説明

マイク装置

【課題】全周方向の音声の集音と特定方向の音声の集音とを行うことを可能にしつつ、簡単な構成にすることが可能なマイク装置を提供する。
【解決手段】スピーカフォン1は、収納部材11と切替部材13とを備えている。収納部材11は、箱状部110、単一指向性マイク12、第一開口部118、及び第二開口部119等を備えている。単一指向性マイク12は、箱状部110の内側に設けられている。単一指向性マイク12は、第一方向に最も高い感度を有する。第一開口部118は、箱状部110において、単一指向性マイク12に対して第一方向側に設けられている。第二開口部119は、箱状部110において、単一指向性マイク12に対して第二方向側に設けられている。切替部材13は、第二開口部119を開放する開放状態と、第二開口部119を閉鎖する閉鎖状態とに切り替え可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクを備えたマイク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクを備えたマイク装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の放収音装置は、円柱状の筐体の側面に複数のスピーカを備えている。また、放収音装置は、指向性を有するマイクを、その収音方向が筐体の中心方向となるように備えている。複数のマイクがそれぞれ対向して設置されているため、複数のマイクによって放収音装置の全周方向の音声を収音することができる。また、放収音装置は、ディレイ回路と加算器とを組み合わせて、隣接する2つのマイクの収音信号をそれぞれ同じ位相で加算することによって、特定方向の信号を強め、指向性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−173922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の放収音装置では、特定方向のマイクの指向性を向上させたり、全周方向の音声を収音したり切り替えることができるものの、複数のマイクが必要であるため、部品点数が増え、構成が複雑になるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、全周方向の音声の集音と特定方向の音声の集音とを行うことを可能にしつつ、簡単な構成にすることが可能なマイク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のマイク装置は、第一方向に最も高い感度を有する単一指向性マイクと、前記単一指向性マイクを収納する収納部材であって、前記単一指向性マイクに対して第一方向側に設けられた第一開口部と、前記単一指向性マイクに対して前記第一方向の反対方向である第二方向側に設けられた第二開口部とを備えた収納部材と、前記第二開口部を開放する開放状態と、前記第二開口部を閉鎖する閉鎖状態とに切り替え可能な切替部材とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のマイク装置は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記切替部材は、スピーカを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載のマイク装置は、請求項2に記載の発明の構成に加えて、前記切替部材は、前記開放状態と前記閉鎖状態とを切り替える場合に、前記収納部材に対してスライド移動又は回動することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載のマイク装置は、請求項2又は3に記載の発明の構成に加えて、前記切替部材が前記閉鎖状態にある場合に、前記スピーカの向きは、前記第二方向を向いていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載のマイク装置は、請求項4に記載の発明の構成に加えて、前記切替部材は、前記閉鎖状態にある場合における前記第二方向側の端部に、前記第二方向側に突出する脚部を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載のマイク装置は、請求項2から5のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記切替部材が前記開放状態にある場合に、前記スピーカの向きは、前記第二方向に直交する方向より前記第二方向側を向いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明のマイク装置では、単一指向性マイクは第一方向に高い感度を有するので、単一指向性マイクの指向性の方向は第一方向側である。切替部材が開放状態にある場合、単一指向性マイクの第一方向側と第二方向側にそれぞれ、第一開口部と第二開口部とが存在する。この場合、マイク装置の外部からの音声は、単一指向性マイクの第一方向側及び第二方向側から入力されるので、単一指向性マイクがその指向性の性能を発揮し、マイク装置は、マイク装置の第一方向側の音声を主に集音することができる。また、切替部材が閉鎖状態にある場合、単一指向性マイクの第一方向側に第一開口部が存在するが、第二方向側の第二開口部は閉鎖されている。よって、マイク装置の外部からの音声は、単一指向性マイクの第二方向側からは入力されない。この場合、単一指向性マイクは、その指向性の性能を発揮し難い。そして、マイク装置の全周方向からの音声が第一開口部から入力され、単一指向性マイクによって集音されるので、マイク装置は、マイク装置の全周方向からの音声を集音することができる。また、切替部材を開放状態と閉鎖状態とに切り替えるだけで、全周方向の音声の集音と第一方向の音声の集音とを行うことができるので、従来のように、複数のマイクを設ける必要はない。よって、部品点数を低減でき、マイク装置を簡単な構成にすることができる。
【0013】
請求項2に係る発明のマイク装置では、切替部材がスピーカを備えているので、音声を出力することができる。よって、マイク装置は、音声の集音と音声の出力とを行うことができる。
【0014】
請求項3に係る発明のマイク装置では、ユーザは、切替部材をスライド移動又は回動するだけで、容易に全周方向の音声の集音と第一方向の音声の集音とを切り替えることができる。よって、ユーザの利便性が向上する。
【0015】
請求項4に係る発明のマイク装置では、切替部材が閉鎖状態にある場合に、マイク装置は、スピーカから第二方向に向けて音声を出力する。このため、スピーカから出力された音声は、収納部材の第一方向側に設けられた第一開口部に入力され難い。よって、スピーカから出力した音声を単一指向性マイクで集音してしまい、エコー等が発生することを防止できる。
【0016】
請求項5に係る発明のマイク装置では、例えば、机にマイク装置を載置する場合に、脚部によってマイク装置を支持することができる。この場合、スピーカは第二方向に向いているので、スピーカは机と対向する。そして、複数の脚部がスピーカと机との間に位置しているため、切替部材の第二方向側の端部と机との間に隙間ができる。よって、スピーカから出力された音声は、机に反射されつつ、前記隙間からマイク装置の外部に出力される。音声が机に反射されることによって、スピーカから出力された音声は、マイク装置の周囲に広がる。よって、マイク装置の周囲にいるユーザは、スピーカから出力された音声を聞き易くなる。
【0017】
請求項6に係る発明のマイク装置では、単一指向性マイクは切替部材より第一方向側に存在する。スピーカが、第二方向に直交する方向より第二方向側を向いているので、スピーカが第二方向に直交する方向より第一方向側に向いている場合に比べて、スピーカから出力される音声が単一指向性マイクに集音され難い。よって、例えば、エコー等が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】スピーカフォン1を用いた音声会議の様子を示す図である。
【図2】切替部材13が閉鎖状態にある場合のスピーカフォン1の斜視図である。
【図3】机4に載置されたスピーカフォン1における図2のI−I線矢視方向断面図である。
【図4】机4に載置されたスピーカフォン1における図2のII−II線矢視方向断面図である。
【図5】切替部材13が開放状態にある場合のスピーカフォン1の斜視図である。
【図6】机4に載置されたスピーカフォン1における図5のIII−III線矢視方向断面図である。
【図7】切替部材13が開放状態にある場合における変形例に係るスピーカフォン1の斜視図である。
【図8】切替部材13が閉鎖状態にある場合における第二実施形態のスピーカフォン1の左側面図である。
【図9】切替部材13が開放状態にある場合における第二実施形態のスピーカフォン1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態であるスピーカフォン1について図面を参照して説明する。図1を参照し、スピーカフォン1について説明する。スピーカフォン1は、例えば、立地の離れた複数拠点間で、テレビ会議や音声会議などの遠隔会議を行う場合に使用されるものである。本実施形態では、音声による遠隔会議(以下、音声会議という。)を行う場合を例に説明する。図1に示すように、机4の中央には、スピーカフォン1が載置されている。スピーカフォン1は、図示外のUSBジャックを備えており、当該USBジャックにUSBケーブル6が接続され、USBケーブル6を介してパーソナルコンピュータ(以下、PC)2に接続されている。PC2は、ネットワーク3に接続されている。ネットワーク3は、図示略の他拠点のPC等に接続されている。ユーザは、音声によって他拠点のユーザと音声会議を行う。スピーカフォン1の単一指向性マイク12(図2参照)によって集音された自拠点のユーザの音声は、デジタル信号に変換された後、PC2とネットワーク3とを介して、他拠点に送信される。他拠点で集音されたユーザの音声のデジタル信号は、ネットワーク3とPC2とを介して、スピーカフォン1に伝達され、アナログ信号に変換されてスピーカ14(図3参照)から出力される。
【0020】
図2〜図6を参照して、スピーカフォン1について説明する。図2の右下側、左上側、左下側、右上側、上側、下側が、それぞれ、スピーカフォン1の前側、後側、左側、右側、上側、下側である。
【0021】
図2〜図4に示すように、スピーカフォン1は、収納部材11、単一指向性マイク12、切替部材13、及びスピーカ14(図3及び図4参照)を備えている。収納部材11は、単一指向性マイク12を収納する部材である。単一指向性マイク12の最も高い感度を有する方向を第一方向という。単一指向性マイク12は第一方向に高い感度を有するので、単一指向性マイク12の指向性の方向(集音方向)は第一方向側である。収納部材11は、単一指向性マイク12を収納する部材である。
【0022】
収納部材11は、箱状部110と突出部111,112とを備えている。箱状部110は、平面視四角形状の箱状部材である。箱状部110は、第一開口部118(後述)と第二開口部119(後述)とを備えている。突出部111,112は、箱状部110の左右方向の対向面の下端から下方に突出する。
【0023】
単一指向性マイク12は、箱状部110の内側の中央部に設けられている。箱状部110の内周における左右の面の間には、単一指向性マイク12を支持する棒状の支持棒113が設けられている。支持棒113の左右方向の中心には、円形筒状に形成されたマイク支持部114が設けられている。マイク支持部114は、上下に貫通する孔部115を有する。図3及び図4に示すように、孔部115の上部116の径は、孔部115の下部117の径より小さく形成されている。単一指向性マイク12は、マイク支持部114の下方から孔部115に挿入され、孔部115の下部117の内周面によって支持されている。単一指向性マイク12の最も高い感度を有する第一方向は、上側を向いている。
【0024】
第一開口部118は、単一指向性マイク12に対して第一方向側に設けられた開口部である。第二開口部119は、単一指向性マイク12に対して第一方向の反対方向である第二方向側に設けられた開口部である(図4参照)。本実施形態では、第一開口部118は、箱状部110の上面に設けられており、第二開口部119は、箱状部110の底面に設けられている。
【0025】
単一指向性マイク12について簡単に説明する。本実施形態では、一例として、単一指向性マイク12は、周知の単一指向性型のコンデンサマイクであるとする。単一指向性マイク12は、内部に振動板(図示略)を備えている。単一指向性マイク12は、振動板の第一方向側と第二方向側とに孔部(図示略)を有する。スピーカフォン1の第二方向側からの音声の大部分は、図6の矢印52のように、第二開口部119を介して単一指向性マイク12に到達する。第二開口部119を介して入力されたスピーカフォン1の第二方向側からの音声の一部は、振動板の第二方向側の孔部から振動板に到達し、残りの音声の一部は、単一指向性マイク12に対して回り込んで振動板の第一部方向側の孔部から振動板に到達する。単一指向性マイク12に対して回り込んで振動板の第一方向側の孔部から振動板に到達する音声の経路の距離は、振動板の第二方向側の孔部から振動板に到達する音声の経路の距離より長い。しかし、一般的に、単一指向性マイク12は、第二方向側の孔部から振動板に到達する音声を遅らせて、単一指向性マイク12に対して回り込んで振動板の第一方向側の孔部から振動板に到達する音声と同時に振動板に到達するように構成されている。同時に振動板に到達するため、第一方向側の孔部から振動板に到達した音声のエネルギーと、第二方向側の孔部から振動板に到達した音声とが相殺される。よって、単一指向性マイク12は、スピーカフォン1の第二方向側からの音声を集音し難い。
【0026】
一方、スピーカフォン1の第一方向側からの音声は、図6の矢印51に示すように、第一開口部118を介して単一指向性マイク12に到達し、振動板を振動させる。よって、単一指向性マイク12は、スピーカフォン1の第一方向側からの音声を集音し易い。なお、スピーカフォン1の第一方向側からの音声の一部は、単一指向性マイク12に対して回り込んで、振動板の第二方向側の孔部から振動板に到達する。しかし、スピーカフォン1の第一方向側からの音声が、振動板の第一方向側の孔部から振動板に到達する距離は、単一指向性マイク12を回り込んで第二方向側の孔部から振動板に到達する距離より短い。さらに、前述したように、単一指向性マイク12は、第二方向側の孔部から振動板に到達する音声を遅らせるように構成されている。よって、スピーカフォン1の第一方向側からの音声については、振動板の第一方向側の孔部から振動板に到達する音声が、第二方向側の孔部か孔部から振動板に到達する音声より早く振動板に到達する。同時に振動板に到達しないので、スピーカフォン1の第一方向側からの音声は打ち消されない。よって、単一指向性マイク12は、スピーカフォン1の第一方向側からの音声を集音し易い。このように、単一指向性マイク12は、スピーカフォン1の第二方向側からの音声を集音し難く、第一方向側からの音声を集音し易いので、第一方向に指向性を有したマイクとなっている。
【0027】
単一指向性マイク12が指向性の性能を発揮するためには、スピーカフォン1の第二方向側からの音声が、第二開口部119を介して単一指向性マイク12に到達することが必要である。つまり、単一指向性マイク12は、スピーカフォン1の第二方向側からの音声が第二開口部119を介して入力されれば、その指向性の性能を発揮する。一方、単一指向性マイク12は、第二開口部119が閉鎖され、第二開口部119を介しての音声の入力が無ければ、その指向性の性能を発揮し難い。この場合、単一指向性マイク12は、全周方向の音声を集音可能なマイクとして機能する。
【0028】
図2〜図4に示すように、収納部材11の突出部111,112は、箱状部110の左右の面の前後方向の幅と同一の幅で下方に延びその下端が左側面視円弧状に形成されている。突出部111,112は、収納部材11が切替部材13と連結される部位である。
【0029】
収納部材11の第二方向側には、切替部材13が設けられている。切替部材13は、第二開口部119を開放する開放状態(図5及び図6参照)と、第二開口部119を閉鎖する閉鎖状態(図2〜図4参照)とに切替可能な部材である。切替部材13は、上下方向に延びる部材である。切替部材13の内部は空洞になっている(図3及び図4参照)。切替部材13の上下方向における中央部から上側は、突出部111,112に挟まれている。切替部材13の下端部131は、平面視で、収納部材11の外形と同一の外形を有する。切替部材13の中央部から上側の突出部111,112に挟まれた部位の左右方向の長さは、突出部111と突出部112との間の距離に対応する長さである。
【0030】
図3に示すように、突出部111,112の内側には、空洞120,121が設けられている。突出部111,112の中央部における空洞120,121を形成する外側の壁部には、側面視円形の孔部122が設けられている。孔部122には、ピン123が挿入されている。突出部111,112の中央部における空洞120,121を形成する内側の壁部には、側面視円形の孔部124が設けられている。孔部124の径は、孔部122の径より小さい。切替部材13の左右方向の壁部の中央部には、外側に円筒状に突出する筒状部132が設けられている。筒状部132は、突出部111,112の孔部124に挿入されている。切替部材13が開放状態と閉鎖状態とに切り替わる場合、筒状部132が孔部124に対して摺動しながら、切替部材13が、収納部材11に対して回動する。
【0031】
切替部材13の上側(第一方向側)の端部は、左側面視で円弧状に構成された壁部133である。切替部材13が、閉鎖状態にある場合、壁部133は第二開口部119を閉鎖する(図2〜図4参照)。切替部材13が開放状態にある場合、壁部133は第二開口部119を開放する(図5及び図6参照)。
【0032】
切替部材13の下端部には、第二方向に向かって円形に開口する第三開口部134が設けられている。切替部材13の内部において、第三開口部134の上側には、スピーカ14が設けられている。スピーカ14は、第二方向側を向いている。スピーカ14から出力された音声は、第三開口部134を介して、スピーカフォン1の外部に出力される(図4参照)。
【0033】
切替部材13の下端の4つの角には、切替部材13の角の形状に沿った脚部135が第二方向に向けて突出している。切替部材13が閉鎖状態にある場合、脚部135は、スピーカフォン1を支持することができる。
【0034】
図3及び図4に示すように、切替部材13は、その内部の右部に、電気基板16を備えている。電気基板16には、単一指向性マイク12、スピーカ14等を制御するための制御回路等が実装されている。制御回路は、CPU、ROM、RAM、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を含む。また、USBケーブル6(図1参照)は、図示略のUSBジャックを介して電気基板16に実装されたCPUに電気的に接続されている。また、電気基板16の上側の端部には、凹型コネクタ161が実装されている。電気基板16の下側の端部には、凹型コネクタ162が実装されている。凹型コネクタ161には、凸型コネクタ164が接続されている。凸型コネクタ164には、2本のリード線163の一端が接続されている。2本のリード線163は、筒状部132の内側、空洞121、及び空洞121の上部に設けられた孔部125を介して、単一指向性マイク12に向けて延びる。2本のリード線163の他端は、単一指向性マイク12に接続されている。凹型コネクタ162には、凸型コネクタ165が接続されている。2本のリード線166の一端が凸型コネクタ164に接続され、他端がスピーカ14に接続されている。CPUは、リード線163を介して単一指向性マイク12を制御し、リード線166を介してスピーカ14を制御する。A/Dコンバータは、単一指向性マイク12から入力された信号を、デジタル信号に変換する。該デジタル信号は、PC2及びネットワーク3を介して他拠点に送信される。D/Aコンバータは、他拠点から送信された音声のデジタル信号をアナログ信号に変換する。該アナログ信号はスピーカ14に入力され、音声として出力される。
【0035】
切替部材13を閉鎖状態(図2〜図4参照)と開放状態(図5及び図6参照)とに切り替える態様と、スピーカフォン1の使用態様の一例とについて説明する。切替部材13を閉鎖状態から開放状態に切り替える場合、ユーザは、切替部材13を収納部材11に対して左側面視反時計回りに回動させる。この場合、図6に示すように、切替部材13の壁部133が第二開口部119から離れ、第二開口部119を開放する。そして、壁部133は、スピーカフォン1の後側に露出する。ユーザは、後側を重力方向(図6の紙面下側)にして、スピーカフォン1を机4に置く。この場合、第一方向側の後端部と壁部133とが机4に接触する。また、ユーザは、第一開口部118が自身に向かうように、スピーカフォン1を置く。なお、切替部材13が開放状態にある場合、スピーカ14は、第二方向に直交する方向(以下、直交方向という。)より第二方向側を向いている。本実施形態では、スピーカ14は、下斜め前方を向いている(図6参照)。
【0036】
切替部材13が開放状態にある場合、図6に示すように、単一指向性マイク12の第一方向側と第二方向側にそれぞれ、第一開口部118と第二開口部119とが存在する。この場合、スピーカフォン1の外部からの音声は、単一指向性マイク12の第一方向側及び第二方向側から入力されるので、単一指向性マイク12がその指向性の性能を発揮し、スピーカフォン1は、第一方向側の音声を主に集音することができる。例えば、図6に示すように、第一開口部118をユーザに向けて、スピーカフォン1を机4に載置したとする。なお、図6では、ユーザの位置を模式的に表している。この場合、ユーザの声は、主に第一開口部118を介してスピーカフォン1に入力される(図6の矢印51参照)。すなわち、スピーカフォン1は、単一指向性マイク12の指向性の方向である第一方向側に位置するユーザの声を効率的に集音することができる。
【0037】
また、スピーカフォン1の第二方向側の音声(例えば、雑音等)の大部分は、第二開口部119から入力され、単一指向性マイク12に到達する(図6の矢印52参照)。単一指向性マイク12は、第一方向への指向性を発揮しているので、スピーカフォン1は、第二方向側の音声を集音し難い。このように、スピーカフォン1は、指向性を発揮して、第一方向側の音声の集音を行うことができる。
【0038】
切替部材13を開放状態から閉鎖状態に切り替える場合、ユーザは、切替部材13を収納部材11に対して左側面視時計回りに回動させる。この場合、図3〜図5に示すように、切替部材13の壁部133が第二開口部119を閉鎖する。ユーザは、下側(第二方向側)を重力方向(図4及び図5の紙面下側)にして、スピーカフォン1を机4に置く。
【0039】
切替部材13が閉鎖状態にある場合、単一指向性マイク12の第一方向側に第一開口部118が存在するが、第二方向側の第二開口部119は、壁部133によって閉鎖されている。よって、スピーカフォン1の外部からの音声は、単一指向性マイク12の第二方向側からは入力されない。この場合、単一指向性マイク12は、その指向性の性能を発揮し難い。そして、スピーカフォン1の全周方向からの音声が第一開口部118から入力され(図4の矢印55参照)、単一指向性マイク12によって集音されるので、スピーカフォン1は、スピーカフォン1の全周方向からの音声を集音することができる。例えば、図1に示すように、音声会議において、複数人のユーザで1つのスピーカフォン1を使用する場合、全周方向からの音声を集音することができるので、複数人のユーザの声を効率的に集音することができる。
【0040】
このように、切替部材13を開放状態と閉鎖状態とに切り替えるだけで、全周方向の音声の集音と、特定方向(第一方向)の音声の集音とを行うことができるので、従来のように、複数のマイクを設ける必要はない。よって、部品点数を低減でき、スピーカフォン1を簡単な構成にすることができる。また、複数のマイクを設ける必要がないので、従来に比べてスピーカフォン1を小型化できる。
【0041】
また、図6に示すように、スピーカフォン1は、切替部材13が開放状態にある場合に、第一方向側の前端部と壁部133とが机4に接触するように載置することができる。このため、第一開口部118を特定の方向(例えば、ユーザのいる方向)に向けやすい。よって、スピーカフォン1は、第一方向側に位置するユーザ等の声をより集音しやすい。
【0042】
また、図6に示すように、切替部材13が開放状態にある場合に、スピーカ14の向きは、第二方向に直交する直交方向より第二方向側を向いている。スピーカ14は、第三開口部134を介して音声を出力するが(図6の矢印53参照)、スピーカ14が直交方向より第二方向側を向いているので、スピーカ14が直交方向より第一方向側に向いている場合に比べて、スピーカ14から出力される音声が単一指向性マイク12に集音され難い。よって、エコー等が発生することを防止することができる。
【0043】
また、図6に示すように、切替部材13が開放状態にある場合に、第二開口部119より第二方向側にスピーカ14が位置している。このため、スピーカ14から出力された音声(図6の矢印53参照)も、図6に示す矢印52と同様に、第二開口部119から単一指向性マイク12に到達する。この場合、第一方向に指向性の性能を発揮している単一指向性マイク12は、スピーカ14から出力された音声を集音し難い。よって、エコー等が発生することを防止することができる。
【0044】
また、図6に示すように、切替部材13が開放状態にある場合、スピーカ14の向きは第二方向よりユーザ側に傾いている。このため、スピーカ14が第二方向を向いている場合に比べて、スピーカ14から出力された音声がユーザに到達し易い。よって、ユーザは、容易にスピーカ14から出力された音声を聞き取ることができる。
【0045】
また、図6に示すように、切替部材13が開放状態にある場合、第二開口部119の机4側とは反対側(紙面上側)の部位が、開放されている。このため、第二開口部119の机4側の部位が開放されている場合に比べて、周囲のユーザの音声は、第二開口部119を介して単一指向性マイク12に到達し易い。よって、単一指向性マイク12は、その指向性の性能を十分に発揮することができる。
【0046】
また、図3及び図4に示すように、スピーカフォン1は、切替部材13が閉鎖状態にある場合に、4つの脚部135がスピーカフォン1を支持するように、机4に載置することができる。このとき、スピーカ14は第二方向を向いているので、スピーカ14は机4と対向する。そして、複数の脚部135がスピーカ14と机4との間に位置しているため、切替部材13の第二方向側の端部と机4との間に隙間ができる。よって、スピーカ14から出力された音声は、机4に反射されつつ、隙間からスピーカフォン1の外部に出力される(図4の矢印56参照)。音声が机4に反射されることによって、スピーカ14から出力された音声は、スピーカフォン1の周囲に広がる。よって、スピーカフォン1の周囲にいるユーザは、スピーカ14から出力された音声を聞き易くなる。
【0047】
前述したように、切替部材13が閉鎖状態にある場合、スピーカフォン1は、全周方向の音声を単一指向性マイク12によって集音でき、スピーカ14から出力された音声をスピーカフォン1の周囲に広げることができる。よって、切替部材13が閉鎖状態にある場合のスピーカフォン1は、例えば、複数人のユーザで音声会議等を行う場合に適している。また、切替部材13が開放状態にある場合、スピーカフォン1は、第一方向側の音声を単一指向性マイク12によって集音でき、スピーカ14から音声を出力することもできるので、例えば、一人のユーザで音声会議等を行う場合に適している。このように、一台のスピーカフォン1を、一人で使用する場合と複数人で使用する場合とで切り替えて使用することができるので、ユーザの利便性が向上する。
【0048】
また、図2〜図4に示すように、切替部材13が閉鎖状態にある場合、スピーカ14の向きが第二方向側を向いているので、スピーカフォン1は、スピーカ14から第二方向に向けて音声を出力する。このため、スピーカ14から出力された音声は、収納部材11の第一方向側に設けられた第一開口部118に入力され難い。よって、例えば、スピーカ14から出力した音声を単一指向性マイク12で集音してしまい、音声会議においてエコー等が発生することを防止することができる。
【0049】
また、前述したように、スピーカフォン1は、切替部材13が開放状態にある場合に、第一方向側の前端部と壁部133とが机4に接触するように載置することができるので、第一開口部118をユーザのいる方向に向けやすい。さらに、このとき、単一指向性マイク12は、指向性を発揮する。よって、第一開口部118側のユーザの声を効率的に集音することができる。また、切替部材13が閉鎖状態になると、4つの脚部135がスピーカフォン1を支持するように、机4に載置することができる。この場合、第一開口部118が上方向を向くため、周囲の音を第一開口部118に導き易くなる。さらに、このとき、単一指向性マイク12は全周方向の音声を集音可能な状態となる。よって、周囲のユーザの声を効率的に集音することができる。このように、本実施形態のスピーカフォン1は、机4への載置態様の切り替えと、単一指向性マイク12が指向性を発揮する場合と、全周方向の音声を集音可能な場合との切り替えとを同時に行うことができる。よって、ユーザの利便性が向上する。
【0050】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、スピーカフォン1がPC2に接続されていたが、これに限定されない。例えば、PC2を介することなく、スピーカフォン1がネットワーク3を介して他拠点とデータ通信が可能なように構成してもよい。
【0051】
また、本発明のマイク装置は、遠隔会議に使用するスピーカフォン1に限られない。例えば、ICレコーダ等の録音装置であってもよい。また、スピーカ14が設けられていたが、これに限定されない。例えば、スピーカ14を設けなくてもよい。
【0052】
また、単一指向性マイク12がコンデンサマイクであったが、これに限定されない。種々の単一指向性マイクを単一指向性マイク12として使用してもよい。また、単一指向性マイク12の数は限定されない。例えば、複数の単一指向性マイク12を設けてもよい。この場合でも、従来に比べてマイクの数を少なくすることができる。よって、部品点数を低減でき、スピーカフォン1を簡単な構成にすることができる。また、第一開口部118を音声が通過できる部材で覆ってもよい。
【0053】
また、切替部材13の形状は限定されない。切替部材13は、スピーカ14を備えない板状の部材であってもよい。この場合、板状の切替部材13で第二開口部119を開放したり、閉鎖したりしてもよい。
【0054】
また、第二開口部119の位置は限定されない。第二開口部119は、収納部材11において単一指向性マイク12より第二方向側に設けられていればよい。例えば、収納部材11の後部の側面に設けられていてもよい。この場合、第二開口部119の位置に合わせて切替部材13の形状や、閉鎖状態と開放状態との切り替え方法を変更してもよい。
【0055】
また、スピーカ14の向きは限定されない。例えば、切替部材13が開放位置にある場合に、スピーカ14の向きが直交方向より第一方向側を向いていてもよいし、スピーカ14の向きが第二方向を向いていてもよい。なお、直交方向より第二方向側を向いているほうがエコーの発生を抑制できるので望ましい。
【0056】
また、ユーザが切替部材13を開放状態から閉鎖状態に切り替える場合に、スピーカ14の向きが、必ず直交方向より第二方向側を向くように、規制部材を設けてもよい。例えば、図7に示すように、突出部112の前側に、左方に延びる棒状の規制部材126を追加してもよい。この場合、ユーザが切替部材13を回動させた場合に、規制部材126が切替部材13に当接し、切替部材13の向きが、必ず直交方向より第二方向側を向く。また、規制部材の構成は限定されない。例えば、筒状部132と孔部124との摺動可能な範囲(角度)がスピーカ14の向きが直交方向より第二方向側を向く範囲になるように、筒状部132と孔部124との形状を設定してもよい。この場合、筒状部132と孔部124とが規制部材となる。
【0057】
また、切替部材13が収納部材11に対して回動することで、第二開口部119の開放と閉鎖とを行っていたが、これに限定されない。例えば、切替部材13が収納部材11に対してスライド移動することで、第二開口部119の開放と閉鎖とを行ってもよい。以下、切替部材13がスライド移動する場合の変形例である第二実施形態について説明する。
【0058】
図8に示すように、第二実施形態では、第一実施形態における孔部124(図3参照)を、上下方向に長い長方形の孔としている。そして、筒状部132(図3参照)を四角形の筒状部材としている。この場合、ユーザが、閉鎖状態にある切替部材13を収納部材11に対して下方に引っ張ると、筒状部132が孔部124に沿って摺動しながら切替部材13が下方に移動する。これによって、切替部材13が収納部材11に対してスライド移動し、図9に示すように、収納部材11の第二開口部119が開放される。例えば、ユーザは、スピーカフォン1を机4に横置きにし、第一開口部118をユーザに向けて使用する。この場合、第一実施形態と同様に、単一指向性マイク12は、その指向性の性能を発揮し、スピーカフォン1の第一方向側の音声を主に集音する。すなわち、スピーカフォン1は、単一指向性マイク12の指向性の方向である第一方向側に位置するユーザの声を集音することができる。また、切替部材13が閉鎖状態にある場合、第一実施形態と同様に、スピーカフォン1は、全周方向からの音声を集音することができる。また、第二実施形態におけるスピーカフォン1は、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 スピーカフォン
11 収納部材
12 単一指向性マイク
13 切替部材
14 スピーカ
118 第一開口部
119 第二開口部
135 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に最も高い感度を有する単一指向性マイクと、
前記単一指向性マイクを収納する収納部材であって、前記単一指向性マイクに対して第一方向側に設けられた第一開口部と、前記単一指向性マイクに対して前記第一方向の反対方向である第二方向側に設けられた第二開口部とを備えた収納部材と、
前記第二開口部を開放する開放状態と、前記第二開口部を閉鎖する閉鎖状態とに切り替え可能な切替部材と
を備えたことを特徴とするマイク装置。
【請求項2】
前記切替部材は、スピーカを備えたことを特徴とする請求項1に記載のマイク装置。
【請求項3】
前記切替部材は、前記開放状態と前記閉鎖状態とを切り替える場合に、前記収納部材に対してスライド移動又は回動することを特徴とする請求項2に記載のマイク装置。
【請求項4】
前記切替部材が前記閉鎖状態にある場合に、前記スピーカの向きは、前記第二方向を向いていることを特徴とする請求項2又は3に記載のマイク装置。
【請求項5】
前記切替部材は、前記閉鎖状態にある場合における前記第二方向側の端部に、前記第二方向側に突出する脚部を備えていることを特徴とする請求項4に記載のマイク装置。
【請求項6】
前記切替部材が前記開放状態にある場合に、前記スピーカの向きは、前記第二方向に直交する方向より前記第二方向側を向いていることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のマイク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−77929(P2013−77929A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215802(P2011−215802)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】