説明

マイクロ波加熱装置

【課題】複数の給電部それぞれから放射されるマイクロ波を最適に結合させて、被加熱物を所望の状態に加熱する。
【解決手段】加熱室10の底壁面13の略中央に加熱室の外側に向かって凸とした略四角形の凸部16を形成し、凸部16の各側壁面に給電部17a〜17dを配する。マイクロ波発生手段20から各給電部17a〜17dに供給されるマイクロ波の位相は制御部31が制御する。各給電部17a〜17dから放射されたマイクロ波は、凸部16内で衝突し結合して、位相変化に応じた特有の放射分布を形成する。この放射分布を利用して凸部16上方に載置された被加熱物を所望の状態に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の給電部を備えたマイクロ波加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のマイクロ波加熱装置は、一般には直方体形状の加熱室で構成され、一つあるいは複数の給電部を備えている。複数の給電部の構成としては、給電部を加熱室の上壁面と底壁面に設け、専用のマイクロ波発生部からそれぞれの給電部に、マイクロ波を供給したものがある。
【0003】
また、被加熱物の加熱の均一化を促進することを狙いとして加熱室を6面以上の多面体に形成し、各壁面の一部あるいは全部の面から給電部である放射アンテナを加熱室内に突出して配置したものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、互いの放射アンテナを異なる面に配したことで、互いの干渉を防止できるとしている。さらには、放射アンテナがそれぞれ異なる方向を向いているので、放射された電波は加熱室内のあらゆる方向に伝搬し、壁面にて反射して散乱するため、加熱室内で電波は均一に分布するとしている。
【0005】
また、複数のマイクロ波発生部を加熱室壁面に分散配置し、これらのマイクロ波発生部のうち少なくとも二つの壁面に配したマイクロ波発生部を時分割動作させるものがある(たとえば、特許文献2参照)。そして、動作させるために選択したマイクロ波発生部を時分割動作させることで、干渉によるマイクロ波発生部の破壊を防止し、同時動作させることができるとしている。また、直交関係にある壁面に配置したマイクロ波発生部は、加熱室とマイクロ波発生部との結合を適当に選ぶことで、互いに干渉しないように励振させることができ、同時発振が可能であるとしている。
【0006】
また位相器を備えたものとして、半導体発振部と、半導体発振部の出力を複数に分割する分配部と、分配部で分配された出力をそれぞれ増幅する複数の増幅部と、この増幅部の出力を合成する合成部とを有し、分配部と増幅部との間に位相器を設けたものがある(たとえば、特許文献3参照)。
【0007】
そして、位相器はダイオードのオンオフ特性によりマイクロ波の通過線路長を切り替える構成としている。また、合成部は90度および180度ハイブリッドを用いることで合成部の出力を2つにすることができ、位相器を制御することで2出力の電力比を変化させたり、2出力間の位相を同相あるいは逆相にしたりできるとしている。
【0008】
また、この種のマイクロ波加熱装置は、一般には電子レンジに代表されるようにマイクロ波発生部にマグネトロンと称される真空管を用いている。
【特許文献1】特開昭52−19342号公報
【特許文献2】特開昭53−5445号公報
【特許文献3】特開昭56−132793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の複数給電部は、各給電部間の干渉を回避させるように配置させたものであり、それぞれの給電部から放射されたマイクロ波は放射方向がそれぞれ異なっているが、加熱室壁面での反射に伴う散乱およびその散乱したマイクロ波が壁面にぶつ
かってさらに散乱という繰返しにより広範囲の散乱になるので、他の放射アンテナから放射されたマイクロ波からの干渉を防止することは不可能である。
【0010】
また、加熱室壁面に複数のマイクロ波発生部を配置させ、それらを時分割動作させるものにあっては、どのような結合形態であれば、相互干渉を回避できるかの詳細な説明はないが、直交関係の壁面に配置した場合に同時発振が可能であると記載されている。
【0011】
さらに、位相器を備えたものにおいては、合成部の2つの出力から放射されるマイクロ波は、位相器によって位相を変化させることで、2つの放射アンテナからの放射電力比や位相差を任意にかつ瞬時に変化させることは可能だけれども、その放射によってマイクロ波が供給される加熱室内に収納された、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱することは難しい課題を有していた。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、複数の給電部それぞれから放射されるマイクロ波を最適に結合させることで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱するマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明のマイクロ波加熱装置は、供給されるマイクロ波を閉じ込める加熱室のひとつの壁面に加熱室の外側に向かって略四角形の凸部を設け、前記凸部の各側壁面にマイクロ波の給電部を配した構成からなるものであり、それぞれの給電部から放射されるマイクロ波は凸部で衝突して結合し、その結合形態を保って加熱室内に放射させることができ、加熱室内に収納する被加熱物を効率よく加熱する装置を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマイクロ波加熱装置は、複数の給電部それぞれから放射されるマイクロ波を最適に結合させることで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱するマイクロ波加熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の発明は、供給されるマイクロ波を閉じ込める加熱室のひとつの壁面に加熱室の外側に向かって略四角形の凸部を設け、前記凸部の各側壁面にマイクロ波の給電部を配した構成からなるものであり、それぞれの給電部から放射されるマイクロ波は凸部で衝突して結合し、その結合形態を保って加熱室内に放射させることができ、加熱室内に収納する被加熱物を効率よく加熱する装置を提供できる。
【0016】
第2の発明は、特に第1の発明の給電部において、対向する給電部間の距離を供給されるマイクロ波の波長の1/2波長以上とした構成からなり、これにより給電部間の干渉を緩和させるとともに、対向する給電部から放射されるマイクロ波を効果的に結合させることができる。
【0017】
第3の発明は、特に第1の発明の凸部の中心は配置された加熱室壁面の略中央部とした構成からなり、これにより加熱室の左右、前後、上下のそれぞれの方向に、マイクロ波を拡散放射させることができる。
【0018】
第4の発明は、特に第1の発明の給電部に供給するマイクロ波の位相を可変する位相可変器とその制御部を備えた構成からなり、これにより複数の給電部からそれぞれ放射したマイクロ波の結合形態を変化させることができ、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱したり、加熱の均一化を促進させることができる。
【0019】
第5の発明は、特に第1の発明の給電部は矩形形状の開口とし、給電部にマイクロ波を伝送する導波管をそれぞれ備えたものであり、これにより給電部からの放射方向を規定するとともに、導波管を緩衝部材として作用させて、給電部に効率よくマイクロ波を伝送させることができる。
【0020】
第6の発明は、特に第1の発明の凸部は、加熱室の底壁面に配置し、底壁面と所定の間隙をもって配置されるとともに、被加熱物を載置する載置台を備えたものであり、これにより凸部から所定の間隔をもって載置された被加熱物の特定部分の加熱を促進したり、被加熱物全体を所望の状態に加熱することをより促進したりすることができる。
【0021】
第7の発明は、特に第1の発明のマイクロ波が供給される給電部を選択する給電部選択手段を備えたものであり、これにより複数の被加熱物の同時加熱、あるいは被加熱物の特定部分の加熱をより促進させることができる。
【0022】
第8の発明は、特に第1から第7のいずれか一項の発明の給電部に供給するマイクロ波は、半導体素子を用いて構成したマイクロ波発生手段としたものであり、これにより複数の給電部を備える装置をコンパクトに形成できるとともに、各給電部間の位相差を広範囲に可変させることを可能にし、利便性をさらに高めることができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置のブロック図、図2は、同マイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系のブロック図である。
【0025】
図1および図2において、本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収納する略直方体構造からなる加熱室10を有し、加熱室10は金属材料からなる左壁面11、右壁面12、底壁面13、上壁面14、奥壁面15および被加熱物を加熱室10内に収納するために開閉する開閉扉(図示していない)から構成され、供給されるマイクロ波を内部に閉じ込めるように構成している。
【0026】
底壁面13には、底壁面13の略中央(点A)を中心として、加熱室10の外側方向に突出した略四角形の凸部16を設けている(加熱室10内から見ると凹部)。凸部16の4つの側壁面には、それぞれ矩形形状の開口からなる給電部17a〜17dを配設している。そしてこれら給電部17a〜17dを末端とし、給電部17a〜17dにそれぞれマイクロ波を伝送させる導波管18a〜18dを配する。導波管18a〜18dの給電部17a〜17dとは反対側の端部近くに、導波管18a〜18dにマイクロ波を放射する放射部19a〜19dを配設している。
【0027】
また、放射部19a〜19dにマイクロ波を供給するマイクロ波供給系であるマイクロ波発生部20は、半導体素子を用いて構成した発振部21、発振部21の出力を4分配する2段構成からなる3つの電力分配部22a、22b、22c、分配部22b、22cのそれぞれの出力を後段の半導体素子を用いて構成した初段増幅部23a〜23dに導くマイクロ波伝送路24a〜24d、初段増幅部23a〜23dのそれぞれの出力をさらに増幅する半導体素子を用いて構成した主増幅部25a〜25d、主増幅部25a〜25dの出力をマイクロ波発生部20の出力部26a〜26dに導くマイクロ波伝送路27a〜27d、マイクロ波伝送路27a〜27dに挿入した電力検知部28a〜28dとで構成している。マイクロ波発生部20の4つの出力は、同軸伝送手段29a〜29dを介して放
射部19a〜19dにそれぞれ伝送される。
【0028】
放射部19a〜19dは、同軸伝送手段29a〜29dの中心導体を突出させて構成している。給電部17a〜17dにおいて、対向する給電部17a、17b、給電部17c、17dの間のそれぞれの距離(図中凸部16内の両端矢印で示す)は、供給されるマイクロ波の波長の1/2波長以上としている。
【0029】
なお、構成要素として給電部17a〜17dへのマイクロ波の伝送効率を高めるために、導波管18a〜18dの内部にインピーダンス整合素子を付帯させる場合もある。
【0030】
初段増幅部23a〜23dおよび主増幅部25a〜25dは、低誘電損失材料から構成した誘電体基板の片面に形成した導電体パターンにて回路を構成し、各増幅部の増幅素子である半導体素子を良好に動作させるべく、各半導体素子の入力側と出力側にそれぞれ整合回路を配している。
【0031】
マイクロ波伝送路24a〜24d、27a〜27dは、誘電体基板の片面に設けた導電体パターンによって、特性インピーダンスが略50Ωの伝送回路を形成している。電力分配部22a、22b、22cは、それぞれ同一構造のウイルキンソン型の分配器構成としている。電力分配部22を2段接続した構成により、発振部21の出力電力は、略1/4ずつ分配されるとともに、電力分配部22の4つの出力端でのそれぞれのマイクロ波の位相が、略同相として、後続の初段増幅部23a〜23dに出力される。
【0032】
また、マイクロ波伝送路24a〜24dには、それぞれ位相可変器30a〜30dを挿入している。この位相可変器30a〜30dは、印加電圧に応じて容量が変化する容量可変素子を用いて構成し、位相可変範囲は、0度から略180度の範囲としている。
【0033】
また、電力検知部28a〜28dは、加熱室10側からマイクロ波発生部20側にそれぞれ伝送する反射波の電力いわゆる反射電力を抽出するものであり、電力結合度を例えば約40dBとし、反射電力の約1/10000の電力量を抽出する。この電力信号はそれぞれ、検波ダイオード(図示していない)で整流化しコンデンサ(図示していない)で平滑処理し、その出力信号を制御部35に入力させている。
【0034】
制御部31は、使用者が直接入力する被加熱物の加熱条件(矢印32)、あるいは加熱中に被加熱物の加熱状態から得られる加熱情報(矢印33)と、電力検知部28a〜28dからの検知情報に基づいて、マイクロ波発生部20の構成要素である発振部21と、初段増幅部23a〜23dと、主増幅部25a〜25dのそれぞれに供給する駆動電力の制御や、位相可変器30a〜30dに供給する電圧を制御し、加熱室10内に収納された被加熱物を最適に加熱する。
【0035】
また、マイクロ波発生部20には半導体素子の発熱を放熱させる放熱手段(図示していない)を配する。なお、加熱室10の底壁面13に設けた凸部16の加熱室10内側の内部空間を覆うとともに、被加熱物を収納載置する低誘電損失材料からなる載置台34を凸部16と所定の間隙を持たせて配する。
【0036】
以上のように構成されたマイクロ波加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0037】
まず、開閉扉を利用して被加熱物を加熱室10に収納し、その加熱条件を操作部(図示していない)から入力し、加熱開始キーを押す。加熱開始信号32を受けた制御部31の制御出力信号により、マイクロ波発生部20が動作を開始する。制御手段31は、駆動電
源(図示していない)を動作させて、発振部21に電力を供給する。この時、発振部21の初期の発振周波数は、例えば2450MHzに設定する電圧信号を供給し、発振が開始する。
【0038】
発振部21を動作させると、その出力は電力分配部22aにて略1/2分配され、後続の電力分配器22b、22cにてさらに略1/2分配され、4つのマイクロ波電力信号となる。以降、駆動電源を制御して初段増幅部23a〜23dを動作させ、次に主増幅部25a〜25dを動作させる。
【0039】
そして、それぞれのマイクロ波電力信号は並列動作する初段増幅部23a〜23d、主増幅部25a〜25d、電力検知部28a〜28dを経て、出力部26a〜26dにそれぞれ出力される。そして、それぞれの出力は放射部19a〜19dに伝送され、導波管18a〜18dをそれぞれ伝送し、給電部17a〜17dより加熱室10内に放射される。このときの各主増幅部25a〜25dは、それぞれ100W未満、例えば50Wのマイクロ波電力を出力する。
【0040】
加熱室10内に供給されるマイクロ波電力が、被加熱物に100%吸収されると、加熱室10からの反射電力は無しになるが、被加熱物の種類・形状・量が被加熱物を含む加熱室10の電気的特性を決定し、マイクロ波発生部20の出力インピーダンスと加熱室10のインピーダンスとに基づいて、加熱室10側からマイクロ波発生部20側に伝送する反射電力が生じる。
【0041】
電力検知部28a〜28dは、マイクロ波発生部20側に伝送する反射電力と結合し、その反射電力量に比例した信号を検出するものであり、その検出信号を受けた制御部31は、各電力検知部28a〜28dから出力された反射電力に対応する信号の総和が、極小値となる発振周波数の選択を行う。この周波数選択に対して、制御部31は、発振部21の発振周波数を初期の2450MHzから0.1MHzピッチ(例えば、10ミリ秒で1MHz)で低い周波数側に変化させ、周波数可変範囲の下限である2400MHzに到達すると1MHzピッチで周波数を高く変化させ、2450MHzに到達すると再び0.1MHzピッチで周波数可変範囲の上限である2500MHzまで高くする。
【0042】
この周波数可変の中で得られた反射電力に相当する信号の総和が極小となる周波数と、その周波数における反射電力に相当する信号を記憶する。そして、反射電力に相当する信号の総和が極小をとる周波数群において、反射電力に相当する信号が最も小さい周波数を選定し、発振部21をその選定した周波数が発振するように制御するとともに、発振出力を入力された加熱条件に対応した出力が得られるように制御する。これにより、各主増幅部25a〜25dは、それぞれ200Wから300Wのマイクロ波電力を出力する。
【0043】
そして、それぞれの出力は放射部19a〜19dに伝送され、給電部17a〜17dより加熱室10内に放射される。このとき、給電部17aから放射されるマイクロ波信号の位相を基準にすると、その他の給電部17b〜17dより放射されるマイクロ波信号は、略同相の信号としている。
【0044】
また、共通の発振部21を発振源とし、マイクロ波伝送路24a〜24dにそれぞれ挿入した位相可変器30a〜30dに印加する電圧を制御することで、対向および/または近接した給電部17a〜17dから放射するマイクロ波のそれぞれの位相差を最大で逆相(180度差)にすることで、4つの給電部から放射されるマイクロ波の結合状態が変化し、加熱室10内のマイクロ波の伝搬状態を時間的に変化させ、被加熱物の局所加熱の解消をし、加熱の均一化を促進することができる。
【0045】
この各給電部17a〜17dの位相差制御としては、上述したすべと同相とする制御のほかに、例えば、隣接する二組の給電部を同じ位相として、この二組の給電部の間で位相差を変化させる方法、対向する二組の給電部を同じ位相としてこの対向する二組の給電部の間で位相差を変化させる方法、あるいはいずれか一つの給電部のみ位相を変化させる方法の制御を行ってよい。これらの制御は、一つの被加熱物の加熱における加熱進捗情報や複数の被加熱物の同時加熱における各被加熱物の加熱進捗情報に基づいて選択してよい。
【0046】
なお、本実施の形態においては、位相可変器30a〜30dは、すべてのマイクロ波伝送路24a〜24dに挿入したが、対向する給電部のいずれかひとつに対応するマイクロ波伝送路24a〜24dに挿入し、それぞれを個別かつ時間的に制御することで、複数の給電部17a〜17dから放射されるマイクロ波の位相の組合せを変化させる構成としてもよい。
【0047】
また、電力検知部28a〜28dの検知信号に基づいて、反射電力量が少なくなるように位相可変器30a〜30dへの印加電圧を制御することで、加熱の効率を高くでき短時間加熱を図ることもできる。電力検知部28a〜28dが検知する反射電力量が、所定の最大許容反射電力量を超える場合には、制御部31は発振出力を低下させるように発振部21あるいは初段増幅部23a〜23dおよび主増幅部25a〜25dへの供給電力を低減させて、各半導体素子の熱破壊を回避させてもよい。
【0048】
そして、略四角形の凸部16を設け、凸部16の各側壁面にマイクロ波の給電部17a〜17dを配した構成により、それぞれの給電部17a〜17dから放射されるマイクロ波は凸部16で衝突して結合し、その結合形態を保って加熱室10内に放射させることができ、加熱室10内に収納する被加熱物を効率よく加熱する装置を提供できる。
【0049】
また、給電部17a〜17dに供給するマイクロ波の位相を可変する位相可変器30a〜30dとその制御部31を備えた構成により、複数の給電部17a〜17dからそれぞれ放射したマイクロ波は凸部16内でそれぞれ衝突して結合し、各給電部17a〜17d間の位相差に対応したマイクロ波放射分布を形成する。このマイクロ波の結合形態の変化を制御することで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱したり、加熱の均一化を促進したりできる。
【0050】
また、凸部16での位相差に応じた結合に伴うマイクロ波放射分布に対して、複数の給電部17a〜17dを配した凸部16と所定の間隙をもって載置台34を配置させることで、凸部16から所定の間隔をもって載置台34の上に載置した被加熱物の特定部分の加熱を促進したり被加熱物全体を所望の状態に加熱することをより促進したりできる。
【0051】
さらに、位相可変器を制御して対象の給電部から放射されるマイクロ波の位相を時間的に変化させることにより他の給電部から出力されるマイクロ波との位相差を時間的に変化させ加熱室10内のマイクロ波分布を変化させて被加熱物の加熱の均一化をより促進させることができる。
【0052】
また、給電部17a〜17dにおいて対向する給電部間の距離を供給されるマイクロ波の波長の1/2波長以上とした構成により、給電部17a〜17d間の干渉を緩和させるとともに、対向あるいは隣接する給電部17a〜17dから放射されるマイクロ波を効果的に結合させることができる。そしてマイクロ波の周波数を2450MHz帯とした場合、この対向する給電部間の距離としては、好ましくは80mm〜140mm程度がよい。またこの距離の選択は、加熱室10の容積や凸部16を配する加熱室10壁面の面積に応じ、それらが大きいほど長い距離を選択することで加熱室10全体に所望のマイクロ波放射分布を供給させることができる。
【0053】
また、凸部16の中心は配置された加熱室10壁面の略中央部とした構成により、加熱室10の左右、前後、上下のそれぞれの方向にマイクロ波を拡散放射させることができる。
【0054】
また、給電部17a〜17dは矩形形状の開口とし、各給電部17a〜17dにマイクロ波を伝送する導波管18a〜18dをそれぞれ備えたことにより、給電部17a〜17dからの放射方向を規定するとともに、導波管17a〜17dを緩衝部材として作用させて、給電部17a〜17dに効率よくマイクロ波を伝送させることができる。
【0055】
(実施の形態2)
図3は本発明の第2の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置のマイクロ波伝送系のブロック図である。
【0056】
図3において、実施の形態1と同一部材あるいは同一機能部材は同一番号にて示すとともに説明は省略する。第2の実施の形態が実施の形態1と相違する点は、給電部選択手段40a、40bを用いた点である。
【0057】
すなわち図3において、マイクロ波発生部41は、半導体素子を用いて構成した発振部21と、発振部21の出力を2分配する電力分配部22aと、電力分配部22aのそれぞれの出力を後続の給電部選択手段40a、40bに導くマイクロ波伝送路42a、42bと、給電部選択手段40a、40bのそれぞれの切換端子401a〜401dと半導体素子を用いて構成した初段増幅部23a〜23dの入力端とを接続したマイクロ波伝送路43a〜43dと、初段増幅部23a〜23dのそれぞれの出力をさらに増幅する半導体素子を用いて構成した主増幅部25a〜25dと、主増幅部25a〜25dの出力をマイクロ波発生部41の出力部26a〜26dに導くマイクロ波伝送路27a〜27dと、マイクロ波伝送路27a〜27dに挿入した電力検知部28a〜28dとで構成している。
【0058】
また、被加熱物を収納する略直方体構造からなる加熱室10を有し、加熱室10は金属材料からなる左壁面11、右壁面12、底壁面13、上壁面14、奥壁面15および被加熱物を収納するために開閉する開閉扉(図示していない)から構成し、供給されるマイクロ波を内部に閉じ込めるように構成している。そして、マイクロ波発生部41の4つの出力部にそれぞれ接続された放射部19a〜19dが加熱室10を構成する底壁面13に付設した導波管18a〜18dの一端側に配置されている。この導波管18a〜18dの他端には給電部17a〜17dがそれぞれ配設され、給電部17aと給電部17b、給電部17cと給電部17dは、それぞれ対向して配置されている。
【0059】
そして、給電部切換手段40aによって加熱室10内にマイクロ波を供給する給電部である給電部17aと給電部17bとが切換選択される。また、給電部切換手段40bによって、加熱室10内にマイクロ波を供給する給電部である給電部17cと給電部17dとが切換選択される。
【0060】
発振部21の出力電力は、電力分配部22aにより略1/2ずつ分配され、マイクロ波伝送路42a、42bを伝送して後続の増幅部選択手段40a、40bに入力する。給電部選択手段40a、40bは、後続される初段増幅部23a〜23d(および主増幅部25a〜25d)の中で、マイクロ波を伝送する増幅部を選択するものである。そして、給電部選択手段40a、40bを制御することにより、マイクロ波信号が伝送するマイクロ波伝送路43a〜43dがそれぞれ選択され、選択されたマイクロ波伝送路に接続した増幅部に駆動電力を供給することで、マイクロ波信号は増幅され、増幅したマイクロ波電力信号が選択された増幅部に接続した放射部19a〜19d、導波管18a〜18dを介し
て給電部17a〜17dより、凸部16内にマイクロ波が放射され、凸部16内で結合したマイクロ波は、その結合形態に応じて放射分布でもって加熱室10内に放射供給される。
【0061】
また、電力分配部22aの出力にそれぞれ接続したマイクロ波伝送路42a、42bを伝送するマイクロ波信号は同相である。そしてマイクロ波伝送路42aには、位相可変器30を挿入している。この位相可変器30は、印加電圧に応じて容量が変化する容量可変素子を用いて構成し、位相可変範囲は、0度から略180度の範囲としている。
【0062】
この位相可変器30を制御することで、最終的に加熱室10内に放射されるマイクロ波は、給電部17cまたは給電部17dから放射されるマイクロ波の位相を基準にすると給電部17aまたは給電部17bから放射されるマイクロ波の位相が同相から略180度遅れた信号となって放射される。
【0063】
以上のように構成されたマイクロ波加熱装置について、以下その動作と作用を説明する。
【0064】
被加熱物の加熱開始時の発振周波数の選択に係る諸動作は、実施の形態1と同様であり、その動作説明は省略する。
【0065】
開閉扉を利用して被加熱物を加熱室10に収納し、その加熱条件を操作部(図示していない)から入力し、加熱開始キーを押すことで、加熱条件や加熱開始信号(図3の32)を受けた制御部31の制御出力信号によりマイクロ波発生部41が動作を開始する。制御部31は、入力された加熱条件に基づいて給電部選択手段40a、40bを制御し、加熱開始時に動作させる増幅部を決定する。その後、発振部21に駆動電力を供給し、所望の発振周波数のマイクロ波を発振させる。以降、給電部選択手段40a、40bが選択した増幅部の初段増幅部を動作させ、次に主増幅部を動作させる。
【0066】
これにより、各主増幅部25a〜25dは、それぞれ200Wから500Wのマイクロ波電力を出力し、動作開始初期の位相差は0度である。そして選択された増幅部に接続された放射部、導波管を介して給電部から被加熱物が収納された加熱室10内にマイクロ波が供給放射される。
【0067】
例えば、加熱初期に選択されたマイクロ波を放射する給電部が給電部17aおよび給電部17cとした場合、これらの給電部17a、17cから同相にて放射されたマイクロ波により、加熱室10の略中央部から左壁面11側にマイクロ波の電界集中領域が形成される。加熱室10に形成された電界集中領域により、被加熱物が載置台34の略中央に収納された場合には、被加熱物の略中央から左寄りが強く加熱される。
【0068】
そして制御部31は、被加熱物の加熱の均一化を図るために、適当な時間周期あるいは被加熱物の温度分布情報に基づいて、動作させる増幅部を切り替えたり、位相可変器の位相遅延量を制御する制御信号をマイクロ波発生部41に出力したりする。動作させる増幅部を切替える制御信号により、切り替え対象の増幅部への駆動電力を停止し増幅部選択手段を作動させて動作させる増幅部の切り替えをする。切り替えが終わると対象の増幅部に電力を供給してその増幅部を動作させる。
【0069】
この一連の動作を例えば、給電部17aを給電部17b、給電部17cを給電部17dに切り替える場合に当てはめて説明する。この給電部17a〜17dの切り替えは、被加熱物の略中央から右寄りの加熱を促進する目的で実施する。
【0070】
そして、例えば被加熱物の表面温度を検出する手段を付加し、被加熱物の表面温度分布において、被加熱物の略中央から右寄りの領域における表面温度の最低温度が左寄りの領域における最高表面温度に比べて10℃以上低いレベルに達した場合にこの切り替え指令を制御部31が出力する。
【0071】
この切り替え指令に基づいて、初段増幅部23a、23cおよび主増幅部25a、25cに供給している駆動電力を停止する。そして、給電部選択手段40aおよび40bを制御し、コモン端子を端子401bおよび401dにそれぞれ接続する。その後、初段増幅部23b、23dおよび主増幅部25b、25dに順次駆動電力を供給する。この一連の制御動作により給電部17b、17dからマイクロ波が加熱室10内に供給される。このマイクロ波供給により、被加熱物は、その略中央より右寄りの領域が強く加熱され始める。
【0072】
以上の一連の切り替え制御は、給電部17aと給電部17b、給電部17cと給電部17dとの間で、被加熱物の表面温度分布情報に基づいて、加熱中に適宜実施するものである。
【0073】
また、マイクロ波伝送路42aに挿入した位相可変器30に印加する電圧を制御することで、動作中の2つの給電部から放射されるマイクロ波の位相差を同相から略180度の間を連続的に可変制御することで、加熱室10内のマイクロ波の伝搬状態を時間的に連続変化させ、被加熱物の局所加熱の解消をし、加熱の均一化をさらに促進することができる。
【0074】
そして、被加熱物の表面温度検出手段の検知信号や手動入力された加熱時間情報に基づいて、加熱が終了制御される。
【0075】
以上に説明した実施の形態2によれば、給電部選択手段40a、40bおよび/または位相可変器30を制御して加熱室10内にマイクロ波を供給する給電部を選択することで、被加熱物の特定部分の加熱を促進させたり、被加熱物全体を所望の状態に加熱させたりすることができる。
【0076】
また、給電部選択手段40a、40bと位相可変器30とを制御することで、対向しない給電部からそれぞれ供給されるマイクロ波に対して位相差を可変制御することもでき、加熱室10内のマイクロ波分布をより変化させて被加熱物の加熱の均一化を促進させたり、被加熱物のより特定した部分の加熱を促進させたりすることができる利便性を提供できる。
【0077】
以下に、本発明のマイクロ波加熱装置の詳細な制御例を図4、図5を用いて説明する。
【0078】
以下の制御例においては、各主増幅部25a〜25dに供給する駆動電圧として、マイクロ波発生部20、41の定格出力に対して、100%、90%、75%、60%、15%(これは第1の出力電力の発生時に使用する)の5段階の駆動電圧群を用意した場合を例に説明する。
【0079】
まず、被加熱物を加熱室10内の載置台34の上に収納載置し、その加熱条件を操作部(図示していない)から入力し(ステップS11)、加熱開始キーを押す。加熱開始信号を受けた制御部31の制御出力信号によりマイクロ波発生部20、41を第1の出力電力、たとえば100W未満、に設定して動作を開始する(S11)。この時制御部31は、マイクロ波発振部21の初期の発振周波数は、例えば2450MHzに設定する信号を供給し、発振を開始させる。
【0080】
以降、所定の駆動電源電圧を初段波増幅部23a〜23dに供給し、初段増幅部23a〜23dを動作させ、次に主増幅部25a〜25dに所定駆動電圧を供給し、主増幅部25a〜25dを動作させる。この時の各主増幅部25a〜25dに供給する駆動電圧は、主増幅部25a〜25dのそれぞれが、例えば50Wのマイクロ波電力を出力する電圧である。また、位相可変器30、30a〜30dは位相遅延0度に制御している。この結果、実施の形態1のマイクロ波発生部20の4つおよび実施の形態2のマイクロ波発生部41の2つの出力はそれぞれ位相差無しの状態となっている。
【0081】
次にS12では、マイクロ波発振部21の発振周波数を初期の2450MHzから0.1MHzピッチ(例えば、10ミリ秒で1MHz)で低い周波数側に変化させ、周波数可変範囲の下限である2400MHzに到達すると1MHzピッチで周波数を高く変化させ、2450MHzに到達すると再び0.1MHzピッチで周波数可変範囲の上限である2500MHzまで変化させる。この周波数可変の中で電力検知器28a〜28dから得られる反射電力を記憶し、S13に進む。S13では、各電力検知器28a〜28dから得た反射電力の合計値が、最小となる周波数(f1)を選定する。
【0082】
次のS14では、反射電力最小の周波数における各給電部が受ける反射電力値に基づいて、被加熱物を加熱実行する時に生じるマイクロ波増幅部のそれぞれの電力損失量(予め既定した駆動電圧および検出した反射電力量に対応して流れるであろう駆動電流の推定値に基づいて計算)を演算し、第1の規定値と比較する。この第1の規定値は、マイクロ波発生部に組み込まれた放熱構成に基づいて決定したマイクロ波増幅部の半導体素子が許容する最大熱損失量としている。なお、この規定値は、絶対値とする方法と、マイクロ波増幅部の出力に対する相対比率値とする方法のいずれでも構わない。
【0083】
そして、各給電部の反射電力値に基づいて演算した加熱動作時の半導体素子の電力損失値と第1の規定値との比較において、規定値以下の場合はS15に進む。一方、第1の規定値を超過している場合にはS16に進み、第1の規定値以下になるように、各主増幅部25a〜25dに供給する駆動電圧を抽出する。この抽出にあたり、駆動電圧は、マイクロ波発生部20、41の定格出力に対して、100%、90%、75%、60%、15%(これは第1の出力電力の発生時に使用する)の5段階の駆動電圧群を用意しており、この駆動電圧群の中から第1の規定値を超過することなく最大出力を発生できる駆動電圧が抽出される。なお、主増幅部25a〜25dごとに駆動電圧は最適選択する。この駆動電圧の抽出処理を終えるとS15に進む。
【0084】
S15では、被加熱物の加熱条件から高速加熱か均一加熱仕上げかを判定し、均一加熱の場合はS17に進み、高速加熱の場合はS23に進む。
【0085】
まず均一加熱の場合を説明する。
【0086】
S17では、マイクロ波発生部20、41を定格出力(または低減させた出力)である第2の出力電力を発生するように、主増幅部25a〜25dの駆動電圧を設定する。なお、この時の駆動電圧は、S16を経由した処理の場合、S16で決定した駆動電圧に設定される。
【0087】
S18では、S13で抽出された発振周波数(f1)と、S17で決定された第2の出力電力とで、被加熱物の本加熱が開始される。
【0088】
S19では、被加熱物の均一加熱を行うために、位相可変器30、30a〜30dをそれぞれ制御し、給電部から供給されるマイクロ波の位相差を変化させる。
【0089】
S20では、変化させた位相差の下で、各主増幅部25a〜25dの電力損失値が、上述の第1の規定値以下かどうかを判定する。第1の規定値以下の場合はS21に進む。第1の規定値を超過している場合はS22に進み、第1の規定値以下になるように、対象の主増幅部25a〜25dの駆動電圧を最適な駆動電圧に変更し、S21に進む。
【0090】
S21では、被加熱物の仕上り程度を判定するものであり、たとえば赤外線量検出手段を備えるものにあっては、被加熱物の表面温度を抽出し、目標の仕上り温度に到達しているかどうかを比較判定する。目標温度未達の場合は、S19に戻る。目標温度に到達しているとマイクロ波発生部20、41の動作を停止させて加熱を終了をする。
【0091】
次に、高速加熱の場合を説明する。
【0092】
S23ではS13で抽出された発振周波数(f1)のもとで位相可変器30、30a〜30dを制御して位相差を変化させ、この位相差可変制御において最小の反射電力を呈する位相差に位相可変器30、30a〜30dを設定してS24に進む。
【0093】
S24では、マイクロ波発生部20、41を定格出力(または低減させた出力)である第2の出力電力を発生するように主増幅部25a〜25dの駆動電圧を設定する。なお、この時の駆動電圧はS16を経由した処理の場合は、S16で決定した駆動電圧に設定される。
【0094】
S25では、S13で抽出された発振周波数(f1)と、S23で設定された位相差とS24で決定された第2の出力電力とで、被加熱物の本加熱が開始される。
【0095】
S26では各電力検出部および各温度検出部が検出した信号を制御部31が取り込み、S27に進む。S27では主増幅部25a〜25dのそれぞれの電力損失量を演算する。また演算した電力損失量を第1の規定値(場合によっては後述する補正された第1の規定値)と比較し、第1の規定値以下かどうかを判定する。第1の規定値以下の場合はS31に進む。第1の規定値を超過している場合は、S28に進む。
【0096】
S28では、冷却能力を高めるために冷却ファン(図示していない)を動作させ、S29に進む。S29では、再び各電力検知部および各温度検出部が検出した信号を制御部31が取り込み、S30に進む。S30では、主増幅部25a〜25dのそれぞれの電力損失量を演算する。また演算した電力損失量を第1の規定値(場合によっては後述する補正された第1の規定値)と比較し、第1の規定値以下かどうかを判定する。第1の規定値以下の場合はS31に進む。第1の規定値を超過している場合は、S32に進む。
【0097】
S32では、第1の規定値を超過した対象のマイクロ波増幅器の駆動電圧を制御し半導体素子が被る電力損失量を低減させる駆動電圧に設定し、S29に進む。
【0098】
そしてS31では、被加熱物の仕上り程度を判定するものであり、例えば赤外線量検出手段を備えるものにあっては、被加熱物の表面温度を抽出し、目標の仕上り温度に到達しているかどうかを比較判定する。目標温度未達の場合は、S26に戻る。目標温度に到達していると、マイクロ波発生部20、41の動作を停止させて、加熱を終了する。
【0099】
以上、加熱制御内容について説明したが、個々の制御における作用について以下に述べる。周波数を変化させることにより、各給電部17a〜17dから被加熱物が収納された加熱室10側を見たときの負荷インピーダンスを変化させることができる。そして、最適な周波数を選択することで各給電部17a〜17dからマイクロ波発生部20、41側を
見たときの電源インピーダンスに負荷インピーダンスを近づけることで、各給電部17a〜17dへの反射電力を低減できる。また各給電部17a〜17dから供給された複数のマイクロ波の位相差を変化させることで、それぞれのマイクロ波が加熱室10底の凸部16空間内でぶつかり合うタイミングや、被加熱物に入射して電力吸収されるタイミングが変化し、各給電部17a〜17dへの反射電力を変化させることができる。これらの制御を最適に組み合わせることで、各給電部17a〜17dから放射するマイクロ波のエネルギを効率よく被加熱物に集中供給、あるいは分散供給させることができる。
【0100】
また、最適な発振周波数を抽出した後に、さらに位相可変器30、30a〜30dを制御することで、より反射電力の少ない給電方法を抽出させている。これにより、マイクロ波発生部20、41の出力の低減を極力抑え、さらには冷却ファンを動作させて冷却能力をアップし、半導体素子を熱破壊から保護する中での最大出力電力を加熱室10に供給して高速加熱を実現させている。
【0101】
また、位相可変器30、30a〜30dを電力分配部22、22aと初段増幅部23a〜23dの間に設けた構成により、増幅部出力間、しいては各給電部17a〜17dから加熱室10内に供給するマイクロ波の位相差を確実に制御させることができる。
【0102】
また、マイクロ波発生部20、41の出力可変は、主増幅部25a〜25dの駆動電圧を可変制御させる構成をとることで、反射電力が第1の規定値を超過の場合は駆動電圧を低減して増幅器出力電力を低減し、増幅動作に伴う熱損失量を減少させるとともに、加熱室10へ供給される電力が低減されることに付随して、反射電力も低減させることで増幅部の半導体素子が被る熱損失を許容最大値以下にして、装置の信頼性を確保することができる。
【0103】
また、給電部17a〜17dに供給するマイクロ波は、半導体素子を用いて構成したマイクロ波発生手段としたものであり、これにより複数の給電部17a〜17dを備える装置をコンパクトに形成できるとともに、各給電部17a〜17d間の位相差を広範囲に可変させることを可能にし、利便性をさらに高めることができる。
【0104】
また、この駆動電圧の可変制御に当たっては、マイクロ波増幅部に用いる半導体素子としてノーマリーオン型の電界効果トランジスタを用いることで、電流が大きいドレイン電源系の制御に代えてゲート電源系を制御対象にしたことで、電圧可変部材を低電力部材で構成できるとともに制御に伴う回路のコンパクト化と制御の容易性を実現させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のように、本発明にかかるマイクロ波加熱装置は複数の給電部それぞれから放射されるマイクロ波を最適に結合させることで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱するマイクロ波加熱装置を提供できるので、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置や生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置のブロック図
【図2】同マイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系のブロック図
【図3】本発明の実施の形態2におけるマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系のブロック図
【図4】本発明の実施の形態1および2におけるマイクロ波加熱装置の制御フローチャート
【図5】本発明の実施の形態1および2におけるマイクロ波加熱装置の制御フローチャート
【符号の説明】
【0107】
10 加熱室
13 底壁面
16 凸部
17a〜17d 給電部
18a〜18d 導波管
20、41 マイクロ波発生部
30、30a〜30d 位相可変器
31 制御部
34 載置台
40a、40b 給電部選択手段
A 加熱室壁面の略中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波発生部から供給されるマイクロ波を閉じ込める加熱室と、前記加熱室の一つの壁面に前記加熱室の外側に向かって略四角形の凸部を設け、前記凸部の各側壁面にマイクロ波の給電部を配した構成からなるマイクロ波加熱装置。
【請求項2】
給電部において対向する給電部間の距離を供給されるマイクロ波の波長の1/2波長以上とした請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項3】
凸部の中心は配置された加熱室壁面の略中央部と一致させた請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項4】
給電部に供給するマイクロ波の位相を可変する位相可変器と、前記位相可変器へ供給する電圧の制御部を備えた請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項5】
給電部は矩形形状の開口とし、給電部にマイクロ波を伝送する導波管をそれぞれ備えた請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項6】
凸部は、加熱室の底壁面に配置し、底壁面と所定の間隙をもって配置されるとともに被加熱物を載置する載置台を備えた請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項7】
マイクロ波が供給される給電部を選択する給電部選択手段を備えた請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項8】
給電部に供給するマイクロ波は、半導体素子を用いて構成したマイクロ波発生手段とした請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロ波加熱装置。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−73383(P2010−73383A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237395(P2008−237395)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】