マイクロ流路基板及びこれを配設した液体制御装置
【課題】高速、かつ、高精度な液体制御を可能にするマイクロ流路基板及びこれを配設した液体制御装置の提供。
【解決手段】液体を導入可能な領域33が設けられた基板3であって、前記領域33の前記液体に臨む面に、熱源としてのレーザー光L1の照射によって蓄熱され、前記液体を加熱し得る蓄熱部34が、該蓄熱部34におけるレーザー光L1の強度分布に基づいてパターン状に形成されていることを特徴とする基板3を提供する。前記蓄熱部のパターンを構成する構成単位341は、その面積又は体積と前記レーザー光の強度分布とが反比例するように形成することができる。
【解決手段】液体を導入可能な領域33が設けられた基板3であって、前記領域33の前記液体に臨む面に、熱源としてのレーザー光L1の照射によって蓄熱され、前記液体を加熱し得る蓄熱部34が、該蓄熱部34におけるレーザー光L1の強度分布に基づいてパターン状に形成されていることを特徴とする基板3を提供する。前記蓄熱部のパターンを構成する構成単位341は、その面積又は体積と前記レーザー光の強度分布とが反比例するように形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流路基板及びこれを配設した液体制御装置に関する。より詳しくは、レーザー光の照射によって加熱可能な蓄熱部をパターン状に形成したマイクロ流路基板等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業における微細加工技術を応用し、シリコンやガラス製の基板上に化学的及び生物学的分析を行うための反応領域や流路を設けたマイクロチップが開発されてきている。これらのマイクロチップは、例えば、液体クロマトグラフィーの電気化学検出器や医療現場における小型の電気化学センサーなどに利用され始めている。
【0003】
このようなマイクロチップを用いた分析システムは、μ−TAS(micro-total-analysis system)やラボ・オン・チップ、バイオチップ等と称され、化学的及び生物学的分析の高速化や高効率化、集積化、あるいは、分析装置の小型化を可能にする技術として注目されている。
【0004】
μ−TASは、少量の試料で分析が可能なことから、貴重な微量試料を扱う際に特に有用であるが、一方で、試料が少量であるがために、反応領域内の温度制御や流路内の液流制御等をいかにして高精度に行うかという基本的な課題を有している。
【0005】
この課題に関連する技術として、特許文献1には、分析用具(マイクロチップ)に保持された液成分を、光源からの光エネルギーを利用して加熱し、温度調整を行う方法が開示されている(当該文献請求項1参照)。また、この際、液成分に近接して設けられた昇温領域(蓄熱部)に光エネルギーを供給し、この昇温領域から移動する熱エネルギーにより、液成分の昇温を行う方法が記載されている(当該文献請求項3参照)。
【0006】
また、特許文献2には、マイクロチャネルチップの微小流路内での目的とする化学反応に関与する各種条件、例えば、反応領域の温度条件及び試薬溶液の濃度や流量等を好適に調整できるマイクロチップ反応制御システムが開示されている。このマイクロチップ反応制御システムでは、微小反応流路にレーザー光を照射することにより反応領域の温度調整を行うことができる(当該文献請求項16参照)。また、レーザー光を複数の領域に照射することで、各反応領域の温度を独立に調整することも可能である(当該文献請求項16及び請求項20参照)。
【0007】
さらに、特許文献3には、可動光ビームによって発生される泡により、マイクロチャネルシステムにおいて液体を処理するための装置及び方法が開示されている。この装置等は、マイクロチャネルの表面部分に光ビームを照射して、マイクロチャネル内の液体に作用する蒸気泡を形成し(当該文献請求項1参照)、この蒸気泡によってポンプ機能、バルブ機能及びミキサ機能を得るものである。また、マイクロチャネルの表面部分には、吸光物質(蓄熱部)を備えていてもよい旨が記載されている(当該文献請求項9参照)。
【0008】
【特許文献1】国際公開2003−093835号
【特許文献2】特開2006−145516号公報
【特許文献3】特表2005−538287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜3に開示される技術等によれば、レーザー光を用いることで、マイクロチップ上に配設された反応領域や流路において、液体の加熱やミキシング、ポンピング等の制御を行うことができる。また、レーザー光により流路内に気泡を発生させ、バルブ機能を得ることも可能である。
【0010】
さらに、反応領域や流路に蓄熱部を設け(特許文献1及び特許文献3参照)、この蓄熱部に対しレーザー光を照射し、光エネルギーを効率的に熱へ転換させることにより、加熱やミキシング、ポンピング等の液体制御を高速に行うことが可能である。
【0011】
本発明は、このようなレーザー光と蓄熱部による液体制御において、さらに高速、かつ、高精度な制御を可能にする基板及びこれを配設した液体制御装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題解決のため、本発明は、液体を導入可能な領域が設けられた基板であって、前記領域の前記液体に臨む面に、熱源としてのレーザー光の照射によって蓄熱され、前記液体を加熱し得る蓄熱部が、該蓄熱部におけるレーザー光の強度分布に基づいてパターン状に形成されていることを特徴とする基板を提供する。
前記蓄熱部のパターンを構成する構成単位は、その面積又は体積と前記レーザー光の強度分布とが反比例するように形成することができる。
本発明に係る基板において、前記蓄熱部は、前記液体の加熱によって、該液体中に気泡を発生させるものとすることができる。
また、前記領域を、液体を導入可能な導入流路と、該導入流路に連通する複数の分岐流路と、から構成し、前記蓄熱部を前記分岐流路に形成することができる。
この場合、前記蓄熱部によって前記導入流路内の液体中に発生させた気泡によって、前記導入流路と前記分岐流路との分岐部における前記液体の送流方向を制御し得るように構成される。
【0013】
また、本発明は、併せて、液体を導入可能な領域が設けられた基板であって、前記領域の前記液体に臨む面に、熱源としてのレーザー光の照射によって蓄熱され、前記液体を加熱し得る蓄熱部が、該蓄熱部におけるレーザー光の強度分布に基づいてパターン状に形成された基板と、前記蓄熱部に対し前記レーザー光を照射するレーザー照射部と、を備える液体制御装置をも提供する。
【0014】
本発明において、「液体」という用語は広義に解釈されるべきであり、均質な液体、懸濁液、すなわち、微粒子または微小細胞等の粒状物質を含む液体、小さい気泡を含む液体、水性液、有機液体、二相系及び疎水性の液体及び親水性の液体を含み得るものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、高速、かつ、高精度な液体制御が可能な基板及びこれを配設した液体制御装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0017】
図1は、液体を導入可能な領域が設けられた本発明に係る基板の第一実施形態を示す図である。
【0018】
図1(A)は、液体を導入可能な領域(以下、「反応領域」ともいう)のひとつを含む、基板の断面側方図である。また、(B)は、同じ反応領域を含む、基板の簡略上面図である。
【0019】
図1中、符号1で示す基板は、反応領域13が形成された基板本体11と、反応領域13を閉蓋する基板蓋12とから構成されている。図中、反応領域13の中央を符号Pにより示した。
【0020】
反応領域13には、化学的及び生物学的分析のための液体試料が導入される。液体試料(以下、単に「液体」という)には、均質な液体、懸濁液、すなわち、微小粒子を含む液体、小さい気泡を含む液体、水性液、有機液体、二相系及び疎水性の液体及び親水性の液体などが、特に限定されず用いられる。また、微小粒子には、細胞や微生物、リポソームなどの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などの微小粒子が広く含まれる。
【0021】
反応領域13の液体に臨む面、より具体的に本図では底面には、符号L1で示すレーザー光が照射される蓄熱部14(図中、斜線部)が設けられている。これにより、基板1では、レーザー光L1の光エネルギーを蓄熱部14において熱に転換させ、この熱を利用して、反応領域13内の液体制御を行うことが可能である。
【0022】
このため、レーザー光L1には、高精度かつ高速な温度制御を可能にするため、高精度な出力制御と高い応答性を備える半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)等の直接変換素子が好適に採用される。さらに、単一波長性(可干渉性)に優れ、微小な領域に対して集光が可能な半導体レーザー(LD)を用いることで、蓄熱層14を構成する各構成単位(後述)に正確にレーザーを照射することが可能となる。また、ダイオードチップ内に共振機を備える半導体レーザー(LD)を用いることで、発光ダイオード(LED)に比べ高い出力を得ることが可能となり、レーザー光の照射時間をより短くして高速な温度制御を実現することができる。
【0023】
また、蓄熱部14は、レーザー光L1に対する吸光性に優れ、融点が高い素材によって形成されることが望ましい。蓄熱部14の素材としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、アルミニウム、銅、亜鉛、スズなどの金属や、これらをベースとする合金、例えば、ステンレス、炭素鋼、黄銅、白銅、アルミニウム合金、さらにはアルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、炭化珪素をはじめとするセラミックスを用いることができる。そして、これらの素材を塗布、噴霧、溶着またはスポットすることにより、蓄熱部14を形成する。また、蓄熱部14は、反応領域13表面の微細構造として基板1と一体的に形成することもできる。この場合、上記の吸光性素材を、基板1の材料となるガラスや各種プラスチック(PP、PC、COP、PDMS)に添加した上、ナノインプリント又は成形によって蓄熱部14を形成する。
【0024】
レーザー光L1を蓄熱部14に透過させるため、基板Aの基板蓋12は、レーザー光L1を透過可能な素材によって形成する。基板蓋12の材質としては、例えば、レーザー光L1の波長に対し光透過性を有するガラスやプラスチックが採用される。なお、図では、レーザー光L1を基板上方から照射する場合を示したが、レーザー光L1を基板下方から照射することも当然に可能である。この場合、基板本体11に同様の光透過性を付与することが必要となる。
【0025】
具体的には、基板1(基板本体11及び基板蓋12)は、ガラスや各種プラスチック(PP,PC,COP、PDMS)であってレーザー光L1を透過可能であり、測定レーザー光L1に対して波長分散が少なく光学誤差の少ない材質を用いて形成される。
【0026】
基板1の材質をガラスとする場合には、ウェットエッチングやドライエッチングによって反応領域13を転写する。また、プラスチック製とする場合には、ナノインプリントや成型によって基板上に反応領域13を形成する。また、基板蓋12は、基板本体11と同じ材質を用いたカバーシールとすることができる。
【0027】
なお、蓄熱部14を設ける面は、図に示した反応領域1の底面に限定されず、反応領域13の液体に臨む面であれば、側面側や底面側であってよい。さらに、基板1(基板本体11及び基板蓋12)がレーザー光L1を透過可能である場合には、これらの面の表面に限定されず、レーザー光L1が到達可能であり、蓄熱部14からの熱が液体に伝達可能な限りにおいて、反応領域13の上面側や側面側、底面側の内層に蓄熱部14を構成することも可能である。
【0028】
図1(C)には、レーザー光L1の、蓄熱部14照射面におけるビーム強度の分布を示す。通常、レーザー光のビーム強度は、光軸の中心で最も大きく、中心から外側では徐々小さくなる。従って、レーザー光L1の蓄熱部14照射面におけるビーム強度は、図1(C)に示すように、反応領域13の中央Pで最大となり、反応領域13の周辺部では次第に減少する。
【0029】
基板1は、このレーザー光L1の強度分布に基づいて、蓄熱部14をパターン状に形成したことを特徴とするものである。
【0030】
すなわち、図1(A)に示すように、蓄熱部14は、大きさの異なる複数の構成単位141によって形成されており、この構成単位141の大きさは反応領域13の中央Pから周辺方向に徐々に大きくなるように構成されている。
【0031】
図1(B)の簡略上面図では、この構成単位141の大きさ(面積)が、反応領域13の中央Pから周辺方向に徐々に大きくなっていることが示されている。図は、模式図であり、反応領域13に比べ、各構成単位141を相対的に大きく示している。また、基板蓋12を省略して示した。
【0032】
このように、基板1では、照射されるレーザー光L1のビーム強度が大きい反応領域13中央P近傍では、蓄熱部13の構成単位141の大きさ(面積)が小さく、逆に、照射されるレーザー光L1のビーム強度が小さい反応領域13の周辺部では、構成単位141の大きさ(面積)が大きく形成されている。これは、蓄熱層14の構成単位の大きさ(面積)が、レーザー光L1のビーム強度分布に反比例しているとみることができる。
【0033】
図2及び図3には、レーザー光L1の強度分布に基づく、蓄熱部14の形成パターンに関し、他の具定例を示す。図2は反応領域13を含む、基板Aの簡略上面図であり、図3は断面側方図である。
【0034】
図2では、蓄熱部14の構成単位141を上面視円形とし、この円形とした構成単位の大きさ(面積)を、反応領域13の中央Pから周辺方向に徐々に大きくなるように構成した。
【0035】
また、図3では、構成単位141の体積を変化せることによって、その大きさ(体積)を、反応領域13の中央Pから周辺方向に徐々に大きくなるように構成した。すなわち、照射されるレーザー光L1のビーム強度が大きい反応領域13中央P近傍では、高さhを低く、逆に、照射されるレーザー光L1のビーム強度が小さい反応領域13の周辺部では、高さhを高く形成した。これにより、構成単位141の面積を大きくした場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0036】
構成単位141の高さhは、スパッタによる製膜時の膜厚や、ナノインプリント又は成形時の型(マスター)を変化させることで調整することが可能であり、これにより構成単位141の蓄熱量を任意に設定することができる。
【0037】
図4は、基板1を用いた液体の加熱制御を説明する図である。
【0038】
上記のように、基板1において、蓄熱層14は、その大きさ(面積又は体積)がレーザー光L1のビーム強度分布に反比例する複数の構成単位141によって形成されている。そして、レーザー光L1の照射によって、各構成単位141において吸収される光エネルギーは、その面積又は体積に依存する。
【0039】
従って、基板1では、各構成単位141が吸収する光エネルギーを等しくすることが可能であり、各構成単位141から等しい熱量を発生させることができる(図4中、矢印H参照)。
【0040】
これによって、基板1では、反応流域13内の液体を、局所的な温度ムラを生じさせることなく、均一に加熱することができ、反応領域13で行なわれる所定の化学及び生化学反応を安定して再現性高く進行させることが可能となる。
【0041】
また、液体を均一に加熱することで、反応領域13内における液体の対流を抑制することもできる。対流の抑制は、例えば、比重の異なる物質間での化学反応やタンパク質の結晶化などの、ステーブルな(安定した)プロセスが必要とされる化学反応制御に有効と考えられる。
【0042】
図5は、基板1を用いた液体制御の他の具体例を説明する図である。
【0043】
図5では、レーザー光L1の照射によって蓄熱部14から生じる熱により、反応領域13内の液体を加熱、気化させて、液体中に気泡を発生させる場合を示した。
【0044】
基板1において、蓄熱層14は、複数の構成単位141によって形成されており、蓄熱層14に対してレーザー光L1を照射すると、各構成単位141に接する液体が加熱、気化されて気泡Bが発生する。
【0045】
この際、各構成単位141の大きさ(面積又は体積)をレーザー光L1のビーム強度分布に反比例するよう形成したことで、上述の通り、各構成単位141からは等しい熱量が発生する。これにより、基板1では、各構成単位141において均一な大きさの気泡Bを発生させることが可能である。
【0046】
構成単位141の大きさを、その面積によって変化させてパターン形成する場合には、各構成単位141で発生する気泡Bが接触、融合することを回避するため、隣接する構成単位141間の中心間距離を一定とすることが望ましい。すなわち、図1(B)及び図2に示したように、レーザー光L1のビーム強度が大きい反応領域13中央P近傍では小さい構成単位141を、ビーム強度が小さい反応領域13の周辺部では大きな構成単位141を、それぞれ中心間距離が一定となるように配置する。結果として、蓄熱部14は、その上面視において、中央P近傍では構成単位141が疎に(隙間が広く)、周辺部では構成単位141が密に(隙間が狭く)配列された状態となる。
【0047】
また、構成単位141の大きさを、その高さを変化させてパターン形成する場合には、発生する熱を各構成単位141の先端(上面)に集中させるようにすることで、図5に示すように、各構成単位141の先端に気泡Bを発生させることができる。
【0048】
このような液体中における気泡発生は、反応領域13内での液体のミキシング(混合)や、後述する流路内における液体の送流制御のために行われるものであり、特に後述するように、流路内で微小粒子の分取を行うための送流制御に好適に用いることができる。
【0049】
これまで、蓄熱部14の構成単位の大きさ(面積又は体積)を、レーザー光L1のビーム強度分布に反比例させて形成させる場合について説明したが、逆に、レーザー光L1のビーム強度分布に正比例させた大きさで、構成単位141を形成することも当然に可能である。
【0050】
図6には、液体を導入可能な領域が設けられた本発明に係る基板の第二実施形態を示す図である。
【0051】
図6中、符号2で示す基板は、照射されるレーザー光L1のビーム強度が大きい反応領域23中央P近傍では、蓄熱部24の構成単位241の大きさ(面積)が大きく、逆に、照射されるレーザー光L1のビーム強度が小さい反応領域23の周辺部では、小さく形成されている。すなわち、構成単位241の大きさ(面積)は、レーザー光L1のビーム強度分布に正比例するように形成されている。
【0052】
なお、図6では、構成単位241の面積を、反応領域23の中央Pから周辺方向に徐々に小さくなるように構成した場合を示したが、図3において説明したように、構成単位241の体積を変化せることによって、その大きさを変化させてもよい。
【0053】
図7は、基板2を用いた液体の加熱制御を説明する図である。
【0054】
上記のように、レーザー光L1の照射によって、蓄熱部24の各構成単位241において吸収される光エネルギーは、その面積又は体積に依存する。基板2では、各構成単位241の大きさ(面積又は体積)を、レーザー光L1のビーム強度分布に正比例させて形成しているため、構成単位141の大きさが大きく、かつ、照射されるレーザー光L1のビーム強度が強い反応領域23中央P近傍では、より大きな熱量を発生させることができる。逆に、構成単位241の大きさが小さく、かつ、ビーム強度も弱い反応領域23の周辺部では、より小さな熱量を発生させることとなる(図中、矢印H参照)。
【0055】
これにより、反応流域23周辺部に比べて中央部の液体をより高温で加熱して、液体中に激しい対流(図中、矢印C参照)を引き起こすことができる。そして、この対流によって液体を効果的に攪拌して、反応領域23で行なわれる所定の化学及び生化学反応の反応効率を高め、迅速に進行させることが可能となる。
【0056】
図8は、液体を導入可能な領域が設けられた本発明に係る基板の第三実施形態を示す図である。
【0057】
図8中、符号3で示す基板には、液体を導入可能な導入流路35に連通されて複数の反応領域33が配設されている。液体は、サンプル注入口36から導入流路35へ導入され、さらに各反応領域33内へ送液される。反応領域33の収容容積を超えて送液された液体、及び、反応領域33内で所定の反応を行った後の液体は、排出流路37,37へ導出され、さらにサンプル排出口38,38から基板A外へ排出される。図では、このサンプル注入口36、導入流路35、複数の反応領域33、排出流路37,37及びサンプル排出口38,38とからなる流路を基板上に2つ配設した場合を示したが、配設される流路の数は2以上とすることができる。
【0058】
この基板3においては、走査手段Dによって基板3上の走査線S(図中、点線矢印参照)を走査されるレーザー光L1により、各反応領域33内に導入された液体を独立に制御することができる。走査線3は、反応領域33を列ごとに順次レーザー光L1を照射し得るように設計されている。
【0059】
図9(A)は、図8においてレーザー光L1が照射される反応領域33を含む、基板3のR-R断面を示す断面側方図である。また、(B)は、同じ反応領域33を含む、基板3の簡略上面図である。図9(A)中符号Sは、レーザー光L1の走査線を示す(図8参照)。なお、図9(B)では、基板蓋32を省略して示した。
【0060】
基板3は、図1において説明したと同様に、反応領域33等が形成された基板本体31と、反応領域33を閉蓋する基板蓋32とから構成されている。なお、基板3(基板本体31及び基板蓋32)の材質、形成方法等は先に説明した通りである。
【0061】
各反応領域33の液体に臨む面(ここでは底面)には、レーザー光L1が照射される蓄熱部34がパターン状に形成されている。蓄熱部34の形成面及び素材等については先に説明したのと同様である。
【0062】
図9(C)には、走査線Sに直行する断面(図8中R-R断面、図9(A)に対応)の蓄熱部34照射面におけるレーザー光L1のビーム強度の分布を示す。図に示すように、レーザー光L1のビーム強度は、レーザー光L1の中心が位置する走査線S上で最も大きく、走査線Sから外れるに従い徐々に小さくなる。
【0063】
このレーザー光L1を、図9(B)に示すように、反応領域33底面に設けられた蓄熱層34に照射すると、蓄熱層34に付与される光エネルギーは、蓄熱部34の走査線Sに近い位置ほど大きく、遠い部位ほど小さくなる。
【0064】
そこで、基板3においては、蓄熱部34を形成する構成単位341の大きさを、レーザー光L1の走査方向Sに従って形成した。
【0065】
すなわち、図9(A)及び(B)に示すように、蓄熱部34の構成単位341の大きさを、レーザー光L1の走査線S近傍から周辺方向に徐々に大きくなるように構成した。これは、照射されるレーザー光L1のビーム強度が大きい走査線S近傍の構成単位341においては、その大きさ(面積)を小さく、逆に、照射されるレーザー光L1のビーム強度が小さい走査線Sから遠い構成単位においては、大きさ(面積)を大きくし、構成単位341の大きさ(面積)を、レーザー光L1の走査方向におけるビーム強度分布に反比例するかたちで形成するものである。
【0066】
また、各構成単位341は中心間距離が一定となるように配置されており、蓄熱部34は上面視において走査線S近傍では構成単位341が疎に(隙間が広く)、周辺部では構成単位341が密に(隙間が狭く)配列された状態とされている(図10も参照)。
【0067】
図10及び図11には、レーザー光L1の走査方向における強度分布に基づく、蓄熱部34の形成パターンに関し、他の具定例を示す。図10は反応領域33を含む、基板3の簡略上面図であり、図11は断面側方図である。
【0068】
図10では、蓄熱部34の構成単位341を上面視円形とし、この円形とした構成単位341の大きさ(面積)を、レーザー光L1の走査線Sから周辺方向に徐々に大きくなるように構成した例を示す。
【0069】
また、図11では、蓄熱部34の構成単位341の体積を変化せることによって、その大きさ(体積)が、レーザー光L1の走査線Sから周辺方向に徐々に大きくなるように構成した。すなわち、照射されるレーザー光L1のビーム強度が大きいレーザー光L1の走査線S近傍の構成単位341では高さを低く、逆に、照射されるレーザー光L1のビーム強度が小さい走査線Sから遠い構成単位341では高さを高く形成した。
【0070】
このように蓄熱部34を構成することにより、レーザー光L1を走査して、複数の反応領域33内の液体制御を個別におこなう場合においても、図4において説明したのと同様に、各構成単位341が吸収する光エネルギーを等しくして、各構成単位341から等しい熱量を発生させることが可能となる。
【0071】
これにより、反応流域33内の液体を、局所的な温度ムラを生じさせることなく、均一に加熱することでき、反応領域33で行なわれる所定の化学及び生化学反応を安定して再現性高く進行させることが可能となる。また、液体を均一に加熱することで、反応領域33内における液体の対流を抑制することもできる。
【0072】
さらに、図5において説明したように、レーザー光L1の照射によって蓄熱部34から生じる熱により、反応領域33内の液体を加熱、気化させて、気泡を発生させる場合において、各構成単位341に均一な大きさの気泡を発生させることが可能となる。
【0073】
また、蓄熱部34の構成単位の大きさ(面積又は体積)を、図6で説明したように、レーザー光L1の走査方向におけるビーム強度分布に正比例させて形成することも当然に可能である。これにより、図7に示したように、レーザー光L1の走査線Sから遠い部位に比べて、走査線S近傍の液体をより高温で加熱して、液体中に激しい対流を引き起こすことができ、この対流によって液体を効果的に攪拌して、反応領域33で行なわれる所定の化学及び生化学反応の反応効率を高め、迅速に進行させることが可能となる。
【0074】
ここで、説明した基板3は、特に、以下に説明する液体中における気泡発生により流路内の送流制御を行い、液体中に分散された微小粒子の分取を行うための液流制御装置に好適に採用されるものである。
【0075】
図12は、本発明に係る液流制御装置4の構成を説明する模式図である。ここでは、液流制御装置4として、特に、上記の微小粒子分取のために構成された装置を示す。
【0076】
液流制御装置4は、基板a上に配設された微小粒子の分散溶媒を導入可能な流路Aと、熱源としてのレーザー光L1(図中、白矢印参照)を放射するレーザー光源41と、微小粒子の光学測定のためのレーザー光L2(図中、黒矢印参照)を放射するレーザー光源42と、レーザー光L1及びレーザー光L2を流路Aに対して走査する走査部43と、レーザー光L1及びレーザー光L2を流路Aの所定位置に集光するための対物レンズ44を備えている。図中、符号411及び421は、それぞれレーザー光源1及びレーザー光源2からのレーザー光L1及びレーザー光L2を平行光線にするためのコリメータレンズである。
【0077】
また、液流制御装置4は、レーザー光L2(以下、「測定レーザー光L2」という)の照射により、流路A内の微小粒子から発生する検出対象光R(図中、斜線矢印参照)を検出するための光検出器45を備えている。流路A内の微小粒子から発生する検出対象光Rは、対物レンズ44により集光され、走査部43を透過して、光検出部45に導光される。
【0078】
さらに、液流制御装置4は、光検出部45から出力されるデータを解析する解析手段46と、解析手段46からの解析結果の出力を受け、レーザー光源41から放射されるレーザー光L1のレーザーパワーを制御する光変調部47を備えている。
【0079】
基板aの材質、形成方法等は先に説明した通りである。
【0080】
レーザー光L1は、走査部43により基板a上の所定の位置を走査され、流路Aの走査線(図中、点線矢印S2参照)に対応する位置において、流路A内に導入された分散溶媒中に気泡を発生させる。以下、レーザー光L1については、「気泡発生レーザー光L1」というものとする。
【0081】
同様に、測定レーザー光L2は、走査部43により基板a上の所定の位置を走査され、流路Aの走査線(図中、点線矢印S2参照)に対応する位置において、流路A内に導入された微小粒子に照射される。
【0082】
気泡発生レーザー光L1には、高精度かつ高速な温度制御を可能にするため、高精度な出力制御と高い応答性を備える半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)等の直接変換素子が好適に採用される。さらに、流路A内の所定位置に正確に気泡を発生させるため、単一波長性(可干渉性)に優れ、微小な領域に対して集光が可能な半導体レーザー(LD)を用いることが望ましい。ダイオードチップ内に共振機を備える半導体レーザー(LD)を用いることで、発光ダイオード(LED)に比べ高い出力を得ることが可能となり、レーザー光の照射時間をより短くして高速な温度制御を実現することができる。
【0083】
また、測定レーザー光L2には、分取の対象とする微小粒子や分取の目的に応じて、レーザー光源41を、アルゴンやヘリウム等のガスレーザーや半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)等公知の光源から適宜選択して用いることにより、種々の波長のレーザー光を選択して使用することができる。
【0084】
走査部43は、レーザー光源41及びレーザー光源42から発せられる気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2の光路上にポリゴンミラーやガルバノミラー、音響光学素子、電気光学素子等として配置される。図12では、走査部43をダイクロイックミラーとして構成し、気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2が一体に走査できるよう構成されている。
【0085】
走査部43による気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2の走査は、一定周期で行われる。例えば、上記のダイクロイックミラーを高速回転させることにより、30,000rpm程度での走査が可能である。
【0086】
気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2の照射は、各レーザー光が各流路に対して垂直に照射され、流路Aの走査線S1及び走査線S2に対応する位置(レーザー光の結像面)においてレーザー光のスポット幅が一定となるようなテレセントリック光学系により行うことが望ましい。
【0087】
測定レーザー光L2の照射によって、流路Aの走査線S2に対応する位置に導入されている微小粒子から発生する検出対象光Rは、光検出器45によって検出される。図12では、光検出器45としてマルチチャンネルフォトマルチプライヤーチューブ(PMT)を用いて、検出対象光Rを分光器48によりグレーティングした後、波長ごとに検出できるよう構成した。
【0088】
検出対象光Rは、測定対象微小粒子の大きさを測定する前方散乱光や、構造を測定する側方散乱光、蛍光、レイリー散乱やミー散乱等の散乱光などであってよい。また蛍光は、コヒーレントな蛍光であっても、インコヒーレントな蛍光であってもよい。
【0089】
光検出部45は、検出された各波長の光を増幅して電気信号へと変換し、解析手段46へ出力する。解析手段46は、光検出部45から入力される電気信号に基づいて、微小粒子の光学特性を解析し、微小粒子を分取するか否かについての解析結果を光変調部47へ出力する。そして、光変調部47は、解析手段46からの解析結果の出力を受け、レーザー光源41から放射される気泡発生レーザー光L1のレーザーパワーを制御して、流路Aの走査線S1に対応する位置において、流路A内に導入された分散溶媒中に気泡を発生させる。
【0090】
以下、この気泡発生レーザー光L1によって分散溶媒中に気泡を発生させた気泡により液流の制御を行い、微小粒子の分取する方法について説明する。
【0091】
図13は、液流制御装置4における液流制御方法及び微小粒子分取方法を説明する図である。
【0092】
図13は、図12中基板aに配設された流路Aの一つを模式的に拡大して示している。なお、図12では、基板a上に5本の流路Aを配設した場合を示したが、基板a上に配設される流路Aの数は特に限定されず、1以上の流路Aを適宜配設することができる。
【0093】
図13に示すように、流路Aは、微小粒子の分散溶媒が導入される導入流路A1と、この導入流路A1に連通する分岐流路A2及び分岐流路A3とを含んでいる。以下、この導入流路A1と分岐流路A2及び分岐流路A3の連通部を「流路分岐部」というものとする。
【0094】
分岐流路A2及び分岐流路A3の一端には、微小粒子をプールするためのサンプル貯留部Ap2及びサンプル貯留部Ap3が設けられている。
【0095】
さらに、流路Aは、微小粒子の分散溶媒を導入流路A1に導入するためのサンプル流路As1と、溶媒層流(シース流)を導入流路A1に導入するためのシース流路As2,As2とを備えている。サンプル流路As1から導入される微小粒子の分散溶媒は、2つのシース流路As2から導入される溶媒層流によって流路内の中央部に位置づけられた層流として導入流路A1に導入される。この際、微小粒子は、図に示すように、層流中に一定距離間隔で配列される。
【0096】
導入流路A1に一定距離間隔で配列された微小粒子は、図12中符号S2で示した測定レーザー光L2の走査線に対応する位置において、図13に示すように、測定レーザー光L2を照射される。図中、測定レーザー光L2が照射される微小粒子を、符号Tで示した。
【0097】
この測定レーザー光L2の照射によって、微小粒子Tから生じる測定対象光Rは、上述のように、光検出器45(図12参照)により検出され、電気信号へと変換された後、解析手段46へ出力される。そして、光変調部47は、解析手段46から出力される微小粒子Tを分取するか否かについての判定結果を受け、微小粒子Tを分取するべき場合には、レーザー光源41から放射される気泡発生レーザー光L1のレーザーパワーを制御して、分岐流路A2又は分岐流路A3の走査線S1に対応する位置(図中、符合b参照)において、分散溶媒中に気泡を発生させる。本図では、分岐流路A2に気泡を発生させた場合を示した。
【0098】
液流制御装置4は、この気泡の発生によって分岐流路A2又は分岐流路A3に生じる流れ抵抗の増大に基づいて、流路分岐部における分散溶媒の送流方向を制御して、微量粒子Tの送流方向を制御し、微小粒子Tを分岐流路A2又は分岐流路A3のいずれかに選択的に導入し、サンプル貯留部Ap2又はサンプル貯留部Ap3のいずれかに貯留する。
【0099】
以下、図14及び図15に基づいて、気泡発生レーザー光L1により発生させた気泡により流路分岐部における分散溶媒の送流方向を制御する方法について、具体的に説明する。
【0100】
図14は、解析手段46により微小粒子Tを分取すべきでないと判定された場合の流路分岐部における送流方向を示す図(上面図)である。
【0101】
流路Aにおいて、導入流路A1内に導入された分散溶媒は、通常(分取を行わない)状態では、導入流路A1に対し直線上に連通する分岐流路A2へ送流される(図中、矢印F2参照)よう構成されている。
【0102】
従って、解析手段46により微小粒子Tを分取すべきでないと判定された場合には、気泡発生レーザー光L1によって、分岐流路A2及び分岐流路A3の走査線S1に対応する位置のいずれにも気泡を発生させないことにより、分散溶媒を分岐流路A2へ送流し、微小粒子Tをサンプル貯留部Ap2内に貯留する。
【0103】
図15には、解析手段46により微小粒子Tを分取すべきと判定された場合の流路分岐部における送流方向を示した。
【0104】
解析手段46により微小粒子Tを分取すべきと判定された場合には、気泡発生レーザー光L1によって、分岐流路A2の走査線S1に対応する位置(図中、符号bで示す範囲、以下「気泡発生範囲b」という)の分散溶媒中に気泡を発生させる。この気泡の発生によって、分岐流路A2内に圧力損失が発生し、分岐流路A2の流れ抵抗が増大することで、分岐流路A2の流れが一時的に滞留することとなり、導入流路A1から送流される分散溶媒は、分岐流路A3へ流れるようになる(図中、矢印F3参照)。これにより、微小粒子Tを含む分散溶媒を分岐流路A3に導入し、微小粒子Tをサンプル貯留部Ap3内に分取することが可能となる。
【0105】
図16及び図17には、図15中走査線S1における分岐流路A2を含む基板aの断面図(A)と簡略上面図(B)、及び、U-U断面における気泡発生範囲b近傍の拡大断面図(C)を示す。図中符号S1は、気泡発生レーザー光L1の走査線を示す。
【0106】
図16に示すように、分岐流路A2の気泡発生範囲bには、その分散液体に臨む面(ここでは底面)に、気泡発生レーザー光L1が照射される蓄熱部a4を、その走査線S1に従ってパターン状に形成している。なお、蓄熱部a4の形成面及び素材等については先に説明したのと同様である。
【0107】
すなわち、蓄熱部a4の構成単位a41の大きさを、照射される気泡発生レーザー光L1のビーム強度が大きい走査線S1近傍の構成単位a41においては、その大きさ(面積)を小さく、逆に、ビーム強度が小さい走査線S1から遠い構成単位a41においては、大きさ(面積)を大きくし、構成単位a41の大きさ(面積)を、気泡発生レーザー光L1の走査線S1におけるビーム強度分布に反比例するかたちで形成している。
【0108】
このように蓄熱部a4を構成することで、図9において説明したのと同様に、気泡発生レーザー光L1を走査して蓄熱部a4に照射した際に、蓄熱部a4を構成する各構成単位a41に等しい光エネルギーを付与し、等しい熱量を発生させることが可能となる。
【0109】
これにより、図17に示すように、各構成単位a41に接する分散溶媒を均一に加熱、気化させて、均一な大きさの気泡Bを多数発生させることが可能となる。この気泡により、分岐流路A2内に圧力損失が生じ、分岐流路A2の流れ抵抗を増大することで、上述の送流方向の制御が可能となる。
【0110】
ここで、再度図15に基づいて、気泡発生レーザー光L1によって気泡Bを発生させるタイミングについて説明する。
【0111】
気泡発生レーザー光L1による気泡Bの発生は、走査線S2上を走査される測定レーザー光L2を照射された微小粒子Tが、流路分岐部に送流された時点において、適切なタイミングで行われる。この気泡発生レーザー光L1の照射タイミングの制御は、光変調部47(図12参照)による気泡発生レーザー光L1のレーザーパワーの制御によって実現される。
【0112】
先に説明したように、流体制御装置4において、気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2の走査は、走査部43(図12参照)により一体に行われるものである。そして、この走査は、極めて短い周期(例えば、30,000rpm)で行われるため、気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2は、走査線S2上において測定レーザー光L2を照射された微小粒子Tが流路分岐部に到達するまでの間に、それぞれ走査線S1及び走査線S2上を複数回走査されることとなる。光変調部47は、この気泡発生レーザー光L1が複数回走査される間の適切なタイミングにおいて、気泡発生レーザー光L1のレーザーパワーを上昇もしくはオフからオンに切換えることにより、分岐流路A2内の分散溶媒中に気泡Bを発生させ、微小粒子Tを分岐流路A3に導入する。
【0113】
気泡の消失後は、分岐流路A2の流れ抵抗が減少し、分岐流路A2の流れの滞留が解消されるため、微小粒子の分散溶媒は、図14で説明したように、導入流路A1から分岐流路A2へ送流されるようになる(図14中、矢印F2参照)。これにより、導入流路A1内に一定間隔で配列された次の微小粒子が、測定レーザー光L1の走査線S1上に送流され、同様の手順により、分取が行われることとなる。
【0114】
この際、分岐流路A2の分散溶媒中に発生させた気泡Bが、あまりに長時間にわたって維持されると、本来分岐流路A3に導入されるべきでない微小粒子までもがサンプル貯留部Ap3内に分取されてしまう可能性がある。
【0115】
これは、気泡発生レーザー光L1の照射によって分散溶媒を気化させる際に、分散溶媒を過度に加熱することによって、大型の気泡が発生した場合に生じ易い。溶媒と空気では、熱伝達係数が空気の方が低く、大型の気泡では内部の熱が分散され難く、消失し難いためである。
【0116】
従って、導入流路A1内に一定間隔で配列され送流されてくる微小粒子を高精度に分取するためには、気泡Bを適切な大きさとし、一の微小粒子を分岐流路A3に導入するために必要かつ十分な時間、分岐流路A2内の流れを滞留させることが必要となる。
【0117】
このため、液流制御装置4では、上述の通り、分岐流路の気泡発生範囲bに形成する蓄熱部a4を、気泡発生レーザーL1の走査線S1におけるビーム強度分布に基づいて大きさを変化させた複数の構成単位a41により構成した。これにより、気泡発生範囲bに均一な大きさの気泡を多数発生させることが可能とされている。
【0118】
さらに、隣接する構成単位a41間の中心間距離を一定とし、各構成単位a41で発生する気泡Bが接触、融合することがないように構成している。各構成単位a41は等しい熱量を発生させ、均一な大きさの気泡Bを発生させるが、この場合においても、隣接する構成単位a41間で発生した気泡Bが融合すると、気泡Bが大型化してしまう可能性がある。各構成単位a41間の中心間距離を一定とし、各構成単位a41から発生する気泡Bが一定の間隔で配列されるようにしたことで、気泡Bの接触を防止して大型化を回避することが可能となる。
【0119】
このように、液流制御装置4では、気泡体積に対して溶媒との接触面積が大きいために廃熱性が良く、短時間で消失し得る小型の気泡を、多数形成させて分岐流路内の流れ抵抗を増大させることで、大型の気泡を単独で発生させる従来方法に比べ、流路分岐部における送流方向の制御をより柔軟に、高精度かつ高速に行うことが可能とされている。
【0120】
比較のため、図18には、従来技術に従い、蓄熱部a4を単一の連続した領域として構成した場合に発生する気泡Bを例示する。
【0121】
なお、図13〜図15では、分岐流路を2つとして、微小粒子をその光学特性に応じて2つのポピュレーションに分別する場合を例に説明したが、二以上の分岐流路を設ける場合も当然に可能である。
【0122】
参考のため、図19には、3つの分岐流路を設けた流路Aを示す。
【0123】
図19に示す流路Aは、導入流路A1に連通する分岐流路として、分岐流路A2及び分岐流路A3に加え、分岐流路A4を備えている。そして、分岐流路A4の一端には、微小粒子をプールするためのサンプル貯留部Ap4が設けられている。
【0124】
図19に示す流路Aにおいて、導入流路A1内に導入された微小粒子は、通常(分取を行わない)状態では、導入流路A1に対し直線上に連通する分岐流路A2へ送流される(図中、矢印F2参照)よう構成されている。
【0125】
従って、解析手段46により微小粒子Tを分取すべきでないと判定された場合には、気泡発生レーザー光L1によって、分岐流路A2、分岐流路A3及び分岐流路A4の走査線S1に対応する位置のいずれにも気泡を発生させないことにより、微小粒子Tは分岐流路A2へ導入され(矢印F2参照)、サンプル貯留部Ap2内に貯留される。
【0126】
これに対して、解析手段46により微小粒子Tを分取すべきと判定された場合には、気泡発生レーザー光L1によって、図18に示すように、分岐流路A2及び分岐流路A3の走査線S1に対応する位置(気泡発生範囲b)に気泡Bを発生させれば、微小粒子Tを分岐流路A4に導入し、サンプル貯留部Ap4内に分取することが可能となる(図中矢印F4参照)。
【0127】
また、分岐流路A2及び分岐流路A4の(気泡発生範囲b)に気泡Bを発生させれば、微小粒子Tを分岐流路A3に導入し、サンプル貯留部Ap3内に分取することも可能である。
【0128】
流体制御装置4によれば、短時間に消失する小型の気泡を多数発生させることで、このように3つ以上のポピュレーションに微小粒子を分別する場合においても、柔軟かつ高速に送流方向の制御を行うことが可能であり、高精度の分取を行うことができる。
【0129】
さらに図13〜図15及び図19では、流路Aの1つを模式的に拡大して説明したが、図12で説明した通り、基板a上には複数の流路Aが設けられ、気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2は、走査部43によって走査線S1及び走査線S2上を走査されることによって、全ての流路Aにおいて同時に上述したような微小粒子の光学測定と分取を行うものである。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明に係る基板は、化学的及び生物学的分析を行うためマイクロチップとして好適に用いられ、例えば、液体クロマトグラフィーの電気化学検出器や医療現場における小型の電気化学センサーなどに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係る基板の第一実施形態を示す図である。
【図2】蓄熱部14の形成パターン例を示す図である。
【図3】蓄熱部14の形成パターン例を示す図である。
【図4】基板1を用いた液体制御を説明する図である。
【図5】基板1を用いた液体制御を説明する図である。
【図6】本発明に係る基板の第二実施形態を示す図である。
【図7】基板2を用いた液体制御を説明する図である。
【図8】本発明に係る基板の第三実施形態を示す図である。
【図9】基板3の構成を説明する図である。
【図10】蓄熱部34の形成パターン例を示す図である。
【図11】蓄熱部34の形成パターン例を示す図である。
【図12】本発明に係る液流制御装置4の構成を説明する図である。
【図13】液流制御装置4における液流制御方法及び微小粒子分取方法を説明する図である。
【図14】解析手段46により微小粒子Tを分取すべきでないと判定された場合の流路分岐部における送流方向を示す図である。
【図15】解析手段46により微小粒子Tを分取すべきと判定された場合の流路分岐部における送流方向を示す図である。
【図16】基板aの構成を説明する図である。
【図17】基板aを用いた液体制御を説明する図である。
【図18】従来技術による液体制御を説明する図(参考図)である。
【図19】3つの分岐流路を設けた流路Aにおける送流制御方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0132】
1,2,3,a 基板
11,21,31 基板本体
12,22,32 基板蓋
13,23,33 反応領域
14,24,34 蓄熱部
141,241,341 構成単位
35, 導入流路
36 サンプル注入口
37 排出流路
38 サンプル排出口
4 流体制御装置
41,42 レーザー光源
411,412 コリメータレンズ
43 走査部
44 対物レンズ
45 光検出部
46 解析手段
47 光変調部
48 分光器
A 流路
A1 導入流路
A2,A3,A4 分岐流路
Ap2,Ap3,Ap4 サンプル貯留部
B 気泡
L1 レーザー光(気泡発生レーザー光)
L2 レーザー光(測定レーザー光)
R 検出対象光
T 微小粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流路基板及びこれを配設した液体制御装置に関する。より詳しくは、レーザー光の照射によって加熱可能な蓄熱部をパターン状に形成したマイクロ流路基板等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業における微細加工技術を応用し、シリコンやガラス製の基板上に化学的及び生物学的分析を行うための反応領域や流路を設けたマイクロチップが開発されてきている。これらのマイクロチップは、例えば、液体クロマトグラフィーの電気化学検出器や医療現場における小型の電気化学センサーなどに利用され始めている。
【0003】
このようなマイクロチップを用いた分析システムは、μ−TAS(micro-total-analysis system)やラボ・オン・チップ、バイオチップ等と称され、化学的及び生物学的分析の高速化や高効率化、集積化、あるいは、分析装置の小型化を可能にする技術として注目されている。
【0004】
μ−TASは、少量の試料で分析が可能なことから、貴重な微量試料を扱う際に特に有用であるが、一方で、試料が少量であるがために、反応領域内の温度制御や流路内の液流制御等をいかにして高精度に行うかという基本的な課題を有している。
【0005】
この課題に関連する技術として、特許文献1には、分析用具(マイクロチップ)に保持された液成分を、光源からの光エネルギーを利用して加熱し、温度調整を行う方法が開示されている(当該文献請求項1参照)。また、この際、液成分に近接して設けられた昇温領域(蓄熱部)に光エネルギーを供給し、この昇温領域から移動する熱エネルギーにより、液成分の昇温を行う方法が記載されている(当該文献請求項3参照)。
【0006】
また、特許文献2には、マイクロチャネルチップの微小流路内での目的とする化学反応に関与する各種条件、例えば、反応領域の温度条件及び試薬溶液の濃度や流量等を好適に調整できるマイクロチップ反応制御システムが開示されている。このマイクロチップ反応制御システムでは、微小反応流路にレーザー光を照射することにより反応領域の温度調整を行うことができる(当該文献請求項16参照)。また、レーザー光を複数の領域に照射することで、各反応領域の温度を独立に調整することも可能である(当該文献請求項16及び請求項20参照)。
【0007】
さらに、特許文献3には、可動光ビームによって発生される泡により、マイクロチャネルシステムにおいて液体を処理するための装置及び方法が開示されている。この装置等は、マイクロチャネルの表面部分に光ビームを照射して、マイクロチャネル内の液体に作用する蒸気泡を形成し(当該文献請求項1参照)、この蒸気泡によってポンプ機能、バルブ機能及びミキサ機能を得るものである。また、マイクロチャネルの表面部分には、吸光物質(蓄熱部)を備えていてもよい旨が記載されている(当該文献請求項9参照)。
【0008】
【特許文献1】国際公開2003−093835号
【特許文献2】特開2006−145516号公報
【特許文献3】特表2005−538287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜3に開示される技術等によれば、レーザー光を用いることで、マイクロチップ上に配設された反応領域や流路において、液体の加熱やミキシング、ポンピング等の制御を行うことができる。また、レーザー光により流路内に気泡を発生させ、バルブ機能を得ることも可能である。
【0010】
さらに、反応領域や流路に蓄熱部を設け(特許文献1及び特許文献3参照)、この蓄熱部に対しレーザー光を照射し、光エネルギーを効率的に熱へ転換させることにより、加熱やミキシング、ポンピング等の液体制御を高速に行うことが可能である。
【0011】
本発明は、このようなレーザー光と蓄熱部による液体制御において、さらに高速、かつ、高精度な制御を可能にする基板及びこれを配設した液体制御装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題解決のため、本発明は、液体を導入可能な領域が設けられた基板であって、前記領域の前記液体に臨む面に、熱源としてのレーザー光の照射によって蓄熱され、前記液体を加熱し得る蓄熱部が、該蓄熱部におけるレーザー光の強度分布に基づいてパターン状に形成されていることを特徴とする基板を提供する。
前記蓄熱部のパターンを構成する構成単位は、その面積又は体積と前記レーザー光の強度分布とが反比例するように形成することができる。
本発明に係る基板において、前記蓄熱部は、前記液体の加熱によって、該液体中に気泡を発生させるものとすることができる。
また、前記領域を、液体を導入可能な導入流路と、該導入流路に連通する複数の分岐流路と、から構成し、前記蓄熱部を前記分岐流路に形成することができる。
この場合、前記蓄熱部によって前記導入流路内の液体中に発生させた気泡によって、前記導入流路と前記分岐流路との分岐部における前記液体の送流方向を制御し得るように構成される。
【0013】
また、本発明は、併せて、液体を導入可能な領域が設けられた基板であって、前記領域の前記液体に臨む面に、熱源としてのレーザー光の照射によって蓄熱され、前記液体を加熱し得る蓄熱部が、該蓄熱部におけるレーザー光の強度分布に基づいてパターン状に形成された基板と、前記蓄熱部に対し前記レーザー光を照射するレーザー照射部と、を備える液体制御装置をも提供する。
【0014】
本発明において、「液体」という用語は広義に解釈されるべきであり、均質な液体、懸濁液、すなわち、微粒子または微小細胞等の粒状物質を含む液体、小さい気泡を含む液体、水性液、有機液体、二相系及び疎水性の液体及び親水性の液体を含み得るものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、高速、かつ、高精度な液体制御が可能な基板及びこれを配設した液体制御装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0017】
図1は、液体を導入可能な領域が設けられた本発明に係る基板の第一実施形態を示す図である。
【0018】
図1(A)は、液体を導入可能な領域(以下、「反応領域」ともいう)のひとつを含む、基板の断面側方図である。また、(B)は、同じ反応領域を含む、基板の簡略上面図である。
【0019】
図1中、符号1で示す基板は、反応領域13が形成された基板本体11と、反応領域13を閉蓋する基板蓋12とから構成されている。図中、反応領域13の中央を符号Pにより示した。
【0020】
反応領域13には、化学的及び生物学的分析のための液体試料が導入される。液体試料(以下、単に「液体」という)には、均質な液体、懸濁液、すなわち、微小粒子を含む液体、小さい気泡を含む液体、水性液、有機液体、二相系及び疎水性の液体及び親水性の液体などが、特に限定されず用いられる。また、微小粒子には、細胞や微生物、リポソームなどの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などの微小粒子が広く含まれる。
【0021】
反応領域13の液体に臨む面、より具体的に本図では底面には、符号L1で示すレーザー光が照射される蓄熱部14(図中、斜線部)が設けられている。これにより、基板1では、レーザー光L1の光エネルギーを蓄熱部14において熱に転換させ、この熱を利用して、反応領域13内の液体制御を行うことが可能である。
【0022】
このため、レーザー光L1には、高精度かつ高速な温度制御を可能にするため、高精度な出力制御と高い応答性を備える半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)等の直接変換素子が好適に採用される。さらに、単一波長性(可干渉性)に優れ、微小な領域に対して集光が可能な半導体レーザー(LD)を用いることで、蓄熱層14を構成する各構成単位(後述)に正確にレーザーを照射することが可能となる。また、ダイオードチップ内に共振機を備える半導体レーザー(LD)を用いることで、発光ダイオード(LED)に比べ高い出力を得ることが可能となり、レーザー光の照射時間をより短くして高速な温度制御を実現することができる。
【0023】
また、蓄熱部14は、レーザー光L1に対する吸光性に優れ、融点が高い素材によって形成されることが望ましい。蓄熱部14の素材としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、アルミニウム、銅、亜鉛、スズなどの金属や、これらをベースとする合金、例えば、ステンレス、炭素鋼、黄銅、白銅、アルミニウム合金、さらにはアルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、炭化珪素をはじめとするセラミックスを用いることができる。そして、これらの素材を塗布、噴霧、溶着またはスポットすることにより、蓄熱部14を形成する。また、蓄熱部14は、反応領域13表面の微細構造として基板1と一体的に形成することもできる。この場合、上記の吸光性素材を、基板1の材料となるガラスや各種プラスチック(PP、PC、COP、PDMS)に添加した上、ナノインプリント又は成形によって蓄熱部14を形成する。
【0024】
レーザー光L1を蓄熱部14に透過させるため、基板Aの基板蓋12は、レーザー光L1を透過可能な素材によって形成する。基板蓋12の材質としては、例えば、レーザー光L1の波長に対し光透過性を有するガラスやプラスチックが採用される。なお、図では、レーザー光L1を基板上方から照射する場合を示したが、レーザー光L1を基板下方から照射することも当然に可能である。この場合、基板本体11に同様の光透過性を付与することが必要となる。
【0025】
具体的には、基板1(基板本体11及び基板蓋12)は、ガラスや各種プラスチック(PP,PC,COP、PDMS)であってレーザー光L1を透過可能であり、測定レーザー光L1に対して波長分散が少なく光学誤差の少ない材質を用いて形成される。
【0026】
基板1の材質をガラスとする場合には、ウェットエッチングやドライエッチングによって反応領域13を転写する。また、プラスチック製とする場合には、ナノインプリントや成型によって基板上に反応領域13を形成する。また、基板蓋12は、基板本体11と同じ材質を用いたカバーシールとすることができる。
【0027】
なお、蓄熱部14を設ける面は、図に示した反応領域1の底面に限定されず、反応領域13の液体に臨む面であれば、側面側や底面側であってよい。さらに、基板1(基板本体11及び基板蓋12)がレーザー光L1を透過可能である場合には、これらの面の表面に限定されず、レーザー光L1が到達可能であり、蓄熱部14からの熱が液体に伝達可能な限りにおいて、反応領域13の上面側や側面側、底面側の内層に蓄熱部14を構成することも可能である。
【0028】
図1(C)には、レーザー光L1の、蓄熱部14照射面におけるビーム強度の分布を示す。通常、レーザー光のビーム強度は、光軸の中心で最も大きく、中心から外側では徐々小さくなる。従って、レーザー光L1の蓄熱部14照射面におけるビーム強度は、図1(C)に示すように、反応領域13の中央Pで最大となり、反応領域13の周辺部では次第に減少する。
【0029】
基板1は、このレーザー光L1の強度分布に基づいて、蓄熱部14をパターン状に形成したことを特徴とするものである。
【0030】
すなわち、図1(A)に示すように、蓄熱部14は、大きさの異なる複数の構成単位141によって形成されており、この構成単位141の大きさは反応領域13の中央Pから周辺方向に徐々に大きくなるように構成されている。
【0031】
図1(B)の簡略上面図では、この構成単位141の大きさ(面積)が、反応領域13の中央Pから周辺方向に徐々に大きくなっていることが示されている。図は、模式図であり、反応領域13に比べ、各構成単位141を相対的に大きく示している。また、基板蓋12を省略して示した。
【0032】
このように、基板1では、照射されるレーザー光L1のビーム強度が大きい反応領域13中央P近傍では、蓄熱部13の構成単位141の大きさ(面積)が小さく、逆に、照射されるレーザー光L1のビーム強度が小さい反応領域13の周辺部では、構成単位141の大きさ(面積)が大きく形成されている。これは、蓄熱層14の構成単位の大きさ(面積)が、レーザー光L1のビーム強度分布に反比例しているとみることができる。
【0033】
図2及び図3には、レーザー光L1の強度分布に基づく、蓄熱部14の形成パターンに関し、他の具定例を示す。図2は反応領域13を含む、基板Aの簡略上面図であり、図3は断面側方図である。
【0034】
図2では、蓄熱部14の構成単位141を上面視円形とし、この円形とした構成単位の大きさ(面積)を、反応領域13の中央Pから周辺方向に徐々に大きくなるように構成した。
【0035】
また、図3では、構成単位141の体積を変化せることによって、その大きさ(体積)を、反応領域13の中央Pから周辺方向に徐々に大きくなるように構成した。すなわち、照射されるレーザー光L1のビーム強度が大きい反応領域13中央P近傍では、高さhを低く、逆に、照射されるレーザー光L1のビーム強度が小さい反応領域13の周辺部では、高さhを高く形成した。これにより、構成単位141の面積を大きくした場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0036】
構成単位141の高さhは、スパッタによる製膜時の膜厚や、ナノインプリント又は成形時の型(マスター)を変化させることで調整することが可能であり、これにより構成単位141の蓄熱量を任意に設定することができる。
【0037】
図4は、基板1を用いた液体の加熱制御を説明する図である。
【0038】
上記のように、基板1において、蓄熱層14は、その大きさ(面積又は体積)がレーザー光L1のビーム強度分布に反比例する複数の構成単位141によって形成されている。そして、レーザー光L1の照射によって、各構成単位141において吸収される光エネルギーは、その面積又は体積に依存する。
【0039】
従って、基板1では、各構成単位141が吸収する光エネルギーを等しくすることが可能であり、各構成単位141から等しい熱量を発生させることができる(図4中、矢印H参照)。
【0040】
これによって、基板1では、反応流域13内の液体を、局所的な温度ムラを生じさせることなく、均一に加熱することができ、反応領域13で行なわれる所定の化学及び生化学反応を安定して再現性高く進行させることが可能となる。
【0041】
また、液体を均一に加熱することで、反応領域13内における液体の対流を抑制することもできる。対流の抑制は、例えば、比重の異なる物質間での化学反応やタンパク質の結晶化などの、ステーブルな(安定した)プロセスが必要とされる化学反応制御に有効と考えられる。
【0042】
図5は、基板1を用いた液体制御の他の具体例を説明する図である。
【0043】
図5では、レーザー光L1の照射によって蓄熱部14から生じる熱により、反応領域13内の液体を加熱、気化させて、液体中に気泡を発生させる場合を示した。
【0044】
基板1において、蓄熱層14は、複数の構成単位141によって形成されており、蓄熱層14に対してレーザー光L1を照射すると、各構成単位141に接する液体が加熱、気化されて気泡Bが発生する。
【0045】
この際、各構成単位141の大きさ(面積又は体積)をレーザー光L1のビーム強度分布に反比例するよう形成したことで、上述の通り、各構成単位141からは等しい熱量が発生する。これにより、基板1では、各構成単位141において均一な大きさの気泡Bを発生させることが可能である。
【0046】
構成単位141の大きさを、その面積によって変化させてパターン形成する場合には、各構成単位141で発生する気泡Bが接触、融合することを回避するため、隣接する構成単位141間の中心間距離を一定とすることが望ましい。すなわち、図1(B)及び図2に示したように、レーザー光L1のビーム強度が大きい反応領域13中央P近傍では小さい構成単位141を、ビーム強度が小さい反応領域13の周辺部では大きな構成単位141を、それぞれ中心間距離が一定となるように配置する。結果として、蓄熱部14は、その上面視において、中央P近傍では構成単位141が疎に(隙間が広く)、周辺部では構成単位141が密に(隙間が狭く)配列された状態となる。
【0047】
また、構成単位141の大きさを、その高さを変化させてパターン形成する場合には、発生する熱を各構成単位141の先端(上面)に集中させるようにすることで、図5に示すように、各構成単位141の先端に気泡Bを発生させることができる。
【0048】
このような液体中における気泡発生は、反応領域13内での液体のミキシング(混合)や、後述する流路内における液体の送流制御のために行われるものであり、特に後述するように、流路内で微小粒子の分取を行うための送流制御に好適に用いることができる。
【0049】
これまで、蓄熱部14の構成単位の大きさ(面積又は体積)を、レーザー光L1のビーム強度分布に反比例させて形成させる場合について説明したが、逆に、レーザー光L1のビーム強度分布に正比例させた大きさで、構成単位141を形成することも当然に可能である。
【0050】
図6には、液体を導入可能な領域が設けられた本発明に係る基板の第二実施形態を示す図である。
【0051】
図6中、符号2で示す基板は、照射されるレーザー光L1のビーム強度が大きい反応領域23中央P近傍では、蓄熱部24の構成単位241の大きさ(面積)が大きく、逆に、照射されるレーザー光L1のビーム強度が小さい反応領域23の周辺部では、小さく形成されている。すなわち、構成単位241の大きさ(面積)は、レーザー光L1のビーム強度分布に正比例するように形成されている。
【0052】
なお、図6では、構成単位241の面積を、反応領域23の中央Pから周辺方向に徐々に小さくなるように構成した場合を示したが、図3において説明したように、構成単位241の体積を変化せることによって、その大きさを変化させてもよい。
【0053】
図7は、基板2を用いた液体の加熱制御を説明する図である。
【0054】
上記のように、レーザー光L1の照射によって、蓄熱部24の各構成単位241において吸収される光エネルギーは、その面積又は体積に依存する。基板2では、各構成単位241の大きさ(面積又は体積)を、レーザー光L1のビーム強度分布に正比例させて形成しているため、構成単位141の大きさが大きく、かつ、照射されるレーザー光L1のビーム強度が強い反応領域23中央P近傍では、より大きな熱量を発生させることができる。逆に、構成単位241の大きさが小さく、かつ、ビーム強度も弱い反応領域23の周辺部では、より小さな熱量を発生させることとなる(図中、矢印H参照)。
【0055】
これにより、反応流域23周辺部に比べて中央部の液体をより高温で加熱して、液体中に激しい対流(図中、矢印C参照)を引き起こすことができる。そして、この対流によって液体を効果的に攪拌して、反応領域23で行なわれる所定の化学及び生化学反応の反応効率を高め、迅速に進行させることが可能となる。
【0056】
図8は、液体を導入可能な領域が設けられた本発明に係る基板の第三実施形態を示す図である。
【0057】
図8中、符号3で示す基板には、液体を導入可能な導入流路35に連通されて複数の反応領域33が配設されている。液体は、サンプル注入口36から導入流路35へ導入され、さらに各反応領域33内へ送液される。反応領域33の収容容積を超えて送液された液体、及び、反応領域33内で所定の反応を行った後の液体は、排出流路37,37へ導出され、さらにサンプル排出口38,38から基板A外へ排出される。図では、このサンプル注入口36、導入流路35、複数の反応領域33、排出流路37,37及びサンプル排出口38,38とからなる流路を基板上に2つ配設した場合を示したが、配設される流路の数は2以上とすることができる。
【0058】
この基板3においては、走査手段Dによって基板3上の走査線S(図中、点線矢印参照)を走査されるレーザー光L1により、各反応領域33内に導入された液体を独立に制御することができる。走査線3は、反応領域33を列ごとに順次レーザー光L1を照射し得るように設計されている。
【0059】
図9(A)は、図8においてレーザー光L1が照射される反応領域33を含む、基板3のR-R断面を示す断面側方図である。また、(B)は、同じ反応領域33を含む、基板3の簡略上面図である。図9(A)中符号Sは、レーザー光L1の走査線を示す(図8参照)。なお、図9(B)では、基板蓋32を省略して示した。
【0060】
基板3は、図1において説明したと同様に、反応領域33等が形成された基板本体31と、反応領域33を閉蓋する基板蓋32とから構成されている。なお、基板3(基板本体31及び基板蓋32)の材質、形成方法等は先に説明した通りである。
【0061】
各反応領域33の液体に臨む面(ここでは底面)には、レーザー光L1が照射される蓄熱部34がパターン状に形成されている。蓄熱部34の形成面及び素材等については先に説明したのと同様である。
【0062】
図9(C)には、走査線Sに直行する断面(図8中R-R断面、図9(A)に対応)の蓄熱部34照射面におけるレーザー光L1のビーム強度の分布を示す。図に示すように、レーザー光L1のビーム強度は、レーザー光L1の中心が位置する走査線S上で最も大きく、走査線Sから外れるに従い徐々に小さくなる。
【0063】
このレーザー光L1を、図9(B)に示すように、反応領域33底面に設けられた蓄熱層34に照射すると、蓄熱層34に付与される光エネルギーは、蓄熱部34の走査線Sに近い位置ほど大きく、遠い部位ほど小さくなる。
【0064】
そこで、基板3においては、蓄熱部34を形成する構成単位341の大きさを、レーザー光L1の走査方向Sに従って形成した。
【0065】
すなわち、図9(A)及び(B)に示すように、蓄熱部34の構成単位341の大きさを、レーザー光L1の走査線S近傍から周辺方向に徐々に大きくなるように構成した。これは、照射されるレーザー光L1のビーム強度が大きい走査線S近傍の構成単位341においては、その大きさ(面積)を小さく、逆に、照射されるレーザー光L1のビーム強度が小さい走査線Sから遠い構成単位においては、大きさ(面積)を大きくし、構成単位341の大きさ(面積)を、レーザー光L1の走査方向におけるビーム強度分布に反比例するかたちで形成するものである。
【0066】
また、各構成単位341は中心間距離が一定となるように配置されており、蓄熱部34は上面視において走査線S近傍では構成単位341が疎に(隙間が広く)、周辺部では構成単位341が密に(隙間が狭く)配列された状態とされている(図10も参照)。
【0067】
図10及び図11には、レーザー光L1の走査方向における強度分布に基づく、蓄熱部34の形成パターンに関し、他の具定例を示す。図10は反応領域33を含む、基板3の簡略上面図であり、図11は断面側方図である。
【0068】
図10では、蓄熱部34の構成単位341を上面視円形とし、この円形とした構成単位341の大きさ(面積)を、レーザー光L1の走査線Sから周辺方向に徐々に大きくなるように構成した例を示す。
【0069】
また、図11では、蓄熱部34の構成単位341の体積を変化せることによって、その大きさ(体積)が、レーザー光L1の走査線Sから周辺方向に徐々に大きくなるように構成した。すなわち、照射されるレーザー光L1のビーム強度が大きいレーザー光L1の走査線S近傍の構成単位341では高さを低く、逆に、照射されるレーザー光L1のビーム強度が小さい走査線Sから遠い構成単位341では高さを高く形成した。
【0070】
このように蓄熱部34を構成することにより、レーザー光L1を走査して、複数の反応領域33内の液体制御を個別におこなう場合においても、図4において説明したのと同様に、各構成単位341が吸収する光エネルギーを等しくして、各構成単位341から等しい熱量を発生させることが可能となる。
【0071】
これにより、反応流域33内の液体を、局所的な温度ムラを生じさせることなく、均一に加熱することでき、反応領域33で行なわれる所定の化学及び生化学反応を安定して再現性高く進行させることが可能となる。また、液体を均一に加熱することで、反応領域33内における液体の対流を抑制することもできる。
【0072】
さらに、図5において説明したように、レーザー光L1の照射によって蓄熱部34から生じる熱により、反応領域33内の液体を加熱、気化させて、気泡を発生させる場合において、各構成単位341に均一な大きさの気泡を発生させることが可能となる。
【0073】
また、蓄熱部34の構成単位の大きさ(面積又は体積)を、図6で説明したように、レーザー光L1の走査方向におけるビーム強度分布に正比例させて形成することも当然に可能である。これにより、図7に示したように、レーザー光L1の走査線Sから遠い部位に比べて、走査線S近傍の液体をより高温で加熱して、液体中に激しい対流を引き起こすことができ、この対流によって液体を効果的に攪拌して、反応領域33で行なわれる所定の化学及び生化学反応の反応効率を高め、迅速に進行させることが可能となる。
【0074】
ここで、説明した基板3は、特に、以下に説明する液体中における気泡発生により流路内の送流制御を行い、液体中に分散された微小粒子の分取を行うための液流制御装置に好適に採用されるものである。
【0075】
図12は、本発明に係る液流制御装置4の構成を説明する模式図である。ここでは、液流制御装置4として、特に、上記の微小粒子分取のために構成された装置を示す。
【0076】
液流制御装置4は、基板a上に配設された微小粒子の分散溶媒を導入可能な流路Aと、熱源としてのレーザー光L1(図中、白矢印参照)を放射するレーザー光源41と、微小粒子の光学測定のためのレーザー光L2(図中、黒矢印参照)を放射するレーザー光源42と、レーザー光L1及びレーザー光L2を流路Aに対して走査する走査部43と、レーザー光L1及びレーザー光L2を流路Aの所定位置に集光するための対物レンズ44を備えている。図中、符号411及び421は、それぞれレーザー光源1及びレーザー光源2からのレーザー光L1及びレーザー光L2を平行光線にするためのコリメータレンズである。
【0077】
また、液流制御装置4は、レーザー光L2(以下、「測定レーザー光L2」という)の照射により、流路A内の微小粒子から発生する検出対象光R(図中、斜線矢印参照)を検出するための光検出器45を備えている。流路A内の微小粒子から発生する検出対象光Rは、対物レンズ44により集光され、走査部43を透過して、光検出部45に導光される。
【0078】
さらに、液流制御装置4は、光検出部45から出力されるデータを解析する解析手段46と、解析手段46からの解析結果の出力を受け、レーザー光源41から放射されるレーザー光L1のレーザーパワーを制御する光変調部47を備えている。
【0079】
基板aの材質、形成方法等は先に説明した通りである。
【0080】
レーザー光L1は、走査部43により基板a上の所定の位置を走査され、流路Aの走査線(図中、点線矢印S2参照)に対応する位置において、流路A内に導入された分散溶媒中に気泡を発生させる。以下、レーザー光L1については、「気泡発生レーザー光L1」というものとする。
【0081】
同様に、測定レーザー光L2は、走査部43により基板a上の所定の位置を走査され、流路Aの走査線(図中、点線矢印S2参照)に対応する位置において、流路A内に導入された微小粒子に照射される。
【0082】
気泡発生レーザー光L1には、高精度かつ高速な温度制御を可能にするため、高精度な出力制御と高い応答性を備える半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)等の直接変換素子が好適に採用される。さらに、流路A内の所定位置に正確に気泡を発生させるため、単一波長性(可干渉性)に優れ、微小な領域に対して集光が可能な半導体レーザー(LD)を用いることが望ましい。ダイオードチップ内に共振機を備える半導体レーザー(LD)を用いることで、発光ダイオード(LED)に比べ高い出力を得ることが可能となり、レーザー光の照射時間をより短くして高速な温度制御を実現することができる。
【0083】
また、測定レーザー光L2には、分取の対象とする微小粒子や分取の目的に応じて、レーザー光源41を、アルゴンやヘリウム等のガスレーザーや半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)等公知の光源から適宜選択して用いることにより、種々の波長のレーザー光を選択して使用することができる。
【0084】
走査部43は、レーザー光源41及びレーザー光源42から発せられる気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2の光路上にポリゴンミラーやガルバノミラー、音響光学素子、電気光学素子等として配置される。図12では、走査部43をダイクロイックミラーとして構成し、気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2が一体に走査できるよう構成されている。
【0085】
走査部43による気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2の走査は、一定周期で行われる。例えば、上記のダイクロイックミラーを高速回転させることにより、30,000rpm程度での走査が可能である。
【0086】
気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2の照射は、各レーザー光が各流路に対して垂直に照射され、流路Aの走査線S1及び走査線S2に対応する位置(レーザー光の結像面)においてレーザー光のスポット幅が一定となるようなテレセントリック光学系により行うことが望ましい。
【0087】
測定レーザー光L2の照射によって、流路Aの走査線S2に対応する位置に導入されている微小粒子から発生する検出対象光Rは、光検出器45によって検出される。図12では、光検出器45としてマルチチャンネルフォトマルチプライヤーチューブ(PMT)を用いて、検出対象光Rを分光器48によりグレーティングした後、波長ごとに検出できるよう構成した。
【0088】
検出対象光Rは、測定対象微小粒子の大きさを測定する前方散乱光や、構造を測定する側方散乱光、蛍光、レイリー散乱やミー散乱等の散乱光などであってよい。また蛍光は、コヒーレントな蛍光であっても、インコヒーレントな蛍光であってもよい。
【0089】
光検出部45は、検出された各波長の光を増幅して電気信号へと変換し、解析手段46へ出力する。解析手段46は、光検出部45から入力される電気信号に基づいて、微小粒子の光学特性を解析し、微小粒子を分取するか否かについての解析結果を光変調部47へ出力する。そして、光変調部47は、解析手段46からの解析結果の出力を受け、レーザー光源41から放射される気泡発生レーザー光L1のレーザーパワーを制御して、流路Aの走査線S1に対応する位置において、流路A内に導入された分散溶媒中に気泡を発生させる。
【0090】
以下、この気泡発生レーザー光L1によって分散溶媒中に気泡を発生させた気泡により液流の制御を行い、微小粒子の分取する方法について説明する。
【0091】
図13は、液流制御装置4における液流制御方法及び微小粒子分取方法を説明する図である。
【0092】
図13は、図12中基板aに配設された流路Aの一つを模式的に拡大して示している。なお、図12では、基板a上に5本の流路Aを配設した場合を示したが、基板a上に配設される流路Aの数は特に限定されず、1以上の流路Aを適宜配設することができる。
【0093】
図13に示すように、流路Aは、微小粒子の分散溶媒が導入される導入流路A1と、この導入流路A1に連通する分岐流路A2及び分岐流路A3とを含んでいる。以下、この導入流路A1と分岐流路A2及び分岐流路A3の連通部を「流路分岐部」というものとする。
【0094】
分岐流路A2及び分岐流路A3の一端には、微小粒子をプールするためのサンプル貯留部Ap2及びサンプル貯留部Ap3が設けられている。
【0095】
さらに、流路Aは、微小粒子の分散溶媒を導入流路A1に導入するためのサンプル流路As1と、溶媒層流(シース流)を導入流路A1に導入するためのシース流路As2,As2とを備えている。サンプル流路As1から導入される微小粒子の分散溶媒は、2つのシース流路As2から導入される溶媒層流によって流路内の中央部に位置づけられた層流として導入流路A1に導入される。この際、微小粒子は、図に示すように、層流中に一定距離間隔で配列される。
【0096】
導入流路A1に一定距離間隔で配列された微小粒子は、図12中符号S2で示した測定レーザー光L2の走査線に対応する位置において、図13に示すように、測定レーザー光L2を照射される。図中、測定レーザー光L2が照射される微小粒子を、符号Tで示した。
【0097】
この測定レーザー光L2の照射によって、微小粒子Tから生じる測定対象光Rは、上述のように、光検出器45(図12参照)により検出され、電気信号へと変換された後、解析手段46へ出力される。そして、光変調部47は、解析手段46から出力される微小粒子Tを分取するか否かについての判定結果を受け、微小粒子Tを分取するべき場合には、レーザー光源41から放射される気泡発生レーザー光L1のレーザーパワーを制御して、分岐流路A2又は分岐流路A3の走査線S1に対応する位置(図中、符合b参照)において、分散溶媒中に気泡を発生させる。本図では、分岐流路A2に気泡を発生させた場合を示した。
【0098】
液流制御装置4は、この気泡の発生によって分岐流路A2又は分岐流路A3に生じる流れ抵抗の増大に基づいて、流路分岐部における分散溶媒の送流方向を制御して、微量粒子Tの送流方向を制御し、微小粒子Tを分岐流路A2又は分岐流路A3のいずれかに選択的に導入し、サンプル貯留部Ap2又はサンプル貯留部Ap3のいずれかに貯留する。
【0099】
以下、図14及び図15に基づいて、気泡発生レーザー光L1により発生させた気泡により流路分岐部における分散溶媒の送流方向を制御する方法について、具体的に説明する。
【0100】
図14は、解析手段46により微小粒子Tを分取すべきでないと判定された場合の流路分岐部における送流方向を示す図(上面図)である。
【0101】
流路Aにおいて、導入流路A1内に導入された分散溶媒は、通常(分取を行わない)状態では、導入流路A1に対し直線上に連通する分岐流路A2へ送流される(図中、矢印F2参照)よう構成されている。
【0102】
従って、解析手段46により微小粒子Tを分取すべきでないと判定された場合には、気泡発生レーザー光L1によって、分岐流路A2及び分岐流路A3の走査線S1に対応する位置のいずれにも気泡を発生させないことにより、分散溶媒を分岐流路A2へ送流し、微小粒子Tをサンプル貯留部Ap2内に貯留する。
【0103】
図15には、解析手段46により微小粒子Tを分取すべきと判定された場合の流路分岐部における送流方向を示した。
【0104】
解析手段46により微小粒子Tを分取すべきと判定された場合には、気泡発生レーザー光L1によって、分岐流路A2の走査線S1に対応する位置(図中、符号bで示す範囲、以下「気泡発生範囲b」という)の分散溶媒中に気泡を発生させる。この気泡の発生によって、分岐流路A2内に圧力損失が発生し、分岐流路A2の流れ抵抗が増大することで、分岐流路A2の流れが一時的に滞留することとなり、導入流路A1から送流される分散溶媒は、分岐流路A3へ流れるようになる(図中、矢印F3参照)。これにより、微小粒子Tを含む分散溶媒を分岐流路A3に導入し、微小粒子Tをサンプル貯留部Ap3内に分取することが可能となる。
【0105】
図16及び図17には、図15中走査線S1における分岐流路A2を含む基板aの断面図(A)と簡略上面図(B)、及び、U-U断面における気泡発生範囲b近傍の拡大断面図(C)を示す。図中符号S1は、気泡発生レーザー光L1の走査線を示す。
【0106】
図16に示すように、分岐流路A2の気泡発生範囲bには、その分散液体に臨む面(ここでは底面)に、気泡発生レーザー光L1が照射される蓄熱部a4を、その走査線S1に従ってパターン状に形成している。なお、蓄熱部a4の形成面及び素材等については先に説明したのと同様である。
【0107】
すなわち、蓄熱部a4の構成単位a41の大きさを、照射される気泡発生レーザー光L1のビーム強度が大きい走査線S1近傍の構成単位a41においては、その大きさ(面積)を小さく、逆に、ビーム強度が小さい走査線S1から遠い構成単位a41においては、大きさ(面積)を大きくし、構成単位a41の大きさ(面積)を、気泡発生レーザー光L1の走査線S1におけるビーム強度分布に反比例するかたちで形成している。
【0108】
このように蓄熱部a4を構成することで、図9において説明したのと同様に、気泡発生レーザー光L1を走査して蓄熱部a4に照射した際に、蓄熱部a4を構成する各構成単位a41に等しい光エネルギーを付与し、等しい熱量を発生させることが可能となる。
【0109】
これにより、図17に示すように、各構成単位a41に接する分散溶媒を均一に加熱、気化させて、均一な大きさの気泡Bを多数発生させることが可能となる。この気泡により、分岐流路A2内に圧力損失が生じ、分岐流路A2の流れ抵抗を増大することで、上述の送流方向の制御が可能となる。
【0110】
ここで、再度図15に基づいて、気泡発生レーザー光L1によって気泡Bを発生させるタイミングについて説明する。
【0111】
気泡発生レーザー光L1による気泡Bの発生は、走査線S2上を走査される測定レーザー光L2を照射された微小粒子Tが、流路分岐部に送流された時点において、適切なタイミングで行われる。この気泡発生レーザー光L1の照射タイミングの制御は、光変調部47(図12参照)による気泡発生レーザー光L1のレーザーパワーの制御によって実現される。
【0112】
先に説明したように、流体制御装置4において、気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2の走査は、走査部43(図12参照)により一体に行われるものである。そして、この走査は、極めて短い周期(例えば、30,000rpm)で行われるため、気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2は、走査線S2上において測定レーザー光L2を照射された微小粒子Tが流路分岐部に到達するまでの間に、それぞれ走査線S1及び走査線S2上を複数回走査されることとなる。光変調部47は、この気泡発生レーザー光L1が複数回走査される間の適切なタイミングにおいて、気泡発生レーザー光L1のレーザーパワーを上昇もしくはオフからオンに切換えることにより、分岐流路A2内の分散溶媒中に気泡Bを発生させ、微小粒子Tを分岐流路A3に導入する。
【0113】
気泡の消失後は、分岐流路A2の流れ抵抗が減少し、分岐流路A2の流れの滞留が解消されるため、微小粒子の分散溶媒は、図14で説明したように、導入流路A1から分岐流路A2へ送流されるようになる(図14中、矢印F2参照)。これにより、導入流路A1内に一定間隔で配列された次の微小粒子が、測定レーザー光L1の走査線S1上に送流され、同様の手順により、分取が行われることとなる。
【0114】
この際、分岐流路A2の分散溶媒中に発生させた気泡Bが、あまりに長時間にわたって維持されると、本来分岐流路A3に導入されるべきでない微小粒子までもがサンプル貯留部Ap3内に分取されてしまう可能性がある。
【0115】
これは、気泡発生レーザー光L1の照射によって分散溶媒を気化させる際に、分散溶媒を過度に加熱することによって、大型の気泡が発生した場合に生じ易い。溶媒と空気では、熱伝達係数が空気の方が低く、大型の気泡では内部の熱が分散され難く、消失し難いためである。
【0116】
従って、導入流路A1内に一定間隔で配列され送流されてくる微小粒子を高精度に分取するためには、気泡Bを適切な大きさとし、一の微小粒子を分岐流路A3に導入するために必要かつ十分な時間、分岐流路A2内の流れを滞留させることが必要となる。
【0117】
このため、液流制御装置4では、上述の通り、分岐流路の気泡発生範囲bに形成する蓄熱部a4を、気泡発生レーザーL1の走査線S1におけるビーム強度分布に基づいて大きさを変化させた複数の構成単位a41により構成した。これにより、気泡発生範囲bに均一な大きさの気泡を多数発生させることが可能とされている。
【0118】
さらに、隣接する構成単位a41間の中心間距離を一定とし、各構成単位a41で発生する気泡Bが接触、融合することがないように構成している。各構成単位a41は等しい熱量を発生させ、均一な大きさの気泡Bを発生させるが、この場合においても、隣接する構成単位a41間で発生した気泡Bが融合すると、気泡Bが大型化してしまう可能性がある。各構成単位a41間の中心間距離を一定とし、各構成単位a41から発生する気泡Bが一定の間隔で配列されるようにしたことで、気泡Bの接触を防止して大型化を回避することが可能となる。
【0119】
このように、液流制御装置4では、気泡体積に対して溶媒との接触面積が大きいために廃熱性が良く、短時間で消失し得る小型の気泡を、多数形成させて分岐流路内の流れ抵抗を増大させることで、大型の気泡を単独で発生させる従来方法に比べ、流路分岐部における送流方向の制御をより柔軟に、高精度かつ高速に行うことが可能とされている。
【0120】
比較のため、図18には、従来技術に従い、蓄熱部a4を単一の連続した領域として構成した場合に発生する気泡Bを例示する。
【0121】
なお、図13〜図15では、分岐流路を2つとして、微小粒子をその光学特性に応じて2つのポピュレーションに分別する場合を例に説明したが、二以上の分岐流路を設ける場合も当然に可能である。
【0122】
参考のため、図19には、3つの分岐流路を設けた流路Aを示す。
【0123】
図19に示す流路Aは、導入流路A1に連通する分岐流路として、分岐流路A2及び分岐流路A3に加え、分岐流路A4を備えている。そして、分岐流路A4の一端には、微小粒子をプールするためのサンプル貯留部Ap4が設けられている。
【0124】
図19に示す流路Aにおいて、導入流路A1内に導入された微小粒子は、通常(分取を行わない)状態では、導入流路A1に対し直線上に連通する分岐流路A2へ送流される(図中、矢印F2参照)よう構成されている。
【0125】
従って、解析手段46により微小粒子Tを分取すべきでないと判定された場合には、気泡発生レーザー光L1によって、分岐流路A2、分岐流路A3及び分岐流路A4の走査線S1に対応する位置のいずれにも気泡を発生させないことにより、微小粒子Tは分岐流路A2へ導入され(矢印F2参照)、サンプル貯留部Ap2内に貯留される。
【0126】
これに対して、解析手段46により微小粒子Tを分取すべきと判定された場合には、気泡発生レーザー光L1によって、図18に示すように、分岐流路A2及び分岐流路A3の走査線S1に対応する位置(気泡発生範囲b)に気泡Bを発生させれば、微小粒子Tを分岐流路A4に導入し、サンプル貯留部Ap4内に分取することが可能となる(図中矢印F4参照)。
【0127】
また、分岐流路A2及び分岐流路A4の(気泡発生範囲b)に気泡Bを発生させれば、微小粒子Tを分岐流路A3に導入し、サンプル貯留部Ap3内に分取することも可能である。
【0128】
流体制御装置4によれば、短時間に消失する小型の気泡を多数発生させることで、このように3つ以上のポピュレーションに微小粒子を分別する場合においても、柔軟かつ高速に送流方向の制御を行うことが可能であり、高精度の分取を行うことができる。
【0129】
さらに図13〜図15及び図19では、流路Aの1つを模式的に拡大して説明したが、図12で説明した通り、基板a上には複数の流路Aが設けられ、気泡発生レーザー光L1及び測定レーザー光L2は、走査部43によって走査線S1及び走査線S2上を走査されることによって、全ての流路Aにおいて同時に上述したような微小粒子の光学測定と分取を行うものである。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明に係る基板は、化学的及び生物学的分析を行うためマイクロチップとして好適に用いられ、例えば、液体クロマトグラフィーの電気化学検出器や医療現場における小型の電気化学センサーなどに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係る基板の第一実施形態を示す図である。
【図2】蓄熱部14の形成パターン例を示す図である。
【図3】蓄熱部14の形成パターン例を示す図である。
【図4】基板1を用いた液体制御を説明する図である。
【図5】基板1を用いた液体制御を説明する図である。
【図6】本発明に係る基板の第二実施形態を示す図である。
【図7】基板2を用いた液体制御を説明する図である。
【図8】本発明に係る基板の第三実施形態を示す図である。
【図9】基板3の構成を説明する図である。
【図10】蓄熱部34の形成パターン例を示す図である。
【図11】蓄熱部34の形成パターン例を示す図である。
【図12】本発明に係る液流制御装置4の構成を説明する図である。
【図13】液流制御装置4における液流制御方法及び微小粒子分取方法を説明する図である。
【図14】解析手段46により微小粒子Tを分取すべきでないと判定された場合の流路分岐部における送流方向を示す図である。
【図15】解析手段46により微小粒子Tを分取すべきと判定された場合の流路分岐部における送流方向を示す図である。
【図16】基板aの構成を説明する図である。
【図17】基板aを用いた液体制御を説明する図である。
【図18】従来技術による液体制御を説明する図(参考図)である。
【図19】3つの分岐流路を設けた流路Aにおける送流制御方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0132】
1,2,3,a 基板
11,21,31 基板本体
12,22,32 基板蓋
13,23,33 反応領域
14,24,34 蓄熱部
141,241,341 構成単位
35, 導入流路
36 サンプル注入口
37 排出流路
38 サンプル排出口
4 流体制御装置
41,42 レーザー光源
411,412 コリメータレンズ
43 走査部
44 対物レンズ
45 光検出部
46 解析手段
47 光変調部
48 分光器
A 流路
A1 導入流路
A2,A3,A4 分岐流路
Ap2,Ap3,Ap4 サンプル貯留部
B 気泡
L1 レーザー光(気泡発生レーザー光)
L2 レーザー光(測定レーザー光)
R 検出対象光
T 微小粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を導入可能な領域が設けられた基板であって、
前記領域の前記液体に臨む面に、熱源としてのレーザー光の照射によって蓄熱され、前記液体を加熱し得る蓄熱部が、該蓄熱部におけるレーザー光の強度分布に基づいてパターン状に形成されていることを特徴とする基板。
【請求項2】
前記蓄熱部のパターンを構成する構成単位が、その面積又は体積と前記レーザー光の強度分布とが反比例するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項3】
前記蓄熱部は、前記液体の加熱によって該液体中に気泡を発生させることを特徴とする請求項2記載の基板。
【請求項4】
前記領域は、液体を導入可能な導入流路と、該導入流路に連通する複数の分岐流路と、からなり、
前記蓄熱部は前記分岐流路に形成されていることを特徴とする請求項3記載の基板。
【請求項5】
前記蓄熱部によって前記分岐流路内の液体中に発生させた気泡によって、前記導入流路と前記分岐流路との分岐部における前記液体の送流方向を制御し得ることを特徴とする請求項4記載の基板。
【請求項6】
液体を導入可能な領域が設けられた基板であって、前記領域の前記液体に臨む面に、熱源としてのレーザー光の照射によって蓄熱され、前記液体を加熱し得る蓄熱部が、該蓄熱部におけるレーザー光の強度分布に基づいてパターン状に形成された基板と、
前記蓄熱部に対し前記レーザー光を照射するレーザー照射部と、を備える液体制御装置。
【請求項1】
液体を導入可能な領域が設けられた基板であって、
前記領域の前記液体に臨む面に、熱源としてのレーザー光の照射によって蓄熱され、前記液体を加熱し得る蓄熱部が、該蓄熱部におけるレーザー光の強度分布に基づいてパターン状に形成されていることを特徴とする基板。
【請求項2】
前記蓄熱部のパターンを構成する構成単位が、その面積又は体積と前記レーザー光の強度分布とが反比例するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項3】
前記蓄熱部は、前記液体の加熱によって該液体中に気泡を発生させることを特徴とする請求項2記載の基板。
【請求項4】
前記領域は、液体を導入可能な導入流路と、該導入流路に連通する複数の分岐流路と、からなり、
前記蓄熱部は前記分岐流路に形成されていることを特徴とする請求項3記載の基板。
【請求項5】
前記蓄熱部によって前記分岐流路内の液体中に発生させた気泡によって、前記導入流路と前記分岐流路との分岐部における前記液体の送流方向を制御し得ることを特徴とする請求項4記載の基板。
【請求項6】
液体を導入可能な領域が設けられた基板であって、前記領域の前記液体に臨む面に、熱源としてのレーザー光の照射によって蓄熱され、前記液体を加熱し得る蓄熱部が、該蓄熱部におけるレーザー光の強度分布に基づいてパターン状に形成された基板と、
前記蓄熱部に対し前記レーザー光を照射するレーザー照射部と、を備える液体制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−103624(P2009−103624A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277095(P2007−277095)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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