説明

マイクロ波照射装置

【課題】設備の大型化を避けて小型化を可能にしつつ、マイクロ波及びマイクロ波プラズマの利点を最大限に活かして焼成できるようにした、マイクロ波照射装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波を発生する固体マイクロ波源と、固体マイクロ波源で発生したマイクロ波を被照射体に照射するための照射部3とを備えたマイクロ波照射装置である。照射部3は、固体マイクロ波源で発生したマイクロ波が供給される、軸方向に延在して配置された中心導体22と、この中心導体22の周囲に設けられてこの中心導体22と同心円状に形成された円筒状の外側導体23と、を有してなるTEMモード共振器からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属微粒子を加熱焼成して導電パターンを形成するのに好適に用いられる、マイクロ波照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属ナノ粒子(金属微粒子)を分散させた液状材料をスクリーン印刷法やインクジェット法(液滴吐出法)でプリント基板上に配し、これを加熱して金属ナノ粒子を焼成し、配線等の導電パターンを形成する技術が進展してきている。
ところが、この導電パターンの形成技術では、ポリイミド等からなるプリント基板上に導電パターンを形成するため、十分に高い温度で加熱を行うことができないといった問題がある。
【0003】
すなわち、金属ナノ粒子の融点より十分に高い温度で加熱すると、樹脂製のプリント基板が溶融劣化し、さらには消失してしまうおそれがあるからである。したがって、現状では、プリント基板の加熱劣化を最小限に抑えるべく、比較的低温で加熱焼成している。しかし、その結果金属ナノ粒子間にある程度の空隙が残ってしまうため、得られる導電パターンの導電性を、より良好に形成することができないといった課題がある。また、使用される金属ナノ粒子も、銀ナノ粒子に限られてしまうといった課題もある。
【0004】
このような背景のもとに、マイクロ波やマイクロ波プラズマを使った加熱・焼成技術が提案されている(例えば、参考文献1、参考文献2、参考文献3、参考文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−269984号公報
【特許文献2】特開2002−290009号公報
【特許文献3】特表平8−503263号公報
【特許文献4】特表昭61−502197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記参考文献1〜4に記載されているマイクロ波やマイクロ波プラズマを使った加熱・焼成技術では、焼成装置(加熱装置)が大型化してしまい、設置スペースが大きくなったり、焼成に要するエネルギーにロスが多くなったり、焼成時間が長くなるといった非効率性が懸念されている。特に、太陽電池や液晶パネルなどの大型電子デバイスの基板を加工対象とした場合、これを収容するチャンバーも大型化するため、焼成装置はさらに大きくなってしまうといった問題がある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、設備の大型化を避けて小型化を可能にしつつ、マイクロ波及びマイクロ波プラズマの利点を最大限に活かして十分な焼成ができるようにした、マイクロ波照射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマイクロ波照射装置は、マイクロ波を発生する固体マイクロ波源と、
前記固体マイクロ波源で発生したマイクロ波を被照射体に照射するための照射部と、を備えてなり、
前記照射部は、前記固体マイクロ波源で発生したマイクロ波が供給される、軸方向に延在して配置された中心導体と、該中心導体の周囲に設けられて該中心導体と同心円状に形成された円筒状の外側導体と、を有してなるTEMモード共振器からなっていることを特徴としている。
【0009】
このマイクロ波照射装置によれば、固体マイクロ波源を用いることにより、マイクロ波を照射するための照射部をTEMモード共振器で構成することができ、したがってTEMモードによる共振が発生することでマイクロ波の漏洩が効果的に防止され、装置全体の小型化が可能になる。
【0010】
また、前記マイクロ波照射装置においては、前記マイクロ波の波長をλgとすると、前記外側導体は、前記軸方向の長さがλg/4であるのが好ましい。
このようにすれば、外側導体の端部においてマイクロ波エネルギーが最大になり、したがってこの端部位置を被照射体に対するマイクロ波の照射位置にすることで、より効率的にマイクロ波照射を行うことができる。
【0011】
なお、この場合に前記TEMモード共振器は、前記中心導体及び外側導体の一端部側に、被照射体を挟んで該中心導体及び外側導体に対向して配置された第2の中心導体及び第2の外側導体を有し、前記第2の外側導体は、前記軸方向の長さがλg/4であってもよい。
このように構成しても、前記外側導体の端部、すなわち該外側導体と前記第2の外側導体との間においてマイクロ波エネルギーが最大になり、したがってこの位置を被照射体に対するマイクロ波の照射位置にすることで、より効率的にマイクロ波照射を行うことができる。
【0012】
また、前記マイクロ波照射装置においては、前記固体マイクロ波源に、弾性表面波発振器が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、弾性表面波発振器を用いてマイクロ波を発生させることが可能となり、温度に対する安定性が良好になるとともに、発生するマイクロ波の周波数の安定性も良好になる。
【0013】
なお、この場合に前記弾性表面波発振器は、水晶もしくはダイヤモンドからなる弾性表面波共振子を備えてなるのが好ましい。
このようにすれば、弾性表面波の伝播速度を大きくすることができ、より高い周波数まで発振させることが可能にとなる。また、温度変化に対する周波数変動も小さくなり、より安定したマイクロ波の発生が可能になる。
【0014】
また、前記マイクロ波照射装置においては、前記照射部と前記被照射体との間を、相対移動させる搬送手段を備えているのが好ましい。
このようにすれば、固体マイクロ波源とTEMモード共振器からなる照射部とからなるマイクロ波照射装置の本体部分を小型化して、照射部による照射を局部的に行うようにした場合にも、搬送手段によって被照射体を相対的に移動させることにより、被照射体が例えば大型の基板であっても、これに対応してその所望箇所全体にマイクロ波を照射することが可能になる。
【0015】
また、前記マイクロ波照射装置においては、前記照射部の、前記被照射体にマイクロ波を照射させる照射位置に、水素ガスを供給する水素供給手段を備えていてもよい。
このようにすれば、例えば金属微粒子によって導電パターンを形成する場合などにおいて、マイクロ波の照射位置に水素ガスを供給することにより、金属微粒子の加熱に伴う酸化を防止することができ、したがってより良好な導電性を有する導電パターンの形成が可能になる。また、水素ガスの供給によって大気圧水素プラズマを生成することができ、したがって大気圧水素プラズマを用いた焼成も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のマイクロ波照射装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】(a)はマイクロ波電源のブロック図、(b)はSAW発振器のブロック図である。
【図3】TEMモード共振器からなる照射部の概略構成図である。
【図4】第2実施形態における照射部の概略構成図である。
【図5】第3実施形態における照射部の概略構成図である。
【図6】第3実施形態の変形例における照射部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明のマイクロ波照射装置の全体構成を示すブロック図であり、図1中符号1は、本発明の第1実施形態としてのマイクロ波照射装置である。
【0018】
このマイクロ波照射装置1は、マイクロ波を発生する固体マイクロ波源2と、この固体マイクロ波源2で発生したマイクロ波を被照射体に照射するための照射部3とを備えて構成されたものである。
固体マイクロ波源2は、本実施形態ではマイクロ波電源4と、アイソレーター5と、パワーモニター6と、整合装置7と、制御装置8とを有して構成されたもので、制御装置8からの制御信号を受け、一定のマイクロ波電力を照射部3に出力するようになっている。
【0019】
マイクロ波電源4は、図2(a)のブロック図に示すように電源9と、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)発振器としてのSAW発振器10と、第1増幅器11とを有して構成されたものである。電源9は、SAW発振器10及び第1増幅器11に電力を供給するものである。SAW発振器10の後段には第1増幅器11が接続されており、SAW発振器10から出力された高周波信号は、第1増幅器11で増幅された後に出力されるようになっている。
【0020】
また、SAW発振器10は、図2(b)のブロック図に示すように移相回路12、SAW共振子(弾性表面波共振子)13、第2増幅器14及び電力分配器15でループ回路16を形成し、電力分配器15の一方の出力側にバッファ回路17を接続した構成となっている。このような構成のもとに、このSAW発振器10を用いてマイクロ波を発生させることができ、温度に対する安定性が良好になるとともに、発生するマイクロ波の周波数の安定性も良好になっている。
【0021】
移相回路12は、電源9から制御電圧を入力してループ回路16の位相を可変にするものである。これら各ブロックは、一定の特性インピーダンス、例えば50ohmに全て整合接続されている。
【0022】
SAW共振子13は、水晶の単結晶やダイヤモンド等の圧電材料からなる薄膜によって形成されたもので、特に加熱用途に使用される2.45GHz帯の周波数を発生することができるよう構成されたものである。このSAW共振子13は、第2増幅器14が飽和状態となる入力電圧が供給されるように、第2増幅器14の入力側に接続されている。これにより、SAW共振子13を用いてGHz帯での高周波信号をダイレクト発振させることが可能になっている。また、温度変化に対する周波数変動も小さくなり、より安定したマイクロ波の発生が可能になっている。さらに、整合を保ったまま第2増幅器14の出力パワーを、電力分配器15からバッファ回路16を介して図1に示すアイソレーター5に出力できるようになっている。
【0023】
そして、このような回路構成により、SAW共振子13を含めた発振ループ内において利得が1以下とならないようにし、移相回路12により発振ループ内の発振周波数における位相を合わせることにより、連続発振状態を継続することが可能になっている。また、移相回路12により、高周波信号に周波数変調をかけることが可能となり、後述する被照射体に対して、マイクロ波周波数を可変・調整することが可能になっている。
なお、この移相回路12は用いなくてもよく、その場合には、マイクロ電源4はSAW共振子13の特性によって一意的に決まる周波数で発振する、固定発振器となる。
【0024】
図1に示したアイソレーター5は、インピーダンス不整合が生じた場合に、マイクロ波電源4から出力されたマイクロ波が照射部3で反射し、戻ってきた反射波からなる電力を、消費するものである。これにより、インピーダンス不整合によって発生する反射波が図2(a)に示した第1増幅器11に戻ることが防止され、第1増幅器11の破壊が防止されているとともに、マイクロ波の出力周波数変動を抑えることが可能になっている。したがって、必要なマイクロ波パワーを安定して得ることが可能となるとともに、メンテナンスフリーを実現することが可能になっている。
【0025】
パワーモニター6は、入力波、反射波の電力をモニターし、制御装置8にそのモニター信号を送るようになっている。
整合装置7は、スラグチューナー、スリースタブチューナー等からなるもので、制御装置8からの制御信号に基づき、照射部3からの反射がゼロになるように前記マイクロ波電源4からのマイクロ波を調整するものである。
【0026】
制御装置8は、パワーモニター6で得られる入力波の電力が一定の出力電力となるように、マイクロ波電源4に制御信号を供給し、マイクロ波電源4の電力制御を行うようになっている。また、パワーモニター6で得られる反射波の電力をモニターし、反射波の電力がゼロになるように、整合装置のチューナー部に制御信号を供給し、これを制御するようになっている。
【0027】
照射部3は、同軸ケーブルなどのマイクロ波伝送路(図示せず)を介して固体マイクロ波源2の整合装置に接続されたもので、TEMモード共振器によって形成されたものである。マイクロ波伝送線路は、マイクロ波電源4で発生させたマイクロ波を照射部3に伝送するためのもので、特性インピーダンスが50Ωに保持されている。これにより、損失を生じることなく、効率よくマイクロ波電力を照射部3に供給できるようになっている。
【0028】
TEMモード共振器からなる照射部3は、図3の概略構成図に示すように、N型コネクター20と、インピーダンスキーパー部21と、第1の中心導体(中心導体)22と、第1の外側導体(外側導体)23とを備えて構成されている。
N型コネクター20は、マイクロ波伝送路側に設けられた第1コネクター(例えば雄側)と、照射部3側に設けられた第2コネクター(例えば雌側)とが結合して構成されたもので、マイクロ波伝送線路と、照射部3における第1の中心導体22とを電気的に接続したものである。なお、このN型コネクター20は、特性インピーダンスがマイクロ波伝送線路の特性インピーダンスと同じく、50Ωに整合された低損失タイプのものとなっている。
【0029】
インピーダンスキーパー部21は、N型コネクター20に電気的に接続する中心導体21aと、これの周囲に設けられた外側導体21bとを有したもので、照射部3に負荷変動が生じた場合にも、TEMモード共振器からなる照射部3のTEMモードを安定的に補償するようになっている。ここで、外側導体21bは、円柱状の中心導体21aの周囲に設けられてこれと同心円状に形成された円筒状のものである。
また、このインピーダンスキーパー部21は、マイクロ波伝送線路から供給されたマイクロ波電力を、前記第1の中心導体22にスムーズに伝達させる機能を有したもので、特性インピーダンスが50Ωになっている。
【0030】
このインピーダンスキーパー部21における外側導体21aの軸方向長さ、すなわち中心導体21aの中心軸方向の長さL1は、固体マイクロ波源2からマイクロ波伝送線路を介して供給されるマイクロ波の波長をλgとすると、λg/8またはλg/16になっている。なお、この波長λgは光速/(周波数・√ε)によって求められ、空気中の周波数が2.45GHz帯(Industry, Science, and Medical:ISMバンド)のマイクロ波を用いた場合、波長λgは122.44mmとなる。
【0031】
第1の中心導体(中心導体)22は、前記インピーダンスキーパー部21の中心導体21aに接続したものであり、第1の外側導体(外側導体)23は、前記インピーダンスキーパー部21の外側導体21bに接続したものである。第1の外側導体23は、円柱状の第1の中心導体22の周囲に設けられてこれと同心円状に形成された円筒状のものである。そして、インピーダンスキーパー部21における中心導体21aの外径をD1、外側導体21bの内径をD2とし、第1の中心導体22の外径をD3、第1の外側導体23の内径をD4とすると、中心導体21aの外径D1と外側導体21bの内径D2との比と、第1の中心導体22の外径D3と第1の外側導体23の内径D4との比は、等しくなっている。すなわち、(D1/D2)=(D3/D4)となっている。
【0032】
また、第1の外側導体23の軸方向長さ、すなわち第1の中心導体22の中心軸方向の長さL2は、固体マイクロ波源2からマイクロ波伝送線路を介して供給されるマイクロ波の波長をλgとすると、λg/4になっている。
このような構成のもとに、照射部3はTEMモード共振器を構成するものとなり、第1の外側導体23の端部、すなわちインピーダンスキーパー部21と反対の側の端部において、マイクロ波を最大に出力するようになっている。
【0033】
したがって、本実施形態においては、この端部の近傍を、被照射体Wにマイクロ波を照射するための照射位置24としている。
この照射位置24には、搬送手段としてのステージ25が配置され、このステージ25上には被照射体Wが載置されている。したがって、被照射体Wは照射位置24に配置されたものとなっている。ステージ25は、例えばX−Yステージからなるもので、図示しない駆動機構によって水平面上をX方向、及びこれに直交するY方向に、それぞれ移動可能に構成されている。
【0034】
被照射体Wは、プリント基板P上に、金属ナノ粒子(金属微粒子)を分散媒に分散させてなる分散液(液状体)26を、予め液滴吐出装置などによって所定パターンに配したものである。
【0035】
このような構成からなるマイクロ波照射装置1にあっては、前述したように固体マイクロ波源2で発生させたマイクロ波を、TEMモード共振器からなる照射部3によって照射位置24に位置する被照射体Wに照射するようにしたので、TEMモードによる共振を発生させることにより、マイクロ波の漏洩を防止して被照射体Wにマイクロ波を効率的に照射することができる。したがって、プリント基板Pを実質的に加熱することなく、分散液26を選択的に加熱してこの分散液中の金属ナノ粒子を選択的に加熱・焼成することができる。
【0036】
また、特に第1の外側導体23の軸方向の長さL2をλg/4にし、この第1の外側導体23の端部を照射位置24にしているので、マイクロ波エネルギーを最大にして出力することができ、したがってより効率的にマイクロ波照射を行うことができる。
よって、このようにマイクロ波照射を最大の出力で効率的に行うことができるため、マイクロ波照射装置1は焼成装置として機能させることができ、その構成は従来に比べ格段に小型化することが可能となる。つまり、小型の焼成装置と機能することにより、設置スペースが小さくてすみ、焼成に要するエネルギーにロスが少ない、さらに焼成時間が短いなど、より効率的な焼成が可能となる。
【0037】
また、搬送手段としてのステージ25を備えているので、前述したようにステージ25等の搬送手段を除いたマイクロ波照射装置1の本体部分を小型化しているにもかかわらず、ステージ25上に被照射体Wを載置し、被照射体Wを照射部3に対して移動させることにより、被照射体Wの所望箇所全体にマイクロ波を照射することができる。したがって、被照射体Wが例えば大型のプリント基板Pからなっていても、これに対応してその所望箇所全体にマイクロ波を照射し、分散液26を加熱焼成することができる。
【0038】
図4は、本発明のマイクロ波照射装置の第2実施形態を説明するための図であり、図4中符号30は照射部である。この第2実施形態が図1〜図3に示した第1実施形態と異なるところは、照射部30が、第2の中心導体31、第2の外側導体32を備えている点である。
【0039】
第2の中心導体31は、前記第1の中心導体22に前記照射位置24を挟んで対向して配置されたものであり、第2の外側導体32は、前記第1の外側導体23に前記照射位置24を挟んで対向して配置されたものである。第2の外側導体32は、前記軸方向の長さL3が、第1の外側導体23と同様にλg/4となっている。
なお、この実施形態では、搬送手段となるステージ25が、石英によって形成されている。
【0040】
したがって、このような照射部30にあっても、第1の外側導体23の長さL2と第2の外側導体32の長さL3との合計がλg/2となり、このような外側導体23、32を有するTEM共振器の中間を照射位置24としていることにより、この照射位置24に対してマイクロ波照射をより効率的に行うことができる。
よって、このような照射部30を備えたマイクロ波照射装置にあっても、マイクロ波照射を最大の出力で効率的に行うことができるため、その構成を従来に比べ格段に小型化することができる。また、小型の焼成装置と機能することにより、設置スペースが小さくてすみ、焼成に要するエネルギーにロスが少なくなり、さらに焼成時間が短くなるなど、より効率的な焼成が可能なる。
【0041】
図5は、本発明のマイクロ波照射装置の第3実施形態を説明するための図であり、図5中符号40は照射部である。この第3実施形態が図1〜図3に示した第1実施形態と異なるところは、照射部40に水素供給手段を備えている点である。
すなわち、図5に示すように照射部40には、第1の外側導体23にその外側から内側に貫通して石英管からなる配管41が設けられている。そして、この配管41の一端側、すなわち第1の外側導体23の外側には、水素ガス源(図示せず)が接続されている。
【0042】
また、第1の中心導体22には、本実施形態ではその側面に開口し、該第1の中心導体22の中心軸に向かった後、該中心軸に沿って下方に延び、該第1の中心導体22の底面に開口する貫通孔42が形成されている。
そして、前記配管41は、この貫通孔42の、第1の中心導体22の側面側の開口に接続されている。このような構成によって前記水素ガス源からの水素ガスは、配管41を通って貫通孔42内を流れ、第1の中心導体22の底面側、すなわち被照射体Wにマイクロ波を照射するための照射位置24に供給されるようになっている。
【0043】
したがって、この照射部40にあっては、マイクロ波の照射位置24に水素ガスを供給することにより、前述したように分散液26を加熱・焼成して金属微粒子から導電パターンを形成する際、金属微粒子の加熱に伴う酸化を防止することができる。これにより、良好な導電性を有する導電パターンを形成することができる。また、水素ガスの供給によって大気圧水素プラズマを生成することができ、したがって大気圧水素プラズマを用いた焼成を行うこともできる。
【0044】
なお、水素供給手段については、図5に示した構成以外にも、種々の構成を作用することができる。例えば、図6に示すように、配管41を、その先端がマイクロ波の照射位置24近傍に位置するように配置してもよい。
このように構成しても、この配管41を介してマイクロ波の照射位置24に水素ガスを供給することにより、金属微粒子から導電パターンを形成する際に金属微粒子の加熱に伴う酸化を防止することができ、これによって良好な導電性を有する導電パターンを形成することができる。また、大気圧水素プラズマを用いた焼成を行うこともできる。
なお、図5、図6に示した水素供給手段については、図4に示した構成の照射部30に設けるようにしてもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、ステージ25を搬送手段として移動可能に構成したが、本発明における搬送手段は、前記照射部と前記被照射体との間を相対移動させるものであればよく、したがって、被照射体(ステージ)を固定しておき、これに対して照射部側を移動させるように構成してもよい。具体的には、照射部を移動可能にする搬送部(搬送手段)を設け、これによって照射部を被照射体に対して移動可能にしていてもよい。
【0046】
また、本発明のマイクロ波照射装置は、金属微粒子(分散液26)の加熱焼成による導電パターンの形成以外にも、種々の加熱焼成に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…マイクロ波照射装置、2…固体マイクロ波源、3…照射部、10…弾性表面波発振器(SAW発振器)、13…弾性表面波共振子(SAW共振子)、22…第1の中心導体、23…第1の外側導体、24…照射位置、25…ステージ、26…分散液、30…照射部、31…第2の中心導体、32…第2の外側導体、40…照射部、W…被照射体、P…プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を発生する固体マイクロ波源と、
前記固体マイクロ波源で発生したマイクロ波を被照射体に照射するための照射部と、を備えてなり、
前記照射部は、前記固体マイクロ波源で発生したマイクロ波が供給される、軸方向に延在して配置された中心導体と、該中心導体の周囲に設けられて該中心導体と同心円状に形成された円筒状の外側導体と、を有してなるTEMモード共振器からなっていることを特徴とするマイクロ波照射装置。
【請求項2】
前記マイクロ波の波長をλgとすると、前記外側導体は、前記軸方向の長さがλg/4であることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波照射装置。
【請求項3】
前記TEMモード共振器は、前記中心導体及び外側導体の一端部側に、被照射体を挟んで該中心導体及び外側導体に対向して配置された第2の中心導体及び第2の外側導体を有し、前記第2の外側導体は、前記軸方向の長さがλg/4であることを特徴とする請求項2記載のマイクロ波照射装置。
【請求項4】
前記固体マイクロ波源には、弾性表面波発振器が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項5】
前記弾性表面波発振器は、水晶もしくはダイヤモンドからなる弾性表面波共振子を備えてなることを特徴とする請求項4記載のマイクロ波照射装置。
【請求項6】
前記照射部と前記被照射体との間を、相対移動させる搬送手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項7】
前記照射部の、前記被照射体にマイクロ波を照射させる照射位置に、水素ガスを供給する水素供給手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のマイクロ波照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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