野角規制シートとして用いる場合、マイクロルーバー層1A単層のみの場合においては、図14(A)の如く、視線を遮断する角度範囲は同図の遮光角範囲θR1およびθL1である。
これに対して、マイクロルーバー層1A及びマイクロルーバー層1Bを積層したマイクロルーバー積層体10とした場合においては、視線を遮断する角度範囲は、図15(B)の遮光角範囲θR2およびθL2となる。
そして、
θR1+θL1<θR2+θL2 ……〔式1〕
であるから、マイクロルーバー層1Aの単層、或いはマイクロルーバー層1Bの単層に比べて、これらを積層したマイクロルーバー積層体10の視線を遮断する角度範囲は広がる。
しかも、画像光の光量の低下は最小限に抑え得ることは、前記のとおりである。
【0082】
[マイクロルーバー層の積層形態]
図1、図2などでは、マイクロルーバー層1は、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの2層を積層した形態であったが、積層数はこれに限らず、所望の画像コントラスト向上性能、或いは視野角規制性能を発現するのに必要な層数を積層することができる。通常、上記積層数は2〜5である。
【0083】
図1、図14(A)及び図15(A)の如く、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの間に他層や空隙を介することなく、直接積層する形態とすることができる。
また、図2の如く、間に透明基材4aを介して、マイクロルーバー層1Aとマイクロルーバー層1Bとを積層する形態とすることもできる。この形態において、前記透明基材4aの厚みは、第1のマイクロルーバー層1A,第2のマイクロルーバー層1Bの厚みと同等以下とする。透明基材4aについては、後述する。
【0084】
[マイクロルーバー層の作製法]
以上説明したようなマイクロルーバー層1を作製する方法をその一例で説明する。以下説明する作製方法では、まず光透過部3を形成し、その後に光吸収部2を形成することによって、マイクロルーバー層1を作製する。
以下の説明で、透明基材4は、透明基材4a又は透明基材4bに該当する。
【0085】
まず、光透過部3は、硬化することによって光透過部3を構成するようになる光透過部形成組成物、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化可能なエポキシアクリレート等を用いて、作製され得る。具体的には、光吸収部2の形状(遮光パターン2P及び主切断面形状)に対応した凸部を有した型ロール、言い換えると、光透過部3の形状(平面視パターン及び主切断面形状)に対応した凹部を有した型ロールを準備する。この型ロールとニップロールとの間に透明基材4となるシートを送り込み、該シートの送り込みに合わせて、光透過部形成組成物を型ロールと透明基材4との間に供給する。その後、透明基材4上に供給された未硬化状態で液状の光透過部形成組成物が型ロールの凹部に充填されるように、型ロールおよびニップロールで該光透過部形成組成物を押圧する。このとき、型ロールの凹部の深さより厚くなるようにすると、すなわち、型ロールと透明基材4とが接触しないようにすると、光透過部形成組成物を透明基材4上に供給しておくことによって、上述したランド部3aが形成されるようになる。このようにして、透明基材4と型ロールとの間に未硬化で液状の光透過部形成組成物を充填した後、電離放射線を照射して前記光透過部形成組成物を硬化(固化)させることによって光透過部3を形成することができる。
【0086】
次に、光吸収部2は、硬化することによって母材をなすようになる電離放射線により硬化可能なウレタンアクリレート等と、光吸収粒子と、を含んだ未硬化で液状の光吸収部形成組成物を用いて、作製され得る。まず、先に形成された光透過部3上に光吸収部形成組成物を供給する。その後、光透過部3の表面に形成された溝、すなわち、型ロールの凸部に対応していた部分の内部に、ドクターブレードを用いながら、光吸収部形成組成物を充填しつつ、この溝の外に溢出した余分の光吸収部形成組成物を掻き落としていく。その後、光吸収部形成組成物に電離放射線を照射して硬化させることにより、光吸収部2が形成される。これにより、透明基材4、並びに、透明基材4上に光透過部3および光吸収部2を有したマイクロルーバー層1が作製される。
【0087】
〔透明基材〕
図2に例示する実施形態例では、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとは、間に透明基材4aを介して積層された形態であった。
この透明基材4aとしては、大別して2形態をとり得る。
(1)特に透明基材4aが、それ自体独立して、予め形成された、非接着性のシート(フィルム乃至は板も含む)状物からなる形態。このような透明基材4aの材料としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料、ガラス、セラミックス等の無機材料が用いられる。
(2)特に透明基材4aが、第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bと接着性を有する透明な接着剤からなる形態。このような接着剤の材料としては、第1のマイクロルーバー層1A,第2のマイクロルーバー層1Bの材料に応じて、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂等から選定する。
【0088】
なお、図2で示す如く、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの間以外の位置に、透明基材4bを積層することもできる。同図の透明基材4bは第2のマイクロルーバー層1Bに隣接して積層され、これは前記した作製法でわかるとおり、第2のマイクロルーバー層1Bの作製の際に積層されたものとすることができる。
この透明基材4bとしては、透明基材4aにおいて説明した(1)の形態、つまり、それ自体独立して予め形成された非接着性のシート(フィルム乃至は板も含む)状物からなる形態としての材料を適宜採用することができる。
【0089】
〔他の機能層〕
前述した第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bは、光学的機能を有し、これらの層は機能層の一種であるが、本発明によるマイクロルーバー積層体10は、これ以外のその他の機能を担う機能層を必要に応じて設けても良い。
機能層の位置は、マイクロルーバー積層体10の画像表示パネル側、画像観察者側、或いは、これらの両側などである。
機能層が反射防止層または防眩層の場合は、最も画像観察者側の最表面に配置するが、これ以外の機能層を配置する位置は適宜に設定される。
【0090】
機能層としては具体的には、例えば下記するものから1以上選択する。
光学機能層:反射防止層、防眩層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、ネオン光吸収層、着色層など。
非光学機能層:電磁波遮蔽層、帯電防止層、防汚層、耐衝撃層、ハードコート層など。
【0091】
〔変形形態〕
本発明のマイクロルーバー積層体10は、上記した形態以外のその他の形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0092】
[開口領域の形状]
開口領域Aの形状は、少なくとも五角形と六角形とを含むことが好ましい。開口領域Aに少なくとも五角形と六角形とを含むことによって、モアレを目立たなくさせることが出来ると共に、遮光パターン2Pの粗密による濃淡ムラもより確実に目立たなくさせることができる。更に好ましくは、開口領域Aの形状が五角形、六角形、及び七角形を含む様にする。
例えば、図4の遮光パターン2Pについて、合計4631個の開口領域A(多角形)について計測したところ、
3角形 0個
4角形 79個
5角形 1141個
6角形 2382個
7角形 927個
8角形 94個
9角形 8個
10角形以上 0個
であった。
この遮光パターン2Pについて、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数を計測したところ3.07であった。
【0093】
[単位パターン領域としての繰返し]
上述した実施形態では、マイクロルーバー積層体10中の第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの光吸収部2の全領域において、該光吸収部2が有する遮光パターン2Pによって画成される開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、図16の様に、その内部に於いて光吸収部2が有する遮光パターン2Pの全領域が、単位パターン領域Sを複数集合して遮光パターン2Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の開口領域Aが、所定の繰返周期のないパターンで配列されている領域からなるようにしてもよい。
すなわち、この形態に於いては、遮光パターン2Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで開口領域群が配列されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中でモアレも濃淡ムラも生じていない。この例において、一つの単位パターン領域S内における遮光パターン2Pのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
【0094】
特に最近では、画像表示パネル20の大型化が進んでおり、この様な大画面の画像表示パネル20に対しては、光吸収部2が有する遮光パターン2Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口領域Aが配列されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む形態とした方が、遮光パターン2Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0095】
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを図16に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰返しが存在する。図16の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1を以って単位パターン領域Sが繰り返される。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に開口領域AをM個有するとき、直線dj上の或る開口領域Aに注目すると、直線dj上では開口領域Aの個数がM個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の開口領域Aが常に存在するという規則性を有する。すなわち、開口領域Aの直線dj上での寸法tjについて、直線dj上で順番に数えてk番目の寸法tj(k)と、そのM番目の(k+M)番目の寸法tj(k+M)とが同じとなる、tj(k)=tj(k+M)の関係が成立する(k,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
【0096】
しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、開口領域Aとしての繰返周期ではなく、各単位パターン領域S内に於いて開口領域Aが繰返周期を上記特定方向に持つことではない。また、単位パターン領域Sとしての繰返周期は、画像表示パネルの画素配列の配列周期に対して寸法が例えば1000倍以上異なる為に、モアレが発生する様な近い寸法関係にない。
【0097】
図16に示された例では、マイクロルーバー積層体10が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で、各マイクロルーバー層の光吸収部2が有する遮光パターン2Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、図16の縦方向(図の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、図16の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
【0098】
〔C〕画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、図17及び図18に例示する様に、上記の様なマイクロルーバー積層体10と、画像表示パネル20とを備える画像表示装置100である。本画像表示装置100は、上記画像表示パネル20以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
画像表示パネル20は、プラズマ画像表示パネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の平面画像を表示可能な表示パネルである。また、表示面が平面のブラウン管等でも良い。画像表示パネル20としては、ディスプレイ駆動回路等の各種回路、該駆動回路と画像表示パネル本体間の配線、これらを一体化するシャーシ、フレーム等を含んでいても良い。従って、画像表示パネル20は、「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
【0099】
本マイクロルーバー積層体10の画像表示パネル20に対する配置は、図17(A)の様に、画像表示パネル20の画像を観察する観察者V側の前面側(画面側)でも良いし、これとは逆に、図17(B)の様に、画像表示パネル20の背面側でも良いし、或いは前面側と背面側の両方の側でも良い。なお、背面側に配置する場合は、画像表示パネル20を背面から照明する光源(図示は略すが、図17(B)に於いて、マイクロルーバー積層体10の図面下方に位置する)からの光を受けて画像表示パネル20を照明する為の部材となる。また、背面側に配置する場合は、画像コントラスト向上機能、視野角規制機能ではなく、光源からの光源光の集光機能などを発現する。
【0100】
また、画像表示装置100は、更に、機能層30を備えていても良い。機能層30は、例えば前記した他の機能層として述べた機能層を有する光学部材等である。例えば、電磁波遮蔽層などを有する光学フィルタ等である。機能層30を配置する位置は、図18に示す様に用途に応じた位置とする。
図18(A)は、画像表示パネル20と、この画像表示パネル20の観察者V側に配置したマイクロルーバー積層体10との間に、機能層30を配置した形態である。図18(B)は、画像表示パネル20の観察者V側に本マイクロルーバー積層体10を配置し、このマイクロルーバー積層体10の観察者V側に機能層30を配置した形態である。図18(C)は、画像表示パネル20の観察者V側に本マイクロルーバー積層体10を配置し、機能層30は逆に画像表示パネル20の背面側に配置した形態である。
【0101】
〔D〕用途
本発明によるマイクロルーバー積層体10は、各種画像表示パネルの観察者側の前面(画面)側、或いは逆側の背面側に配置する用途が好適である。また、このマイクロルーバー積層体10を備える画像表示装置100は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、デジタルフォトフレーム等の画像表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0102】
1 マイクロルーバー層
1A 第1のマイクロルーバー層
1B 第2のマイクロルーバー層
2 光吸収部
2P 遮光パターン
2Pd 二重に重ね合わされたときの遮光パターン
3 光透過部
3a ランド部
4 透明基材
4a 透明基材
4b 透明基材
5A 第1の中間積層体
5B 第2の中間積層体
10 マイクロルーバー積層体
20 画像表示パネル
30 機能層
40 従来のマイクロルーバーシート
41 従来のマイクロルーバー層
42 光吸収部
43 光透過部
44 無駄部分
100 画像表示装置
A 開口領域
B 分岐点
BP 母点
L 境界線分
Lt ライン部(境界線分の集合)
S 単位パターン領域
V 観察者
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロルーバー層が複数積層されたマイクロルーバー積層体と、これを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネルなどの画像表示パネルの前面フィルタとして、マイクロルーバー層を有するマイクロルーバーシートが使われている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
図19の断面図で示す従来のマイクロルーバーシート40を構成するマイクロルーバー層41は、典型的には、断面が楔形状の柱状体からなる光吸収部42と光透過部43とが延在方向を互いに平行に交互にシート面方向に配置され、シート面に垂直な方向から見るとストライブ状となる構造を有する。同図では、光吸収部42は図面左右方向のY軸方向に一定の周期で配列されている。
画像表示パネル20の観察者V側に配置されたマイクロルーバー層41は、光吸収部42が太陽光や室内照明光などの不要な光Laは吸収し、光透過部43が必要とされる画像光Ldを画像表示パネル20側から観察者V側に透過する。
【0004】
こうした光線制御機能によって、マイクロルーバーシート40は、外光が画像光に混入して画像のコントラストが低下するのを抑制しコントラストを高めるコントラスト向上フィルタ、或いは、画像光を特定の狭い視野角内のみに出射する覗き見防止フィルタなどとして使われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−372161号公報
【特許文献2】特開2009−539139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マイクロルーバー層41の光吸収部42は、図20(A)に示す様にストライプ状にY軸方向に1次元配列した場合では、繰返周期Tyを有し、図20(B)に示す様に正方格子状にX軸方向及びY軸方向に2次元配列した場合では、繰返周期Tx及び繰返周期Tyを有する。
このため、マイクロルーバーシート40を、画像表示パネルと組み合わせて画像表示装置としたときに、マイクロルーバー層41の繰返周期と画像表示パネルを構成する画素の繰返周期とが干渉して、モアレが生じることがある。
【0007】
上記モアレは、光吸収部42の配列方向と、画像表示パネルの画素の配列方向とを一致させずに、3〜45°程度ずらす、いわゆるバイアス角を設ければ軽減させることは出来る。
ただ、最適なバイアス角は、繰返周期以外に、画素サイズ、画素間寸法など、組み合わせる画像表示パネルの設計仕様毎に異なる。このため、マイクロルーバー層41の設計仕様も画像表示パネル毎の多品種小ロット仕様となり、生産性及び製品コストの点で難があった。
【0008】
多品種小ロット仕様となる点の改善策として、製造途中では製品毎にバイアス角を決めないで、図21で示すように、連続帯状(ウェブ状)で、光吸収部42の延在方向が流れ方向MDに平行(繰返周期を有する配列方向は幅方向TDに平行)な中間製品40wから、枚葉状のマイクロルーバーシート40を、所要のバイアス角θに応じて流れ方向MDに対して斜めに切り出す方法もある。
しかし、この方法は、図21から見てとれるように、無駄部分44が多いという問題がある。
【0009】
そこで、本発明者らは、モアレが生じない様にする為に、マイクロルーバー層に於ける光吸収部の配列を、完全にランダムパターン化することを目指し、画像表示装置関連分野に於いて用いられる公知のランダムパターンを各種模索した。
【0010】
例えば、電磁波シールド用の導電性パターンとして、国際公開第2007/114076号のパンフレットでは、有機溶剤処理と酸処理とを組み合わせた化学処理によって形成した、網目状の導電性パターンを提案している。この導電性パターンは完全にランダムパターン化している。しかし、この網目状の導電性パターンではモアレは解消するが、パターン自体に粗密が存在し、その粗密による濃淡があり、画像表示パネルに適用したときに、明度の濃淡ムラが生じる。
一方、特開平11−121974号公報では、モアレ防止の為に、これも電磁波シールド用の導電性パターンではあるが、配列の周期性を一部は残し、一部はランダム化したパターンを提案している。しかし、この一部ランダム化したパターンでは、濃淡ムラは軽減するが、モアレが残る。
これらのランダムパターンに起因する濃淡ムラや残留モアレは図19や図20の如きマイクロルーバー層41に適用した場合も同様であった。
このため、従来のモアレ解消技術では、モアレの解消と、濃淡ムラの解消とを、両立させることが出来なかった。
【0011】
また、マイクロルーバー層中の光吸収部は、そのアスペクト比(高さ/幅)が大きいほど、光線制御機能が増大し高性能のマイクロルーバー機能を実現できることが知られている。しかし、実際にはその製造法、及び製造コストなどの観点から制約がある。
【0012】
以上のような問題点を解決策として、本発明者らは、特願2011−52939号にて、光吸収部を特定の非周期の遮光性メッシュとしたマイクロルーバーシートを提案した。ただ、光吸収部の配置に特定の非周期性パターンを導入することで、モアレと濃淡ムラを同時に解消できても、光吸収部自体の製造方法は、従来同様に、ワイピング法や印刷法では、高いアスペクト比を実現することは困難であった。
【0013】
すなわち、本発明の課題は、マイクロルーバー層を有するマイクロルーバーシートについて、その光吸収部の周期的配列に起因するモアレ発生を解消すると共に、その配置の粗密による濃淡ムラも解消し、これらを両立させた上で、さらに光線制御機能を高めることである。また、こうした性能を有する画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明では、次の様な構成のマイクロルーバー積層体と画像表示装置とした。
(1)光吸収部とこの光吸収部以外の部分の光透過部とからかなるマイクロルーバー層であって、
前記光吸収部をシート面に垂直な方向から見たときの平面視形状である遮光パターンが、
光透過部に対応する多数の開口領域を画成し、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口領域が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンであり、
このマイクロルーバー層を、遮光パターンが互いに独立な、第1のマイクロルーバー層と第2のマイクロルーバー層との少なくとも2層以上積層した、マイクロルーバー積層体。
(2)第1のマイクロルーバー層と第2のマイクロルーバー層との間に第1の透明基材が積層され、第2のマイクロルーバー層の前記第1のマイクロルーバー層の側とは反対側に第2の透明基材が積層された、上記(1)のマイクロルーバー積層体。
(3)上記(1)または(2)のマイクロルーバー積層体と画像表示パネルとを備える画像表示装置。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明のマイクロルーバー積層体によれば、マイクロルーバー層の光線制御機能によって、コントラスト向上機能、視野角制御機能が得られる上、マイクロルーバー層の光吸収部の遮光パターンが周期性がない特定のパターンであるために、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると共に、遮光パターンの粗密による濃淡ムラも極めて効果的に目立たなく出来、モアレ解消と濃淡ムラ解消とを両立させることができる。さらに、マイクロルーバー層を2層以上積層してあるので、積層体全体として光吸収部を高アスペクト比にしたときと同様の高い光線制御性能が得られる。
(2)本発明の画像表示装置によれば、上記したマイクロルーバー積層体の効果が得られ、モアレも濃淡ムラも共に発生せず、コントラスト向上性能や視野角制御性能において高い光線制御性能が得られる装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるマイクロルーバー積層体の一実施形態を説明する斜視図(A)と断面図(B)。
【図2】本発明によるマイクロルーバー積層体の別の実施形態を例示する断面図。
【図3】遮光パターンの一例を示す平面図。
【図4】遮光パターンに繰返周期が存在しないことを説明する平面図。
【図5】遮光パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図6】遮光パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図7】遮光パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図8】決定された母点群の分散の程度を絶対座標系と相対座標系で説明する図。
【図9】決定された母点からボロノイ図を作成して遮光パターンを決定する方法を示す図。
【図10A】本発明による遮光パターンを示す平面図。
【図10B】画像表示パネルの画素配列を示す平面図。
【図10C】図10Aと図10Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図11A】従来のマイクロルーバー層が有する遮光パターンを示す平面図。
【図11B】画像表示パネルの画素配列を示す平面図。
【図11C】図11Aと図11Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図12】光吸収部の主切断面形状の各種形状を例示する断面図。
【図13】光吸収部の主切断面形状における寸法の定義を説明する断面図。
【図14】マイクロルーバー層の積層による光線制御機能の増大を外光について説明する断面図であって、(A)は単層、(B)は2層の場合。
【図15】マイクロルーバー層の積層による光線制御機能の増大を画像光について説明する断面図であって、(A)は単層、(B)は2層の場合。
【図16】遮光パターンがマイクロルーバー積層体の寸法の1/3以上の大きさの単位パターン領域として繰り返された一例を示す平面図。
【図17】本発明による画像表示装置の実施形態例を示す断面図。
【図18】本発明による画像表示装置の別の実施形態例を示す断面図。
【図19】従来のマイクロルーバーシートに於ける光線制御作用を説明する断面図。
【図20】従来のマイクロルーバーシートの光吸収部が繰返周期を有することを説明する平面図。
【図21】従来のマイクロルーバーシートが繰返周期を有するが故にバイアス角付きのものを切り出すときに生じる無駄を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0018】
〔A〕用語の定義:
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
「シート面」とは、シート状のマイクロルーバー積層体10を全体的かつ大局的に見た場合において、この積層体10の平面方向と一致する面のことを意味する。したがって、マイクロルーバー層1A,1Bの層面と平行な面でもある。
「一方の面1p」とは第1のマイクロルーバー層1A,第2のマイクロルーバー層1Bの表裏面のうちのいずれか一方の面を意味し、「他方の面1q」は表裏面のうち「一方の面1p」ではない面を意味する。「一方の面1p」と「他方の面1q」との面それ自体の区別はない。
【0019】
「主切断面形状」とは、「シート面」に立てた法線nに平行な断面のうち、光吸収部2乃至はその遮光パターン2Pの注目部分における延在方向に直交する断面として定義される「主切断面」に於ける形状のことを意味する。
「平面視形状」とは、「シート面」に平行な面に於ける形状のことを意味する。言い換えると、「平面視形状」とは、「シート面」に立てた法線nの方向から見た形状のことを意味する。
【0020】
「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0021】
〔B〕マイクロルーバー積層体:
先ず、本発明によるマイクロルーバー積層体を、図1に示す一実施形態例を参照して説明する。
【0022】
図1(A)の斜視図及び図1(B)の断面図で例示する本発明のマイクロルーバー積層体10は、第1のマイクロルーバー層1Aと、この第1のマイクロルーバー層1Aに隣接して第2のマイクロルーバー層1Bが積層され、都合2層のマイクロルーバー層が積層された2層構成のマイクロルーバー層1を有する積層体である。
【0023】
第1のマイクロルーバー層1A、及び第2のマイクロルーバー層1Bとは、共に、その光吸収部2が、本発明に特有の非周期的な遮光パターン2Pを有する。
第1のマイクロルーバー層1A、及び第2のマイクロルーバー層1Bは、共に、光吸収部2と、この光吸収部2以外の層部分に形成された光透過部3とから構成される。
【0024】
それぞれの光吸収部2は、シート面に垂直な法線nの方向から見たときの平面視形状が、本発明特有の遮光パターン2Pとなっている。この遮光パターン2Pは第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとで、互いに独立なパターンとなっている。このため、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとが隣接して積層されていても、それぞれが有する遮光パターン2Pは、部分的には重なっても全ての部分で重なることはない。また、それぞれが有する遮光パターン2Pによって画成される光透過部3は、部分的には重なっても全ての部分で重なることはなく、光透過部3の全領域が光吸収部2と重なり光透過部3による透過性が完全に遮蔽されることはない。
【0025】
さらに、遮光パターン2Pは、光透過部3に対応する多数の開口領域Aを画成し、二つの分岐点Bの間を延びて前記開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口領域Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。
【0026】
このため、本実施形態では、上記光吸収部2は従来のような周期的配列ではなく、その遮光パターン2Pが非遮光パターンであるために、画像表示パネルと組み合わせた時に画素配列との干渉によるモアレも、遮光パターン2P自体の濃淡ムラも生じず、モアレと濃淡ムラとを極めて効果的に抑制しながら、マイクロルーバー層1による光線制御機能を発揮させることが可能となる。
しかも、マイクロルーバー層1は、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとが2層が積層された複層構成の積層体としてある為に、実質的に光吸収部2のアスペクト比を高くでき、高い光線制御機能を発揮させることができる。
【0027】
本発明のマイクロルーバー積層体10は、各種変形形態をとり得る。ここで一例を示せば、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの間に透明な層を挟んだ構成としても良い。
図2は、本発明によるマイクロルーバー積層体10の別の実施形態例を示すものであり、同図のように、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの間には、透明基材4aを積層しても良い。同図では、さらに、第2のマイクロルーバー層1Bの透明基材4aに接する側の面とは反対側の面に、別の透明基材4bを積層した形態である。
この実施形態によれば、第1のマイクロルーバー層1Aは透明基材4aに積層した中間積層体5Aとして用意し、第2のマイクロルーバー層1Bは透明基材4bに積層した中間積層体5Bとして用意し、これら中間積層体5Aと中間積層体5Bとを積層することで、マイクロルーバー積層体10を容易に製造することができる。
【0028】
以下、本発明に特徴的な遮光パターン2Pについて先ず詳細に説明し、その後で、各構成要素の材料、形成法などについて説明する。
【0029】
〔マイクロルーバー層〕
マイクロルーバー層1は、少なくとも2層の、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとからなる複層構成の層である。図1に示す本実施形態では、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの2層から、マイクロルーバー層1が構成されている。
【0030】
マイクロルーバー層1を構成する第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bは、平面視形状が前記した特定のパターンからなる遮光パターン2Pを呈する光吸収部2と、この光吸収部2以外の部分を占める光透過部3とからなる。光吸収部2が不要光を吸収し、光透過部3が必要光を透過させる。光吸収部2と光透過部3とは、第1のマイクロルーバー層1A或いは第2のマイクロルーバー層1Bをシート面に立てた法線nに平行な断面であって、任意位置で任意方向の断面において、交互に位置するようになっている。
【0031】
第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bとは互いに独立な遮光パターン2Pを有する。この遮光パターン2Pは光吸収部2の平面視形状として形成され、この光吸収部2以外の第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの部分が光透過部3となっている。
【0032】
第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bを構成する光吸収部2及び光透過部3については、従来公知の材料及び形成法によることができる。そこで、これらにつては、追って説明することとし、本発明の特徴的な要件である、光吸収部2が呈する遮光パターン2Pについて先に説明する。
【0033】
[遮光パターンとこれにより画成される開口領域]
遮光パターン2Pは、第1のマイクロルーバー層1A,或いは第2のマイクロルーバー層1Bを、層面乃至はシート面の法線方向(図でZ軸方向)から観察した場合における、光吸収部2の平面視形状である。以下、この遮光パターン2Pについて、図3および図9を主として参照しながら説明する。
【0034】
遮光パターン2Pは、図3に示す如く、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満であり、且つ、前記境界線分Lで画成された前記開口領域Aに繰返周期を持つ方向が存在しない領域を含んでなるパターンとなっている。
なお、遮光パターン2Pは、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない配列となって、モアレ防止効果が十分に発現される為には、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でないようなパターンとすると良い。好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの50%以上が互いにその面積及び形状が異なるようにする。より好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aを遮光パターン2Pの全域に亙って、全て互いにその面積及び形状が異なるようにする。これは、言い換えると、遮光パターン2Pに含まれる開口領域Aのうち、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一となる開口領域Aの形状及び面積がすべて同一ではなく、少なくとも一部は他と異なるものになると言うことを意味する。なお、ここで周囲を囲繞する境界線分Lの数とは、開口領域Aが多角形である場合は、その多角形の角数と一致する。また、以上に於いて、2つの開口領域A同士が互いに合同な図形であって且つその向きが異なる場合も、これらの2つの開口領域Aの形状は互いに異なると見做す。
【0035】
図3および図9に示すように、遮光パターン2Pのライン部Ltは、多数の分岐点Bを含んでいる。遮光パターン2Pのライン部Ltは、両端において分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成されている。すなわち、遮光パターン2Pのライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びる多数の境界線分Lから構成されている。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続されていくことにより、開口領域Aが画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分Lで囲繞され、区画されて1つの閉領域としての開口領域Aが画成されている。
【0036】
なお、図3および図9に示すように、ライン部Ltが境界線分Lのみから構成されているため、開口領域Aの内部に延び入って行き止まりとなるライン部Ltは存在しない。このような態様によれば、マイクロルーバー積層体10に十分な不要光吸収機能と高い必要光透過機能とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
【0037】
一方、モアレの発生を防止するため、本実施形態によるマイクロルーバー積層体10に於ける第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bが有する、それぞれの遮光パターン2Pでは、その全領域が、開口領域Aが繰返周期を有する方向が存在しないようになっている。モアレを確実に解消する為には、遮光パターン2Pの全領域がこのような領域のみから構成されていることが好ましい。本実施形態はこの様な構成からなる。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単に遮光パターン2Pのパターンを不規則化するのではなく、遮光パターン2Pの開口領域Aが一定の規則性を持った繰返周期で並べられた方向が存在しないように遮光パターン2Pのパターンを画成することにより、光吸収部2が周期的配列された構成の従来のマイクロルーバーシート40と、周期的画素配列を有する画像表示パネル20とを重ねた際に生じ得るモアレを、極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると判明した。
【0038】
[繰返周期の不存在]
図4は、遮光パターン2Pで画成される多数の開口領域Aが、一定の周期で配置されている領域が存在せず、繰返周期が存在しないことを説明するXY平面に平行なシート面に於ける平面図である。このシート面の面内において、同図では、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diが、ライン部Ltの境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの開口領域Aの直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1の開口領域Aに対して直線di上で隣接する別の開口領域Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、任意位置で任意方向の直線diと遭遇する多数の開口領域Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共に遮光パターン2Pとは分離して描いてある。
【0039】
この直線diを図4で図示のものから任意の位置で任意の角度回転させて別の方向について各開口領域Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。
すなわち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された開口領域Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
言い換えると、開口領域Aの配置において、任意位置を通る任意方向の仮想的線分di上での開口領域Aの寸法tiの並びの数列が非周期関数となる。すなわち、t(i)=t(i+M)となるMが存在しない(i,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
このように、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しないことを、開口領域Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない、と表現する。
【0040】
さらに、本実施形態によるマイクロルーバー積層体10の第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの光吸収部2が有する遮光パターン2Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている。このように一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、遮光パターン2Pの配列パターンを、図20(B)に示された正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、ハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nを3.0≦N<4.0とした上で、開口領域Aの配列を不規則化して、開口領域Aが繰返周期を持って並べられた方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、その結果、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0041】
なお、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、遮光パターン2P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの開口領域Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述の寸法例で開口領域Aが形成されている遮光パターン2Pにおいては、10mm×10mmの部分)に含まれる分岐点Bについて延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該遮光パターン2Pについての一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
【0042】
実際に、図3に示されたマイクロルーバー積層体10の第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの光吸収部2を構成する遮光パターン2Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、図3の遮光パターン2Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
【0043】
[画像表示パネルの画素配列との干渉によるモアレ発生状況]
図10Aには、図3に示されたような遮光パターン2Pを重ね合わせて、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとが積層されたマイクロルーバー積層体10となったときの、遮光パターン2Pdが示されている。
そして、図10Cには、図10Aに示された遮光パターン2Pdを、図10Bに示された画像表示パネル20に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図10Cからも理解され得るように、図10A示された遮光パターン2Pdを実際に作製して画像表示パネル20の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0044】
ここで、図10Bで示された画像表示パネル20の画素配列は、画像表示パネル20に於ける典型的な画素配列である。図10Bに示す様に、この画像表示パネル20では、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)RPと、緑色に発光する副画素GPと、青色に発光する副画素BPと、から構成されている。すなわち、画像表示パネル20はカラーで画像を形成することができる。図10Bに示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、それぞれ、一つの方向(図10Bでは縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、当該一つの方向に直交する方向(図10Bでは横方向)に、一つずつ、順に並べられている。なお、図10Bは、画像表示パネル20の画像形成面(出光面、即ち画面)への法線方向、言い換えると、画像表示パネル20のパネル面への法線方向から当該画像表示パネル20を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
【0045】
一方、周期的な遮光パターン42Pで画成される開口領域Aに一定の繰返周期が存在する場合のモアレ発生を例示するのが図11A〜図11Cである。ここでは、周期的な遮光パターン42Pは、一定の繰返周期を有することを明示的に示す意味で、以下において、周期的遮光パターン42Pとも言うことにする。
【0046】
図11Aに図示したものは、光吸収部42がストライプ状に形成され周期的遮光パターン42Pを有するマイクロルーバーシート40であり、本発明のマイクロルーバー積層体10とは異なるものである。
図11Cには、図11Aに示された周期的遮光パターン42Pを、図11Bに示された画像表示パネル20(図10Bで示したものと同じである)に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図11A、図11B及び図11Cからも理解され得るように、周期的遮光パターン42Pを有するマイクロルーバーシート40が画像表示パネル20の画素配列上に配置されると、光吸収部42の周期的遮光パターン42Pと画素の規則的パターンとの干渉によって、明暗の筋(図11Cに示された例では、左上から右下に延びている明暗の筋)が視認されるようになる。
【0047】
なお、図11Aおよび図11Cに示された例では、周期的遮光パターン42Pのストライプを構成する多数の直線の配列方向が、画素Pの配列方向に対して、数度傾斜している。この傾斜角をバイアス角(度)と呼称する。このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。但し、図11Cに縞状模様が視認されることからも理解され得るように、モアレ発生の程度は単にバイアス角のみで決まる訳では無く、この他、画素P及び周期的遮光パターン42Pの繰返周期比、周期的遮光パターン42Pの線幅等の要因にも依存する。周期的遮光パターン42Pのバイアス角のみでモアレを解消しようとすると、画像表示パネル20の設計仕様毎に応じてバイアス角の異なるマイクロルーバー積層体を用意する必要が有る。
【0048】
[遮光パターンのパターン形状の作成方法]
ここで、本発明固有の上記遮光パターン2Pのパターンを作製する方法の一例を以下に説明する。
【0049】
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定して遮光パターン2P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図3に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0050】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標と区別する為、頭に「絶対」を付記する)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0051】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0052】
以上の手順で、遮光パターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。遮光パターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、遮光パターン2Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0053】
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挾んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
【0054】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標形上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がRAVG−ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
なお、図8(D)からわかる様に、任意の1母点から見た他の母点の方位(角度)分布は等方的(乃至は略等方的)である。このことが、これらの母点(群)から生成される遮光パターン2Pに於ける開口領域Aの方位(角度)分布が等方的(乃至は略等方的)となることに対応する。
【0055】
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口領域Aの大きさ(乃至は開口領域Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
この様に構成することにより、遮光パターン2Pを目視した際の濃淡(明暗)ムラが、より一層、効果的に解消する。遮光パターン2Pの目視時の濃淡ムラを、実質上、目視不能とし、且つ遮光パターン2Pの非周期性によるモアレ防止性とも両立させる為には、開口領域Aの大きさDの最大値をDMAX、最小値をDMINとしたときに、当該大きさDの分布範囲ΔD=DMAX−DMINが大きさDの平均値DAVGに対して、
0.1≦ΔD/DAVG≦0.6
より好ましくは、
0.2≦ΔD/DAVG≦0.4
とする。
ここで、開口領域Aの大きさDは、全ての開口領域Aについて、以下の定義とする。
(1)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描ける場合は、この開口領域Aの外接円直径を以って、大きさDとする。
(2)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描け無い場合は、この開口領域Aに属する2分岐点B間の距離の最大値を以って、大きさDとする。
【0056】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを大きくすることができる。
【0057】
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0058】
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、遮光パターン2Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。この際、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを画成するようになる。
【0059】
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、作成された遮光パターン2Pを呈する光吸収部2によって得られる不要光吸収性能と光透過部3の必要光透過性能とを勘案して、決定される。以上のようにして、遮光パターン2Pのパターンを決定することができる。
【0060】
以上のような本実施形態によれば、マイクロルーバー積層体10の第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bにおける光吸収部2が有する遮光パターン2Pが、二つの分岐点Bの間を延びて多数の開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成されており、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっており、且つ、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しないようになっている。この結果、規則的(周期的)に画素Pが配列された画像表示パネル20に、このマイクロルーバー積層体10を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0061】
[マイクロルーバー層の構成材料]
次に、第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの構成材料について説明する。構成材料は、従来公知のマイクロルーバー層と同様とすることができる。
【0062】
光吸収部2は、母材(バインダー樹脂)と、母材中に分散された光吸収粒子とを有するものとすることができる。光吸収粒子は、可視光を吸収する機能を有した粒子である。これにより、マイクロルーバー層1において、光透過部3と光吸収部2との界面で反射せずに光吸収部2内に入射した光を光吸収粒子で吸収することができる。
【0063】
(光吸収部)
光吸収粒子としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、画像表示パネルからの放出光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用することもできる。光吸性粒子は、具体的には、カーボンブラック、グラファイト等の炭素、黒色酸化鉄、酸化銅等の金属酸化物等の顔料、アニリンブラック等の染料、或いは、これら顔料或いは染料等で着色した樹脂微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した樹脂微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく、より具体的には、カーボンブラックを含有した架橋アクリル微粒子や、カーボンブラックを含有した架橋ウレタン微粒子等が好ましく用いられる。光吸収粒子は、通常、光吸収部2中に3〜30質量%の範囲で含まれ得る。
【0064】
光吸収部2に可視光吸収機能を付与する手段は、光吸収粒子以外の手段でも良い。例えば、顔料や染料によって、金属や樹脂からなる光吸収部2の表面全体を着色することで、光吸収部2の全体として光吸収機能を発揮するようにしてもよい。
【0065】
前記母材としては、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化可能な電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などがある。
【0066】
(光吸収部の主切断面形状)
光吸収部2の主切断面形状は、図1などに示された例に限られず、例えば図12に示すように、種々の形状が可能である。
【0067】
図12(1)の光吸収部2の主切断面形状は、三角形形状となっている。この三角形形状における底辺と、第1のマイクロルーバー層1A乃至は第2のマイクロルーバー層1Bの少なくとも一方の面1pとが一致している。
図12(2)の光吸収部2の主切断面形状は、台形形状となっている。台形形状は、互いに平行な上底とこの上底よりも大きい下底と、上底及び下底を結ぶ2つの斜辺とを有する。同図の台形は等脚台形である。この台形形状における下底と、第1のマイクロルーバー層1A乃至は第2のマイクロルーバー層1Bの少なくとも一方の面1pとが一致している。
図12(3)の光吸収部2の主切断面形状は、台形形状または三角形形状の斜辺(光吸収部2と光透過部3との界面)が、1つの辺からではなく、2つの辺から構成されている。この斜辺は折れ線状である。この略台形形状の下底または略三角形における底辺が、第1のマイクロルーバー層1A乃至は第2のマイクロルーバー層1Bの少なくとも一方の面1pが一致している。さらに、図示はしないが、斜辺が3以上の線分からなる折れ線からなる形状でも良い。
図12(4)の光吸収部2の主切断面形状は、図12(3)で例示された形状において、斜辺を曲線化した形状である。
図12(5)の光吸収部2の主切断面形状は、図1などで例示した矩形状の例である。この矩形状の一辺と、第1のマイクロルーバー層1A乃至は第2のマイクロルーバー層1Bの少なくとも一方の面1pとが一致している。
【0068】
(光吸収部の主切断面形状に於ける寸法の具体例)
光吸収部2の寸法の具体例として、図13(A)を参照して、その一例を以下に示す。光吸収部2の主切断面形状に於ける最大幅Wmaxは5〜100μmとすることができる。光吸収部2の主切断面形状に於ける高さHは20〜200μmとすることができる。
この高さHと、第1のマイクロルーバー層1A乃至は第2のマイクロルーバー層1Bの総厚みTとの関係では、0.8T≦H≦Tの関係を満たすようにしてもよい。図13(B)の様に、H<Tとするときは、光透過部3はランド部3aを有するマイクロルーバー構造となる。
【0069】
(光吸収部の平面視形状に於ける寸法の具体例)
光吸収部2が不要光吸収機能をある程度確保するだけでなく、光透過部3が画像表示パネルからの画像光はある程度の高い必要光透過機能を確保する観点から、光吸収部2の遮光パターン2Pにおける多数の開口領域Aが占める領域の総割合(以下において「開口率」とも呼ぶ)は50〜90%となるように、遮光パターン2Pの線幅、つまり境界線分Lの線幅と、開口領域Aの大きさ乃至面積を調節することが好ましい。
開口領域Aの大きさDは5〜1000μmとすることができる。
【0070】
(光透過部)
光透過部3は、前述した光吸収部2における母材と同様の樹脂を用いて形成することができる。例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などの電離放射線硬化性樹脂である。
【0071】
光透過部3は、図13(B)の例では、ランド部3aを有している。ランド部3aは、光吸収部2を間に挟んでその両側の光透過部3同士を連結し一体化する連結部である。
このランド部3a上に、光吸収部2とランド部3aを除いた残りの部分の光透過部3が今後に配置される。
ランド部3aは、後述するマイクロルーバー層の製造方法に起因して、光透過部3の一部として一体的に形成され得る。ただし、光透過部3において、このランド部3aは必須ではない。したがって、ランド部3aが省略された光透過部3でも良く、この場合は、第1のマイクロルーバー層1A或いは第2のマイクロルーバー層1Bの厚みTと光吸収部2の高さHとは同じ寸法となる。
【0072】
(屈折率の設定)
光透過部3をなす材料の屈折率、及び、光吸収部2をなす材料の屈折率は、適宜選択され得る。例えば、光吸収部2の幅が観察者側に向けて広がっていく形態、つまり幅Wminの部分よりも幅Wmaxの部分の法が観察者側に近い形態、においては、光吸収部2の母材の屈折率Nb及び光透過部3をなす材料の屈折率Npは適宜の値に設計される。
【0073】
光吸収部2の母材の屈折率Nbが、光透過部3をなす材料の屈折率Npよりも小さく設定された態様の場合、画像表示パネルからの画像光のうち、光吸収部2に当たること無く光透過部3を通過する光は、そのまま吸収されること無くマイクロルーバー層1を透過する。画像光のうち光吸収部2の断面に於ける側面に当たる光は、この側面の法線に対する入射角が臨界角を超過する光は、光透過部3と光吸収部2との界面(前記側面)で吸収されること無く全反射し得る。この全反射した光が画像光の出射角度(画像表示パネルの表示面の法線に対する角度)範囲を拡大し、画像表示装置に適切な視野角を付与することが可能となる。
【0074】
一方、日光等の不要光は前記該斜面の法線に対する入射角が臨界角未満となることが多く、このため全反射しないで、入射光の殆ど(通常、入射光の95%程度)が光吸収部2の内部に侵入し、光吸収粒子に吸収される。この結果、視野角拡大効果及び外光存在下に於ける画像コントラスト向上効果の両効果を奏することができる。なお、この観点において、光透過部3と光吸収部2との界面がマイクロルーバーシート10のシート面への法線方向に対してなす角度は、0°より大きく10°以下となっていることが好ましく、0°より大きく6°以下となっていることが更に好ましい。尚、この場合、光吸収部2の母材の屈折率Nbは、光透過部3をなす材料の屈折率Npよりも0.12〜0.5だけ小さく設定することが好ましい。
【0075】
また、光吸収部2の母材の屈折率Nbが、光透過部3をなす材料の屈折率Npよりも大きく設定される態様の場合、画像光のうち、光透過部3を通過する光は、前記態様と同様に、そのまま吸収されないで透過する。一方、光吸収部2の断面に於ける側面に入射する光は、前記側面で全反射せずに吸収される。この為、画像光の出射角度範囲を縮小し(狭め)、画像表示装置の視野角を制限することが可能となる。一方、日光等の不要光は前記側面の法線に対する入射角如何によらず、全反射せずに殆どは光吸収部2の内部に侵入し吸収される。この結果、視野角抑制効果及び外光存在下に於ける画像コントラスト向上効果の両効果を奏する。この態様は、個人用途や秘密情報表示用の画像表示装置に於ける覗き見防止用途に好適である。
【0076】
[複数のマイクロルーバー層の積層による光線制御機能の増大]
図14及び図15を参照して、複数のマイクロルーバー層を積層することで光線制御機能が増大することを説明する。ここでは、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの2層を積層した形態である。
図14及び図15に於いては、光吸収部2は、その光学的挙動(作用効果)を説明するのに最低限必要な部分のみを描画し、その他の部分、構成要素は適宜図示を省略する。
【0077】
(コントラスト向上効果)
マイクロルーバー層1Aのみ単層の場合、図14(A)の如く、日光等の外光のうち外光LR1と、マイクロルーバー層1Aの(光透過部3)の一方の面1pとの間の角度範囲θR1、及び外光LL1と一方の面1pとの間の角度範囲θL1の範囲の外光が、光吸収部2の側面2Sで吸収、遮光される。
一方、画像表示パネルの画面側からマイクロルーバー層1Aの他方の面1qに入射する画像光は、図15(A)の如く、光吸収部2の外表面(画像表示パネル側の面)、すなわち、遮光領域A1,A2に入射する画像光LS1,LS2は吸収、遮光される。
但し、光吸収部2の平面視における面積占有率は少なく、通常10〜30%である為、70〜90%の画像光LTは透過光として出射する。この結果、光吸収部2による遮光量は、外光(LR1,LL1,・・・)については多く、画像光(LS1,LS2,・・・)については少なくなり、画像コントラスト(白画像輝度/黒画像輝度)は向上する。
【0078】
次に、マイクロルーバー層1Aとマイクロルーバー層1Bとを積層した図14(B)の如き本発明の形態について説明する。
マイクロルーバー層1Aのみの単層の場合には、遮光されずに透過していた外光のうち、図14(B)のLR1とLR2との間の(角度で入射する)外光、および、LL1とLL2との間の外光については、より画像表示パネル側に積層されたマイクロルーバー層1Bの光吸収部2に当たって吸収、遮光される。
すなわち、図14(B)に図示する如く、マイクロルーバー層1Aのみの単層の場合の遮光角範囲θR1+θL2よりも、マイクロルーバー層1Aおよびマイクロルーバー層1Bを積層したマイクロルーバー積層体10の遮光角範囲θR2+θL2は大きく、
θR1+θL1<θR2+θL2 ……〔式1〕
となる。
【0079】
また、画像光に対しては、図15(B)に図示される如く、マイクロルーバー層1A単層の場合の遮光領域A1+A2+・・・よりも、マイクロルーバー層1A及びマイクロルーバー層1Bを積層したマイクロルーバー積層体10の遮光領域(A1+A2+・・)+(A3+A4+A5+・・)は大きく、
(A1+A2+・・)<(A1+A2+・・)+(A3+A4+A5+・・) ……〔式2〕
となる。
【0080】
ただし、通常の設計に於ける、光吸収部2の境界線分Lの最大幅Wmax、厚み方向の高さH、および大きさDの範囲(5〜1000μm)であれば、式1に起因する外光遮光量の増分、ΔI外光(θR1+θL1→θR2+θL2)は、式2に起因する画像光遮光量の増分ΔI画像光{(A1+A2+・・)→(A1+A2+・・)+(A3+A4+A5+・・)}よりも大、すなわち、
ΔI画像光{(A1+A2+・・)→(A1+A2+・・)+(A3+A4+A5+・・)}
<ΔI外光(θR1+θL1→θR2+θL2) ……〔式3〕
となる。
よって、第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの積層体からなるマイクロルーバー積層体10の、コントラスト向上効果は、第1のマイクロルーバー層1A或いは第2のマイクロルーバー層1Bのみの単層構成の場合に比べて増大する。
【0081】
(視野角規制効果向上)
図14およぴ図15において、外光LR1,LR2,LL1,LL2を画像観察者の視線に置き変えれば、容易に理解可能なように、マイクロルーバー層1A及びマイクロルーバー層1Bを積層したマイクロルーバー積層体10を、画像表示パネルの視野角規制シートとして用いる場合、マイクロルーバー層1A単層のみの場合においては、図14(A)の如く、視線を遮断する角度範囲は同図の遮光角範囲θR1およびθL1である。
これに対して、マイクロルーバー層1A及びマイクロルーバー層1Bを積層したマイクロルーバー積層体10とした場合においては、視線を遮断する角度範囲は、図15(B)の遮光角範囲θR2およびθL2となる。
そして、
θR1+θL1<θR2+θL2 ……〔式1〕
であるから、マイクロルーバー層1Aの単層、或いはマイクロルーバー層1Bの単層に比べて、これらを積層したマイクロルーバー積層体10の視線を遮断する角度範囲は広がる。
しかも、画像光の光量の低下は最小限に抑え得ることは、前記のとおりである。
【0082】
[マイクロルーバー層の積層形態]
図1、図2などでは、マイクロルーバー層1は、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの2層を積層した形態であったが、積層数はこれに限らず、所望の画像コントラスト向上性能、或いは視野角規制性能を発現するのに必要な層数を積層することができる。通常、上記積層数は2〜5である。
【0083】
図1、図14(A)及び図15(A)の如く、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの間に他層や空隙を介することなく、直接積層する形態とすることができる。
また、図2の如く、間に透明基材4aを介して、マイクロルーバー層1Aとマイクロルーバー層1Bとを積層する形態とすることもできる。この形態において、前記透明基材4aの厚みは、第1のマイクロルーバー層1A,第2のマイクロルーバー層1Bの厚みと同等以下とする。透明基材4aについては、後述する。
【0084】
[マイクロルーバー層の作製法]
以上説明したようなマイクロルーバー層1を作製する方法をその一例で説明する。以下説明する作製方法では、まず光透過部3を形成し、その後に光吸収部2を形成することによって、マイクロルーバー層1を作製する。
以下の説明で、透明基材4は、透明基材4a又は透明基材4bに該当する。
【0085】
まず、光透過部3は、硬化することによって光透過部3を構成するようになる光透過部形成組成物、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化可能なエポキシアクリレート等を用いて、作製され得る。具体的には、光吸収部2の形状(遮光パターン2P及び主切断面形状)に対応した凸部を有した型ロール、言い換えると、光透過部3の形状(平面視パターン及び主切断面形状)に対応した凹部を有した型ロールを準備する。この型ロールとニップロールとの間に透明基材4となるシートを送り込み、該シートの送り込みに合わせて、光透過部形成組成物を型ロールと透明基材4との間に供給する。その後、透明基材4上に供給された未硬化状態で液状の光透過部形成組成物が型ロールの凹部に充填されるように、型ロールおよびニップロールで該光透過部形成組成物を押圧する。このとき、型ロールの凹部の深さより厚くなるようにすると、すなわち、型ロールと透明基材4とが接触しないようにすると、光透過部形成組成物を透明基材4上に供給しておくことによって、上述したランド部3aが形成されるようになる。このようにして、透明基材4と型ロールとの間に未硬化で液状の光透過部形成組成物を充填した後、電離放射線を照射して前記光透過部形成組成物を硬化(固化)させることによって光透過部3を形成することができる。
【0086】
次に、光吸収部2は、硬化することによって母材をなすようになる電離放射線により硬化可能なウレタンアクリレート等と、光吸収粒子と、を含んだ未硬化で液状の光吸収部形成組成物を用いて、作製され得る。まず、先に形成された光透過部3上に光吸収部形成組成物を供給する。その後、光透過部3の表面に形成された溝、すなわち、型ロールの凸部に対応していた部分の内部に、ドクターブレードを用いながら、光吸収部形成組成物を充填しつつ、この溝の外に溢出した余分の光吸収部形成組成物を掻き落としていく。その後、光吸収部形成組成物に電離放射線を照射して硬化させることにより、光吸収部2が形成される。これにより、透明基材4、並びに、透明基材4上に光透過部3および光吸収部2を有したマイクロルーバー層1が作製される。
【0087】
〔透明基材〕
図2に例示する実施形態例では、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとは、間に透明基材4aを介して積層された形態であった。
この透明基材4aとしては、大別して2形態をとり得る。
(1)特に透明基材4aが、それ自体独立して、予め形成された、非接着性のシート(フィルム乃至は板も含む)状物からなる形態。このような透明基材4aの材料としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料、ガラス、セラミックス等の無機材料が用いられる。
(2)特に透明基材4aが、第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bと接着性を有する透明な接着剤からなる形態。このような接着剤の材料としては、第1のマイクロルーバー層1A,第2のマイクロルーバー層1Bの材料に応じて、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂等から選定する。
【0088】
なお、図2で示す如く、第1のマイクロルーバー層1Aと第2のマイクロルーバー層1Bとの間以外の位置に、透明基材4bを積層することもできる。同図の透明基材4bは第2のマイクロルーバー層1Bに隣接して積層され、これは前記した作製法でわかるとおり、第2のマイクロルーバー層1Bの作製の際に積層されたものとすることができる。
この透明基材4bとしては、透明基材4aにおいて説明した(1)の形態、つまり、それ自体独立して予め形成された非接着性のシート(フィルム乃至は板も含む)状物からなる形態としての材料を適宜採用することができる。
【0089】
〔他の機能層〕
前述した第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bは、光学的機能を有し、これらの層は機能層の一種であるが、本発明によるマイクロルーバー積層体10は、これ以外のその他の機能を担う機能層を必要に応じて設けても良い。
機能層の位置は、マイクロルーバー積層体10の画像表示パネル側、画像観察者側、或いは、これらの両側などである。
機能層が反射防止層または防眩層の場合は、最も画像観察者側の最表面に配置するが、これ以外の機能層を配置する位置は適宜に設定される。
【0090】
機能層としては具体的には、例えば下記するものから1以上選択する。
光学機能層:反射防止層、防眩層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、ネオン光吸収層、着色層など。
非光学機能層:電磁波遮蔽層、帯電防止層、防汚層、耐衝撃層、ハードコート層など。
【0091】
〔変形形態〕
本発明のマイクロルーバー積層体10は、上記した形態以外のその他の形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0092】
[開口領域の形状]
開口領域Aの形状は、少なくとも五角形と六角形とを含むことが好ましい。開口領域Aに少なくとも五角形と六角形とを含むことによって、モアレを目立たなくさせることが出来ると共に、遮光パターン2Pの粗密による濃淡ムラもより確実に目立たなくさせることができる。更に好ましくは、開口領域Aの形状が五角形、六角形、及び七角形を含む様にする。
例えば、図4の遮光パターン2Pについて、合計4631個の開口領域A(多角形)について計測したところ、
3角形 0個
4角形 79個
5角形 1141個
6角形 2382個
7角形 927個
8角形 94個
9角形 8個
10角形以上 0個
であった。
この遮光パターン2Pについて、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数を計測したところ3.07であった。
【0093】
[単位パターン領域としての繰返し]
上述した実施形態では、マイクロルーバー積層体10中の第1のマイクロルーバー層1A及び第2のマイクロルーバー層1Bの光吸収部2の全領域において、該光吸収部2が有する遮光パターン2Pによって画成される開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、図16の様に、その内部に於いて光吸収部2が有する遮光パターン2Pの全領域が、単位パターン領域Sを複数集合して遮光パターン2Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の開口領域Aが、所定の繰返周期のないパターンで配列されている領域からなるようにしてもよい。
すなわち、この形態に於いては、遮光パターン2Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで開口領域群が配列されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中でモアレも濃淡ムラも生じていない。この例において、一つの単位パターン領域S内における遮光パターン2Pのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
【0094】
特に最近では、画像表示パネル20の大型化が進んでおり、この様な大画面の画像表示パネル20に対しては、光吸収部2が有する遮光パターン2Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口領域Aが配列されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む形態とした方が、遮光パターン2Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0095】
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを図16に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰返しが存在する。図16の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1を以って単位パターン領域Sが繰り返される。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に開口領域AをM個有するとき、直線dj上の或る開口領域Aに注目すると、直線dj上では開口領域Aの個数がM個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の開口領域Aが常に存在するという規則性を有する。すなわち、開口領域Aの直線dj上での寸法tjについて、直線dj上で順番に数えてk番目の寸法tj(k)と、そのM番目の(k+M)番目の寸法tj(k+M)とが同じとなる、tj(k)=tj(k+M)の関係が成立する(k,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
【0096】
しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、開口領域Aとしての繰返周期ではなく、各単位パターン領域S内に於いて開口領域Aが繰返周期を上記特定方向に持つことではない。また、単位パターン領域Sとしての繰返周期は、画像表示パネルの画素配列の配列周期に対して寸法が例えば1000倍以上異なる為に、モアレが発生する様な近い寸法関係にない。
【0097】
図16に示された例では、マイクロルーバー積層体10が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で、各マイクロルーバー層の光吸収部2が有する遮光パターン2Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、図16の縦方向(図の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、図16の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
【0098】
〔C〕画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、図17及び図18に例示する様に、上記の様なマイクロルーバー積層体10と、画像表示パネル20とを備える画像表示装置100である。本画像表示装置100は、上記画像表示パネル20以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
画像表示パネル20は、プラズマ画像表示パネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の平面画像を表示可能な表示パネルである。また、表示面が平面のブラウン管等でも良い。画像表示パネル20としては、ディスプレイ駆動回路等の各種回路、該駆動回路と画像表示パネル本体間の配線、これらを一体化するシャーシ、フレーム等を含んでいても良い。従って、画像表示パネル20は、「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
【0099】
本マイクロルーバー積層体10の画像表示パネル20に対する配置は、図17(A)の様に、画像表示パネル20の画像を観察する観察者V側の前面側(画面側)でも良いし、これとは逆に、図17(B)の様に、画像表示パネル20の背面側でも良いし、或いは前面側と背面側の両方の側でも良い。なお、背面側に配置する場合は、画像表示パネル20を背面から照明する光源(図示は略すが、図17(B)に於いて、マイクロルーバー積層体10の図面下方に位置する)からの光を受けて画像表示パネル20を照明する為の部材となる。また、背面側に配置する場合は、画像コントラスト向上機能、視野角規制機能ではなく、光源からの光源光の集光機能などを発現する。
【0100】
また、画像表示装置100は、更に、機能層30を備えていても良い。機能層30は、例えば前記した他の機能層として述べた機能層を有する光学部材等である。例えば、電磁波遮蔽層などを有する光学フィルタ等である。機能層30を配置する位置は、図18に示す様に用途に応じた位置とする。
図18(A)は、画像表示パネル20と、この画像表示パネル20の観察者V側に配置したマイクロルーバー積層体10との間に、機能層30を配置した形態である。図18(B)は、画像表示パネル20の観察者V側に本マイクロルーバー積層体10を配置し、このマイクロルーバー積層体10の観察者V側に機能層30を配置した形態である。図18(C)は、画像表示パネル20の観察者V側に本マイクロルーバー積層体10を配置し、機能層30は逆に画像表示パネル20の背面側に配置した形態である。
【0101】
〔D〕用途
本発明によるマイクロルーバー積層体10は、各種画像表示パネルの観察者側の前面(画面)側、或いは逆側の背面側に配置する用途が好適である。また、このマイクロルーバー積層体10を備える画像表示装置100は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、デジタルフォトフレーム等の画像表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0102】
1 マイクロルーバー層
1A 第1のマイクロルーバー層
1B 第2のマイクロルーバー層
2 光吸収部
2P 遮光パターン
2Pd 二重に重ね合わされたときの遮光パターン
3 光透過部
3a ランド部
4 透明基材
4a 透明基材
4b 透明基材
5A 第1の中間積層体
5B 第2の中間積層体
10 マイクロルーバー積層体
20 画像表示パネル
30 機能層
40 従来のマイクロルーバーシート
41 従来のマイクロルーバー層
42 光吸収部
43 光透過部
44 無駄部分
100 画像表示装置
A 開口領域
B 分岐点
BP 母点
L 境界線分
Lt ライン部(境界線分の集合)
S 単位パターン領域
V 観察者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収部とこの光吸収部以外の部分の光透過部とからかなるマイクロルーバー層であって、
前記光吸収部をシート面に垂直な方向から見たときの平面視形状である遮光パターンが、
光透過部に対応する多数の開口領域を画成し、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口領域が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンであり、
このマイクロルーバー層を、遮光パターンが互いに独立な、第1のマイクロルーバー層と第2のマイクロルーバー層との少なくとも2層以上積層した、マイクロルーバー積層体。
【請求項2】
第1のマイクロルーバー層と第2のマイクロルーバー層との間に第1の透明基材が積層され、第2のマイクロルーバー層の前記第1のマイクロルーバー層の側とは反対側に第2の透明基材が積層された、請求項1記載のマイクロルーバー積層体。
【請求項3】
請求項1または2記載のマイクロルーバー積層体と画像表示パネルとを備える画像表示装置。
【請求項1】
光吸収部とこの光吸収部以外の部分の光透過部とからかなるマイクロルーバー層であって、
前記光吸収部をシート面に垂直な方向から見たときの平面視形状である遮光パターンが、
光透過部に対応する多数の開口領域を画成し、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口領域が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンであり、
このマイクロルーバー層を、遮光パターンが互いに独立な、第1のマイクロルーバー層と第2のマイクロルーバー層との少なくとも2層以上積層した、マイクロルーバー積層体。
【請求項2】
第1のマイクロルーバー層と第2のマイクロルーバー層との間に第1の透明基材が積層され、第2のマイクロルーバー層の前記第1のマイクロルーバー層の側とは反対側に第2の透明基材が積層された、請求項1記載のマイクロルーバー積層体。
【請求項3】
請求項1または2記載のマイクロルーバー積層体と画像表示パネルとを備える画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−68856(P2013−68856A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208343(P2011−208343)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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