説明

マイクロ総合分析システム

【課題】 検体と試薬との反応、検出を検査チップの微細流路内で行い、検査チップをシステム本体に装着することによって自動的に送液、温度制御、検出などが行われるマイクロ総合分析システムにおいて、マイクロポンプユニットと検査チップとの接続部における充分な密着性を確実に確保し、流路からの液漏れ、あるいはコンタミネーションの浸入を防止すること。
【解決手段】 検査チップのポンプ接続部と微細流路との間と、チップ接続部とマイクロポンプユニットとの間に、検査チップのポンプ接続部とマイクロポンプユニットのチップ接続部との接続部に気体を送り込む送風装置を備えるとともに、検査チップまたはマイクロポンプユニットが、送風装置から送り出される気体を導入する流路を備えることにより、流路からの液漏れ、あるいはコンタミネーションの浸入を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中に含まれる生体物質と試薬との混合、反応、および該反応の検出が行われる一連の微細流路が形成された検査チップをシステム本体に装着し、マイクロポンプユニットにより検査チップの微細流路における送液を行いながら、該検査チップにおける生体物質と試薬との混合、反応、および該反応の検出を自動的に行うマイクロ総合分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、セ
ンサーなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている。
【0003】
これは、μ−TAS(Micro Total Analysis System)、バイオリアクタ、ラブ・オン・チップ(Lab−оn−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。
【0004】
とりわけ遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化されたミクロ化分析システムとしてのマイクロリアクタは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とすることによる効果は絶大である。
【0005】
このように臨床検査を始めとする各種検査を行う現場では、場所を選ばず迅速に結果を出すチップタイプのマイクロリアクタにおける測定においても、その定量性、解析の精度などが重要視される。
【0006】
また、マイクロリアクタはそのサイズ、形態の点から厳しい制約があるため、シンプルな構成かつ高い信頼性を有する送液システムを確立することが課題となる。
本発明者らは、遺伝子増幅反応およびその検出に好適なマイクロ総合分析システムを既に提案している(特許文献1から特許文献6)。
【0007】
また、精度が高く、信頼性に優れるマイクロ流体制御素子に好適なマイクロポンプシステムを本発明者らはすでに提案している(特許文献7および特許文献8)。
【特許文献1】特願2004−138959号
【特許文献2】特願2004−169912号
【特許文献3】特願2004−310744号
【特許文献4】特願2004−312313号
【特許文献5】特願2004−312314号
【特許文献6】特願2004−312315号
【特許文献7】特開2001−322099号公報
【特許文献8】特開2004−108285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなマイクロ分析総合システムでは、マイクロポンプによって検査チップの微細流路内における試薬などの送液を行っている。
具体的には、特許文献7、8に開示された構成を有するピエゾ素子を用いたポンプなど
をチップに複数設けたマイクロポンプユニットと、検査チップとを、例えば互いの流路開口が合致するようにマイクロポンプユニットのチップ面と検査チップのチップ面とを密着させることによって、ポンプ側の流路と検査チップ側の流路とを連通させている。
【0009】
しかしながら、マイクロポンプユニットと検査チップとの接続部において、接続前に接触面が濡れていると、使用時にマイクロポンプ側から検査チップ側へこの接続部を通過する駆動液などの液体が、これらの接触面の間から漏れ出す可能性がある。
【0010】
また、マイクロポンプユニットと検査チップとの接続部において液密性が充分でない場合、外部から流路内へコンタミネーションが浸入する可能性もある。
本発明は、このような現状に鑑み、マイクロポンプユニットと検査チップとの接続部において充分な密着性を確実に確保でき、流路からの液漏れ、あるいはコンタミネーションの浸入を防止可能なマイクロ総合分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、本発明のマイクロ総合分析システムは、
検体または該検体を流路内で処理した処理液に含まれる測定対象の生体物質と、
試薬収容部に収容された試薬とを、
反応部位を構成する流路へ送液して合流させ、
これらを反応させた後、得られた反応生成物質もしくはその処理物質を、
検出部位を構成する流路へ送液して測定する一連の微細流路が設けられるとともに、
マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部が設けられた検査チップと、
システム本体と、を備え、
前記システム本体は、
ベース本体と、
複数のマイクロポンプと、
検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部とが設けられ、
前記ベース本体内に配置されたマイクロポンプユニットとを備え、
検査チップの前記ポンプ接続部と、
前記マイクロポンプユニットの前記チップ接続部と、
を液密に密着させた状態で検査チップをベース本体内に装着した後、
該検査チップにおける生体物質と試薬との反応およびその検出を自動的に行うマイクロ総合分析システムであって、
前記検査チップの前記ポンプ接続部とマイクロポンプユニットの前記チップ接続部とを離脱させる際に、
前記検査チップの前記ポンプ接続部と前記微細流路との間と、
前記チップ接続部と前記マイクロポンプユニットとの間に、
前記検査チップのポンプ接続部と前記マイクロポンプユニットのチップ接続部との接続部に気体を送り込む送風装置を備えるとともに、
前記検査チップまたは前記マイクロポンプユニットが、
前記送風装置から送り出される気体を導入する流路を備えることを特徴とする。
【0012】
このように構成すれば、送風装置から送り出され検査チップまたはマイクロポンプユニットに設けられた流路から導入された気体によって、ポンプ接続部とチップ接続部との接続部付近の流路内の駆動液を、接続部付近外へ押し出すことができる。
【0013】
このため、マイクロポンプユニットと検査チップとを離脱させた際に、接合部から液体が流出することを防止することができる。
また、本発明のマイクロ総合分析システムは、
検体または該検体を流路内で処理した処理液に含まれる測定対象の生体物質と、
試薬収容部に収容された試薬とを、
反応部位を構成する流路へ送液して合流させ、
これらを反応させた後、得られた反応生成物質もしくはその処理物質を、
検出部位を構成する流路へ送液して測定する一連の微細流路が設けられるとともに、
マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部が設けられた検査チップと、
システム本体と、を備え、
前記システム本体は、
ベース本体と、
複数のマイクロポンプと、
検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部とが設けられ、
前記ベース本体内に配置されたマイクロポンプユニットとを備え、
検査チップの前記ポンプ接続部と、
前記マイクロポンプユニットの前記チップ接続部と、
を液密に密着させた状態で検査チップをベース本体内に装着した後、
該検査チップにおける生体物質と試薬との反応およびその検出を自動的に行うマイクロ総合分析システムであって、
前記検査チップの前記ポンプ接続部とマイクロポンプユニットの前記チップ接続部とを離脱させる際に、
前記検査チップの前記ポンプ接続部と前記微細流路との間と、
前記チップ接続部と前記マイクロポンプユニットとの間に、
前記検査チップのポンプ接続部と前記マイクロポンプユニットのチップ接続部との接続部に気体を送り込む送風装置を備えるとともに、
前記検査チップおよび前記マイクロポンプユニットが、
前記送風装置から送り出される気体を導入する流路を備えることを特徴とする。
【0014】
このように構成すれば、送風装置から送り出され検査チップとマイクロポンプユニットに設けられた流路から導入された気体によって、ポンプ接続部とチップ接続部との接続部付近の流路内の駆動液を、接続部付近外へ押し出すことができる。
【0015】
このため、マイクロポンプユニットと検査チップとを離脱させた際に、接合部から液体が流出することを防止することができる。
また、検査チップとマイクロポンプユニットの両側に、送風装置から送り出される気体を導入する流路を備えれば、いずれの方向からも気体を流入させることができ、ポンプ接続部とチップ接続部との接続部付近の流路内の駆動液を、確実に接続部付近外へ押し出すことができる。
【0016】
また、本発明のマイクロ総合分析システムは、
前記マイクロ総合分析システムが、
前記送風装置により送り込まれた気体によってマイクロポンプユニットまたは検査チップの外側へ押し出された液体を回収する液体回収装置を備えることを特徴とする。
【0017】
このように構成することによって、マイクロポンプユニットまたは検査チップの外側へ押し出された液体を、システム本体内に飛散させることなく、確実に回収することができる。
【0018】
また、本発明のマイクロ総合分析システムは、
前記送風装置が、
前記検査チップのポンプ接続部または前記ポンプユニットのチップ接続部の近傍に設けられることを特徴とする。
【0019】
このように構成することによって、直接検査チップの流路内に気体を取り入れることができるため、システム本体内において、装置が煩雑化することを防止することができる。
また、本発明のマイクロ総合分析システムは、
前記送風装置が、
前記検査チップのポンプ接続部および前記ポンプユニットのチップ接続部の近傍に設けられることを特徴とする。
【0020】
このように構成することによって、直接検査チップの流路内に気体を取り入れることができるため、システム本体内において、装置が煩雑化することを防止することができる。
また、本発明のマイクロ総合分析システムは、
検体または該検体を流路内で処理した処理液に含まれる測定対象の生体物質と、
試薬収容部に収容された試薬とを、
反応部位を構成する流路へ送液して合流させ、
これらを反応させた後、得られた反応生成物質もしくはその処理物質を、
検出部位を構成する流路へ送液して測定する一連の微細流路が設けられるとともに、
マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部が設けられた検査チップと、
システム本体と、を備え、
前記システム本体は、
ベース本体と、
複数のマイクロポンプと、
検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部とが設けられ、
前記ベース本体内に配置されたマイクロポンプユニットとを備え、
検査チップの前記ポンプ接続部と、
前記マイクロポンプユニットの前記チップ接続部と、
を液密に密着させた状態で検査チップをベース本体内に装着した後、
該検査チップにおける生体物質と試薬との反応およびその検出を自動的に行うマイクロ総合分析システムであって、
前記検査チップの前記ポンプ接続部と、
前記マイクロポンプユニットの前記チップ接続部との表面に疎水化層を設けることを特徴とする。
【0021】
このように、検査チップのポンプ接続部と、マイクロポンプユニットのチップ接続部の表面に疎水化層を設ければ、検査チップとマイクロポンプユニットとを離脱させた際に、駆動液などの液体が、両面張力により集合化するため、接続部以外に液体が飛散することを防止できる。
【0022】
また、本発明のマイクロ総合分析システムは、
前記疎水化層が、
ポリエチレン、シリコーン、テフロン(登録商標)のいずれかより成ることを特徴とする。
【0023】
このように、構成することによって、検査チップとマイクロポンプユニットとを離脱させた際に、駆動液などの液体が、両面張力により集合化するため、接続部以外に液体が飛散することを防止できる。
【0024】
また、本発明のマイクロ総合分析システムは、
前記システム本体が、
前記検査チップの微細流路内において生体物質と試薬とを反応させた後、
検出部位を構成する流路においてその検出を光学的に行う検出装置と、
前記マイクロポンプによる送液を制御するポンプ制御装置と、
前記検査チップの所定部位における温度を制御する温度制御装置と、
を備えることを特徴とする。
【0025】
このように構成することによって、システム本体内で確実に検体に対する所望の検査を行うことができる。
また、本発明のマイクロ総合分析システムは、
前記マイクロポンプが、
流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、
差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小さい第2流路と、
第1流路および第2流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、
を備えたマイクロポンプであることを特徴とする。
【0026】
このように構成することによって、確実に駆動液を検査チップ内に取り入れることができる。
このため、システム本体内で確実に検体に対する所望の検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明のマイクロ総合分析システムの実施例を示した概略斜視図、図2は、実施例のマイクロ総合分析システムのベース本体に検査チップを装着した状態を示したベース本体内部の概略図、図3は、他の実施例のマイクロ総合分析システムのベース本体に検査チップを装着した状態を示したベース本体内部の概略図、図4は、図3のマイクロ総合分析システムの要部を拡大して示した要部拡大図、図5は、本発明のマイクロ総合分析システムの検査チップを説明する概略図、図6は図5の検査チップの要部を拡大して示した要部拡大図、図7は、図2に示した本発明のマイクロ総合システムの送風装置を使用した際の液体の動きを説明する概略図、図8は、図3に示した本発明のマイクロ総合システムの送風装置を使用した際の液体の動きを説明する概略図、図9は、本発明のマイクロ総合システムと、従来のマイクロ総合システムの検査チップとマイクロポンプユニットとを離脱させた際の状況を説明する概略図である。
【0028】
図1から図3に示したマイクロ総合分析システム10は、ベース本体12の内部にマイクロポンプユニット26、ポンプ制御装置28、温度制御装置38、検出装置44などが収納されたシステム本体と、検査チップ50とから構成されている。
<検査チップ>
図5に概略を示した検査チップ50は、予め試薬58が封入された試薬収容部60(図5斜線部分)と、これらの試薬収容部60から下流側へ続く流路46を備えている。
【0029】
なお、試薬58は、試薬供給孔56より供給されたものであり、検査チップ50内に試薬58を供給すると試薬58は、各々の撥水バルブB、撥水バルブCの直前まで充填されることとなる。
【0030】
さらに、これらの試薬収容部60の下流では複数の試薬収容部60が合流部70にて合流し、その先には微細流路46が設けられている。
このような微細流路46の下流には、図示しないが検体収用部が設けられ、この検体収用部に収用された検体と、微細流路46を通過する複数の試薬58が混合された液体とが
、さらに混合されるよう構成されている。
【0031】
また、検査チップ50の試薬収容部60には、撥水バルブなどの弁部が適宜の位置に配置され、例えば送液量の定量、各液体の混合などの制御がなされている。
そして、検査チップ50の試薬収容部60の上流には、図2または図3に示したマイクロポンプユニット26のチップ接続部66と接続するためのポンプ接続部64と、後述する送風装置32と接続するための送風装置接続部24が設けられている。
【0032】
このような検査チップ50は、プラスチック樹脂、ガラス、シリコン、セラミックスなどの1以上の部材を適宜組み合わせて作製される一枚のチップである。
好ましくは、検査チップ50の微細流路46および躯体は、加工が容易であり安価であり、焼却廃棄が容易なプラスチック樹脂で形成される。
【0033】
例えばポリスチレン樹脂は、成型性に優れ、ストレプトアビジンなどを吸着する傾向が強く、微細流路上に検出部位を容易に形成することができる。
なお微細流路は、幅および深さが例えば約10μm〜数百μmに形成される。
【0034】
また、蛍光物質または呈色反応の生成物などを光学的に検出するために、検査チップ50の表面のうち少なくとも微細流路の検出部位を覆うその検出部分は透明である部材、好ましくは透明なプラスチックとなっていることが必要である。
【0035】
典型的には、複数の試薬収容部60に収容された各試薬58が下流側の試薬収容部60で混合され、さらに合流部70にて各試薬収容部60の混合試薬が合流されて下流の微細流路46に送液される。
【0036】
微細流路46の下流では、図示しないが、検体と混合試薬とがY字流路などから合流して混合され、昇温などにより反応が開始され、流路に設けられた検出部位において反応が検出される。
【0037】
本発明のシステムは、特に遺伝子または核酸の検査に好適に用いることができる。
その場合、検査チップ50の微細流路46は、PCR増幅に適した構成とされるが、遺伝子検査以外の生体物質についても基本的な流路構成はほぼ同一になるといえる。
【0038】
通常は検体前処理部、試薬類、プローブ類を変更すればよく、その場合、送液エレメントの配置、数などは変化するであろう。
当業者であれば、例えばイムノアッセイ法のために必要な試薬類などを検査チップ50に搭載し、若干の流路エレメントの変更、仕様の変更を含む修正を施すことにより、分析の種類を容易に変更することができる。
【0039】
ここにいう遺伝子以外の生体物質とは、各種の代謝物質、ホルモン、タンパク質(酵素、抗原なども含む)などをいう。
検査チップ50の好ましい一態様では、一つのチップ内において、検体もしくは検体から抽出したアナライト物質(例えばDNA)が注入される検体収容部と、
検体の前処理を行う検体前処理部と、
プローブ結合反応、検出反応(遺伝子増幅反応または抗原抗体反応なども含む)などに用いる試薬が収容される試薬収容部と、
ポジティブコントロールが収容されるポジティブコントロール収容部と、
ネガティブコントロールが収容されるネガティブコントロール収容部と、
プローブ(例えば、遺伝子増幅反応により増幅された検出対象の遺伝子にハイブリダイズさせるプローブ)が収容されるプローブ収容部と、
これらの各収容部に連通する微細流路と、
前記各収容部および流路内の液体を送液する別途のマイクロポンプに接続可能なポンプ接続部と、が設けられている。
【0040】
この検査チップ50には、ポンプ接続部64を介してマイクロポンプが接続され、検体収容部(図示せず)に収容された検体もしくは検体から抽出した生体物質(例えばDNAまたはそれ以外の生体物質)と、試薬収容部60に収容された試薬58とを試薬収容部60下流の合流部70へ送液し、さらに微細流路46の反応部位、例えば遺伝子増幅反応(タンパク質の場合、抗原抗体反応など)の部位で混合して反応させた後、その下流側流路にある検出部へ、この反応液を処理した処理液と、プローブ収容部に収容されたプローブとを送液し、流路内で混合してプローブと結合(またはハイブリダイゼーション)させ、この反応生成物に基づいて生体物質の検出を行う。
【0041】
また、ポジティブコントロール収容部に収容されたポジティブコントロールおよびネガティブコントロールに収容されたネガティブコントロールについても同様に上記反応および検出を行う。
【0042】
検査チップ50における検体収容部(図示せず)は、検体注入部に連通し、検体の一時収容および混合部への検体供給を行う。
検体収容部(図示せず)の上面から検体を注入する検体注入部は、外部への漏失、感染および汚染を防ぎ、密封性を確保するために、ゴム状材質などの弾性体からなる栓が形成されているか、あるいはポリジメチルシロキサン(PDMS)などの樹脂、強化フィルムで覆われていることが望ましい。
【0043】
例えば、当該ゴム材質の栓を突き刺したニードルまたは蓋付き細孔を通したニードルでシリンジ内の検体を注入する。
前者の場合、ニードルを抜くとその針穴が直ちに塞がることが好ましい。
【0044】
あるいは他の検体注入機構を設置してもよい。
検体収容部(図示せず)に注入された検体は、必要に応じて、試薬58との混合前に、予め試薬収容部60に設けられた検体前処理部にて、例えば検体と処理液とを混合することによって前処理される。
【0045】
好ましい検体前処理として、分析対象物(アナライト)の分離または濃縮、除タンパクなどが含まれる。
したがって検体前処理部は、分離フィルター、吸着用樹脂、ビーズなどを含んでもよい。
【0046】
また、検査チップ50の試薬供給孔56には、必要な試薬類が予め所定の量だけ封入されている。
したがって使用時にその都度、試薬58を必要量充填する必要はなく、即使用可能の状態になっている。
【0047】
検体中の生体物質を分析する場合、測定に必要な試薬類は、通常それぞれ公知である。
例えば、検体に存在する抗原を分析する場合、それに対する抗体、好ましくはモノクローナル抗体を含有する試薬58が使用される。
【0048】
抗体は、好ましくはビオチンおよびFITCで標識されている。
遺伝子検査用の試薬類には、遺伝子増幅に用いられる各種試薬、検出に使用されるプローブ類、発色試薬とともに、必要であれば前記の検体前処理に使用する前処理試薬も含め
てもよい。
【0049】
マイクロポンプユニット26のマイクロポンプによって、駆動液31を検査チップ50内に供給することにより、各試薬収容部60から試薬58を混合部70に押し出すこととなる。
【0050】
さらに、これらの試薬58を微細流路46内に押し出し、微細流路46の下流側で検体と合流させることによって、遺伝子増幅反応、アナライトのトラップまたは抗原抗体反応といった分析に必要な反応が開始される。
【0051】
試薬58と試薬58との混合、および検体と試薬58との混合は、単一の混合部で所望の比率で混合してもよく、あるいは何れかもしくは両方を分割して複数の合流部を設け、最終的に所望の混合比率となるように混合してもよい。
【0052】
このような反応部位の態様は、特に限定されるものではなく、様々な形態および様式が考えられる。
一例としては、試薬58を含む2以上の液体を合流させる合流部(流路分岐点)から先に、各液が拡散混合される微細流路46が設けられ、この微細流路46の下流側から先に設けられた微細流路46よりも広幅の空間からなる液溜め(図示せず)において、反応が行われる。
【0053】
DNA増幅方法としては、多方面で盛んに利用されているPCR増幅法を使用することができる。
その増幅技術を実施するための諸条件が詳細に検討され、改良点も含めて各種文献などに記載されている。
【0054】
PCR増幅法においては、3つの温度間で昇降させる温度管理が必要になるが、検査チップ50に好適な温度制御を可能とする流路デバイスが、すでに本発明者らにより提案されている(特開2004−108285号)。
【0055】
このデバイスシステムを本発明の検査チップ50の増幅用流路に適用すればよい。
これにより、熱サイクルが高速に切り替えられ、微細流路46を熱容量の小さいマイクロ反応セルとしているため、DNA増幅は、手作業で行う従来の方式よりはるかに短時間で行うことができる。
【0056】
PCRの改良として最近開発されたICAN(Isothermal chimera
primer initiated nucleic acid amplification)法は、50〜65℃における任意の一定温度の下にDNA増幅を短時間で実施できる特徴を有する(特許第3433929号)。
【0057】
したがって、ICAN法は、本発明の検査チップ50では、簡便な温度管理で済むために好適な増幅技術である。
手作業では、1時間かかる本法は、本発明のマイクロ総合分析システム10においては、10〜20分、好ましくは15分で解析まで終わる。
【0058】
検査チップ50の微細流路46における反応部位よりも下流側には、アナライト、例えば増幅された遺伝子を検出するための検出部位が設けられている。
少なくともその検出部分は、光学的測定を可能とするために透明な材質、好ましくは透明なプラスチックとなっている。
【0059】
さらに微細流路46上の検出部位に吸着されたビオチン親和性タンパク質(アビジン、ストレプトアビジン、エクストラアビジン(R)、好ましくはストレプトアビジン)はプローブ物質に標識されたビオチン、または遺伝子増幅反応に使用されるプライマーの5’末端に標識されたビオチンと特異的に結合する。
【0060】
これにより、ビオチンで標識されたプローブまたは増幅された遺伝子が本検出部位でトラップされる。
分離されたアナライトまたは増幅された目的遺伝子のDNAを検出する方法は、特に限定されるものではないが、好ましい態様として基本的には以下の工程で行われる。
【0061】
すなわち、
(1a) 検体もしくは検体から抽出したDNA、あるいは検体もしくは検体から抽出したRNAから逆転写反応により合成したcDNAと、5’位置でビオチン修飾したプライマーとを、これらの収容部から下流の微細流路へ送液する。
【0062】
反応部位の微細流路内で、遺伝子を増幅する工程、微細流路内で増幅された遺伝子を含む増幅反応液と変性液とを混合して、増幅された遺伝子を変性処理により一本鎖にし、これと末端をFITC(fluorescein isothiocyanate)で蛍光標識したプローブDNAとをハイブリダイズさせる。
【0063】
次いで、ビオチン親和性タンパク質を吸着させた微細流路内の検出部位に送液し、前記増幅遺伝子を微細流路内の検出部位にトラップする。(増幅遺伝子を検出部位でトラップした後に蛍光標識したプローブDNAとをハイブリダイズさせてもよい。)
(1b) 検体に存在する抗原、代謝物質、ホルモンなどのアナライトに対する特異的な抗体、好ましくはモノクローナル抗体を含有する試薬を検体と混合する。
【0064】
その場合、抗体は、ビオチンおよびFITCで標識されている。
したがって抗原抗体反応により得られる生成物は、ビオチンおよびFITCを有する。
これをビオチン親和性タンパク質(好ましくはストレプトアビジン)を吸着させた微細流路内の検出部位に送液し、ビオチン親和性タンパク質とビオチンとの結合を介して該検出部位に固定化する。
(2) 上記微細流路内にFITCに特異的に結合する抗FITC抗体で表面を修飾した金コロイド液を流し、これにより固定化したアナライト・抗体反応物のFITCに、あるいは遺伝子にハイブリダイズしたFITC修飾プローブに、その金コロイドを吸着させる。
(3) 上記微細流路の金コロイドの濃度を光学的に測定する。
<システム本体>
図1に示したように、ベース本体12には、その正面部分に、検査チップ50を内部に取り入れるための検査チップ出入口14と、ベース本体12内で行われる所定の検査結果を出力する表示部18とが設けられている。
【0065】
検査チップ50は、チップ搬送トレイ22上に載置された後、検査チップ出入口14からベース本体12内に取り入れられ、装着される。
ベース本体12の内部には、図2に示したように、チップ搬送トレイ22上に載置された検査チップ50における送液、反応、検出などを制御するための各種の装置が設けられている。
【0066】
本実施例では、検査チップ50のポンプ接続部64と接続して、検体や処理液を所定箇所に移動させるマイクロポンプユニット26およびマイクロポンプユニット26の送液制御を行うポンプ制御装置28を備えている。
【0067】
また、検査チップ50上に接触して試薬などの温度、特に反応部流路における温度を制御するペルチェ素子34およびヒーター36からなる温度制御装置38を備えている。
また、検査チップ50の検出部流路に存在する検出対象の物質を検知するために光を照射するLED40および透過した光を受光するホトダイオード42から成る検出装置44を備えている。
【0068】
マイクロ総合分析システム10のシステム本体には、マイクロポンプユニット26、マイクロポンプを制御するポンプ制御装置28、温度を制御する温度制御装置38および検出装置44などがベース本体12に一体化されている。
【0069】
予め試薬58が封入された検査チップ50の検体収容部(図示せず)に検体を注入して、その検査チップ50をシステム本体に装着すると、送液用のマイクロポンプを作動させるための機構的連結がなされる。
【0070】
したがってシステム本体に検査チップ50を装着すると、検査チップ50の試薬収容部60は作動状態となる。
分析が開始されると、検体および試薬類の送液、混合に基づく遺伝子増幅、アナライトとプローブとの結合などの反応、反応物の検出および光学的測定が、一連の連続的工程として自動的に実施され、測定データが、必要な条件、記録事項とともにファイル内に格納され、生体物質の測定が自動的に行われる。
【0071】
送液、温度、反応の各制御に関わる制御系、光学的検出、データの収集および処理を受け持つユニットは、マイクロポンプおよび光学装置とともにシステム本体を構成する。
このシステム本体は、これに検査チップ50を装着することにより各検体サンプルに対して共通で使用される。
【0072】
遺伝子増幅などの反応およびその検出は、送液順序、容量、タイミングなどについて予め設定された条件として、マイクロポンプおよび温度の制御、光学的検出のデータ処理とともにプログラムとしてシステム本体に搭載されたソフトウェアに組み込まれている。
【0073】
検査チップ50の微細流路46内における反応を検出する検出装置44は、検査項目ごとの分析流路上の検出部位に対して、例えばLEDなどから測定光を照射し、ホトダイオード、光電子増倍管などの光学的な検出手段で透過光もしくは反射光を検出する。
【0074】
本発明のマイクロ総合分析システム10は、いずれのコンポーネントも小型化され、持ち運びに便利な形態としているために、使用する場所および時間に制約されず、作業性、操作性が良好である。
【0075】
また、場所や時間を問わずに迅速に測定することができるために、緊急医療での利用や、在宅医療での個人的な利用も可能である。
また、送液に使用するマイクロポンプユニット26がシステム本体側に組み込まれているために、検査チップ50はディスポーサブルタイプとして好適に使用できる。
【0076】
マイクロポンプユニット26には、例えば、検体収容部(図示せず)、複数の試薬供給孔56、ポジティブコントロール収容部、ネガティブコントロール収容部など、上流側から駆動液31によって押し出して送液すべき部位の数に対応して複数のマイクロポンプが設けられている。
【0077】
検査チップ50をシステム本体に装着することによって、検査チップ50のポンプ接続
部64を介して検査チップ50へマイクロポンプが接続され、マイクロポンプとして機能する構成となっている。
【0078】
すなわち、マイクロポンプユニット26には、複数のマイクロポンプと、検査チップ50に連通させるための流路開口を有するチップ接続部66と、が設けられている。
一方、検査チップ50には、図4に示したようにマイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部64が設けられており、検査チップ50のポンプ接続部64とマイクロポンプユニット26のチップ接続部66とを液密に密着させることによって、マイクロポンプを検査チップ50の試薬収容部60へ連通させる。
【0079】
典型的には、検査チップ50におけるポンプ接続部64は、マイクロポンプに連通させるための流路開口とその周囲の接触面とからなり、マイクロポンプユニット26におけるチップ接続部66は、検査チップ50に連通させるための流路開口と、その周囲の接触面とからなる。
【0080】
検査チップ50側の流路開口と、マイクロポンプユニット26側の流路開口とが合致した状態でマイクロポンプユニット26側の接触面と検査チップ50側の接触面とを密着させることによってこれらが接続される。
【0081】
密着は、例えば検査チップ50とマイクロポンプユニット26とを加圧することによって行う。
マイクロポンプとしては、ピエゾポンプを用いることが好ましい。
【0082】
このピエゾポンプは、概略すると、流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合がこの第1流路よりも小さい第2流路と、これらの第1流路および第2流路に接続された加圧室と、該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、を備えており、該アクチュエータを駆動することによって正方向および逆方向に送液可能なポンプである。
【0083】
その詳細は、上記特許文献7および8に記載されている。
上記のピエゾポンプによれば、ポンプの駆動電圧および周波数を変えることによって、液体の送液方向、送液速度を制御することができる。
【0084】
一例として、シリコンウエハを公知のフォトリソグラフィー技術により所定の形状に加工したシリコン基板を用いて、エッチングによって上記のポンプ形状を形成するとともに、その上から別の基板を重ねることによりピエゾポンプを作製できる。
【0085】
フォトリソグラフィー技術によって、1枚のシリコン基板に多数のピエゾポンプが設けられたポンプユニットを作製できる。
例えば、ポンプユニットの基板にポートを形成して、このポートを介して検査チップ50のポンプ接続部64と連通させる。
【0086】
ポートが穿孔された基板と、検査チップ50のポンプ接続部64近傍とを上下に重ね合わせることによって、ポンプユニットに検査チップ50を接続することができる。
また、検査チップ50と接続したポートとポンプを介して反対側のポートには、駆動液タンク30が接続される。
マイクロポンプが複数個ある場合には、これらのポンプごとに設けられた複数のポートは共通の駆動液タンク30に接続されていてもよい。
<送風装置>
図2において、チップ搬送トレイ22上に載置された状態で、ベース本体12内に挿入
された検査チップ50は、ベース本体12内の所定位置で、マイクロポンプユニット26とポンプ接続部64において接続される。
【0087】
さらに、駆動液タンク30に収容されたオイルやバッファー液などの駆動液31が、ポンプ制御装置28によって駆動されるマイクロポンプによって検査チップ50内に送り出され、検査チップ50内の試薬収容部60に収容された試薬58などを混合部70に押し出す。
【0088】
この際、マイクロポンプユニット26のチップ接続部66の表面、あるいは検査チップ50のポンプ接続部64の表面が、駆動液31、水分、その他の液体などにより濡れていると、マイクロポンプユニット26と検査チップ50とを密着させてもマイクロポンプから送られる駆動液31が接続部において漏れ出す危険性がある。
【0089】
そのため、本実施例では、図2に示したように、接続されたマイクロポンプユニット26のチップ接続部66と検査チップ50のポンプ接続部64とを離脱させる前の段階で、予め検査チップ50に設けられた流路20内に送風装置32より気体を送り込み、予め駆動液31を除去することにより液体がこれらの接続部より漏れ出すことを防止している。
【0090】
このような送風装置32は、図2に示したようにシステム本体内において、検査チップ50に予め設けられた送風装置接続部48と接続されるよう構成されている。
また、この検査チップ50のポンプ接続部64と接続されているマイクロポンプユニット26には、図3に示したように液体回収装置接続部49が設けられていてもよく、この液体回収装置接続部49には、液体回収装置16が接続されている。
【0091】
このような液体回収装置16は、図4に示したように、マイクロポンプユニット26と検査チップ50とが接続された状態において、送風装置32より気体を流路20内に取り込み、さらに駆動液31を上方のマイクロポンプユニット26の液体回収装置接続部49へと押し上げ、この駆動液31を液体回収装置接続部49に接続された液体回収装置16で回収するようになっている。
【0092】
なお、送風装置32によって気体を検査チップ50内に取り込むと、図6に示したように、流路59と流路71との流路径が異なるため、気体はポンプ接続部64側の流路59へと確実に取り込まれるよう構成されている。
【0093】
また、マイクロポンプユニット26側でも同様に流路径を駆動液タンク30側の流路と液体回収装置側の流路とを異ならせることにより、送風装置32より送り出された気体により押し上げられた駆動液31を、確実に液体回収装置16で回収できるよう構成されている。
【0094】
このような送風装置32による駆動液31の回収の流れは、図7(a)に示したように、マイクロポンプユニット26のチップ接続部66と、検査チップ50のポンプ接続部64とを接続させた状態で、検査チップ50の送風装置接続部48に送風装置32を接続する。
【0095】
このような状態で、送風装置32より気体を流路20内に送り込むと図7(b)に示したように流路59内に満たされていた駆動液31が気体68により上方に押し上げられる。
【0096】
さらに気体を流路内に送り込むと、図7(c)に示したように流路59内の駆動液31は、チップ接続部66とポンプ接続部64の近傍からは移動してなくなることとなる。
このようにチップ接続部66とポンプ接続部64の近傍に駆動液31が無い状態で、マイクロポンプユニット26と検査チップ50とを離脱させれば、液体が接続部において漏れ出すことを確実に防止することができる。
【0097】
また、マイクロポンプユニット26に液体回収装置接続部49を設けた場合には、図8(a)に示したように、マイクロポンプユニット26のチップ接続部66と、検査チップ50のポンプ接続部64とを接続させた状態で、検査チップ50の送風装置接続部48に送風装置32を接続する。
【0098】
また、マイクロポンプユニット26の液体回収装置接続部49に液体回収装置16を接続する。
このような状態で、送風装置32より気体を流路20内に送り込むと図8(b)に示したように試薬収容部60内に満たされていた駆動液31が気体68により上方に押し上げられる。
【0099】
さらに気体を流路内に送り込むと、図8(c)に示したようにチップ接続部66とポンプ接続部64の近傍において、試薬収容部60内の駆動液31が液体回収装置接続部49を介して、液体回収装置16内に回収されることとなる。
【0100】
なお、送風装置32により送り出される気体の種類、量、温度は、駆動液31、検査チップ50に収容される検体や処理液、システム本体の構成などにあわせて適宜設定すると良い。
【0101】
送風装置32の設置数は、検査チップに設けられた送風装置接続部24の数に応じて適宜に設定できる。
このような設置例としては、送風装置32を1つ設置し、この送風装置32と全ての送風装置接続部24とが接続され、1つの送風装置より気体を送り込むよう構成したり、複数の送風装置32を設置し、それぞれの送風装置32が分担して検査チップ50の送風装置接続部24と接続され、気体を送り込むよう構成するなどの設置例が挙げられる。
【0102】
また、本実施例では、検査チップ50側に送風装置32を接続し、検査チップ50側から気体を流入させることによりチップ接続部66とポンプ接続部64の近傍流路内の駆動液31がなくなるよう構成する場合と、検査チップ50側に送風装置32を接続し、流路内の駆動液31をマイクロポンプユニット26側の液体回収装置16で回収するよう構成する場合とを説明したが、何らこれに限定されるものではない。
【0103】
例えば、マイクロポンプユニット26側に送風装置32を接続し、マイクロポンプユニット26側から気体を流入させることによりチップ接続部66とポンプ接続部64の近傍流路内の駆動液31がなくなるよう構成してもよく、さらにマイクロポンプユニット26側に送風装置32を接続し、検査チップ50側に液体回収装置16を設けて液体を回収する構成であっても良い。
【0104】
さらに、送風装置を、マイクロポンプユニット26側と検査チップ50側と両側で使用できるよう切り替え自在に構成しても良く、本発明の内容を逸脱しない範囲において、変更が可能なものである。
<疎水化層>
チップ接続部66またはポンプ接続部64の表面には、疎水化層52を設けることができる。
【0105】
従来、図9(a−1)に示したようにマイクロポンプユニット26と検査チップ50と
を密着させ試薬収容部60内に駆動液31を流入させた後、図9(a−2)に示したように、マイクロポンプユニット26と検査チップ50離脱させることとなっていた。
【0106】
この際、ポンプ接続部64とチップ接続部66の表面付近の駆動液31が、離脱当初の間、各々の表面間でつながってしまい、さらに、ポンプ接続部64とチップ接続部66との間の距離を広げることにより、液切りが行われていた。
【0107】
この液切りの際、液体がシステム本体内や検査チップ50上に飛散する場合がある。
本発明の実施例では、図9(b−1)に示したように、ポンプ接続部64とチップ接続部66の表面に疎水化層52を設け、この状態で、マイクロポンプユニット26と検査チップ50とを密着させている。
【0108】
さらに、マイクロポンプユニット26と検査チップ50とを離脱させると、ポンプ接続部64とチップ接続部66の表面に設けられた疎水化層52により駆動液31の表面張力が発生し、液体の液切りがスムーズに行える。
【0109】
このような疎水化層52は、例えばポリエチレン、シリコーン、テフロン(登録商標)のような軟質の樹脂からなるシール部材であればよく、このシール部材のシール面を検査チップ50とマイクロポンプユニット26との接触面とするとよい。
【0110】
上記実施例において、本発明のマイクロ総合分析システムの一例を示したが、本発明は何らこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、本発明のマイクロ総合分析システムの実施例を示した概略斜視図である。
【図2】図2は、実施例のマイクロ総合分析システムのベース本体に検査チップを装着した状態を示したベース本体内部の概略図である。
【図3】図3は、他の実施例のマイクロ総合分析システムのベース本体に検査チップを装着した状態を示したベース本体内部の他の概略図である。
【図4】図4は、図3のマイクロ総合分析システムの要部を拡大して示した要部拡大図である。
【図5】図5は、本発明のマイクロ総合分析システムの検査チップを説明する概略図である。
【図6】図6は図5の検査チップの要部を拡大して示した要部拡大図である。
【図7】図7は、図2に示した本発明のマイクロ総合システムの送風装置を使用した際の液体の動きを説明する概略図である。
【図8】図8は、図3に示した本発明のマイクロ総合システムの送風装置を使用した際の液体の動きを説明する概略図である。
【図9】図9は、本発明のマイクロ総合システムと、従来のマイクロ総合システムの検査チップとマイクロポンプユニットとを離脱させた際の状況を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0112】
10 マイクロ総合分析システム
12 ベース本体
14 検査チップ出入口
16 液体回収装置
18 表示部
20 流路
22 検査チップ搬送トレイ
24 送風装置接続部
26 マイクロポンプユニット
28 ポンプ制御装置
30 駆動液タンク
31 駆動液
32 送風装置
34 ペルチェ素子
36 ヒーター
38 温度制御装置
40 LED
42 ホトダイオード
44 検出装置
46 微細流路
48 送風装置接続部
49 液体回収装置接続部
50 検査チップ
52 疎水化層
56 試薬供給孔
58 試薬
59 流路
60 試薬収容部
62 処理液
64 ポンプ接続部
66 チップ接続部
68 気体
70 合流部
71 流路
B 撥水バルブ部
C 撥水バルブ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体または該検体を流路内で処理した処理液に含まれる測定対象の生体物質と、
試薬収容部に収容された試薬とを、
反応部位を構成する流路へ送液して合流させ、
これらを反応させた後、得られた反応生成物質もしくはその処理物質を、
検出部位を構成する流路へ送液して測定する一連の微細流路が設けられるとともに、
マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部が設けられた検査チップと、
システム本体と、を備え、
前記システム本体は、
ベース本体と、
複数のマイクロポンプと、
検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部とが設けられ、
前記ベース本体内に配置されたマイクロポンプユニットとを備え、
検査チップの前記ポンプ接続部と、
前記マイクロポンプユニットの前記チップ接続部と、
を液密に密着させた状態で検査チップをベース本体内に装着した後、
該検査チップにおける生体物質と試薬との反応およびその検出を自動的に行うマイクロ総合分析システムであって、
前記検査チップの前記ポンプ接続部とマイクロポンプユニットの前記チップ接続部とを離脱させる際に、
前記検査チップの前記ポンプ接続部と前記微細流路との間と、
前記チップ接続部と前記マイクロポンプユニットとの間に、
前記検査チップのポンプ接続部と前記マイクロポンプユニットのチップ接続部との接続部に気体を送り込む送風装置を備えるとともに、
前記検査チップまたは前記マイクロポンプユニットが、
前記送風装置から送り出される気体を導入する流路を備えることを特徴とするマイクロ総合分析システム。
【請求項2】
検体または該検体を流路内で処理した処理液に含まれる測定対象の生体物質と、
試薬収容部に収容された試薬とを、
反応部位を構成する流路へ送液して合流させ、
これらを反応させた後、得られた反応生成物質もしくはその処理物質を、
検出部位を構成する流路へ送液して測定する一連の微細流路が設けられるとともに、
マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部が設けられた検査チップと、
システム本体と、を備え、
前記システム本体は、
ベース本体と、
複数のマイクロポンプと、
検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部とが設けられ、
前記ベース本体内に配置されたマイクロポンプユニットとを備え、
検査チップの前記ポンプ接続部と、
前記マイクロポンプユニットの前記チップ接続部と、
を液密に密着させた状態で検査チップをベース本体内に装着した後、
該検査チップにおける生体物質と試薬との反応およびその検出を自動的に行うマイクロ総合分析システムであって、
前記検査チップの前記ポンプ接続部とマイクロポンプユニットの前記チップ接続部とを離脱させる際に、
前記検査チップの前記ポンプ接続部と前記微細流路との間と、
前記チップ接続部と前記マイクロポンプユニットとの間に、
前記検査チップのポンプ接続部と前記マイクロポンプユニットのチップ接続部との接続部に気体を送り込む送風装置を備えるとともに、
前記検査チップおよび前記マイクロポンプユニットが、
前記送風装置から送り出される気体を導入する流路を備えることを特徴とするマイクロ総合分析システム。
【請求項3】
前記マイクロ総合分析システムが、
前記送風装置により送り込まれた気体によってマイクロポンプユニットまたは検査チップの外側へ押し出された液体を回収する液体回収装置を備えることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項4】
前記送風装置が、
前記検査チップのポンプ接続部または前記ポンプユニットのチップ接続部の近傍に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項5】
前記送風装置が、
前記検査チップのポンプ接続部および前記ポンプユニットのチップ接続部の近傍に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項6】
検体または該検体を流路内で処理した処理液に含まれる測定対象の生体物質と、
試薬収容部に収容された試薬とを、
反応部位を構成する流路へ送液して合流させ、
これらを反応させた後、得られた反応生成物質もしくはその処理物質を、
検出部位を構成する流路へ送液して測定する一連の微細流路が設けられるとともに、
マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部が設けられた検査チップと、
システム本体と、を備え、
前記システム本体は、
ベース本体と、
複数のマイクロポンプと、
検査チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部とが設けられ、
前記ベース本体内に配置されたマイクロポンプユニットとを備え、
検査チップの前記ポンプ接続部と、
前記マイクロポンプユニットの前記チップ接続部と、
を液密に密着させた状態で検査チップをベース本体内に装着した後、
該検査チップにおける生体物質と試薬との反応およびその検出を自動的に行うマイクロ総合分析システムであって、
前記検査チップの前記ポンプ接続部と、
前記マイクロポンプユニットの前記チップ接続部との表面に疎水化層を設けることを特徴とするマイクロ総合分析システム。
【請求項7】
前記疎水化層が、
ポリエチレン、シリコーン、テフロン(登録商標)のいずれかより成ることを特徴とする請求項6に記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項8】
前記システム本体が、
前記検査チップの微細流路内において生体物質と試薬とを反応させた後、
検出部位を構成する流路においてその検出を光学的に行う検出装置と、
前記マイクロポンプによる送液を制御するポンプ制御装置と、
前記検査チップの所定部位における温度を制御する温度制御装置と、
を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のマイクロ総合分析システム。
【請求項9】
前記マイクロポンプが、
流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、
差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小さい第2流路と、
第1流路および第2流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、
を備えたマイクロポンプであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマイクロ総合分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−275735(P2006−275735A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94612(P2005−94612)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】