説明

マイクロ波処理容器用の複合蓋及びその上蓋

【課題】下蓋に形成された穿孔部に指を触れずに、この穿孔部を押し下げてシール蓋に穴を形成できるマイクロ波処理容器用の複合蓋を提供する。
【解決手段】マイクロ波処理容器1のシール蓋11の上方に被着可能な下蓋2と、下蓋2の上方に装着された上蓋3とを有し、下蓋2が、シール蓋11の上方を覆う被覆板部21と、被覆板部21の面内にバネ部を介して連結され且つバネ部のバネ作用によって上下方向に出退可能な穿孔部4とを有し、上蓋3が、少なくとも下蓋2の穿孔部4の上方を覆う被覆板部31を有し、下蓋2の中心軸回りに回転できるように下蓋2に装着されており、上蓋3には、上蓋3を下蓋2の中心軸回りの一方側に回転させた際に、穿孔部4に接触してこれを下方に押し下げる押出突起部5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波照射によって飲食物を加温できるマイクロ波処理容器に用いられる複合蓋等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食物が収納されたカップ状容器の開口部をシール蓋にて密封したマイクロ波処理用包装体が知られている。この包装体を電子レンジに入れてマイクロ波処理すると、飲食物を加温できる。しかしながら、前記包装体は、容器の開口部をシール蓋によって密封しているので、マイクロ波処理時に生じる蒸気によって内圧が上昇する。
かかる内圧上昇を抑制するために、シール蓋として熱可塑性プラスチックシートとアルミニウム薄膜とを積層した積層シートを用い、且つこのアルミニウム薄膜の一部分にスリットを形成した容器が知られている(特許文献1)。
この特許文献1の容器をマイクロ波処理すると、スリット部分にマイクロ波が集中することによって熱可塑性プラスチックシートが溶融し、蒸気を逃がすための穴がシール蓋に生じる。
【0003】
しかしながら、特許文献1の容器においては、溶融した熱可塑性プラスチックシートの一部が落下して飲食物に混入するおそれがあるので、食品衛生上、好ましくない。
【0004】
この点、マイクロ波処理を行う直前に、錐のような穿孔部材を用いてシール蓋に穴を開けておけば、マイクロ波処理時に内圧の上昇を抑制できる上、飲食物にシール蓋の一部が混入することを防ぐことができる。
例えば、特許文献2には、開口部がシール蓋で閉じられた容器に装着されるオーバーキャップであって、オーバーキャップ本体にストラップヒンジを介して連結されたハンドル部材と、前記ハンドル部材から下方に突設された刺し刃部材と、を有するオーバーキャップが開示されている。このオーバーキャップを容器に装着した状態で、ハンドル部材の上面を指で押し下げると、刺し刃部材がシール蓋を突き破り、シール蓋に穴が開く。その後、この容器をマイクロ波処理に供すれば、内圧上昇を抑制できる。
【0005】
しかしながら、飲食物を食する者(以下、飲食者という)が、前記ハンドル部材の押し下げを行うとは限らず、飲食者以外の者が前記ハンドル部材に指を触れると、それを不衛生と感じる飲食者も居ると思われる。例えば、コンビニエンスストア、コーヒーショップ、ファーストフード店などの店員が、ハンドル部材を手で押し、マイクロ波照射した後に、飲食者に渡す場合がある。このような場合に、一部の飲食者が不衛生と感じると、売上げ減少の要因になる。
また、上記ストラップヒンジは複数のストラップ部が所定間隔を開けて配設された構成からなるので、ハンドル部材を押し下げるときに、前記複数のストラップ部の隙間からシール蓋の上に異物が入り込むおそれもある。
【0006】
さらに、何者かが、イタズラ目的などでハンドル部材を押し下げて容器のシール蓋に穴を開けた後、その容器を販売陳列棚に戻し、そのことに気付かずに飲食者が、それを購入するおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2773138号公報
【特許文献2】特開2008−207874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、穿孔部に指を触れずに、穿孔部を押し下げてシール蓋に穴を形成できるマイクロ波処理容器用の複合蓋を提供することである。
本発明の第2の目的は、さらに、シール蓋に穴が開けられていること(又は穴が開けられている可能性があること)を判別できるマイクロ波処理容器用の複合蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマイクロ波処理容器用の複合蓋は、マイクロ波処理容器のシール蓋の上方に被着可能な下蓋と、前記下蓋の上方に装着された上蓋と、を有し、前記下蓋が、前記シール蓋の上方を覆う被覆板部と、前記被覆板部の面内にバネ部を介して連結され且つ前記バネ部のバネ作用によって上下方向に出退可能な穿孔部と、を有し、前記上蓋が、少なくとも前記下蓋の穿孔部の上方を覆う被覆板部を有し、前記下蓋の中心軸回りに回転できるように下蓋に装着されており、前記上蓋には、上蓋を下蓋の中心軸回りの一方側に回転させた際に、前記穿孔部に接触してこれを下方に押し下げる押出突起部が設けられている。
【0010】
上記マイクロ波処理容器用の複合蓋は、上蓋に押出突起部が設けられているので、上蓋を下蓋の中心軸回りの一方側に回転させることにより、穿孔部に指を触れず、押出突起部を介して穿孔部を下方に押し下げることができる。
【0011】
本発明の好ましいマイクロ波処理容器用の複合蓋は、前記押出突起部が、前記上蓋の被覆板部から下方に突設されており、前記押出突起部の突出量が、前記中心軸回りの一方側を最小とし且つ前記一方側とは反対側に向かって徐々に又は段階的に増加している。
かかる複合蓋は、押出突起部の突出量が、前記中心軸回りの一方側とは反対側に向かって徐々に又は段階的に増加しているので、下蓋の中心軸回りの一方側への上蓋の回転に従い、押出突起部を介して穿孔部を徐々に下方に押し下げることができる。従って、上蓋を回転させたときに押出突起部が穿孔部に引掛かるなどして、穿孔部の押し下げが遅滞することもなく、押出突起部を介して、穿孔部を円滑に押し下げることができる。
穿孔部の押し下げにより、マイクロ波処理容器のシール蓋に穴を開けることができる。シール蓋に穴を開けた後のマイクロ波処理容器は、マイクロ波照射時に内圧が極度に上昇することなく、飲食物を加温できる。
【0012】
本発明の好ましいマイクロ波処理容器用の複合蓋は、前記下蓋の穿孔部を基準としてその穿孔部よりも前記中心軸回りの一方側に前記押出突起部が位置しているときに、前記中心軸回りの一方側とは反対側に前記上蓋が回転することを規制する規制手段が設けられている。
かかる複合蓋は、下蓋の中心軸回りの一方側とは反対側に上蓋が回転することを規制する規制手段が設けられているので、上蓋を中心軸回り一方側に回転させて押出突起部を介して穿孔部を押し下げた後、その上蓋の回転を規制できる。
従って、例えば、何者かがイタズラ目的などで、上蓋を回転させて穿孔部を押し下げて容器のシール蓋に穴を開けた後、上蓋を元の位置に回し戻して陳列棚などに戻すような不正行為を防止できる。
なお、下蓋の穿孔部を基準としてその穿孔部よりも中心軸回りの一方側に押出突起部が位置するように上蓋が下蓋に対して装着されていることを見れば、上蓋を回転させた可能性があることが判る。このため、穿孔部を介してシール蓋に穴が開けられていること又は穴が開けられている可能性があることを判別できる。
【0013】
本発明の好ましいマイクロ波処理容器用の複合蓋は、前記上蓋の下蓋に対する初期装着位置を決める位置決め手段が設けられている。
かかる複合蓋は、上蓋の下蓋に対する初期装着位置を決める位置決め手段が設けられているので、初期装着位置に装着された上蓋を回転させにくくなる。従って、何者かがイタズラ目的などで、上蓋を不正に回転させることを行い難い。
【0014】
本発明の好ましいマイクロ波処理容器用の複合蓋は、前記位置決め手段が、前記上蓋又は下蓋から突設され且つ前記上蓋との境界部分に脆弱部を有する位置決め突起部と、前記下蓋又は上蓋に設けられ且つ前記位置決め突起部が嵌り込む位置決め嵌合凹部と、から構成されている。
かかる複合蓋は、上蓋(又は下蓋)から突設された位置決め突起部が下蓋(又は上蓋)に設けられた位置決め嵌合凹部に嵌合することにより、上蓋が初期装着位置において装着されている。従って、何者かがイタズラ目的などで、上蓋を不正に回転させることを行い難い。
一方、この上蓋を強い回転力で回転させると、脆弱部において位置決め突起部が折れるため、下蓋の中心軸回りの一方側に回転させ、押出突起部によって穿孔部を押し下げることができる。位置決め突起部が折れると、上蓋を元の位置に戻しても、再び位置決め突起部が位置決め嵌合凹部に嵌合しない。従って、何者かが上蓋を回転させた後には、上蓋を弱い回転力で回転させることができるので、上蓋が不正に回転されたかどうかを簡単に判別できる。
【0015】
本発明の別の局面によれば、マイクロ波処理容器用の上蓋を提供する。
このマイクロ波処理容器用の上蓋は、マイクロ波処理容器のシール蓋の上方に被着される下蓋に装着されるマイクロ波処理容器用の上蓋であって、前記下蓋に形成された穿孔部の上方を少なくとも覆う被覆板部を有し、前記下蓋の中心軸回りに回転できるように下蓋に装着可能であり、前記下蓋の中心軸回りの一方側に回転させた際に、前記穿孔部に接触してこれを下方に押し下げる押出突起部が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のマイクロ波処理容器用の複合蓋は、下蓋の穿孔部に指を触れず、上蓋を回転させることにより、穿孔部を押し下げて容器のシール蓋に穴を形成することができる。
かかるマイクロ波処理容器用の複合蓋を容器に装着すれば、飲食者に不衛生と感じさせることもなく、マイクロ波処理容器内の飲食物を加温できる。
また、本発明の好ましいマイクロ波処理容器用の複合蓋は、シール蓋に穴が開けられていること又は穴が開けられている可能性があることを判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1つの実施形態に係るマイクロ波処理用包装体の分解斜視図。
【図2】1つの実施形態に係るマイクロ波処理容器用の下蓋の平面図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】1つの実施形態に係るマイクロ波処理容器用の上蓋の平面図。
【図5】同底面図。
【図6】図4のB−B線断面図。
【図7】図4のC−C線断面図。
【図8】1つの実施形態に係る複合蓋(上蓋が下蓋に対して初期装着位置に装着された複合蓋)が容器に装着されたマイクロ波処理用包装体の平面図。
【図9】図8のD−D線断面図。ただし、容器の下方部を省略している。
【図10】図8の包装体の上蓋を中心軸回り一方側へ回転させ始めたときの状態を示す平面図。
【図11】図10のE−E線断面図。ただし、容器の下方部を省略している。
【図12】図10の包装体の上蓋を更に中心軸回り一方側へ回転させたときの状態を示す平面図。
【図13】図12のF−F線断面図。ただし、容器の下方部を省略している。
【図14】(a)、(b)は、変形例に係る押出突起部及び穿孔部の部分断面図。
【図15】(a)、(b)は、変形例に係る押出突起部及び穿孔部の部分断面図。
【図16】(a)は、位置決め突起部及び位置決め嵌合凹部が形成された複合蓋の部分断面図、(b)は、そのG−G線端面図。
【図17】変形例に係る複合蓋が容器に装着されたマイクロ波処理用包装体の平面図。
【図18】図17のH−H線断面図。ただし、容器の下方部を省略している。
【図19】図17の包装体の上蓋を中心軸回り一方側へ回転させた後の状態を示す平面図。
【図20】図19のI−I線断面図。ただし、容器の下方部を省略している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
なお、「上」及び「下」の方向を示す用語は、容器を載置面上に置いた状態を基準とする。
【0019】
[マイクロ波処理用包装体]
図1に於いて、10は、飲食物をシール蓋11にて密封したマイクロ波処理容器1と、容器1のシール蓋11の上方を覆うべく容器1に被着された下蓋2と、下蓋2の上方に装着された上蓋3と、を有するマイクロ波処理用包装体を示す。
図1は、容器1、下蓋2及び上蓋3を分解して表している。これらが装着された状態の包装体10は、図8及び図9を参照されたい。
図示したマイクロ波処理用包装体10の容器内には、飲食物として、コーヒーや紅茶などの飲料が収納されている。このマイクロ波処理用包装体10においては、飲料をマイクロ波によって加温した後、下蓋2を容器1から外さずに下蓋2の筒部22に口を当てて飲料を飲む形式である。
もっとも、本発明のマイクロ波処理容器1における飲食物の種類及びその食し方は、上記のようなものに限定されるわけではない。例えば、飲食物は、調理済み粥などの食品でもよい。また、包装体10は、上蓋3、下蓋2及びシール蓋11を取り外して飲食物を食するような形式でもよい。
【0020】
容器1は、飲食物が収納された収納部を有する上面開口型の容器本体12と、容器本体12の収納部を密封状に閉塞するため、上端開口部を塞ぐシール蓋11と、を有する。シール蓋11は、通常、容器本体12の環状のフランジ部13上に接着されている。
容器本体12の形状は、例えば平面視円形状で且つ全体として略カップ状である。シール蓋11は、従来周知のものと同様に、例えば、シーラント層及び光バリア層を有する柔軟な合成樹脂製シートからなる。
【0021】
[下蓋及び上蓋を有するマイクロ波処理容器用の複合蓋]
マイクロ波処理容器用の複合蓋は、下蓋2及び上蓋3から構成されている。
上蓋3は、下蓋2の上方から下蓋2に着脱自在である。上蓋3は、下蓋2に装着された状態において、下蓋2の中心軸回りの一方側及びその反対側にそれぞれ回転させることができる。
なお、下蓋の中心軸は、下蓋被覆板部の中心点を通り且つ下蓋被覆板部に直交する軸を意味し、下蓋の中心軸回りの一方側は、下蓋の周方向一方側(本実施形態では、下蓋を上から見て、反時計回り)を意味し、下蓋の中心軸の一方側とは反対側は、下蓋の周方向他方側(本実施形態では、下蓋を上から見て、時計回り)を意味する。
以下、下蓋の中心軸回りの一方側を「中心軸回り一方側」と記し、下蓋の中心軸回りの一方側とは反対側を「中心軸回り反対側」と記す。
【0022】
上蓋3は、下蓋2に対する初期装着位置において、下蓋2に装着されている。上蓋3が下蓋2の初期装着位置に装着された状態の複合蓋は、図8及び図9を参照されたい。
なお、上蓋の下蓋に対する初期装着位置とは、下蓋被覆板部の中心点と穿孔部とを通る仮想直線を境界として下蓋を2つの領域に分けたとき(その1つの領域は前記穿孔部を基準にして中心軸回り一方側の領域であり、もう1つの領域は前記穿孔部を基準にして中心軸回り反対側の領域である)、押出突起部の最大突出部が前記穿孔部を基準にして中心軸回り反対側の領域に位置するように、上蓋が下蓋に装着される位置をいう。
【0023】
(下蓋)
下蓋2は、上記容器1の上方に被着可能である。
具体的には、下蓋2は、図2及び図3に示すように、シール蓋11の上方を覆う被覆板部21(以下、下蓋被覆板部21という)と、下蓋被覆板部21の周縁から上方に突設された略円筒状の筒部22と、前記筒部22の外周縁から下方に突設され且つ容器1のフランジ部13の周縁に接する周側面部23(以下、下蓋周側面部23という)と、下蓋被覆板部21の面内に形成された切開部24と、下蓋被覆板部21の面内にバネ部を介して連結され且つそのバネ作用によって上下方向に出退可能な穿孔部4と、を有する。
【0024】
下蓋被覆板部21の形状は、平面視円形状であり、下蓋周側面部23の形状は、略円筒状である。下蓋周側面部23は、筒部22を介して下蓋被覆板部21に一体的に連結されている。図9に示すように、この下蓋周側面部23が容器1のフランジ部13の周縁に係合することにより、下蓋2は容器の上方に被着される。
切開部24は、特開2008−207874の切開部材と同様な構造を有している。すなわち、切開部24は、先端に先鋭な刃先が形成された刃部241と、指掛け部242と、を有する。指掛け部242は、下蓋被覆板部21の上面から上方に延設され、指掛け部242の上端は、筒部22の最大高さ部分と略同じ高さ又はこれよりも少し下方とされている。
なお、上記下蓋被覆板部21、下蓋周側面部23、筒部22、切開部24の構成及びその作用効果は、特開2008−207874と略同様であるので、それを参照されたい。
【0025】
穿孔部4は、切開部24が設けられた位置から180度の位置に設けられている(穿孔部4と切開部24とは、下蓋被覆板部21の中心を挟んだ対向位置に設けられている)。
下蓋被覆板部21の前記180度の位置には、所定形状(例えば、平面視略円形)の開口部25が形成され、この開口部25の周縁からその中心方向に向かって複数のストラップヒンジ部26が所定間隔を開けて放射状に延設されている。このストラップヒンジ部26は、例えば、3本であり、開口部25の周方向に等間隔に設けられている。各ストラップヒンジ部26は、その一端部が開口部25の周縁に一体的に連結され、且つその他端部が穿孔部4に一体的に連結されている。各ストラップヒンジ部26の平面視形状は、開口部25の半径上に延びる直線状でもよいが、本実施形態では、渦巻き状に湾曲されている。ストラップヒンジ部26は、下蓋被覆板部21に対して相対直線変位可能であって、バネ作用を有するバネ部に相当する。
【0026】
なお、図示例では、ストラップヒンジ部26は、下蓋被覆板部21の上面から少し下がった位置に設けられている(従って、穿孔部4の下方部は、下蓋被覆板部21の上面よりも下方に下がっている)が、これに限定されず、ストラップヒンジ部26は、下蓋被覆板部21と同一面上に設けられていてもよいし、或いは、下蓋被覆板部21の上面から少し上がった位置に設けられていてもよい。
【0027】
穿孔部4は、各ストラップヒンジ部26の他端部に連結されたハンドル部41と、ハンドル部41の下面から下方に突設された針状の刺し刃部42と、を有する。
ハンドル部41は、ストラップヒンジ部26に連結された筒状部411と、筒状部411の上端に形成された天板部412と、からなる。前記筒状部411は、上方に向かうに従って縮径する筒状(略円錐台筒状)である。天板部412は、平面視略円形状であり、天板部412の下面から刺し刃部42が突設されている。ハンドル部41は、下蓋被覆板部21の上面よりも上方に突出していることが好ましく、本実施形態では、天板部412が下蓋被覆板部21の上面と筒部22の上面の間に位置している。従って、前記筒状部411の上方部は、下蓋被覆板部21の上面よりも上方に突出している。
【0028】
本実施形態では、天板部412の下蓋被覆板部21の上面に対する突出高さ(天板部412の上面と下蓋被覆板部21の上面との間の長さ)が、穿孔部4の最大進出距離に相当する。この突出高さは、下蓋2を容器1に被着したときの、下蓋被覆板部21とシール蓋11との隙間などを考慮して適宜設定できるが、一般的には、3mm〜10mm程度である。
刺し刃部42は、その下端部(針先)が下蓋周側面部23の下端部と略同じ高さ又は下蓋周側面部の下端部よりも少し上方に位置するように延設されている。
【0029】
穿孔部4に荷重が加わっていない状態では、上述のように、天板部412及び筒状部411は、下蓋被覆板部21の上面よりも上方に突出している。一方、上蓋3を回転させて押出突起部5を介して穿孔部4に上方から荷重を加えると、天板部412及び筒状部411は下方に移動し、前記荷重が解除されると、これらは元の位置に戻るようになっている。このように穿孔部4は、バネ部のバネ作用により上下方向に出退可能である。
なお、下蓋2は、通常、ポリプロピレンなどの合成樹脂を射出成形することにより形成できる。また、下蓋2は、透明又は不透明の何れでもよいが、シール蓋11などを透視できないようにするため、下蓋2は、不透明であることが好ましい。
【0030】
(上蓋3)
次に、上蓋3は、下蓋2の上方に被着可能である。
具体的には、上蓋3は、図4〜図7に示すように、少なくとも下蓋2の穿孔部4の上方を覆う被覆板部31(以下、上蓋被覆板部31という)と、上蓋被覆板部31の周縁から上方に突設された略円筒状の嵌合筒部32と、前記嵌合筒部32の外周縁から下方に突設され且つ下蓋周側面部23の外面に接する周側面部33(以下、上蓋周側面部33という)と、下蓋2の穿孔部4に接触し且つ穿孔部4を下方に押し下げるための押出突起部5と、を有する。
【0031】
上蓋被覆板部31の形状は、平面視円形状であり、上蓋周側面部33の形状は、略円筒状である。
上蓋被覆板部31には、その平面視略半円状の領域において下方に大きく凹んだ第1凹み領域311と、残る平面視略半円状の領域において前記第1凹み領域311よりも凹みが小さい第2凹み領域312と、が形成されている。第2凹み領域312は、嵌合筒部32の上面よりも僅かに下方に位置している。従って、上蓋被覆板部31の内面において、第1凹み領域311と第2凹み領域312の間には、段差面313が形成されている。
この第2凹み領域312の範囲内に下蓋2の指掛け部242が対応するように、上蓋3は下蓋2に装着される。また、上蓋3を下蓋2に装着した状態で、第2凹み領域312の内面は、指掛け部242の上端部に接触しない。そして、第2凹み領域312は上蓋被覆板部31の略半円状の領域に形成されているので、穿孔部4を押し下げるために上蓋3を所定量回転させるときには、指掛け部242が上蓋3の回転障害とはならない。
【0032】
上蓋周側面部33は、嵌合筒部32を介して上蓋被覆板部31に一体的に連結されている。この上蓋周側面部33が下蓋周側面部23の外面に接することにより、上蓋3は下蓋2の上方に被着される。また、上蓋3は、その上蓋周側面部33の内面を下蓋周側面部23の外面上に摺動させることにより、下蓋2に対して回転可能である。
また、嵌合筒部32は、上蓋3を下蓋2に装着したときに、下蓋2の筒部22に被さる部分である。
【0033】
押出突起部5は、上蓋被覆板部31の内面(下面)から下方に突設されている。押出突起部5の突出量(上蓋被覆板部31の内面から下方への高さ)は、中心軸回り一方側を最小とし且つ中心軸回り反対側に向かって徐々に増加している。
【0034】
押出突起部5は、中心軸回り一方側においてその突出量が最も小さい最小突出部と、中心軸回り反対側においてその突出量が最も大きい最大突出部と、を有する。具体的には、押出突起部5は、上蓋被覆板部31の内面から中心軸回り反対側に延びる傾斜面51と、前記傾斜面51の先端部(この先端部は、中心軸回り反対側に位置する端部であって、前記最大突出部である)に連設され且つ上蓋被覆板部31の内面から略直交して延びる係合面52と、を有する。
前記傾斜面51は、上蓋被覆板部31の内面に対して鈍角状に延出された面である。前記傾斜面51と上蓋被覆板部31の内面との成す角は、鈍角であれば特に限定されず、例えば、120度〜175度であり、好ましくは、135度〜170度である。
この押出突起部5は、上蓋3を回した際に、下蓋2の穿孔部4に接触する半径位置に配置されている。
【0035】
また、上蓋3には、初期装着位置に装着された上蓋3が中心軸回り反対側に回らないようにするための、第1ストッパー部34が設けられている。
上記第1ストッパー部34は、上蓋被覆板部31の内面から下方に突設されており、下蓋2の指掛け部242の一方の側部に当接している。
図8に示すように、第1ストッパー部34が指掛け部242に当たるので、初期装着位置に装着されている上蓋3は、中心軸回り反対側へ回転し過ぎることはない。
【0036】
なお、第1ストッパー部34の形成位置は、特に限定されないが、例えば、図8及び図9に示すように、第1ストッパー部34が下蓋2の指掛け部242の一方の側部に当接しているときに、押出突起部5の傾斜面51の中途部分が、穿孔部4を押し下げない程度で穿孔部4のハンドル部41の角部(筒状部411と天板部412の連結角部)に接するような位置が好ましい。このように第1ストッパー部34及び押出突起部5がそれぞれ配置されていることにより、初期装着位置にある上蓋3を中心軸回り反対側へ回転させることができず、一方、その上蓋3を中心軸回り一方側へ少し回すだけで、押出突起部5を介して穿孔部4を下方に押し下げることができる。
【0037】
もっとも、第1ストッパー部34と押出突起部5の配置は、上記に限られず、適宜変更可能である。例えば、第1ストッパー34が下蓋2に係止されているときに、押出突起部5が穿孔部4に接しておらず且つ押出突起部5が穿孔部4を基準にして中心軸回り反対側に位置するように、第1ストッパー34及び押出突起部5が配置されていてもよい。また、第1ストッパー部34が下蓋2に係止されていないときに(第1ストッパー部34が下蓋2の指掛け部242に当接しておらず、中心軸一方側に少し寄っているときに)、押出突起部5が穿孔部4に接しておらず且つ押出突起部5が穿孔部4を基準にして中心軸回り反対側に位置するように、第1ストッパー34及び押出突起部5が配置されていてもよい(押出突起部5と穿孔部4が少し又は十分に離れている)。このように押出突起部5と穿孔部4が離れていれば、流通過程などにおいて上蓋3に衝撃が加わって上蓋3が振動しても、穿孔部4が下方に押し下げられるおそれがないので好ましい。
【0038】
なお、本発明の複合蓋においては、第1ストッパー部34及び第2ストッパー部35を必ずしも設ける必要はない。このため、第1ストッパー部34を設けていない場合には、初期装着位置にある上蓋3は、その押出突起部5の傾斜面51の中途部分が穿孔部4を押し下げない程度で穿孔部4のハンドル部41の角部に接しているか、或いは、押出突起部5が穿孔部4に接しておらず且つ中心軸反対側に寄っている(つまり、上記と同様に、押出突起部5と穿孔部4が少し又は十分に離れている)。
【0039】
さらに、上蓋3には、第2ストッパー部35が設けられている。第2ストッパー部35は、上蓋3を中心軸回り一方側に回して穿孔部4を下方に押し下げた後、その穿孔部4よりも前記中心軸回り一方側に押出突起部5が位置しているときの上蓋3が、中心軸回り一方側に回り過ぎることを防止する。
第2ストッパー部35は、例えば、上蓋被覆板部31の段差面313から構成されている。初期装着位置から中心軸回り一方向へと上蓋3を回転させていくと、図12及び図13に示すように、第2ストッパー部35(段差面313)が下蓋2の指掛け部242の他方の側部に当接するので、上蓋3は、それ以上中心軸回り一方側に回らなくなる。
【0040】
また、上記上蓋3及び下蓋2には、下蓋2の穿孔部4を基準としてその穿孔部4よりも中心軸回り一方側に押出突起部5が位置しているときの上蓋3が、中心軸回り反対側へそれぞれ回転することを規制する規制手段が設けられている。
この規制手段は、例えば、上蓋3に形成された係合突部37と下蓋2に形成された係合凹部27とからなり、この係合突部37と係合凹部27が凹凸嵌合することにより、上蓋3の下蓋2に対する回転を規制できる。
【0041】
この係合突部37は、上蓋3の嵌合筒部32の内面から内側に向かって突設されており、係合凹部27は、下蓋2の筒部22の外面に凹設されている。この係合突部37の突出量(嵌合筒部32の内面からの高さ)は、中心軸回り一方側を最小とし且つ中心軸回り反対側に向かって徐々に又段階的に増加している。
従って、係合突部37は、中心軸回り一方側においてその突出量が最も小さい最小突出部と、中心軸回り反対側においてその突出量が最も大きい最大突出部と、を有する。具体的には、係合突部37は、嵌合筒部32の内面から前記中心軸回り反対側に延びる傾斜面と、前記傾斜面の先端部に連設され且つ嵌合筒部32の内面から略直交して延びる係合面と、を有する。
【0042】
また、係合凹部27は、前記係合突部37が嵌り込み且つ係合突部37の係合面52に対向する対向面を有する凹部である。
係合突部37と係合凹部27の形成位置は、下蓋2の穿孔部4を基準としてその穿孔部4よりも中心軸回り一方側に押出突起部5が位置しているときに係合突部37が係合凹部27に嵌合することを条件として、特に限定されない。本実施形態では、第2ストッパー部35(段差面313)が下蓋2の指掛け部242の他方の側部に当接すると略同時に、係合突部37が係合凹部27に嵌合するような位置に、係合突部37及び係合凹部27はそれぞれ形成されている。
なお、上記とは反対に、上記係合突部37を下蓋2に形成し、且つ、上記係合凹部27を上蓋3に形成してもよい。
【0043】
さらに、上蓋被覆板部31の面内には、覗き窓部6が開口されている。この覗き窓部6の形成位置は特に限定されないが、本実施形態では、覗き窓部6は、上蓋被覆板部31の第2凹み領域312であって、押出突起部5の形成部分以外の箇所に形成されている。
覗き窓部6を介して、下蓋被覆板部21の上面を視認できる。例えば、上蓋3が初期装着位置にあるときに、覗き窓部6に対応する下蓋被覆板部21の上面に「未開封を示す表示(文字や色模様など)」(この表示は図示せず)を施しておくことにより、上蓋3を回転させておらず且つシール蓋11に穴が開いていないことを視覚を以て簡易に判別できる。一方、上蓋3を中心軸回り一方側に回転させた後に覗き窓部6に対応する下蓋被覆板部21の上面に「開封済みを示す表示」(この表示は図示せず)を施しておくことにより、上蓋3を回転させ且つシール蓋11に穴が開いていることを視覚を以て簡易に判別できる。
【0044】
上蓋3は、通常、ポリプロピレンなどの合成樹脂を射出成形することにより形成できる。また、上蓋3は、透明又は不透明の何れでもよい。上蓋3が透明である場合には、上記覗き窓部6を開口する必要はなく、この場合には、所望の部分(覗き窓部6を形成したい部分)を除いて、上蓋3に着色を施して不透明処理を行うことにより、上蓋3に上記覗き窓部6を形成できる。
なお、上記覗き窓部6は、上蓋被覆板部31の一部分を切り欠いた開口に限られず、例えば、覗き窓部6の形成部分だけを透明な材質を用い且つそれ以外を不透明な材質を用いて上蓋3を形成してもよい(つまり、覗き窓部6を介して下蓋2を視認できれば良いので、覗き窓部6は、開口に限られない)。
上記透明な上蓋3に不透明処理を行う、又は、透明材料と不透明材料で上蓋を形成するなどの手段によれば、上蓋3は下蓋2に通じる開口を有しないので、下蓋2上に粉塵などが入り込みことがなく、より衛生的で好ましい。
【0045】
[マイクロ波処理容器用の複合蓋の使用例]
上記下蓋2及び上蓋3からなる複合蓋は、マイクロ波処理容器1に装着して使用される。
具体的には、図8及び図9に示すように、上蓋3が下蓋2に対して初期装着位置に装着された状態の複合蓋を、マイクロ波処理容器1のシール蓋11の上方に被着することにより、マイクロ波処理用包装体10を準備する。
上蓋3が下蓋2の初期装着位置に装着された複合蓋は、第1ストッパー部34が指掛け部242の一方の側部に当接し、且つ押出突起部5の傾斜面51の中途部分が穿孔部4を押し下げない程度で穿孔部4のハンドル部41に接していると共に、覗き窓部6を通じて未開封を示す表示が見えている。
【0046】
この位置にある上蓋3を中心軸回り一方側へと回転させると、図10及び図11に示すように、押出突起部5にて穿孔部4が押し下げられる。なお、初期装着位置にある上蓋3を、誤って中心軸回り反対側に回すことも考えられるが、第1ストッパー部34が設けられているので、そのような誤った回し方では上蓋3は殆ど回転しない。
上記のように、押出突起部5は、その突出量が中心軸回り反対側に向かって徐々に増加しているので(傾斜面51を有するので)、上蓋3を中心軸回り一方側へ回転させていくと、押出突起部5の傾斜面51に従い、穿孔部4が徐々に下方に押し下げられ、刺し刃部42の先端が下方に進出する。押出突起部5の最大突出部が、穿孔部4の天板部412に至ると、穿孔部4の刺し刃部42の先端が最も下方に進出する。刺し刃部42が進出することにより、シール蓋11に穴が形成される。
【0047】
更に上蓋3を中心軸回り一方側へ回転させていくと、押出突起部5が穿孔部4の天板部412を乗り越えるので、バネ部によって穿孔部4の刺し刃部42はシール蓋11から抜けて元の位置に戻る。更に上蓋3を回転させていくと、図12及び図13に示すように、第2ストッパー部35が下蓋2の指掛け部242の他方の側部に当接し、且つ上蓋3の係合突部37が下蓋2の係合凹部27に嵌合すると共に、覗き窓部6を通じて開封済みを示す表示が見えるようになる。
下蓋2の穿孔部4を押し下げた後、穿孔部4を基準としてその穿孔部4よりも中心軸回り一方側に押出突起部5が位置している(この位置を「穿孔部通過後位置」という場合がある)。
【0048】
穿孔部通過後位置にある上蓋3は、第2ストッパー部35が指掛け部242に当接しているので、上蓋3をそれ以上中心軸回り一方側へ回転させることができなくなる。また、係合突部37と係合凹部27が凹凸嵌合することにより(規制手段)、上蓋3を中心軸回り反対側へ回転させ難くなる。従って、例えば、何者かがイタズラ目的などで、上蓋3を回転させて穿孔部4を押し下げて容器のシール蓋11に穴を開けた後、上蓋3を元の位置に回し戻して陳列棚などに戻すような不正行為を防止できる。
また、上蓋3が穿孔部通過後位置に装着されていることを見れば、上蓋3を回転させた可能性があることが判る。このため、穿孔部4を介してシール蓋11に穴が開けられていること又は穴が開けられている可能性があることを判別できる。
【0049】
なお、中心軸回り反対側に強い回転力を上蓋3に加えることにより、係合突部37と係合凹部27の凹凸嵌合を外した場合には、穿孔部通過後位置にある上蓋3は中心軸回り反対側に回転するが、押出突起部5の係合面52が穿孔部4の筒状部411に当たるので、中心軸回り反対側に回したときには、押出突起部5が穿孔部4を乗り越え難い。このため、中心軸回り反対側に回転させた後の上蓋3を、初期装着位置に戻すことは困難である。この押出突起部5の係合面52と穿孔部4の筒状部411は、穿孔部4よりも中心軸回り一方側に押出突起部5が位置しているときに、中心軸回り反対側に上蓋3が回転することを規制する規制手段(第2の規制手段)である。
【0050】
上記マイクロ波処理容器用の複合蓋によれば、下蓋2の穿孔部4に指を触れずに、穿孔部4を押し下げてシール蓋11に穴を形成できる。従って、飲食者以外の者がシール蓋11に穴を開けるときに、飲食者に不衛生と感じさせることはない。
シール蓋11に穴を開けた後の包装体10を電子レンジに入れてマイクロ波処理することにより、極度な内圧上昇もなく、容器内の飲食物を加温できる。
加温後、上蓋3を下蓋2から外し、切開部24によってシール蓋11に飲み口を開けた後、この飲み口から飲食物を注出できる。また、加温後、上蓋3及び下蓋2を容器から外し、シール蓋11を引き剥がして容器の上端開口部を開放した後、この上端開口部から飲食物を飲食できる。
【0051】
[マイクロ波処理容器用の複合蓋などの変形例]
本発明のマイクロ波処理容器用の複合蓋並びにその上蓋及び下蓋などは、上記実施形態に例示のものに限られず、本発明の意図する範囲で、適宜設計変更することができる。以下、本発明のこれらの変形例について説明するが、主として上記実施形態と異なる構成及び作用について説明し、同様の構成についてはその説明を省略し、用語及び図番をそのまま援用することがある。
【0052】
上記実施形態の、上蓋3が初期装着位置に装着された複合蓋が容器に装着されたマイクロ波処理用包装体10において、上蓋3が初期装着位置から回転しないように保持し且つ複合蓋が容器から外れないようにするために、この複合蓋と容器に跨ってそれらの外側に筒状シュリンクフィルムが熱収縮装着されていてもよい。また、同様に複合蓋が容器から外れないようにするために、複合蓋と容器に跨って、タックラベルが貼付されていてもよい。
【0053】
上記実施形態においては、押出突起部5は、その突出量が中心軸回り反対側に向かって徐々に増加しているが、例えば、図14(a)に示すように、押出突起部5の突出量が、中心軸回り一方側を最小とし且つ中心軸回り反対側に向かって段階的に増加していてもよい。つまり、上記実施形態で示した押出突起部5の傾斜面51を、小さな段部が連続した階段状に形成してもよい。同図に示すような階段状の傾斜面51を有する押出突起部5も、上記平坦状の傾斜面51を有する押出突起部5と同様に、穿孔部4を下方に押し下げることができる。
【0054】
また、上記実施形態においては、押出突起部5に傾斜面51が形成されているが、図14(b)に示すように、穿孔部4の天板部412が傾斜面とされていてもよい。具体的には、穿孔部4は、下蓋被覆板部21の上面から上方に突出しており、その突出量が、中心軸回り反対側を最小とし且つ中心軸回り一方側に向かって徐々に又は段階的に増加している。このように傾斜面を有する天板部412が形成された穿孔部4でも、上記実施形態と同様に、上蓋3を中心軸回り一方側に回転させることにより、押出突起部5を介して穿孔部4を押し下げることができる。なお、押出突起部5及び穿孔部4の双方に、上記のような傾斜面がそれぞれ形成されていてもよい。
【0055】
さらに、上記実施形態においては、押出突起部5の係合面52は、上蓋被覆板部31の内面から略直交しているが、例えば、図15(a)に示すように、押出突起部5の係合面52が、上蓋被覆板部31の内面に対して鋭角状となるように形成されていてもよい。この場合、穿孔部4の筒状部411には、その中心軸回り一方側に、下方に向かうに従って刺し刃部42に近づくような傾斜面414が形成されていることが好ましい。このような傾斜面414を有する穿孔部4の筒状部411としては、図示したように、下方に向かうに従って縮径する筒状が挙げられる。
【0056】
上記実施形態で説明したように、穿孔部4を押し下げた後、係合突部37と係合凹部27の凹凸嵌合を強制的に外して、上蓋3を中心軸回り反対側に回したときには、押出突起部5の係合面52が穿孔部4の筒状部411に当たる。このため、押出突起部5が穿孔部4を乗り越え難く、上蓋3の中心軸回り反対側の回転を規制できる。図示した変形例のような鋭角状の係合面52を有する押出突起部5及び傾斜面414を有する筒状部411を有する穿孔部4によれば、上記回転軸回り反対側に上蓋3を回転させたときに、押出突起部5の係合面52の先端部が筒状部411の傾斜面414に噛合するので、押出突起部5が穿孔部4をより乗り越え難くなるので好ましい。
【0057】
また、図15(b)に示すように、押出突起部5の係合面52の下方部に、中心軸回り反対側に突出する噛合突部521を形成し、一方、穿孔部4の筒状部411の中心軸回り一方側の下方部に、中心軸回り反対側に凹んだ噛合凹部415を形成してもよい。この噛合突部521を有する押出突起部5及び噛合凹部415を有する筒状部411を有する穿孔部4によれば、押出突起部5の噛合突部521が筒状部411の噛合凹部415に噛合するので、上記変形例と同様に、押出突起部5が穿孔部4をより乗り越え難くなるので好ましい。
【0058】
さらに、上記実施形態において、上蓋3の下蓋2に対する初期装着位置を決める位置決め手段が設けられていてもよい。位置決め手段は、例えば、上蓋3の一部分と下蓋2の一部分を凹凸嵌合させる手段が挙げられる。例えば、位置決め手段は、図16(a)及び(b)に示すように、上蓋周側面部33の内面から内側に突設された位置決め突起部71と、下蓋周側面部23の外面に凹設された、前記位置決め突起部71が嵌り込む位置決め嵌合凹部72と、からなる。
【0059】
この位置決め突起部71と上蓋周側面部33との境界部分には、位置決め突起部71を上蓋3から分離しやすくするための脆弱部73が形成されている。例えば、脆弱部73は、位置決め突起部71の基部を細く形成した部分からなる。好ましくは、脆弱部73は、図16(b)に示すように、位置決め突起部71の基部の中心軸回り一方側及び反対側にそれぞれ刻設された刻み(例えば断面略V字状の刻み)からなる。このように中心軸回り一方側及び反対側に刻みを形成することにより、上蓋3を強く回したときに、位置決め突起部71が脆弱部73において折れ易くなる。
【0060】
なお、上記脆弱部73を有する位置決め突起部71を下蓋2に設け、且つ、位置決め嵌合凹部72を上蓋3に設けてもよい。
位置決め突起部71と位置決め嵌合凹部72は、上蓋3が初期装着位置にあるときに(例えば、第1ストッパー部34が下蓋2の指掛け部242の一方の側部に当接しているときに)、両者が凹凸嵌合するような位置に、それぞれ形成されている。
【0061】
かかる位置決め手段が設けられている複合蓋は、初期装着位置にある上蓋3を回転させ難いので、何者かがイタズラ目的などで、上蓋3を不正に回転させることを行い難くなる。
また、位置決め手段が脆弱部73を有する位置決め突起部71と位置決め嵌合凹部72とからなる場合には、初期装着位置にある上蓋3を強い回転力で回転させると、脆弱部73において位置決め突起部71が折れるため、下蓋2の中心軸回りの一方側に回転させ、押出突起部5によって穿孔部4を押し下げることができる。位置決め突起部71が折れると、上蓋3を元の位置に戻しても、再び位置決め突起部71が位置決め嵌合凹部72に嵌合しない。従って、上蓋3を回転させた後には、上蓋3を弱い回転力で回転させることができるようになるので、上蓋3が不正に回転されたかどうかを簡単に判別できる。
【0062】
さらに、上記実施形態においては、穿孔部通過後位置にある上蓋3の回転を規制する規制手段は、係合突部37と係合凹部27の凹凸嵌合であったが、例えば、バネ部材を用いた規制手段(第3の規制手段)でもよい。具体的には、図17及び図18に示すように、下蓋被覆板部21の上面の一部分に、板バネ部8を設ける。この板バネ部8の下端部(中心軸回り反対側の端部)は、下蓋被覆板部21の上面に固定され、且つ、板バネ部8の先端部(中心軸回り一方側の端部)は自由端とされている。この板バネ部8は、下蓋被覆板部21の上面に対して斜め方向に延びており、板バネ部8は上方に付勢力を有する。そして、この付勢力に抗して、板バネ部8の先端部は、上蓋被覆板部31の内面によって下方に押さえ付けられている。また、上蓋被覆板部21には、開口窓9が開口されている。この開口窓9は、図示例では、板バネ部8を基準にして中心軸回り反対側の所定位置に形成されている。なお、この開口窓9は、上記覗き窓部6と別に形成してもよいし、開口窓9が覗き窓部6の機能を兼用していてもよい。
【0063】
板バネ部8は、上蓋3が初期装着位置にあるときには上蓋被覆板部31に押さえ付けられ且つ上蓋3が穿孔部通過後位置にあるときには上蓋3の開口窓9から突出するような位置になるように、配置されている。
【0064】
初期装着位置にある上蓋3を、中心軸回り一方向に回転させて穿孔部4を押し下げた後、上蓋3の開口部の下方に板バネ部8が位置するまで上蓋3を回転させると、図19及び図20に示すように、上蓋被覆板部31に押さえ付けられていた板バネ部8が上蓋3の開口窓9から上方に突出する。このように板バネ部8の先端部が上蓋3の開口窓9を通じて上蓋被覆板部31の上面から突出することにより、穿孔部通過後位置にある上蓋3を中心軸回り反対側に回転させることができなくなる(中心軸回り反対側に上蓋3を回そうとしても、開口窓9から突出した板バネ部8が回転障害となる)。また、板バネ部8が上蓋3の開口窓9から上方に突出するので、上蓋3が穿孔部通過後位置にあることを一目で判別することができる。従って、不正行為の有無を簡易に判別できる。
なお、この変形例において、バネ部材として板バネ部を用いたが、これに代えて、スプリングバネやゴム製バネなどをバネ部材として用いてもよい。
【0065】
さらに、上記実施形態では、初期装着位置にある上蓋3を回転させていないことを視覚を以て簡単に判別できるようにするための手段として、上蓋3の覗き窓部6と、この覗き窓部6から視認できる未開封を示す表示及び開封を示す表示と、を例示している。この手段として、その他のものを用いることも可能である。
【0066】
例えば、上蓋3が下蓋2の初期装着位置に装着されている状態で、上蓋3及び下蓋2に跨る目印を付与しておいてもよい。具体的には、例えば、上蓋3が初期装着位置において下蓋2に装着されている状態で、上蓋周側面部33と下蓋周側面部23の同一箇所にそれぞれ目印(例えば、直線や矢印などの表示、或いは、両周側面部23,33の同一箇所を切り欠いておくなど)を設けておく。このように初期装着位置にある上蓋3及び下蓋2の同一箇所に目印を付けておくことにより、初期装着位置にある上蓋3を中心軸回り一方側などに回転させたかどうかを視覚を以て簡単に判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のマイクロ波処理容器用の複合蓋は、マイクロ波処理容器の蓋材として利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1…マイクロ波処理容器、11…シール蓋、2…下蓋、21…下蓋被覆板部、23…下蓋周側面部、24…切開部、27…係合凹部、3…上蓋、31…上蓋被覆板部、33…上蓋周側面部、37…係合突部、4…穿孔部、411…穿孔部の筒状部、412…穿孔部の天板部、42…穿孔部の刺し刃部、5…押出突起部、51…押出突起部の傾斜面、52…押出突起部の係合面、6…覗き窓部、71…位置決め突起部、72…位置決め嵌合凹部、73…脆弱部、8…バネ部材、9…開口窓、10…マイクロ波処理包装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波処理容器のシール蓋の上方に被着可能な下蓋と、前記下蓋の上方に装着された上蓋と、を有するマイクロ波処理容器用の複合蓋であって、
前記下蓋が、前記シール蓋の上方を覆う被覆板部と、前記被覆板部の面内にバネ部を介して連結され且つ前記バネ部のバネ作用によって上下方向に出退可能な穿孔部と、を有し、
前記上蓋が、少なくとも前記下蓋の穿孔部の上方を覆う被覆板部を有し、前記下蓋の中心軸回りに回転できるように下蓋に装着されており、
前記上蓋には、上蓋を下蓋の中心軸回りの一方側に回転させた際に、前記穿孔部に接触してこれを下方に押し下げる押出突起部が設けられていることを特徴とするマイクロ波処理容器用の複合蓋。
【請求項2】
前記押出突起部が、前記上蓋の被覆板部から下方に突設されており、
前記押出突起部の突出量が、前記中心軸回りの一方側を最小とし且つ前記一方側とは反対側に向かって徐々に又は段階的に増加している、請求項1に記載のマイクロ波処理容器用の複合蓋。
【請求項3】
前記下蓋の穿孔部を基準としてその穿孔部よりも前記中心軸回りの一方側に前記押出突起部が位置しているときに、前記中心軸回りの一方側とは反対側に前記上蓋が回転することを規制する規制手段が設けられている、請求項1又は2に記載のマイクロ波処理容器用の複合蓋。
【請求項4】
前記上蓋の下蓋に対する初期装着位置を決める位置決め手段が設けられている、請求項1〜3の何れかに記載のマイクロ波処理容器用の複合蓋。
【請求項5】
前記位置決め手段が、前記上蓋又は下蓋から突設され且つ前記上蓋との境界部分に脆弱部を有する位置決め突起部と、前記下蓋又は上蓋に設けられ且つ前記位置決め突起部が嵌り込む位置決め嵌合凹部と、から構成されている、請求項4に記載のマイクロ波処理容器用の複合蓋。
【請求項6】
マイクロ波処理容器のシール蓋の上方に被着される下蓋に装着されるマイクロ波処理容器用の上蓋であって、
前記下蓋に形成された穿孔部の上方を少なくとも覆う被覆板部を有し、前記下蓋の中心軸回りに回転できるように下蓋に装着可能であり、
前記下蓋の中心軸回りの一方側に回転させた際に、前記穿孔部に接触してこれを下方に押し下げる押出突起部が設けられていることを特徴とするマイクロ波処理容器用の上蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−251716(P2011−251716A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125506(P2010−125506)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】