説明

マイクロ構造の粒子による炎症症状および/または細菌性の症状の治療

本発明は、チタン、チタン合金、少なくとも1種の酸化チタンまたはこれらの組み合わせを含み、かつ、少なくともかなりの部分が少なくとも1つのタイプの酸化チタンからなる表面を有するマイクロ構造の粒子を、挿入、注射または注入によって、人体または動物の体の炎症症状および/または細菌性の症状を呈する少なくとも1箇所の感染部位と接触させる、炎症症状および/または細菌性の症状を治療するための方法を示すものである。さらに、本発明は、薬剤として用いるための本発明による粒子と流体ビヒクルとを含む注射可能な懸濁液を示す。最後に、本発明は、注射可能な懸濁液の形態にある薬剤の製造に用いる本発明によるマイクロ構造の粒子の使用法も定義する。本発明による注射可能な懸濁液での治療対象となる症状の例は、歯周炎、インプラント周囲炎、骨炎である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マイクロ構造の粒子で炎症症状および/または細菌性の症状を治療するための方法と、歯周炎、インプラント周囲炎、骨炎などの炎症症状および/または細菌性の症状の治療時における薬剤としてなど、薬剤として使用される、これらの粒子を含む注射可能な懸濁液を示す。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
手術を受けたり体に創傷があったりすると、炎症および/または感染が生じやすいことは周知であり、注入に関連する場合、特に股関節や歯などの骨組織での適用に関連する場合も同じである。
【0003】
チタンが空気または水に触れると、自然に酸化膜が形成される。この自然に形成される酸化膜は厚さ4〜10nmであり、主にTiO、Ti(IV)からなり、酸化物中に存在する少量のTi(III)およびTi(II)も含む(参考文献1、3、4を参照のこと(se))。
【0004】
チタンの抗炎症効果および抗菌効果を担うのがその表面でのTiOの化学的な特性であり、これらの効果は何とおりかの形で発揮され、いずれも露出した表面積と関連している。従来すでに示されている(参考文献2)ように、TiOにはROS(活性酸素種)を直接捕捉する機能がある。考えられるひとつの機序として、二酸化チタン表面での過酸化水素、スーパーオキシドおよびペルオキシ亜硝酸塩の分解で示唆される一連の触媒的酸化還元反応によるものがある(参考文献2および5)。
2TiO+2O+2H→Ti+2O+HO(1a)
2TiO+H→Ti+O+HO(1b)
Ti+OONO→2TiO+NO(2a)
Ti+H→2TiO+HO(2b)
【0005】
チタンの抗菌効果に関して特に興味深いのは、TiOがHと直接反応し、酸化物表面にTiペルオキシゲル(peroxy gel)すなわちTiOOH(HO)を形成できる可能性があることである。また、Tiペルオキシゲル中にスーパーオキシドラジカルが存在することがESR(電子スピン共鳴)測定によっても明らかになっており、ゲル中でのスーパーオキシドのトラッピングか、Tiペルオキシゲル中でのスーパーオキシドとTi(IV)との直接的な反応も示される(参考文献5〜7)。Tiペルオキシゲルと類似の複合体がTiOとペルオキシ亜硝酸塩との間で形成されることもある。最近になって、ペルオキシ亜硝酸すなわち、ペルオキシ亜硝酸塩のプロトン化形態(pK=6.8)が、酸性条件下でTiペルオキシゲルに似たTi(IV)との複合体を形成することが明らかになっている(参考文献8)。さらに、チタンインプラント周囲の組織中に時折見られる青みから、Ti(IV)がROSと反応して安定したTi(III)錯体を形成していると思われる(参考文献9を参照のこと)。また、in vivoではインプラント表面の酸化チタン層の厚さが時間の経過とともに増す(参考文献10)ことから、Ti金属が酸素種のシンクとして作用するのではないかと思われる点も示されている。これらの反応はいずれも、TiO表面で生じるROSの直接分解と、これに関連した抗炎症効果に関与している可能性がある。
【0006】
(酸化チタンの表面層を有するチタン金属である)チタンが炎症を抑え(Overgaard, Danielsen et al. 1998)、他の材料よりも感染しにくい(Johansson, Lindgren et al. 1999)ことが報告されている。また、活性酸素種(ROS)との化学的な相互作用による、チタンの持つ独特の特性について説明した報告もある。チタンの触媒特性については、酸化チタンのみで構成された表面に表面の酸化チタンが存在することと関連していることが示されている(Sahlin 2006 et al)。このような触媒特性は、たとえば、Bjurstenらに付与された米国特許出願第2005074602号ならびに、抗炎症特性(Larsson, Persson et al. 2004)および殺菌特性(Tengvall, Hornsten et al. 1990)を有する過酸化チタン化合物の生成(Tengvall, Elwing et al. 1989;Tengvall, Lundstrom et al. 1989)に記載されている。よって、チタンが持つ上記の有益な特性は、生体組織環境での(with)その化学的な相互作用と関連しているように見える。
【0007】
チタンを使用できるインプラントの参考として、米国特許第5,015,256号(Bruceら)には、大腿義足のステムなどの細長いプロテーゼを、このプロテーゼ全体が収まる空洞を画定する生体組織に、空洞との境界に隙間をあけて固定するための手段および方法が開示されている。基本的には、この隙間全体に生体適合性材料からなるバラバラの粒子を互いに係合するようにして詰め込む。粒材料の一例としてチタンがあげられており、その粒は不規則で本質的に非弾性であり、好ましくは多孔質であると述べられている。後者の特性は、骨壁から成長している骨組織の成長を助長すると言われている。この粒の係合については、前記空洞に収容されて最後にはステムに押し付けられる粒の層に、ステムを振動させながら入れることによって実現されている。
【0008】
国際公開第00/64504号パンフレット(Bruceら)には、生体適合性のプラスチックまたは本質的に非弾性かつ多孔質の物体(多孔率が連続している)と、骨組織の場合であれば幅が約50μmよりも広い、空洞の開口および開口同士を結ぶ通路とが開示されている。「連続」という用語は、骨組織が多孔体全体に成長できる多孔率を意味すると言われる。多孔体は、チタン製のものであってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットに記載の発明のひとつの欠点に、これらの発明による粒が、抗炎症効果および/または抗菌効果に合わせて最適化されていないことがある。実際、米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットには、そこに開示された粒または細粒の考え得る抗炎症効果および/または抗菌効果については何ら開示されていない。米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットに記載の粒の適用領域は、たとえば「全体」プロテーゼ周囲の体腔で固定度と骨の内方成長を増す際における整形外科的手段として、あるいは歯科用途であれば、同じく骨組織の内方成長を増し、なおかつたとえばチタンねじなどの歯科インプラントの安定性および固定度を増すことにある。この米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットに記載の「全体インプラントまたはプロテーゼ」は、そこに言及されているようにたとえばチタン製のねじまたは歯であり、これらのすべてにおいて一般的なのは(common for all of these are)、少なくとも1つの締付要素または固定要素を有する点である。無理もないことだが、このような「全体」プロテーゼ周囲の米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットに記載の粒は、抗炎症効果および/または抗菌効果を呈するということに関して最適化されていない。それが上記の応用領域で主に目指すことではないためである。多孔率が高いなど、これらの粒または細粒の構造および大きさは、骨の内方成長を促進できるよう最適化されたものであり、抗炎症効果および/または抗菌効果、特に、症状のある典型的な感染部位までどうやって達するかという点で実用上の課題があり得る特定の炎症症状および細菌性の症状に関する効果を得ることを目指したものではない。
【0010】
本発明は、抗炎症効果および抗菌効果の増強および実用面で有益な目的に関して、上記のような症状を効果的に治療するための方法を提供することで、これらの課題を解決することを狙ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
上述した課題は、チタン、チタン合金、少なくとも1種の酸化チタンまたはこれらの組み合わせを含み、かつ、少なくともかなりの部分が少なくとも1つのタイプの酸化チタンからなる表面を有するマイクロ構造の粒子を、挿入、注射または注入によって、人体または動物の体の炎症症状および/または細菌性の症状を呈する少なくとも1箇所の感染部位と接触させる、炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法を提供する本発明によって解決される。
【0012】
米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットに開示された粒または細粒と比較して、本発明による粒子の重要な差のいくつかは、その幾何学的構造、大きさおよび見た目それ自体である。本発明による粒子は、極めて小さなマイクロ構造のものであり、これは粒子が極めて細かく、比表面積を大きくできることを意味する。さらに、これらの粒子を異なる部位の上または異なる部位に極めて容易に適用できる主な理由が、粒子のマイクロ構造にある。言葉を変えると、本発明による粒子は細かい砂のように見えるが、そのことを米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットに記載の多孔質の粒または細粒と対比されたい。これは、本発明による多岐にわたる粒子の見た目と作用が粉末に似ていることを意味するが、米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットに記載の多岐にわたる粒の場合に同じことは当てはまらず、その粒はどちらかというと金属製の石またはサンゴのまとまりのように見える。
【0013】
こうした事情で、これらの異なる構造の利用分野も完全に異なる。上述したように、米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットに記載の粒または細粒は、たとえばプロテーゼ周囲の体腔に充填されたときの骨の内方成長に合わせて最適化されている。粒の大きさが理由で、こうした用途では粒の層が形成されて安定性が得られる。さらに、骨組織の場合であれば、幅が約50μmよりも広い、空洞の開口および空洞同士を結ぶ通路の国際公開第00/64504号パンフレットに記載の粒の多孔率によって、骨の内方成長効果が高まる。このように孔のいくつかが最小限の大きさであることは、この粒子の幾何学的構造が、特に大きさの点でマイクロ構造の粒子とは異なることを明らかに示すものであるが、全体の見た目の点でも明らかに異なる。
【0014】
整形外科目的でのチタンねじなど、「全体」プロテーゼを支える用途という意味では、本発明によるマイクロ構造の粒子は効果的ではないであろう。粒子の層が、そのようなプロテーゼの周りに硬い構造を造り出すことがないからである。しかしながら、この点は本発明の目的のひとつではない。粒子が小さいため、各々大きな比表面積を維持するが、これこそ抗炎症効果および抗菌効果に関して最も重要なパラメータのひとつである。比表面積の値が大きいことで、抗炎症効果および抗菌効果が高くなる。さらに、これらの粒子の大きさにも実用上の利点がある。この大きさがゆえに、人体または動物の体のどこでも感染部位と接触可能なのである。米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットに記載の粒などを同じ目的で誰かが想定外に使用しようとしても、同程度には、あるいは同じ結果が得られる形では使用できないであろう。その粒子がマイクロ構造ではないため、注射の用途によっては大きすぎることによるものである。また、これらの粒は、抗炎症効果および抗菌効果の点で高い値を示すことがなく、本発明による開示された治療方法は、米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットのどちらに記載された粒でも実施できないものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
以下、本発明による特定の実施形態について、さらに詳細に説明する。これらの実施形態は、それ自体が単なる具体例としてみなされるべきであり、本発明を限定するものと解釈されるべきものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に定義される。
【0016】
本発明に関しては、粒子の材料が重要である。第1に、常に含まれる元素のひとつがチタンであるという、使用可能な粒子組成の問題がある。しかしながら、卑金属であるチタンを、合金として、少量の不純物だけが含まれていてもよい純粋な金属チタンとして、酸化チタンあるいはこれらの組み合わせとして本発明による粒子に含むことが可能である点を理解することが重要である。純粋なチタンで許容される少量の不純物は通常、酸化物または何らかの金属であるが、他の化学物質からなるものであってもよい。さらに、酸化チタンは常にある程度粒子の表面に存在する。考えられる酸化チタンの異なるタイプは、上記にて開示してある。さらに、表面で酸化物の形成を促す機序についても記載されている。
【0017】
第2に、幾何学的構造と大きさが重要であるが、これについては「マイクロ構造」という表現に関して上述してある。よって、本発明の特定の一実施形態によれば、本発明によるマイクロ構造の粒子は、一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が1mm未満である。一層具体的には、本発明によるマイクロ構造の粒子は、一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.5mm未満であり、より一層具体的には0.2mm未満、さらに一層具体的には0.1mm未満である。本発明の特定の一実施形態によれば、マイクロ構造の粒子は、一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.01〜0.1mmの範囲であり、一層具体的には、一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.01mm未満である。
【0018】
幾何学的構造と見た目に関するもうひとつの重要な要素に、粒子の実際の幾何学的形状がある。本発明の特定の一実施形態によれば、マイクロ構造の粒子は、球状、くぎ状、フレーク状、チップ状または同様の形あるいはこれらの組み合わせの形である。マイクロ構造ならびに形状は比表面積に影響するパラメータであるため、比表面積と、結果として抗炎症効果および抗菌効果とを示す直接的な尺度である。米国特許第5,015,256号および国際公開第00/64504号パンフレットに開示された粒と比較すると、これらの異なるパラメータすなわち、大きさ、形状、抗炎症特性および抗菌特性がいずれも本発明による粒子とは異なっている。
【0019】
上述したように、人体または動物の体に存在する炎症症状および/または細菌性の症状の治療方法に本発明による粒子を用いることには実用上の利点もある。粒子の大きさが小さいがゆえに、相対的に完全に異なる位置で容易に人体または動物の体に存在する感染部位に粒子を接触させることが可能である。具体例として、歯科用途の場合、口または歯に近い感染部位があるが、たとえば腸内または完全に他の異なる重要臓器または組織もある。重要な例のひとつが骨組織である。
【0020】
これらの具体的な用途のうちのいくつかでは、意図した感染部位まで粒子を運ぶ機能のある何らかのビヒクルで粒子を提供することが重要である。したがって、本発明の特定の一実施形態によれば、人体または動物の体への挿入、注射または注入の前またはこれと同時に、本発明による粒子を流体ビヒクルと混合して注射可能な懸濁液を生成する、炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法が得られる。考えられる具体的な流体ビヒクルは、たとえば、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲルおよびタンパク質溶液あるいは、これらの組み合わせである。タンパク質溶液の一例は、アルブミンなどの流体ビヒクルとして機能できるものである。本発明の別の特定の実施形態によれば、流体ビヒクルは、溶融温度が周囲温度より高く37℃(体温)未満のゲルに含まれており、このゲルが任意に、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲルまたはタンパク質溶液のうちの少なくとも1つを含む。このゲルは、ゲルとそれに含まれる粒子が、人体または動物の体にたとえば注射しやすくなるという事実において特に有用な場合があり、そのときゲルは周囲温度でゲル固体状態であるが、同時にゲルが通常の体温で液体になって容易かつ迅速に再吸収可能となる。その範囲の溶融温度を有するこのようなゲルの例としては、たとえば、人体または動物の体に注射されたときにゲルが溶解する正しい濃度のヒアルロン酸があげられる。
【0021】
本発明による粒子を人体または動物の体の意図した感染部位に接触させる上で考えられる方法には、何通りかある。本発明の特定の一実施形態によれば、人体または動物の体にある空洞(この空洞は、人体または動物の体に存在するものであるか、あるいは外科手術で形成したものである)を充填することで、本発明によるマイクロ構造の粒子または注射可能な懸濁液(これらの粒子は、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲル、タンパク質溶液またはこれらの組み合わせからなる群から選択される流体ビヒクルと混合される)を、少なくとも1箇所の感染部位に接触させる、炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法が得られる。
【0022】
本発明の別の特定の実施形態によれば、波長λが200〜500nmのUV光線で、in vivoにてマイクロ構造の粒子またはその注射可能な懸濁液をさらに処理する、上記の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法が得られる。これは、UV光線がラジカルを生成するため抗炎症効果および/または抗菌効果を高めることが可能だという点で、ときに望ましいことがある。多くの用途において適したUV光線の具体的波長範囲は250〜350nmである。
【0023】
別の特定の実施形態によれば、上述した空洞を後から封止用組成物で封じる。この封止用組成物は、たとえば、フィブリン接着剤、ポリマー材料などの膜またはコラーゲンである。
【0024】
本発明による特定の一実施形態では、本発明によるマイクロ構造の粒子を含む注射可能な懸濁液を人体または動物の体に注射することで、この懸濁液を少なくとも1箇所の感染部位に接触させる。さらに、特定の一実施形態によれば、マイクロ構造の粒子またはその注射可能な懸濁液を一定間隔で少なくとも1箇所の感染部位に接触させ、抗炎症効果および/または抗菌効果を維持する。具体的な症状の例は、歯周炎、インプラント周囲炎、骨炎である。
【0025】
本発明によるマイクロ構造の粒子または注射可能な懸濁液は、様々な理由による人体または動物の体の非炎症部位および/または非感染部位への(たとえば人体または動物の体の特定の部分または臓器へのin vivoまたはin vitroでの)注射または挿入にとって興味深いものでありうる。このような部分または臓器は、腸、肝臓、脾臓、膵臓またはたとえば腎臓などであってもよい。本発明によるマイクロ構造の粒子または注射可能な懸濁液の用途の一例が、人体または動物の体の特定の部分への薬剤のキャリアとしての用途であり、この粒子は単にキャリアとして作用するか、あるいは他の薬剤との組み合わせで接触対象となる部位にて活性薬剤として作用する。
【0026】
上述したように、本発明は、治療するための方法だけではなく、
−チタン、チタン合金、少なくとも1つのタイプの酸化チタンまたはこれらの組み合わせを含み、かつ、少なくともかなりの部分が少なくとも1つのタイプの酸化チタンからなる表面を有するマイクロ構造の粒子であって、一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が1mm未満であるマイクロ構造の粒子と、
−流体ビヒクルと、
を含み、薬剤として使用される注射可能な懸濁液も含まない。
【0027】
本発明による注射可能な懸濁液の特定の異なる実施形態が、たとえば粒子の平均サイズが変化する、マイクロ構造の粒子の形状が変化する、流体ビヒクルが具体的な一実施形態によって異なるタイプの形態から選択可能であるなどの本発明による方法の特定の実施形態に鑑みて上記にて開示される。さらに、懸濁液は、場合によってはペーストの形であり、さらにビヒクルがゲルであってもよい点を理解されたい。これらの場合、液体懸濁液と比較して、本発明による粒子のほうが大きくでき、それでもなお均一に分散させることが可能である。
【0028】
本発明による粒子と流体ビヒクル以上のものとを懸濁液中で組み合わせることも可能である。このような他の物質を混合して注射可能な懸濁液にするには異なる目的があり得る。このような物質は、たとえば生物学的に活性であってもよい。具体例が、抗生物質、組織の成長または再生を促進する因子またはこれらの組み合わせであり、たとえば、骨形態形成因子、線維芽細胞成長因子、アレンドロネート(andronate)、αケトグルタル酸、シンバスタチン、ゲンタマイシンまたは合成コラーゲンI型などである。考えられる他の例に、少なくとも1種の活性エナメル物質があり、この活性エナメル物質は、エナメルマトリクス、エナメルマトリクス誘導体またはエナメルマトリクスタンパク質またはこれらの組み合わせであり、たとえばEmdogain(登録商標)である。したがって、本発明の一実施形態によれば、本発明による注射可能な懸濁液が得られ、この懸濁液には少なくとも1種の他の物質が混合されており、少なくとも1種の他の物質が、抗生物質、組織の成長を促進する因子、組織の再生を促進する因子からなる群から選択される。
【0029】
本発明による粒子に物質を結合または本発明による粒子を修飾するには、異なる方法がある。物理的および化学的な表面修飾方法を、非共有結合コーティング、共有結合的に付加するコーティング、もとの表面の修飾という3種類のタイプに分類することが可能である。
【0030】
非共有結合コーティングに用いられる方法は、好ましくは、溶媒コーティング、界面活性添加剤または炭素および金属の蒸着であり、後者では若干の共有結合反応が起こることもある。
【0031】
共有結合的に付加するコーティングの好ましい方法は、この場合は低圧電離気体環境で一般に周囲温度前後でなされるRFGDプラズマ蒸着、他のプラズマガスプロセス、化学蒸着(CVD)などの気相蒸着、化学グラフトおよび生物学的修飾(生体分子の固定化)などである。
【0032】
もとの表面を修飾するための方法は、好ましくは非特異的酸化などの化学反応によるイオン交換および化成処理である。
【0033】
また、(重要であれば)粒子をたとえば懸濁液にする前に異なる方法で処理し、いくつかの特性を改善することも可能である。一例に、個々の粒子の比表面積を増すことがあるが、これは粒子のエッチングによって可能である。比表面積は抗炎症効果および(an)/または抗菌効果の程度を示すため、比表面積が増すことは興味の対象となろう。このエッチング処理は、粒子を、たとえば少なくとも1種のフッ素化合物、塩酸、硫酸、亜リン酸のほか、過酸化水素(H)および有機過酸化物からなる群から選択される過酸化物化合物またはシュウ酸またはこれらの組み合わせで処理するか、あるいはフッ素化ガスまたは塩素化ガスでのドライエッチングによって実施可能なものである。フッ素化合物は、たとえば、どのようなタイプのフッ酸、フッ化水素酸(硝酸との組み合わせ)、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム(硝酸との組み合わせも含む)またはフッ化水素(HF)であってもよい。化学物質の濃度の例は、たとえば、フッ化物酸(fluoride acid)であれば0.05から1.0%、過酸化水素であれば0.5から30.0%、シュウ酸であれば0.2から20.0%である。したがって、本発明の特定の一実施形態によれば、少なくとも1種のフッ素化合物、塩酸、硫酸、亜リン酸のほか、過酸化水素(H)および有機過酸化物からなる群から選択される過酸化物化合物またはシュウ酸またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の化学物質で粒子を前処理するか、フッ素化ガスまたは塩素化ガスでのドライエッチングによって粒子を前処理する。
【0034】
考えられる他の粒子処理に、酸化雰囲気中20から1000℃の温度での熱処理および/または電気化学的手法によって実施される酸化がある。電気化学的手法は、場合によっては放電加工を利用した陽極酸化によって実施される。これは、表面積を増やす目的でも実施可能である。放電加工の手法を利用して、有益な特性を実現してもよい。まず、表面を放電加工した後、切削、解砕またはヤスリ仕上げなどの機械的な手法で粒子を生成する。
【0035】
他の処理例に、不活性雰囲気または真空中で500℃またはこれよりも高い温度での熱処理があるが、チタンまたはチタン合金粒子の場合は、チタンまたはチタン合金それぞれの融点未満とする。
【0036】
考えられる処理が審美的な目的を持つこともあり、これはいくつかの歯科用途の場合などにあり得る。したがって、チタンまたはチタン合金粒子を、その表面で少なくとも500nmのかなりの厚さの酸化チタン層が得られる程度に酸化させることができる。よって、これらの粒子は黄色がかった色または白っぽい色になり、歯科用途によってはこれが有益になり得る。
【0037】
本発明では、粒子の使用法も開示される。特定の一実施形態によれば、チタン、チタン合金、少なくとも1つのタイプの酸化チタンまたはこれらの組み合わせを含み、かつ、少なくともかなりの部分が少なくとも1つのタイプの酸化チタンからなる表面を有するマイクロ構造の粒子を、マイクロ構造の粒子と流体ビヒクルとを含む注射可能な懸濁液の形態にある薬剤の製造に用いる使用法であって、この薬剤が、炎症症状および/または細菌性の症状を軽減するおよび/またはなくす、および/または注入部位で組織の再生を促進できる、使用法が得られる。
【0038】
注射可能な懸濁液の形態にある薬剤を製造するための本発明による粒子の使用に関する特定の実施形態が、本発明の方法および本発明の注射可能な懸濁液を示す異なる特定の実施形態と一緒に上記にて開示される。本発明の特定の一実施形態によれば、たとえば、チタン、チタン合金、少なくとも1つのタイプの酸化チタンまたはこれらの組み合わせを含み、かつ、少なくともかなりの部分が少なくとも1つのタイプの酸化チタンからなる表面を有するマイクロ構造の粒子を、マイクロ構造の粒子と流体ビヒクルとを含む注射可能な懸濁液の形態にある薬剤の製造に用いる使用法であって、この薬剤が、炎症症状および/または細菌性の症状を軽減するおよび/またはなくす、および/または注入部位で組織の再生を促進でき、流体ビヒクルが、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲル、タンパク質溶液またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、使用法が得られる。もうひとつの例は、溶融温度が周囲温度より高く37℃(体温)未満のゲルに流体ビヒクルが含まれている場合であり、このゲルが任意に、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲルまたはタンパク質溶液のうちの少なくとも1つを含む。症状の具体例は、歯周炎、インプラント周囲炎、骨炎である。
【0039】
結論
マイクロ構造の粒子を使って炎症症状および/または細菌性の症状を治療する本発明による方法がゆえに、これらの症状を治療するための効果的な方法が得られる。さらに、本発明による材料(粒子)は、最新技術による他の材料に関して抗炎症効果および/または抗菌効果が高まる。さらに、大きさおよび形状の観点から、この構造がゆえに特性が改善されるとともに、もちろん化学的組成も改善されるだけでなく、ここに開示した本発明による方法ならびに注射可能な懸濁液の使用法には、実用上の明らかな利点がある。本発明による注射可能な懸濁液ならびに粒子がゆえに、人体または動物の体のどこにあっても感染部位と抗炎症剤および/または抗菌剤とを接触させる効果的な方法が得られる。
【0040】
References
1. Sittig C, Textor M, Spencer ND, Wieland M, Vallotton PH. Surface characterization of implant materials c.p. Ti, Ti-6AI-7Nb and Ti-6AI-4V with different pretreatments. J Mater Sci Mater Med 1999;10(1):35-46.
2. Suzuki R, Muyco J, McKittrick J, Frangos JA. Reactive oxygen species inhibited by titanium oxide coatings. J Biomed Mater Res A 2003;66(2):396-402.
3. Scharnweber D, Beutner R, Rossler S, Worch H. Electrochemical behavior of titanium-based materials - are there relations to biocompatibility? J Mater Sci Mater Med 2002;13(12):1215-20.
4. Zhang F, Zheng Z, Chen Y, Liu X, Chen A, Jiang Z. In vivo investigation of blood compatibility of titanium oxide films. J Biomed Mater Res 1998;42(1):128-33.
5. Tengvall P, Lundstrom I, Sjoqvist L, Elwing H, Bjursten LM. Titanium-hydrogen peroxide interaction: model studies of the influence of the inflammatory response on titanium implants. Biomaterials 1989;10(3):166-75.
6. Tengvall P, Elwing H, Sjoqvist L, Lundstrom I, Bjursten LM. Interaction between hydrogen peroxide and titanium: a possible role in the biocompatibility of titanium. Biomaterials 1989; 10(2):118-20.
7. Ragai J. Trapped radicals in titania gels. Nature 1987;325(6106):703-5.
8. Wick PK, Kissner R, Koppenol WH. Kinetics evidence for a complex between peroxynitrous acid and titanium(IV). lnorg Chem 2004;43(16):4805-7.
9. Tengvall P, Lundstrom I. Physico-chemical considerations of titanium as a biomaterial. Clin Mater 1992;9(2):115-34.
10. Sundgren J-E, Bodo P, Lundstrom I. Auger electron spectroscopic studies of the interface between human tissue and implants of titanium and stainless steel. J Colloid Interface Sci 1986;110(1):9-20.
11. Guang Pu Xue Yu Guang Pu Fen Xi. 2002 Oct;22(5):783-6. Study on nanophase anatase-rutile transition with Raman spectrum.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、チタン合金、少なくとも1種の酸化チタンまたはこれらの組み合わせを含み、かつ、少なくともかなりの部分が少なくとも1つのタイプの酸化チタンからなる表面を有するマイクロ構造の粒子を、挿入、注射または注入によって、人体または動物の体の炎症症状および/または細菌性の症状を呈する少なくとも1箇所の感染部位と接触させる、炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項2】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が1mm未満である、請求項1に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項3】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.5mm未満である、請求項1または2に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項4】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.2mm未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項5】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.1mm未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項6】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.01〜0.1mmの範囲である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項7】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.01mm未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項8】
マイクロ構造の粒子が、球状、くぎ状、フレーク状、チップ状または同様の形あるいはこれらの組み合わせの形である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項9】
挿入、注射または注入の前またはこれと同時に、粒子を流体ビヒクルと混合して注射可能な懸濁液を生成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項10】
流体ビヒクルが、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲル、タンパク質溶液またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項11】
流体ビヒクルが、溶融温度が周囲温度より高く37℃(体温)未満のゲルに含まれ、このゲルが任意に、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲル、タンパク質溶液のうちの少なくとも1つを含む、請求項9または10に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項12】
人体または動物の体にある空洞(この空洞は、人体または動物の体に存在するものであるか、あるいは外科手術で形成したものである)を充填することで、マイクロ構造の粒子または注射可能な懸濁液(これらの粒子は、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲル、タンパク質溶液またはこれらの組み合わせからなる群から選択される流体ビヒクルと混合される)を、少なくとも1箇所の感染部位に接触させる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項13】
次に空洞を封止用組成物で封じる、請求項12に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項14】
封止用組成物が、フィブリン接着剤、膜、コラーゲンからなる群から選択される、請求項13に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項15】
マイクロ構造の粒子を含む注射可能な懸濁液を人体または動物の体に注射することで、少なくとも1箇所の感染部位に接触させる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項16】
マイクロ構造の粒子またはその注射可能な懸濁液を一定の間隔で少なくとも1箇所の感染部位に接触させ、抗炎症効果および/または抗菌効果を維持する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項17】
症状が、歯周炎、インプラント周囲炎、骨炎からなる群から選択される炎症症状および/または細菌性の症状である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項18】
波長λが200〜500nmのUV光線で、in vivoにてマイクロ構造の粒子またはその注射可能な懸濁液をさらに処理する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項19】
UV光線の波長λが250〜350nmである、請求項18に記載の炎症症状および/または細菌性の症状の治療のための方法。
【請求項20】
−チタン、チタン合金、少なくとも1つのタイプの酸化チタンまたはこれらの組み合わせを含み、かつ、少なくともかなりの部分が少なくとも1つのタイプの酸化チタンからなる表面を有するマイクロ構造の粒子であって、一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が1mm未満であるマイクロ構造の粒子と、
−流体ビヒクルと、
を含み、薬剤として使用するための注射可能な懸濁液。
【請求項21】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.5mm未満である、請求項20に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項22】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.2mm未満である、請求項20または21に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項23】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.1mm未満である、請求項20〜22のいずれか一項に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項24】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.01〜0.1mmの範囲である、請求項20〜23のいずれか一項に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項25】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.01mm未満である、請求項20〜24のいずれか一項に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項26】
マイクロ構造の粒子が、球状、くぎ状、フレーク状、チップ状または同様の形あるいはこれらの組み合わせの形である、請求項20〜25のいずれか一項に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項27】
流体ビヒクルが、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲル、タンパク質溶液またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20〜26のいずれか一項に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項28】
流体ビヒクルが、溶融温度が周囲温度より高く37℃(体温)未満のゲルに含まれ、このゲルが任意に、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲル、タンパク質溶液のうちの少なくとも1つを含む、請求項20〜27のいずれか一項に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項29】
少なくとも1種の他の物質が混合され、その少なくとも1種の他の物質は、抗生物質、組織の成長を促進する因子、組織の再生を促進する因子からなる群から選択される、請求項20〜28のいずれか一項に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項30】
少なくとも1種の他の物質が、骨形態形成因子、線維芽細胞成長因子、アレンドロネート(andronate)、αケトグルタル酸、シンバスタチン、ゲンタマイシン、合成コラーゲンI型、および少なくとも1種の活性エナメル物質(この活性エナメル物質は、エナメルマトリクス、エナメルマトリクス誘導体またはエナメルマトリクスタンパク質またはこれらの組み合わせである)からなる群から選択される、請求項29に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項31】
少なくとも1種のフッ化物酸(fluoride acid)、塩酸、硫酸、亜リン酸、過酸化水素(H)および有機過酸化物からなる群から選択される過酸化物化合物、ならびにシュウ酸からなる群から選択される少なくとも1種の化学物質で粒子を前処理するか、フッ素化ガスまたは塩素化ガスでのドライエッチングによって粒子を前処理する、請求項20〜30のいずれか一項に記載の注射可能な懸濁液。
【請求項32】
チタン、チタン合金、少なくとも1つのタイプの酸化チタンまたはこれらの組み合わせを含み、かつ、少なくともかなりの部分が少なくとも1つのタイプの酸化チタンからなる表面を有するマイクロ構造の粒子を、マイクロ構造の粒子と流体ビヒクルとを含む注射可能な懸濁液の形態にある薬剤の製造に用いる使用法であって、この薬剤が、炎症症状および/または細菌性の症状を軽減するおよび/またはなくす、および/または注入部位での組織の再生を促進する、使用法。
【請求項33】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.5mm未満である、請求項32に記載の使用法。
【請求項34】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.2mm未満である、請求項32または33に記載の使用法。
【請求項35】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.1mm未満である、請求項32〜34のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項36】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.01〜0.1mmの範囲である、請求項32〜35のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項37】
マイクロ構造の粒子の一方の側から幾何学的中心を通って反対側までの平均長が0.01mm未満である、請求項32〜36のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項38】
マイクロ構造の粒子が、球状、くぎ状、フレーク状、チップ状または同様の形あるいはこれらの組み合わせの形である、請求項32〜37のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項39】
流体ビヒクルが、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲル、タンパク質溶液またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32〜38のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項40】
流体ビヒクルが、溶融温度が周囲温度より高く37℃(体温)未満のゲルに含まれ、このゲルが任意に、NaCl(水溶液)、ヒアルロン酸、PEG、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)、過酸化チタンゲル、メチルセルロース、カルボメチルセルロース、デキストラン、高粘性ポリマーゲル、タンパク質溶液のうちの少なくとも1つを含む、請求項32〜39のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項41】
注射可能な懸濁液に少なくとも1種の他の物質が混合され、その少なくとも1種の他の物質は、抗生物質、組織の成長を促進する因子、組織の再生を促進する因子からなる群から選択される、請求項32〜40のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項42】
少なくとも1種の他の物質が、骨形態形成因子、線維芽細胞成長因子、アレンドロネート(andronate)、αケトグルタル酸、シンバスタチン、ゲンタマイシン、合成コラーゲンI型、および少なくとも1種の活性エナメル物質(この活性エナメル物質は、エナメルマトリクス、エナメルマトリクス誘導体またはエナメルマトリクスタンパク質またはこれらの組み合わせである)からなる群から選択される、請求項41に記載の使用法。
【請求項43】
少なくとも1種のフッ素化合物、塩酸、硫酸、亜リン酸、過酸化水素(H)および有機過酸化物からなる群から選択される過酸化物化合物またはシュウ酸またはこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の化学物質で粒子を前処理するか、フッ素化ガスまたは塩素化ガスでのドライエッチングによって粒子を前処理する、請求項32〜42のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項44】
歯周炎、インプラント周囲炎、骨炎からなる群から選択される炎症症状および/または細菌性の症状を治療するための薬剤として用いられる、請求項32〜43のいずれか一項に記載の使用法。

【公表番号】特表2010−519294(P2010−519294A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550830(P2009−550830)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000985
【国際公開番号】WO2008/103082
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509230355)ティグラン テクノロジーズ アーベー(パブル) (2)
【Fターム(参考)】