説明

マイクロ流体チップ及びその製造方法

【課題】 特別なポンプやバルブを必要とせずに、極微量の液体を送液又は秤取することができるマイクロ流体チップを提供する。
【解決手段】 対面基板と、第1の基板と、薄膜と、第2の基板との少なくとも4層構造からなり、
前記第1の基板は、前記対面基板接合面側に、少なくとも1本の空気通路と、この通路の両端に配設された第1の貫通孔と第2の貫通孔とを有し、
前記薄膜は前記第1の基板の各貫通孔の開口部を密閉すると共に、前記空気通路及び各貫通孔内が真空状態に保たれることにより、前記各貫通孔内に凹陥してそれぞれ対応する第1の凹陥部及び第2の凹陥部を形成しており、
前記第2の基板は、前記薄膜接合面側に少なくとも1本の微細流路を有し、該微細流路の一端には、この微細流路に連通する大気に向かって開放したポートが配設されており、該微細流路の他端は、前記第2の凹陥部の上面に配置されていることを特徴とするマイクロ流体チップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子解析などの化学/生化学分析などに広く使用されるマイクロ流体制御機構付マイクロ流体チップに関する。更に詳細には、本発明は極微量の試料を定量採取することができる流体制御機構を有するマイクロ流体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、マイクロスケール・トータル・アナリシス・システムズ(μTAS)又はラブ・オン・チップ(Lab-on-Chip)などの名称で知られるように、基板内にマイクロチャネルや反応容器及びポートなどの微細構造を設け、該微細構造内で物質の化学反応、合成、精製、抽出、生成及び/又は分析など各種の操作を行うように構成されたマイクロデバイスが提案され、一部実用化されている。このような目的のために製作された、基板内にマイクロチャネル、ポート及び反応容器などの微細構造を有する構造物は総称して「マイクロ流体チップ」又は単に「マイクロチップ」と呼ばれる。マイクロ流体チップは遺伝子解析、臨床診断、薬物スクリーニングなどの化学、生化学、薬学、医学、獣医学分野のみならず、化学工業、環境計測などの幅広い用途に使用できる。常用サイズの同種の装置に比べて、マイクロチップは(1)サンプル及び試薬の使用量が著しく少ない、(2)分析時間が短い、(3)感度が高い、(4)現場に携帯し、その場で分析できる、及び(5)使い捨てできるなどの利点を有する。
【0003】
従来のマイクロ流体チップ100は、例えば、図12A及びBに示されるように、第1の基板101に少なくとも1本のマイクロチャネル102が形成されており、このマイクロチャネル102の少なくとも一端には入出力ポート103,104が形成されており、基板101の下面側に対面基板105が接着されている。この対面基板105の存在により、ポート103,104及びマイクロチャネル102の底部が封止される。入出力ポート103,104の主な用途は、(a)試薬や検体サンプルの注入(分注)、(b)廃液や生成物の取り出し、(c)気体圧力の供給(主に、送液のための正圧や負圧の印加)、(d)大気開放(送液時に発生する内圧の分散や、反応で生じたガスの解放)及び(e)密閉(液体の蒸発防止や故意に内圧を発生させる目的のため)などである。
【0004】
マイクロ流体チップ100を実際に使用する場合に問題となるのは、分析のために必要な試料を一定量秤取することである。このため、このようなマイクロ流体チップには連続的な液体の流れや、微小液滴の移送を制御する目的で、マイクロチャネルの途中にマイクロポンプ及び/又はマイクロバルブが配設されることがある。このようなマイクロポンプ及び/又はマイクロバルブは例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0005】
特許文献1の図1に記載されているマイクロバルブは、太い第1の導管と、この第1の導管より細径に形成されると共に、一方の端部が第1の導管と連通するように連接された複数本の細管と、この細管より大径に形成されると共に、細管の他方の端部と連通するように連接された第2の導管を有し、細管の内壁面は疎水性に形成されていることからなる。このマイクロバルブによれば、第1の導管内に液体を導入した際に、この液体を境界とした第1の導管側の圧力と第2の導管側の圧力との圧力差に応じて第1の導管内の液体に位置を任意に制御することができる。しかし、特許文献1のマイクロバルブでは、複数本の細管を形成するのが非常に困難であるばかりか、圧力差が大きすぎると細管が破損される危険性がある。また、この細管部分だけを特異的に疎水性にする処理も非常に困難である。更に、特許文献1のマイクロバルブの細管は、ポンプを使用しなければ圧力差を発生させることができない。
【0006】
特許文献2の図3に記載されているマイクロバルブは、2つのポリジメチルシロキサン(PDMS)マイクロ流路チップと1枚のメンブレンからなり、バルブ領域において変位するメンブレンが弁座に離着して作動流体通路を開閉する弁機構を有する。更に、このマイクロバルブでは、バルブ領域において駆動流体の圧力が作用する圧力室を有する駆動流体通路が前記メンブレンに接着して形成されており、圧力室に駆動流体の圧力を給排することによってメンブレンを変位させて弁座と離着させて一方弁として開閉するように構成されている。しかし、特許文献2に記載されているマイクロバルブは、便座に離着するメンブランが圧力室に向かって片方向に変位するだけなので、バルブ開時のメンブランと弁座との隙間が不十分であり、流体の流動性が低く脈流が発生する原因となっていた。また、駆動流体の圧力はガラスパイプを介して真空ポンプから供給されるので、装置全体が複雑かつ高価となる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−27813号公報
【特許文献2】特許第3418727号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は特別なポンプやバルブを必要とせずに、極微量の液体を送液又は秤取することができるマイクロ流体チップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための請求項1の手段は、対面基板と、第1の基板と、薄膜と、第2の基板との4層構造からなり、
前記第1の基板は、前記対面基板接合面側に、少なくとも1本の空気通路と、この通路の両端に配設された第1の貫通孔と第2の貫通孔とを有し、
前記薄膜は前記第1の基板の各貫通孔の開口部を密閉すると共に、前記空気通路及び各貫通孔内が真空状態に保たれることにより、前記各貫通孔内に凹陥してそれぞれ対応する第1の凹陥部及び第2の凹陥部を形成しており、
前記第2の基板は、前記薄膜接合面側に少なくとも1本の微細流路を有し、該微細流路の一端には、この微細流路に連通する大気に向かって開放したポートが配設されており、該微細流路の他端は、前記第2の凹陥部の上面に配置されていることを特徴とするマイクロ流体チップである。
【0010】
前記のような構成を採用することにより、第1の凹陥部の外部から針などを穿刺して“真空破り”すると、空気通路及び各貫通孔内が大気圧に戻るときに、凹陥していた薄膜が復元し、その際急激な圧力変化が生じるので、この圧力変化を利用することにより、従来のポンプと同じ作用を発揮させることができる。
【0011】
前記課題を解決するための請求項2の手段は、請求項1記載のマイクロ流体チップにおいて、前記対面基板がガラスからなり、前記第1の基板、薄膜及び第2の基板が何れも、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなることを特徴とするマイクロ流体チップである。
【0012】
請求項2のマイクロ流体チップによれば、対面基板がガラスであると、第1のPDMS基板と自己吸着又は恒久接着することができ、また、PDMS薄膜と各PDMS基板同士も自己吸着又は恒久接着することができるので、高度な封止性が容易に実現できる。
【0013】
前記課題を解決するための請求項3の手段は、請求項1記載のマイクロ流体チップにおいて、前記少なくとも1本の微細流路に対して、少なくとも1本の微細流路が直交していることを特徴とするマイクロ流体チップである。
【0014】
請求項3のマイクロ流体チップによれば、一方の微細流路内に液体試料を注入した後、この微細流路に直交する他方の微細流路を前記のように“真空破り”することにより、微細流路の交差点部分の容積に相当する容量の液体試料を秤取することができる。
【0015】
前記課題を解決するための請求項4の手段は、マイクロ流体チップの製造方法であって、(1)一方の面に空気通路と、この空気通路の一方の端部に第1の貫通孔と他方の端部に第2の貫通孔を有する第1の基板を、前記空気通路形成面側を対面基板に接合するステップと、
(2)前記第1の基板の上面に薄膜を被せて前記第1の基板の前記第1及び第2の貫通孔を封止するステップと、
(3)前記対面基板、第1の基板及び薄膜との3層構造物を真空槽内に入れ、減圧下で第1の基板の封止された空気通路及び各貫通孔内の空気を排気し、前記第1の貫通孔及び第2の貫通孔に対応する位置にそれぞれ第1の凹陥部及び第2の凹陥部を形成するステップと、
(4)一方の面に微細流路を有し、該微細流路の一方の端部には、大気に向かって開放したポートが配設されている第2の基板を、前記微細流路の他端が前記第2の凹陥部の上面に配置されるように、前記薄膜上に接合させるステップを有することを特徴とするマイクロ流体チップの製造方法である。
【0016】
第1の基板及び/又は薄膜が気体透過性の素材から形成されていれば、密閉された空気通路及び各貫通孔内の空気を排気することができ、これにより、貫通孔部分に凹陥部を形成することができ、露出された凹陥部に針を突き刺して“真空破り”することにより、空気通路及び各貫通孔内が大気圧に戻るときに、凹陥していた薄膜が復元し、その際急激な圧力変化が生じるので、この圧力変化を利用することにより、従来のポンプと同じ作用を発揮させることができる。
【0017】
前記課題を解決するための請求項5の手段は、請求項4記載のマイクロ流体チップの製造方法において、前記対面基板がガラスからなり、前記第1の基板、薄膜及び第2の基板が何れも、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなることを特徴とするマイクロ流体チップである。
【0018】
請求項5のマイクロ流体チップの製造方法において、第1の基板及び/又は薄膜がPDMS製であると、PDMSは気体透過性があるので、真空吸引することにより空気通路及び貫通孔内の空気を排気することができ、その結果、凹陥部を形成することができる。また、対面基板がガラスであると、第1のPDMS基板と自己吸着又は恒久接着することができ、また、PDMS薄膜と各PDMS基板同士も自己吸着又は恒久接着することができるので、高度な封止性が容易に実現できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のマイクロ流体チップによれば、減圧状態の凹陥部を設け、この凹陥部に外部から針を突き刺して“真空破り”することにより鋭敏な圧力変化を生じさせ、これによりポンプ作用を起こさせることができる。その結果、従来のような機械的又は電気的なマイクロポンプやバルブなどのような煩雑な機能を必要とせずに、簡単な送液及び/又は微量液体秤取が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明のマイクロ流体チップの好ましい実施態様について具体的に例証する。図1Aは本発明のマイクロ流体チップの一例の概要平面図であり、図1Bは、図1AにおけるB−B線に沿った概要断面図である。図2は、図1Bに示されるマイクロ流体チップ1の使用状態を示す概要断面図である。図3は、図1Bに示されるマイクロ流体チップの製造方法の一例を説明する工程図である。図4は、本発明のマイクロ流体チップの別の例の概要平面図である。図5A及び図5Bは、図4に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。図6は、本発明のマイクロ流体チップの更に別の例の概要平面図である。図7A及び図7Bは、図6に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。図8は、本発明のマイクロ流体チップの更に他の例の概要平面図である。図9A及び図9Bは、図8に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。
【0021】
図1A及び図1Bに示されるように、本発明のマイクロ流体チップ1は、対面基板3の上面に、第1のPDMS基板5が貼着されており、PDMS薄膜7を介して第2のPDMS基板9が積層されている。第1のPDMS基板5には、第1の貫通孔11と第2の貫通孔13が配設されており、これら貫通孔は空気通路15によりそれぞれ連通されている。各貫通孔と空気通路内は真空又は減圧状態に維持されているため、上部に貼着されているPDMS薄膜7は、貫通孔部分で内部に引き込まれるように凹陥し、第1の凹陥部17と第2の凹陥部19を形成している。第2の凹陥部19には送液すべき液体試料21が載置されている。PDMSは疎水性なので毛細管現象は起きないので、第2の凹陥部19内に収容されていた液体試料21は微細流路23内には流れ出ることなく、第2の凹陥部19内にそのまま留まる。この第2の凹陥部19を覆うように第2のPDMS基板9が積層されている。第2のPDMS基板9には、微細流路23と、大気に向かって開口したポート25が配設されている。微細流路23の一端はポート25に連通している。微細流路23の他端は、第2の凹陥部19を覆い尽くすのに必要十分な面積を有するように拡径された拡大部27を有する。拡大部27の大きさは第2の凹陥部19より小さくてもよい。拡大部27を設けることの利点は、第2のPDMS基板9の位置決めが容易になることである。しかし、微細流路23の他端に拡大部27を設けることは本発明の必須要件ではない。微細流路23の通常の幅及び高さを有する他端を第2の凹陥部19の上面に配置させるだけでも本発明の作用効果を十分に達成することができる。拡大部27が第2の凹陥部19より小さい場合又は拡大部27を設けない場合、圧力変化が一層シャープになるという利点がある。
【0022】
図2は、図1Bに示されたマイクロ流体チップ1の使用状態を示す概要断面図である。第1の凹陥部17の外部から針等を突き刺すことにより、各貫通孔及び空気通路内の真空を解除すると、PDMS薄膜7は元のフラットな状態に戻る。その際、第2の凹陥部19内に収容されていた液体試料21は微細流路23内に加圧送液される。このような“真空破り”によれば、圧力変化がシャープになり、特別なポンプを使用しなくても液体を送液することができる。微細流路23内の液体試料21はポート25から取り出すこともできるが、後記するように別の微細流路を経て他のポートから取り出すこともできる。微細流路の他端に拡大部27を設けず、通常の幅及び高さのままの他端を第2の凹陥部19の上面に配置して“真空破り”した場合、圧力変化が一層シャープになるという利点が得られる。
【0023】
次に、図3を参照しながら、図1に示されるマイクロ流体チップの製造方法を説明する。図3(A)に示されるように、対面基板3に第1のPDMS基板5を貼着させた部材を準備する。第1のPDMS基板5には空気通路15と第1の貫通孔11及び第2の貫通孔13が形成されている。これら空気通路は常用の光リソグラフィー法により形成することができ、光リソグラフィー法自体は当業者に公知であり、特に説明する必要はないであろう。また、各貫通孔は機械的な穴開け又は穿孔手段により形成することができる。各貫通孔の内径は同一であることもできるし、あるいは異なっていてもよい。例えば、第1の貫通孔11の内径よりも第2の貫通孔13の内径を大きくすることができる。特に、第2の貫通孔13の内径は後で載置される液体試料21の容量などを考慮して適宜決定することができる。例えば、数百μm〜数mm程度である。また、空気通路15の幅及び高さは適宜選択することができる。一例として、数μm〜数百μm程度である。第1のPDMS基板5の厚さは数百μm〜数mm程度であり、対面基板3の厚さも数百μm〜数mm程度である。対面基板3の素材はガラス、プラスチックなど、第1のPDMS基板5と密着することができる素材であれば全て使用することができる。しかし、対面基板3の素材としては、PDMSと恒久接着できるガラスが好ましい。
【0024】
次いで、図3(B)に示されるように、第1のPDMS基板5の上面にPDMS薄膜7を貼着する。PDMS同士は恒久接着するという性質がある。恒久接着とは、酸素プラズマなどの雰囲気下で表面改質することにより、接着剤無しでPDMS同士を相互に接着することができる性質のことであり、PDMS同士間で優れた接着性又は密着性を発揮させることができる。PDMS薄膜7の膜厚は数μm〜数十μm程度である。余り薄すぎると、後記の真空吸引工程で破損する危険性があるので好ましくない。一方、余り厚すぎると、真空吸引の妨げとなるばかりか、“真空破り”をしたときの反発力が弱く、圧力変化がシャープにならないという欠点がある。しかし、薄膜7は、柔軟性、伸縮性、疎水性、気体透過性などの特性を有するものであれば、PDMS以外の素材であることもできる。
【0025】
その後、前記(B)ステップで得られた部材を真空槽30内に配置し、真空吸引し、真空槽30内を減圧状態にする。図3(C−1)に示されるように、減圧雰囲気中に曝されるため、PDMS薄膜7は最初は膨張する。しかし、PDMSは極僅かであるが気体透過性があるので、貫通孔11及び13と空気通路15の密閉空間内の空気はPDMS薄膜7を通して除去される。その後、真空槽30内を真空解除することによって、PDMS薄膜7が凹み、貫通孔11及び13と空気通路15の密閉空間内が減圧状態となる。その結果、図3(C−2)に示されるように、PDMS薄膜7は貫通孔11及び13内に吸い込まれ、第1の凹陥部17と第2の凹陥部19がそれぞれ形成される。真空排気時間を調整することにより凹陥部の容積を変化させることができる。凹陥部の最大容積は貫通孔の容積と略同一となる時点である。
【0026】
次いで、真空槽30から、凹陥部の形成された部材を取り出す。取り出した後、第2の凹陥部19内に所定容量の液体試料21を注入し、図3(D)に示されるような部材を形成する。液体試料21の注入容量は後の工程で積重される第2のPDMS基板9の微細流路23及びポート25の容積を勘案して決定することが好ましい。
【0027】
その後、図3(E)に示されるように、第2の凹陥部19を覆うように第2のPDMS基板9を積層させる。斯くして、図1に示される本発明のマイクロ流体チップ1が得られる。第1のPDMS基板5と同様に、第2のPDMS基板9もPDMS薄膜7と恒久接着することができる。第2のPDMS基板9の微細流路23及びポート25は、第1のPDMS基板5の空気通路15及び貫通孔11,13と同様な光リソグラフィー法により形成することができる。第2のPDMS基板9の厚さは数百μm〜数mm程度である。第2のPDMS基板9の微細流路23の幅及び高さは数十μm〜数百μm程度であり、ポート25の内径は数百μm〜数mm程度である。微細流路23及びポート25のサイズは第2の凹陥部19に注入される液体試料21の容量を考慮して決定することができる。第2の基板9はPDMS以外の他のプラスチック又はガラス、セラミックなどから形成することもできる。
【0028】
図4は、本発明のマイクロ流体チップの別の例の概要平面図である。図4に示されるマイクロ流体チップ1Aでは、微細流路が2本直交するように配設され、微細流路の交差点部分の容積に相当する容積の液体試料を定量採取することができる。
図4のマイクロ流体チップ1Aは、基本的に図1Bに示された4層構造と同様な断面構造を有する。マイクロ流体チップ1Aは、具体的には、空気通路15Aで連通された第1の凹陥部17Aと第2の凹陥部19Aを有し、かつ、第1の微細流路23Aを有し、第1の微細流路23Aの一端には大気に向かって開口した第1のポート25Aが配設され、第1の微細流路23Aの他端は、第2の凹陥部19Aを覆い尽くすのに必要十分な面積を有するように拡径された第1の拡大部27Aが配設されている。第2の凹陥部19Aには送液すべき液体試料21が載置されている。更に、空気通路15Bで連通された第3の凹陥部17Bと第4の凹陥部19Bを有し、かつ、第2の微細流路23Bを有し、第2の微細流路23Bの一端には大気に向かって開口した第2のポート25Bが配設され、第2の微細流路23Bの他端は、第4の凹陥部19Bを覆い尽くすのに必要十分な面積を有するように拡径された第2の拡大部27Bが配設されている。しかし、第4の凹陥部19B内には何も注入されていないブランクのままである。第1の微細流路23Aと第2の微細流路25Bとは同一平面内で直角に交差しており、交差点32で相互に連通している。
【0029】
図5A及び図5Bは、図4に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。図5Aにおいて、第1の凹陥部17Aの外部から針等を突き刺すことにより真空を解除すると、第1の凹陥部17A及び第2の凹陥部19Aに対応する部分のPDMS薄膜7は元のフラットな状態に戻る。その際、第1の拡大部27A内の圧力が急激に高まり、第2の凹陥部19A内に収容されていた液体試料21は第1の微細流路23A内に加圧送液される。次いで、図5Bにおいて、第3の凹陥部17Bの外部から針等を突き刺すことにより真空を解除すると、第3の凹陥部17B及び第4の凹陥部19Bに対応する部分のPDMS薄膜7は元のフラットな状態に戻る。その際、第2の拡大部27B内の圧力が急激に高まり、圧力は第2のポート25Bに向かって伝播するので、第1の微細流路23Aと第2の微細流路23Bとの交差点32部分の液体試料21が、第2の微細流路23Bを介して第2のポート25Bに加圧送液される。斯くして、第1の微細流路23Aと第2の微細流路23Bとの交差点32部分の容積に対応する極微量容量の液体試料21を正確に秤取し、第2のポート25Bから取り出すことができる。
【0030】
図6は、本発明のマイクロ流体チップの更に別の例の概要平面図である。図6に示されるマイクロ流体チップ1Bでは、第1の微細流路に対して複数本の微細流路が直交するように配設されている。その結果、交差点部分も複数個形成されるため、微細流路の各交差点部分の容積に相当する容積の液体試料を複数個定量採取することができる。
図6のマイクロ流体チップ1Bは、基本的に図1Bに示された4層構造と同様な断面構造を有する。マイクロ流体チップ1Bは、具体的には、空気通路15Aで連通された第1の凹陥部17Aと第2の凹陥部19Aを有し、かつ、第1の微細流路23Aを有し、第1の微細流路23Aの一端には大気に向かって開口した第1のポート25Aが配設され、第1の微細流路23Aの他端は、第2の凹陥部19Aを覆い尽くすのに必要十分な面積を有するように拡径された第1の拡大部27Aが配設されている。第2の凹陥部19Aには送液すべき液体試料21が載置されている。更に、空気通路15Bで連通された第3の凹陥部17Bと第4の凹陥部19Bを有し、かつ、第2の微細流路23Bを有し、第2の微細流路23Bの一端には大気に向かって開口した第2のポート25Bが配設され、第2の微細流路23Bの他端は、第4の凹陥部19Bを覆い尽くすのに必要十分な面積を有するように拡径された第2の拡大部27Bが配設されている。しかし、第4の凹陥部19B内には何も注入されていないブランクのままである。第1の微細流路23Aと第2の微細流路23Bとは同一平面内で直角に交差しており、交差点32−1で相互に連通している。15B〜27Bの各部材と並列に、15C〜27Cの各部材が配列されている。即ち、空気通路15Cで連通された第5の凹陥部17Cと第6の凹陥部19Cを有し、かつ、第3の微細流路23Cを有し、第3の微細流路23Cの一端には大気に向かって開口した第3のポート25Cが配設され、第3の微細流路23Cの他端は、第6の凹陥部19Cを覆い尽くすのに必要十分な面積を有するように拡径された第3の拡大部27Cが配設されている。しかし、第6の凹陥部19C内には何も注入されていないブランクのままである。第1の微細流路23Aと第3の微細流路23Cとは同一平面内で直角に交差しており、交差点32−2で相互に連通している。
【0031】
図5A及び図5Bに関連して説明した態様と同様に、図7Aにおいて、第1の凹陥部17Aの外部から針等を突き刺すことにより真空を解除すると、第1の凹陥部17A及び第2の凹陥部19Aに対応する部分のPDMS薄膜7は元のフラットな状態に戻る。その際、第1の拡大部27A内の圧力が急激に高まり、第2の凹陥部19A内に収容されていた液体試料21は第1の微細流路23A内に加圧送液される。次いで、図7Bにおいて、第3の凹陥部17B及び第5の凹陥部17Cの外部から針等を突き刺すことにより真空を解除すると、第3の凹陥部17B及び第4の凹陥部19Bと第5の凹陥部17C及び第6の凹陥部19Cに対応する部分のPDMS薄膜7は元のフラットな状態に戻る。その際、第2の拡大部27B及び第3の拡大部27C内の圧力が急激に高まり、圧力は第2のポート25B及び第3のポート25Cに向かって伝播するので、第1の微細流路23Aと第2の微細流路23Bとの交差点32−1部分及び第1の微細流路23Aと第3の微細流路23Cとの交差点32−2部分の液体試料21が、第2の微細流路23B及び第3の微細流路23Cを介して第2のポート25B及び第3のポート25Cに加圧送液される。斯くして、第1の微細流路23Aと第2の微細流路23Bとの交差点32−1部分及び第1の微細流路23Aと第3の微細流路23Cとの交差点32−2部分の容積に対応する極微量容量の液体試料21を正確に秤取し、第2のポート25B及び第3のポート25Cから取り出すことができる。液体試料を供給する微細流路23Aに対して直交する試料採取用の微細流路23B〜23Cの本数を増やすことにより更に多くの試料を個別的に定量秤取することができる。
【0032】
図8は、本発明のマイクロ流体チップの更に他の例の概要平面図である。図8に示されるマイクロ流体チップ1Cでは、液体試料供給用の第1の微細流路及び第2の微細流路に対して複数本の液体試料秤取用の微細流路が直交するように配設されている。その結果、交差点部分も複数個形成されるため、微細流路の各交差点部分の容積に相当する容積の液体試料を混合状態で複数個定量採取することができる。
図8のマイクロ流体チップ1Cは、基本的に図1Bに示された4層構造と同様な断面構造を有する。マイクロ流体チップ1Cは、具体的には、空気通路15Aで連通された第1の凹陥部17Aと第2の凹陥部19Aを有し、かつ、第1の微細流路23Aを有し、第1の微細流路23Aの一端には大気に向かって開口した第1のポート25Aが配設され、第1の微細流路23Aの他端は、第2の凹陥部19Aを覆い尽くすのに必要十分な面積を有するように拡径された第1の拡大部27Aが配設されている。第2の凹陥部19Aには送液すべき第1の液体試料21Aが載置されている。更に、空気通路15Aと平行に、空気通路15Bで連通された第3の凹陥部17Bと第4の凹陥部19Bを有し、かつ、第2の微細流路23Bを有し、第2の微細流路23Bの一端には大気に向かって開口した第2のポート25Bが配設され、第2の微細流路23Bの他端は、第4の凹陥部19Bを覆い尽くすのに必要十分な面積を有するように拡径された第2の拡大部27Bが配設されている。第4の凹陥部19Bには送液すべき第2の液体試料21Bが載置されている。第1の微細流路23A及び第2の微細流路23Bと直交するように、第3の微細流路23C及び第4の微細流路23Dが配設されている。即ち、第3の微細流路23Cは第1の微細流路23Aと交差点32−1Aで交差し、第2の微細流路23Bと交差点32−1Bで交差する。同様に、第4の微細流路23Dは第1の微細流路23Aと交差点32−2Aで交差し、第2の微細流路23Bと交差点32−2Bで交差する。第3の微細流路23Cの一端には大気に向かって開口した第3のポート25Cが配設され、他端には、第3の拡大部27Cが配設されている。第3の拡大部27Cの下部にはこの拡大部の径よりも小さな径の第6の凹陥部19Cが存在し、この第6の凹陥部19Cは第3の空気通路15Cにより連通される第5の凹陥部17Cが配設されている。同様に、第4の微細流路23Dの一端には大気に向かって開口した第4のポート25Dが配設され、他端には、第4の拡大部27Dが配設されている。第4の拡大部27Dの下部にはこの拡大部の径よりも小さな径の第8の凹陥部19Dが存在し、この第8の凹陥部19Dは第4の空気通路15Dにより連通される第7の凹陥部17Dが配設されている。第6の凹陥部19C及び第8の凹陥部19D内には何も注入されていないブランクのままである。
【0033】
図5A及び図5Bに関連して説明した態様と同様に、図9Aにおいて、第1の凹陥部17Aの外部から針等を突き刺すことにより真空を解除すると、第1の凹陥部17A及び第2の凹陥部19Aに対応する部分のPDMS薄膜7は元のフラットな状態に戻る。その際、第1の拡大部27A内の圧力が急激に高まり、第2の凹陥部19A内に収容されていた第1の液体試料21Aは第1の微細流路23A内に加圧送液される。同様に、第3の凹陥部17Bの外部から針等を突き刺すことにより真空を解除すると、第3の凹陥部17B及び第4の凹陥部19Bに対応する部分のPDMS薄膜7は元のフラットな状態に戻る。その際、第2の拡大部27B内の圧力が急激に高まり、第4の凹陥部19B内に収容されていた第2の液体試料21Bは第2の微細流路23B内に加圧送液される。次いで、図9Bにおいて、第5の凹陥部17Cの外部から針等を突き刺すことにより真空を解除すると、第5の凹陥部17C及び第6の凹陥部19Cに対応する部分のPDMS薄膜7は元のフラットな状態に戻る。その際、第3の拡大部27C内の圧力が急激に高まり、圧力は第3のポート25Cに向かって伝播するので、第1の微細流路23Aとの交差点32−1A部分の第1の液体試料21Aと、第2の微細流路23Bとの交差点32−1B部分の第2の液体試料21Bが、第3の微細流路23Cを介して第3のポート25Cに混合状態で加圧送液される。斯くして、第1の微細流路23Aの交差点32−1A部分と第2の微細流路23Bの交差点32−1B部分の容積に対応する極微量容量の第1の液体試料21Aと第2の液体試料21Bを正確に秤取し、均一に混合された状態で第3のポート25Cから取り出すことができる。第7の凹陥部17Dに対しても前記と同様に穿刺処理すると、前記と同様に、第1の微細流路23Aの交差点32−2A部分と第2の微細流路23Bの交差点32−2B部分の容積に対応する極微量容量の第1の液体試料21Aと第2の液体試料21Bを正確に秤取し、均一に混合された状態で第4のポート25Dから取り出すことができる。
【0034】
図10は、本発明のマイクロ流体チップの更に他の例の概要平面図である。図10に示されるマイクロ流体チップ1Dでは、第1の微細流路の両端に大気に向かって開放したポートが形成されているので、一方のポートから他方のポートに向かって液体試料を注入することにより第1の微細流路内に液体試料を満たすことができる。更に、この第1の微細流路に対して複数本の微細流路が直交するように配設されている。その結果、交差点部分も複数個形成されるため、微細流路の各交差点部分の容積に相当する容積の液体試料を複数個定量採取することができる。
図10のマイクロ流体チップ1Dは、基本的に図1Bに示された4層構造と同様な断面構造を有する。マイクロ流体チップ1Dは、具体的には、大気に向かって開放した第1のポート25Aと第5のポート25Eが各端部に配設された第1の微細流路23Aを有する。更に、空気通路15Bで連通された第3の凹陥部17Bと第4の凹陥部19Bを有し、かつ、第2の微細流路23Bを有し、第2の微細流路23Bの一端には大気に向かって開口した第2のポート25Bが配設され、第2の微細流路23Bの他端は、第4の凹陥部19Bを覆い尽くすのに必要十分な面積を有するように拡径された第2の拡大部27Bが配設されている。しかし、第4の凹陥部19B内には何も注入されていないブランクのままである。第1の微細流路23Aと第2の微細流路23Bとは同一平面内で直角に交差しており、交差点32−1で相互に連通している。15B〜27Bの各部材と並列に、15C〜27Cの各部材が配列されている。即ち、空気通路15Cで連通された第5の凹陥部17Cと第6の凹陥部19Cを有し、かつ、第3の微細流路23Cを有し、第3の微細流路23Cの一端には大気に向かって開口した第3のポート25Cが配設され、第3の微細流路23Cの他端は、第6の凹陥部19Cを覆い尽くすのに必要十分な面積を有するように拡径された第3の拡大部27Cが配設されている。しかし、第6の凹陥部19C内には何も注入されていないブランクのままである。第1の微細流路23Aと第3の微細流路23Cとは同一平面内で直角に交差しており、交差点32−2で相互に連通している。
【0035】
図11Aにおいて、第1のポート25Aから第5のポート25Eに向けて液体試料21を注入することにより第1の微細流路23A内に液体試料21を満たすことができる。液体試料21の注入は例えば、第1のポート25Aにチューブ(図示されていない)を接続し、チューブの他端にシリンジ(図示されていない)を接続し、このシリンジから液体試料21を送液することにより行うことができる。この実施態様のマイクロ流体チップでは、図4、図6又は図8などに示された実施態様のマイクロ流体チップに比べて、液体試料21の供給が容易になるという利点がある。
【0036】
次いで、図11Bにおいて、第3の凹陥部17B及び第5の凹陥部17Cの外部から針等を突き刺すことにより真空を解除すると、第3の凹陥部17B及び第4の凹陥部19Bと第5の凹陥部17C及び第6の凹陥部19Cに対応する部分のPDMS薄膜7は元のフラットな状態に戻る。その際、第2の拡大部27B及び第3の拡大部27C内の圧力が急激に高まり、圧力は第2のポート25B及び第3のポート25Cに向かって伝播するので、第1の微細流路23Aと第2の微細流路23Bとの交差点32−1部分及び第1の微細流路23Aと第3の微細流路23Cとの交差点32−2部分の液体試料21が、第2の微細流路23B及び第3の微細流路23Cを介して第2のポート25B及び第3のポート25Cに加圧送液される。斯くして、第1の微細流路23Aと第2の微細流路23Bとの交差点32−1部分及び第1の微細流路23Aと第3の微細流路23Cとの交差点32−2部分の容積に対応する極微量容量の液体試料21を正確に秤取し、第2のポート25B及び第3のポート25Cから取り出すことができる。液体試料を供給する微細流路23Aに対して直交する試料採取用の微細流路23B〜23Cの本数を増やすことにより更に多くの試料を個別的に定量秤取することができる。
【0037】
液体試料を供給するための、両端にオープンポートを有する微細流路は1本に限らず、2本以上配設することもできる。この場合、図8の実施態様のマイクロ流体チップと同様に、複数種類の液体試料を定量混合して秤取することができる。
【実施例】
【0038】
本発明の四層構造のマイクロ流体デバイスを作製した。対面基板3には厚さ1mmの白ガラスを使用し、第1のPDMS基板5には厚さ2mmのシリコーンゴムを使用し、PDMS薄膜7には、厚さ40μmのシリコーンゴムを使用し、第2のPDMS基板9には厚さ2mmのシリコーンゴムを使用した。第1のPDMS基板5に配設されている空気通路15の幅は200μm、深さは100μm、長さは20mmであり、第1の貫通孔11及び第2の貫通孔13の内径はそれぞれφ4mmであった。第2のPDMS基板9に配設されている微細流路23の幅は200μm、深さは200μm、長さは20mmであり、微細流路23の一端に設けられている拡大部27の直径はφ2mmであり、微細流路23の他端に設けられているポート25の内径はφ2mmであった。
空気通路15の形成において、ウエハに厚膜レジストをフォトリソグラフィー法によりパターニング(露光、現像)することで、シリコーンゴムモールド用鋳型として使用した。シリコーンゴムモールド前に、鋳型に離型膜として20nmのCHF膜を形成させた後、シリコーンゴムをモールドし、脱気した。その後、100℃で4時間加温することでシリコーンゴムを重合させた。その後、鋳型から引き剥がし、空気通路5を有する第1のPDMS基板5を形成し、次いで、この第1のPDMS基板5を白ガラスからなる対面基板3に恒久接着させ、その後、第1のPDMS基板5に第1の貫通孔11及び第2の貫通孔13を機械的に穿設した。その後、予め形成しておいたPDMS薄膜7を第1のPDMS基板5の上面に自己吸着させた。
次いで、前記のようにして得られた三層構造物を真空槽内に収容し、真空槽を密閉した後、真空ポンプにより真空槽内の空気を排気し、真空槽内の圧力を0.1MPaにまで減圧し、この圧力を20分間維持した。その結果、第1の貫通孔11及び第2の貫通孔13の位置にそれぞれ対応する第1の凹陥部17及び第2の凹陥部19が形成された。その後、真空槽内の圧力を大気圧にまで戻した後、凹陥部が形成された三層構造物を真空槽から取り出した。
第2の凹陥部19内に、液体試料21として着色インクを5μL注入した後、拡大部27で第2の凹陥部19を覆うように、第2のPDMS基板9をPDMS薄膜7の上面に自己吸着させた。第2のPDMS基板9における微細流路23、拡大部27及びポート25の形成は、第1のPDMS基板5における空気通路15及び貫通孔11,13の形成方法と同様な方法により行った。
前記のようにして得られた四層構造のマイクロ流体チップ1において、第1の凹陥部17の外面側から針を突き刺し、真空を破った。すると、PDMS薄膜7が復元し、第1の凹陥部17及び第2の凹陥部19が消失してフラットになると共に、第2の凹陥部19内の着色インク21が微細流路23を介してポート25にまで送液された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上、本発明の好ましい実施態様について説明してきたが、本発明は図示された実施態様のみに限定されない。例えば、本発明の真空凹陥部の真空破りによる送液機構はマイクロ流体チップだけでなく、様々な分野における微量流体制御機構においても同等に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1A】本発明のマイクロ流体チップの一例の概要平面図である。
【図1B】図1AにおけるB−B線に沿った概要断面図である。
【図2】図1Bに示されるマイクロ流体チップ1の使用状態を示す概要断面図である。
【図3】図1Bに示されるマイクロ流体チップの製造方法の一例を説明する工程図である。
【図4】本発明のマイクロ流体チップの別の例の概要平面図である。
【図5A】図4に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。
【図5B】図4に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。
【図6】本発明のマイクロ流体チップの更に別の例の概要平面図である。
【図7A】図6に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。
【図7B】図6に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。
【図8】本発明のマイクロ流体チップの更に他の例の概要平面図である。
【図9A】図8に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。
【図9B】図8に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。
【図10】本発明のマイクロ流体チップの更に他の例の概要平面図である。
【図11A】図10に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。
【図11B】図10に示されたマイクロ流体チップの使用方法の一例を示す概念的平面図である。
【図12】(A)は従来のマイクロ流体チップの一例の概要平面図であり、(B)は(A)におけるB−B線に沿った概要断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1,1A,1B,1C,1D 本発明のマイクロ流体チップ
3 対面基板
5 第1のPDMS基板
7 PDMS薄膜
9 第2のPDMS基板
11 第1の貫通孔
13 第2の貫通孔
15 空気通路
15A 第1の空気通路
15B 第2の空気通路
15C 第3の空気通路
15D 第4の空気通路
17,17A 第1の凹陥部
19,19A 第2の凹陥部
17B 第3の凹陥部
17C 第5の凹陥部
17D 第7の凹陥部
19B 第4の凹陥部
19C 第6の凹陥部
19D 第8の凹陥部
21,21A,21B 液体試料
23 微細流路
23A 第1の微細流路
23B 第2の微細流路
23C 第3の微細流路
23D 第4の微細流路
25A 第1のポート
25B 第2のポート
25C 第3のポート
25D 第4のポート
25E 第5のポート
27 拡大部
27A 第1の拡大部
27B 第2の拡大部
27C 第3の拡大部
27D 第4の拡大部
30 真空槽
32,32−1,32−2,32−1A,32−1B,32−2A,32−2B 流路交差点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面基板と、第1の基板と、薄膜と、第2の基板との少なくとも4層構造からなり、
前記第1の基板は、前記対面基板接合面側に、少なくとも1本の空気通路と、この通路の両端に配設された第1の貫通孔と第2の貫通孔とを有し、
前記薄膜は前記第1の基板の各貫通孔の開口部を密閉すると共に、前記空気通路及び各貫通孔内が真空状態に保たれることにより、前記各貫通孔内に凹陥してそれぞれ対応する第1の凹陥部及び第2の凹陥部を形成しており、
前記第2の基板は、前記薄膜接合面側に少なくとも1本の微細流路を有し、該微細流路の一端には、この微細流路に連通する大気に向かって開放したポートが配設されており、該微細流路の他端は、前記第2の凹陥部の上面に配置されていることを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項2】
前記対面基板がガラスからなり、前記第1の基板、薄膜及び第2の基板が何れも、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなることを特徴とする請求項1記載のマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記少なくとも1本の微細流路に対して、少なくとも1本の微細流路が直交していることを特徴とする請求項1記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
マイクロ流体チップの製造方法であって、
(1)一方の面に空気通路と、この空気通路の一方の端部に第1の貫通孔と他方の端部に第2の貫通孔を有する第1の基板を、前記空気通路形成面側を対面基板に接合するステップと、
(2)前記第1の基板の上面に薄膜を被せて前記第1の基板の前記第1及び第2の貫通孔を封止するステップと、
(3)前記対面基板、第1の基板及び薄膜との3層構造物を真空槽内に入れ、減圧下で第1の基板の封止された空気通路及び各貫通孔内の空気を排気し、前記第1の貫通孔及び第2の貫通孔に対応する位置にそれぞれ第1の凹陥部及び第2の凹陥部を形成するステップと、
(4)一方の面に微細流路を有し、該微細流路の一方の端部には、大気に向かって開放したポートが配設されている第2の基板を、前記微細流路の他端が前記第2の凹陥部の上面に配置されるように、前記薄膜上に接合させるステップを有することを特徴とするマイクロ流体チップの製造方法。
【請求項5】
前記対面基板がガラスからなり、前記第1の基板、薄膜及び第2の基板が何れも、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなることを特徴とする請求項4記載のマイクロ流体チップの製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−53064(P2006−53064A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235244(P2004−235244)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】