マイクロ流体装置およびその使用方法
【課題】様々な核酸増幅反応を行うことに利用され得る一方で他のタイプの分析における使用にも十分な汎用性を有する装置を提供すること。
【解決手段】様々なエラストマー・ベースのマイクロ流体装置および装置を使用し製造する方法が提供される。幾つかの装置は、高いスループット分析を容易化するために反応部位のアレイを有する。幾つかの装置は、製造中に試薬が予め堆積されたブラインド・チャネルの端に位置する反応部位も含む。試薬は、一旦サンプルが反応部位に導入されると保留される。装置は、様々な加熱装置と利用され、従って、核酸増幅反応、遺伝子型特定、および、遺伝子発現分析のようなサーモサイクリング用途を含む温度制御を必要とする様々な分析に使用され得る。
【解決手段】様々なエラストマー・ベースのマイクロ流体装置および装置を使用し製造する方法が提供される。幾つかの装置は、高いスループット分析を容易化するために反応部位のアレイを有する。幾つかの装置は、製造中に試薬が予め堆積されたブラインド・チャネルの端に位置する反応部位も含む。試薬は、一旦サンプルが反応部位に導入されると保留される。装置は、様々な加熱装置と利用され、従って、核酸増幅反応、遺伝子型特定、および、遺伝子発現分析のようなサーモサイクリング用途を含む温度制御を必要とする様々な分析に使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本通常の特許出願は、全ての目的および特定の目的のために本願で参照として組み込むUngerらによる2003年4月3日に出願された米国仮特許出願第60/460,634号に関して35U.S.C.§119(e)の下で優先権主張する。
【0002】
(関連出願の引用)
本願は、全ての目的および特定の目的のために本願で参照として各々を組み込む、2002年6月24日に出願された米国仮特許出願第60/391,529号、および2001年11月30日に出願された米国仮特許出願第60/335,292号に関して、35U.S.C.§119(e)の下で優先権主張する、2002年11月27日に出願された米国特許出願番号10/306,798に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
最近では、予備的および分析的適用法の両方に対して化学的および生化学的分析および合成を実施するためにマイクロ流体システムを開発し製造する試みがなされている。このような装置を形成する目的は、マクロ・スケールで行われる分析および合成より優れた、小型化から実現され得る顕著な利点により生ずる。このような利点は、分析または合成を行うために利用される装置に対する時間、費用、および、空間要件における実質的な減少を含む。追加的には、マイクロ流体装置は、自動化されたシステムとの使用に適合される可能性を有し、それにより、人間の介入における減少により、更なる費用低下およびオペレータ・エラーの減少という、更なる追加的利点を提供する。マイクロ流体装置は、例えば、キャピラリー電気泳動、ガス・クロマトグラフィー、および、細胞分離を含む様々な用途に使用されることが提案される。
【0004】
しかしながら、これら利点の実現は、これまで製造されてきたマイクロ流体装置と関連する様々な複雑な状態によりしばしば妨げられてきた。例えば、現在のマイクロ流体装置の多くはシリカベースの基板から製造される。これら材料は機械加工するのが困難且つ複雑であるため、このような材料から形成される装置は壊れやすい。更に、多数の既存のマイクロ流体装置を通る流体の運搬は、装置中を制御された状態で流体を運搬するために複雑な電場の調整を必要とする。
【0005】
従って、マイクロ流体装置で実現し得る前述の利点および既存の装置の現在の制限を鑑みて、様々な化学的および生化学的分析を行うのに使用されるよう設計されるマイクロ流体装置の必要性がまだある。現代の生化学におけるその重要性により、様々な核酸増幅反応を行うことに利用され得る一方で他のタイプの分析における使用にも十分な汎用性を有する装置が特に必要である。
【0006】
核酸増幅を行う能力を有する装置は、様々な有用性を有する。例えば、このような装置は、関心のある特定のターゲット核酸がサンプル中に存在するかしないかを決定するために分析ツールとして使用され得る。従って、装置は、特定の病原体(例えば、ウイルス、細菌、または、菌類)の存在、および、識別目的(例えば、父子および法医用途)を試験するために利用される。このような装置は、特定の病気または遺伝的障害と前に相関された特定の核酸を検出または特徴付けるために利用され得る。分析ツールとして使用されるとき、装置は、遺伝子型特定分析および発現分析遺伝子発現分析(例えば、差別的遺伝子発現研究)を行うためにも利用される。あるいは、装置は、増幅された生成物のシーケンシング、細胞タイピング、DNAフィンガープリント法等のような更なる分析のために十分な核酸を増幅するよう予備方法で使用され得る。増幅された生成物は、ベクターに挿入して所望のプロテイン生成物の生産のために細胞を形質転換させるよう使用されるように、様々な遺伝工学的用途においても使用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本願ではマイクロ流体分析を行う様々な装置および方法が提供され、核酸増幅反応のようなサーモサイクリング反応を行うために利用される装置が含まれる。装置は、エラストマー構成要素を含み、ある場合では、装置の殆どまたは全てがエラストマー材料よりなる点で従来のマイクロ流体装置と異なる。
【0008】
ある装置は、装置中の溶液の流れを調整するために一つ以上のエラストマー弁を含む装置でサーマルサイクリング反応(例えば、PCR)を行うために設計される。従って、この設計の装置で増幅反応を行う方法も提供される。
【0009】
幾つかの装置は、反応部位として機能する領域を含むブラインド流れチャネルを含む。ある装置は、エラストマー材料内に形成される流れチャネル、および、流れチャネルと流体連通している複数のブラインド流れチャネルを含み、各ブラインド流れチャネルの領域が反応部位を画成している。装置は、各ブラインド流れチャネルの上に重なり交差する一つ以上の制御チャネルを含み、エラストマー膜は一つ以上の制御チャネルを各交点においてブラインド流れチャネルから分離させる。このような装置におけるエラストマー膜は、作動力に応答してブラインド流れチャネルにそらされるか引込まれるよう配置される。装置は、任意には、エラストマー材料に形成され、流れチャネルおよび/または一つ以上の反応部位の上に重なる複数のガード・チャネルを更に含む。ガード・チャネルは、中に流体を流れさせて装置の流れチャネルおよび反応部位からの蒸発を減少させるよう設計される。追加的には、装置は、各反応部位内に堆積される一つ以上の試薬を任意には含む。
【0010】
ある装置では、流れチャネルは、複数の流れチャネルの一つであり、各流れチャネルはそこから分岐している多数のブラインド流れチャネルと流体連通している。この設計の装置のうち、ある場合では、流体が単一の入口を介して各反応部位に導入され得るよう複数の流れチャネルが互いと相互接続される。しかしながら、他の装置では、複数の流れチャネルは、一つの流れチャネルに導入される流体が別の流れチャネルに流れないよう互いから隔離され、各流れチャネルは、一端または両端において入口を含み、この入口に流体が導入される。
【0011】
他の装置は、少なくとも50部位/cm2の密度を有する反応部位のアレイを含み、反応部位は、典型的には、エラストマー材料内で形成される。他の装置は、例えば、少なくとも250、500、または、1000部位/cm2のようなより高い密度を有する。
【0012】
更に、このような装置は、エラストマー基板内に形成される反応部位を含み、そこで反応を行うための試薬が非共有結合で固定される。試薬は、基本的に任意のタイプの反応を行うための一つ以上の試薬であり得る。幾つかの装置における試薬は、核酸増幅反応を行うための一つの試薬を含む。従って、幾つかの装置では、試薬はプライマー、ポリメラーゼ、および、一つ以上のヌクレオチドを有する。他の装置では、試薬は核酸テンプレートである。
【0013】
様々なマトリクスまたはアレイ・ベースの装置も提供される。これら装置の幾つかは、(i)エラストマー基板に形成される第1の複数の流れチャネル、(ii)反応部位のアレイを画成するよう第1の複数の流れチャネルと交差する、エラストマー基板に形成される第2の複数の流れチャネル、(iii)各反応部位内の溶液を他の反応部位の溶液から隔離するよう作動される、第1のおよび第2の複数の流れチャネル内に配置される複数の隔離弁、および、(iv)溶液の蒸発を防止するために一つ以上の流れチャネルおよび/または一つ以上の反応部位の上に重なる複数のガード・チャネルを含む。
【0014】
前述の装置は、温度調整(例えば、核酸分析のサーモサイクリング)を伴うものを含む、幾つかの異なるタイプの反応を行うために利用され得る。あるブラインド・チャネル・タイプ装置で行われる方法は、エラストマー材料内に形成される流れチャネル、および、流れチャネルと流体連通している複数のブラインド流れチャネルを含むマイクロ流体装置を提供することを含み、各ブラインド流れチャネルの端領域が反応部位を画成する。少なくとも一つの試薬が反応部位それぞれに導入され、反応は一つ以上の反応部位で検出される。方法は、任意には、反応部位内で少なくとも一つの試薬を加熱することを含む。従って、例えば、同方法は、核酸増幅反応のための構成要素を導入し、増幅された生成物を形成するために構成要素をサーモサイクリングすることを伴う。
【0015】
他の方法は、一つ以上の反応部位を有するマイクロ流体装置を提供することを伴い、各反応部位はエラストマー基板に非共有結合で堆積される分析を行うための第1の試薬を有する。第2の試薬は、一つ以上の反応部位中に導入され、それにより、第1のおよび第2の試薬は混合され反応混合物を形成する。一つ以上の反応部位における第1と第2の試薬間の反応は、その後検出される。
【0016】
更に別の方法は、基板内に形成され、少なくとも50部位/cm2の密度を有する反応部位のアレイを備えるマイクロ流体装置を提供することを伴う。少なくとも一つの試薬が各反応部位に導入される。続いて、一つ以上の反応部位における反応が検出される。
【0017】
更に、別の方法は、エラストマー基板内に形成される少なくとも一つの反応部位、および、エラストマー基板内に形成される複数のガード・チャネルを備えるマイクロ流体装置を提供することを伴う。少なくとも一つの試薬が各反応部位に導入され、反応部位内で加熱される。流体は、加熱前または加熱中にガード・チャネル中を流れ、少なくとも一つの反応部位からの蒸発を減少させる。少なくとも一つの反応部位内での反応がその後検出される。
【0018】
装置から流体の蒸発を減少させるよう設計される追加的な装置は更に提供される。一般的に、このような装置は、エラストマー基板に形成されるマイクロ流体ネットワークの一部である空洞、および、空洞の上に重なり、エラストマー膜によって空洞から離間されている複数のガード・チャネルを有する。このような装置におけるガード・チャネルは、(i)溶液が中を流れることを可能にし、(ii)ガード・チャネルに対する作動力を加える際の膜の反れによる空洞への溶液の流入、流出、または、その中の流れにおいて相当な減少が起こらないようなサイズにされる。他のこのような装置は、(i)一つ以上の流れチャネルおよび/または一つ以上の反応部位、および、(ii)マイクロ流体システムの上に重なり、そこからエラストマーによって離間される複数のガード・チャネルを含み、ガード・チャネル間のスペーシングは、1μm乃至1mmである。他の装置では、スペーシングは、5μm乃至500μmであり、他の装置では10μm乃至100μmであり、更に他の装置では40μm乃至75μmである。
【0019】
あるマイクロ流体装置の反応部位において核酸分析を行うための組成物も提供される。ある組成物は、エラストマー材料上のプロテイン結合部位を遮断する物質および洗浄剤を一つ以上含む。遮断物質は、プロテイン(例えば、ゼラチンまたはウシ血清アルブミン(BSA)のようなアルブミン)よりなる群から典型的には選択される。洗浄剤は、例えば、SDSまたはトリトンでもよい。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
流体チャネルを通じて互いと流体連通している第1の端および第2の端を有する流体チャネルと、
前記チャネルと連通している入口であって、サンプル流体を導入する入口と、
弁であって、作動されると前記第1のチャネルの端を前記第2のチャネルの端から流体的に分離させる弁と、を備え、
前記サンプル流体が前記流体チャネルに導入され、前記弁が作動されると、前記サンプル流体が別個のサンプル流体部分に分割される、マイクロ流体装置。
(項目2)
前記チャネルと連通する出口であって、前記サンプル流体の幾らかまたは全てを除去する出口とを更に有する、項目1記載のマイクロ流体装置。
(項目3)
第2の弁であって、作動されると前記出口と前記流体チャネルとを流体的に隔離させる第2の弁を更に有する、項目2記載のマイクロ流体装置。
(項目4)
前記サンプル流体がブラインド充填によって前記流体チャネルに導入される、項目1記載のマイクロ流体装置。
(項目5)
前記第2の弁が作動される間に前記サンプル流体がブラインド充填によって前記流体チャネルに導入される、項目3記載のマイクロ流体装置。
(項目6)
脱作動されると、前記第2の弁が前記流体チャネルから幾らかまたは全ての前記サンプル流体の除去を可能にする、項目3記載のマイクロ流体装置。
(項目7)
ある条件に対する反応のためのサンプル流体を分析する方法であって、
(i)マイクロ流体装置を提供するステップであって、前記マイクロ流体装置が、
流体チャネルを通じて互いと流体連通している第1の端および第2の端を有する流体チャネル、
前記チャネルと連通している入口であって、サンプル流体を導入する入口、および、
弁であって、作動されると前記第1のチャネルの端を前記第2のチャネルの端から流体的に分離させる弁を含み、
前記サンプル流体が前記流体チャネルに導入され、前記弁が作動されると、前記サンプル流体が別個のサンプル流体部分に分割される、ステップと、
(ii) 前記入口に前記サンプル流体を導入するステップであって、前記サンプル流体が前記第1のチャネルの端および前記第2のチャネルの端を充填する、ステップと、
(iii) 前記サンプル流体を前記第1のチャネルの端および前記第2のチャネルの端において別個の部分に分離するよう前記弁を作動するステップと、
(iv) 前記条件に前記サンプル流体を露出するステップと、
(v) 前記条件が前記反応を発生するか否かを決定するために前記サンプル流体を分析するステップと、を有する方法。
(項目8)
前記マイクロ流体装置が、前記チャネルと連通している出口であって、前記サンプル流体の幾らかまたは全てを除去する出口を更に有し、
前記方法が、前記露出ステップの後に前記流体チャネルから前記サンプル流体を除去するステップを更に有する、項目7記載の方法。
(項目9)
前記マイクロ流体装置が、第2の弁であって、作動されると前記出口と前記流体チャネルとを流体的に隔離させる第2の弁を更に有し、
前記サンプル流体を前記流体チャネルにブラインド充填するために、前記導入ステップの前に前記第2の弁を作動するステップを更に有する、項目8記載の方法。
(項目10)
前記サンプル流体がブラインド充填によって前記流体チャネルに導入される、項目7記載の方法。
(項目11)
前記サンプルが、増幅可能な核酸ターゲットを更に有し、前記条件が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件であり、そして前記反応が、結果としてPCR生成物の形成を生ずる、項目7記載の方法。
(項目12)
前記PCRがデジタルPCRである、項目7記載の方法。
(項目13)
前記反応が、二つの異なる色結果を発生する、項目11記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】垂直方向および水平方向の流れチャネルが交差するマトリクス設計を有する典型的な装置の概略図である。
【図1B】図1Aに示す装置の一部分の拡大図であり、その動作を示す図である。
【図1C】図1Aに示す装置の一部分の拡大図であり、その動作を示す図である。
【図1D】図1Aに示す装置の一部分の拡大図であり、その動作を示す図である。
【図1E】図1Aに示す装置の一部分の拡大図であり、その動作を示す図である。
【図1F】サンプルの蒸発を減少させるようガード・チャネルを利用する別の典型的なマトリクス設計装置の概略図である。
【図2】典型的なブラインド・チャネル装置の平面図である。
【図3A】別の典型的なブラインド・チャネル装置の平面図である。
【図3B】図3Aに示される一般的な設計のユニットに基づくより複雑なブラインド・チャネルの概略図である。
【図3C】図3Bに示す装置の一領域の拡大図であり、この特定の設計におけるガード流れチャネルの配列を示す図である。
【図4】ハイブリッド設計を利用する装置の平面図である。
【図5】サーモサイクリング反応を行うためのランプ・アップおよびランプ・ダウン時間を示すチャートである。
【図6】装置のコーナーにおける反応部位内の試薬の正しい配置を示すブラインド・チャネル・タイプの装置における反応部位内のスポッティングされた試薬の位置を示す図である。
【図7A】別のハイブリッド・タイプのマイクロ流体装置の断面図であり、実施例1−4を説明する実験を行うために使用される装置のタイプを示す図である。
【図7B】別のハイブリッド・タイプのマイクロ流体装置の概略図であり、実施例1−4を説明する実験を行うために使用される装置のタイプを示す図である。
【図8】平均FAM/PR1/コントロール比が六つの異なるβアクチンTaqMan反応に対してプロッティングされた棒グラフである。反応は、図7B(無地の棒)に示されるマイクロ流体装置(チップ)およびマクロTaqMan反応(縞模様の棒)においてサーモサイクリングされる。コントロールは、DNAを有さない第1および第4の棒の組である。エラーの棒は、比の標準偏差である。
【図9】典型的なピン・スポッティング処理を示す図である。試薬は、ソース(マイクロタイター板)から取られ、ロードされたピンを基板と接触させることで印刷される。洗浄ステップは、脱イオン水においてかき混ぜ、続いて、真空乾燥することを含む。
【図10】実施例2に説明する実験に基づいて実施例1(図7B参照)を説明するマイクロ流体装置(チップ)に対するFAM信号強度を示す棒グラフである。データは、基準レーンに対してFAM/PR1によってスケーリングされた形態(FAM信号/PR1信号)にある。エラーの棒は、レーンに沿った偏差である。「1.3X」および「1X」の表示は、それぞれの公称の値に関連して、スポッティングされたプライマーおよびプローブの濃度である。
【図11】マクロTaqMan(縞模様の棒)およびマイクロ流体装置におけるTaqMan反応(無地の棒)のための9−10ウェルに対する平均VIC/PF1/コントロール比を示す棒グラフである。二つのネガティブコントロール(コントロール)および100pg/nlゲノムDNAを含む二つのサンプルはプライマー/プローブの標準量の4xで上述したとおり反応成分とサーモサイクリングされる。エラーの棒は、平均比の標準偏差を表す。
【図12】マイクロ流体装置(図7B参照)の単一の流れチャネルから分岐する10個の1nlウェルそれぞれに対するFAM/PR1/コントロール比を示す棒グラフである。ゲノムDNAの量は0.25pg/nlであり、一つのウェル当たり一つのターゲットコピーを平均で生ずる。
【図13】図7Bに示されるマイクロ流体装置を用いるCYP2D6 SNPに対する平均VIC/PR1/コントロール比を示す棒グラフである。対立遺伝子1(Al−1)は、基準またはワイルド・タイプ対立遺伝子CYP2D6*1に対するVICプローブへのポジティブコントロールである。対立遺伝子2(Al−2)は、変形または突然変体対立遺伝子CYP2D6*3に対するFAMプローブへのポジティブコントロールである。コントロールはDNAテンプレートを有さない。ゲノムDNAは、100pg/nlまたは20pg/nlのいずれかで使用される。エラーの棒は、比の標準偏差である。
【図14】図7Bに示すマイクロ流体装置におけるCYP2D6 SNPに対する平均FAM/PR1/コントロール比を示す棒グラフである。サンプルは、図13および実施例3に関して説明したものと同じである。
【図15】実施例4における実験に使用されるマイクロ流体装置の概略図である。
【図16】図7Bに示すマイクロ流体装置におけるマクロPCRおよびPCR反応からのPCR生成物を含むポリアクリルアミド・ゲルを示す図である。左の結果は異なるDNA塩基対長さの大体の移行を示す。散らばっているバンドを含むレーンは、分子量マーカである。「マクロ」とラベル付けされるレーンは、異なる希釈度でのマクロ反応からのPCR生成物である。「イン−チップ」とラベル付けされるレーンは、チップで生成されるPCR生成物である。ゲル中の多数のバンドを含むレーンは、非特異的な背景信号である。
【図17a】図17a〜図17dは、弁がオフの状態および弁が作動されている状態のマイクロ流体装置を分割する二つの好ましい設計を示す図である。
【図17b】図17a〜図17dは、弁がオフの状態および弁が作動されている状態のマイクロ流体装置を分割する二つの好ましい設計を示す図である。
【図17c】図17a〜図17dは、弁がオフの状態および弁が作動されている状態のマイクロ流体装置を分割する二つの好ましい設計を示す図である。
【図17d】図17a〜図17dは、弁がオフの状態および弁が作動されている状態のマイクロ流体装置を分割する二つの好ましい設計を示す図である。
【図18a】サーモサイクリング反応が実施された後の分割されるマイクロ流体装置を示す画像である。コントロール赤信号の減算後の残留する信号を示す。
【図18b】サーモサイクリング反応が実施された後の分割されるマイクロ流体装置を示す画像である。二色画像を示す。
【図19】幾つかのポジティブのウェルに対して1つのウェル当たりのコピーの平均数を比較するグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
(I.定義)
定義されない限り、本願で使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する、当業者によって一般的に理解される意味を持つものとする。以下の参考文献は、本発明において使用される多数の用語の一般的な定義を提供する。SingletonらによるDICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY (2d ed.1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY (Walker ed.,1988);THE GLOSSARY OF GENETICS, 5TH ED., R.Riegerら(eds.),Springer Verlag(1991);およびHale&Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。本願で使用するように、以下の用語は、特定されない限り定められた意味を有する。
「流れチャネル」は、溶液が流れる流路を一般的に指す。
【0022】
「弁」といった用語は、示されない限り、流れチャネルおよび制御チャネルが交差し、作動力に応答して流れチャネルから反らされるあるいは引込められるエラストマー膜によって分離される構造を指す。
【0023】
「ブラインド・チャネル」または「行き止まりの端部のチャネル」は、入口があるが別個の出口を有さない流れチャネルを指す。従って、ブラインド・チャネルからの溶液の流入および流出は同じ位置で行われる。一つ以上のブラインド・チャネルを充填する処理は、しばしば「ブラインド充填」と単に呼ばれる。
【0024】
「隔離された反応部位」は、一般的に、装置に存在する他の反応部位と流体連通していない反応部位を指す。ブラインド・チャネルに関して使用されるとき、隔離された反応部位は、ブラインド・チャネルと関連付けられる弁によって閉鎖されるブラインド・チャネルの端にある領域である。
【0025】
「バイア」は、装置の外部ポートと一つ以上の流れチャネルとの間で流体アクセスを提供するようエラストマー装置に形成されるチャネルを指す。従って、バイアは、例えば、サンプル入力または出力として機能する。
【0026】
「エラストマー」あるいは「エラストマー性」は、当該分野において使用される一般的な意味を有する。従って、例えば、Allcockら(Contemporary Polymer Chemistry, 2nd Ed.)は、ガラス遷移温度と液化温度との間の温度で存在するポリマーとして一般的にエラストマーを説明する。エラストマー材料は、力に応答してバックボーン鎖の巻きを解くことを可能にするようポリマー鎖が簡単にねじり動きを受けるため、弾性特性を発揮し、バックボーン鎖は力がないときは前の形状をとるよう再び巻かれる。一般的に、エラストマーは、力が加えられると変形し、力が取り除かれるその元の形状に戻る。エラストマー材料によって発揮される弾性は、ヤング係数によって特徴付けられる。本願で開示するマイクロ流体装置において利用される弾性材料は、典型的には約1Pa−1TPaの間のヤング係数を有し、他の場合では約10Pa−100GPaを有し、更に別の場合では約20Pa−1GPaを有する。更に別の場合では約50Pa−10MPaを有し、またある場合では約100Pa−1MPaを有する。これらの範囲外のヤング係数を有するエラストマー材料は、特定の用途のニーズによって利用されてもよい。
【0027】
本願で開示する幾つかのマイクロ流体装置は、GE RTV615(処方物)、ビニル−シラン架橋(タイプ)シリコーン・エラストマー(ファミリー)のようなエラストマー・ポリマーから加工される。しかしながら、本マイクロ流体システムは、ポリマーのこの一つの処方物、タイプ、更には、ファミリーに制限されず、むしろ、ほぼ全てのエラストマー・ポリマーが好適である。ポリマーの化学的性質、前駆物質、合成方法、反応条件、および、潜在的な添加物の非常に多い多様性により、モノリシックなエラストマー・ミクロ弁およびポンプを形成するために使用され得る多数の可能なエラストマー・システムが存在する。材料の選択は、典型的には、実行される用途に必要な特定の材料特性(例えば、溶媒抵抗性、剛性、ガス透過率、および/または、温度安定性)に依存する。本願で開示するマイクロ流体装置の構成要素の製造において使用され得るエラストマー材料のタイプに関する追加的な詳細は、Ungerらによる(2000)Science 288:113−116、および、PCT公報WO02/43615並びにWO01/01025に記載され、全ての目的について本願で参照として全体的に組み込む。
【0028】
「核酸」「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」といった用語は、本願では、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含むがこれに限定されない任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含む。これらの用語間での長さにおける意図する区別はない。さらに、これらの用語は、分子の一次構造のみをいう。従って、ある実施形態では、これらの用語は三本鎖、二本鎖、および、一本鎖DNA、並びに、三本鎖、二本鎖、および、一本鎖RNAを含んでもよい。更に、ポリヌクレオチドのメチル化および/またはキャッピングによる修飾形態、および、ポリヌクレオチドの非修飾形態を含む。より特定的には、「核酸」「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」といった用語は、ポリデオキリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)、プリンまたはピリミジン基のN−またはC−グリコシドである任意の他のポリヌクレオチド、および、非ヌクレオチド系バックボーン(例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸(PNA))およびポリモルホリノ(NeugeneとしてAnti−Virals,Inc.,Corvallis,Oregonから市販されている)ポリマー)を含む他のポリマー、および、ポリマーがDNAおよびRNAで見つけられるように塩基の対合および塩基のスタッキングを可能にする構造においてヌクレオベースを含むとして、他の合成配列特異的核酸ポリマーを含む。
【0029】
「プローブ」は、一つ以上のタイプの化学結合を通じて、通常、相補塩基の対合、通常、水素結合形成を通じて相補配列のターゲット核酸に結合して二重構造を形成することができる核酸である。プローブは、「プローブ結合部位」に結合またはハイブリダイズする。プローブは、特に、一旦プローブがその相補ターゲットにハイブリダイズしたときにプローブの検出を容易にするよう検出可能な標識が付けられる。プローブに取り付けられる標識は、例えば、化学的または物理的手段によって検出され得る、当該分野において任意の公知の様々な異なる標識を含む。プローブに取り付けられ得る好適な標識は、放射性同位体、発蛍光団、発色団、マス・ラベル、電子密度粒子、磁気粒子、スピンラベル、化学ルミネンスを発する分子、電子化学的に活性的な分子、酵素、補因子、および、酵素基質を含むがこれらに制限されない。プローブは、サイズにおいて著しく変化する。幾つかのプローブは比較的短い。一般的に、プローブは少なくとも7乃至15ヌクレオチドの長さを有する。他のプローブは、少なくとも20、30、または、40ヌクレオチドの長さである。更に、他のプローブは幾らか長く、少なくとも50、60、70、80、90ヌクレオチドの長さである。更に、他のプローブはより長く、少なくとも100、150、200またはより長いヌクレオチドの長さである。プローブは、前述の範囲内の任意の特定の長さである。
【0030】
「プライマー」は、適当な緩衝液中で適当な温度において適当な条件下(即ち、四つの異なるヌクレオシド・トリホスフェートおよびDNAまたはRNAポリメラーゼあるいは逆転写酵素のような重合用物質が存在するとき)でのテンプレートにより指向されるDNA合成の開始点として作用することができる一本鎖ポリヌクレオチドである。プライマーの適当な長さは、プライマーの意図する使用に依存するが、典型的には、少なくとも7ヌクレオチド長さであり、より典型的には10乃至30ヌクレオチドの長さである。他のプライマーはより長く、30乃至50ヌクレオチド長である。短いプライマー分子は、一般的に、テンプレートと十分に安定したハイブリダイズ複合体を形成するためにより冷たい温度を必要とする。プライマーは、テンプレートの正確な配列を必ずしも反映させる必要はないが、テンプレートとハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。「プライマー部位」または「プライマー結合部位」といった用語は、プライマーがハイブリダイズするターゲットDNAのセグメントである。「プライマー対」は、増幅されるべきDNA配列の5’端の補体とハイブリダイズする5’「上流プライマー」、および、増幅されるべき配列の3’端とハイブリダイズする3’「下流プライマー」を含むプライマーの組を意味する。
【0031】
「完全に相補的」なプライマーは、プライマーの全長にわたって完全に相補的な配列を有し、ミスマッチがない。プライマーは、典型的には、ターゲット配列の部分(部分配列)に対して完全に相補的である。「ミスマッチ」は、プライマー中のヌクレオチドとそれと整列されるターゲット核酸におけるヌクレオチドが相補的でない部位である。プライマーに関連して使用される「実質的に相補的」といった用語は、プライマーがそのターゲット配列と完全には相補的でなく、その代わりに、プライマーが所望のプライマー結合部位においてそれぞれの鎖と選択的にハイブリダイズするに十分に相補的なだけである。
【0032】
「相補的」といった用語は、一つの核酸が別の核酸分子と同一である、または、選択的にハイブリダイズすることを意味する。ハイブリダイゼーションの選択性は、特異性の全体的な欠如よりもより選択的なハイブリダイゼーションが生ずるときに存在する。典型的には、選択的なハイブリダイゼーションは、少なくとも14−25ヌクレオチドにわたって少なくとも約55%の同一性、好ましくは、少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、更に好ましくは90%の同一性があるときに生ずる。好ましくは、一方の核酸は他方の核酸に特異的にハイブリダイズする。M.Kanehisa,Nucleic Acids Res.12:203(1984)を参照する。
【0033】
「標識」といった用語は、物理的、化学的、電磁気的、および、他の関連する分析技術によって検出できる分子または分子の特徴を指す。利用され得る検出可能な標識の例は、放射性同位体、発蛍光団、発色団、マス・ラベル、電子密度粒子、磁気粒子、スピンラベル、化学ルミネンスを発する分子、電子化学的に活性的な分子、酵素、補因子、および、核酸プローブおよび酵素基質にリンクされる酵素を含むがこれらに制限されない。「検出可能に標識」といった用語は、物質が標識と結合する、または、物質が別の標識と結合されることなく検出されることを可能にする幾らかの固有の特徴(例えば、サイズ、形状または色)を有することを意味する。
【0034】
「多型性マーカ」または「多型性部位」は、分岐が起こる遺伝子座である。好ましいマーカは、少なくとも二つの対立遺伝子を有し、それぞれ選択された集団の1%より大きい、より好ましくは10%または20%より大きい頻度で生ずる。多型性遺伝子座は、一つの塩基対ほどに小さくてもよい。多型性マーカは、制限フラグメント長さ多型、繰り返し配列数多型(VNTR’s)、超可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド繰り返し、トリヌクレオチド繰り返し、テトラヌクレオチド繰り返し、単純配列繰り返し、および、Aluのような挿入エレメントを含む。第1の識別された対立形質は、基準形態として任意には指定され、他の対立形質は代替的なまたは変形対立形質として指定される。選択された集団において最も頻繁に生ずる対立形質は、ワイルド・タイプとしてしばしば称される。二倍体生物は、対立形質に対して同型接合体または異型接合体でもよい。ダイアレル多型は二つの形質を有する。トリアリル多型は三つの形質を有する。
【0035】
「一塩基多型」(SNP)は、対立遺伝子配列間の変動の部位である単一ヌクレオチドによって占有される多型性部位で生ずる。部位は、通常、対立遺伝子の非常に保存された配列(例えば、集団の1/100または1/1000メンバ未満で変化する配列)によって先行される、および、後続される。一塩基多型は、通常、多型性部位で、あるヌクレオチドを別のものに置換することにより生ずる。遷移は、一つのプリンを別のプリンで、または、一つのピリミジンを別のピリミジンで置き換えることである。トランスバージョンは、プリンをピリミジンによって、または、ピリミジンをプリンによって置き換えることである。一塩基多型は、基準対立遺伝子に対するヌクレオチドの欠失、または、ヌクレオチドの挿入から生ずる。
【0036】
「試薬」は、反応で使用される任意の物質を広義には含む。試薬は、自身がモニタリングされ得る単一の物質(例えば、加熱されるときにモニタリングされる物質)、または、二つ以上の物質の混合物を含み得る。試薬は、生きている(例えば、細胞)または生きていない。核酸増幅反応に対する典型的な試薬は、緩衝剤、金属イオン、ポリメラーゼ、プライマー、テンプレート核酸、ヌクレオチド、標識、染料、ヌクレアーゼ等を含むがこれらに制限されない。酵素反応に対する試薬は、例えば、基質、補因子、結合酵素、緩衝剤、金属イオン、阻害物質、および、活性化物質を含む。細胞ベースの反応に対する試薬は、細胞、細胞特異的染料、および、細胞受容体に結合するリガンド(例えば、作用薬および拮抗薬)を含むが制限されない。
【0037】
「リガンド」は、アンチリガンドによるリガンドのいずれかの部分の認識により、リガンドに特異的にまたは非特異的に結合する別の分子(即ち、「アンチリガンド」)が存在する任意の分子である。
【0038】
(II.概要)
固有の流れチャネル構造を有する幾つかの異なるマイクロ流体装置(チップともしばしば呼ばれる)が本願では提供され、様々な高スループット分析を行うためにこのような装置を用いる方法も提供される。装置は、温度制御を必要とする分析、特に、ヒートサイクリングを伴う分析(例えば、核酸増幅反応)において使用するよう設計される。マイクロ流体装置は、従来のマイクロ流体装置よりも著しく小さいフット・プリントを装置に与え、他の機器と容易に一体化され自動分析を提供することを装置に可能にさせるある設計特徴を組み込む。
【0039】
幾つかのマイクロ流体装置は、本願で「ブラインド・チャネル」または「ブラインド充填」として典型的には呼ばれる設計を利用し、定義の部分で示されるように、溶液が一端でブラインド・チャネルを入り出るよう行き止まりの端部または隔離された端を有する(即ち、ブラインド・チャネルに対して別個の入口および出口がない)流れチャネルである、複数のブラインド・チャネルを有することで部分的に特徴付けられる。これらの装置は、隔離された反応部位を形成するためにブラインド・チャネルの領域を隔離するよう各ブラインド・チャネルに対して単一の弁だけを必要とする。このタイプの装置の製造中に、分析を行うための一つ以上の試薬は、反応部位で堆積され、それによって、結果として入力および出力の数において著しく減少される。追加的には、ブラインド・チャネルは、全ての反応部位が単一のまたは限定された数のサンプル入力から充填されるようにチャネルの相互接続されるネットワークに接続される。入力および出力における複雑性の減少、および、各反応部位を隔離するために単一の弁だけを使用することで、反応部位に利用可能な空間が増加される。従って、これら装置の特徴は、各装置が多数の反応部位(例えば、何万まで)を含んでもよく、高い反応部位密度(例えば、1000−4000反応部位/cm2以上)を実現し得ることを意味する。個別的に且つ集合的には、これらの特徴は従来のマイクロ流体装置と比べたこれら装置のサイズにおける著しい減少とも直接的に言い換えられる。
【0040】
本願で開示される他のマイクロ流体装置はマトリクス設計を利用する。一般的に、このタイプのマイクロ流体装置は、交差点における反応部位のアレイを画成するために複数の交差する水平方向および垂直方向の流れチャネルを利用する。従って、この設計の装置はアレイまたは反応部位を有し、しかしながら、本設計では多数のサンプルを収容するために多数のサンプル入力および対応する出力がある。切り替え可能な流れアレイ構造と呼ばれる弁システムは、水平方向または流れチャネルだけを溶液が選択的に流れることを可能にし、それにより、マトリクスにおける様々な流れチャネルの切り替え可能な隔離を可能にする。ブラインド・チャネル装置が限定された数のサンプルを用いて異なる条件下で多数の分析を行うよう設計される一方で、マトリクス装置は限定された数の条件下で多数のサンプルを分析するよう構成される。他の装置はこれら二つの一般的な設計のタイプのハイブリッドである。
【0041】
説明するマイクロ流体装置は、更に、エラストマー材料から作製された流れチャネル、制御チャネル、弁および/またはポンプのような様々な構成要素を利用することである程度特徴付けられる。幾つかの場合では、装置全体が本質的にエラストマー材料よりなる。その結果、このような装置は、シリコンベースの材料から形成される大部分の従来のマイクロ流体装置から形態および機能において著しく異なる。
【0042】
装置の設計は、幾つかの異なる加熱システムと組み合わせて利用することを可能にする。従って、装置は、温度制御を必要とする様々な分析を行うことに有用である。追加的には、加熱用途に用いられるマイクロ流体装置は、反応部位からのサンプルの蒸発を最小にするために更なる設計特徴を組み込む。このタイプの装置は、一般的に、装置が形成されるエラストマー材料内で水蒸気圧力を増加させるために水が流れるエラストマー装置内に形成される幾つかのガード・チャネルを含み、それにより、反応部位からのサンプルの蒸発が減少される。
【0043】
装置のあるアレイフォーマットは、装置が高いスループットを実現することができることを意味する。集合的に、高いスループットおよび温度制御能力により、多数の核酸増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応−PCR)を実施することに装置を有用にする。このような反応は、装置の利用、特に、温度制御を必要とする任意の反応における使用を示すものとして本願で詳細に説明にされる。しかしながら、装置はこれら特定の用途に制限されないことは理解されるであろう。装置は、幅広い他のタイプの分析または反応において利用され得る。その例は、プロテイン−リガンド相互作用および細胞と様々な化合物間の相互作用の分析を含む。更なる例は、後に挙げられる。
【0044】
(III.マイクロ流体装置の一般的構造)
(A.ポンプおよび弁)
本願に開示するマイクロ流体装置は、エラストマー材料から少なくとも部分的に典型的には構成され、単一のまたは多層軟リソグラフィ(MSL)技法および/または犠牲層カブセル化方法(例えば、それぞれ全ての目的のために本願で参照として組み込むUngerらによる(2000)Science 288:113−116、および、PCT公報WO01/01025を参照)によって構成される。このような方法を用いて、マイクロ流体装置は、エラストマー膜またはセグメントによって流れチャネルから分離される一つ以上の制御チャネルを用いて少なくとも部分的に装置の流れチャネルを流れる溶液が制御されるよう設計される。この膜またはセグメントは、制御チャネルに作動力を加えることで制御チャネルが関連付けられる流れチャネルに対してそらされるまたは引込められる。膜が流れチャネルに対してそらされるまたは引込められる度合いを制御することで、溶液の流れは遅くされるか流れチャネルを通じて完全に遮られる。このタイプの制御および流れチャネルの組み合わせを用いることで、Ungerらによる(2000)Science 288:113−116、および、PCT公報WO/02/43615およびWO/01/01025により詳細に説明するよう溶液の流れを調節する様々な異なるタイプの弁およびポンプを準備することができる。
【0045】
本願で提供される装置は、試薬が反応することができる反応部位を選択的に隔離するためにこのようなポンプおよび弁を組み込むことができる。反応部位は、装置内の多数の異なる部位のどこに位置されてもよい。例えば、幾つかのマトリクス−タイプの装置では、反応部位は一組の流れチャネルの交点に位置する。ブラインド・チャネル装置では、反応部位はブラインド・チャネルの端に位置する。
【0046】
装置が温度制御反応(例えば、サーモサイクリング反応)において利用されるべき場合、より詳細に以下に説明するように、エラストマー装置は支持部(例えば、ガラス製スライド)に典型的には固定される。結果として得られる構造は、様々な反応部位での温度を制御するために例えば、温度制御板に配置される。サーモサイクリング反応の場合、装置は、多数のサーモサイクリング板のどこに配置されてもよい。
【0047】
装置が比較的光透過性のエラストマー材料より形成されるため、反応はマイクロ流体装置の基本的に全ての部位で様々な異なる検出システムを用いて容易にモニタリングされ得る。しかしながら、より典型的には、検出は反応部位自体(例えば、流れチャネルの交点または流れチャネルのブラインド端を含む領域内)で行われる。装置が略透明な材料な製造されることで、従来のシリコンベースのマイクロ流体装置とは使用可能でないある検出システムが現在の装置と利用され得る。検出は、装置に組み込まれるまたは装置から分離されているが検出されるべき装置の領域と整列される検出器を用いて実現される。
【0048】
(B.ガード・チャネル)
本願で提供されるエラストマー・マイクロ流体装置からサンプルおよび種の蒸発を減少させるために、複数のガード・チャネルが装置に形成される。ガード・チャネルは、流れチャネルおよび/または反応部位の上に重なるエラストマーの層に形成される点で制御チャネルと典型的には類似する。従って、制御チャネルと同様に、ガード・チャネルはエラストマー材料の膜またはセグメントによって、下にある流れチャネルおよび/または反応部位から分離されている。しかしながら、制御チャネルとは異なって、ガード・チャネルが断面積において相当小さくなる。一般的に、同じ適用された圧力下では、より小さい面積を有する膜はより大きい面積を有する膜よりもあまり反れない。ガード・チャネルは、ガード・チャネルに溶液(典型的には水)が流れることを可能にするよう加圧されるよう設計される。ガード・チャネルから生ずる水蒸気は、流れチャネルまたは反応部位に隣接するエラストマーの孔に拡散され、流れチャネルまたは反応部位に隣接する水蒸気濃度を増加させそこからの溶液の蒸発を減少させる。
【0049】
一般的に、ガード・チャネルは、加圧されるとガード・チャネルを下にある流れチャネルまたは反応部位から分離させる膜がガード・チャネルが上に重なる流れチャネルまたは反応部位への、そこからの、または、そこを通る溶液の流れを実質的に制限しないよう著しく小さい。この文脈で使用されるとき、「実質的に制限」といった用語または他の同様の用語は、ガード・チャネルが中を通る溶液の流れを実現するために加圧されないときに同じ条件下で流れチャネルまたは反応部位への、そこからの、または、そこを通る溶液の流れと比べて、流れチャネルまたは反応部位への、そこからの、または、そこを通る溶液の流れが40%より大きく、典型的には30%未満、通常は20%未満、更に、ある場合では10%未満に減少されないことを意味する。通常、ガード・チャネルが100μm2乃至50,000μm2の断面積、またはこれらの間の任意の整数あるいは非整数の断面積を有することを意味する。従って、例えば、ある場合では、断面積は50,000μm2未満であり、ある場合では10,000μm2未満であり、ある場合では10,00μm2であり、更に、ある場合では100μm2である。ガード・チャネルは、円形、楕円形、正方形、長方形、六角形、および、八面体形を含むがこれらに制限されない任意の様々な形状を含む。
【0050】
ガード・チャネルは、サーモサイクリング反応を行うために必要な時間および条件下で装置からのサンプルおよび試薬の蒸発を、50%未満、ある場合では、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または、1%未満に減少するよう設計される。例えば、40サイクルを伴う典型的なPCR反応は、120分内に行われる。ガード・チャネルシステムは、およそこの時間フレーム中に前述の組の制限値に蒸発を減少させるよう設計される。このレベルの蒸発減少を実現するために、ガード・チャネルは少なくとも10ライン/cm2乃至1000ライン/cm2の密度、または、これらの間の任意の整数密度レベルで典型的には存在する。より特定的には、ガード・チャネルは、通常少なくとも25ライン/cm2であり、他の場合では少なくとも50ライン/cm2であり、更に他の場合では少なくとも100ライン/cm2であり、ある場合では少なくとも500ライン/cm2である。このレベルの蒸発減少を実現するために、ガード・チャネルは一つのラインの外側エッジから隣接するラインの最も近い外側エッジまで測定される場合、1mm乃至1μm間のスペーシングで、または、これらの間の任意の整数密度レベルで、典型的には存在する。より具体的には、ガード・チャネルは、500μm乃至5μmで、他の場合では100μm乃至10μm、更に、ある場合では、75μm乃至40μmで一般的に離間される。従って、スペーシングは、典型的には少なくとも1μmであるが、1mm未満であり、他の場合では、500μmであり、他の場合では400μmmであり、更に、ある場合では300μm未満であり、他の場合では200μm未満であり、他の場合では100μm、50μm、または、25μmである。
【0051】
ガード・チャネルは、チャネルの別個のネットワークとして形成されてもよく、または、制御チャネルに分岐するより小さいチャネルでもよい。ガード・チャネルは、装置上、または、装置の特定の領域または複数の領域だけに延在してもよい。典型的には、ガード・チャネルは、蒸発が最も懸念される重要な部位である流れチャネルおよび反応部位に隣接して且つ上に配置される。以下により詳細に説明するように、あるマトリクス装置上のガード・チャネルの典型的な部位は、図1Cに示され、あるブラインド・チャネル装置上のものは図3Bおよび3Cに示される。
【0052】
ガード・チャネルを流れる溶液は水の蒸発を減少させる任意の物質を含む。物質は、流れラインおよび/または反応部位に隣接する水蒸気濃度を増加させるもの、水蒸気濃度を増加させないが流れライン/反応部位からの水の蒸発を遮断するもの(遮断物質)でもよい。従って、一つの選択肢は本質的に任意の水溶液を利用することであり、この場合、適切な溶液は水および緩衝溶液(例えば、TaqMan緩衝液溶液およびリン酸緩衝生理食塩水)を含むがこれに制限されない。適切な遮断物質は、鉱油を含むがこれに制限されない。
【0053】
ガード・チャネルは、上述のMSL技術および/または犠牲層カプセル化方法を用いてエラストマーに典型的には形成される。
【0054】
以下に、温度制御を含む分析(例えば、核酸増幅反応)を含む様々な分析を行うために利用される幾つかの特定の構造をより詳細に説明する。しかしながら、これらの構造が模範例であり、これらシステムの変更態様が当業者には明らかとなることが理解されるであろう。
【0055】
(IV.マトリクス設計)
(A.一般)
マトリクス設計を利用する装置は、接合部のアレイを形成するよう交差する複数の垂直方向および水平方向流れチャネルを一般的に有する。異なるサンプルおよび試薬(または試薬の組)が各流れチャネルに導入され得るため、高いスループットのフォーマットで比較的多数の反応条件に対して多数のサンプルが試験され得る。従って、例えば、異なるサンプルがMの異なる垂直方向の流れチャネルそれぞれに導入され、異なる試薬(または試薬の組)がNの水平方向の流れチャネルそれぞれに導入される場合、M×Nの異なる反応が同時に行われる。典型的には、マトリクス装置は、垂直方向および水平方向の流れチャネルの切り替え可能な隔離を可能にする弁を含む。言い換えれば、弁は、垂直方向の流れチャネルだけを通る、または、水平方向の流れチャネルだけを通る選択的な流れを可能にするよう位置決めされる。このタイプの装置がサンプルのタイプおよび数、並びに、試薬の数およびタイプの選択に対して柔軟性を可能にするため、これらの装置は比較的多数の反応条件に対して多数のサンプルをスクリーニングすることを望む際に分析を行うことに適している。マトリクス装置は、サンプルおよび試薬の蒸発を防止することを補助するためにガード・チャネルを任意には組み込む。
【0056】
(B.典型的な設計および使用)
図1Aは、一つの典型的なマトリクス装置の例示を提供する。同装置100は、49の異なる交点または反応部位106のアレイを形成するよう交差する7つの垂直方向の流れチャネル102および7の水平方向の流れチャネル104を有する。この特定の装置は、7つの異なる試薬または試薬の組と7つのサンプルが反応することを可能にする。垂直方向の溶液の流れを調整する列弁110は、単一の入口114において全て作動され得る制御チャネル118によって制御され得る。
【0057】
同様にして、行弁108は、水平方向の溶液の流れを調節し、これらは単一の制御入口112によって作動される制御チャネル116によって制御される。図1Aに示すように、行弁108を調整する制御チャネル116は、部位によって幅が変化する。制御チャネル116が垂直方向の流れチャネル102を越えるとき、制御チャネル116は十分に狭く、作動されると実質的に溶液の流れを減少するよう垂直方向の流れチャネル102に反らされない。しかしながら、制御チャネル116の幅は、水平方向の流れチャネル104の一つの上に重なると増加され、これにより、水平方向の流れチャネル104を通る溶液の流れを遮るよう制御チャネルの膜が十分に大きくなる。
【0058】
動作において、試薬R1−R7は、それぞれの水平方向の流れチャネル104に導入され、サンプルS1−S7はそれぞれの垂直方向の流れチャネル102に注入される。各水平方向の流れチャネル104における試薬は、この特定の装置ではウェルまたはチャンバの形状にある交点106において、各垂直方向の流れチャネル102におけるサンプルと混合する。従って、例えば、核酸増幅反応の特定の場合、増幅反応に必要な試薬は各水平方向の流れチャネル104に導入される。異なる核酸テンプレートが垂直方向の流れチャネル102に導入される。ある分析では、各水平方向の流れチャネル104に導入される試薬混合物の一部として導入されるプライマーは流れチャネル間で異なる場合がある。これにより、各核酸テンプレートが幾つかの異なるプライマーと反応することが可能となる。
【0059】
図1B−1Eは、分析中に装置がどのように動作するかをより具体的に示すために図1Aに示される装置における隣接する反応部位の拡大平面図を示す。明瞭化のため、交点106は反応ウェルの形態で示されず、制御チャネル116、118が省略され、列および行弁110、108だけが示される(長方形のボックス)。図1Bに示すように、分析は列弁110を閉じ、行弁108を開け、垂直方向の流れチャネル102の流れを遮る一方で溶液が水平方向の流れチャネル104を流れることを可能にすることで開始される。試薬R1は、水平方向の流れチャネル104に導入され、全ての反応部位106が充填されるよう、水平方向の流れチャネル104の長さにわたって完全に流される。水平方向のチャネル104を通る溶液の流れは、外部ポンプによって実現されるが、より典型的には、例えば、Ungerらによる(2000)Science 288:113−116、および、PCT公報WO01/01025に詳細に開示されるようエラストマー装置自体に蠕動ポンプを組み込むことで実現される。
【0060】
一旦R1が導入されると、行弁108は閉じられ列弁102は開けられる(図1Cを参照)。これにより、サンプルS1およびS2が垂直方向の流れチャネル102に導入され、それぞれの流れチャネルを流れることが可能となる。垂直方向の流れチャネル102をサンプルが流れると、反応部位106からR1を放出して反応部位106でサンプルを残留させる。次に、図1Dに示すように、行弁108が開けられ、S1およびS2を拡散させてR1と混合させる。従って、サンプルおよび反応物質(R1S1およびR1S2)の混合物は、各交点または反応部位106の領域で得られる。S1およびS2がR1と拡散するために十分な時間を可能にした後、全ての行および列弁108、110は閉じられ、それぞれの反応部位106の領域内でS1およびS2を隔離し、S1およびS2の混合を防止する(図1Eを参照)。混合物は反応できるようにされ、反応は交点106または交点106を含む十字形状の領域をモニタリングすることで検出される。加熱(例えば、増幅反応中にサーモサイクル)を必要とする分析に対して、装置はヒータの上に配置され、サンプルが隔離される間加熱される。
【0061】
図1Aに示される装置の修正版は、図1Fに示される。一般的な構造は、図1Aに示すものと多数の類似点を有し、両方の図における共通の要素は同じ参照番号を共有する。図1Fに示される装置150は、一対の水平方向の流れチャネル104が共通の入口124に接合される点で異なる。これにより、本質的に、試薬の二重の組が、入口124への単一の注入だけで二つの隣接する流れチャネルに導入されることを可能にする。共通の入口の使用は、垂直方向の流れチャネル102に対して更に拡張される。この特定の例では、各サンプルはサンプル入口120への単一の注入で五つの垂直方向の流れチャネル102に導入される。従って、この特定の装置では、サンプルと種の各特定の組み合わせに対して本質的に10の複製反応がある。当然のことながら、複製反応の数は、共通の入口120、124に接合される垂直方向および/または水平方向の流れチャネル102、104の数を変更することで所望の通りに変えられる。
【0062】
図1Fに示す装置は、出口132への溶液の流れを支配するために使用される制御チャネル130を調整する別個の制御チャネル入口128、および、出口136への溶液の流れを調整する制御チャネル134を調整する別の制御チャネル入口132を更に含む。更に装置150はガード・チャネル138を内蔵する。この特定の設計では、ガード・チャネル138は制御チャネル116の一部として形成される。以下に示すように、ガード・チャネル138は行弁108よりも小さく、その結果、ガード・チャネル138の膜は溶液の流れが中断されるよう下にある水平方向の流れチャネル104に反らされない。
【0063】
最後に、図1Fに示す設計は、反応が水平方向および垂直方向の流れラインの交点におけるウェルではなく交点自体で起こる点で異なる。
【0064】
(V.ブラインド・チャネル設計)
(A.概要)
ブラインド・チャネル設計を利用する装置はある特徴を有する。第1に、装置は、一つ以上のブラインド・チャネルが分岐する一つ以上の流れチャネルを含む。上述した通り、このようなチャネルの端領域は反応部位として機能する。上に重なる流れチャネルによって形成される弁は、ブラインド・チャネルの端で反応部位を隔離するよう作動され得る。弁は、反応部位を切り替え可能に隔離する機構を提供する。
【0065】
第2に、ブラインド・チャネルと連通している流れチャネル・ネットワークは、全てのまたは殆どの反応部位が単一のまたは限定された数の入口(例えば、5未満または10未満)により充填されるように構成される。ブラインド流れチャネルを充填する能力は、装置がエラストマー材料から形成されるため可能となる。エラストマー材料は、流れチャネルおよびブラインド・チャンエル内の空気が溶液がチャネルに導入されるとこれらの孔を通って逃げられるよう十分に多孔性である。他のマイクロ流体装置において利用される材料の多孔性の欠如は、溶液が注入されるとブラインド・チャネルにおける空気が逃げようがないのでブラインド・チャネル設計の使用を除外する。
【0066】
第3の特徴は、一つ以上の試薬が製造中(加工処理に関する更なる詳細を以下に示す)に、エラストマーのベース層上の反応部位内に非共有結合で堆積されることである。試薬は、サンプルが反応部位に導入されるときに試薬が溶解されるよう設計されるため、非共有結合で取り付けられる。分析の数を最大化するために、異なる反応物質または反応物質の組は、異なる反応部位それぞれに堆積される。
【0067】
反応部位がアレイの形態に配置されるように、あるブラインド・チャネル装置が設計される。
【0068】
従って、例えば、核酸増幅反応を行うために設計されるブラインド・チャネル装置では、伸長反応を行うために必要な一つ以上の試薬は、装置の製造中に反応部位それぞれに堆積される。このような試薬は、例えば、次の全てのまたは幾つかを含む:プライマー、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、補因子、金属イオン、緩衝剤、挿入染料等。高いスループットの分析を最大化するために、DNAの異なる領域を増幅するよう選択される異なるプライマーが各反応部位に堆積される。その結果、核酸テンプレートは入口を介して反応部位に導入されると、多数の伸長反応がテンプレートの異なるセグメントで実施される。増幅反応に必要なサーモサイクリングは、装置をサーモサイクリング装置上に配置し、様々な要求される温度間で装置をサイクリングすることで実現され得る。
【0069】
試薬は様々な方法で固定される。例えば、ある場合では、一つ以上の試薬は反応部位で非共有結合で堆積され、他の場合では一つ以上試薬は反応部位で基板に共有結合で取り付けられる。共有結合で取り付けられる場合、試薬はリンカーを介して基板にリンクされる。様々なリンカー・タイプ、例えば、光化学/光に不安定なリンカー、熱に不安定なリンカー、および、酵素的に切断され得るリンカーが利用され得る。幾つかのリンカーは、二官能性であり(即ち、リンカーはリンカーが取り付けられるエレメントに位置する基と反応する官能基を各端に含む)、各端にある官能基は同じでも異なってもよい。幾つかの検定で使用され得る適切なリンカーの例は、直鎖または分鎖カーボン・リンカー、ヘテロ環リンカー、および、ペプチド・リンカーを含む。様々なタイプのリンカーがRockford,IllinoisにあるPierce Chemical Companyから市販されており、EPA188,256;米国特許第4,671,958号、第4,659,839号、第4,414,148号、第4,669,784号、第4,680,338号、第4,569,789号、および、第4,589,071号、並びに、Eggenweiler,H.M.によるPharmaceutical Agent Discovery Today 1998, 3, 552に開示される。NVOC(6ニトロベラトリルオキシカルボニル)リンカー、および、他のNVOC関連リンカーは、適切な光化学リンカー(例えば、WO90/15070およびWO92/10092参照)の例である。プロテアーゼ切断部位を有するペプチドは、例えば、米国特許第5,382,513号で説明される。
【0070】
(B.典型的な設計および使用)
図2は、ブラインド・チャネル設計を利用する一つの典型的な装置の簡略化された平面図である。装置200は、エラストマー基板202に形成される流れチャネル204、および、そこから分岐される分岐流れチャネル206の組を含む。各分岐流れチャネル206は、反応部位208で終端し、それにより、反応部位のアレイを形成する。膜212によって分岐流れチャネル206から分離される制御チャネル210が分岐流れチャネル206の上に重なる。制御チャネル210の作動は、膜212を分岐流れチャネル206に反らさせ(即ち、弁として機能させ)、反応部位208それぞれを他の反応部位から隔離させる。
【0071】
このような装置の動作は、試験サンプルを流れチャネル204に注入し、溶液を各分岐チャネル206にその後流すことを伴う。一旦サンプルが各分岐チャネル206を充填すると、制御チャネル210は弁/膜212を作動して分岐チャネル206に反らさせるよう作動され、それにより、各反応部位208を封鎖する。サンプルが反応部位208に流れ止まると、各反応部位208に前にスポッティングされた試薬を溶解する。一旦溶解されると、試薬はサンプルと反応する。弁212は、各反応部位208での溶解された試薬が拡散によって混合することを防止する。サンプルと試薬との反応が、典型的には反応部位208内で検出される。反応は、以下の温度制御セクションで説明するように任意には加熱される。
【0072】
図3Aは、より複雑なブラインド流れチャネル設計の例を示す。この特定の設計300では、水平方向の流れチャネル304の組それぞれはそれぞれの端で二つの垂直方向の流れチャネル302と接続される。複数の分岐流れチャネル306は、水平方向の流れチャネル304それぞれから延在される。この特定の設計における分岐流れチャネル304は、全ての所与の水平方向の流れチャネル304に取り付けられる分岐チャネル306が直ぐに隣の水平方向の流れチャネル304に接合される二つの分岐チャネル306間に位置決めされる、または、直ぐ隣の流れチャネル304に接合される分岐流れチャネル306と一つの垂直方向の流れチャネル302との間に位置決めされるように互い違いに配置される。図3Aに示す設計のように、各分岐流れチャネル306は、反応部位308で終端する。図3Aに示す設計と一貫して、制御チャネル310が分岐チャネルそれぞれの上に重なり、膜312によって下にある分岐チャネルから分離される。制御チャネルは、ポート316で作動される。垂直方向および水平方向の流れチャネル302、304は、入口314へのサンプルの注入が溶液を水平方向および垂直方向の流れチャネル・ネットワーク全体に通し、分岐流れチャネル306を介して反応部位308それぞれに最終的に流すよう相互接続される。
【0073】
従って、動作において、サンプルは、各反応部位それぞれに溶液を導入するよう入口に注入される。一旦反応部位が充填されると、弁/膜がポートにおいて制御チャネルを加圧することで反応部位内の溶液をトラップするよう作動される。反応部位に前に堆積された試薬は、反応部位内で再懸濁され、それにより、反応部位での堆積された試薬とサンプルとの反応を可能にする。反応部位内での反応は、検出器によってモニタリングされる。ここで、反応は、以下の温度制御セクションにおいて述べる方法に従って任意には制御可能に加熱され得る。
【0074】
図3Aに示す一般的な設計のより複雑なバージョンは図3Bに示される。図3Bに示される装置では、図3Aに示される水平方向および分岐流れチャネル302のユニット組織が数回繰り返される。図3Bに示される装置は、加熱(例えば、サーモサイクリング)を伴う適用法に利用されるよう装置にガード・チャネル320を含む更なる例を示す。流れチャネル304および分岐チャネル306に対するガード・チャネル320の典型的な配列は、図3Cに示される拡大図に示される。ガード・チャネル320は、分岐流れチャネル306および反応部位308の上に重なる。上述したとおり、水は、装置における水の局部的濃度を増加させるために装置300の加熱中にガード・チャネル320を通って流れ、それにより、流れチャネル306および反応部位308における溶液からの水の蒸発を減少させる。
【0075】
本セクションの始めに説明したブラインド・チャネル装置の特徴は、装置のフット・プリントを最小化し、装置に多数の反応部位を形成し、高い密度を得ることを可能にする。例えば、2500の反応部位を有するこのタイプの装置は、標準的な顕微鏡用スライド(25mm×75mm)上に嵌るよう容易に製造される。前述の特徴により、ブラインド・チャネル設計を利用する装置で非常に高い密度の反応部位が得られることを可能にする。例えば、少なくとも50、60、70、80、90、または、100の反応部位/cm2の密度、または、その間の任意の整数密度が容易に得られる。しかしながら、ある装置は、例えば、100乃至4000反応部位/cm2の範囲にあるより高い密度、またはその間の任意の整数密度を有する。例えば、幾つかの装置は、少なくとも100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、または、1000部位/cm2の密度を有する。少なくとも2000、3000、または、4000部位/cm2といった非常に高い密度を有する装置も得ることが可能である。このような高い密度は、装置上の非常に多数の反応部位と直接言い換えられる。ブラインド・チャネル・アーキテクチャを利用する装置は、少なくとも10−100反応部位または間の任意の整数の部位を典型的には有する。より典型的には、装置は、少なくとも100−1000反応部位、または、その間の任意の整数の部位を有する。より高い密度の装置は、より多い反応部位、例えば、少なくとも1000−100000反応部位、または、その間の任意の整数の部位を有する。従って、ある装置は装置の全体的なサイズに依存して少なくとも100;500;1000;2000;3000;4000;5000;6000;7000;8000;9000;10000;20000;30000;40000;50000、または、100000の反応部位を有する。
【0076】
得られる多数の反応部位および密度は、非常に小さいウェルまたは空洞を加工する能力の結果である。例えば、空洞またはウェルは、典型的には50nL未満、他の場合では、40nL、30nL、20nL、または、10nL未満、更に、他の場合では5nLまたは1nL未満の容積を有する。特定の例として、ある装置は、300ミクロンの長さ、300ミクロンの幅、および、10ミクロンの深さのウェルを有する。
【0077】
本願で提供されるブラインド・チャネル装置は、例えば、行き止まりの端部を有するチャネルの充填、液体プライミング、加圧されたガス抜きプライミングに対する戦略、並びに、マイクロ流体チャネルの充填中に気体を押し出す様々な戦略を含む、PCT出願PCT/US01/44549(WO02/43615として公開)およびPCT/US02/10875(WO02/082047として公開)に開示されるある設計の特徴および方法を利用する。両方のPCT公報は、全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込む。
【0078】
(VI.ハイブリッド設計)
他の装置は、マトリクスおよびブラインド充填設計のハイブリッドである。このタイプの装置の設計は、各水平方向の流れチャネルが独自のサンプル入口ポートに接続され、水平方向の流れチャネルが垂直方向の流れチャネルを介して相互接続されない以外では、図3Aに示すブラインド・チャネル装置と同じである。その結果、任意の所与の水平方向の流れチャネルに導入されるサンプルは、水平方向の流れチャネルおよびそこに取り付けられる反応部位にだけ充填される。一方で、図3Aに示すブラインド流れチャネル装置では、サンプルは、垂直方向の流れチャネル302を介して水平方向の流れチャネル304間を流れることができる。
【0079】
この一般的な装置の例は図4に示される。装置400は、複数の水平方向の流れチャネル404を有し、それぞれそこから延在する複数の分岐流れチャネル406および独自のサンプル入口414を有する。制御チャネル410は各分岐流れチャネル406の上に重なり、膜(弁)412は制御チャネル410を下にある分岐流れチャネル406から分離する。ブラインド流れチャネル設計に関してと同様に、入口416における制御チャネルの作動は、分岐流れチャネル406への膜412の反れおよび反応部位408の隔離を生じさせる。この設計のバリエーションにおいて、各水平方向の流れチャネル404は、各端に入口414を含み、それによりサンプルが両端から導入されることが可能となる。
【0080】
ある場合では、試薬は、装置の製造中に反応部位に堆積される。これは、マトリクス装置で要求される試薬の時間のかかる添加を必要とすることなく短期間で多数の反応条件下で多数のサンプルが試験されることを可能にする。或いは、反応混合物は、チップへの注入の前に準備され得る。一旦混合物が注入されると、分析されるか更に処理(例えば、加熱)される。
【0081】
異なるサンプルを水平方向の流れチャネルそれぞれに注入することで、多数のサンプルが迅速に分析される。試薬が反応部位に前もって堆積されていると仮定して、全ての所与の水平方向の流れチャネルと関連付けられる各反応部位での同じ試薬の存在は各サンプルと幾つかの複製反応を行う簡単な方法を提供する。その代わりに、反応部位における試薬が任意の所与の流れチャネルに対して異なる場合、各サンプルは様々な異なる反応条件に基本的に同時に曝される。
【0082】
従って、本願で提供される装置は、様々な異なるタイプの調査に合わせられる。調査が、ユーザ制御条件下で比較的多数の異なるサンプル(例えば、100のユーザ選択された試薬に対して100のサンプル)をスクリーニングすることを伴う場合、マトリクス装置が有用な解決策を提供する。しかしながら、調査が幅広い種類の反応条件下で一つのまたは限定された数のサンプル(例えば、10000反応条件に対して一つのサンプル)を分析することを伴う場合、ブラインド・チャネル設計が有用である。最後に、試薬を注入することなく定められた反応条件に対して比較的多数のサンプル(例えば、100の前もって定められた試薬に対して100のサンプル)を検査することを望む場合、ハイブリッド装置が有用である。
【0083】
(VII.温度制御)
(A.装置および構成要素)
様々な精巧さの幾つかの異なる選択肢は、マイクロ流体装置の選択された領域内または装置全体で温度を制御することに利用可能である。従って、本願で使用される場合、温度コントローラといった用語は、マイクロ流体装置全体またはマイクロ流体装置の一部分内(例えば、特定の温度領域またはブラインド・チャネル型マイクロ流体装置のマトリクスにおける一つ以上の接合部)で温度を調整することができる装置または素子を広義には意味する。
【0084】
一般的に、装置は、装置をサーモサイクルするためにサーモサイクリング板に配置される。様々な板が、例えば、ThermoHybaid Px2(Franklin, MA), MJ Research PTC−200(South San Francisco, CA), Eppendorf Part#E5331(Westbury, NY), Techne Part #205330(Princeton, NJ)を含む商業用ソースから容易に入手可能である。
【0085】
サーモサイクリング・ステップの正確性を確実にするために、ある装置は装置の様々な領域で温度を検出するセンサを組み込むことが有用である。温度を検出する一つの構造は熱電対である。このような熱電対は、下にある基板材料にパターン化される薄膜ワイヤ、または、微細加工されたエラストマー材料自体に直接的に組み込まれるワイヤとして作製され得る。
【0086】
温度は、電気抵抗の変化を通じて感知されてもよい。例えば、従来の技法を用いて下にある半導体基板上に加工されるサーミスタの抵抗の変化は、所与の温度変化に校正される。あるいは、サーミスタは、微細加工されたエラストマー材料に直接的に挿入され得る。抵抗による温度の検出に対する別のアプローチは、本願で参照として全体的に組み込むWuらによる“MEMS Flow Sensors for Nano−fluidic Applications”,Sensors and Actuators A 89 152−158 (2001)に開示される。同文書は、温度の制御および感知の両方に対してドーピングされたポリシリコン構造の使用を説明する。ポリシリコンおよび他の半導体材料に関して、抵抗の温度係数は、ドーパントのアイデンティティおよび量によって正確に制御され、それにより、所与の適用法に対するセンサの性能を最適化する。
【0087】
サーモクロマチック材料は、増幅装置の領域で温度を検出するために利用可能な別のタイプの構造である。具体的には、ある材料は、異なる温度を通る際に劇的に且つ再現可能に変色する。このような材料は、異なる温度を通る際に溶液に添加されてもよい。サーモクロマチック材料は、下にある基板に形成されるかエラストマー材料内に組み込まれてもよい。或いは、サーモクロマチック材料は、粒子の形態でサンプル溶液に添加され得る。
【0088】
温度を検出する別のアプローチは、赤外線カメラの使用である。赤外線カメラは、顕微鏡と共に、増幅構造全体の温度プロファイルを決定するために利用され得る。エラストマー材料の放射線に対する透過性は、この分析を容易化する。
【0089】
温度検出に対する別のアプローチは、焦電センサの使用である。具体的には、幾つかの結晶材料、特に、圧電挙動を発揮する材料は、焦電効果を発揮する。この効果は、材料の結晶格子の極性、従って、材料上の電圧が温度に非常に依存する現象を説明する。このような材料は、基板またはエラストマーに組み込まれ、温度を検出するために使用され得る。
【0090】
キャパシタンスおよびインダクタンスのような他の電気的現象は、本発明の実施形態による温度を検出するために利用され得る。
【0091】
(B.正確なサーモサイクリングの検証)
以下の加工セクションでより詳細に説明するように、ブラインド・チャネル装置は、試薬が配置されるベース層を有する。流れチャネルおよび制御チャネルを含む二層を有する構造は、流れチャネルが堆積された試薬と整列されるようベース層の上に重なる。ベース層の反対側は、基板(例えば、ガラス)上に配置される。通常、反応が起こる反応部位は、基板/ガラス境界面より約100−150ミクロン上にある。装置で使用されるエラストマーおよびガラスに対して熱拡散係数に対する既知の式および適当な値を用いることで、コントローラが維持しようとする温度に反応部位内の温度が到達するために必要な時間を計算することができる。表1に示す計算された値は、反応部位が約100−150ミクロン(即ち、本願で説明する装置に対する典型的な距離)である装置で利用されるよりも相当厚いエラストマーおよびガラス層を用いても温度が迅速に到達されることを示す。
【0092】
(表1:示される期間におけるPDMSおよびガラス層中の計算された熱拡散長さ)
【0093】
【表1】
【0094】
図5は、ブラインド・チャネル装置を用いて所望の温度が実現される速さを示す。
【0095】
(VIII.検出)
(A.概要)
幾つかの異なる検出方法が本願で提供するマイクロ流体装置と利用され得る。適当なシステムの選択は、検出されるイベントおよび/または物質のタイプにより部分的に特徴付けられる。検出器は、放射性同位体、発蛍光団、発色団、電子密度粒子、磁気粒子、スピンラベル、化学発光を発する分子、電子化学的に活性的な分子、酵素、補因子、核酸プローブに結合した酵素、および、酵素基質からの信号を含むがこれらに制限されない幾つかの異なる信号のタイプを検出するよう設計される。
【0096】
本発明のマイクロ流体装置との使用に好適な例示的な検出方法は、光散乱、マルチチャンネル蛍光検出、UVおよび可視波長吸収、ルミネッセンス、差分反射、および、共焦点レーザ走査を含むがこれに制限されない。ある適用法で使用される追加的な検出方法は、シンチレーション近似検定法、放射化学分析、蛍光偏光、蛍光相関分光法(FCS)、時間分解エネルギー伝達(TRET)、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)、および生物発光共鳴エネルギー伝達(BRET)を含む。追加的な検出の選択肢は、電気抵抗、抵抗性、インピーダンス、および、電圧感知を含む。
【0097】
検出は、「検出セクション」または「検出領域」で行われる。これらの用語および他の関連する用語は、検出が起こるマイクロ流体装置の部分を指す。上述した通り、ブラインド・チャネル設計を利用する装置では、検出セクションは一般的に各反応部位と関連付けられる弁によって隔離される反応部位である。マトリクス・ベースの装置に対する検出セクションは、通常、交点に隣接する流れチャネルの領域内、交点自体、または、交点および周囲の領域を囲う領域である。
【0098】
検出セクションは、特定のイベントおよび/または物質と関連付けられる信号を検出するために協働する一つ以上の顕微鏡、ダイオード、光励起装置(例えば、レーザ)、光電子増倍管、プロセッサ、および、それらの組み合わせと連通している。検出される信号は、しばしば光検出器によって検出セクションで検出される光信号である。光検出器は、一つ以上のフォトダイオード(例えば、アバランシェ・フォトダイオード)、例えば、光電子増倍管への光ファイバ光案内、顕微鏡、および/またはビデオ・カメラ(例えば、CCDカメラ)を含み得る。
【0099】
検出器は、マイクロ流体装置内に微細加工され得、または、別個の素子でもよい。検出器が別個の素子として存在し、マイクロ流体装置が複数の検出セクションを含む場合、検出は任意の所与の瞬間に単一に検出セクション内で行われる。或いは、走査システムが使用され得る。例えば、ある自動化システムは、マイクロ流体装置に対して光源を走査し、他のシステムは検出器に発せられた光を走査し、または、マルチチャネル検出器を含む。特定の例示的な例として、マイクロ流体装置は、平行移動可能なステージに取り付けられ、顕微鏡の対物レンズの下で走査される。このようにして捕捉される信号は、信号解釈および処理のためにプロセッサにルーティングされる。光電子増倍管のアレイは使用されてもよい。追加的には、全ての異なる検出セクションから同時に信号を収集する一方で各セクションからの信号を決定する能力を有する光学システムが利用されてもよい。
【0100】
外部検出器は、提供される装置が、モニタリングされる波長で光学的に透過性を有する材料により完全にまたは大部分が製造されるため有用である。この特徴により、本願に記載の装置は、従来のシリコンベースのマイクロ流体装置では可能でない幾つかの光検出システムを利用することを可能にする。
【0101】
検出器は、検出可能な信号を生成するレポータを刺激する光源を含む。利用される光源のタイプは、活性化されるレポータの性質に部分的に依存する。好適な光源は、レーザ、レーザ・ダイオード、および、高輝度ランプを含むがこれらに制限されない。レーザが利用される場合、レーザは検出セクションのセットまたは単一の検出セクション上を走査するよう利用され得る。レーザ・ダイオードは、マイクロ流体装置自体に微細加工され得る。あるいは、レーザ・ダイオードは、ダイオードからのレーザ光が検出セクションに方向付けられるようサーマルサイクリング反応を行うために利用されるマイクロ流体装置に隣接して配置される別の装置に加工されてもよい。
【0102】
検出は、幾つかの非光学的アプローチも伴う。例えば、検出器は、例えば、温度センサ、伝導性センサ、電位差センサ(例えば、pH電極)および/または電流センサ(例えば、酸化還元反応をモニタリングするため)も含む。
【0103】
幾つかの市販されている外部検出器が利用され得る。これらの多くは、蛍光検出器であり、それは、蛍光標識された試薬を準備し易いからである。利用可能な検出器の特定の例は、Applied Precision Array WoRx(Applied Precision, Issaquah, WA)を含むがこれに制限されない。
【0104】
(B.増幅された核酸の検出)
(1.挿入色素)
二本鎖DNAに結合された際にだけ蛍光を発するある挿入色素は、二本鎖増幅DNAを検出するために使用され得る。適切な色素の例は、SYBRTMおよびPico Green(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR),臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、クロモマイシン、アクリジンオレンジ、Hoechst 33258、Toto−1、Yoyo−1、およびDAPI(塩酸4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)を含むがこれに制限されない。挿入色素の使用に関する追加的な説明は、本願で参照として全体的に組み込むZhu,et al.,によるAnal.Chem、66:1941−1948(1994)に提供される。
【0105】
(2.FRETベースの検出方法)
このタイプの検出方法は、供与体/受容体・発蛍光団対における供与体(レポータ)および/または受容体(消光剤)発蛍光団から蛍光の変化を検出することを伴う。供与体および受容体・発蛍光団対は、供与体の発光スペクトルが受容体の励起スペクトルと重なるよう選択される。従って、発蛍光団の対が互いに対して十分に近づけられると、供与体から受容体へのエネルギー伝達が生ずる。このエネルギー伝達が検出される。
【0106】
FRETおよびテンプレート伸長反応。これらの方法は、一般的に供与体/受容体対の一方のメンバで標識されるプライマー、および、供与体/受容体対の他方のメンバで標識されるヌクレオチドを利用する。テンプレート依存伸長反応中に標識されたヌクレオチドをプライマーに組み込む前に、供与体および受容体はエネルギー伝達が生じないよう十分に離間される。しかしながら、標識されたヌクレオチドが、プライマーに組み込まれ、そして間隔が十分に近い場合、エネルギー伝達が生じ検出され得る。これらの方法は、一塩基多型(以下参照)の検出において単一の塩基対伸長反応を行う際に特に有用であり、米国特許第5.945,283号およびPCT公報WO97/22719に開示される。
【0107】
定量的RT−PCR。様々ないわゆる「リアルタイム増幅」方法または「リアルタイム定量的PCR」方法は、増幅処理中または後に形成される増幅生成物の量を測定することでサンプルに存在するターゲット核酸の量を決定するために利用される。蛍光発生ヌクレアーゼ検定は、本願記載の装置と良好に使用され得るリアルタイム定量方法の特定の例の一つである。増幅生成物の形成をモニタリングする同方法は、しばしば「TaqMan」と呼ばれるアプローチ法である二重標識蛍光発生オリゴヌクレオチド・プローブを用いたPCR生成物蓄積の連続的な測定を伴う。
【0108】
このような決定で使用されるプローブは、典型的には、二つの異なる蛍光色素で標識される短い(約20−25塩基)ポリヌクレオチドである。プローブの5’末端は、典型的にはレポータ色素に取り付けられ、3’末端は消光色素に取り付けられるが、色素はプローブの他の位置に取り付けられてもよい。プローブは、ターゲット核酸上のプローブ結合部位との実質的な配列相補性を少なくとも有するよう設計される。プローブ結合部位に隣接する領域に結合する上流および下流PCRプライマーは反応混合物に含まれる。
【0109】
プローブが損なわれないとき、二つの発蛍光団間のエネルギー伝達が起こり、消光剤はレポータからの放出をクエンチする。PCRの伸長相中、プローブはTaqポリメラーゼのような核酸ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断され、それにより、ポリヌクレオチド−消光剤からレポータを解放し、結果としてレポータ発光輝度の増加を生じ、これが適当な検出器によって測定される。
【0110】
蛍光発生検定中に作成されるような蛍光発光を測定するよう特に適合される一つの検出器は、Foster City,CAにあるApplied Biosystems, Inc.によって製造されるABI7700である。この機器を備えるコンピュータ・ソフトウェアは、増幅の過程でレポータおよび消光剤の蛍光輝度を記録することができる。これら記録された値は、連続的に正規化されたレポータ発光輝度における増加を計算し、最終的に、増幅されるmRNAの量を定量化するよう使用され得る。
【0111】
増幅生成物の濃度のリアルタイム決定を行う蛍光発生方法の理論および動作に関する追加的な詳細は、例えば、Gelfandに対する米国特許第5,210,015、Livak,et al.に対する米国特許第5,538,848号、および、Haalandに対する米国特許第5,863,736号、並びに、Heid,C.A.,et al.,Genome Research,6:986−994(1996);Gibson, U.E.M,et al.,Genome Research,6:995−1001(1996)、Holland,P.M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:7276−7280(1991)、および、Livak.K.J.,et al.,PCR Methods and Applications 357−362(1995)に開示され、それぞれ本願で参照として組み込まれる。
【0112】
従って、増幅反応が進行すると、増加する量の色素が結合され、信号における付随する増加を伴う。
【0113】
上述のような挿入色素は、異なるアプローチで定量的PCR方法に利用され得る。上述したとおり、これらの色素は二本鎖DNAに優先的に結合し(例えば、SYBR GREEN)、一旦結合された場合にのみ信号を生成する。従って、増幅反応が進行するにつれて、増加する量の色素が結合され、検出され得る信号の同時の増加が伴われる。
【0114】
分子ビーコン。分子ビーコンを用いると、増幅された生成物の相補的領域にハイブリダイズすることによるプローブの配置における変化は、結果として、検出可能な信号の形成を生ずる。プローブ自体は、5’端における一方のセクションおよび3’端における他方のセクションといった二つのセクションを含む。これらのセクションは、プローブ結合部位にアニールされるプローブのセクションに隣接し、互いに対して相補的である。一方の端セクションは、レポータ色素に取り付けられ、他方の端セクションは通常消光剤色素に取り付けられる。
【0115】
溶解状態では、二つの端セクションは、ヘアピン・ループを形成するよう互いに対してハイブリダイズし得る。この配置では、レポータおよび消光色素は、レポータ色素からの蛍光が消光色素によって効果的にクエンチされるよう十分に近付けられる、反対に、ハイブリダイズされたプローブは、クエンチングの程度が減少される線形化された配置を結果として生ずる。従って、二つの色素に対する発光の変化をモニタリングすることで、増幅生成物の形成を間接的にモニタリングすることが可能となる。このタイプのプローブおよびその使用方法は、例えば、Piatek,A.S,et al.,Nat.Biotechnol,16:359−63(1998)、Tyagi,SおよびKramer,F.R.,Nature Biotechnology14:303−308(1996)、および、Tyagi,S,et al.Nat.Biotechnol.16:49−53(1998)に更に開示され、それぞれ全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込まれる。
【0116】
インベーダ。インベーダ検定(Third Wave Technologies, (Madison,WI))は、SNP遺伝子型特定に使用され、ターゲット核酸(DNAまたはRNA)または多型性部位に相補的な信号プローブと指定されるオリゴヌクレオチドを利用する。インベーダ・オリゴと指定される第2のオリゴヌクレオチドは、5’ヌクレオチド配列を含むが、3’ヌクレオチド・配列はヌクレオチド多型を含む。インベーダ・オリゴは、信号プローブの5’端が多型を含むヌクレオチドで「フラップ」を形成するようターゲット核酸への信号プローブの結合と干渉する。この複合体は、Cleavase酵素と呼ばれる構造特異的なエンドヌクレアーゼによって認識される。Cleavaseは、ヌクレオチドの5’フラップを切断する。解放されたフラップは、FRET標識を有する第3のプローブと結合し、Cleavase酵素によって認識される別の二重構造を形成する。今回は、Clevase酵素は、消光剤から発蛍光団を切断し、蛍光信号を生成する。SNP遺伝子型特定に関して、信号プローブは基準(ワイルド・タイプ)対立遺伝子または変形(突然変異)対立遺伝子のいずれかとハイブリダイズするよう設計される。PCRとは異なって、核酸の増幅なしで信号の線形増幅がある。当業者を導くために十分な更なる詳細は、例えば、Neri,B.P.,et al.、Advances in Nucleic Acid and Protein Analysis 3826:117−125,2000より提供される。
【0117】
NASBA。核酸配列ベース増幅(NASBA)は、RNAをテンプレートとした検出方法である。RNAと相補的なプライマーは、T7プロモーター部位に対する配列を含む。このプライマーは、追加されるテンプレートRNAおよび逆転写酵素(RT)と結合され、3’から5’へと相互鎖を生成する。RNaseHは、RNAを消化するために後続して添加され、一本鎖cDNAを後に残す。プライマーの第2のコピーは、一本鎖cDNAを結合して二本鎖cDNAを形成する。T7RNAポリメラーゼは、第1のプライマーによってcDNA配列に組み込まれたT7プロモーター部位からRNAの多数のコピーを生成するために添加される。上述の任意の酵素は、41℃で機能することができる(例えば、Compton,J.Nucleic Acid Sequence−based Amplification, Nature 350:91−91,1991を参照する)。
【0118】
Scorpion.同方法は、全ての目的のために本願で全体的に参照として組み込まれ、図面がそのスキームを示す例えば、Thelwell N.,et al.,Nucleic Acids Research、28:3752−3761,2000によって説明され、Scorpionプロービング機構は次の通りである。ステップ1:ターゲットおよびScorpionステム・配列の最初の変性。ステップ2:ターゲットへのScorpionプライマーのアニーリング。ステップ3:Scorpionプライマーの伸長により二本鎖DNAの生成。ステップ4:ステップ3で生成された二本鎖DNAの変性。これにより、Scorpionプライマーが取り付けられた一本鎖ターゲット分子を提供する。ステップ5:冷却の際、Scorpionプローブ・配列が分子内でターゲットに結合する。これは、相補的なターゲット鎖の分子間結合よりも好まれる。Scorpion(図に示すように)は、プローブの5’および3’側で相補的なステム・配列によりヘアピン・ループ構造で保持される特定のプローブ・配列よりなる。5’端に取り付けられる発蛍光団は、ループの3’端に接合される部分(通常、メチルレッド)によってクエンチングされる。ヘアピン・ループは、PCR停止配列(ストッパ)を介してプライマーの5’端にリンクされる。PCR増幅中のプライマーの伸長後、特定のプローブ・配列はDNAの同じ鎖内でその相補物と結合される。このハイブリダイズイベントは、蛍光がもはやクエンチングされず、信号における増加が観察されるようヘアピン・ループを開く。PCR停止配列は、特定のターゲット・配列が存在しない際にヘアピン・ループを開かせる読み過しを防止する。このような読み合わせは、例えば、プライマー・ダイマーのような非特異的PCR生成物の検出またはミスプライミング・イベントをもたらす。
【0119】
(3.キャパシタンスDNA検出)
DNA濃度と1kHz電場の核酸の通過によって起こされるキャパシタンスの変化との間では線形関係がある。この関係は、種に依存しない(例えば、Sohn, et al.,(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:10687−10690を参照)。従って、ある装置では、流れチャネル(例えば、図1の略円形の流れチャネルまたは図2の反応室)内の核酸は、増幅された生成物の濃度を決定するために、このような場に曝露される。あるいは、増幅された生成物を含む溶液が引き出され、電場に曝露される。
【0120】
(IX.反応を行うための混合物の組成)
本願で提供するマイクロ流体装置で行われる反応は、典型的には、反応を向上させるためのある添加物を用いて行われる。従って、例えば、試薬が堆積される装置の場合、これら添加物が反応部位で一つ以上の反応物質と一緒にスポッティングされる。添加物の一つのセットは、エラストマー基板のプロテイン結合部位を遮断する遮断試薬である。幾つかの異なるプロテイン(例えば、ゼラチン、ウシ血清アルブミンのような様々なアルブミン・プロテイン)およびグリセロールを含む幅広い種類の化合物が利用される。
【0121】
洗浄添加物も有用である。多数の洗浄剤のいずれかが利用される。例としてSDSおよび様々なトリトン洗浄剤を含むがこれに制限されない。
【0122】
核酸増幅反応の特定の場合、多数の異なるタイプの添加物が含まれる。一つのカテゴリーは、増幅反応を促進させるエンハンサーである。このような添加物は、核酸における二次構造を減少させる試薬(例えば、ベタイン)およびミスプライミング・イベントを減少させる物質(例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド)を含むがこれに制限されない。
【0123】
ある増幅反応に行う際に幾つかのポリメラーゼが高められた結果を生ずることが分かった。例えば、Thermus aquaticusからのAmpliTaq Goldポリメラーゼ(Applied Biosystems, Foster City, CA)から良好な結果が得られた一方で、改善された反応はある場合では、Finnzyme,Espoo,FinlandのDyNAzymeポリメラーゼを使用して得られた。このポリメラーゼは、好熱性細菌Thermus brockianusから得られる。利用され得る他の典型的なポリメラーゼは、Thermus thermophilus(Tth)およびThermococcus litoralis(Tli)、超好熱古細菌Pyrosoccus woesei(Pwo)およびTgo DNAポリメラーゼの組み合わせのrTHポリメラーゼXLを含むがこれに制限されない。
【0124】
核酸増幅反応を含む、本願に開示する装置を用いる反応を行う上で有用な添加物に関わる更なる詳細は、以下の実施例1で提供される。
【0125】
(X.模範的な適用法)
本願で提供されるマイクロ流体装置が多数の反応部位を含むよう製造されるため、装置は、幅広い種類のスクリーニングおよび分析方法に有用である。一般的に、装置は、検出可能な信号を形成するよう反応する種間の反応、または、別の種と反応すると検出可能な信号を生成する生成物を検出するよう利用される。様々なタイプの温度制御システムとのそれぞれの使用を鑑みて、装置は、温度制御を必要とする幾つかの異なるタイプの分析または反応に利用され得る。
【0126】
(A.核酸増幅反応)
本願で開示する装置は、基本的に任意のタイプの核酸増幅反応を行うために利用され得る。従って、例えば、増幅反応は、線形増幅(単一プライマーでの増幅)、並びに、指数増幅(すなわち、フォワードおよびリバース・プライマーセットを用いて行われる増幅)でもよい。
【0127】
ブラインド・チャネル・タイプ装置が核酸増幅反応を実施するために利用されるとき、反応部位内に典型的には堆積される試薬は所望のタイプの増幅反応を実施するために必要な試薬である。これは、通常、幾つかのまたは全ての例えば、プライマー、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、金属イオン、緩衝剤、および、補因子が堆積されることを意味する。このような場合に反応部位に導入されるサンプルは核酸テンプレートである。しかしながら、テンプレートが堆積され増幅試薬が反応部位に流されてもよい。上述したとおり、マトリクス装置が増幅反応を行うために利用されるとき、核酸テンプレートを含むサンプルが垂直方向の流れチャネルを流れ、増幅試薬は水平方向の流れチャネルを流れる、あるいは、その逆である。
【0128】
PCRが最もよく知られている増幅技術であるが、装置は、PCR増幅を行うことに制限されない。行うことができる他のタイプの増幅反応は、(i)リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace, Genomics 4:560(1989)およびLandegren, et al.によるScience241:1077(1988)参照);(ii)転写増幅(Kwoh,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:1173(1989)参照);(iii)自立配列複製(Guatelli,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:1874(1990)参照);および(iv)核酸ベース配列増幅(NASBA)(Sooknanan,RおよびMalek,L.,BioTechnology13:563−65(1995)参照)を含むがこれらに制限されない。前述の参考文献それぞれは全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込む。
【0129】
結果として生ずる増幅された生成物の検出が、増幅されたDNAを検出する上述の検出方法のいずれかを用いて実現される。
【0130】
(B.SNP分析および遺伝子型特定)
(1.概要)
宿主生物または感染性の生物のいずれかのゲノム変更にリンクされる多数の病気は、単一のヌクレオチドにおける変化をしばしば伴う少数のヌクレオチドにおける変化の結果である。このような単一ヌクレオチドにおける変化は、一塩基多型または単にSNPと呼ばれ、SNPが生ずる部位は、多型性部位として典型的には呼ばれる。本願で開示される装置は、このような多型性部位に存在するヌクレオチドの識別を決定するために利用される。この能力の延長として、装置は、遺伝子型特定分析に利用される。遺伝子型特定は、二倍生物(即ち、各遺伝子の二つのコピーを有する生物)が基準対立遺伝子(基準タイプ同型接合体)の二つのコピー(基準および変形対立遺伝子(即ち、異型接合体)それぞれの一つのコピー)を含むか、変形対立遺伝子(即ち、変形型同型接合体)の二つのコピーを含むかの決定を伴う。遺伝子型特定分析を行うとき、本発明の方法は単一の変形部位を問いただすために利用され得る。しかしながら、マルチプクレシングのセクションで更に以下に説明するように、同方法は、同じ遺伝子、異なる遺伝子、または、その組み合わせのいずれかで多数の異なるDNA遺伝子座において個体の遺伝子型を決定するために使用される。
【0131】
遺伝子型特定分析を行うために利用される装置は、二倍対象物に対する二つの対立遺伝子それぞれのコピーが機能できるDNA濃度で反応部位に存在することを統計的観点から確実にするよう適当なサイズの反応部位を利用するよう設計される。さもばければ、分析は、単に第2の対立遺伝子のコピーが反応部位に存在しないため異型接合体が同型接合体であることを示唆する結果を生ずる。以下の表2は、本願で開示される装置と利用され得る様々な典型的なDNA濃度で1nl反応容積に存在するゲノムのコピーの数を示す。
【0132】
(表2:示されるDNA濃度で1nL容積に存在するゲノムコピーの数)
【0133】
【表2】
【0134】
一般的に、サンプルの確率的釣り合いにより、増幅反応が開始される前に存在するコピー数は測定で起こり得るエラーを決定する。ある装置を用いる遺伝子型特定分析は、典型的には、約0.10ug/uLのDNA濃度を有するサンプルを用いて行われるが、発明者は、1反応部位当たり単一のゲノムの濃度で成功したTaqMan反応を行った。
【0135】
(2.方法)
遺伝子型特定分析は、様々な異なるアプローチで行われる。これらの方法において、「イエス」または「ノー」結果を得ることが一般的に十分であり、即ち、検出は所与の対立遺伝子が存在するか否かといった質問に答える必要があるだけである。従って、分析は、多型性部位で潜在的に一つの対立遺伝子の存在を検出するために必要なプライマーまたはヌクレオチドだけで行われる。しかしながら、より典型的には、多型性部位で潜在的に各対立遺伝子の存在を検出するためのプライマーおよびヌクレオチドが含まれる。適切なアプローチの例は、以下の通りである。
【0136】
単一塩基対伸長(SBPE)反応。SBPE反応は、遺伝子型特定分析を行うために特に開発された一つの技法である。幾つかSPBE検定が開発されているが、一般的なアプローチは非常に類似している。典型的には、これら検定は、プライマーの3’端が変形部位の直ぐ5’側またはそれに隣接するようターゲット核酸と相補的なプライマーをハイブリダイズすることを伴う。伸長は、変形部位を占有するヌクレオチドと相補的な一つ以上の標識された非伸長型ヌクレオチドおよびポリメラーゼが存在する中で行われる。非伸長型ヌクレオチドは、プライマーに一旦組み込まれるとポリメラーゼによる更なる伸長を防止するヌクレオチド類似体である。添加する非伸長型ヌクレオチドが変形部位においてヌクレオチドと相補的である場合、標識された非伸長型ヌクレオチドはプライマーの3’端に組み込まれ標識された伸長生成物を生成する。従って、伸長されたプライマーは、ターゲット核酸の変形部位にどのヌクレオチドが存在するかを示す。このような方法および関連する方法は、例えば、米国特許第5,846,710号、第6,004,744号、第5,888,819号、第5,856,092号、および、第5,710,028号、並びに、WO92/16657に説明される。
【0137】
伸長された生成物の検出は、検出セクションにおける伸長反応に対して説明したFRET検出アプローチを用いて検出される。従って、例えば、本願記載の装置を用いて、供与体/受容体・発蛍光団の一つのメンバで標識されるプライマー、1乃至4の標識された非伸長型ヌクレオチド(一つより多くの非伸長型ヌクレオチドが含まれる場合に区別をつけて標識される)、および、ポリメラーゼを含む試薬混合物は反応部位に導入される(または前にスポッティングされる)。テンプレートDNAを含むサンプルは、テンプレート伸長を生ずることを可能にするよう反応部位に導入される。形成される全ての伸長生成物は、FRET信号の形成によって検出される(例えば、米国特許第5,945,283号、および、PCT公報WO97/22719参照)。反応は、上述の温度制御方法および装置を用いて信号を増加するために任意にはサーモサイクルされる。
【0138】
定量的PCR。遺伝子型特定分析は、前述の定量的PCR方法を用いて行われてもよい。この場合、対立遺伝子それぞれに相補的な区別をつけて標識されたプローブは、プライマー、ヌクレオチド、および、ポリメラーゼと共に試薬として含まれる。しかしながら、反応は、単一のプローブだけで行われてもよく、これは、信号の欠如が特定の対立遺伝子が存在しないことによるか単に失敗した反応によるものかについてあいまいさをつくる。二つの対立遺伝子がある多型性部位について可能である典型的な2対立遺伝子の場合、それぞれ対立遺伝子の一つと完全に相補的な二つの区別可能な標識されたプローブが増幅プライマー、ヌクレオチド、およびポリメラーゼと共に試薬混合物に通常含まれる。ターゲットDBAを含むサンプルが反応部位に導入される。プローブが相補的な対立遺伝子がターゲットDNAに存在する場合、増幅が起こり、結果として上述したような検出可能な信号が生ずる。どちらの区別可能な信号が得られるかに基づいて、多型性部位でのヌクレオチドのアイデンティティが決定される。両方の信号が検出される場合、両方の対立遺伝子が存在する。反応中のサーモサイクリングは、上述の温度制御セクションに説明されたように実施される。
【0139】
(C.遺伝子発現分析)
(1.概要)
遺伝子発現分析は、特定の細胞で一つ以上の遺伝子が発現されるレベルを決定することを伴う。決定は、定性的でもよいが、一般的に、定量的である。差別的な遺伝子発現分析において、一つの細胞(例えば、試験細胞)における遺伝子のレベルは、別の細胞(コントロール細胞)における同じ遺伝子の発現レベルと比較される。幅広い種類のこのような比較が行われる。その例は、健常細胞と疾患細胞との間、ある薬物で治療された個体からの細胞と別の治療されていない個体からの細胞との間、特定の毒物に曝された細胞と曝されてない細胞との間等の比較を含むがこれに制限されない。発現レベルが試験およびコントロール細胞との間で変化する遺伝子は、治療に対するマーカおよび/またはターゲットとして機能する。例えば、あるグループの遺伝子が健常細胞よりも疾患細胞において上方制御される場合、このような遺伝子は、疾患のマーカとして機能し、診断試験のベースとして潜在的に利用される。これら遺伝子は、ターゲットでもよい。病気を治療する方法は、上方制御される遺伝子の発現の減少を生ずる手順を含んでもよい。
【0140】
本願に開示する装置の設計は、様々な遺伝子発現分析を容易化することについて便利である。装置が多数の反応部位を有するため、多数の遺伝子および/サンプルが同時に試験され得る。例えば、ブラインド流れチャネル装置を用いると、何百または何千もの遺伝子の発現レベルが同時に決定される。装置は、差別的な遺伝子発現分析を容易化する。例えば、マトリクス設計を用いると、健常細胞から得られるサンプルは一つの流れチャネルで試験され、疾患細胞からのサンプルは直ぐ隣のチャネルで実行される。この特徴は、二つのサンプルが同時に且つ同じ条件下で同じ装置で実行されるため、結果の検出し易さおよび正確性を向上させる。
【0141】
(2.サンプル準備および濃度)
遺伝子または複数の遺伝子の転写レベル(従って発現レベル)を測定するために、複数の遺伝子または遺伝子の断片のmRNA転写を有する核酸サンプル、または、mRNA転写から得られる核酸が得られる。mRNA転写から導出される核酸は、合成のためにmRNA転写またはその部分配列が最終的にテンプレートとして機能する核酸である。従って、mRNAから逆転写されたcDNA、cDNAから転写されたRNA、cDNAから増幅されたDNA,増幅されたDNAから転写されたRNAは全てmRNA転写から導出され、このような導出された生成物の検出はサンプルにおける元の転写の存在および/または発生量を示す。したがって、適切なサンプルは、遺伝子または複数の遺伝子のmRNA転写、mRNAから逆転写されたcDNA、cDNAから転写されたcRNA、遺伝子から増幅されたDNA、増幅されたDNAから転写されたRNAを含むがこれらに制限されない。
【0142】
幾つかの方法では、核酸サンプルは、生物学的サンプルから隔離された総mRNAであり、別の場合では、核酸サンプルは生体サンプルからの合計RNAである。本願で使用する「生体サンプル」といった用語は、生物、または、生物の構成要素、例えば、細胞、生体組織および体液から得られるサンプルである。幾つかの方法では、サンプルは人間の患者から得られる。このようなサンプルは、唾液、血液、血液細胞(例えば、白血球)、組織、または、細針生検サンプル、尿、腹水、および、fleural液、または、それらからの細胞を含む。生体サンプルは、組織学的目的のために採られる凍ったセクションのような組織のセクションを含む。二つのサンプルが比較目的のためにしばしば提供される。例えば、サンプルは、異なる細胞または組織タイプから、異なる個体または二つの異なる治療(例えば、薬物治療されたおよびコントロール)を受ける同じ元のサンプルからでもよい。
【0143】
mRNAの単離を排除しない任意のRNA単離技術は、このようなRNAサンプルの精製のために利用される。例えば、核酸の単離および精製の方法は、WO97/10365、WO97/27317、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization With Nucleic Acid Probes, PartIの第3章、Theory and Nucleic Acid Preparation,(P.Tijssen,ed.) Elsevier,N.Y.(1993):Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization With Nucleic Acid Probes, PartIの第3章,Theory and Nucleic Acid Preparation,(P.Tijssen,ed.) Elsevier,N.Y.(1993),およびSambrook,et al.,Molecular Clonig:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press、N.Y., (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, (Ausubel, F.M.,et al.,eds.)John Wiley&Sons,Inc., New York(1987−1993)に詳細に説明される。多数の組織サンプルは、例えば、米国特許第4,843,155号に開示されるChomezynski,Pの単一ステップRNA単離処理を含む、当該分野において公知の技術を用いて容易に処理され得る。
【0144】
上述の装置を利用する遺伝子発現分析において、結果に影響を及ぼす顕著な要因はサンプルにおける核酸の濃度である。低コピー数では、ノイズはコピー数の平方根に関連する。従って、許容可能と判断されるエラーのレベルは要求されるコピー数を支配する。特定のサンプル容積における要求されるコピー数は、要求されるDNA濃度を提供する。必ずしも最適でないが、定量反応は、50%までのエラー・レベルで行われ得るがそれよりも低いことが好ましい。1ナノリットルの容積を仮定して、特定のエラー・レベルを実現するために要求されるDNA濃度は表3に示される。ある装置で使用されるような1ナノリットルの容積はマイクロ流体装置で実行可能な濃度で遺伝子発現生成物の十分なコピーを有することが分かる。
【0145】
(表3:遺伝子発現−DNA量)
【0146】
【表3】
【0147】
更なる計算により、1ナノリットルの反応部位を利用する本願で提供する幾つかの装置が正確な発現結果を実現するために十分なDNAを含むことを示す。具体的には、典型的なmRNA準備手順は、mRNAの約10ugを生ずる。典型的には、1細胞当たり各mRNAの1乃至10,000コピーがあることが示されている。任意の所与の細胞内で発現されるmRNAのうち、約四つの最も一般的なメッセージが全mRNAレベルの約13%を占める。従って、このような非常に発現されたメッセージは、mRNAの1.3ugを占める(それぞれ4×10−12モルまたは約2.4×1012コピー)。前述の発現範囲を鑑みて、2×10−8コピーのレベルでレア・メッセージが存在することが予想される。標準分析においてmRNAサンプルが10ulに溶解される場合、レア・メッセージの濃度は約2×107コピー/ulであり、この濃度は1nlウェル(または4×1011M)当たり20,000コピーに対応する。
【0148】
(3.方法)
発現分析は典型的には定量的分析を伴うため、検出は上述の定量的リアルタイムPCR方法の一つを用いて典型的には実現される。従って、TaqManアプローチが利用される場合、反応部位に導入される(または前にスポッティングされる)試薬がプライマー、標識されたプローブ、ヌクレオチド、および、ポリメラーゼの一つまたはいずれかを含み得る。挿入色素が利用される場合、試薬混合物は、典型的には、プライマー、ヌクレオチド、ポリメラーゼ、および、挿入色素の一つまたはいずれかを典型的には含む。
【0149】
(D.マルチプレクシング)
本願記載のアレイ・ベースの装置(例えば、図1A,1F、2、3Aおよび3B,および、添付のテキスト参照)は、同時に多数の増幅反応を行うよう本質的に設計されている。しかしながら、この特徴は、各反応部位内で多数の分析(例えば、遺伝子型特定および発現分析)を行うことで更に簡単に拡張され得る。
【0150】
マルチプレクス増幅は、例えば、サーマルサイクリング処理中に関心のある特定のターゲット核酸に対してそれぞれ特異的な複数のプライマーを利用することで単一の反応部位内で実施され得る。異なる増幅された生成物の存在は、定量的RT−PCR反応を行うために区別をつけて標識されたプローブを用いて、または、区別をつけて標識された分子ビーコン(以下参照)を用いることで検出され得る。このようなアプローチでは、各区別をつけて標識されたプローブは、特定の増幅されたターゲットにだけハイブリダイズするよう設計される。利用される異なる標識の賢明な選択により、異なる標識が単一の反応において異なる波長で励起および/または検出される分析が行われる。更なる、このようなアプローチで適している適当な蛍光標識の選択に関する手引きは、Fluorescence Spectroscopy (Pesce,et al.,Eds.)Marcel Dekker,New York(1971);White,et al.,Fluorescence Analysis:A Practical Approach, Marcel Dekker, New York(1970);Berlman, Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules, 2nd ed., Academic Press, New York (1971);Griffiths, Colour and Constitution of Organic Molecules, Academic Press, New York (1976);Inidicators (Bishop,Ed.)Pergamon Press, Oxford,19723;およびHaugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, Molecular Probes, Eugene (1992)を含む。
【0151】
多数の遺伝子型特定および発現分析は、各反応部位で任意に行われる。TaqManのような定量的PCR方法が利用される場合、関心のあるターゲットDNAの異なる領域を増幅するプライマーが単一の反応部位内に含まれる。各領域に対する区別がつけられて標識されたプローブは、形成される生成物を区別するために利用される。
【0152】
(E.非核酸分析)
幅広い種類の核酸分析を行うのに有用な一方で、装置は、幾つかの他の用途に利用されてもよい。前述した通り、装置は、検出可能な信号または、反応生成物との相互作用の際に信号を生成する検出試薬と反応し得る反応生成物を生成する二つ以上の種間の任意の相互作用を分析するために利用され得る。
【0153】
従って、例えば、装置は、特定の所望の活性を有する試験物質を識別するために幾つかのスクリーニング用途に利用され得る。特定の例として、装置は、一つ以上の酵素の基質または阻害物質としての活性について化合物をスクリーニングするために利用される。このような分析において、試験化合物および他の必要な酵素検定試薬(例えば、緩衝剤、金属イオン、補因子、および、基質)は、反応部位に導入される(さもばければ、前に堆積される)。酵素サンプルは、導入され、反応(試験化合物が基質の場合)または反応の阻害(試験化合物が阻害物質の場合)が検出される。このような反応または阻害は、基質の損失および/または生成物の出現を直接的にまたは間接的にモニタリングするような標準技術によって実現され得る。
【0154】
十分に大きい流れチャネルおよび反応部位を有する装置は、細胞と一つ以上の試薬との間の相互作用を検出するために細胞検定を行うために利用される。例えば、ある分析は特定の細胞型がサンプルに存在するか否かの決定を伴う。これを実現する一例は、ある細胞型と優先的に反応する細胞特異的色素を利用することである。従って、このような色素は、反応部位に導入され得、次いで細胞が添加され得る。細胞の染色は、標準的な顕微鏡技法を用いて検出され得る。別の例示として、試験化合物は、情報伝達路のような細胞応答をトリガまたは阻止する能力についてスクリーニングされる。このような分析において、試験化合物は部位に導入され、細胞が添加される。反応部位は、細胞応答の形成を検出するために確認される。
【0155】
このような装置の関連装置および適用法の更なる説明は、全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込む2001年11月30日に出願された同時係属中の共有に係る米国仮出願第60/335,292号に記載される。
【0156】
(XI.加工)
(A.一般的特徴)
前に述べられた通り、提供されるマイクロ流体装置は、一般的に単一および多層ソフト・リソグラフィ(MSL)技法および/または犠牲層カプセル化方法を利用して一般的に構成される。基本MSLアプローチ法は、ミクロ加工モールドに一連のエラストマー層を鋳造し、モールドから層を除去し、層を融合することを含む。犠牲相カプセル化アプローチでは、フォトレジストのパターンがチャネルが望まれる部位に堆積される。マイクロ流体装置を生産するこれら技法および使用は例えば、Unger,et al.,(2000)Science 288:113−116、Chou,et al.,(2000)“Integrated Elastomer Fluidic Lab−on−a−chip−Surface Patterning and DNA Diagnostics, in Proceedings of the Solid State Actuator and Sensor Workshop, Hilton Head, S.C.、および、PCT公報WO01/01025により詳細に説明され、それぞれ全ての目的のために本願で全体的に参照として組み込む。
【0157】
簡単に、前述の加工方法は最初に上層(例えば、制御チャネルを有するエラストマー層)および底層(例えば、流れチャネルを有するエラストマー層)に対するマザー・モールドをシリコン・ウェハ上にフォトレジスト(Shipley SJR5740)を用いたフォトリソグラフィにより加工することを伴う。チャネル高さは、スピン・コーティング速度によって正確に制御されえる。フォトレジスト・チャネルは、フォトレジストをUV光に曝し、続いて現像することで形成される。熱リフロー処理および保護処理は、本願で全体的に参照として組み込むM.A.Unger、H−P.Chou、T.Thorsen,A.SchererおよびS.R.Quake、Schience(2000)288:113によって説明されるように典型的には実現される。混合された二部分シリコーン・エラストマー(GE RTV615)は、底モールドにスピンされ、上モールドに流される。ここでも、スピン・コーティンが底ポリマー流体層の厚さを制御するために利用される。部分的に硬化された上層は、底層と整列されアセンブルしてオーブンに280℃で25分間焼かれた後にモールドから剥がされる。最終的な80℃での1.5時間の焼きを用いて、これら二層を不可逆的に結合させる。一貫底シリコン・マザー・モールドから剥がされると、RTV装置は、HCL(0.1N、80℃で30分)典型的には処理される。この処理は、いくつかのSi−O−Si結合を切断するよう作用し、それにより、チャネルをより親水性にするヒドロキシ基を露出する。
【0158】
装置は、任意には、支持部に密閉してシールされる。支持部は本質的にどの材料から製造されてもよいが、表面はシールが接着力によって主に形成されるため良好なシールを確実にするよう平坦である。適切な支持部の例としては、ガラス、プラスチックなどが挙げられる。
【0159】
前述の方法により形成される装置は、流れチャネルの一壁を形成する基板(ガラス製スライド)を結果として生ずる。あるいは、装置は、一旦マザー・モールドから除去されると、流れチャネルがエラストマー材料に完全に囲まれるよう薄いエラストマー膜にシールされる。結果として生ずるエラストマー装置は、任意には、基板支持部に接合される。
【0160】
(B.ブラインド・チャネル設計を利用する装置)
(1.層形成)
製造中に試薬が反応部位に堆積されるブラインド・チャネル設計に基づくマイクロ流体装置は、典型的には三層よりなる。底層は試薬が堆積される層である。底層は、MLS方法に関して上述した参考文献に記載される様々なエラストマー材料から形成される。典型的には、材料はポリジメチルシロキサン(PMDS)エラストマーである。特定の装置に対して望まれる反応部位の配置および位置に基づいて、適当な試薬がスポッティングされるべき底層上での位置を決定することができる。PMDSは疎水性のため、堆積された水性スポットは縮まって非常に小さいスポットを形成する。堆積された試薬は、前述したとおり、サンプル溶液が一旦反応部位に導入されると試薬がサンプル溶液に溶解されることが意図されるため、試薬とエラストマーの表面との間で共有結合が形成されないよう堆積される。
【0161】
装置の他の二層は、流れチャネルが形成される層と、制御および、任意には、ガード・チャネルが形成される層である。これら二層は、本セクションにおいて前述した一般的方法に従って準備される。結果として生ずる二層構造は、試薬が堆積された第1の層の上に配置される。三層の組成の特定例は、(構成要素A対構成要素Bの比)第1の層(サンプル層)30:1(重量);第2の層(流れチャネル層)30:1、および、第3の層(制御層)4:1)である。しかしながら、エラストマー構成要素の他の組成および比が利用されてもよいことも予想される。
【0162】
本処理中、反応部位は、試薬が適当な反応部位内に位置決めされるよう堆積された試薬と整列される。図6は、装置の四つのコーナーから撮られた写真のセットを示し、これら写真は前述のアプローチを利用して堆積された試薬が反応部位内に正確に整列され得ることを示す。これらの写真は、分岐流れチャネルの端に位置するガード・チャネルおよび反応部位を示す。白い円は、反応部位に対する堆積された試薬の位置を示す。説明した通り、各試薬スポットは、反応部位の範囲内である。
【0163】
(2.スポッティング)
試薬は、幾つかの市販されている試薬スポッタを利用して、且つ、様々な確立されたスポッティング技術を用いて堆積される。装置の準備に利用される適切なスポッタの例は、ピン・スポッタ、音響スポッタ、自動マイクロピペット、電気泳動ポンプ、インク・ジェット・プリンタ装置、インク・ドロップ・プリンタ、および、ある浸透圧ポンプを含む。市販されているスポッタの例は、Cartesian Technologies MicroSys 5100 (Irvine, CA), Hitach SPBIO (Alameda, CA), Genetix Q−Array (United Kingdom), Affymetrix 417(Santa Clara, CA)、および、Packard Bioscience SpotArray (Meriden, CT)を含む。一般的に、非常に小さいスポットの試薬が堆積され、通常、10nl未満のスポットが堆積され、ある場合では、5nl未満、2nl未満、または、1nl未満、またある場合では0.5nl未満、0.25nl未満、または、0.1nl未満で堆積される。
【0164】
材料のアレイは、本願で参照として組み込むFoder,et al.の“Array of oligonucleotides on a solid substrate”なる名称の米国特許第5,445,934号に開示される方法により形成され得、この方法において、SNPプローブのようなオリゴヌクレオチド・プローブが空間光により指向されるフォトリソグラフィを用いて原位置で合成される。このようなアレイは、ブラインド充填チャンバのような反応部位に対応する基板の領域が基板上の既知の位置にアレイされる一つ、好ましくは、一つより多くのオリゴヌクレオチド・プローブを含むよう本発明のマイクロ流体装置の基板またはベースとして使用される。図15に示すように、分割マイクロ流体構造の場合、曲がった流体チャネルに沿って四角いボックスで示される反応部位は複数の異なるSNPプローブ、好ましくは、個体の集団から個体を識別するに適切なSNPプローブの集まりを含み、そして曲がった流れチャネルに複数の個体からの核酸配列を含む流体サンプルが導入される場合などには、好ましくは、曲がった流体チャネルに沿った複数の反応部位が、複数の異なるSNPプローブを含み、複数の弁が、作動されると曲がった流れチャネルを分割して各反応部位に流体サンプルの一部分を含むよう各反応部位を互いから隔離するよう曲がった流れチャネルと連通する。サンプルの構成要素の増幅は、各反応部位内に位置するSNPプローブのアレイを結合するための分子、例えば、核酸分子の数を増加させるために実施される。ある実施形態では、曲がった流体チャネルに沿った反応部位それぞれは同じアレイ、つまり、同じSNPプローブ・アレイを有し、他の実施形態では、曲がった流体チャネルに沿った二つ以上の反応部位は異なるセットのSNPプローブを有する。他の分割流体チャネル構造、例えば、分岐されたおよび/または分岐された分岐システム等が使用されてもよい。本願で記載するスポッティングのような他のアレイ技法も曲がったまたは分岐されたような共通の流体チャネルに沿った分割可能な反応部位内に位置するアレイを形成するよう同様に使用される。
【0165】
以下の実施例は、本願に説明する装置および方法のある特徴を更に例示するために提供される。実施例は、本発明を制限するものとして考えられてはならない。
【実施例】
【0166】
(XII.実施例)
(A.実施例1:信号強度評価)
(1.はじめに)
この実験のセットの目的は、マクロTaqMan反応の50%より大きい信号強度で本願記載の設計のマイクロ流体装置で成功なPCR反応が行われることを示すことである。
【0167】
(2.マイクロ流体装置)
MSL処理を用いて加工される三層のマイクロ流体装置は、以下の実施例に説明する実験を行うよう設計され加工される。図7Aは、装置の断面図を示す。図示するように、装置700は、流れチャネルが形成される層722を含む。この流体層722は、制御およびガード層を含む上にある層720と、下にあるシーリング層724との間に挟まれる。シーリング層724は、流れチャネルの一方の側を形成する。結果として得られる三層構造は、基板726(本実施例ではスライドまたはカバースリップ)に固定され、構造上の剛度を提供し、熱伝導性を向上し、マイクロ流体装置700の底からの蒸発を防止することを補助する。
【0168】
図7Bは、流れ層722における流れチャネル、および、制御/ガード層720における制御チャネルおよびガード・チャネルの設計の概略図である。装置700は、独自の入口708をそれぞれ含む10個の独立した流れチャネル702、および、分岐ブラインド・チャネル704よりなり、各ブラインド・チャネル704は1nlの反応部位706を有する。装置700は、十分な圧力が加えられると反応部位706を隔離する制御ライン712のネットワークを含む。一連のガード・チャネル716も反応部位706から液体が蒸発することを防止するために設けられ、流体は入口718を介して導入される。
【0169】
(3.実験設定)
人の雄性ゲノムDNA(Promega,Madison WI)からのβアクチン遺伝子のエクソン3を増幅するためにβ−アクチンプライマーおよびTaqManプローブを用いたPCR反応が装置700で行われた。TaqMan反応は、次の成分を含む:1×TaqMan緩衝液A(50mM KCL、10mM トリスHCl、0.01M EDTA、60nM Passive Reference 1(PR1)、pH8.3);3.5−4.0mM MgCl;200nM dATP、dCTP、dGTP、400nM dUTP、300nM βアクチンフォワード・プライマーおよびリバース・プライマー、200nM FAM標識されたβアクチン・プローブ;0.01U/ul AmpEraseUNG(Applied Biosystems, Foster City,CA);0.1−0.2U/ul; DyNAzyme(Finnzyme,Espoo,Finland);0.5%トリトン−x−100(Sigma,St.Louis,MO);0.8ug/ulゼラチン(Calbiochem、SanDiego,CA);5.0%グリセロール(Sigma, St. Louis, MO);脱イオンH2Oおよび雄性ゲノムDNA。反応の成分は25μlの全反応容積を生成するように添加される。ターゲットDNA以外の全てのTaqMan反応成分よりなるネガティブコントロール(コントロール)はPCR反応の各セットに含まれる。
【0170】
一旦TaqManサンプルおよびコントロールが準備されると、1mlの注射器に取り付けられたゲルが挿入されたピペット先端を用いてマイクロ流体装置700に注入される。ピペット先端は、反応サンプルで充填され、流体ビア708に挿入される。流れチャネル702は、ブラインド・チャネル704全体および反応部位706の全てが充填されるまで注射器に逆圧を手動で加えることで充填される。制御ライン712は、全てのサンプルが流れライン702、704に挿入された後に脱イオン水で充填され、15−20psiに加圧される。加圧された制御ライン712は、弁を閉じ、1nlのウェル706にサンプルを隔離するよう作動される。ガード・チャネル716が次に脱イオン水で充填され、5−7psiに加圧される。サーモサイクル器の平板に鉱油(15ul)(Sigma)が配置され、マイクロ流体装置/カバーガラス700がサーモサイクル器に配置される。マイクロ流体装置700が初期ランプおよび三段階または二段階サーモサイクリング・プロファイルのいずれかを用いてサーモサイクルされる。
1.95℃への初期ランプおよび1分間維持(1.0℃/sで75℃まで、0.1℃/秒で95℃まで)。
2.40サイクル(92℃を30秒間、54℃を30秒間、および、72℃を1分間)に対して三段階サーモサイクリング;または、
3.40サイクル(92℃を30秒間、および、60℃を60秒間)に対して二段階サーモサイクリング。
【0171】
マイクロ流体装置で実施される反応と区別するためにマクロTaqMan反応と指定される残留する反応混合物を有するMicroAmp管(Applied Biosystems,Foster City,CA)をGeneAmp PCRシステム9700(Applied Biosystems,Foster City,CA)に配置され、9600モードでサーモサイクルされる。マクロTaqMan反応は、マイクロ流体装置で実施される反応に対する巨視的コントロールとして機能する。サーモサイクリング・プロトコルは、初期ランプ速度がマクロTaqMan反応に対しては制御されていないが、マイクロ流体装置のそれに適合するように設定される。
【0172】
一旦サーモサイクリングが完了されると、制御およびガードラインは、減圧され、チップがガラス・スライド(VWR,West Chester,PA)に移動される。チップは、アレイWoRxスキャナ(Applied Precision,Issaquah,WA)に変更されたキャリヤと配置される。三つの異なる励起/発光波長:475/510nm(FAM),510/560nm(VIC)、および、580/640nm(Passive Reference 1(PR1))に対して蛍光強度が測定される。
【0173】
アレイ・ワークス・ソフトウェアーはマイクロ流体装置における蛍光の画像化、および、それぞれ1nlウェルの信号および背景強度の測定に用いられた。結果がマイクロソフト・エクセル・ファイルを用いて分析され、βアクチンTaqMan反応に対するFAM/PR1比を計算する。従来のマクロTaqManに関して、ターゲットDNAに対するポジティブサンプルは製造者によって提供されるプロトコル(TaqMan PCR Reagent Kit Protocol)に記載される計算を用いて決定される。信号強度がサンプルのFAM/PR1比をコントロールのFAM/PR1比を割ることで計算される。成功する反応は、サンプル比が99%信頼閾値レベルよりも大きいとして定義される。
【0174】
(4.結果)
最初に、AmpliTaq Gold(Applied Biosystems, Foster City, CA)がTaqMan反応に用いられ、5.0−14.0のTaqMan反応比と比べて1.5−2.0のFAM/PR1/コントロール比が生成される。結果はポジティブであるが、向上した信号強度が望まれる。従って、AmpliTaq GoldポリメラーゼがDyNAzymeポリメラーゼの増加した熱安定性、プルーフリーディング、および、不純物に対する抵抗によりDyNAzymeポリメラーゼで置き換えられた。0.025U/ulの標準的なマクロTaqMan DyNAzyme濃度がマイクロ流体実験において使用される。DyNAzymeへのこのポリメラーゼの変更は、3.5−5.8のFAM/ROX/コントロール比を生成した。信号強度が改善されたが、一貫した結果を実現することが困難である。幾つかのプロテインがPDMSに付着することが知られているため、ポリメラーゼの濃度が増加され、表面変更添加物が含まれる。マイクロ流体装置に1nl当たり100pgまたは10pgのゲノムDNAを含んで、マクロTaqManに対する標準濃度であるDyNAzymeの二つの増加した濃度、8x(0.2U/ul)および4x(0.1U/ul)が試験される。ゼラチン、グリセロール、および、0.5%トリトン−x−100は、ポリメラーゼがPDMSに付着することを防止するために添加される。マイクロ流体装置(チップ)およびマクロTaqManコントロールにおける反応の結果は図8に示される。
【0175】
マイクロ流体TaqMan反応比が4.9−8.3の範囲にある一方で、マクロTaqMan反応は7.7−9.7の範囲にある。従って、チップにおけるTaqMan反応の信号強度はマクロTaqMan反応の87%である。4xまたは8xDyNAzyme間で著しい差がなかった。結果は、マイクロ流体装置において、マクロTaqMan反応と比べてPCR反応が50%より大きい信号強度で行われることを示す。結果は、少なくとも4つの試みを通じて一貫している。
【0176】
(B.実施例2−試薬のスポッティング)
(1.はじめに)
実験の目的は、マイクロ流体装置における成功したスポッティングPCR反応を示すことである。本文における「スポッティング」といった用語は、マイクロ流体装置の一部にアセンブルされる、基板上に小滴の試薬(スポット)を配置することを意味する。スポッティングされた試薬は、一般的にPCRを実施するために必要な試薬混合物のサブセットである。
【0177】
(2.手順)
(i.試薬のスポッティング)
試薬のルーティン・スポッティングは、接触印刷処理を通じて実施される。試薬は、金属ピンでソース・ウェルのセットから取られてピンをターゲット基板に接触させることで堆積される。この印刷処理は、図9に示される。図示するように、試薬はソース(例えば、マイクロタイター板)から取られ、充填されたピンを基板と接触させることで印刷される。洗浄ステップは、脱イオン水中でかき混ぜ、続いて真空乾燥することを含む。試薬スポットを印刷するために使用されるシステムは、TeleChem“ChipMaker”ブランドのピンを用いることでCartesian Technologies MicroSys5100(Irvine, CA)であるが、他のシステムも上述した通り、使用され得る。
【0178】
使用されるピンは、取り込み容積(従って、印刷可能なスポットの数)を増加させるために電子製粉されたスロット(図9参照)を組み込むTeleChem ChipMaker 4ピンである。使用される動作条件下(典型的には、75%相対湿度および約25℃の温度)では、百を越えるスポットが1ローディングサイクル、1ピン当たり印刷される。この条件下では、PDMS基板にスポッティングされる試薬の容積は0.1nLのオーダである。
【0179】
ピンの先端の寸法は125×125μmである。所望の試薬の最終スポットは、これよりも実質的に小さいが(直径で7μm程に小さい)、ピンのサイズは容易に実現可能なスポット・スペーシングに対する下限を定める。実現可能なスペーシングは、最終装置における最小のウェルからウェルまでのピッチを決定する。このような装置および前述の方法を用いて、180μmのスペーシングを有するアレイが実現される。作業チップに組み込まれるアレイは、600乃至1300ミクロンのスペーシングを有する傾向がある。
【0180】
スポッティングは、一回に一つのピンだけを用いて行われる。しかしながら、使用中のシステムは最大で32ピンを収容することができるピン・ヘッドを有する。標準的なサイズのチップ(20×25mmのオーダのアレイ寸法)の印刷は、5分未満である。
【0181】
(ii.スポッティングされたチップのアセンブリ)
PCR装置の流れおよび制御層は、上述の通常のMSL処理に従ってアセンブルされる。マイクロ流体装置設計は、実施例1で説明されたものと同じである。同時に、30:1の成分比A:Bを有する150μmの厚さのPDMSよりなる基板層は、ブランク・シリコン・ウェハをスピン・コーティングされ、80℃で90分間硬化されることで形成される。
【0182】
PDMSの硬化されたブランク基板層(図7Aのシーリング/基板層724)は、試薬スポッティングの目標として機能する。スポットのパターンは、ブランク・ウェハ上にまだある基板に印刷される。PCR反応のためにスポッティングされる試薬は、増幅されるべき特定の遺伝子に特異的なプライマーおよびプローブである。スポッティングされた試薬は1:1:1の容積比にある300nMのβアクチンフォワード・プライマー(FP)、300nMのβアクチンリバース・プライマー(RP)、および、200nMβアクチンプローブ(Prb)を含む。ある場合では、スポッティングされた混合物を濃縮することを通じて化学的物質を更に調節することが有用である。プライマーおよびプローブの濃度が通常の顕微鏡製法値と等しく、または、僅かに高くするよう濃度を調節すると、一貫した良好な結果が得られることが分かった。従って、スポッティングされた試薬は、マクロ反応の濃度の3倍および4倍に濃縮される。試薬の濃縮は、Centrivap(加熱および排出される遠心分離機)において実施され、相対FP:RP:Prb比を変更しない。増加したスポット濃度は、試薬が1nL反応容積に再懸濁されると、正確な最終濃度を結果として生ずる。スポッティングされた試薬は、プライマーおよびプローブに制限されず、または、全て三つ(FP、RP、および、Prb)がスポッティングされなくてもよい。プローブだけ、または、プライマーの一つがスポッティングされる適用法が実施される。スポッティングされたサンプル・プライマー/プローブのセットがTaqManβアクチンおよびTaqMan RNAse−Pである実験が行われる。
【0183】
基板層へのスポッティング処理に続いて、組み合わされた流れおよび制御層(即ち、図7Aの層720および722)がスポット・パターンと整列され接触される。更に80℃での60−90分間の焼成が基板を残りのチップに結合させるために使用される。チップがアセンブルされた後、PCR反応の残留する成分(実施例1に説明)がチップの流れチャネルに注入され、チップは実施例1に説明するようにサーモサイクルされる。
【0184】
(3.結果)
PCR反応は、プライマー(フォワードおよびリバース・プライマー)およびプローブ分子がスポッティングされた装置を用いて成功にかつ繰り返し実施される。反応が成功に実施されたチップからのデータの例は図10に示される。スポッティングされた試薬は、実施例1に述べたように成功したPCR反応を生じた。成功した反応は、2段階、および、3段階サーモサイクリング・プロトコルを用いて実施される。
【0185】
(C.実施例3:遺伝子型特定)
(1.はじめに)
以下の実験の目的は、本願が記載するようなマイクロ流体装置またはチップを利用して遺伝子型特定実験が行われることを示すためである。具体的には、これらの実験は、装置で行われる反応が十分な感度を有するかを決定し、βアクチン以外の他のプライマー/プローブのセットがマイクロ流体装置で実施されることを確実にするよう設計される。
【0186】
(2.方法/結果)
(i.RNaseP実験)
RNaseP TaqMan反応(Applied Biosystems;Foster City,CA)は、他のプライマー/プローブのセットが検出可能な結果を生成することを示すために実施例1に説明したマイクロ流体装置で実施された。RNaseP反応は、RNasePプライマー/プローブのセットがβアクチンプライマー/プローブのセットとは異なり単一のコピー遺伝子(2コピー/ゲノム)を検出するためより高いレベルの感度を必要とする。βアクチンは、単一のコピーβアクチン遺伝子および幾つかの擬似遺伝子を検出し、集合的に全部で約17コピー/ゲノムである。RNaseP反応は、実施例1で説明したのと同じ成分で行われるが、βアクチンプライマー/プローブのセットはRNasePプライマー/プローブのセットで置き換えられる。更に、RNasePプライマー/プローブのセットは、蛍光信号を向上させるために製造者の推奨した値の4×で使用される。VIC色素は、RNasePに対するプローブと結合され、分析はVIC/PR1比に集中される。四つの実験のうちの一つの結果は図11に示される。
【0187】
マクロTaqMan反応に対するVIC/PR1/コントロール比は1.23である。マイクロ流体装置におけるTaqMan反応に対する対応する比は1.11および1.21である。マイクロ流体装置におけるゲノムDNAサンプルの比は、99%信頼閾値レベルより上である。更に、マイクロ流体装置におけるTaqMan反応の信号強度はマクロTaqMan反応の50%および93.7%である。マイクロ流体装置におけるコントロールTaqMan反応は、.006および.012の標準偏差を有し、マイクロ流体装置にわたる反応の一貫性を示す。従って、チップにおけるTaqMan反応が1ゲノム当たり2コピーを検出するに十分に敏感であることが決定される。
【0188】
(ii.DNA希釈実験)
マイクロ流体装置におけるTaqMan反応の感度を更に決定するために、βアクチンプライマー/プローブのセットを用いてゲノムDNAの希釈度が試験された。反応の組成物は、4×DyNAzymeおよびゲノムDNAの希釈を用いて実施例1に説明したように一般的に構成される。ゲノムDNAは、0.25pg/nlに希釈され、1nl当たり約1コピーに対応する。一つの希釈シリーズの結果は図12に示される。
【0189】
ポアソン分布によると、ウェルの合計数の37%は、平均目標数が1である場合ネガティブである。ウェル番号5、6、および、7は、計算された閾値未満、従って、ネガティブである。これは、マイクロ流体装置におけるβアクチンTaqMan反応が平均で1nl当たり1コピーが検出されることを示唆する。したがって、マイクロ流体装置における反応の感度は、遺伝子型特定実験を実施するに十分である。
【0190】
(iii.遺伝子型特定実験)
マイクロ流体装置におけるTaqManが低ターゲット数を検出することができるため、SNP(一塩基多型)遺伝子型特定の予備試験がCYP2D6P450シトクロム遺伝子に対してPredetermined Allelic Discrimination kit(Applied Biosystems;Foster City,CA)を用いて実施される。キットはワイルド・タイプまたは基準対立遺伝子CYP2D6*1に対して標識されたFAM、および、CYP2D6*3突然変体または変形対立遺伝子に対して標識されたVICといった、一つのプライマー・セットおよび二つのプローブを含む。ゲノムDNAと共に、各対立遺伝子に対するポジティブコントロール、PCR生成物が実施例1で説明したように同じ条件を用いて装置で試験された。一実験からの結果は図13および14に示される。実験は、結果を有効にし、信頼性を示すために少なくとも三回繰り返される。
【0191】
図13に示すように、Al−1(対立遺伝子1、CYP2D6*1ワイルド・タイプ対立遺伝子)およびゲノムDNA(100pg/nl)は、平均でそれぞれ3.5および2.2のVIC/PR1/コントロール比を生成し、ゲノムDNAがCYP2D6*1ワイルド・タイプ対立遺伝子に対してポジティブであったことが示された。これらの値は、反応に対する閾値制限より上である。マイクロ流体装置におけるTaqMan反応の信号強度は、それぞれマクロTaqManコントロールの59%および40%である。VICチャネルでネガティブであるはずのAl−2(対立遺伝子2、CYP2D6*3突然変体または変形対立遺伝子)は、可能性として検出器のVICチャネルに漏れるFAM蛍光により幾らかの信号がコントロールより上(1.5)であることを示す。漏れは、改善された検出処理を用いて最小化される。
【0192】
Al−2ポジティブコントロールは、平均で3.0のFAM/PR1/コントロール比を提供し、これは、マクロTaqMan信号の37%であり、計算された閾値制限より上である(図14参照)。ゲノムサンプルはCYP2D6*3突然変体対立遺伝子に対してネガティブであり、CYP2D6*3対立遺伝子の頻度が低いため予想された結果であった。ここでも、検出器のFAMチャネルへのAl−1、VICプローブの幾らかの漏れが見られた。全体的に、SNP検出反応はマイクロ流体装置において成功であった。
【0193】
(D.実施例4:ゲル電気泳動によるPCRの検証)
(1.はじめに)
DNAの増幅がマイクロ流体装置において起こっていたことを証明するための別の方法として、ゲル電気泳動によりPCR生成物を検出する実験を行った。PCR反応の組成物は、実施例1に説明した通りだが、TaqManプローブが省略されβアクチンフォワード・プライマーはFAMと結合される。
【0194】
(2.手順)
(i.マイクロ流体装置)
MSL処理を用いて加工された三層マイクロ流体装置は、本実施例において説明する実験を行うために設計され加工され、図15は設計の概略図を示す。装置1500は、一般的にサンプル領域1502および制御領域1504を含む。サンプル領域1502は、入口ビア1510および出口ビア1512を含む流れチャネル1506に沿ってアレイされた長方形によって表される341の1nl反応部位1508を含む。制御領域1504は、それぞれ長方形によって表される10の1nl反応部位1518、および入口ビア1516を含む三つの制御流れチャネル1514を含む。制御ライン1522のネットワークは、十分な圧力が入口ビア1524に加えられたときに各反応部位1508、1518を隔離する。一連のガード・チャネル1520は、反応部位1508、1518から液体が蒸発することを防止するために含まれる。装置は、実施例1に示すように三層装置である(図7A参照)。チップ全体がカバースリップの上に配置される。
【0195】
(ii.実験設定)
マイクロ流体装置1500は、充填され実施例1で説明したように3温度プロフィールを用いてサーモサイクリングされる。残留する反応サンプルは、マイクロ流体装置1500に対するものと同じサーモサイクリング・プロフィールでGeneAmp9700においてサーモサイクリングされる。この反応生成物を、サーモサイクリングの完了後に回収した。増幅されたDNAを回収するために、3μlの水がサンプル入口ビア1510に注入され、3−4μlの生成物が出口ビア1512から取り出される。装置1500およびマクロ反応からの反応生成物は、過剰なヌクレオチドおよびプライマーを除去するために、DNAエキソヌクレアーゼIおよびシュリンプアルカリホスファターゼよりなる2μlのExoSAP−IT(USB,Cleveland,OH)で処理される。マクロ生成物は、1:10から1:106に希釈される。装置1500からの生成物は、脱水され、4μlのホルムアミドに再懸濁される。
【0196】
(3.結果)
ネガティブコントロールと共に両方の生成物がポリアクリルアミド・ゲルで分析される。図15は、ゲル電気泳動結果を示す。長さで294塩基対の適当なサイズのDNAバンドが図16に示される。
【0197】
マクロ反応からの生成物は、ゲルの左側に示され、βアクチンPCR生成物の予想されたサイズである約294の塩基対に対応する。ネガティブコントロールは、PCR生成物に欠いている。同様に、装置から導出される生成物は、予想されたβアクチンPCR生成物を提供する。従って、ターゲットDNAはマイクロ流体装置で増幅される。
【0198】
(E.実施例5:大量分割)
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、分子生物学において重要なツールである。その感度(DNAの単一分子の増幅)、特異性(単一塩基不適合の区別)、および、ダイナミックレンジ(リアルタイム機器で105)の組み合わせにより、存在する分析ツールの中の最も有力なものの一つである。PCRパフォーマンスが、反応容積が減少すると改善されたことを示し、1反応当たり90pLの容積および単一のテンプレート分子感度において単一のマイクロ流体チップにおいて21000の同時PCR反応が実施された。
【0199】
図17a−図17dは、単一バンクおよび二重バンク分割マイクロ流体装置を示し、多層ソフト・リソグラフィ(MSL)(1)は、大量の隔離された容積に幾つかの液体サンプルそれぞれを大量分割するために活性弁を用いるエラストマー・マイクロ流体チップを作製するために使用する。マイクロ流体装置1701(図17b)の分岐された分割チャネルシステム1705と連通している入口1703にサンプルを注入した後、各サンプルの2400 90pL容積1709が簡単なマイクロ流体チャネルに沿って(図17d)離間されている弁1707を閉じることで隔離される。チップ装置は、平板サーモサイクル器でサーモサイクルされ、市販されている蛍光読み取り器で画像化される。
【0200】
テンプレートDNAの濃度を変化させて、ポジティブのTaqmantm信号を提供するウェルの数を測定することでチップにおいてPCRのパフォーマンスを検定した。1ウェル当たりのコピーの平均数が低いときにデジタル増幅が見られることが分かった(図18aおよび18b)。ロバストなポジティブおよび明らかにネガティブの信号の混合は、1ウェル当たりのコピーの平均数が1未満であるときにも見られ、ターゲットの単一のコピーでも良好な増幅を提供することを示唆している。ポジティブのウェルの数は、ポアソン分布(図19)によりターゲットが1コピー以上となるよう計算されたウェルの数と一致している。この結果は、本システムがターゲットの単一のコピーからも一貫した増幅を提供することを確認する。マイクロ流体TaqmantmPCRからの蛍光信号強度は、巨視的反応が1反応当たり104より多くのテンプレートコピーを含むとしても、同じDNA濃度で巨視的PCR反応と匹敵する。
【0201】
この顕著な忠実度の主な原因は、90pL容積におけるターゲット:単一分子の有効的濃度が5uL容積における単一分子よりも55,000倍濃縮されることと考える。ターゲットの分子の数ntが変化せず(即ち、nt=1)、副反応を発生し得る分子の数ns(即ち、サンプルにおけるプライマー−ダイマーおよび非相補的DNA配列)が容積に対して線形比例(即ち、ns∝V)するため、ターゲット対副反応の比は、容積に対して反比例する(nt/ns∝1/V)。副反応がPCRの失敗の主な原因であるため(4)、反応の容積を減少させる利点が明らかである。
【0202】
テンプレートの単一のコピーからのPCR増幅は、前に報告されている(5)。しかしながら、巨視的容積における単一のコピーから信頼のある増幅を実現する現在の方法は、変更されたサーモサイクリング・プロトコル(例えば、長い延長時間、多数のサイクル)、ミスプライミングおよび非特異的増幅に対する予防措置(例えば、「ホット・スタート」PCR(ポリメラーゼの熱活性)、「ブースタ」PCR、非特異的ハイブリダイズを減少させるための添加物等)をしばしば必要とし、二回のPCRでほぼ常に行われ、第1のPCRの部分標本は第2の反応におけるテンプレートとして使用される。反対に、本システムは、既成のプライマーおよびプローブと、一回の標準サーモサイクリング・プロトコルといった標準条件を用いて単一のコピーから信頼のある増幅を実現する。完全に囲まれると、環境汚染に対して実質的に弱くなくなる。同時に大量な数のPCR反応を行う能力は、巨視的容積(21,000反応を有する1チップに対して219個の別個の96ウェル板、および、関連する時間、機器、および、トラッキング・インフラストラクチャ)と比較して明確なロジスティカル、コスト、および、時間の利点を提供する。
【0203】
デジタルPCR読み取りとのこの大量分割の原理は、サンプルにおけるターゲットの濃度の絶対定量化に使用されてもよい。例えば、特定の対立遺伝子または複数の対立遺伝子に対してポジティブを提供するウェルの数を単に数えることでゲノムDNAの溜められたサンプルを遺伝子型特定するために使用される。副反応に対する向上された抵抗により、癌の検出に関連する問題である、ワイルド・タイプのDNAの背景で突然変体を量子化することに有用であるべきである。分割による濃度の一般的な原理は、単一の分子、細菌、ウイルス、または、細胞の検出が関心である他の反応においても有用である(例えば、プロテイン検出に対するELISA反応)。デジタルPCRは、“Method of sampling, amplifying and quantifying segmenet of nucleic acid, polymerase chain reaction assembly having nanoliter−sized chambers and methods of filling chambers”なる名称のBrown,et al.、米国特許第6,143,496号、および、“Digital PCR”なる名称のVogelstein,et al.による米国特許第6,446,706号に開示され、それぞれ本願で参照として全体的に組み込む。マイクロ流体を用いて実現可能な小容積は、大規模な平行化および非常に高いターゲット対背景濃度比を可能にする。高いターゲット対背景比により、単一分子増幅忠実度を可能にする。これらの要因は、PCRに関して小さい方が実際によいことを示唆する。
【0204】
本発明は、マイクロ流体環境においてデジタルPCRを行う方法および装置を提供し、流体チャネルを中に備えるマイクロ流体装置を提供するステップであって、上記流体チャネルが二つ以上の関連する弁を有し、弁は作動されると流体チャネルを二つ以上の反応部位または室に分割することができるステップと、少なくとも一つのターゲット核酸ポリマーを含むサンプルを導入するステップと、流体サンプルを二つ以上の部分に分割するよう弁を作動するステップであって、少なくとも一つの部分がターゲット核酸ポリマーを含み、別の部分がターゲット核酸ポリマーを含まないステップと、ターゲット核酸ポリマーを増幅するステップと、ターゲット分子を含む流体チャネルの部分の数を決定するステップとを有する。好ましい実施形態では、マイクロ流体装置はエラストマー材料を有し、より好ましくは、エラストマー材料を有する少なくとも一枚の層を有する。ある好ましい実施形態では、マイクロ流体装置は更に湾曲可能な膜を有し、湾曲可能な膜は流体チャネル内の流体の流れを制御するおよび/または流体チャネルの一部分を別の部分から分割するために流体チャネルの内外に湾曲し、好ましくは、湾曲可能な膜はチャネルまたは窪みが中に形成されたマイクロ流体装置の層と一体であり、更に、好ましくは、湾曲可能な膜はマイクロ流体装置の第1の層における第1のチャネルが第2の層における第2のチャネルによって重畳される部位に形成される。幾つかの実施形態では、サンプル流体は、増幅反応を行うのに必要な全ての成分を含み、他の実施形態では、マイクロ流体装置はサンプル流体が導入される前に増幅反応の少なくとも一つの成分を含む。幾つかの実施形態では、マイクロ流体装置は、更に、好ましくは、マイクロ流体装置の反応部位または室内で空間的にアレイされている複数の異なる核酸ポリマーである、ターゲット核酸ポリマーの少なくとも一部分と相補的な一つ以上の核酸ポリマーであることが好ましい検出試薬を有する。
【0205】
増幅は、PCRのようなサーモサイクリング反応によって、または、等温線増幅スキームを教授する目的で本願に参照として全体的に組み込まれるUS2003/0138800A1として公開されるVan Ness,et al.による米国特許出願第10/196,740号に開示されるような等温反応によって実現される。
【0206】
次の参考文献は、全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込まれる:Unger,et al.、Science 288, 113−116(2000).
サンプル・チャネルおよび制御ラインは、「ブラインド充填」で充填され、PDMSは、十分にガス透過性であるため、数psiで加圧された液体はチャネルからガスを排出し、液体で完全に充填される。全ての目的のために本願で参照として組み込まれるHansen,et al.,PNAS99,16531−16536(2002)を参照する。
【0207】
人間のβアクチン遺伝子の294bpセグメントは、5’エクソヌクレアーゼ検定(Taqman)を用いて増幅される。フォワードおよびリバース・プライマー・配列はそれぞれ5’−TCACCCACACTGTGCCCATCTACGA3’および5’−CAGCGGAACCGCTCATTGCCAATGG3’である。TAMRAベースのFRETプローブ・配列5’−(FAM)ATGCCC−X(TAMRA)−CCCCCATGCCATCCTGCGTp−3’。データは、多くのこれらプライマー−プローブのセットが市販されているため、ダーク・消光剤ベースのプローブを用いて得られる。反応は、1xのTaqman緩衝液A(50mM KCl、10mM トリスHCl、0.01M EDTA、60nM Passive Reference 1、pH8.3)、4mM MgCl2、200nM dATP、dCTP、dTTP、400nM dUTP、300nMフォワード・プライマー、300nMリバース・プライマー、200nMプローブ、0.01U/uL アンペラーゼUNG(全てApplied Biosystems, Foster City, CAから)、0.2U/uL DyNAzyme(Finnzyme,Espoo、Finland)、0.5%トリトン−x−100、0.8ug/ulゼラチン(Calbiochem,San Diego,CA)、5.0%グリセロール、脱イオンH2O、および、人間の雄性ゲノムDNA(Promea)を含む。
【0208】
次の参考文献は、全ての目的のために本願で参照として組み込まれる:定量的PCR技術、Editor,Francois Ferre、Birkauser,Boston, MAp97−110,1998;LJ McBride, K Livak, M Lucero,et al.による“Gene Quantification”に関する章。E.T.Lagally,I.Medintz,R.A.Mathies,Anal Chem73(3),565−570(2001)並びにB.Vogelstein,K.W.Kinzler,PNAS 96,9236−9241(1999)。
【0209】
本願記載の実施例および実施形態は、例示目的であり、それを鑑みた様々な変更態様および変更は当業者に示唆され、本願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるべきである。本願で引用する全ての公報、特許、および、特許出願は、個々の公報、特許、および、特許出願が参照として特定的に且つ個別的に組み込まれるように全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込む。
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本通常の特許出願は、全ての目的および特定の目的のために本願で参照として組み込むUngerらによる2003年4月3日に出願された米国仮特許出願第60/460,634号に関して35U.S.C.§119(e)の下で優先権主張する。
【0002】
(関連出願の引用)
本願は、全ての目的および特定の目的のために本願で参照として各々を組み込む、2002年6月24日に出願された米国仮特許出願第60/391,529号、および2001年11月30日に出願された米国仮特許出願第60/335,292号に関して、35U.S.C.§119(e)の下で優先権主張する、2002年11月27日に出願された米国特許出願番号10/306,798に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
最近では、予備的および分析的適用法の両方に対して化学的および生化学的分析および合成を実施するためにマイクロ流体システムを開発し製造する試みがなされている。このような装置を形成する目的は、マクロ・スケールで行われる分析および合成より優れた、小型化から実現され得る顕著な利点により生ずる。このような利点は、分析または合成を行うために利用される装置に対する時間、費用、および、空間要件における実質的な減少を含む。追加的には、マイクロ流体装置は、自動化されたシステムとの使用に適合される可能性を有し、それにより、人間の介入における減少により、更なる費用低下およびオペレータ・エラーの減少という、更なる追加的利点を提供する。マイクロ流体装置は、例えば、キャピラリー電気泳動、ガス・クロマトグラフィー、および、細胞分離を含む様々な用途に使用されることが提案される。
【0004】
しかしながら、これら利点の実現は、これまで製造されてきたマイクロ流体装置と関連する様々な複雑な状態によりしばしば妨げられてきた。例えば、現在のマイクロ流体装置の多くはシリカベースの基板から製造される。これら材料は機械加工するのが困難且つ複雑であるため、このような材料から形成される装置は壊れやすい。更に、多数の既存のマイクロ流体装置を通る流体の運搬は、装置中を制御された状態で流体を運搬するために複雑な電場の調整を必要とする。
【0005】
従って、マイクロ流体装置で実現し得る前述の利点および既存の装置の現在の制限を鑑みて、様々な化学的および生化学的分析を行うのに使用されるよう設計されるマイクロ流体装置の必要性がまだある。現代の生化学におけるその重要性により、様々な核酸増幅反応を行うことに利用され得る一方で他のタイプの分析における使用にも十分な汎用性を有する装置が特に必要である。
【0006】
核酸増幅を行う能力を有する装置は、様々な有用性を有する。例えば、このような装置は、関心のある特定のターゲット核酸がサンプル中に存在するかしないかを決定するために分析ツールとして使用され得る。従って、装置は、特定の病原体(例えば、ウイルス、細菌、または、菌類)の存在、および、識別目的(例えば、父子および法医用途)を試験するために利用される。このような装置は、特定の病気または遺伝的障害と前に相関された特定の核酸を検出または特徴付けるために利用され得る。分析ツールとして使用されるとき、装置は、遺伝子型特定分析および発現分析遺伝子発現分析(例えば、差別的遺伝子発現研究)を行うためにも利用される。あるいは、装置は、増幅された生成物のシーケンシング、細胞タイピング、DNAフィンガープリント法等のような更なる分析のために十分な核酸を増幅するよう予備方法で使用され得る。増幅された生成物は、ベクターに挿入して所望のプロテイン生成物の生産のために細胞を形質転換させるよう使用されるように、様々な遺伝工学的用途においても使用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本願ではマイクロ流体分析を行う様々な装置および方法が提供され、核酸増幅反応のようなサーモサイクリング反応を行うために利用される装置が含まれる。装置は、エラストマー構成要素を含み、ある場合では、装置の殆どまたは全てがエラストマー材料よりなる点で従来のマイクロ流体装置と異なる。
【0008】
ある装置は、装置中の溶液の流れを調整するために一つ以上のエラストマー弁を含む装置でサーマルサイクリング反応(例えば、PCR)を行うために設計される。従って、この設計の装置で増幅反応を行う方法も提供される。
【0009】
幾つかの装置は、反応部位として機能する領域を含むブラインド流れチャネルを含む。ある装置は、エラストマー材料内に形成される流れチャネル、および、流れチャネルと流体連通している複数のブラインド流れチャネルを含み、各ブラインド流れチャネルの領域が反応部位を画成している。装置は、各ブラインド流れチャネルの上に重なり交差する一つ以上の制御チャネルを含み、エラストマー膜は一つ以上の制御チャネルを各交点においてブラインド流れチャネルから分離させる。このような装置におけるエラストマー膜は、作動力に応答してブラインド流れチャネルにそらされるか引込まれるよう配置される。装置は、任意には、エラストマー材料に形成され、流れチャネルおよび/または一つ以上の反応部位の上に重なる複数のガード・チャネルを更に含む。ガード・チャネルは、中に流体を流れさせて装置の流れチャネルおよび反応部位からの蒸発を減少させるよう設計される。追加的には、装置は、各反応部位内に堆積される一つ以上の試薬を任意には含む。
【0010】
ある装置では、流れチャネルは、複数の流れチャネルの一つであり、各流れチャネルはそこから分岐している多数のブラインド流れチャネルと流体連通している。この設計の装置のうち、ある場合では、流体が単一の入口を介して各反応部位に導入され得るよう複数の流れチャネルが互いと相互接続される。しかしながら、他の装置では、複数の流れチャネルは、一つの流れチャネルに導入される流体が別の流れチャネルに流れないよう互いから隔離され、各流れチャネルは、一端または両端において入口を含み、この入口に流体が導入される。
【0011】
他の装置は、少なくとも50部位/cm2の密度を有する反応部位のアレイを含み、反応部位は、典型的には、エラストマー材料内で形成される。他の装置は、例えば、少なくとも250、500、または、1000部位/cm2のようなより高い密度を有する。
【0012】
更に、このような装置は、エラストマー基板内に形成される反応部位を含み、そこで反応を行うための試薬が非共有結合で固定される。試薬は、基本的に任意のタイプの反応を行うための一つ以上の試薬であり得る。幾つかの装置における試薬は、核酸増幅反応を行うための一つの試薬を含む。従って、幾つかの装置では、試薬はプライマー、ポリメラーゼ、および、一つ以上のヌクレオチドを有する。他の装置では、試薬は核酸テンプレートである。
【0013】
様々なマトリクスまたはアレイ・ベースの装置も提供される。これら装置の幾つかは、(i)エラストマー基板に形成される第1の複数の流れチャネル、(ii)反応部位のアレイを画成するよう第1の複数の流れチャネルと交差する、エラストマー基板に形成される第2の複数の流れチャネル、(iii)各反応部位内の溶液を他の反応部位の溶液から隔離するよう作動される、第1のおよび第2の複数の流れチャネル内に配置される複数の隔離弁、および、(iv)溶液の蒸発を防止するために一つ以上の流れチャネルおよび/または一つ以上の反応部位の上に重なる複数のガード・チャネルを含む。
【0014】
前述の装置は、温度調整(例えば、核酸分析のサーモサイクリング)を伴うものを含む、幾つかの異なるタイプの反応を行うために利用され得る。あるブラインド・チャネル・タイプ装置で行われる方法は、エラストマー材料内に形成される流れチャネル、および、流れチャネルと流体連通している複数のブラインド流れチャネルを含むマイクロ流体装置を提供することを含み、各ブラインド流れチャネルの端領域が反応部位を画成する。少なくとも一つの試薬が反応部位それぞれに導入され、反応は一つ以上の反応部位で検出される。方法は、任意には、反応部位内で少なくとも一つの試薬を加熱することを含む。従って、例えば、同方法は、核酸増幅反応のための構成要素を導入し、増幅された生成物を形成するために構成要素をサーモサイクリングすることを伴う。
【0015】
他の方法は、一つ以上の反応部位を有するマイクロ流体装置を提供することを伴い、各反応部位はエラストマー基板に非共有結合で堆積される分析を行うための第1の試薬を有する。第2の試薬は、一つ以上の反応部位中に導入され、それにより、第1のおよび第2の試薬は混合され反応混合物を形成する。一つ以上の反応部位における第1と第2の試薬間の反応は、その後検出される。
【0016】
更に別の方法は、基板内に形成され、少なくとも50部位/cm2の密度を有する反応部位のアレイを備えるマイクロ流体装置を提供することを伴う。少なくとも一つの試薬が各反応部位に導入される。続いて、一つ以上の反応部位における反応が検出される。
【0017】
更に、別の方法は、エラストマー基板内に形成される少なくとも一つの反応部位、および、エラストマー基板内に形成される複数のガード・チャネルを備えるマイクロ流体装置を提供することを伴う。少なくとも一つの試薬が各反応部位に導入され、反応部位内で加熱される。流体は、加熱前または加熱中にガード・チャネル中を流れ、少なくとも一つの反応部位からの蒸発を減少させる。少なくとも一つの反応部位内での反応がその後検出される。
【0018】
装置から流体の蒸発を減少させるよう設計される追加的な装置は更に提供される。一般的に、このような装置は、エラストマー基板に形成されるマイクロ流体ネットワークの一部である空洞、および、空洞の上に重なり、エラストマー膜によって空洞から離間されている複数のガード・チャネルを有する。このような装置におけるガード・チャネルは、(i)溶液が中を流れることを可能にし、(ii)ガード・チャネルに対する作動力を加える際の膜の反れによる空洞への溶液の流入、流出、または、その中の流れにおいて相当な減少が起こらないようなサイズにされる。他のこのような装置は、(i)一つ以上の流れチャネルおよび/または一つ以上の反応部位、および、(ii)マイクロ流体システムの上に重なり、そこからエラストマーによって離間される複数のガード・チャネルを含み、ガード・チャネル間のスペーシングは、1μm乃至1mmである。他の装置では、スペーシングは、5μm乃至500μmであり、他の装置では10μm乃至100μmであり、更に他の装置では40μm乃至75μmである。
【0019】
あるマイクロ流体装置の反応部位において核酸分析を行うための組成物も提供される。ある組成物は、エラストマー材料上のプロテイン結合部位を遮断する物質および洗浄剤を一つ以上含む。遮断物質は、プロテイン(例えば、ゼラチンまたはウシ血清アルブミン(BSA)のようなアルブミン)よりなる群から典型的には選択される。洗浄剤は、例えば、SDSまたはトリトンでもよい。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
流体チャネルを通じて互いと流体連通している第1の端および第2の端を有する流体チャネルと、
前記チャネルと連通している入口であって、サンプル流体を導入する入口と、
弁であって、作動されると前記第1のチャネルの端を前記第2のチャネルの端から流体的に分離させる弁と、を備え、
前記サンプル流体が前記流体チャネルに導入され、前記弁が作動されると、前記サンプル流体が別個のサンプル流体部分に分割される、マイクロ流体装置。
(項目2)
前記チャネルと連通する出口であって、前記サンプル流体の幾らかまたは全てを除去する出口とを更に有する、項目1記載のマイクロ流体装置。
(項目3)
第2の弁であって、作動されると前記出口と前記流体チャネルとを流体的に隔離させる第2の弁を更に有する、項目2記載のマイクロ流体装置。
(項目4)
前記サンプル流体がブラインド充填によって前記流体チャネルに導入される、項目1記載のマイクロ流体装置。
(項目5)
前記第2の弁が作動される間に前記サンプル流体がブラインド充填によって前記流体チャネルに導入される、項目3記載のマイクロ流体装置。
(項目6)
脱作動されると、前記第2の弁が前記流体チャネルから幾らかまたは全ての前記サンプル流体の除去を可能にする、項目3記載のマイクロ流体装置。
(項目7)
ある条件に対する反応のためのサンプル流体を分析する方法であって、
(i)マイクロ流体装置を提供するステップであって、前記マイクロ流体装置が、
流体チャネルを通じて互いと流体連通している第1の端および第2の端を有する流体チャネル、
前記チャネルと連通している入口であって、サンプル流体を導入する入口、および、
弁であって、作動されると前記第1のチャネルの端を前記第2のチャネルの端から流体的に分離させる弁を含み、
前記サンプル流体が前記流体チャネルに導入され、前記弁が作動されると、前記サンプル流体が別個のサンプル流体部分に分割される、ステップと、
(ii) 前記入口に前記サンプル流体を導入するステップであって、前記サンプル流体が前記第1のチャネルの端および前記第2のチャネルの端を充填する、ステップと、
(iii) 前記サンプル流体を前記第1のチャネルの端および前記第2のチャネルの端において別個の部分に分離するよう前記弁を作動するステップと、
(iv) 前記条件に前記サンプル流体を露出するステップと、
(v) 前記条件が前記反応を発生するか否かを決定するために前記サンプル流体を分析するステップと、を有する方法。
(項目8)
前記マイクロ流体装置が、前記チャネルと連通している出口であって、前記サンプル流体の幾らかまたは全てを除去する出口を更に有し、
前記方法が、前記露出ステップの後に前記流体チャネルから前記サンプル流体を除去するステップを更に有する、項目7記載の方法。
(項目9)
前記マイクロ流体装置が、第2の弁であって、作動されると前記出口と前記流体チャネルとを流体的に隔離させる第2の弁を更に有し、
前記サンプル流体を前記流体チャネルにブラインド充填するために、前記導入ステップの前に前記第2の弁を作動するステップを更に有する、項目8記載の方法。
(項目10)
前記サンプル流体がブラインド充填によって前記流体チャネルに導入される、項目7記載の方法。
(項目11)
前記サンプルが、増幅可能な核酸ターゲットを更に有し、前記条件が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件であり、そして前記反応が、結果としてPCR生成物の形成を生ずる、項目7記載の方法。
(項目12)
前記PCRがデジタルPCRである、項目7記載の方法。
(項目13)
前記反応が、二つの異なる色結果を発生する、項目11記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】垂直方向および水平方向の流れチャネルが交差するマトリクス設計を有する典型的な装置の概略図である。
【図1B】図1Aに示す装置の一部分の拡大図であり、その動作を示す図である。
【図1C】図1Aに示す装置の一部分の拡大図であり、その動作を示す図である。
【図1D】図1Aに示す装置の一部分の拡大図であり、その動作を示す図である。
【図1E】図1Aに示す装置の一部分の拡大図であり、その動作を示す図である。
【図1F】サンプルの蒸発を減少させるようガード・チャネルを利用する別の典型的なマトリクス設計装置の概略図である。
【図2】典型的なブラインド・チャネル装置の平面図である。
【図3A】別の典型的なブラインド・チャネル装置の平面図である。
【図3B】図3Aに示される一般的な設計のユニットに基づくより複雑なブラインド・チャネルの概略図である。
【図3C】図3Bに示す装置の一領域の拡大図であり、この特定の設計におけるガード流れチャネルの配列を示す図である。
【図4】ハイブリッド設計を利用する装置の平面図である。
【図5】サーモサイクリング反応を行うためのランプ・アップおよびランプ・ダウン時間を示すチャートである。
【図6】装置のコーナーにおける反応部位内の試薬の正しい配置を示すブラインド・チャネル・タイプの装置における反応部位内のスポッティングされた試薬の位置を示す図である。
【図7A】別のハイブリッド・タイプのマイクロ流体装置の断面図であり、実施例1−4を説明する実験を行うために使用される装置のタイプを示す図である。
【図7B】別のハイブリッド・タイプのマイクロ流体装置の概略図であり、実施例1−4を説明する実験を行うために使用される装置のタイプを示す図である。
【図8】平均FAM/PR1/コントロール比が六つの異なるβアクチンTaqMan反応に対してプロッティングされた棒グラフである。反応は、図7B(無地の棒)に示されるマイクロ流体装置(チップ)およびマクロTaqMan反応(縞模様の棒)においてサーモサイクリングされる。コントロールは、DNAを有さない第1および第4の棒の組である。エラーの棒は、比の標準偏差である。
【図9】典型的なピン・スポッティング処理を示す図である。試薬は、ソース(マイクロタイター板)から取られ、ロードされたピンを基板と接触させることで印刷される。洗浄ステップは、脱イオン水においてかき混ぜ、続いて、真空乾燥することを含む。
【図10】実施例2に説明する実験に基づいて実施例1(図7B参照)を説明するマイクロ流体装置(チップ)に対するFAM信号強度を示す棒グラフである。データは、基準レーンに対してFAM/PR1によってスケーリングされた形態(FAM信号/PR1信号)にある。エラーの棒は、レーンに沿った偏差である。「1.3X」および「1X」の表示は、それぞれの公称の値に関連して、スポッティングされたプライマーおよびプローブの濃度である。
【図11】マクロTaqMan(縞模様の棒)およびマイクロ流体装置におけるTaqMan反応(無地の棒)のための9−10ウェルに対する平均VIC/PF1/コントロール比を示す棒グラフである。二つのネガティブコントロール(コントロール)および100pg/nlゲノムDNAを含む二つのサンプルはプライマー/プローブの標準量の4xで上述したとおり反応成分とサーモサイクリングされる。エラーの棒は、平均比の標準偏差を表す。
【図12】マイクロ流体装置(図7B参照)の単一の流れチャネルから分岐する10個の1nlウェルそれぞれに対するFAM/PR1/コントロール比を示す棒グラフである。ゲノムDNAの量は0.25pg/nlであり、一つのウェル当たり一つのターゲットコピーを平均で生ずる。
【図13】図7Bに示されるマイクロ流体装置を用いるCYP2D6 SNPに対する平均VIC/PR1/コントロール比を示す棒グラフである。対立遺伝子1(Al−1)は、基準またはワイルド・タイプ対立遺伝子CYP2D6*1に対するVICプローブへのポジティブコントロールである。対立遺伝子2(Al−2)は、変形または突然変体対立遺伝子CYP2D6*3に対するFAMプローブへのポジティブコントロールである。コントロールはDNAテンプレートを有さない。ゲノムDNAは、100pg/nlまたは20pg/nlのいずれかで使用される。エラーの棒は、比の標準偏差である。
【図14】図7Bに示すマイクロ流体装置におけるCYP2D6 SNPに対する平均FAM/PR1/コントロール比を示す棒グラフである。サンプルは、図13および実施例3に関して説明したものと同じである。
【図15】実施例4における実験に使用されるマイクロ流体装置の概略図である。
【図16】図7Bに示すマイクロ流体装置におけるマクロPCRおよびPCR反応からのPCR生成物を含むポリアクリルアミド・ゲルを示す図である。左の結果は異なるDNA塩基対長さの大体の移行を示す。散らばっているバンドを含むレーンは、分子量マーカである。「マクロ」とラベル付けされるレーンは、異なる希釈度でのマクロ反応からのPCR生成物である。「イン−チップ」とラベル付けされるレーンは、チップで生成されるPCR生成物である。ゲル中の多数のバンドを含むレーンは、非特異的な背景信号である。
【図17a】図17a〜図17dは、弁がオフの状態および弁が作動されている状態のマイクロ流体装置を分割する二つの好ましい設計を示す図である。
【図17b】図17a〜図17dは、弁がオフの状態および弁が作動されている状態のマイクロ流体装置を分割する二つの好ましい設計を示す図である。
【図17c】図17a〜図17dは、弁がオフの状態および弁が作動されている状態のマイクロ流体装置を分割する二つの好ましい設計を示す図である。
【図17d】図17a〜図17dは、弁がオフの状態および弁が作動されている状態のマイクロ流体装置を分割する二つの好ましい設計を示す図である。
【図18a】サーモサイクリング反応が実施された後の分割されるマイクロ流体装置を示す画像である。コントロール赤信号の減算後の残留する信号を示す。
【図18b】サーモサイクリング反応が実施された後の分割されるマイクロ流体装置を示す画像である。二色画像を示す。
【図19】幾つかのポジティブのウェルに対して1つのウェル当たりのコピーの平均数を比較するグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
(I.定義)
定義されない限り、本願で使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する、当業者によって一般的に理解される意味を持つものとする。以下の参考文献は、本発明において使用される多数の用語の一般的な定義を提供する。SingletonらによるDICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY (2d ed.1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY (Walker ed.,1988);THE GLOSSARY OF GENETICS, 5TH ED., R.Riegerら(eds.),Springer Verlag(1991);およびHale&Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。本願で使用するように、以下の用語は、特定されない限り定められた意味を有する。
「流れチャネル」は、溶液が流れる流路を一般的に指す。
【0022】
「弁」といった用語は、示されない限り、流れチャネルおよび制御チャネルが交差し、作動力に応答して流れチャネルから反らされるあるいは引込められるエラストマー膜によって分離される構造を指す。
【0023】
「ブラインド・チャネル」または「行き止まりの端部のチャネル」は、入口があるが別個の出口を有さない流れチャネルを指す。従って、ブラインド・チャネルからの溶液の流入および流出は同じ位置で行われる。一つ以上のブラインド・チャネルを充填する処理は、しばしば「ブラインド充填」と単に呼ばれる。
【0024】
「隔離された反応部位」は、一般的に、装置に存在する他の反応部位と流体連通していない反応部位を指す。ブラインド・チャネルに関して使用されるとき、隔離された反応部位は、ブラインド・チャネルと関連付けられる弁によって閉鎖されるブラインド・チャネルの端にある領域である。
【0025】
「バイア」は、装置の外部ポートと一つ以上の流れチャネルとの間で流体アクセスを提供するようエラストマー装置に形成されるチャネルを指す。従って、バイアは、例えば、サンプル入力または出力として機能する。
【0026】
「エラストマー」あるいは「エラストマー性」は、当該分野において使用される一般的な意味を有する。従って、例えば、Allcockら(Contemporary Polymer Chemistry, 2nd Ed.)は、ガラス遷移温度と液化温度との間の温度で存在するポリマーとして一般的にエラストマーを説明する。エラストマー材料は、力に応答してバックボーン鎖の巻きを解くことを可能にするようポリマー鎖が簡単にねじり動きを受けるため、弾性特性を発揮し、バックボーン鎖は力がないときは前の形状をとるよう再び巻かれる。一般的に、エラストマーは、力が加えられると変形し、力が取り除かれるその元の形状に戻る。エラストマー材料によって発揮される弾性は、ヤング係数によって特徴付けられる。本願で開示するマイクロ流体装置において利用される弾性材料は、典型的には約1Pa−1TPaの間のヤング係数を有し、他の場合では約10Pa−100GPaを有し、更に別の場合では約20Pa−1GPaを有する。更に別の場合では約50Pa−10MPaを有し、またある場合では約100Pa−1MPaを有する。これらの範囲外のヤング係数を有するエラストマー材料は、特定の用途のニーズによって利用されてもよい。
【0027】
本願で開示する幾つかのマイクロ流体装置は、GE RTV615(処方物)、ビニル−シラン架橋(タイプ)シリコーン・エラストマー(ファミリー)のようなエラストマー・ポリマーから加工される。しかしながら、本マイクロ流体システムは、ポリマーのこの一つの処方物、タイプ、更には、ファミリーに制限されず、むしろ、ほぼ全てのエラストマー・ポリマーが好適である。ポリマーの化学的性質、前駆物質、合成方法、反応条件、および、潜在的な添加物の非常に多い多様性により、モノリシックなエラストマー・ミクロ弁およびポンプを形成するために使用され得る多数の可能なエラストマー・システムが存在する。材料の選択は、典型的には、実行される用途に必要な特定の材料特性(例えば、溶媒抵抗性、剛性、ガス透過率、および/または、温度安定性)に依存する。本願で開示するマイクロ流体装置の構成要素の製造において使用され得るエラストマー材料のタイプに関する追加的な詳細は、Ungerらによる(2000)Science 288:113−116、および、PCT公報WO02/43615並びにWO01/01025に記載され、全ての目的について本願で参照として全体的に組み込む。
【0028】
「核酸」「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」といった用語は、本願では、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含むがこれに限定されない任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含む。これらの用語間での長さにおける意図する区別はない。さらに、これらの用語は、分子の一次構造のみをいう。従って、ある実施形態では、これらの用語は三本鎖、二本鎖、および、一本鎖DNA、並びに、三本鎖、二本鎖、および、一本鎖RNAを含んでもよい。更に、ポリヌクレオチドのメチル化および/またはキャッピングによる修飾形態、および、ポリヌクレオチドの非修飾形態を含む。より特定的には、「核酸」「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」といった用語は、ポリデオキリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)、プリンまたはピリミジン基のN−またはC−グリコシドである任意の他のポリヌクレオチド、および、非ヌクレオチド系バックボーン(例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸(PNA))およびポリモルホリノ(NeugeneとしてAnti−Virals,Inc.,Corvallis,Oregonから市販されている)ポリマー)を含む他のポリマー、および、ポリマーがDNAおよびRNAで見つけられるように塩基の対合および塩基のスタッキングを可能にする構造においてヌクレオベースを含むとして、他の合成配列特異的核酸ポリマーを含む。
【0029】
「プローブ」は、一つ以上のタイプの化学結合を通じて、通常、相補塩基の対合、通常、水素結合形成を通じて相補配列のターゲット核酸に結合して二重構造を形成することができる核酸である。プローブは、「プローブ結合部位」に結合またはハイブリダイズする。プローブは、特に、一旦プローブがその相補ターゲットにハイブリダイズしたときにプローブの検出を容易にするよう検出可能な標識が付けられる。プローブに取り付けられる標識は、例えば、化学的または物理的手段によって検出され得る、当該分野において任意の公知の様々な異なる標識を含む。プローブに取り付けられ得る好適な標識は、放射性同位体、発蛍光団、発色団、マス・ラベル、電子密度粒子、磁気粒子、スピンラベル、化学ルミネンスを発する分子、電子化学的に活性的な分子、酵素、補因子、および、酵素基質を含むがこれらに制限されない。プローブは、サイズにおいて著しく変化する。幾つかのプローブは比較的短い。一般的に、プローブは少なくとも7乃至15ヌクレオチドの長さを有する。他のプローブは、少なくとも20、30、または、40ヌクレオチドの長さである。更に、他のプローブは幾らか長く、少なくとも50、60、70、80、90ヌクレオチドの長さである。更に、他のプローブはより長く、少なくとも100、150、200またはより長いヌクレオチドの長さである。プローブは、前述の範囲内の任意の特定の長さである。
【0030】
「プライマー」は、適当な緩衝液中で適当な温度において適当な条件下(即ち、四つの異なるヌクレオシド・トリホスフェートおよびDNAまたはRNAポリメラーゼあるいは逆転写酵素のような重合用物質が存在するとき)でのテンプレートにより指向されるDNA合成の開始点として作用することができる一本鎖ポリヌクレオチドである。プライマーの適当な長さは、プライマーの意図する使用に依存するが、典型的には、少なくとも7ヌクレオチド長さであり、より典型的には10乃至30ヌクレオチドの長さである。他のプライマーはより長く、30乃至50ヌクレオチド長である。短いプライマー分子は、一般的に、テンプレートと十分に安定したハイブリダイズ複合体を形成するためにより冷たい温度を必要とする。プライマーは、テンプレートの正確な配列を必ずしも反映させる必要はないが、テンプレートとハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。「プライマー部位」または「プライマー結合部位」といった用語は、プライマーがハイブリダイズするターゲットDNAのセグメントである。「プライマー対」は、増幅されるべきDNA配列の5’端の補体とハイブリダイズする5’「上流プライマー」、および、増幅されるべき配列の3’端とハイブリダイズする3’「下流プライマー」を含むプライマーの組を意味する。
【0031】
「完全に相補的」なプライマーは、プライマーの全長にわたって完全に相補的な配列を有し、ミスマッチがない。プライマーは、典型的には、ターゲット配列の部分(部分配列)に対して完全に相補的である。「ミスマッチ」は、プライマー中のヌクレオチドとそれと整列されるターゲット核酸におけるヌクレオチドが相補的でない部位である。プライマーに関連して使用される「実質的に相補的」といった用語は、プライマーがそのターゲット配列と完全には相補的でなく、その代わりに、プライマーが所望のプライマー結合部位においてそれぞれの鎖と選択的にハイブリダイズするに十分に相補的なだけである。
【0032】
「相補的」といった用語は、一つの核酸が別の核酸分子と同一である、または、選択的にハイブリダイズすることを意味する。ハイブリダイゼーションの選択性は、特異性の全体的な欠如よりもより選択的なハイブリダイゼーションが生ずるときに存在する。典型的には、選択的なハイブリダイゼーションは、少なくとも14−25ヌクレオチドにわたって少なくとも約55%の同一性、好ましくは、少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、更に好ましくは90%の同一性があるときに生ずる。好ましくは、一方の核酸は他方の核酸に特異的にハイブリダイズする。M.Kanehisa,Nucleic Acids Res.12:203(1984)を参照する。
【0033】
「標識」といった用語は、物理的、化学的、電磁気的、および、他の関連する分析技術によって検出できる分子または分子の特徴を指す。利用され得る検出可能な標識の例は、放射性同位体、発蛍光団、発色団、マス・ラベル、電子密度粒子、磁気粒子、スピンラベル、化学ルミネンスを発する分子、電子化学的に活性的な分子、酵素、補因子、および、核酸プローブおよび酵素基質にリンクされる酵素を含むがこれらに制限されない。「検出可能に標識」といった用語は、物質が標識と結合する、または、物質が別の標識と結合されることなく検出されることを可能にする幾らかの固有の特徴(例えば、サイズ、形状または色)を有することを意味する。
【0034】
「多型性マーカ」または「多型性部位」は、分岐が起こる遺伝子座である。好ましいマーカは、少なくとも二つの対立遺伝子を有し、それぞれ選択された集団の1%より大きい、より好ましくは10%または20%より大きい頻度で生ずる。多型性遺伝子座は、一つの塩基対ほどに小さくてもよい。多型性マーカは、制限フラグメント長さ多型、繰り返し配列数多型(VNTR’s)、超可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド繰り返し、トリヌクレオチド繰り返し、テトラヌクレオチド繰り返し、単純配列繰り返し、および、Aluのような挿入エレメントを含む。第1の識別された対立形質は、基準形態として任意には指定され、他の対立形質は代替的なまたは変形対立形質として指定される。選択された集団において最も頻繁に生ずる対立形質は、ワイルド・タイプとしてしばしば称される。二倍体生物は、対立形質に対して同型接合体または異型接合体でもよい。ダイアレル多型は二つの形質を有する。トリアリル多型は三つの形質を有する。
【0035】
「一塩基多型」(SNP)は、対立遺伝子配列間の変動の部位である単一ヌクレオチドによって占有される多型性部位で生ずる。部位は、通常、対立遺伝子の非常に保存された配列(例えば、集団の1/100または1/1000メンバ未満で変化する配列)によって先行される、および、後続される。一塩基多型は、通常、多型性部位で、あるヌクレオチドを別のものに置換することにより生ずる。遷移は、一つのプリンを別のプリンで、または、一つのピリミジンを別のピリミジンで置き換えることである。トランスバージョンは、プリンをピリミジンによって、または、ピリミジンをプリンによって置き換えることである。一塩基多型は、基準対立遺伝子に対するヌクレオチドの欠失、または、ヌクレオチドの挿入から生ずる。
【0036】
「試薬」は、反応で使用される任意の物質を広義には含む。試薬は、自身がモニタリングされ得る単一の物質(例えば、加熱されるときにモニタリングされる物質)、または、二つ以上の物質の混合物を含み得る。試薬は、生きている(例えば、細胞)または生きていない。核酸増幅反応に対する典型的な試薬は、緩衝剤、金属イオン、ポリメラーゼ、プライマー、テンプレート核酸、ヌクレオチド、標識、染料、ヌクレアーゼ等を含むがこれらに制限されない。酵素反応に対する試薬は、例えば、基質、補因子、結合酵素、緩衝剤、金属イオン、阻害物質、および、活性化物質を含む。細胞ベースの反応に対する試薬は、細胞、細胞特異的染料、および、細胞受容体に結合するリガンド(例えば、作用薬および拮抗薬)を含むが制限されない。
【0037】
「リガンド」は、アンチリガンドによるリガンドのいずれかの部分の認識により、リガンドに特異的にまたは非特異的に結合する別の分子(即ち、「アンチリガンド」)が存在する任意の分子である。
【0038】
(II.概要)
固有の流れチャネル構造を有する幾つかの異なるマイクロ流体装置(チップともしばしば呼ばれる)が本願では提供され、様々な高スループット分析を行うためにこのような装置を用いる方法も提供される。装置は、温度制御を必要とする分析、特に、ヒートサイクリングを伴う分析(例えば、核酸増幅反応)において使用するよう設計される。マイクロ流体装置は、従来のマイクロ流体装置よりも著しく小さいフット・プリントを装置に与え、他の機器と容易に一体化され自動分析を提供することを装置に可能にさせるある設計特徴を組み込む。
【0039】
幾つかのマイクロ流体装置は、本願で「ブラインド・チャネル」または「ブラインド充填」として典型的には呼ばれる設計を利用し、定義の部分で示されるように、溶液が一端でブラインド・チャネルを入り出るよう行き止まりの端部または隔離された端を有する(即ち、ブラインド・チャネルに対して別個の入口および出口がない)流れチャネルである、複数のブラインド・チャネルを有することで部分的に特徴付けられる。これらの装置は、隔離された反応部位を形成するためにブラインド・チャネルの領域を隔離するよう各ブラインド・チャネルに対して単一の弁だけを必要とする。このタイプの装置の製造中に、分析を行うための一つ以上の試薬は、反応部位で堆積され、それによって、結果として入力および出力の数において著しく減少される。追加的には、ブラインド・チャネルは、全ての反応部位が単一のまたは限定された数のサンプル入力から充填されるようにチャネルの相互接続されるネットワークに接続される。入力および出力における複雑性の減少、および、各反応部位を隔離するために単一の弁だけを使用することで、反応部位に利用可能な空間が増加される。従って、これら装置の特徴は、各装置が多数の反応部位(例えば、何万まで)を含んでもよく、高い反応部位密度(例えば、1000−4000反応部位/cm2以上)を実現し得ることを意味する。個別的に且つ集合的には、これらの特徴は従来のマイクロ流体装置と比べたこれら装置のサイズにおける著しい減少とも直接的に言い換えられる。
【0040】
本願で開示される他のマイクロ流体装置はマトリクス設計を利用する。一般的に、このタイプのマイクロ流体装置は、交差点における反応部位のアレイを画成するために複数の交差する水平方向および垂直方向の流れチャネルを利用する。従って、この設計の装置はアレイまたは反応部位を有し、しかしながら、本設計では多数のサンプルを収容するために多数のサンプル入力および対応する出力がある。切り替え可能な流れアレイ構造と呼ばれる弁システムは、水平方向または流れチャネルだけを溶液が選択的に流れることを可能にし、それにより、マトリクスにおける様々な流れチャネルの切り替え可能な隔離を可能にする。ブラインド・チャネル装置が限定された数のサンプルを用いて異なる条件下で多数の分析を行うよう設計される一方で、マトリクス装置は限定された数の条件下で多数のサンプルを分析するよう構成される。他の装置はこれら二つの一般的な設計のタイプのハイブリッドである。
【0041】
説明するマイクロ流体装置は、更に、エラストマー材料から作製された流れチャネル、制御チャネル、弁および/またはポンプのような様々な構成要素を利用することである程度特徴付けられる。幾つかの場合では、装置全体が本質的にエラストマー材料よりなる。その結果、このような装置は、シリコンベースの材料から形成される大部分の従来のマイクロ流体装置から形態および機能において著しく異なる。
【0042】
装置の設計は、幾つかの異なる加熱システムと組み合わせて利用することを可能にする。従って、装置は、温度制御を必要とする様々な分析を行うことに有用である。追加的には、加熱用途に用いられるマイクロ流体装置は、反応部位からのサンプルの蒸発を最小にするために更なる設計特徴を組み込む。このタイプの装置は、一般的に、装置が形成されるエラストマー材料内で水蒸気圧力を増加させるために水が流れるエラストマー装置内に形成される幾つかのガード・チャネルを含み、それにより、反応部位からのサンプルの蒸発が減少される。
【0043】
装置のあるアレイフォーマットは、装置が高いスループットを実現することができることを意味する。集合的に、高いスループットおよび温度制御能力により、多数の核酸増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応−PCR)を実施することに装置を有用にする。このような反応は、装置の利用、特に、温度制御を必要とする任意の反応における使用を示すものとして本願で詳細に説明にされる。しかしながら、装置はこれら特定の用途に制限されないことは理解されるであろう。装置は、幅広い他のタイプの分析または反応において利用され得る。その例は、プロテイン−リガンド相互作用および細胞と様々な化合物間の相互作用の分析を含む。更なる例は、後に挙げられる。
【0044】
(III.マイクロ流体装置の一般的構造)
(A.ポンプおよび弁)
本願に開示するマイクロ流体装置は、エラストマー材料から少なくとも部分的に典型的には構成され、単一のまたは多層軟リソグラフィ(MSL)技法および/または犠牲層カブセル化方法(例えば、それぞれ全ての目的のために本願で参照として組み込むUngerらによる(2000)Science 288:113−116、および、PCT公報WO01/01025を参照)によって構成される。このような方法を用いて、マイクロ流体装置は、エラストマー膜またはセグメントによって流れチャネルから分離される一つ以上の制御チャネルを用いて少なくとも部分的に装置の流れチャネルを流れる溶液が制御されるよう設計される。この膜またはセグメントは、制御チャネルに作動力を加えることで制御チャネルが関連付けられる流れチャネルに対してそらされるまたは引込められる。膜が流れチャネルに対してそらされるまたは引込められる度合いを制御することで、溶液の流れは遅くされるか流れチャネルを通じて完全に遮られる。このタイプの制御および流れチャネルの組み合わせを用いることで、Ungerらによる(2000)Science 288:113−116、および、PCT公報WO/02/43615およびWO/01/01025により詳細に説明するよう溶液の流れを調節する様々な異なるタイプの弁およびポンプを準備することができる。
【0045】
本願で提供される装置は、試薬が反応することができる反応部位を選択的に隔離するためにこのようなポンプおよび弁を組み込むことができる。反応部位は、装置内の多数の異なる部位のどこに位置されてもよい。例えば、幾つかのマトリクス−タイプの装置では、反応部位は一組の流れチャネルの交点に位置する。ブラインド・チャネル装置では、反応部位はブラインド・チャネルの端に位置する。
【0046】
装置が温度制御反応(例えば、サーモサイクリング反応)において利用されるべき場合、より詳細に以下に説明するように、エラストマー装置は支持部(例えば、ガラス製スライド)に典型的には固定される。結果として得られる構造は、様々な反応部位での温度を制御するために例えば、温度制御板に配置される。サーモサイクリング反応の場合、装置は、多数のサーモサイクリング板のどこに配置されてもよい。
【0047】
装置が比較的光透過性のエラストマー材料より形成されるため、反応はマイクロ流体装置の基本的に全ての部位で様々な異なる検出システムを用いて容易にモニタリングされ得る。しかしながら、より典型的には、検出は反応部位自体(例えば、流れチャネルの交点または流れチャネルのブラインド端を含む領域内)で行われる。装置が略透明な材料な製造されることで、従来のシリコンベースのマイクロ流体装置とは使用可能でないある検出システムが現在の装置と利用され得る。検出は、装置に組み込まれるまたは装置から分離されているが検出されるべき装置の領域と整列される検出器を用いて実現される。
【0048】
(B.ガード・チャネル)
本願で提供されるエラストマー・マイクロ流体装置からサンプルおよび種の蒸発を減少させるために、複数のガード・チャネルが装置に形成される。ガード・チャネルは、流れチャネルおよび/または反応部位の上に重なるエラストマーの層に形成される点で制御チャネルと典型的には類似する。従って、制御チャネルと同様に、ガード・チャネルはエラストマー材料の膜またはセグメントによって、下にある流れチャネルおよび/または反応部位から分離されている。しかしながら、制御チャネルとは異なって、ガード・チャネルが断面積において相当小さくなる。一般的に、同じ適用された圧力下では、より小さい面積を有する膜はより大きい面積を有する膜よりもあまり反れない。ガード・チャネルは、ガード・チャネルに溶液(典型的には水)が流れることを可能にするよう加圧されるよう設計される。ガード・チャネルから生ずる水蒸気は、流れチャネルまたは反応部位に隣接するエラストマーの孔に拡散され、流れチャネルまたは反応部位に隣接する水蒸気濃度を増加させそこからの溶液の蒸発を減少させる。
【0049】
一般的に、ガード・チャネルは、加圧されるとガード・チャネルを下にある流れチャネルまたは反応部位から分離させる膜がガード・チャネルが上に重なる流れチャネルまたは反応部位への、そこからの、または、そこを通る溶液の流れを実質的に制限しないよう著しく小さい。この文脈で使用されるとき、「実質的に制限」といった用語または他の同様の用語は、ガード・チャネルが中を通る溶液の流れを実現するために加圧されないときに同じ条件下で流れチャネルまたは反応部位への、そこからの、または、そこを通る溶液の流れと比べて、流れチャネルまたは反応部位への、そこからの、または、そこを通る溶液の流れが40%より大きく、典型的には30%未満、通常は20%未満、更に、ある場合では10%未満に減少されないことを意味する。通常、ガード・チャネルが100μm2乃至50,000μm2の断面積、またはこれらの間の任意の整数あるいは非整数の断面積を有することを意味する。従って、例えば、ある場合では、断面積は50,000μm2未満であり、ある場合では10,000μm2未満であり、ある場合では10,00μm2であり、更に、ある場合では100μm2である。ガード・チャネルは、円形、楕円形、正方形、長方形、六角形、および、八面体形を含むがこれらに制限されない任意の様々な形状を含む。
【0050】
ガード・チャネルは、サーモサイクリング反応を行うために必要な時間および条件下で装置からのサンプルおよび試薬の蒸発を、50%未満、ある場合では、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または、1%未満に減少するよう設計される。例えば、40サイクルを伴う典型的なPCR反応は、120分内に行われる。ガード・チャネルシステムは、およそこの時間フレーム中に前述の組の制限値に蒸発を減少させるよう設計される。このレベルの蒸発減少を実現するために、ガード・チャネルは少なくとも10ライン/cm2乃至1000ライン/cm2の密度、または、これらの間の任意の整数密度レベルで典型的には存在する。より特定的には、ガード・チャネルは、通常少なくとも25ライン/cm2であり、他の場合では少なくとも50ライン/cm2であり、更に他の場合では少なくとも100ライン/cm2であり、ある場合では少なくとも500ライン/cm2である。このレベルの蒸発減少を実現するために、ガード・チャネルは一つのラインの外側エッジから隣接するラインの最も近い外側エッジまで測定される場合、1mm乃至1μm間のスペーシングで、または、これらの間の任意の整数密度レベルで、典型的には存在する。より具体的には、ガード・チャネルは、500μm乃至5μmで、他の場合では100μm乃至10μm、更に、ある場合では、75μm乃至40μmで一般的に離間される。従って、スペーシングは、典型的には少なくとも1μmであるが、1mm未満であり、他の場合では、500μmであり、他の場合では400μmmであり、更に、ある場合では300μm未満であり、他の場合では200μm未満であり、他の場合では100μm、50μm、または、25μmである。
【0051】
ガード・チャネルは、チャネルの別個のネットワークとして形成されてもよく、または、制御チャネルに分岐するより小さいチャネルでもよい。ガード・チャネルは、装置上、または、装置の特定の領域または複数の領域だけに延在してもよい。典型的には、ガード・チャネルは、蒸発が最も懸念される重要な部位である流れチャネルおよび反応部位に隣接して且つ上に配置される。以下により詳細に説明するように、あるマトリクス装置上のガード・チャネルの典型的な部位は、図1Cに示され、あるブラインド・チャネル装置上のものは図3Bおよび3Cに示される。
【0052】
ガード・チャネルを流れる溶液は水の蒸発を減少させる任意の物質を含む。物質は、流れラインおよび/または反応部位に隣接する水蒸気濃度を増加させるもの、水蒸気濃度を増加させないが流れライン/反応部位からの水の蒸発を遮断するもの(遮断物質)でもよい。従って、一つの選択肢は本質的に任意の水溶液を利用することであり、この場合、適切な溶液は水および緩衝溶液(例えば、TaqMan緩衝液溶液およびリン酸緩衝生理食塩水)を含むがこれに制限されない。適切な遮断物質は、鉱油を含むがこれに制限されない。
【0053】
ガード・チャネルは、上述のMSL技術および/または犠牲層カプセル化方法を用いてエラストマーに典型的には形成される。
【0054】
以下に、温度制御を含む分析(例えば、核酸増幅反応)を含む様々な分析を行うために利用される幾つかの特定の構造をより詳細に説明する。しかしながら、これらの構造が模範例であり、これらシステムの変更態様が当業者には明らかとなることが理解されるであろう。
【0055】
(IV.マトリクス設計)
(A.一般)
マトリクス設計を利用する装置は、接合部のアレイを形成するよう交差する複数の垂直方向および水平方向流れチャネルを一般的に有する。異なるサンプルおよび試薬(または試薬の組)が各流れチャネルに導入され得るため、高いスループットのフォーマットで比較的多数の反応条件に対して多数のサンプルが試験され得る。従って、例えば、異なるサンプルがMの異なる垂直方向の流れチャネルそれぞれに導入され、異なる試薬(または試薬の組)がNの水平方向の流れチャネルそれぞれに導入される場合、M×Nの異なる反応が同時に行われる。典型的には、マトリクス装置は、垂直方向および水平方向の流れチャネルの切り替え可能な隔離を可能にする弁を含む。言い換えれば、弁は、垂直方向の流れチャネルだけを通る、または、水平方向の流れチャネルだけを通る選択的な流れを可能にするよう位置決めされる。このタイプの装置がサンプルのタイプおよび数、並びに、試薬の数およびタイプの選択に対して柔軟性を可能にするため、これらの装置は比較的多数の反応条件に対して多数のサンプルをスクリーニングすることを望む際に分析を行うことに適している。マトリクス装置は、サンプルおよび試薬の蒸発を防止することを補助するためにガード・チャネルを任意には組み込む。
【0056】
(B.典型的な設計および使用)
図1Aは、一つの典型的なマトリクス装置の例示を提供する。同装置100は、49の異なる交点または反応部位106のアレイを形成するよう交差する7つの垂直方向の流れチャネル102および7の水平方向の流れチャネル104を有する。この特定の装置は、7つの異なる試薬または試薬の組と7つのサンプルが反応することを可能にする。垂直方向の溶液の流れを調整する列弁110は、単一の入口114において全て作動され得る制御チャネル118によって制御され得る。
【0057】
同様にして、行弁108は、水平方向の溶液の流れを調節し、これらは単一の制御入口112によって作動される制御チャネル116によって制御される。図1Aに示すように、行弁108を調整する制御チャネル116は、部位によって幅が変化する。制御チャネル116が垂直方向の流れチャネル102を越えるとき、制御チャネル116は十分に狭く、作動されると実質的に溶液の流れを減少するよう垂直方向の流れチャネル102に反らされない。しかしながら、制御チャネル116の幅は、水平方向の流れチャネル104の一つの上に重なると増加され、これにより、水平方向の流れチャネル104を通る溶液の流れを遮るよう制御チャネルの膜が十分に大きくなる。
【0058】
動作において、試薬R1−R7は、それぞれの水平方向の流れチャネル104に導入され、サンプルS1−S7はそれぞれの垂直方向の流れチャネル102に注入される。各水平方向の流れチャネル104における試薬は、この特定の装置ではウェルまたはチャンバの形状にある交点106において、各垂直方向の流れチャネル102におけるサンプルと混合する。従って、例えば、核酸増幅反応の特定の場合、増幅反応に必要な試薬は各水平方向の流れチャネル104に導入される。異なる核酸テンプレートが垂直方向の流れチャネル102に導入される。ある分析では、各水平方向の流れチャネル104に導入される試薬混合物の一部として導入されるプライマーは流れチャネル間で異なる場合がある。これにより、各核酸テンプレートが幾つかの異なるプライマーと反応することが可能となる。
【0059】
図1B−1Eは、分析中に装置がどのように動作するかをより具体的に示すために図1Aに示される装置における隣接する反応部位の拡大平面図を示す。明瞭化のため、交点106は反応ウェルの形態で示されず、制御チャネル116、118が省略され、列および行弁110、108だけが示される(長方形のボックス)。図1Bに示すように、分析は列弁110を閉じ、行弁108を開け、垂直方向の流れチャネル102の流れを遮る一方で溶液が水平方向の流れチャネル104を流れることを可能にすることで開始される。試薬R1は、水平方向の流れチャネル104に導入され、全ての反応部位106が充填されるよう、水平方向の流れチャネル104の長さにわたって完全に流される。水平方向のチャネル104を通る溶液の流れは、外部ポンプによって実現されるが、より典型的には、例えば、Ungerらによる(2000)Science 288:113−116、および、PCT公報WO01/01025に詳細に開示されるようエラストマー装置自体に蠕動ポンプを組み込むことで実現される。
【0060】
一旦R1が導入されると、行弁108は閉じられ列弁102は開けられる(図1Cを参照)。これにより、サンプルS1およびS2が垂直方向の流れチャネル102に導入され、それぞれの流れチャネルを流れることが可能となる。垂直方向の流れチャネル102をサンプルが流れると、反応部位106からR1を放出して反応部位106でサンプルを残留させる。次に、図1Dに示すように、行弁108が開けられ、S1およびS2を拡散させてR1と混合させる。従って、サンプルおよび反応物質(R1S1およびR1S2)の混合物は、各交点または反応部位106の領域で得られる。S1およびS2がR1と拡散するために十分な時間を可能にした後、全ての行および列弁108、110は閉じられ、それぞれの反応部位106の領域内でS1およびS2を隔離し、S1およびS2の混合を防止する(図1Eを参照)。混合物は反応できるようにされ、反応は交点106または交点106を含む十字形状の領域をモニタリングすることで検出される。加熱(例えば、増幅反応中にサーモサイクル)を必要とする分析に対して、装置はヒータの上に配置され、サンプルが隔離される間加熱される。
【0061】
図1Aに示される装置の修正版は、図1Fに示される。一般的な構造は、図1Aに示すものと多数の類似点を有し、両方の図における共通の要素は同じ参照番号を共有する。図1Fに示される装置150は、一対の水平方向の流れチャネル104が共通の入口124に接合される点で異なる。これにより、本質的に、試薬の二重の組が、入口124への単一の注入だけで二つの隣接する流れチャネルに導入されることを可能にする。共通の入口の使用は、垂直方向の流れチャネル102に対して更に拡張される。この特定の例では、各サンプルはサンプル入口120への単一の注入で五つの垂直方向の流れチャネル102に導入される。従って、この特定の装置では、サンプルと種の各特定の組み合わせに対して本質的に10の複製反応がある。当然のことながら、複製反応の数は、共通の入口120、124に接合される垂直方向および/または水平方向の流れチャネル102、104の数を変更することで所望の通りに変えられる。
【0062】
図1Fに示す装置は、出口132への溶液の流れを支配するために使用される制御チャネル130を調整する別個の制御チャネル入口128、および、出口136への溶液の流れを調整する制御チャネル134を調整する別の制御チャネル入口132を更に含む。更に装置150はガード・チャネル138を内蔵する。この特定の設計では、ガード・チャネル138は制御チャネル116の一部として形成される。以下に示すように、ガード・チャネル138は行弁108よりも小さく、その結果、ガード・チャネル138の膜は溶液の流れが中断されるよう下にある水平方向の流れチャネル104に反らされない。
【0063】
最後に、図1Fに示す設計は、反応が水平方向および垂直方向の流れラインの交点におけるウェルではなく交点自体で起こる点で異なる。
【0064】
(V.ブラインド・チャネル設計)
(A.概要)
ブラインド・チャネル設計を利用する装置はある特徴を有する。第1に、装置は、一つ以上のブラインド・チャネルが分岐する一つ以上の流れチャネルを含む。上述した通り、このようなチャネルの端領域は反応部位として機能する。上に重なる流れチャネルによって形成される弁は、ブラインド・チャネルの端で反応部位を隔離するよう作動され得る。弁は、反応部位を切り替え可能に隔離する機構を提供する。
【0065】
第2に、ブラインド・チャネルと連通している流れチャネル・ネットワークは、全てのまたは殆どの反応部位が単一のまたは限定された数の入口(例えば、5未満または10未満)により充填されるように構成される。ブラインド流れチャネルを充填する能力は、装置がエラストマー材料から形成されるため可能となる。エラストマー材料は、流れチャネルおよびブラインド・チャンエル内の空気が溶液がチャネルに導入されるとこれらの孔を通って逃げられるよう十分に多孔性である。他のマイクロ流体装置において利用される材料の多孔性の欠如は、溶液が注入されるとブラインド・チャネルにおける空気が逃げようがないのでブラインド・チャネル設計の使用を除外する。
【0066】
第3の特徴は、一つ以上の試薬が製造中(加工処理に関する更なる詳細を以下に示す)に、エラストマーのベース層上の反応部位内に非共有結合で堆積されることである。試薬は、サンプルが反応部位に導入されるときに試薬が溶解されるよう設計されるため、非共有結合で取り付けられる。分析の数を最大化するために、異なる反応物質または反応物質の組は、異なる反応部位それぞれに堆積される。
【0067】
反応部位がアレイの形態に配置されるように、あるブラインド・チャネル装置が設計される。
【0068】
従って、例えば、核酸増幅反応を行うために設計されるブラインド・チャネル装置では、伸長反応を行うために必要な一つ以上の試薬は、装置の製造中に反応部位それぞれに堆積される。このような試薬は、例えば、次の全てのまたは幾つかを含む:プライマー、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、補因子、金属イオン、緩衝剤、挿入染料等。高いスループットの分析を最大化するために、DNAの異なる領域を増幅するよう選択される異なるプライマーが各反応部位に堆積される。その結果、核酸テンプレートは入口を介して反応部位に導入されると、多数の伸長反応がテンプレートの異なるセグメントで実施される。増幅反応に必要なサーモサイクリングは、装置をサーモサイクリング装置上に配置し、様々な要求される温度間で装置をサイクリングすることで実現され得る。
【0069】
試薬は様々な方法で固定される。例えば、ある場合では、一つ以上の試薬は反応部位で非共有結合で堆積され、他の場合では一つ以上試薬は反応部位で基板に共有結合で取り付けられる。共有結合で取り付けられる場合、試薬はリンカーを介して基板にリンクされる。様々なリンカー・タイプ、例えば、光化学/光に不安定なリンカー、熱に不安定なリンカー、および、酵素的に切断され得るリンカーが利用され得る。幾つかのリンカーは、二官能性であり(即ち、リンカーはリンカーが取り付けられるエレメントに位置する基と反応する官能基を各端に含む)、各端にある官能基は同じでも異なってもよい。幾つかの検定で使用され得る適切なリンカーの例は、直鎖または分鎖カーボン・リンカー、ヘテロ環リンカー、および、ペプチド・リンカーを含む。様々なタイプのリンカーがRockford,IllinoisにあるPierce Chemical Companyから市販されており、EPA188,256;米国特許第4,671,958号、第4,659,839号、第4,414,148号、第4,669,784号、第4,680,338号、第4,569,789号、および、第4,589,071号、並びに、Eggenweiler,H.M.によるPharmaceutical Agent Discovery Today 1998, 3, 552に開示される。NVOC(6ニトロベラトリルオキシカルボニル)リンカー、および、他のNVOC関連リンカーは、適切な光化学リンカー(例えば、WO90/15070およびWO92/10092参照)の例である。プロテアーゼ切断部位を有するペプチドは、例えば、米国特許第5,382,513号で説明される。
【0070】
(B.典型的な設計および使用)
図2は、ブラインド・チャネル設計を利用する一つの典型的な装置の簡略化された平面図である。装置200は、エラストマー基板202に形成される流れチャネル204、および、そこから分岐される分岐流れチャネル206の組を含む。各分岐流れチャネル206は、反応部位208で終端し、それにより、反応部位のアレイを形成する。膜212によって分岐流れチャネル206から分離される制御チャネル210が分岐流れチャネル206の上に重なる。制御チャネル210の作動は、膜212を分岐流れチャネル206に反らさせ(即ち、弁として機能させ)、反応部位208それぞれを他の反応部位から隔離させる。
【0071】
このような装置の動作は、試験サンプルを流れチャネル204に注入し、溶液を各分岐チャネル206にその後流すことを伴う。一旦サンプルが各分岐チャネル206を充填すると、制御チャネル210は弁/膜212を作動して分岐チャネル206に反らさせるよう作動され、それにより、各反応部位208を封鎖する。サンプルが反応部位208に流れ止まると、各反応部位208に前にスポッティングされた試薬を溶解する。一旦溶解されると、試薬はサンプルと反応する。弁212は、各反応部位208での溶解された試薬が拡散によって混合することを防止する。サンプルと試薬との反応が、典型的には反応部位208内で検出される。反応は、以下の温度制御セクションで説明するように任意には加熱される。
【0072】
図3Aは、より複雑なブラインド流れチャネル設計の例を示す。この特定の設計300では、水平方向の流れチャネル304の組それぞれはそれぞれの端で二つの垂直方向の流れチャネル302と接続される。複数の分岐流れチャネル306は、水平方向の流れチャネル304それぞれから延在される。この特定の設計における分岐流れチャネル304は、全ての所与の水平方向の流れチャネル304に取り付けられる分岐チャネル306が直ぐに隣の水平方向の流れチャネル304に接合される二つの分岐チャネル306間に位置決めされる、または、直ぐ隣の流れチャネル304に接合される分岐流れチャネル306と一つの垂直方向の流れチャネル302との間に位置決めされるように互い違いに配置される。図3Aに示す設計のように、各分岐流れチャネル306は、反応部位308で終端する。図3Aに示す設計と一貫して、制御チャネル310が分岐チャネルそれぞれの上に重なり、膜312によって下にある分岐チャネルから分離される。制御チャネルは、ポート316で作動される。垂直方向および水平方向の流れチャネル302、304は、入口314へのサンプルの注入が溶液を水平方向および垂直方向の流れチャネル・ネットワーク全体に通し、分岐流れチャネル306を介して反応部位308それぞれに最終的に流すよう相互接続される。
【0073】
従って、動作において、サンプルは、各反応部位それぞれに溶液を導入するよう入口に注入される。一旦反応部位が充填されると、弁/膜がポートにおいて制御チャネルを加圧することで反応部位内の溶液をトラップするよう作動される。反応部位に前に堆積された試薬は、反応部位内で再懸濁され、それにより、反応部位での堆積された試薬とサンプルとの反応を可能にする。反応部位内での反応は、検出器によってモニタリングされる。ここで、反応は、以下の温度制御セクションにおいて述べる方法に従って任意には制御可能に加熱され得る。
【0074】
図3Aに示す一般的な設計のより複雑なバージョンは図3Bに示される。図3Bに示される装置では、図3Aに示される水平方向および分岐流れチャネル302のユニット組織が数回繰り返される。図3Bに示される装置は、加熱(例えば、サーモサイクリング)を伴う適用法に利用されるよう装置にガード・チャネル320を含む更なる例を示す。流れチャネル304および分岐チャネル306に対するガード・チャネル320の典型的な配列は、図3Cに示される拡大図に示される。ガード・チャネル320は、分岐流れチャネル306および反応部位308の上に重なる。上述したとおり、水は、装置における水の局部的濃度を増加させるために装置300の加熱中にガード・チャネル320を通って流れ、それにより、流れチャネル306および反応部位308における溶液からの水の蒸発を減少させる。
【0075】
本セクションの始めに説明したブラインド・チャネル装置の特徴は、装置のフット・プリントを最小化し、装置に多数の反応部位を形成し、高い密度を得ることを可能にする。例えば、2500の反応部位を有するこのタイプの装置は、標準的な顕微鏡用スライド(25mm×75mm)上に嵌るよう容易に製造される。前述の特徴により、ブラインド・チャネル設計を利用する装置で非常に高い密度の反応部位が得られることを可能にする。例えば、少なくとも50、60、70、80、90、または、100の反応部位/cm2の密度、または、その間の任意の整数密度が容易に得られる。しかしながら、ある装置は、例えば、100乃至4000反応部位/cm2の範囲にあるより高い密度、またはその間の任意の整数密度を有する。例えば、幾つかの装置は、少なくとも100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、または、1000部位/cm2の密度を有する。少なくとも2000、3000、または、4000部位/cm2といった非常に高い密度を有する装置も得ることが可能である。このような高い密度は、装置上の非常に多数の反応部位と直接言い換えられる。ブラインド・チャネル・アーキテクチャを利用する装置は、少なくとも10−100反応部位または間の任意の整数の部位を典型的には有する。より典型的には、装置は、少なくとも100−1000反応部位、または、その間の任意の整数の部位を有する。より高い密度の装置は、より多い反応部位、例えば、少なくとも1000−100000反応部位、または、その間の任意の整数の部位を有する。従って、ある装置は装置の全体的なサイズに依存して少なくとも100;500;1000;2000;3000;4000;5000;6000;7000;8000;9000;10000;20000;30000;40000;50000、または、100000の反応部位を有する。
【0076】
得られる多数の反応部位および密度は、非常に小さいウェルまたは空洞を加工する能力の結果である。例えば、空洞またはウェルは、典型的には50nL未満、他の場合では、40nL、30nL、20nL、または、10nL未満、更に、他の場合では5nLまたは1nL未満の容積を有する。特定の例として、ある装置は、300ミクロンの長さ、300ミクロンの幅、および、10ミクロンの深さのウェルを有する。
【0077】
本願で提供されるブラインド・チャネル装置は、例えば、行き止まりの端部を有するチャネルの充填、液体プライミング、加圧されたガス抜きプライミングに対する戦略、並びに、マイクロ流体チャネルの充填中に気体を押し出す様々な戦略を含む、PCT出願PCT/US01/44549(WO02/43615として公開)およびPCT/US02/10875(WO02/082047として公開)に開示されるある設計の特徴および方法を利用する。両方のPCT公報は、全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込む。
【0078】
(VI.ハイブリッド設計)
他の装置は、マトリクスおよびブラインド充填設計のハイブリッドである。このタイプの装置の設計は、各水平方向の流れチャネルが独自のサンプル入口ポートに接続され、水平方向の流れチャネルが垂直方向の流れチャネルを介して相互接続されない以外では、図3Aに示すブラインド・チャネル装置と同じである。その結果、任意の所与の水平方向の流れチャネルに導入されるサンプルは、水平方向の流れチャネルおよびそこに取り付けられる反応部位にだけ充填される。一方で、図3Aに示すブラインド流れチャネル装置では、サンプルは、垂直方向の流れチャネル302を介して水平方向の流れチャネル304間を流れることができる。
【0079】
この一般的な装置の例は図4に示される。装置400は、複数の水平方向の流れチャネル404を有し、それぞれそこから延在する複数の分岐流れチャネル406および独自のサンプル入口414を有する。制御チャネル410は各分岐流れチャネル406の上に重なり、膜(弁)412は制御チャネル410を下にある分岐流れチャネル406から分離する。ブラインド流れチャネル設計に関してと同様に、入口416における制御チャネルの作動は、分岐流れチャネル406への膜412の反れおよび反応部位408の隔離を生じさせる。この設計のバリエーションにおいて、各水平方向の流れチャネル404は、各端に入口414を含み、それによりサンプルが両端から導入されることが可能となる。
【0080】
ある場合では、試薬は、装置の製造中に反応部位に堆積される。これは、マトリクス装置で要求される試薬の時間のかかる添加を必要とすることなく短期間で多数の反応条件下で多数のサンプルが試験されることを可能にする。或いは、反応混合物は、チップへの注入の前に準備され得る。一旦混合物が注入されると、分析されるか更に処理(例えば、加熱)される。
【0081】
異なるサンプルを水平方向の流れチャネルそれぞれに注入することで、多数のサンプルが迅速に分析される。試薬が反応部位に前もって堆積されていると仮定して、全ての所与の水平方向の流れチャネルと関連付けられる各反応部位での同じ試薬の存在は各サンプルと幾つかの複製反応を行う簡単な方法を提供する。その代わりに、反応部位における試薬が任意の所与の流れチャネルに対して異なる場合、各サンプルは様々な異なる反応条件に基本的に同時に曝される。
【0082】
従って、本願で提供される装置は、様々な異なるタイプの調査に合わせられる。調査が、ユーザ制御条件下で比較的多数の異なるサンプル(例えば、100のユーザ選択された試薬に対して100のサンプル)をスクリーニングすることを伴う場合、マトリクス装置が有用な解決策を提供する。しかしながら、調査が幅広い種類の反応条件下で一つのまたは限定された数のサンプル(例えば、10000反応条件に対して一つのサンプル)を分析することを伴う場合、ブラインド・チャネル設計が有用である。最後に、試薬を注入することなく定められた反応条件に対して比較的多数のサンプル(例えば、100の前もって定められた試薬に対して100のサンプル)を検査することを望む場合、ハイブリッド装置が有用である。
【0083】
(VII.温度制御)
(A.装置および構成要素)
様々な精巧さの幾つかの異なる選択肢は、マイクロ流体装置の選択された領域内または装置全体で温度を制御することに利用可能である。従って、本願で使用される場合、温度コントローラといった用語は、マイクロ流体装置全体またはマイクロ流体装置の一部分内(例えば、特定の温度領域またはブラインド・チャネル型マイクロ流体装置のマトリクスにおける一つ以上の接合部)で温度を調整することができる装置または素子を広義には意味する。
【0084】
一般的に、装置は、装置をサーモサイクルするためにサーモサイクリング板に配置される。様々な板が、例えば、ThermoHybaid Px2(Franklin, MA), MJ Research PTC−200(South San Francisco, CA), Eppendorf Part#E5331(Westbury, NY), Techne Part #205330(Princeton, NJ)を含む商業用ソースから容易に入手可能である。
【0085】
サーモサイクリング・ステップの正確性を確実にするために、ある装置は装置の様々な領域で温度を検出するセンサを組み込むことが有用である。温度を検出する一つの構造は熱電対である。このような熱電対は、下にある基板材料にパターン化される薄膜ワイヤ、または、微細加工されたエラストマー材料自体に直接的に組み込まれるワイヤとして作製され得る。
【0086】
温度は、電気抵抗の変化を通じて感知されてもよい。例えば、従来の技法を用いて下にある半導体基板上に加工されるサーミスタの抵抗の変化は、所与の温度変化に校正される。あるいは、サーミスタは、微細加工されたエラストマー材料に直接的に挿入され得る。抵抗による温度の検出に対する別のアプローチは、本願で参照として全体的に組み込むWuらによる“MEMS Flow Sensors for Nano−fluidic Applications”,Sensors and Actuators A 89 152−158 (2001)に開示される。同文書は、温度の制御および感知の両方に対してドーピングされたポリシリコン構造の使用を説明する。ポリシリコンおよび他の半導体材料に関して、抵抗の温度係数は、ドーパントのアイデンティティおよび量によって正確に制御され、それにより、所与の適用法に対するセンサの性能を最適化する。
【0087】
サーモクロマチック材料は、増幅装置の領域で温度を検出するために利用可能な別のタイプの構造である。具体的には、ある材料は、異なる温度を通る際に劇的に且つ再現可能に変色する。このような材料は、異なる温度を通る際に溶液に添加されてもよい。サーモクロマチック材料は、下にある基板に形成されるかエラストマー材料内に組み込まれてもよい。或いは、サーモクロマチック材料は、粒子の形態でサンプル溶液に添加され得る。
【0088】
温度を検出する別のアプローチは、赤外線カメラの使用である。赤外線カメラは、顕微鏡と共に、増幅構造全体の温度プロファイルを決定するために利用され得る。エラストマー材料の放射線に対する透過性は、この分析を容易化する。
【0089】
温度検出に対する別のアプローチは、焦電センサの使用である。具体的には、幾つかの結晶材料、特に、圧電挙動を発揮する材料は、焦電効果を発揮する。この効果は、材料の結晶格子の極性、従って、材料上の電圧が温度に非常に依存する現象を説明する。このような材料は、基板またはエラストマーに組み込まれ、温度を検出するために使用され得る。
【0090】
キャパシタンスおよびインダクタンスのような他の電気的現象は、本発明の実施形態による温度を検出するために利用され得る。
【0091】
(B.正確なサーモサイクリングの検証)
以下の加工セクションでより詳細に説明するように、ブラインド・チャネル装置は、試薬が配置されるベース層を有する。流れチャネルおよび制御チャネルを含む二層を有する構造は、流れチャネルが堆積された試薬と整列されるようベース層の上に重なる。ベース層の反対側は、基板(例えば、ガラス)上に配置される。通常、反応が起こる反応部位は、基板/ガラス境界面より約100−150ミクロン上にある。装置で使用されるエラストマーおよびガラスに対して熱拡散係数に対する既知の式および適当な値を用いることで、コントローラが維持しようとする温度に反応部位内の温度が到達するために必要な時間を計算することができる。表1に示す計算された値は、反応部位が約100−150ミクロン(即ち、本願で説明する装置に対する典型的な距離)である装置で利用されるよりも相当厚いエラストマーおよびガラス層を用いても温度が迅速に到達されることを示す。
【0092】
(表1:示される期間におけるPDMSおよびガラス層中の計算された熱拡散長さ)
【0093】
【表1】
【0094】
図5は、ブラインド・チャネル装置を用いて所望の温度が実現される速さを示す。
【0095】
(VIII.検出)
(A.概要)
幾つかの異なる検出方法が本願で提供するマイクロ流体装置と利用され得る。適当なシステムの選択は、検出されるイベントおよび/または物質のタイプにより部分的に特徴付けられる。検出器は、放射性同位体、発蛍光団、発色団、電子密度粒子、磁気粒子、スピンラベル、化学発光を発する分子、電子化学的に活性的な分子、酵素、補因子、核酸プローブに結合した酵素、および、酵素基質からの信号を含むがこれらに制限されない幾つかの異なる信号のタイプを検出するよう設計される。
【0096】
本発明のマイクロ流体装置との使用に好適な例示的な検出方法は、光散乱、マルチチャンネル蛍光検出、UVおよび可視波長吸収、ルミネッセンス、差分反射、および、共焦点レーザ走査を含むがこれに制限されない。ある適用法で使用される追加的な検出方法は、シンチレーション近似検定法、放射化学分析、蛍光偏光、蛍光相関分光法(FCS)、時間分解エネルギー伝達(TRET)、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)、および生物発光共鳴エネルギー伝達(BRET)を含む。追加的な検出の選択肢は、電気抵抗、抵抗性、インピーダンス、および、電圧感知を含む。
【0097】
検出は、「検出セクション」または「検出領域」で行われる。これらの用語および他の関連する用語は、検出が起こるマイクロ流体装置の部分を指す。上述した通り、ブラインド・チャネル設計を利用する装置では、検出セクションは一般的に各反応部位と関連付けられる弁によって隔離される反応部位である。マトリクス・ベースの装置に対する検出セクションは、通常、交点に隣接する流れチャネルの領域内、交点自体、または、交点および周囲の領域を囲う領域である。
【0098】
検出セクションは、特定のイベントおよび/または物質と関連付けられる信号を検出するために協働する一つ以上の顕微鏡、ダイオード、光励起装置(例えば、レーザ)、光電子増倍管、プロセッサ、および、それらの組み合わせと連通している。検出される信号は、しばしば光検出器によって検出セクションで検出される光信号である。光検出器は、一つ以上のフォトダイオード(例えば、アバランシェ・フォトダイオード)、例えば、光電子増倍管への光ファイバ光案内、顕微鏡、および/またはビデオ・カメラ(例えば、CCDカメラ)を含み得る。
【0099】
検出器は、マイクロ流体装置内に微細加工され得、または、別個の素子でもよい。検出器が別個の素子として存在し、マイクロ流体装置が複数の検出セクションを含む場合、検出は任意の所与の瞬間に単一に検出セクション内で行われる。或いは、走査システムが使用され得る。例えば、ある自動化システムは、マイクロ流体装置に対して光源を走査し、他のシステムは検出器に発せられた光を走査し、または、マルチチャネル検出器を含む。特定の例示的な例として、マイクロ流体装置は、平行移動可能なステージに取り付けられ、顕微鏡の対物レンズの下で走査される。このようにして捕捉される信号は、信号解釈および処理のためにプロセッサにルーティングされる。光電子増倍管のアレイは使用されてもよい。追加的には、全ての異なる検出セクションから同時に信号を収集する一方で各セクションからの信号を決定する能力を有する光学システムが利用されてもよい。
【0100】
外部検出器は、提供される装置が、モニタリングされる波長で光学的に透過性を有する材料により完全にまたは大部分が製造されるため有用である。この特徴により、本願に記載の装置は、従来のシリコンベースのマイクロ流体装置では可能でない幾つかの光検出システムを利用することを可能にする。
【0101】
検出器は、検出可能な信号を生成するレポータを刺激する光源を含む。利用される光源のタイプは、活性化されるレポータの性質に部分的に依存する。好適な光源は、レーザ、レーザ・ダイオード、および、高輝度ランプを含むがこれらに制限されない。レーザが利用される場合、レーザは検出セクションのセットまたは単一の検出セクション上を走査するよう利用され得る。レーザ・ダイオードは、マイクロ流体装置自体に微細加工され得る。あるいは、レーザ・ダイオードは、ダイオードからのレーザ光が検出セクションに方向付けられるようサーマルサイクリング反応を行うために利用されるマイクロ流体装置に隣接して配置される別の装置に加工されてもよい。
【0102】
検出は、幾つかの非光学的アプローチも伴う。例えば、検出器は、例えば、温度センサ、伝導性センサ、電位差センサ(例えば、pH電極)および/または電流センサ(例えば、酸化還元反応をモニタリングするため)も含む。
【0103】
幾つかの市販されている外部検出器が利用され得る。これらの多くは、蛍光検出器であり、それは、蛍光標識された試薬を準備し易いからである。利用可能な検出器の特定の例は、Applied Precision Array WoRx(Applied Precision, Issaquah, WA)を含むがこれに制限されない。
【0104】
(B.増幅された核酸の検出)
(1.挿入色素)
二本鎖DNAに結合された際にだけ蛍光を発するある挿入色素は、二本鎖増幅DNAを検出するために使用され得る。適切な色素の例は、SYBRTMおよびPico Green(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR),臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、クロモマイシン、アクリジンオレンジ、Hoechst 33258、Toto−1、Yoyo−1、およびDAPI(塩酸4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)を含むがこれに制限されない。挿入色素の使用に関する追加的な説明は、本願で参照として全体的に組み込むZhu,et al.,によるAnal.Chem、66:1941−1948(1994)に提供される。
【0105】
(2.FRETベースの検出方法)
このタイプの検出方法は、供与体/受容体・発蛍光団対における供与体(レポータ)および/または受容体(消光剤)発蛍光団から蛍光の変化を検出することを伴う。供与体および受容体・発蛍光団対は、供与体の発光スペクトルが受容体の励起スペクトルと重なるよう選択される。従って、発蛍光団の対が互いに対して十分に近づけられると、供与体から受容体へのエネルギー伝達が生ずる。このエネルギー伝達が検出される。
【0106】
FRETおよびテンプレート伸長反応。これらの方法は、一般的に供与体/受容体対の一方のメンバで標識されるプライマー、および、供与体/受容体対の他方のメンバで標識されるヌクレオチドを利用する。テンプレート依存伸長反応中に標識されたヌクレオチドをプライマーに組み込む前に、供与体および受容体はエネルギー伝達が生じないよう十分に離間される。しかしながら、標識されたヌクレオチドが、プライマーに組み込まれ、そして間隔が十分に近い場合、エネルギー伝達が生じ検出され得る。これらの方法は、一塩基多型(以下参照)の検出において単一の塩基対伸長反応を行う際に特に有用であり、米国特許第5.945,283号およびPCT公報WO97/22719に開示される。
【0107】
定量的RT−PCR。様々ないわゆる「リアルタイム増幅」方法または「リアルタイム定量的PCR」方法は、増幅処理中または後に形成される増幅生成物の量を測定することでサンプルに存在するターゲット核酸の量を決定するために利用される。蛍光発生ヌクレアーゼ検定は、本願記載の装置と良好に使用され得るリアルタイム定量方法の特定の例の一つである。増幅生成物の形成をモニタリングする同方法は、しばしば「TaqMan」と呼ばれるアプローチ法である二重標識蛍光発生オリゴヌクレオチド・プローブを用いたPCR生成物蓄積の連続的な測定を伴う。
【0108】
このような決定で使用されるプローブは、典型的には、二つの異なる蛍光色素で標識される短い(約20−25塩基)ポリヌクレオチドである。プローブの5’末端は、典型的にはレポータ色素に取り付けられ、3’末端は消光色素に取り付けられるが、色素はプローブの他の位置に取り付けられてもよい。プローブは、ターゲット核酸上のプローブ結合部位との実質的な配列相補性を少なくとも有するよう設計される。プローブ結合部位に隣接する領域に結合する上流および下流PCRプライマーは反応混合物に含まれる。
【0109】
プローブが損なわれないとき、二つの発蛍光団間のエネルギー伝達が起こり、消光剤はレポータからの放出をクエンチする。PCRの伸長相中、プローブはTaqポリメラーゼのような核酸ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断され、それにより、ポリヌクレオチド−消光剤からレポータを解放し、結果としてレポータ発光輝度の増加を生じ、これが適当な検出器によって測定される。
【0110】
蛍光発生検定中に作成されるような蛍光発光を測定するよう特に適合される一つの検出器は、Foster City,CAにあるApplied Biosystems, Inc.によって製造されるABI7700である。この機器を備えるコンピュータ・ソフトウェアは、増幅の過程でレポータおよび消光剤の蛍光輝度を記録することができる。これら記録された値は、連続的に正規化されたレポータ発光輝度における増加を計算し、最終的に、増幅されるmRNAの量を定量化するよう使用され得る。
【0111】
増幅生成物の濃度のリアルタイム決定を行う蛍光発生方法の理論および動作に関する追加的な詳細は、例えば、Gelfandに対する米国特許第5,210,015、Livak,et al.に対する米国特許第5,538,848号、および、Haalandに対する米国特許第5,863,736号、並びに、Heid,C.A.,et al.,Genome Research,6:986−994(1996);Gibson, U.E.M,et al.,Genome Research,6:995−1001(1996)、Holland,P.M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:7276−7280(1991)、および、Livak.K.J.,et al.,PCR Methods and Applications 357−362(1995)に開示され、それぞれ本願で参照として組み込まれる。
【0112】
従って、増幅反応が進行すると、増加する量の色素が結合され、信号における付随する増加を伴う。
【0113】
上述のような挿入色素は、異なるアプローチで定量的PCR方法に利用され得る。上述したとおり、これらの色素は二本鎖DNAに優先的に結合し(例えば、SYBR GREEN)、一旦結合された場合にのみ信号を生成する。従って、増幅反応が進行するにつれて、増加する量の色素が結合され、検出され得る信号の同時の増加が伴われる。
【0114】
分子ビーコン。分子ビーコンを用いると、増幅された生成物の相補的領域にハイブリダイズすることによるプローブの配置における変化は、結果として、検出可能な信号の形成を生ずる。プローブ自体は、5’端における一方のセクションおよび3’端における他方のセクションといった二つのセクションを含む。これらのセクションは、プローブ結合部位にアニールされるプローブのセクションに隣接し、互いに対して相補的である。一方の端セクションは、レポータ色素に取り付けられ、他方の端セクションは通常消光剤色素に取り付けられる。
【0115】
溶解状態では、二つの端セクションは、ヘアピン・ループを形成するよう互いに対してハイブリダイズし得る。この配置では、レポータおよび消光色素は、レポータ色素からの蛍光が消光色素によって効果的にクエンチされるよう十分に近付けられる、反対に、ハイブリダイズされたプローブは、クエンチングの程度が減少される線形化された配置を結果として生ずる。従って、二つの色素に対する発光の変化をモニタリングすることで、増幅生成物の形成を間接的にモニタリングすることが可能となる。このタイプのプローブおよびその使用方法は、例えば、Piatek,A.S,et al.,Nat.Biotechnol,16:359−63(1998)、Tyagi,SおよびKramer,F.R.,Nature Biotechnology14:303−308(1996)、および、Tyagi,S,et al.Nat.Biotechnol.16:49−53(1998)に更に開示され、それぞれ全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込まれる。
【0116】
インベーダ。インベーダ検定(Third Wave Technologies, (Madison,WI))は、SNP遺伝子型特定に使用され、ターゲット核酸(DNAまたはRNA)または多型性部位に相補的な信号プローブと指定されるオリゴヌクレオチドを利用する。インベーダ・オリゴと指定される第2のオリゴヌクレオチドは、5’ヌクレオチド配列を含むが、3’ヌクレオチド・配列はヌクレオチド多型を含む。インベーダ・オリゴは、信号プローブの5’端が多型を含むヌクレオチドで「フラップ」を形成するようターゲット核酸への信号プローブの結合と干渉する。この複合体は、Cleavase酵素と呼ばれる構造特異的なエンドヌクレアーゼによって認識される。Cleavaseは、ヌクレオチドの5’フラップを切断する。解放されたフラップは、FRET標識を有する第3のプローブと結合し、Cleavase酵素によって認識される別の二重構造を形成する。今回は、Clevase酵素は、消光剤から発蛍光団を切断し、蛍光信号を生成する。SNP遺伝子型特定に関して、信号プローブは基準(ワイルド・タイプ)対立遺伝子または変形(突然変異)対立遺伝子のいずれかとハイブリダイズするよう設計される。PCRとは異なって、核酸の増幅なしで信号の線形増幅がある。当業者を導くために十分な更なる詳細は、例えば、Neri,B.P.,et al.、Advances in Nucleic Acid and Protein Analysis 3826:117−125,2000より提供される。
【0117】
NASBA。核酸配列ベース増幅(NASBA)は、RNAをテンプレートとした検出方法である。RNAと相補的なプライマーは、T7プロモーター部位に対する配列を含む。このプライマーは、追加されるテンプレートRNAおよび逆転写酵素(RT)と結合され、3’から5’へと相互鎖を生成する。RNaseHは、RNAを消化するために後続して添加され、一本鎖cDNAを後に残す。プライマーの第2のコピーは、一本鎖cDNAを結合して二本鎖cDNAを形成する。T7RNAポリメラーゼは、第1のプライマーによってcDNA配列に組み込まれたT7プロモーター部位からRNAの多数のコピーを生成するために添加される。上述の任意の酵素は、41℃で機能することができる(例えば、Compton,J.Nucleic Acid Sequence−based Amplification, Nature 350:91−91,1991を参照する)。
【0118】
Scorpion.同方法は、全ての目的のために本願で全体的に参照として組み込まれ、図面がそのスキームを示す例えば、Thelwell N.,et al.,Nucleic Acids Research、28:3752−3761,2000によって説明され、Scorpionプロービング機構は次の通りである。ステップ1:ターゲットおよびScorpionステム・配列の最初の変性。ステップ2:ターゲットへのScorpionプライマーのアニーリング。ステップ3:Scorpionプライマーの伸長により二本鎖DNAの生成。ステップ4:ステップ3で生成された二本鎖DNAの変性。これにより、Scorpionプライマーが取り付けられた一本鎖ターゲット分子を提供する。ステップ5:冷却の際、Scorpionプローブ・配列が分子内でターゲットに結合する。これは、相補的なターゲット鎖の分子間結合よりも好まれる。Scorpion(図に示すように)は、プローブの5’および3’側で相補的なステム・配列によりヘアピン・ループ構造で保持される特定のプローブ・配列よりなる。5’端に取り付けられる発蛍光団は、ループの3’端に接合される部分(通常、メチルレッド)によってクエンチングされる。ヘアピン・ループは、PCR停止配列(ストッパ)を介してプライマーの5’端にリンクされる。PCR増幅中のプライマーの伸長後、特定のプローブ・配列はDNAの同じ鎖内でその相補物と結合される。このハイブリダイズイベントは、蛍光がもはやクエンチングされず、信号における増加が観察されるようヘアピン・ループを開く。PCR停止配列は、特定のターゲット・配列が存在しない際にヘアピン・ループを開かせる読み過しを防止する。このような読み合わせは、例えば、プライマー・ダイマーのような非特異的PCR生成物の検出またはミスプライミング・イベントをもたらす。
【0119】
(3.キャパシタンスDNA検出)
DNA濃度と1kHz電場の核酸の通過によって起こされるキャパシタンスの変化との間では線形関係がある。この関係は、種に依存しない(例えば、Sohn, et al.,(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:10687−10690を参照)。従って、ある装置では、流れチャネル(例えば、図1の略円形の流れチャネルまたは図2の反応室)内の核酸は、増幅された生成物の濃度を決定するために、このような場に曝露される。あるいは、増幅された生成物を含む溶液が引き出され、電場に曝露される。
【0120】
(IX.反応を行うための混合物の組成)
本願で提供するマイクロ流体装置で行われる反応は、典型的には、反応を向上させるためのある添加物を用いて行われる。従って、例えば、試薬が堆積される装置の場合、これら添加物が反応部位で一つ以上の反応物質と一緒にスポッティングされる。添加物の一つのセットは、エラストマー基板のプロテイン結合部位を遮断する遮断試薬である。幾つかの異なるプロテイン(例えば、ゼラチン、ウシ血清アルブミンのような様々なアルブミン・プロテイン)およびグリセロールを含む幅広い種類の化合物が利用される。
【0121】
洗浄添加物も有用である。多数の洗浄剤のいずれかが利用される。例としてSDSおよび様々なトリトン洗浄剤を含むがこれに制限されない。
【0122】
核酸増幅反応の特定の場合、多数の異なるタイプの添加物が含まれる。一つのカテゴリーは、増幅反応を促進させるエンハンサーである。このような添加物は、核酸における二次構造を減少させる試薬(例えば、ベタイン)およびミスプライミング・イベントを減少させる物質(例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド)を含むがこれに制限されない。
【0123】
ある増幅反応に行う際に幾つかのポリメラーゼが高められた結果を生ずることが分かった。例えば、Thermus aquaticusからのAmpliTaq Goldポリメラーゼ(Applied Biosystems, Foster City, CA)から良好な結果が得られた一方で、改善された反応はある場合では、Finnzyme,Espoo,FinlandのDyNAzymeポリメラーゼを使用して得られた。このポリメラーゼは、好熱性細菌Thermus brockianusから得られる。利用され得る他の典型的なポリメラーゼは、Thermus thermophilus(Tth)およびThermococcus litoralis(Tli)、超好熱古細菌Pyrosoccus woesei(Pwo)およびTgo DNAポリメラーゼの組み合わせのrTHポリメラーゼXLを含むがこれに制限されない。
【0124】
核酸増幅反応を含む、本願に開示する装置を用いる反応を行う上で有用な添加物に関わる更なる詳細は、以下の実施例1で提供される。
【0125】
(X.模範的な適用法)
本願で提供されるマイクロ流体装置が多数の反応部位を含むよう製造されるため、装置は、幅広い種類のスクリーニングおよび分析方法に有用である。一般的に、装置は、検出可能な信号を形成するよう反応する種間の反応、または、別の種と反応すると検出可能な信号を生成する生成物を検出するよう利用される。様々なタイプの温度制御システムとのそれぞれの使用を鑑みて、装置は、温度制御を必要とする幾つかの異なるタイプの分析または反応に利用され得る。
【0126】
(A.核酸増幅反応)
本願で開示する装置は、基本的に任意のタイプの核酸増幅反応を行うために利用され得る。従って、例えば、増幅反応は、線形増幅(単一プライマーでの増幅)、並びに、指数増幅(すなわち、フォワードおよびリバース・プライマーセットを用いて行われる増幅)でもよい。
【0127】
ブラインド・チャネル・タイプ装置が核酸増幅反応を実施するために利用されるとき、反応部位内に典型的には堆積される試薬は所望のタイプの増幅反応を実施するために必要な試薬である。これは、通常、幾つかのまたは全ての例えば、プライマー、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、金属イオン、緩衝剤、および、補因子が堆積されることを意味する。このような場合に反応部位に導入されるサンプルは核酸テンプレートである。しかしながら、テンプレートが堆積され増幅試薬が反応部位に流されてもよい。上述したとおり、マトリクス装置が増幅反応を行うために利用されるとき、核酸テンプレートを含むサンプルが垂直方向の流れチャネルを流れ、増幅試薬は水平方向の流れチャネルを流れる、あるいは、その逆である。
【0128】
PCRが最もよく知られている増幅技術であるが、装置は、PCR増幅を行うことに制限されない。行うことができる他のタイプの増幅反応は、(i)リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace, Genomics 4:560(1989)およびLandegren, et al.によるScience241:1077(1988)参照);(ii)転写増幅(Kwoh,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:1173(1989)参照);(iii)自立配列複製(Guatelli,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:1874(1990)参照);および(iv)核酸ベース配列増幅(NASBA)(Sooknanan,RおよびMalek,L.,BioTechnology13:563−65(1995)参照)を含むがこれらに制限されない。前述の参考文献それぞれは全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込む。
【0129】
結果として生ずる増幅された生成物の検出が、増幅されたDNAを検出する上述の検出方法のいずれかを用いて実現される。
【0130】
(B.SNP分析および遺伝子型特定)
(1.概要)
宿主生物または感染性の生物のいずれかのゲノム変更にリンクされる多数の病気は、単一のヌクレオチドにおける変化をしばしば伴う少数のヌクレオチドにおける変化の結果である。このような単一ヌクレオチドにおける変化は、一塩基多型または単にSNPと呼ばれ、SNPが生ずる部位は、多型性部位として典型的には呼ばれる。本願で開示される装置は、このような多型性部位に存在するヌクレオチドの識別を決定するために利用される。この能力の延長として、装置は、遺伝子型特定分析に利用される。遺伝子型特定は、二倍生物(即ち、各遺伝子の二つのコピーを有する生物)が基準対立遺伝子(基準タイプ同型接合体)の二つのコピー(基準および変形対立遺伝子(即ち、異型接合体)それぞれの一つのコピー)を含むか、変形対立遺伝子(即ち、変形型同型接合体)の二つのコピーを含むかの決定を伴う。遺伝子型特定分析を行うとき、本発明の方法は単一の変形部位を問いただすために利用され得る。しかしながら、マルチプクレシングのセクションで更に以下に説明するように、同方法は、同じ遺伝子、異なる遺伝子、または、その組み合わせのいずれかで多数の異なるDNA遺伝子座において個体の遺伝子型を決定するために使用される。
【0131】
遺伝子型特定分析を行うために利用される装置は、二倍対象物に対する二つの対立遺伝子それぞれのコピーが機能できるDNA濃度で反応部位に存在することを統計的観点から確実にするよう適当なサイズの反応部位を利用するよう設計される。さもばければ、分析は、単に第2の対立遺伝子のコピーが反応部位に存在しないため異型接合体が同型接合体であることを示唆する結果を生ずる。以下の表2は、本願で開示される装置と利用され得る様々な典型的なDNA濃度で1nl反応容積に存在するゲノムのコピーの数を示す。
【0132】
(表2:示されるDNA濃度で1nL容積に存在するゲノムコピーの数)
【0133】
【表2】
【0134】
一般的に、サンプルの確率的釣り合いにより、増幅反応が開始される前に存在するコピー数は測定で起こり得るエラーを決定する。ある装置を用いる遺伝子型特定分析は、典型的には、約0.10ug/uLのDNA濃度を有するサンプルを用いて行われるが、発明者は、1反応部位当たり単一のゲノムの濃度で成功したTaqMan反応を行った。
【0135】
(2.方法)
遺伝子型特定分析は、様々な異なるアプローチで行われる。これらの方法において、「イエス」または「ノー」結果を得ることが一般的に十分であり、即ち、検出は所与の対立遺伝子が存在するか否かといった質問に答える必要があるだけである。従って、分析は、多型性部位で潜在的に一つの対立遺伝子の存在を検出するために必要なプライマーまたはヌクレオチドだけで行われる。しかしながら、より典型的には、多型性部位で潜在的に各対立遺伝子の存在を検出するためのプライマーおよびヌクレオチドが含まれる。適切なアプローチの例は、以下の通りである。
【0136】
単一塩基対伸長(SBPE)反応。SBPE反応は、遺伝子型特定分析を行うために特に開発された一つの技法である。幾つかSPBE検定が開発されているが、一般的なアプローチは非常に類似している。典型的には、これら検定は、プライマーの3’端が変形部位の直ぐ5’側またはそれに隣接するようターゲット核酸と相補的なプライマーをハイブリダイズすることを伴う。伸長は、変形部位を占有するヌクレオチドと相補的な一つ以上の標識された非伸長型ヌクレオチドおよびポリメラーゼが存在する中で行われる。非伸長型ヌクレオチドは、プライマーに一旦組み込まれるとポリメラーゼによる更なる伸長を防止するヌクレオチド類似体である。添加する非伸長型ヌクレオチドが変形部位においてヌクレオチドと相補的である場合、標識された非伸長型ヌクレオチドはプライマーの3’端に組み込まれ標識された伸長生成物を生成する。従って、伸長されたプライマーは、ターゲット核酸の変形部位にどのヌクレオチドが存在するかを示す。このような方法および関連する方法は、例えば、米国特許第5,846,710号、第6,004,744号、第5,888,819号、第5,856,092号、および、第5,710,028号、並びに、WO92/16657に説明される。
【0137】
伸長された生成物の検出は、検出セクションにおける伸長反応に対して説明したFRET検出アプローチを用いて検出される。従って、例えば、本願記載の装置を用いて、供与体/受容体・発蛍光団の一つのメンバで標識されるプライマー、1乃至4の標識された非伸長型ヌクレオチド(一つより多くの非伸長型ヌクレオチドが含まれる場合に区別をつけて標識される)、および、ポリメラーゼを含む試薬混合物は反応部位に導入される(または前にスポッティングされる)。テンプレートDNAを含むサンプルは、テンプレート伸長を生ずることを可能にするよう反応部位に導入される。形成される全ての伸長生成物は、FRET信号の形成によって検出される(例えば、米国特許第5,945,283号、および、PCT公報WO97/22719参照)。反応は、上述の温度制御方法および装置を用いて信号を増加するために任意にはサーモサイクルされる。
【0138】
定量的PCR。遺伝子型特定分析は、前述の定量的PCR方法を用いて行われてもよい。この場合、対立遺伝子それぞれに相補的な区別をつけて標識されたプローブは、プライマー、ヌクレオチド、および、ポリメラーゼと共に試薬として含まれる。しかしながら、反応は、単一のプローブだけで行われてもよく、これは、信号の欠如が特定の対立遺伝子が存在しないことによるか単に失敗した反応によるものかについてあいまいさをつくる。二つの対立遺伝子がある多型性部位について可能である典型的な2対立遺伝子の場合、それぞれ対立遺伝子の一つと完全に相補的な二つの区別可能な標識されたプローブが増幅プライマー、ヌクレオチド、およびポリメラーゼと共に試薬混合物に通常含まれる。ターゲットDBAを含むサンプルが反応部位に導入される。プローブが相補的な対立遺伝子がターゲットDNAに存在する場合、増幅が起こり、結果として上述したような検出可能な信号が生ずる。どちらの区別可能な信号が得られるかに基づいて、多型性部位でのヌクレオチドのアイデンティティが決定される。両方の信号が検出される場合、両方の対立遺伝子が存在する。反応中のサーモサイクリングは、上述の温度制御セクションに説明されたように実施される。
【0139】
(C.遺伝子発現分析)
(1.概要)
遺伝子発現分析は、特定の細胞で一つ以上の遺伝子が発現されるレベルを決定することを伴う。決定は、定性的でもよいが、一般的に、定量的である。差別的な遺伝子発現分析において、一つの細胞(例えば、試験細胞)における遺伝子のレベルは、別の細胞(コントロール細胞)における同じ遺伝子の発現レベルと比較される。幅広い種類のこのような比較が行われる。その例は、健常細胞と疾患細胞との間、ある薬物で治療された個体からの細胞と別の治療されていない個体からの細胞との間、特定の毒物に曝された細胞と曝されてない細胞との間等の比較を含むがこれに制限されない。発現レベルが試験およびコントロール細胞との間で変化する遺伝子は、治療に対するマーカおよび/またはターゲットとして機能する。例えば、あるグループの遺伝子が健常細胞よりも疾患細胞において上方制御される場合、このような遺伝子は、疾患のマーカとして機能し、診断試験のベースとして潜在的に利用される。これら遺伝子は、ターゲットでもよい。病気を治療する方法は、上方制御される遺伝子の発現の減少を生ずる手順を含んでもよい。
【0140】
本願に開示する装置の設計は、様々な遺伝子発現分析を容易化することについて便利である。装置が多数の反応部位を有するため、多数の遺伝子および/サンプルが同時に試験され得る。例えば、ブラインド流れチャネル装置を用いると、何百または何千もの遺伝子の発現レベルが同時に決定される。装置は、差別的な遺伝子発現分析を容易化する。例えば、マトリクス設計を用いると、健常細胞から得られるサンプルは一つの流れチャネルで試験され、疾患細胞からのサンプルは直ぐ隣のチャネルで実行される。この特徴は、二つのサンプルが同時に且つ同じ条件下で同じ装置で実行されるため、結果の検出し易さおよび正確性を向上させる。
【0141】
(2.サンプル準備および濃度)
遺伝子または複数の遺伝子の転写レベル(従って発現レベル)を測定するために、複数の遺伝子または遺伝子の断片のmRNA転写を有する核酸サンプル、または、mRNA転写から得られる核酸が得られる。mRNA転写から導出される核酸は、合成のためにmRNA転写またはその部分配列が最終的にテンプレートとして機能する核酸である。従って、mRNAから逆転写されたcDNA、cDNAから転写されたRNA、cDNAから増幅されたDNA,増幅されたDNAから転写されたRNAは全てmRNA転写から導出され、このような導出された生成物の検出はサンプルにおける元の転写の存在および/または発生量を示す。したがって、適切なサンプルは、遺伝子または複数の遺伝子のmRNA転写、mRNAから逆転写されたcDNA、cDNAから転写されたcRNA、遺伝子から増幅されたDNA、増幅されたDNAから転写されたRNAを含むがこれらに制限されない。
【0142】
幾つかの方法では、核酸サンプルは、生物学的サンプルから隔離された総mRNAであり、別の場合では、核酸サンプルは生体サンプルからの合計RNAである。本願で使用する「生体サンプル」といった用語は、生物、または、生物の構成要素、例えば、細胞、生体組織および体液から得られるサンプルである。幾つかの方法では、サンプルは人間の患者から得られる。このようなサンプルは、唾液、血液、血液細胞(例えば、白血球)、組織、または、細針生検サンプル、尿、腹水、および、fleural液、または、それらからの細胞を含む。生体サンプルは、組織学的目的のために採られる凍ったセクションのような組織のセクションを含む。二つのサンプルが比較目的のためにしばしば提供される。例えば、サンプルは、異なる細胞または組織タイプから、異なる個体または二つの異なる治療(例えば、薬物治療されたおよびコントロール)を受ける同じ元のサンプルからでもよい。
【0143】
mRNAの単離を排除しない任意のRNA単離技術は、このようなRNAサンプルの精製のために利用される。例えば、核酸の単離および精製の方法は、WO97/10365、WO97/27317、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization With Nucleic Acid Probes, PartIの第3章、Theory and Nucleic Acid Preparation,(P.Tijssen,ed.) Elsevier,N.Y.(1993):Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization With Nucleic Acid Probes, PartIの第3章,Theory and Nucleic Acid Preparation,(P.Tijssen,ed.) Elsevier,N.Y.(1993),およびSambrook,et al.,Molecular Clonig:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press、N.Y., (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, (Ausubel, F.M.,et al.,eds.)John Wiley&Sons,Inc., New York(1987−1993)に詳細に説明される。多数の組織サンプルは、例えば、米国特許第4,843,155号に開示されるChomezynski,Pの単一ステップRNA単離処理を含む、当該分野において公知の技術を用いて容易に処理され得る。
【0144】
上述の装置を利用する遺伝子発現分析において、結果に影響を及ぼす顕著な要因はサンプルにおける核酸の濃度である。低コピー数では、ノイズはコピー数の平方根に関連する。従って、許容可能と判断されるエラーのレベルは要求されるコピー数を支配する。特定のサンプル容積における要求されるコピー数は、要求されるDNA濃度を提供する。必ずしも最適でないが、定量反応は、50%までのエラー・レベルで行われ得るがそれよりも低いことが好ましい。1ナノリットルの容積を仮定して、特定のエラー・レベルを実現するために要求されるDNA濃度は表3に示される。ある装置で使用されるような1ナノリットルの容積はマイクロ流体装置で実行可能な濃度で遺伝子発現生成物の十分なコピーを有することが分かる。
【0145】
(表3:遺伝子発現−DNA量)
【0146】
【表3】
【0147】
更なる計算により、1ナノリットルの反応部位を利用する本願で提供する幾つかの装置が正確な発現結果を実現するために十分なDNAを含むことを示す。具体的には、典型的なmRNA準備手順は、mRNAの約10ugを生ずる。典型的には、1細胞当たり各mRNAの1乃至10,000コピーがあることが示されている。任意の所与の細胞内で発現されるmRNAのうち、約四つの最も一般的なメッセージが全mRNAレベルの約13%を占める。従って、このような非常に発現されたメッセージは、mRNAの1.3ugを占める(それぞれ4×10−12モルまたは約2.4×1012コピー)。前述の発現範囲を鑑みて、2×10−8コピーのレベルでレア・メッセージが存在することが予想される。標準分析においてmRNAサンプルが10ulに溶解される場合、レア・メッセージの濃度は約2×107コピー/ulであり、この濃度は1nlウェル(または4×1011M)当たり20,000コピーに対応する。
【0148】
(3.方法)
発現分析は典型的には定量的分析を伴うため、検出は上述の定量的リアルタイムPCR方法の一つを用いて典型的には実現される。従って、TaqManアプローチが利用される場合、反応部位に導入される(または前にスポッティングされる)試薬がプライマー、標識されたプローブ、ヌクレオチド、および、ポリメラーゼの一つまたはいずれかを含み得る。挿入色素が利用される場合、試薬混合物は、典型的には、プライマー、ヌクレオチド、ポリメラーゼ、および、挿入色素の一つまたはいずれかを典型的には含む。
【0149】
(D.マルチプレクシング)
本願記載のアレイ・ベースの装置(例えば、図1A,1F、2、3Aおよび3B,および、添付のテキスト参照)は、同時に多数の増幅反応を行うよう本質的に設計されている。しかしながら、この特徴は、各反応部位内で多数の分析(例えば、遺伝子型特定および発現分析)を行うことで更に簡単に拡張され得る。
【0150】
マルチプレクス増幅は、例えば、サーマルサイクリング処理中に関心のある特定のターゲット核酸に対してそれぞれ特異的な複数のプライマーを利用することで単一の反応部位内で実施され得る。異なる増幅された生成物の存在は、定量的RT−PCR反応を行うために区別をつけて標識されたプローブを用いて、または、区別をつけて標識された分子ビーコン(以下参照)を用いることで検出され得る。このようなアプローチでは、各区別をつけて標識されたプローブは、特定の増幅されたターゲットにだけハイブリダイズするよう設計される。利用される異なる標識の賢明な選択により、異なる標識が単一の反応において異なる波長で励起および/または検出される分析が行われる。更なる、このようなアプローチで適している適当な蛍光標識の選択に関する手引きは、Fluorescence Spectroscopy (Pesce,et al.,Eds.)Marcel Dekker,New York(1971);White,et al.,Fluorescence Analysis:A Practical Approach, Marcel Dekker, New York(1970);Berlman, Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules, 2nd ed., Academic Press, New York (1971);Griffiths, Colour and Constitution of Organic Molecules, Academic Press, New York (1976);Inidicators (Bishop,Ed.)Pergamon Press, Oxford,19723;およびHaugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, Molecular Probes, Eugene (1992)を含む。
【0151】
多数の遺伝子型特定および発現分析は、各反応部位で任意に行われる。TaqManのような定量的PCR方法が利用される場合、関心のあるターゲットDNAの異なる領域を増幅するプライマーが単一の反応部位内に含まれる。各領域に対する区別がつけられて標識されたプローブは、形成される生成物を区別するために利用される。
【0152】
(E.非核酸分析)
幅広い種類の核酸分析を行うのに有用な一方で、装置は、幾つかの他の用途に利用されてもよい。前述した通り、装置は、検出可能な信号または、反応生成物との相互作用の際に信号を生成する検出試薬と反応し得る反応生成物を生成する二つ以上の種間の任意の相互作用を分析するために利用され得る。
【0153】
従って、例えば、装置は、特定の所望の活性を有する試験物質を識別するために幾つかのスクリーニング用途に利用され得る。特定の例として、装置は、一つ以上の酵素の基質または阻害物質としての活性について化合物をスクリーニングするために利用される。このような分析において、試験化合物および他の必要な酵素検定試薬(例えば、緩衝剤、金属イオン、補因子、および、基質)は、反応部位に導入される(さもばければ、前に堆積される)。酵素サンプルは、導入され、反応(試験化合物が基質の場合)または反応の阻害(試験化合物が阻害物質の場合)が検出される。このような反応または阻害は、基質の損失および/または生成物の出現を直接的にまたは間接的にモニタリングするような標準技術によって実現され得る。
【0154】
十分に大きい流れチャネルおよび反応部位を有する装置は、細胞と一つ以上の試薬との間の相互作用を検出するために細胞検定を行うために利用される。例えば、ある分析は特定の細胞型がサンプルに存在するか否かの決定を伴う。これを実現する一例は、ある細胞型と優先的に反応する細胞特異的色素を利用することである。従って、このような色素は、反応部位に導入され得、次いで細胞が添加され得る。細胞の染色は、標準的な顕微鏡技法を用いて検出され得る。別の例示として、試験化合物は、情報伝達路のような細胞応答をトリガまたは阻止する能力についてスクリーニングされる。このような分析において、試験化合物は部位に導入され、細胞が添加される。反応部位は、細胞応答の形成を検出するために確認される。
【0155】
このような装置の関連装置および適用法の更なる説明は、全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込む2001年11月30日に出願された同時係属中の共有に係る米国仮出願第60/335,292号に記載される。
【0156】
(XI.加工)
(A.一般的特徴)
前に述べられた通り、提供されるマイクロ流体装置は、一般的に単一および多層ソフト・リソグラフィ(MSL)技法および/または犠牲層カプセル化方法を利用して一般的に構成される。基本MSLアプローチ法は、ミクロ加工モールドに一連のエラストマー層を鋳造し、モールドから層を除去し、層を融合することを含む。犠牲相カプセル化アプローチでは、フォトレジストのパターンがチャネルが望まれる部位に堆積される。マイクロ流体装置を生産するこれら技法および使用は例えば、Unger,et al.,(2000)Science 288:113−116、Chou,et al.,(2000)“Integrated Elastomer Fluidic Lab−on−a−chip−Surface Patterning and DNA Diagnostics, in Proceedings of the Solid State Actuator and Sensor Workshop, Hilton Head, S.C.、および、PCT公報WO01/01025により詳細に説明され、それぞれ全ての目的のために本願で全体的に参照として組み込む。
【0157】
簡単に、前述の加工方法は最初に上層(例えば、制御チャネルを有するエラストマー層)および底層(例えば、流れチャネルを有するエラストマー層)に対するマザー・モールドをシリコン・ウェハ上にフォトレジスト(Shipley SJR5740)を用いたフォトリソグラフィにより加工することを伴う。チャネル高さは、スピン・コーティング速度によって正確に制御されえる。フォトレジスト・チャネルは、フォトレジストをUV光に曝し、続いて現像することで形成される。熱リフロー処理および保護処理は、本願で全体的に参照として組み込むM.A.Unger、H−P.Chou、T.Thorsen,A.SchererおよびS.R.Quake、Schience(2000)288:113によって説明されるように典型的には実現される。混合された二部分シリコーン・エラストマー(GE RTV615)は、底モールドにスピンされ、上モールドに流される。ここでも、スピン・コーティンが底ポリマー流体層の厚さを制御するために利用される。部分的に硬化された上層は、底層と整列されアセンブルしてオーブンに280℃で25分間焼かれた後にモールドから剥がされる。最終的な80℃での1.5時間の焼きを用いて、これら二層を不可逆的に結合させる。一貫底シリコン・マザー・モールドから剥がされると、RTV装置は、HCL(0.1N、80℃で30分)典型的には処理される。この処理は、いくつかのSi−O−Si結合を切断するよう作用し、それにより、チャネルをより親水性にするヒドロキシ基を露出する。
【0158】
装置は、任意には、支持部に密閉してシールされる。支持部は本質的にどの材料から製造されてもよいが、表面はシールが接着力によって主に形成されるため良好なシールを確実にするよう平坦である。適切な支持部の例としては、ガラス、プラスチックなどが挙げられる。
【0159】
前述の方法により形成される装置は、流れチャネルの一壁を形成する基板(ガラス製スライド)を結果として生ずる。あるいは、装置は、一旦マザー・モールドから除去されると、流れチャネルがエラストマー材料に完全に囲まれるよう薄いエラストマー膜にシールされる。結果として生ずるエラストマー装置は、任意には、基板支持部に接合される。
【0160】
(B.ブラインド・チャネル設計を利用する装置)
(1.層形成)
製造中に試薬が反応部位に堆積されるブラインド・チャネル設計に基づくマイクロ流体装置は、典型的には三層よりなる。底層は試薬が堆積される層である。底層は、MLS方法に関して上述した参考文献に記載される様々なエラストマー材料から形成される。典型的には、材料はポリジメチルシロキサン(PMDS)エラストマーである。特定の装置に対して望まれる反応部位の配置および位置に基づいて、適当な試薬がスポッティングされるべき底層上での位置を決定することができる。PMDSは疎水性のため、堆積された水性スポットは縮まって非常に小さいスポットを形成する。堆積された試薬は、前述したとおり、サンプル溶液が一旦反応部位に導入されると試薬がサンプル溶液に溶解されることが意図されるため、試薬とエラストマーの表面との間で共有結合が形成されないよう堆積される。
【0161】
装置の他の二層は、流れチャネルが形成される層と、制御および、任意には、ガード・チャネルが形成される層である。これら二層は、本セクションにおいて前述した一般的方法に従って準備される。結果として生ずる二層構造は、試薬が堆積された第1の層の上に配置される。三層の組成の特定例は、(構成要素A対構成要素Bの比)第1の層(サンプル層)30:1(重量);第2の層(流れチャネル層)30:1、および、第3の層(制御層)4:1)である。しかしながら、エラストマー構成要素の他の組成および比が利用されてもよいことも予想される。
【0162】
本処理中、反応部位は、試薬が適当な反応部位内に位置決めされるよう堆積された試薬と整列される。図6は、装置の四つのコーナーから撮られた写真のセットを示し、これら写真は前述のアプローチを利用して堆積された試薬が反応部位内に正確に整列され得ることを示す。これらの写真は、分岐流れチャネルの端に位置するガード・チャネルおよび反応部位を示す。白い円は、反応部位に対する堆積された試薬の位置を示す。説明した通り、各試薬スポットは、反応部位の範囲内である。
【0163】
(2.スポッティング)
試薬は、幾つかの市販されている試薬スポッタを利用して、且つ、様々な確立されたスポッティング技術を用いて堆積される。装置の準備に利用される適切なスポッタの例は、ピン・スポッタ、音響スポッタ、自動マイクロピペット、電気泳動ポンプ、インク・ジェット・プリンタ装置、インク・ドロップ・プリンタ、および、ある浸透圧ポンプを含む。市販されているスポッタの例は、Cartesian Technologies MicroSys 5100 (Irvine, CA), Hitach SPBIO (Alameda, CA), Genetix Q−Array (United Kingdom), Affymetrix 417(Santa Clara, CA)、および、Packard Bioscience SpotArray (Meriden, CT)を含む。一般的に、非常に小さいスポットの試薬が堆積され、通常、10nl未満のスポットが堆積され、ある場合では、5nl未満、2nl未満、または、1nl未満、またある場合では0.5nl未満、0.25nl未満、または、0.1nl未満で堆積される。
【0164】
材料のアレイは、本願で参照として組み込むFoder,et al.の“Array of oligonucleotides on a solid substrate”なる名称の米国特許第5,445,934号に開示される方法により形成され得、この方法において、SNPプローブのようなオリゴヌクレオチド・プローブが空間光により指向されるフォトリソグラフィを用いて原位置で合成される。このようなアレイは、ブラインド充填チャンバのような反応部位に対応する基板の領域が基板上の既知の位置にアレイされる一つ、好ましくは、一つより多くのオリゴヌクレオチド・プローブを含むよう本発明のマイクロ流体装置の基板またはベースとして使用される。図15に示すように、分割マイクロ流体構造の場合、曲がった流体チャネルに沿って四角いボックスで示される反応部位は複数の異なるSNPプローブ、好ましくは、個体の集団から個体を識別するに適切なSNPプローブの集まりを含み、そして曲がった流れチャネルに複数の個体からの核酸配列を含む流体サンプルが導入される場合などには、好ましくは、曲がった流体チャネルに沿った複数の反応部位が、複数の異なるSNPプローブを含み、複数の弁が、作動されると曲がった流れチャネルを分割して各反応部位に流体サンプルの一部分を含むよう各反応部位を互いから隔離するよう曲がった流れチャネルと連通する。サンプルの構成要素の増幅は、各反応部位内に位置するSNPプローブのアレイを結合するための分子、例えば、核酸分子の数を増加させるために実施される。ある実施形態では、曲がった流体チャネルに沿った反応部位それぞれは同じアレイ、つまり、同じSNPプローブ・アレイを有し、他の実施形態では、曲がった流体チャネルに沿った二つ以上の反応部位は異なるセットのSNPプローブを有する。他の分割流体チャネル構造、例えば、分岐されたおよび/または分岐された分岐システム等が使用されてもよい。本願で記載するスポッティングのような他のアレイ技法も曲がったまたは分岐されたような共通の流体チャネルに沿った分割可能な反応部位内に位置するアレイを形成するよう同様に使用される。
【0165】
以下の実施例は、本願に説明する装置および方法のある特徴を更に例示するために提供される。実施例は、本発明を制限するものとして考えられてはならない。
【実施例】
【0166】
(XII.実施例)
(A.実施例1:信号強度評価)
(1.はじめに)
この実験のセットの目的は、マクロTaqMan反応の50%より大きい信号強度で本願記載の設計のマイクロ流体装置で成功なPCR反応が行われることを示すことである。
【0167】
(2.マイクロ流体装置)
MSL処理を用いて加工される三層のマイクロ流体装置は、以下の実施例に説明する実験を行うよう設計され加工される。図7Aは、装置の断面図を示す。図示するように、装置700は、流れチャネルが形成される層722を含む。この流体層722は、制御およびガード層を含む上にある層720と、下にあるシーリング層724との間に挟まれる。シーリング層724は、流れチャネルの一方の側を形成する。結果として得られる三層構造は、基板726(本実施例ではスライドまたはカバースリップ)に固定され、構造上の剛度を提供し、熱伝導性を向上し、マイクロ流体装置700の底からの蒸発を防止することを補助する。
【0168】
図7Bは、流れ層722における流れチャネル、および、制御/ガード層720における制御チャネルおよびガード・チャネルの設計の概略図である。装置700は、独自の入口708をそれぞれ含む10個の独立した流れチャネル702、および、分岐ブラインド・チャネル704よりなり、各ブラインド・チャネル704は1nlの反応部位706を有する。装置700は、十分な圧力が加えられると反応部位706を隔離する制御ライン712のネットワークを含む。一連のガード・チャネル716も反応部位706から液体が蒸発することを防止するために設けられ、流体は入口718を介して導入される。
【0169】
(3.実験設定)
人の雄性ゲノムDNA(Promega,Madison WI)からのβアクチン遺伝子のエクソン3を増幅するためにβ−アクチンプライマーおよびTaqManプローブを用いたPCR反応が装置700で行われた。TaqMan反応は、次の成分を含む:1×TaqMan緩衝液A(50mM KCL、10mM トリスHCl、0.01M EDTA、60nM Passive Reference 1(PR1)、pH8.3);3.5−4.0mM MgCl;200nM dATP、dCTP、dGTP、400nM dUTP、300nM βアクチンフォワード・プライマーおよびリバース・プライマー、200nM FAM標識されたβアクチン・プローブ;0.01U/ul AmpEraseUNG(Applied Biosystems, Foster City,CA);0.1−0.2U/ul; DyNAzyme(Finnzyme,Espoo,Finland);0.5%トリトン−x−100(Sigma,St.Louis,MO);0.8ug/ulゼラチン(Calbiochem、SanDiego,CA);5.0%グリセロール(Sigma, St. Louis, MO);脱イオンH2Oおよび雄性ゲノムDNA。反応の成分は25μlの全反応容積を生成するように添加される。ターゲットDNA以外の全てのTaqMan反応成分よりなるネガティブコントロール(コントロール)はPCR反応の各セットに含まれる。
【0170】
一旦TaqManサンプルおよびコントロールが準備されると、1mlの注射器に取り付けられたゲルが挿入されたピペット先端を用いてマイクロ流体装置700に注入される。ピペット先端は、反応サンプルで充填され、流体ビア708に挿入される。流れチャネル702は、ブラインド・チャネル704全体および反応部位706の全てが充填されるまで注射器に逆圧を手動で加えることで充填される。制御ライン712は、全てのサンプルが流れライン702、704に挿入された後に脱イオン水で充填され、15−20psiに加圧される。加圧された制御ライン712は、弁を閉じ、1nlのウェル706にサンプルを隔離するよう作動される。ガード・チャネル716が次に脱イオン水で充填され、5−7psiに加圧される。サーモサイクル器の平板に鉱油(15ul)(Sigma)が配置され、マイクロ流体装置/カバーガラス700がサーモサイクル器に配置される。マイクロ流体装置700が初期ランプおよび三段階または二段階サーモサイクリング・プロファイルのいずれかを用いてサーモサイクルされる。
1.95℃への初期ランプおよび1分間維持(1.0℃/sで75℃まで、0.1℃/秒で95℃まで)。
2.40サイクル(92℃を30秒間、54℃を30秒間、および、72℃を1分間)に対して三段階サーモサイクリング;または、
3.40サイクル(92℃を30秒間、および、60℃を60秒間)に対して二段階サーモサイクリング。
【0171】
マイクロ流体装置で実施される反応と区別するためにマクロTaqMan反応と指定される残留する反応混合物を有するMicroAmp管(Applied Biosystems,Foster City,CA)をGeneAmp PCRシステム9700(Applied Biosystems,Foster City,CA)に配置され、9600モードでサーモサイクルされる。マクロTaqMan反応は、マイクロ流体装置で実施される反応に対する巨視的コントロールとして機能する。サーモサイクリング・プロトコルは、初期ランプ速度がマクロTaqMan反応に対しては制御されていないが、マイクロ流体装置のそれに適合するように設定される。
【0172】
一旦サーモサイクリングが完了されると、制御およびガードラインは、減圧され、チップがガラス・スライド(VWR,West Chester,PA)に移動される。チップは、アレイWoRxスキャナ(Applied Precision,Issaquah,WA)に変更されたキャリヤと配置される。三つの異なる励起/発光波長:475/510nm(FAM),510/560nm(VIC)、および、580/640nm(Passive Reference 1(PR1))に対して蛍光強度が測定される。
【0173】
アレイ・ワークス・ソフトウェアーはマイクロ流体装置における蛍光の画像化、および、それぞれ1nlウェルの信号および背景強度の測定に用いられた。結果がマイクロソフト・エクセル・ファイルを用いて分析され、βアクチンTaqMan反応に対するFAM/PR1比を計算する。従来のマクロTaqManに関して、ターゲットDNAに対するポジティブサンプルは製造者によって提供されるプロトコル(TaqMan PCR Reagent Kit Protocol)に記載される計算を用いて決定される。信号強度がサンプルのFAM/PR1比をコントロールのFAM/PR1比を割ることで計算される。成功する反応は、サンプル比が99%信頼閾値レベルよりも大きいとして定義される。
【0174】
(4.結果)
最初に、AmpliTaq Gold(Applied Biosystems, Foster City, CA)がTaqMan反応に用いられ、5.0−14.0のTaqMan反応比と比べて1.5−2.0のFAM/PR1/コントロール比が生成される。結果はポジティブであるが、向上した信号強度が望まれる。従って、AmpliTaq GoldポリメラーゼがDyNAzymeポリメラーゼの増加した熱安定性、プルーフリーディング、および、不純物に対する抵抗によりDyNAzymeポリメラーゼで置き換えられた。0.025U/ulの標準的なマクロTaqMan DyNAzyme濃度がマイクロ流体実験において使用される。DyNAzymeへのこのポリメラーゼの変更は、3.5−5.8のFAM/ROX/コントロール比を生成した。信号強度が改善されたが、一貫した結果を実現することが困難である。幾つかのプロテインがPDMSに付着することが知られているため、ポリメラーゼの濃度が増加され、表面変更添加物が含まれる。マイクロ流体装置に1nl当たり100pgまたは10pgのゲノムDNAを含んで、マクロTaqManに対する標準濃度であるDyNAzymeの二つの増加した濃度、8x(0.2U/ul)および4x(0.1U/ul)が試験される。ゼラチン、グリセロール、および、0.5%トリトン−x−100は、ポリメラーゼがPDMSに付着することを防止するために添加される。マイクロ流体装置(チップ)およびマクロTaqManコントロールにおける反応の結果は図8に示される。
【0175】
マイクロ流体TaqMan反応比が4.9−8.3の範囲にある一方で、マクロTaqMan反応は7.7−9.7の範囲にある。従って、チップにおけるTaqMan反応の信号強度はマクロTaqMan反応の87%である。4xまたは8xDyNAzyme間で著しい差がなかった。結果は、マイクロ流体装置において、マクロTaqMan反応と比べてPCR反応が50%より大きい信号強度で行われることを示す。結果は、少なくとも4つの試みを通じて一貫している。
【0176】
(B.実施例2−試薬のスポッティング)
(1.はじめに)
実験の目的は、マイクロ流体装置における成功したスポッティングPCR反応を示すことである。本文における「スポッティング」といった用語は、マイクロ流体装置の一部にアセンブルされる、基板上に小滴の試薬(スポット)を配置することを意味する。スポッティングされた試薬は、一般的にPCRを実施するために必要な試薬混合物のサブセットである。
【0177】
(2.手順)
(i.試薬のスポッティング)
試薬のルーティン・スポッティングは、接触印刷処理を通じて実施される。試薬は、金属ピンでソース・ウェルのセットから取られてピンをターゲット基板に接触させることで堆積される。この印刷処理は、図9に示される。図示するように、試薬はソース(例えば、マイクロタイター板)から取られ、充填されたピンを基板と接触させることで印刷される。洗浄ステップは、脱イオン水中でかき混ぜ、続いて真空乾燥することを含む。試薬スポットを印刷するために使用されるシステムは、TeleChem“ChipMaker”ブランドのピンを用いることでCartesian Technologies MicroSys5100(Irvine, CA)であるが、他のシステムも上述した通り、使用され得る。
【0178】
使用されるピンは、取り込み容積(従って、印刷可能なスポットの数)を増加させるために電子製粉されたスロット(図9参照)を組み込むTeleChem ChipMaker 4ピンである。使用される動作条件下(典型的には、75%相対湿度および約25℃の温度)では、百を越えるスポットが1ローディングサイクル、1ピン当たり印刷される。この条件下では、PDMS基板にスポッティングされる試薬の容積は0.1nLのオーダである。
【0179】
ピンの先端の寸法は125×125μmである。所望の試薬の最終スポットは、これよりも実質的に小さいが(直径で7μm程に小さい)、ピンのサイズは容易に実現可能なスポット・スペーシングに対する下限を定める。実現可能なスペーシングは、最終装置における最小のウェルからウェルまでのピッチを決定する。このような装置および前述の方法を用いて、180μmのスペーシングを有するアレイが実現される。作業チップに組み込まれるアレイは、600乃至1300ミクロンのスペーシングを有する傾向がある。
【0180】
スポッティングは、一回に一つのピンだけを用いて行われる。しかしながら、使用中のシステムは最大で32ピンを収容することができるピン・ヘッドを有する。標準的なサイズのチップ(20×25mmのオーダのアレイ寸法)の印刷は、5分未満である。
【0181】
(ii.スポッティングされたチップのアセンブリ)
PCR装置の流れおよび制御層は、上述の通常のMSL処理に従ってアセンブルされる。マイクロ流体装置設計は、実施例1で説明されたものと同じである。同時に、30:1の成分比A:Bを有する150μmの厚さのPDMSよりなる基板層は、ブランク・シリコン・ウェハをスピン・コーティングされ、80℃で90分間硬化されることで形成される。
【0182】
PDMSの硬化されたブランク基板層(図7Aのシーリング/基板層724)は、試薬スポッティングの目標として機能する。スポットのパターンは、ブランク・ウェハ上にまだある基板に印刷される。PCR反応のためにスポッティングされる試薬は、増幅されるべき特定の遺伝子に特異的なプライマーおよびプローブである。スポッティングされた試薬は1:1:1の容積比にある300nMのβアクチンフォワード・プライマー(FP)、300nMのβアクチンリバース・プライマー(RP)、および、200nMβアクチンプローブ(Prb)を含む。ある場合では、スポッティングされた混合物を濃縮することを通じて化学的物質を更に調節することが有用である。プライマーおよびプローブの濃度が通常の顕微鏡製法値と等しく、または、僅かに高くするよう濃度を調節すると、一貫した良好な結果が得られることが分かった。従って、スポッティングされた試薬は、マクロ反応の濃度の3倍および4倍に濃縮される。試薬の濃縮は、Centrivap(加熱および排出される遠心分離機)において実施され、相対FP:RP:Prb比を変更しない。増加したスポット濃度は、試薬が1nL反応容積に再懸濁されると、正確な最終濃度を結果として生ずる。スポッティングされた試薬は、プライマーおよびプローブに制限されず、または、全て三つ(FP、RP、および、Prb)がスポッティングされなくてもよい。プローブだけ、または、プライマーの一つがスポッティングされる適用法が実施される。スポッティングされたサンプル・プライマー/プローブのセットがTaqManβアクチンおよびTaqMan RNAse−Pである実験が行われる。
【0183】
基板層へのスポッティング処理に続いて、組み合わされた流れおよび制御層(即ち、図7Aの層720および722)がスポット・パターンと整列され接触される。更に80℃での60−90分間の焼成が基板を残りのチップに結合させるために使用される。チップがアセンブルされた後、PCR反応の残留する成分(実施例1に説明)がチップの流れチャネルに注入され、チップは実施例1に説明するようにサーモサイクルされる。
【0184】
(3.結果)
PCR反応は、プライマー(フォワードおよびリバース・プライマー)およびプローブ分子がスポッティングされた装置を用いて成功にかつ繰り返し実施される。反応が成功に実施されたチップからのデータの例は図10に示される。スポッティングされた試薬は、実施例1に述べたように成功したPCR反応を生じた。成功した反応は、2段階、および、3段階サーモサイクリング・プロトコルを用いて実施される。
【0185】
(C.実施例3:遺伝子型特定)
(1.はじめに)
以下の実験の目的は、本願が記載するようなマイクロ流体装置またはチップを利用して遺伝子型特定実験が行われることを示すためである。具体的には、これらの実験は、装置で行われる反応が十分な感度を有するかを決定し、βアクチン以外の他のプライマー/プローブのセットがマイクロ流体装置で実施されることを確実にするよう設計される。
【0186】
(2.方法/結果)
(i.RNaseP実験)
RNaseP TaqMan反応(Applied Biosystems;Foster City,CA)は、他のプライマー/プローブのセットが検出可能な結果を生成することを示すために実施例1に説明したマイクロ流体装置で実施された。RNaseP反応は、RNasePプライマー/プローブのセットがβアクチンプライマー/プローブのセットとは異なり単一のコピー遺伝子(2コピー/ゲノム)を検出するためより高いレベルの感度を必要とする。βアクチンは、単一のコピーβアクチン遺伝子および幾つかの擬似遺伝子を検出し、集合的に全部で約17コピー/ゲノムである。RNaseP反応は、実施例1で説明したのと同じ成分で行われるが、βアクチンプライマー/プローブのセットはRNasePプライマー/プローブのセットで置き換えられる。更に、RNasePプライマー/プローブのセットは、蛍光信号を向上させるために製造者の推奨した値の4×で使用される。VIC色素は、RNasePに対するプローブと結合され、分析はVIC/PR1比に集中される。四つの実験のうちの一つの結果は図11に示される。
【0187】
マクロTaqMan反応に対するVIC/PR1/コントロール比は1.23である。マイクロ流体装置におけるTaqMan反応に対する対応する比は1.11および1.21である。マイクロ流体装置におけるゲノムDNAサンプルの比は、99%信頼閾値レベルより上である。更に、マイクロ流体装置におけるTaqMan反応の信号強度はマクロTaqMan反応の50%および93.7%である。マイクロ流体装置におけるコントロールTaqMan反応は、.006および.012の標準偏差を有し、マイクロ流体装置にわたる反応の一貫性を示す。従って、チップにおけるTaqMan反応が1ゲノム当たり2コピーを検出するに十分に敏感であることが決定される。
【0188】
(ii.DNA希釈実験)
マイクロ流体装置におけるTaqMan反応の感度を更に決定するために、βアクチンプライマー/プローブのセットを用いてゲノムDNAの希釈度が試験された。反応の組成物は、4×DyNAzymeおよびゲノムDNAの希釈を用いて実施例1に説明したように一般的に構成される。ゲノムDNAは、0.25pg/nlに希釈され、1nl当たり約1コピーに対応する。一つの希釈シリーズの結果は図12に示される。
【0189】
ポアソン分布によると、ウェルの合計数の37%は、平均目標数が1である場合ネガティブである。ウェル番号5、6、および、7は、計算された閾値未満、従って、ネガティブである。これは、マイクロ流体装置におけるβアクチンTaqMan反応が平均で1nl当たり1コピーが検出されることを示唆する。したがって、マイクロ流体装置における反応の感度は、遺伝子型特定実験を実施するに十分である。
【0190】
(iii.遺伝子型特定実験)
マイクロ流体装置におけるTaqManが低ターゲット数を検出することができるため、SNP(一塩基多型)遺伝子型特定の予備試験がCYP2D6P450シトクロム遺伝子に対してPredetermined Allelic Discrimination kit(Applied Biosystems;Foster City,CA)を用いて実施される。キットはワイルド・タイプまたは基準対立遺伝子CYP2D6*1に対して標識されたFAM、および、CYP2D6*3突然変体または変形対立遺伝子に対して標識されたVICといった、一つのプライマー・セットおよび二つのプローブを含む。ゲノムDNAと共に、各対立遺伝子に対するポジティブコントロール、PCR生成物が実施例1で説明したように同じ条件を用いて装置で試験された。一実験からの結果は図13および14に示される。実験は、結果を有効にし、信頼性を示すために少なくとも三回繰り返される。
【0191】
図13に示すように、Al−1(対立遺伝子1、CYP2D6*1ワイルド・タイプ対立遺伝子)およびゲノムDNA(100pg/nl)は、平均でそれぞれ3.5および2.2のVIC/PR1/コントロール比を生成し、ゲノムDNAがCYP2D6*1ワイルド・タイプ対立遺伝子に対してポジティブであったことが示された。これらの値は、反応に対する閾値制限より上である。マイクロ流体装置におけるTaqMan反応の信号強度は、それぞれマクロTaqManコントロールの59%および40%である。VICチャネルでネガティブであるはずのAl−2(対立遺伝子2、CYP2D6*3突然変体または変形対立遺伝子)は、可能性として検出器のVICチャネルに漏れるFAM蛍光により幾らかの信号がコントロールより上(1.5)であることを示す。漏れは、改善された検出処理を用いて最小化される。
【0192】
Al−2ポジティブコントロールは、平均で3.0のFAM/PR1/コントロール比を提供し、これは、マクロTaqMan信号の37%であり、計算された閾値制限より上である(図14参照)。ゲノムサンプルはCYP2D6*3突然変体対立遺伝子に対してネガティブであり、CYP2D6*3対立遺伝子の頻度が低いため予想された結果であった。ここでも、検出器のFAMチャネルへのAl−1、VICプローブの幾らかの漏れが見られた。全体的に、SNP検出反応はマイクロ流体装置において成功であった。
【0193】
(D.実施例4:ゲル電気泳動によるPCRの検証)
(1.はじめに)
DNAの増幅がマイクロ流体装置において起こっていたことを証明するための別の方法として、ゲル電気泳動によりPCR生成物を検出する実験を行った。PCR反応の組成物は、実施例1に説明した通りだが、TaqManプローブが省略されβアクチンフォワード・プライマーはFAMと結合される。
【0194】
(2.手順)
(i.マイクロ流体装置)
MSL処理を用いて加工された三層マイクロ流体装置は、本実施例において説明する実験を行うために設計され加工され、図15は設計の概略図を示す。装置1500は、一般的にサンプル領域1502および制御領域1504を含む。サンプル領域1502は、入口ビア1510および出口ビア1512を含む流れチャネル1506に沿ってアレイされた長方形によって表される341の1nl反応部位1508を含む。制御領域1504は、それぞれ長方形によって表される10の1nl反応部位1518、および入口ビア1516を含む三つの制御流れチャネル1514を含む。制御ライン1522のネットワークは、十分な圧力が入口ビア1524に加えられたときに各反応部位1508、1518を隔離する。一連のガード・チャネル1520は、反応部位1508、1518から液体が蒸発することを防止するために含まれる。装置は、実施例1に示すように三層装置である(図7A参照)。チップ全体がカバースリップの上に配置される。
【0195】
(ii.実験設定)
マイクロ流体装置1500は、充填され実施例1で説明したように3温度プロフィールを用いてサーモサイクリングされる。残留する反応サンプルは、マイクロ流体装置1500に対するものと同じサーモサイクリング・プロフィールでGeneAmp9700においてサーモサイクリングされる。この反応生成物を、サーモサイクリングの完了後に回収した。増幅されたDNAを回収するために、3μlの水がサンプル入口ビア1510に注入され、3−4μlの生成物が出口ビア1512から取り出される。装置1500およびマクロ反応からの反応生成物は、過剰なヌクレオチドおよびプライマーを除去するために、DNAエキソヌクレアーゼIおよびシュリンプアルカリホスファターゼよりなる2μlのExoSAP−IT(USB,Cleveland,OH)で処理される。マクロ生成物は、1:10から1:106に希釈される。装置1500からの生成物は、脱水され、4μlのホルムアミドに再懸濁される。
【0196】
(3.結果)
ネガティブコントロールと共に両方の生成物がポリアクリルアミド・ゲルで分析される。図15は、ゲル電気泳動結果を示す。長さで294塩基対の適当なサイズのDNAバンドが図16に示される。
【0197】
マクロ反応からの生成物は、ゲルの左側に示され、βアクチンPCR生成物の予想されたサイズである約294の塩基対に対応する。ネガティブコントロールは、PCR生成物に欠いている。同様に、装置から導出される生成物は、予想されたβアクチンPCR生成物を提供する。従って、ターゲットDNAはマイクロ流体装置で増幅される。
【0198】
(E.実施例5:大量分割)
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、分子生物学において重要なツールである。その感度(DNAの単一分子の増幅)、特異性(単一塩基不適合の区別)、および、ダイナミックレンジ(リアルタイム機器で105)の組み合わせにより、存在する分析ツールの中の最も有力なものの一つである。PCRパフォーマンスが、反応容積が減少すると改善されたことを示し、1反応当たり90pLの容積および単一のテンプレート分子感度において単一のマイクロ流体チップにおいて21000の同時PCR反応が実施された。
【0199】
図17a−図17dは、単一バンクおよび二重バンク分割マイクロ流体装置を示し、多層ソフト・リソグラフィ(MSL)(1)は、大量の隔離された容積に幾つかの液体サンプルそれぞれを大量分割するために活性弁を用いるエラストマー・マイクロ流体チップを作製するために使用する。マイクロ流体装置1701(図17b)の分岐された分割チャネルシステム1705と連通している入口1703にサンプルを注入した後、各サンプルの2400 90pL容積1709が簡単なマイクロ流体チャネルに沿って(図17d)離間されている弁1707を閉じることで隔離される。チップ装置は、平板サーモサイクル器でサーモサイクルされ、市販されている蛍光読み取り器で画像化される。
【0200】
テンプレートDNAの濃度を変化させて、ポジティブのTaqmantm信号を提供するウェルの数を測定することでチップにおいてPCRのパフォーマンスを検定した。1ウェル当たりのコピーの平均数が低いときにデジタル増幅が見られることが分かった(図18aおよび18b)。ロバストなポジティブおよび明らかにネガティブの信号の混合は、1ウェル当たりのコピーの平均数が1未満であるときにも見られ、ターゲットの単一のコピーでも良好な増幅を提供することを示唆している。ポジティブのウェルの数は、ポアソン分布(図19)によりターゲットが1コピー以上となるよう計算されたウェルの数と一致している。この結果は、本システムがターゲットの単一のコピーからも一貫した増幅を提供することを確認する。マイクロ流体TaqmantmPCRからの蛍光信号強度は、巨視的反応が1反応当たり104より多くのテンプレートコピーを含むとしても、同じDNA濃度で巨視的PCR反応と匹敵する。
【0201】
この顕著な忠実度の主な原因は、90pL容積におけるターゲット:単一分子の有効的濃度が5uL容積における単一分子よりも55,000倍濃縮されることと考える。ターゲットの分子の数ntが変化せず(即ち、nt=1)、副反応を発生し得る分子の数ns(即ち、サンプルにおけるプライマー−ダイマーおよび非相補的DNA配列)が容積に対して線形比例(即ち、ns∝V)するため、ターゲット対副反応の比は、容積に対して反比例する(nt/ns∝1/V)。副反応がPCRの失敗の主な原因であるため(4)、反応の容積を減少させる利点が明らかである。
【0202】
テンプレートの単一のコピーからのPCR増幅は、前に報告されている(5)。しかしながら、巨視的容積における単一のコピーから信頼のある増幅を実現する現在の方法は、変更されたサーモサイクリング・プロトコル(例えば、長い延長時間、多数のサイクル)、ミスプライミングおよび非特異的増幅に対する予防措置(例えば、「ホット・スタート」PCR(ポリメラーゼの熱活性)、「ブースタ」PCR、非特異的ハイブリダイズを減少させるための添加物等)をしばしば必要とし、二回のPCRでほぼ常に行われ、第1のPCRの部分標本は第2の反応におけるテンプレートとして使用される。反対に、本システムは、既成のプライマーおよびプローブと、一回の標準サーモサイクリング・プロトコルといった標準条件を用いて単一のコピーから信頼のある増幅を実現する。完全に囲まれると、環境汚染に対して実質的に弱くなくなる。同時に大量な数のPCR反応を行う能力は、巨視的容積(21,000反応を有する1チップに対して219個の別個の96ウェル板、および、関連する時間、機器、および、トラッキング・インフラストラクチャ)と比較して明確なロジスティカル、コスト、および、時間の利点を提供する。
【0203】
デジタルPCR読み取りとのこの大量分割の原理は、サンプルにおけるターゲットの濃度の絶対定量化に使用されてもよい。例えば、特定の対立遺伝子または複数の対立遺伝子に対してポジティブを提供するウェルの数を単に数えることでゲノムDNAの溜められたサンプルを遺伝子型特定するために使用される。副反応に対する向上された抵抗により、癌の検出に関連する問題である、ワイルド・タイプのDNAの背景で突然変体を量子化することに有用であるべきである。分割による濃度の一般的な原理は、単一の分子、細菌、ウイルス、または、細胞の検出が関心である他の反応においても有用である(例えば、プロテイン検出に対するELISA反応)。デジタルPCRは、“Method of sampling, amplifying and quantifying segmenet of nucleic acid, polymerase chain reaction assembly having nanoliter−sized chambers and methods of filling chambers”なる名称のBrown,et al.、米国特許第6,143,496号、および、“Digital PCR”なる名称のVogelstein,et al.による米国特許第6,446,706号に開示され、それぞれ本願で参照として全体的に組み込む。マイクロ流体を用いて実現可能な小容積は、大規模な平行化および非常に高いターゲット対背景濃度比を可能にする。高いターゲット対背景比により、単一分子増幅忠実度を可能にする。これらの要因は、PCRに関して小さい方が実際によいことを示唆する。
【0204】
本発明は、マイクロ流体環境においてデジタルPCRを行う方法および装置を提供し、流体チャネルを中に備えるマイクロ流体装置を提供するステップであって、上記流体チャネルが二つ以上の関連する弁を有し、弁は作動されると流体チャネルを二つ以上の反応部位または室に分割することができるステップと、少なくとも一つのターゲット核酸ポリマーを含むサンプルを導入するステップと、流体サンプルを二つ以上の部分に分割するよう弁を作動するステップであって、少なくとも一つの部分がターゲット核酸ポリマーを含み、別の部分がターゲット核酸ポリマーを含まないステップと、ターゲット核酸ポリマーを増幅するステップと、ターゲット分子を含む流体チャネルの部分の数を決定するステップとを有する。好ましい実施形態では、マイクロ流体装置はエラストマー材料を有し、より好ましくは、エラストマー材料を有する少なくとも一枚の層を有する。ある好ましい実施形態では、マイクロ流体装置は更に湾曲可能な膜を有し、湾曲可能な膜は流体チャネル内の流体の流れを制御するおよび/または流体チャネルの一部分を別の部分から分割するために流体チャネルの内外に湾曲し、好ましくは、湾曲可能な膜はチャネルまたは窪みが中に形成されたマイクロ流体装置の層と一体であり、更に、好ましくは、湾曲可能な膜はマイクロ流体装置の第1の層における第1のチャネルが第2の層における第2のチャネルによって重畳される部位に形成される。幾つかの実施形態では、サンプル流体は、増幅反応を行うのに必要な全ての成分を含み、他の実施形態では、マイクロ流体装置はサンプル流体が導入される前に増幅反応の少なくとも一つの成分を含む。幾つかの実施形態では、マイクロ流体装置は、更に、好ましくは、マイクロ流体装置の反応部位または室内で空間的にアレイされている複数の異なる核酸ポリマーである、ターゲット核酸ポリマーの少なくとも一部分と相補的な一つ以上の核酸ポリマーであることが好ましい検出試薬を有する。
【0205】
増幅は、PCRのようなサーモサイクリング反応によって、または、等温線増幅スキームを教授する目的で本願に参照として全体的に組み込まれるUS2003/0138800A1として公開されるVan Ness,et al.による米国特許出願第10/196,740号に開示されるような等温反応によって実現される。
【0206】
次の参考文献は、全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込まれる:Unger,et al.、Science 288, 113−116(2000).
サンプル・チャネルおよび制御ラインは、「ブラインド充填」で充填され、PDMSは、十分にガス透過性であるため、数psiで加圧された液体はチャネルからガスを排出し、液体で完全に充填される。全ての目的のために本願で参照として組み込まれるHansen,et al.,PNAS99,16531−16536(2002)を参照する。
【0207】
人間のβアクチン遺伝子の294bpセグメントは、5’エクソヌクレアーゼ検定(Taqman)を用いて増幅される。フォワードおよびリバース・プライマー・配列はそれぞれ5’−TCACCCACACTGTGCCCATCTACGA3’および5’−CAGCGGAACCGCTCATTGCCAATGG3’である。TAMRAベースのFRETプローブ・配列5’−(FAM)ATGCCC−X(TAMRA)−CCCCCATGCCATCCTGCGTp−3’。データは、多くのこれらプライマー−プローブのセットが市販されているため、ダーク・消光剤ベースのプローブを用いて得られる。反応は、1xのTaqman緩衝液A(50mM KCl、10mM トリスHCl、0.01M EDTA、60nM Passive Reference 1、pH8.3)、4mM MgCl2、200nM dATP、dCTP、dTTP、400nM dUTP、300nMフォワード・プライマー、300nMリバース・プライマー、200nMプローブ、0.01U/uL アンペラーゼUNG(全てApplied Biosystems, Foster City, CAから)、0.2U/uL DyNAzyme(Finnzyme,Espoo、Finland)、0.5%トリトン−x−100、0.8ug/ulゼラチン(Calbiochem,San Diego,CA)、5.0%グリセロール、脱イオンH2O、および、人間の雄性ゲノムDNA(Promea)を含む。
【0208】
次の参考文献は、全ての目的のために本願で参照として組み込まれる:定量的PCR技術、Editor,Francois Ferre、Birkauser,Boston, MAp97−110,1998;LJ McBride, K Livak, M Lucero,et al.による“Gene Quantification”に関する章。E.T.Lagally,I.Medintz,R.A.Mathies,Anal Chem73(3),565−570(2001)並びにB.Vogelstein,K.W.Kinzler,PNAS 96,9236−9241(1999)。
【0209】
本願記載の実施例および実施形態は、例示目的であり、それを鑑みた様々な変更態様および変更は当業者に示唆され、本願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるべきである。本願で引用する全ての公報、特許、および、特許出願は、個々の公報、特許、および、特許出願が参照として特定的に且つ個別的に組み込まれるように全ての目的のために本願で参照として全体的に組み込む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図17c】
【図17d】
【図18a】
【図18b】
【図19】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図17c】
【図17d】
【図18a】
【図18b】
【図19】
【公開番号】特開2011−97955(P2011−97955A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−27942(P2011−27942)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2006−509721(P2006−509721)の分割
【原出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【出願人】(503367169)フルイディグム コーポレイション (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27942(P2011−27942)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2006−509721(P2006−509721)の分割
【原出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【出願人】(503367169)フルイディグム コーポレイション (14)
【Fターム(参考)】
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