説明

マウスガード用スプレー式洗浄剤製品

【課題】野外でも容易に使用ができるマウスガード用のスプレー式洗浄剤製品を提供すること。
【解決手段】殺菌剤を含有する液体の洗浄剤組成物をスプレー式容器に充填したスプレー式洗浄剤製品であって、マウスガードに前記洗浄剤組成物を霧状または微小な液滴状でスプレーして使用されるマウスガード用スプレー式洗浄剤製品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスガード用スプレー式洗浄剤製品に関し、更に詳しくは、競技中や運動中に使用されるマウスガードや睡眠時に装着されるナイトガード等の顎口腔系を保護するためのマウスガードを洗浄するためのマウスガード用スプレー式洗浄剤製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ラグビー、アメリカンフットボール、レスリング、アイスホッケー、ボクシング等のコンタクトスポーツにおいては、競技中に歯牙や顎骨に大きな衝撃力が加わることがある。その衝撃から口腔内の各器官や組織を保護するためにマウスガード(マウスピース又はマウスプロテクターとも呼ばれる)を装着して衝撃力を吸収することが行われている。また、スポーツ用途以外にも歯科用として、いびきや歯ぎしり、睡眠時無呼吸症候群、顎関節症等の治療、歯の漂白、歯並び治療のために、ナイトガードやマウスピースが使用されている。
【0003】
このようなマウスガードやナイトガードは弾力性のある素材で作製されており、例えば、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA樹脂)、ポリオレフィン系樹脂、シリコン樹脂等の弾性材料に歯形を転写した凹部を形成して作製される。装用者は、歯列の歯冠にマウスガードの凹部を嵌入させて装着する。
【0004】
マウスガードは、口腔内で歯牙を覆うように装着するため、樹脂が歯列に密着した状態となり、唾液の流動が抑制されて唾液による口腔内の自浄作用が低下する。従って、装着している間に食物残渣、歯垢汚れ、煙草のヤニ等の汚れが付着しやすくなる。また、競技中や運動中においては、落としたものをそのまま装着したり、長時間にわたり連続して使用したりするなど、衛生上好ましくはない状態での使用が多く見られる。
【0005】
このような汚れが付着した状態で放置しておくと、マウスガードに雑菌が繁殖したり、臭いが残ったり、変色することなどがあるため、洗浄する等して常に清潔に保つ必要がある。例えば、洗い流しや研磨剤等によるブラッシングによる洗浄が行われる。また、総義歯や部分義歯等の硬質の材料よりなる歯科装置を洗浄するための洗浄剤を利用しての洗浄もなされており、義歯洗浄剤としては例えば、水に溶解させた際に発泡する発泡型洗浄剤や(例えば、特許文献1参照)、洗浄剤を泡状で吐出させて歯科装置を包み込んで汚れを洗浄、除去する泡状洗浄剤が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−17453号公報
【特許文献2】特開2007−254471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
洗い流しやブラッシングによる洗浄では、表面の汚れは除去できるものの、マウスガードに付着した頑固な汚れや臭いは除去しにくく、そのため、指先やブラシ等でマウスガードの表面を擦ることで樹脂表面を傷つけてしまい、マウスガードを磨耗させたり破損させてしまうおそれがある。また、前記特許文献1の発泡型洗浄剤は、水に溶解させて使用するため、歯科装置を入れる容器が必要であり、前記特許文献2の泡状洗浄剤は、洗浄後に水洗いや拭き取りをしなければならず、競技中や運動中での使用に適していない。そして、洗い流しなどを必要とせず簡便に使用できるマウスガードやナイトガードの洗浄剤は知られていない。
【0008】
競技中や運動中に使用されるマウスガードは、主に野外で使用され、容易に水を使用することのできない場合が多い。また、選手にとって浸け置きや水洗いといった洗浄作業が煩わしいという問題がある。更に、義歯とマウスガードではそれらを形成する樹脂の材質が異なるため、義歯用の洗浄剤成分がマウスガードの樹脂を劣化させたり、変色させる場合がある。そこで、本発明は、競技中や運動中に使用されるマウスガードや睡眠時に装着するナイトガード等の歯牙を被覆するための樹脂製のマウスガードを洗浄する洗浄剤製品であって、野外でも容易に使用ができるマウスガードのスプレー式洗浄剤製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(4)によって達成されるものである。
(1)殺菌剤を含有する液体の洗浄剤組成物をスプレー式容器に充填したスプレー式洗浄剤製品であって、マウスガードに前記洗浄剤組成物を霧状または微小な液滴状でスプレーして使用されることを特徴とするマウスガード用スプレー式洗浄剤製品。
(2)前記洗浄剤組成物の前記マウスガードの材質に対する接触角が45度〜85度であることを特徴とする前記(1)記載のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品。
(3)前記マウスガードは、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA樹脂)および/またはポリオレフィン樹脂を主成分とするものよりなることを特徴とする前記(1)または(2)記載のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品。
(4)前記(1)から前記(3)のいずれかに記載のスプレー式洗浄剤製品をマウスガードにスプレーし、該マウスガードを振り動かすことにより、当該マウスガードに付着した液体の洗浄剤組成物を除去することを特徴とするマウスガード用スプレー式洗浄剤製品の使用方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品は、マウスガードに洗浄剤組成物を霧状または微小な液滴状でスプレーした後、マウスガードを振って当該マウスガードに付着した洗浄剤組成物を除去して使用するため、別途、水や容器等が不要であり、短時間で簡便に使用できる。さらに、洗浄剤組成物のマウスガードの材質に対する接触角を45度〜85度とすると、洗浄剤組成物をマウスガードに付着させて十分な殺菌、洗浄作用を得ることができ、且つ液切れが良いため使用感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るマウスガード用スプレー式洗浄剤製品の使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品の実施形態について詳細に説明する。
尚、本発明において、マウスガードとは、上顎又は下顎の歯に装着されるマウスピースを指し、特に、競技中において使用されるマウスガードや睡眠時に装着されるナイトガード等の歯牙を被覆して歯列を保護するためのものをいう。また、マウスガードは、人体に無害の樹脂によって形成されるものであり、例えば、ゴムのような柔軟性と弾力性を示す樹脂によって形成され、このような樹脂としては、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA樹脂)、ポリオレフィン系樹脂、シリコン樹脂(ミラブル型、液状型)、天然ゴム、スチレン系樹脂等が挙げられる。
【0013】
本発明のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品(以下、単に「洗浄剤製品」ともいう。)は、図1に示すように、樹脂等で形成された上部に開口を有する容器本体2と、前記開口に螺合されるディスペンサーボタン3とを備えたディスペンサースプレー容器に、殺菌剤を含有する液体の洗浄剤組成物5が充填されたものである。このマウスガード用スプレー式洗浄剤製品1を用いてマウスガード10に洗浄剤組成物5を霧状または微小な液滴状で塗布して、マウスガード10の殺菌、洗浄を行う。
【0014】
前記洗浄剤組成物5は、マウスガードを洗浄、除菌ができる有効量の殺菌剤を含有し、この殺菌剤の他に、当該殺菌剤を溶解、分散させる溶剤と、水とを含んでいる。これらはEVA樹脂等に悪影響(劣化、変色等)を及ぼさないものである。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物5に使用される殺菌剤としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヒノキチオール等が挙げられる。なかでも塩化セチルピリジニウムを用いることが好ましい。尚、殺菌剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
殺菌剤の配合量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されず、使用する殺菌剤により変わりうるものであるが、通常、洗浄剤組成物中0.001〜10w/v%の濃度となるように配合するのがよい。例えば、塩化セチルピリジニウムの場合は0.01〜0.05w/v%、塩酸クロルヘキシジンの場合は0.001〜0.05w/v%、イソプロピルメチルフェノールの場合は0.02〜0.1w/v%の濃度とするのがよい。殺菌剤を前記範囲とすることで5〜30秒程度の短時間で十分な殺菌、洗浄効果が得られる。殺菌剤の配合量が洗浄剤組成物中0.001w/v%の濃度に満たないと殺菌効果が得られず、10w/v%の濃度を超えて配合しても、殺菌効力の更なる効果は期待できず経済的にも無駄になる可能性がある、口腔内に刺激感をもたらすおそれがある等のため好ましくない。
【0017】
溶剤は、殺菌剤等の溶剤となり本発明の洗浄剤を調製できるものであれば良く、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。なかでも使用感(味、におい)および安全性の観点から、エタノール、プロピレングリコールを用いることが好ましい。尚、溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
溶剤の配合量は、洗浄剤組成物中0〜30w/v%とするのがよく、好ましくは0〜20w/v%、より好ましくは0〜10w/v%である。30w/v%を超えて配合すると濡れ性が過度に上昇するため好ましくない。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物に使用される水としては特に限定されず、例えば精製水、イオン交換水、水道水等が挙げられる。水の配合量は、特に限定されず、その他の成分の配合量に応じて適宜調整すれば良い。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物5には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記した成分の他に、例えば湿潤剤、可溶化剤(乳化剤、分散剤)、pH調整剤、嬌味剤(香味剤)、保存剤、着色剤等を適宜配合することができる。
【0021】
本発明で用いられる湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。湿潤剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。湿潤剤の配合量は、洗浄剤組成物中1〜30w/v%の範囲とするのが好ましい。湿潤剤を前記範囲とすることで、使用感を向上することができる。
【0022】
本発明で用いられる可溶化剤(乳化剤、分散剤)としては、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エタノールアミド等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルアミノ酸塩、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等のアシルタウリン塩、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム塩等の脂肪酸エステルスルホン酸塩等が挙げられる。可溶化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。可溶化剤の配合量は、洗浄剤組成物中0.001〜3w/v%の範囲とするのが好ましい。可溶化剤を前記範囲とすることで、油溶成分と水溶成分が均一に溶解でき、味、においによって使用感が損なわれない。
【0023】
本発明で用いられるpH調整剤としては、例えば、リン酸、リン酸水素ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。pH調整剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。pH調整剤の配合量は、洗浄剤組成物中0.01〜1w/v%の範囲とするのが好ましい。pH調整剤を前記範囲とすることで、殺菌剤が最も効果を発揮するpHに調整することができる。
【0024】
本発明で用いられる嬌味剤(香味剤)としては、例えば、キシリトール、サッカリンナトリウム、スクラロース、トレハロース、ステビア、l−メントール、dl−メントール、ハッカ油、レモン油、オレンジ油、1,8−シネオール、カルボン、ピネン、オイゲノール、リナロール、カンファー、リモネン、メントン、ペパーミントオイル、ユーカリオイル、ローズマリーオイル、スペアミントオイル、ウィンターグリーンオイル等が挙げられる。嬌味剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。嬌味剤の配合量は、洗浄剤組成物中0.001〜5w/v%の範囲とするのが好ましい。嬌味剤を前記範囲とすることで、マウスガードを洗浄した後に装着したときの使用感が向上する。
【0025】
本発明で用いられる保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、ソルビン酸カリウム等が挙げられる。保存剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。保存剤の配合量は、洗浄剤組成物中0.01〜1w/v%の範囲とするのが好ましい。保存剤を前記範囲とすることで、使用感を損なうことなく、長期間にわたって安定な洗浄剤組成物とすることができる。
【0026】
本発明で用いられる着色剤としては、例えば、青色1号、緑色201号、黄色4号等の各種合成色素、カラメル、ベニノキ、コチノール、ベニバナ、クチナシ、ウコン、コウリャン、キャロット、オウバク、カンゾウなどの抽出液等の天然色素等が挙げられる。着色剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。着色剤の配合量は、洗浄剤組成物中0〜0.01w/v%の範囲とするのが好ましい。着色剤を前記範囲とすることで、洗浄剤組成物がマウスガードに付着しているのを容易に確認でき、付着もれを防ぐことができる。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物5は、一般に知られている製造方法により製造することができ、例えば、攪拌下で各成分を順次添加して混合することにより製造することができる。
【0028】
本発明において、前記洗浄剤組成物5は、その殺菌、洗浄力を確保しつつ、液切れを良好にして使用感を向上させるために、マウスガード10の材質に対する接触角および起泡性を特定の範囲とするのがよい。マウスガード10の素材は柔軟性と弾性力を示す樹脂であり、このような樹脂に対する接触角および起泡性を特定することで、使用時においてマウスガード10を振り動かすだけで確実にマウスガード10に付着した洗浄剤組成物5を除去することができる。尚、本発明の洗浄剤組成物が適用されるマウスガードの材質は、上述したごとく、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA樹脂)、ポリオレフィン系樹脂、シリコン樹脂(ミラブル型、液状型)、天然ゴム、スチレン系樹脂等が挙げられ、マウスガードはこれらを単独であるいは2種以上を混合して形成される。特に、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA樹脂)、ポリオレフィン系樹脂が好適に使用される。
【0029】
前記洗浄剤組成物5のマウスガード10の材質に対する接触角は、45度〜85度であり、好ましくは50度〜65度である。洗浄剤組成物がマウスガードの材質に対してこの範囲の接触角を持つことによって、マウスガードに付着した洗浄剤組成物を除去しやすくすることができる。この接触角が45度未満の場合、洗浄剤組成物のマウスガードの表面を構成する材質に対する濡れ性が増大するため、マウスガードを振っただけでは洗浄剤組成物を除去しきれない。また、接触角が85度を超えると、マウスガードの汚れを十分に除菌、洗浄できない。
【0030】
また、前記洗浄剤組成物5の起泡性としては、気泡が形成された場合であっても数秒のうちに消泡作用を有するものが好ましい。例えば、後述する起泡試験で示されたものが挙げられ、起泡直後から消泡が始まるものが好ましい。
【0031】
本発明のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品1は、図1に示したように、容器本体2とディスペンサーボタン3とを備えたポンプ式のディスペンサースプレー容器に洗浄剤組成物5を充填してなるものである。このポンプ式のスプレー容器は、利用者が容器本体2を自らの手で把持しながらディスペンサーボタン3を操作することにより洗浄剤組成物5を噴出させることができるように、ハンドポンプ式容器であることが好ましい。本発明において、洗浄剤組成物5は、霧状または微小な液滴状で噴射され、マウスガードの表面に液体で付着する。洗浄剤製品1の1回の噴射量は、洗浄剤組成物5中の成分の濃度、ディスペンサーボタン3の噴孔径等により変わりうるものであるが、通常0.01〜1mL程度であり、0.1〜0.3mLであることが好ましい。噴射量を前記範囲とすることで、マウスガードに効率的に洗浄剤組成物を付着させることができる。
【0032】
なお、図1では本発明をポンプ式のディスペンサースプレー容器に充填したスプレー式洗浄剤製品1として説明したが、洗浄剤組成物5を霧状または微小な液滴状に噴射できるものであればどのような形態のものであってもよい。例えば、LPGやDMEなどの液化ガスや窒素などの圧縮ガスを用いて噴霧するエアゾール式のスプレー容器等も好ましく使用できる。
【0033】
本発明のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品1の使用形態としては、まず、洗浄剤組成物5がマウスガード10全体(表裏)に付着されるようにスプレーする。マウスガード10全体に塗布し、かつ十分な洗浄、殺菌効果を得るためには、0.1〜3mL程度スプレーすればよく、これはポンプ式のスプレー容器の場合、使用者が手間を感じることのない5〜20回のボタン操作でスプレーできる。スプレーした後、所定時間、例えば、5〜30秒程度放置し、マウスガードの一端を持ち前後左右または上下に数回振り動かしてマウスガードの表面に付着した洗浄剤組成物5を除去する。
【0034】
以下、実施例及び比較例により本発明のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら制限されるものではない。
【実施例】
【0035】
<一般細菌(S.aureus、E.coli)の除菌効果>
(洗浄剤組成物の調製)
下記表1の処方に従い、実施例1および実施例2のマウスガード用洗浄剤組成物を作成し、0.22μmのメンブランフィルターを用いて滅菌ろ過した。実施例1および2の洗浄剤組成物をそれぞれ、ポンプ容器(容器:品番PTP−100、竹本容器株式会社製;ディスペンサー:品番Z−155−101−1−0111(91−0)、噴孔径0.35mm、噴射量約0.15mL/1プッシュ、株式会社三谷バルブ製)に100mL充填した。
【0036】
【表1】

【0037】
(樹脂片の作製)
エチレンビニルアセテート樹脂(EVA樹脂)(商品名:ドゥルフォソフト、リンカイ製、厚さ3mm)とポリオレフィン樹脂(商品名:MG21、シージーケー製、厚さ3mm)をそれぞれ縦10mm×横10mmの大きさに切断した樹脂片(表面積:3.2cm)をエタノールに浸漬し、クリーンベンチ内で乾燥させた。
【0038】
(試験例1)
黄色ブドウ球菌S.aureus、および大腸菌E.coliを10mLのSCD(Soybean Casein Digest)液体培地を用いて37℃条件下で1日間静置培養し、得られた菌懸濁液を遠心分離機(10,000rpm、5分)で処理して集菌し、0.05M Tris HCl緩衝液で濁度1.0(600nm)になるように調整した。菌液40mLに上記作製したEVA樹脂とポリオレフィン樹脂の樹脂片を60分間浸漬させ、その後、樹脂片を滅菌処理した精製水10mLで洗浄し、この洗浄を5回繰り返した。実施例1および2をそれぞれ10cmの距離から、樹脂片の各面(6面)に1回ずつ噴霧し(計6回噴霧;約0.90mL)、30秒間静置させた。その後、樹脂片を0.05M Tris HCl緩衝液2mLに入れ、超音波で10秒間の洗い流しを行った。洗い流した液の100μLをSCDLP(Soybean Casein Digest Agar with Lecitin and Polysorbate (80))寒天培地に塗布し、37℃で1日間培養した。
培養後、コロニー数をカウントし、次式により生菌数および致死率を求めた。結果を表2および表3に示す。
【0039】
【数1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
<口腔内唾液中細菌の除菌効果>
(試験例2)
上記作製した樹脂片を口腔内に60分間含み、口腔内菌を付着させた。その後、樹脂片を滅菌処理した精製水10mLで洗浄し、この洗浄を5回繰り返した。実施例1および2をそれぞれ10cmの距離から、樹脂片の各面(6面)に1回ずつ噴霧し(計6回噴霧;約0.90mL)、30秒間静置させた。その後、樹脂片を0.05M Tris HCl緩衝液2mLに入れ、超音波で10秒間の洗い流しを行った。洗い流した液の100μLをMS(Mitis Salivarius)固体培地に塗布し、37℃で2日間培養し、コロニー数をカウントすることにより、口腔内レンサ球菌数を測定した。また、BHI(Brain Heart Infusion)固体培地を用いて同様に培養し、口腔内細菌全体の数を測定した。
上記式により生菌数および致死率を求め、結果を表4に示す。
【0043】
【表4】

【0044】
表2〜4の結果より、本発明のマウスガード用洗浄剤組成物は、ほぼ100%の割合で一般細菌(S.aureus、E.coli)や口腔内唾液中細菌を殺菌することができ、優れた除菌効果が得られることがわかった。
【0045】
<マウスガード用洗浄剤組成物の接触角>
(洗浄剤組成物の調製)
前記表1の処方に従い、実施例1および実施例2のマウスガード用洗浄剤組成物を作成し、0.22μmのメンブランフィルターを用いて滅菌ろ過した。同様に、下記表5の処方に従い、比較例1および比較例2の洗浄剤組成物を作成し、0.22μmのメンブランフィルターを用いて滅菌ろ過した。
【0046】
【表5】

【0047】
(樹脂片の作製)
EVA樹脂(商品名:ドゥルフォソフト、リンカイ製、厚さ3mm)およびポリオレフィン樹脂(商品名:MG21、シージーケー製、厚さ3mm)をそれぞれ、縦10mm×横10mmの大きさに切断した樹脂片をエタノールに浸漬し、クリーンベンチ内で乾燥させた。
【0048】
(試験例3)
各樹脂片に、実施例1、2、および比較例1、2を1mLシリンジで約10mg滴下し、滴下直後の接触角をAE−X型接触角測定装置(協和界面科学株式会社製)にて測定した。結果を表6に示す。
【0049】
【表6】

【0050】
表6の結果より、実施例1および実施例2はEVA樹脂およびポリオレフィン樹脂に対する接触角が約53度〜約63度の範囲であり、マウスガードを十分に洗浄、殺菌できるだけの付着力で、かつ液切れ性も良好である。また、比較例1よりも接触角が大きく、樹脂に対する液切れが良いことがわかった。そして、比較例2よりも接触角が小さく、マウスガードに所望時間付着させることができる。
【0051】
<起泡試験>
(試験例4)
実施例1、実施例2、および比較例1の洗浄剤組成物10mLをそれぞれ、50mLファルコンチューブに泡立てないように入れ、横倒しの状態で振とう機(商品名:Shaking Bath BW101、ヤマト科学株式会社製)に設置した。
振とう速度200rpmで1分間振盪した。振とう終了後、ファルコンチューブを正立状態で静置し、5分後、10分後の液面からの泡立ちの高さを定規で測定した。結果を表7に示す。
【0052】
【表7】

【0053】
表7の結果より、実施例1および2の洗浄剤組成物は、振とう終了直後から消泡が始まり、実施例1の洗浄剤組成物は10分後には気泡が3分の1以下になったのに対し、比較例1は10分後もほとんど消泡しなかった。従って、本発明の洗浄剤組成物は液状でスプレーされ、そのスプレーした後には発泡しにくい。
【0054】
<液切れの評価>
実施例2の洗浄剤組成物をポンプ容器(容器:品番PTP−100、竹本容器株式会社製;ディスペンサー:品番Z−155−101−1−0111(91−0)、噴孔径0.35mm、噴射量約0.15mL/1プッシュ、株式会社三谷バルブ製)に100mL充填した。比較例1の洗浄剤組成物をスプレーポンプタイプの容器(噴孔径2.5mm、噴射量約0.75mL/1プッシュ、大和製罐株式会社製)に100mL充填した。
市販のマウスガード(商品名:ライトガードチームマウスガード、ライトガード社製)をエタノールに浸漬し、クリーンベンチ内で乾燥させた後重量を測定した(約13.3g)。
【0055】
(試験例5)
マウスガードに、実施例2は10プッシュ、比較例1は1プッシュして、約0.6gずつ付着させた。被験者(男女混合)10名により、マウスガードを3回ずつ振り動かし、マウスガード上の洗浄剤組成物を除去してもらった。その後、マウスガードの重量を測定し、下式より液切れ率を算出した。一方で、液切れの良さを下記の5段階により評価した。結果を表8に示す。
【0056】
【数2】

【0057】
[液切れの評価基準]
5:よく液切れしている
4:まずまず液切れしている
3:普通
2:あまり液切れしていない
1:全く液切れしていない
【0058】
【表8】

【0059】
表8の結果より、実施例2の洗浄剤組成物の液切れ率と、比較例1の洗浄剤組成物の液切れ率は平均で約30%の差があり、また、全ての被験者が実施例2の洗浄剤組成物の液切れが良好であると評価しており、本発明のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品が使用感に優れることがわかった。
【0060】
<耐薬剤性試験>
(試験例6)
実施例1および2の洗浄剤組成物100mLを200mLビーカーに入れ、EVA樹脂(商品名:ドゥルフォソフト、リンカイ製、厚さ3mm)およびポリオレフィン樹脂(商品名:MG21、シージーケー製、厚さ3mm)をそれぞれ、縦20mm×横20mmの大きさに切断し、エタノールに浸漬した後クリーンベンチ内で乾燥させた樹脂片を浸漬した。
5℃、25℃、40℃の条件下で24時間静置した後、外観、寸法(縦、横、厚さ)、重量、硬さについて評価した。
同様に、実施例1および2の洗浄剤組成物を上記樹脂片に噴霧した際の評価も行った。なお、噴霧は、1回につき5プッシュ(付着量:約300mg)した後、1時間程度放置して乾燥させる作業を1日当たり6回繰り返し、累積30回噴霧を行った。
【0061】
EVA樹脂は洗浄剤組成物に浸漬すると、25℃条件下で12時間後に白濁したが、1日室温で乾燥させると濁りがとれ、もとの状態に戻った。なお、実施例2に比べて実施例1の方が白濁度が強く、高温保存のものほど強く白濁するという結果が得られた。ポリオレフィン樹脂は24時間浸漬による外観上の変化はなかった。
応力をかけることによるクラックの発生は、EVA樹脂、ポリオレフィン樹脂ともに認められなかった。また、寸法、重量に関しては、特に変化は見られなかった。
噴霧による、外観、寸法、重量、硬さの変化は、EVA樹脂、ポリオレフィン樹脂ともに特に認められなかった。
比較として精製水に樹脂片を浸漬させて同様の試験を行ったところ、EVA樹脂は白濁が見られ、1日室温で乾燥させると濁りがとれ、もとの状態に戻った。このことから、実施例1および2の洗浄剤組成物は、樹脂に対しての影響はないものと考えられる。
【0062】
<参考試験例>
[浸漬試験]
黄色ブドウ球菌S.aureus、および大腸菌E.coliを10mLのSCD液体培地を用いて37℃条件下で1日間静置培養し、得られた菌懸濁液を遠心分離機(10,000rpm、5分)で処理して集菌し、0.05M Tris HCl緩衝液で濁度1.0になるように調整した。菌液40mLに上記作製したEVA樹脂とポリオレフィン樹脂の樹脂片を60分間浸漬させ、その後、樹脂片を滅菌処理した精製水10mLで洗浄し、この洗浄を5回繰り返した。
実施例1および2の洗浄剤組成物5mLをそれぞれ50mLファルコンチューブに入れ、樹脂片を浸漬して、30秒間、1分間、2分間静置した。その後、樹脂片を0.05M Tris HCl緩衝液2mLに入れ、超音波で10秒間の荒い流しを行った。洗い流した液の100μLをSCDLP寒天培地に塗布し、37℃で1日間培養した。
培養後、コロニー数をカウントし、上記式により生菌数および致死率を求めた。結果を表9および表10に示す。
【0063】
【表9】

【0064】
【表10】

【0065】
表9、10の結果より、本発明のマウスガード用洗浄剤組成物に樹脂片を浸漬すると、ほぼ100%の割合で一般細菌を殺菌することができた。
【0066】
続いて、本発明に係るマウスガード用スプレー式洗浄剤製品の洗浄剤組成物の処方例を示す。以下の処方例1〜5において、各成分の配合量はw/v%で表す。
また、処方例1〜5の洗浄剤組成物のEVA樹脂とポリオレフィン樹脂に対する接触角を表11に示す。
【0067】
<処方例1>
エタノール 3.5g
塩化セチルピリジニウム 0.01g
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 0.2g
炭酸水素ナトリウム 0.1g
濃グリセリン 12.0g
香料 0.1g
精製水 適 量
合計 100.0mL
【0068】
<処方例2>
エタノール 8.0g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5g
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.5g
イソプロピルメチルフェノール 0.1g
香料 0.1g
精製水 適 量
合計 100.0mL
【0069】
<処方例3>
プロピレングリコール 2.0g
トリクロサン 0.02g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.9g
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1g
濃グリセリン 5.0g
香料 0.1g
クエン酸 0.01g
クエン酸ナトリウム 0.08g
精製水 適 量
合計 100.0mL
【0070】
<処方例4>
エタノール 5.0g
塩化ベンゼトニウム 0.01g
グリセリン脂肪酸エステル 0.5g
ソルビトール 12.0g
リン酸一ナトリウム 0.1g
リン酸二ナトリウム 0.2g
香料 0.1g
精製水 適 量
合計 100.0mL
【0071】
<処方例5>
エタノール 10.0g
チモール 0.02g
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール 1.0g
ソルビトール 10.0g
香料 0.1g
精製水 適 量
合計 100.0mL
【0072】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品は、マウスガードに洗浄剤組成物を霧状または微小な液滴状でスプレーした後、マウスガードを振って当該マウスガードに付着した洗浄剤組成物を除去して使用するため、水や容器等が不要であり、水のない野外でも容易に使用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 マウスガード用スプレー式洗浄剤製品
2 容器本体
3 ディスペンサーボタン
5 洗浄剤組成物
10 マウスガード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌剤を含有する液体の洗浄剤組成物をスプレー式容器に充填したスプレー式洗浄剤製品であって、マウスガードに前記洗浄剤組成物を霧状または微小な液滴状でスプレーして使用されることを特徴とするマウスガード用スプレー式洗浄剤製品。
【請求項2】
前記洗浄剤組成物の前記マウスガードの材質に対する接触角が45度〜85度であることを特徴とする請求項1記載のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品。
【請求項3】
前記マウスガードは、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA樹脂)および/またはポリオレフィン樹脂を主成分とするものよりなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のマウスガード用スプレー式洗浄剤製品。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のスプレー式洗浄剤製品をマウスガードにスプレーし、該マウスガードを振り動かすことにより、当該マウスガードに付着した液体の洗浄剤組成物を除去することを特徴とするマウスガード用スプレー式洗浄剤製品の使用方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−180361(P2010−180361A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26403(P2009−26403)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】