説明

マクロライドおよびその不純物を検出、同定および定量化するための方法ならびにシステム

本発明は、マクロライドを検出するため、ならびにマクロライドを含むサンプル中の不純物を検出、同定および定量するための逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)方法およびシステムに関する。本発明は、試験サンプルの重量による主要な成分がマクロライドである試験サンプル中のマクロライドを検出する方法を提供し、該方法は、以下:a)該試験サンプルを逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用する工程;b)該試験サンプルを、揮発性緩衝液、水、アセトニトリルおよびアルコールを含有する勾配移動相で溶出する工程;ならびにc)該カラムからの流出液を電気化学的検出器または質量分析検出器を用いてモニタリングして、該マクロライドに対応するピーク電流または質量ピークをそれぞれ検出する工程;を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2004年5月6日に出願された米国特許出願第60/568,637号の利益を主張し、その開示は、本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、逆相高速液体クロマトグラフィーおよび電気化学的検出または質量分析検出を含む、例えば、エリスロマイシルアミンおよび関連化合物などのマクロライドを検出、同定および定量するための分析方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
マクロライドは、種々の細菌感染を処置するために使用される抗体のファミリーを表す。マクロライドは、14〜16原子の大環状ラクトン環構造および通常少なくとも一つのペンダント糖部分、アミノ糖部分または関連する部分により化学的に特徴付けられる。マクロライドは、転移RNAの解離を引き起こす細菌の50Sリボソームおよびペプチド結合の末端の二つの部位での結合の結果として細菌のタンパク質合成を阻害すると考えられている。最初のマクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンは、1952年に発見され、その後すぐに臨床的に使用された。エリスロマイシンおよびその初期の誘導体(例えば、種々の塩およびエステル)は、代表的にほとんどのグラム陰性細菌(特に連鎖球菌)に対する静菌活性または殺菌活性、ならびに呼吸器系の病原体に対する良好な活性によって特徴付けられる。マクロライドは、安全で、多くの呼吸器系の感染症に対して有効であることが証明されており、ペニシリンアレルギーを有する患者に有用である。
【0004】
マクロライドは代表的に、光度検出方法の限界に近い非常に低い波長範囲(例えば、<220nm)に紫外線(UV)の吸光度を有する。United States Pharmacopeia National Formulary (USP−NF)のエリスロマイシン(以下の構造を参照のこと)のための簡潔なアッセイ方法は、215nmでのUV検出を用いるL21固定相(逆相、柔軟性のない、球状のスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、5〜10μmの粒径)を用いるRP−HPLCを包含する(例えば、非特許文献1を参照のこと)。実際、多くの還元されたエリスロマイシン誘導体および関連する分子(例えば、9−(S)−エリスロマイシルアミン(エリアミンすなわちPA2794;以下の構造:
【0005】
【化4】

を参照のこと))は、215nmよりかなり低いUV最大吸収帯(UVmax)を有する。例えば、9−(S)−エリスロマイシルアミンのUVmaxは、約191nmに存在し、これは標準的な光度検出方法の短い方の波長の限界に近い。従って、代替的な検出方法(例えば、電気化学的検出質量分析検出方法が興味深いことが見出されている(例えば、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;および非特許文献7を参照のこと)。しかし、これらの代替的な方法は、主に生物学的マトリックス(例えば、血漿または他の生物学的物質)におけるマクロライドの検出のために設計されていて、(例えば、多くが類似する物理的特性を有する関連するマクロライドである少量の不純物からの活性な薬学的成分(API)として使用される)実質的に純粋なマクロライドの分離には適していない。
【非特許文献1】「United States Pharmacopeia National Formulary」、2000年1月1日、p663−665
【非特許文献2】Whitakerら、「J.Liq.Chromatogr.」、1988年、第11巻、第14号、p.3011−20
【非特許文献3】Pappa−Louisiら、「J.Chromatogr.,B:Biomed.Sci.Appl.」、2001年、第755巻、第1−2号、p.57−64
【非特許文献4】Keesら、「J.Chromatogr.,A」、1998年、第812巻、(1+2)、p.287−293
【非特許文献5】Hedenmoら、「J.Chromatogr.A」、1995年、第692巻、(1+2)、p.161−6
【非特許文献6】Daszkowskiら、「J.Liq.Chromatogr.Relat.Technol.」、1999年、第22巻、第5号、p.641−657
【非特許文献7】Duboisら、「J.Chromatogr.,B:Biomed.Sci.Appl.」、2001年、第753巻、第2号、p.189−202
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マクロライドサンプル中の不純物の検出、同定および定量は、品質管理に必要であるので、特にマクロライドがAPIである場合、HPLCベースのアッセイ方法を用いてマクロライド(例えば、9−(S)−エリスロマイシルアミン)およびその不純物を検出、同定および定量するために適切に設計されているアッセイに現在は必要である。本明細書中に記載される方法およびシステムは、これらの必要性および他の必要性を満たすのを補助する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、試験サンプルの重量による主要な成分がマクロライドである試験サンプル中のマクロライドを検出する方法を提供し、この方法は、以下:
a)この試験サンプルを逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用する工程;
b)この試験サンプルを、揮発性緩衝液、水、アセトニトリルおよびアルコールを含有する勾配移動相で溶出する工程;ならびに
c)このカラムからの流出液を電気化学的検出器または質量分析検出器を用いてモニタリングして、このマクロライドに対応するピーク電流または質量ピークをそれぞれ検出する工程;
を包含する。
【0008】
本発明は、試験サンプルの重量による主要な成分がマクロライドである試験サンプルの純度を決定する方法をさらに提供し、この方法は、以下:
a)この試験サンプルを逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用する工程;
b)この試験サンプルを、揮発性緩衝液、水、アセトニトリルおよびアルコールを含有する勾配移動相で溶出する工程;
c)このカラムからの流出液を電気化学的検出器を用いてモニタリングして、以下:
i)このマクロライドに対応するピーク電流;および
ii)必要に応じて、この試験サンプル中の一種以上の不純物に対応する一種以上のさらなるピーク電流;
を検出する工程;ならびに
d)この試験サンプル中の不純物含有量を計算するために、この検出器によって検出された一つ以上のピーク電流の特徴を測定する工程;
を包含する。
【0009】
本発明はさらに、試験サンプルの重量による主要な成分がマクロライドである試験サンプル中の不純物を同定する方法を提供し、この方法は、以下:
a)この試験サンプルを逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用する工程;
b)この試験サンプルを、揮発性緩衝液、水、アセトニトリルおよびアルコールを含有する勾配移動相で溶出する工程;
c)このカラムからの溶出液を質量分析検出器を用いてモニタリングして、以下:
i)このマクロライドに対応する質量ピーク;および
ii)この試験サンプル中のこの不純物に対応するさらなる質量ピーク;
を検出する工程;ならびに
d)この不純物に対応するさらなる質量ピークの質量を決定する工程;
を包含する。
【0010】
本発明はさらに、試験サンプルの重量による主要な成分がマクロライドである試験サンプル中の不純物の量を決定する方法を提供し、この方法は、以下:
a)HPLC−MSアッセイまたはHPLC−ECDアッセイによって不純物を同定する工程;
b)以下:
i)既知の量のこの不純物および既知の量のこのマクロライドを、イオン対試薬を含有する移動相で溶出する逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに流す工程であって、このRP−HPLCカラムが約180nmと約220nmとの間の検出波長を有する紫外光(UV)検出器を備えている、工程;
ii)カラム流出液を、このUV検出器を用いてモニタリングしてこの検出波長にて一番目の吸収ピークを検出する工程であって、この一番目の吸収ピークが不純物に対応する、工程;
iii)カラム流出液をこのUV検出器でモニタリングしてこの検出波長にて二番目の吸収ピークを検出する工程であって、この二番目の吸収ピークがマクロライドに対応する、工程
iv)この不純物の応答因子を、一番目の吸収ピークおよび二番目の吸収ピークのピーク面積を使用して計算する工程;
を包含する方法によってこの不純物に対する応答因子を決定する工程;ならびに
c)以下:
i)工程b)と同じアッセイ条件下で該試験サンプルを流して不純物に対応する三番目の吸収ピークを検出する工程;および
ii)この応答因子を使用してこの試験サンプル中の不純物の量を計算する工程;
を包含する方法によって試験サンプル中の不純物の量を決定する工程;
を包含する。
【0011】
本発明はさらに、エリスロマイシンの試験サンプル中の不純物を検出するためのシステムを提供し、このシステムは、以下:
a)以下
i)C18カラム;
ii)溶出液Aおよび溶出液Bの混合物を含有する勾配移動相であって、その相対的な量は、溶出の過程の間に変動し、ここで溶出液Aは本質的に、水中約60mM〜約75mMの酢酸アンモニウムからなり、溶出液Bは本質的に、約50体積%〜約70体積%のアセトニトリルと約30体積%〜約50体積%のメタノールの混合物中の約60mM〜約75mMの酢酸アンモニウムからなる、勾配移動相;
を含む逆相高速液体クロマトグラフィーカラム;
b)ガード電極、スクリーニング電極および作用電極を備える電気化学的検出器、または質量分析検出器
を備える。
【0012】
本明細書中の方法およびシステムにより検出され得るマクロライドの例としては、例えば、9−(S)−エリスロマイシルアミン、9−(R)−エリスロマイシルアミン、エリスロマイシン、エリスロマイシンヒドラゾン、エリスロマイシン、9−イミノエリスロマイシン、エリスロマイシンオキシム、エリスロマイシンB、エリスロマイシンヒドラゾンB、9−イミノエリスロマイシンB、エリスロマイシルアミンB、エリスロマイシンヒドラゾンアセトン付加物、9−ヒドロキシイミノエリスロマイシン、エリスロマイシルアミン水酸化物、9−ヒドロキシイミノエリスロマイシンB、エリスロマイシルアミンB水酸化物、エリスロマイシルアミンC、エリスロマイシルアミンD、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0013】
本発明はさらに、以下の詳細な説明に提供する実施形態を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(詳細な説明)
本発明は検出方法として電気化学的(ECD)方法および質量分析(MS)方法を用いてマクロライドおよびその不純物を検出、同定および定量化するための、とりわけHPLCベースの方法およびシステムを提供する。HPLC−ECDアッセイおよびHPLC−MSアッセイは、マクロライドサンプルを、揮発性緩衝液、水、アセトニトリルおよびアルコールを含有する勾配移動相で溶出する逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに流す工程を包含する。カラムからの流出液は、電気化学的検出器または質量分析検出器を用いてモニタリングされ、サンプル中に存在するマクロライドおよび/または任意の潜在的な不純物に対応するピーク電流または質量ピークがそれぞれ検出される。いくつかの実施形態において、質量分析計の使用は、生じたクロマトグラムにおける検出された化合物の同定を容易にする。マクロライドサンプル中で同定された不純物は、光度検出を備えるHPLC(HPLC−UV)アッセイを使用してさらに定量され得る。
【0015】
本発明に従ったマクロライドとしては、任意の公知の抗生物質または他のマクロライドおよびそれらの誘導体が挙げられる。代表的なマクロライドは、12員、14員または16員の大環状ラクトンコア構造により特徴付けられる。マクロライドは、当該分野で広く公知であり、例えば、Macrolide Antibiotics、Satoshi Omura編、Academic Press,Inc.、Orlando、Florida、1984に十分に記載され、この文献は、その全体が参考として本明細書中に援用される。いくつかの実施形態において、マクロライドは、比較的低い紫外光−可視光(UV−VIS)吸収プロフィールを有し、例えば、約180nm〜約220nm、約180nm〜約200nmまたは約180nm〜約195nmの波長で、UV−VIS範囲(約100nm〜約900nm)の最大吸収を示す。さらなる実施形態において、このマクロライドは、約188nm、約189nm、約190nm、約191nm、約192nm、約193nm、約194nm、約195nm、約196nm、約197nm、約198nm、約199nm、約200nm、約201nm、約202nm、約203nm、約204nmまたは約205nmの波長で、UV−VIS範囲の最大吸収を有する。
【0016】
本明細書中の方法およびシステムによって検出され得るマクロライドの例としては、例えば、9−(S)−エリスロマイシルアミン、9−(R)−エリスロマイシルアミン、エリスロマイシン、エリスロマイシンヒドラゾン、エリスロマイシン、9−イミノエリスロマイシン、エリスロマイシンオキシム、エリスロマイシンB、エリスロマイシンヒドラゾンB、9−イミノエリスロマイシンB、エリスロマイシルアミンB、エリスロマイシンヒドラゾンアセトン付加物、9−ヒドロキシイミノエリスロマイシン、エリスロマイシルアミン水酸化物、9−ヒドロキシイミノエリスロマイシンB、エリスロマイシルアミンB水酸化物、エリスロマイシルアミンC、エリスロマイシルアミンD、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記マクロライドは、9−(S)−エリスロマイシルアミンである。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明の方法およびシステムによる分析に適した試験サンプルは、少なくとも一種のマクロライドを含む。いくつかの実施形態において、試験サンプルは、試験サンプル中で重量で主要な成分を構成するマクロライドを含む。試験サンプルは、不純物と呼ばれ得る他の少量の成分を任意に含み得る。いくつかの実施形態において、試験サンプルは、化学的合成手順によって調製された、多くの場合少量の不純物を含む実質的に純粋なマクロライドのバッチである。本明細書中で使用される場合、用語「不純物」とは、研究の目的であるマクロライド以外の化合物をいう。いくつかの実施形態において、一種以上の不純物は、試験サンプルの約30重量%未満、約20重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満または約1重量%未満を構成し得る。
【0019】
不純物は、多くの場合、別のマクロライド(例えば、試験サンプルの大部分を構成するマクロライドの誘導体)であり得る。不純物は、主要なマクロライド成分の分解産物または主要なマクロライド成分の化学合成由来のキャリーオーバーであり得る。いくつかの実施形態において、不純物としては、図1および図2に示す一種以上の化合物が挙げられ、例えば、エリスロマイシンB、エリスロマイシンヒドラゾンB、9−イミノエリスロマイシンB、エリスロマイシルアミンB、エリスロマイシンヒドラゾンアセトン付加物、9−ヒドロキシイミノエリスロマイシン、エリスロマイシルアミン水酸化物、9−ヒドロキシイミノエリスロマイシンB、エリスロマイシルアミンB水酸化物、9−(R)−エリスロマイシルアミン、エリスロマイシルアミンC、エリスロマイシルアミンDまたは式I,II、III、IVもしくはVを有する化合物:
【0020】
【化5】

である。
【0021】
いくつかの実施形態において、不純物は、式VI、VII、VIII、IX、XまたはXIの化合物:
【0022】
【化6】

である。
【0023】
本明細書中で使用される場合、HPLCアッセイに関連して句「試験サンプルを流す」などは、1)試験サンプルのHPLCカラムへの適用後、2)移動相を用いた試験サンプルの溶出をいうことを意味し、生じた溶出液は、試験サンプル中のマクロライドおよび/または不純物を検出し得る検出器によりモニタリングされる。
【0024】
(HPLC−ECDアッセイおよびHPLC−MSアッセイ)
MS検出方法に適合するアッセイのための移動相は、代表的に揮発性成分を含有する。例えば、本発明に従ったHPLC−ECDアッセイおよびHPLC−MSのための移動相は、揮発性の緩衝液、水、アセトニトリルおよびアルコールを含有し得る。
【0025】
揮発性の適切な緩衝液としては、移動相を所望のpHで維持し、質量分析計によるマクロライドの検出を妨害しない任意の緩衝物質が挙げられる。いくつかの実施形態において、揮発性緩衝液は、例えば、酢酸アンモニウムなどのアンモニウム塩を含む。移動相中の揮発性緩衝塩の濃度は、約40mM〜約100mM、約50mM〜約80mMまたは約65mM〜約75mMであり得る。いくつかの実施形態において、揮発性緩衝塩は、移動相中に約67mMの濃度で存在する。さらなる実施形態において、移動相は、約6〜約8のpHを有する。なおさらなる実施形態において、移動相は、約7のpHを有する。
【0026】
移動相の適切な有機成分としては、ピークの形状および保持時間を制御するための有機溶媒(例えば、アセトニトリル)および有機修飾物質(例えば、アルコール)が挙げられる。適切なアルコールの例としては、C1〜C8の直鎖および分枝鎖のアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)が挙げられる。いくつかの実施形態において、このアルコールは、メタノールである。いくつかの実施形態において、移動相中のアセトニトリルのアルコールに対する体積比は、約1:1〜約2:1であり得る。いくつかの実施形態において、アセトニトリルのアルコールに対する体積比は、約3:2である。
【0027】
移動相は、勾配溶出液としてHPLCカラムに流され得る。従って、移動相は、二種以上の異なる溶出溶液の混合物からなり得、その比率は、溶出の時間経過によって変動する。いくつかの実施形態において、移動相は、溶出液Aおよび溶出液Bの混合物からなり、その相対的な量は、溶出の過程の間に変動する。いくつかの実施形態において、溶出液Aは、水中に約60mM〜約75mMの酢酸アンモニウムを含有し、溶出液Bは、約50体積%〜約70体積%のアセトニトリルと約30体積%〜約50体積%のメタノールとの混合物中に約60mM〜約75mMの酢酸アンモニウムを含有する。
【0028】
さらなる実施形態において、溶出液Aは、水中に約65mM〜約70mMの酢酸アンモニウムを含有し、溶出液Bは、約55体積%〜約60体積%のアセトニトリルと約40体積%〜約45体積%のメタノールとの混合物中に、約65mM〜約70mMの酢酸アンモニウムを含有する。
【0029】
なおさらなる実施形態において、溶出液Aは、水中に約67mMの酢酸アンモニウムを含有し、溶出液Bは、約58体積%のアセトニトリルと約42体積%のメタノールとの混合物中に約67mMの酢酸アンモニウムを含有する。
【0030】
なおさらなる実施形態において、移動相は、溶出の任意の時点で、約40体積%〜約75体積%の溶出液Aと約25体積%〜約60体積%の溶出液Bとの混合物を含有し得る。いくつかの実施形態において、溶出液Bの比率は、溶出の間の時間、徐々に増加する。
【0031】
固定相は、移動相と組合せて、マクロライドの検出およびマクロライドの不純物からの分離を可能にする任意の逆相固体支持体媒体からなり得る。いくつかの実施形態において、固定相は、C8〜C18のマトリックスを含む。さらなる実施形態において、固定相は、C18マトリックスである。
【0032】
上記試験サンプルは、カラムへの導入の前に、サンプル希釈溶液で希釈されて、希釈サンプルを形成し得る。希釈サンプル中のマクロライドの適切な濃度は、任意の適切な量(例えば、約0.1mg/mL〜約5mg/mL)であり得る。いくつかの実施形態において、この濃度は、約0.5mg/mL〜約1mg/mLであり得る。サンプル希釈溶液は、移動相と同じか類似したものであり得る。いくつかの実施形態において、サンプル希釈溶液は、水、アセトニトリルおよびアルコール(例えば、メタノール)の混合物である。さらなる実施形態において、このサンプル希釈溶液は、約50%〜約90%の水、約50%〜約70%のアセトニトリルと約30%〜約50%のメタノールとの混合物を約10%〜約50%含有する。なおさらなる実施形態において、このサンプル希釈溶液は、約70%の水、および約60%のアセトニトリルと約40%のメタノールとの混合物を約30%含有する。
【0033】
電気化学的検出器(ECD)は、マクロライドの酸化または還元を誘導および検出し得る任意の適切な検出器であり得る。適切なECDの一つの例としては、3つの電極:ガード電極またはセル、スクリーニング電極および作用電極を用いるECDが挙げられる。作用電極は、例えば、白金電極またはガラス状の炭素電極であり得る。電極のキャリブレーションは、当業者に公知の任意の標準的な手段によって行なわれ得る。いくつかの実施形態において、ECDは、マクロライドの検出および付随的な不純物のこの不純物の酸化による検出のために設定される。例えば、作用電極は、サイクリックボルタンメトリーのような種々の公知の方法のいずれかによって決定され得るように、マクロライドを酸化するのに適した電位に設定され得る。作用電極に適した電位としては、約700mVより高い電位、約750mVより高い電位および約800mVより高い電位が挙げられる。いくつかの実施形態において、作用電極は、約800mV〜約900mVの電位を有する。さらなる実施形態において、作用電極は、約850mVの電位を有する。ガード電極および照合電極のための電位は、当業者により容易に決定され得る。例えば、ガード電極は、約1000mVの電位を有し得、照合電極は、作用電極の電位より低い電位(例えば、約−100mV〜約100mV)を有し得る。いくつかの実施形態において、照合電極は、約0mVの電位を有する。
【0034】
質量分析(MS)検出器としては、マクロライドの質量/電荷の比を検出および決定し得る任意のMS検出器が挙げられ得る。適切なMS検出器は、例えば、多くの市販のLC−MS機器と組合せて広く利用可能であり、マクロライドのような有機化合物の検出におけるその使用は、当該分野では、日常的である。いくつかの実施形態において、マクロライドおよび付随する任意の不純物の検出は、MS検出器をポジティブモードで用いて実施され得る。イオン化は、エレクトロスプレー(electrospray)または他の手段を含む任意の適切な方法によって行なわれ得る。適切なMSパラメーターとしては、約150℃〜約200℃(例えば、約180℃)のキャピラリー温度および約300℃〜約400℃(例えば、約350℃)に設定した蒸発器が挙げられる。
【0035】
本発明の方法およびシステムに従ったマクロライドの溶出は、室温および大気圧を含む種々の温度および圧力下で実施され得る。いくつかの実施形態において、溶出は、約10℃〜約30℃、約15℃〜約25℃または約20℃の一定温度で行われる。温度は、カラムにこのような適用のために設計された冷却装置を備えることによって室温以下に維持され得る。逆に、温度は、カラムにこのような適用のために設計された加熱装置を備えることによって室温より高く維持され得る。溶出は、空気下、または不活性な雰囲気下でも行なわれ得る。
【0036】
マクロライドの検出は、マクロライドに対応すると考えられるピークを含む、本発明のアッセイに従って得られたクロマトグラムを、マクロライドの既知のサンプルに対する参照ピークを示す、同じ条件下で流したクロマトグラムと比較することにより確認され得る。例えば、参照ピークの約0.2分以内に出現するサンプルピークは、確認されたとみなされ得る。サンプル中のマクロライドの量はまた、マクロライドに対応するピークの面積を既知の量のマクロライドを含む参照サンプル(標準)について得られたクロマトグラムのピークの面積と比較することにより定量され得る。
【0037】
本発明は、試験サンプルの純度を決定する方法をさらに提供する。この方法は、a)サンプルを逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに流して、揮発性緩衝液、水、アセトニトリルおよびアルコールを含有する勾配移動相で溶出する工程を包含する。流出液は、i)マクロライドに対応するピーク電流;およびii)必要に応じてサンプル中の一種以上の不純物に対応する一種以上のさらなるピーク電流(例えば、マクロライドに起因するピーク面積の約0.05%以上のピーク面積を有するピーク電流)を検出するために、電気化学的検出器によりモニタリングされる。次いで、ピーク電流の特徴は、不純物の含有量を計算するために評価される(例えば、不純物の含有量(純度)を評価および計算するために、ピーク面積またはピークの高さの比のパーセントが使用され得る)。いくつかの実施形態において、ピーク電流の面積は、マクロライドとともにそれぞれ検出された不純物について決定され、そのぞれぞれの全ピーク面積のパーセントが計算される。
【0038】
サンプル中の不純物は、例えば、本発明のHPLC−MS法により得られたクロマトグラムの不純物に対応するピークの面積を決定することにより同定され得る。
【0039】
(HPLC−UVによるマクロライド不純物の定量)
上記のHPLC−MSアッセイおよび/またはHPLC−ECDアッセイにより試験サンプル中で同定された不純物は、光度検出を備えるHPLCアッセイ(HPLC−UVアッセイ)を用いて定量され得る。
【0040】
HPLC−UVアッセイのための適切な移動相組成物は、所望のマクロライドを効率的に溶出する液体成分の任意の組合せであり得、潜在的な不純物からのマクロライドの分離を可能にし、検出波長でのマクロライドの光度検出を可能にする。いくつかの実施形態において、移動相は、約205nmより上でごくわずかな吸光度(例えば、1cmのパス長にわたって分光光度計により測定される)を有する。「ごくわずかな」とは、約0.02以下の吸光度を意味する。さらなる実施形態において、移動相は、検出波長において、約0.5未満、約0.3未満または約0.1未満の吸光度(例えば、1cmのパス長にわたって分光光度計により測定される)を有する。
【0041】
HPLC−UVアッセイの移動相は、水、有機溶媒またはこれらの混合物を含有し得る。水に混和性であり、検出波長では、マクロライドの検出を妨害しない任意の適切な有機溶媒が使用され得る。いくつかの実施形態において、この有機溶媒は、アセトニトリルである。この移動相は、0%(v/v)〜100%(v/v)の水および0%(v/v)〜100%(v/v)の有機溶媒を含有し得る。いくつかの実施形態において、この移動相は、約5%(v/v)〜約75%(v/v)、約10%(v/v)〜約60%(v/v)または約20%(v/v)〜約50%(v/v)の有機溶媒を含有する。
【0042】
HPLC−UVアッセイの移動相は、さらに溶媒を所望のpHに安定させるために緩衝液を含有し得る。検出波長では、マクロライドの検出を妨害しない任意の緩衝液が使用され得る。いくつかの実施形態において、この緩衝液は、リン酸緩衝液または硫酸緩衝液である。さらなる実施形態において、緩衝液は、硫酸緩衝液である。緩衝液濃度は、例えば、約0.1mM〜約1000mMであり得る。いくつかの実施形態において、緩衝液濃度は、約1mM〜約500mM、約5mM〜約100mM、または約10mM〜約30mMである。マクロライドが、本発明の方法およびシステムにより検出され得るように十分に安定である任意のpHが適している。いくつかの実施形態において、pHは、約1〜約4である。さらなる実施形態において、pHは約3である。
【0043】
いくつかの実施形態において、移動相は、イオン対試薬(例えば、逆相カラム上でマクロライドの保持を促進する塩)を含有する。移動相溶液中で適度に安定であり、マクロライドの荷電した形態(例えば、プロトン化したか、または脱プロトン化した形態)とイオン対を形成し得、そしてマクロライドの溶出または検出を妨害しない任意のイオン対試薬が、適している。種々の適切なイオン対試薬が市販されており、それを使用するHPLC技術は、当該分野で周知である。イオン対試薬のいくつかの例としては、(C〜C12アルキル)スルホネート塩などのアルキルスルホネート塩(1−オクタンスルホネートナトリウムが挙げられる)が挙げられる。移動相中のイオン対試薬の濃度は、約0.1mM〜約1000mMであり得る。いくつかのさらなる実施形態において、イオン対濃度は、約1mM〜約500mM、約5mM〜約100mMまたは約10mM〜約30mMである。いくつかの実施形態において、イオン対濃度は、約12mM〜約15mMである。
【0044】
移動相は、均一濃度溶出液または勾配溶出液としてHPLCカラムを通って流れ得る。勾配移動相が適用される実施形態において、移動相は、二種以上の異なる溶出溶液の混合物からなり得、その比率は、溶出の時間の経過によって変動する。例えば、移動相は、溶出の間に、種々の量の水、有機溶媒、緩衝液およびイオン対試薬を含有し得る。成分の量における変動は、勾配移動相が溶出の過程の間の検出波長における実質的に一定の吸光度を維持するように調整され得る。成分の量における変動はまた、ピークの形状、溶出時間、不純物からのマクロライドの分離および他のパラメーターを最適化するために、調節され得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、HPLC−UVアッセイの移動相組成物は、それぞれ異なる量の水、有機溶媒、緩衝液およびイオン対試薬を含有する二つの溶出溶液の一方または混合物で溶出することにより変動し得る。いくつかの実施形態において、一番目の溶出溶液は、約10%(v/v)〜約30%(v/v)の有機溶媒、約70%(v/v)〜約90%(v/v)の水、約10mM〜約20mMのイオン対試薬および約10mM〜約15mMの緩衝液を含有し、二番目の溶出溶液は、約40%(v/v)〜約60%(v/v)の有機溶媒、約40%(v/v)〜約60%(v/v)の水、約8mM〜約15mMのイオン対試薬および約8mM〜約12mMの緩衝液を含有する。さらなる実施形態において、一番目の溶出溶液は、約20%(v/v)の有機溶媒、約80%(v/v)の水、約15mMのイオン対試薬および約13mMの緩衝液を含有し、二番目の溶出溶液は、約50%(v/v)の有機溶媒、約50%(v/v)の水、約12mMのイオン対試薬および約10.5mMの緩衝液を含有する。溶出の間の任意の時点で、移動相は、二つの溶出溶液の一方の100%からなり得るか、またはこの二つの混合物からなり得る。
【0046】
HPLC−UVアッセイの固定相は、移動相と組合せて、マクロライドの検出およびマクロライドの潜在的な不純物からの分離を可能にする任意の逆相固体支持体媒体からなり得る。いくつかの実施形態において、固定相は、C8〜C18のマトリックスを含む。さらなる実施形態において、固定相は、C18マトリックスである。
【0047】
サンプルは、カラムへの導入のために希釈されて、希釈サンプルを形成し得る。希釈サンプルは、約1mg/mL〜約10mg/mLのマクロライド濃度を有し得る。サンプル希釈液は、Bis−Tris(例えば、約20mM〜約100mM、約30mM〜約70mMまたは約50mMのBis−Tris)により緩衝された水からなり得、約6〜約8、または約7のpHを有し得る。
【0048】
カラムからの流出液をモニタリングするUV検出器は、液体サンプルが吸収するUV波長または液体サンプルを透過するUV波長を検出し得る任意の分光光度計を備え得る。この検出器は、溶出の間に一定であり得る検出波長に調整され得る。いくつかの実施形態において、流出液は、約190nm〜約210nmの波長、約197nm〜約205nmの波長または約200nmの波長でモニタリングされる。いくつかの実施形態において、検出波長は、約200nmである。
【0049】
上記のHPLC−MSアッセイおよび/またはHPLC−ECDアッセイにより同定された各不純物に対するUV応答因子(検出波長で標準化された不純物のマクロライドに対するピーク面積比)は、既知の不純物量を含有する参照サンプルおよび高純度の既知の量のマクロライドを含有する参照サンプルに対して上記HPLC−UVアッセイを行なうことにより決定され得る。例えば、不純物に対する応答因子は、以下の等式A、BおよびCに従って計算され得る。
【0050】
応答因子=(標準化した不純物のピーク面積)/(標準化したマクロライドのピーク面積) (A)
ここで、
標準化した不純物のピーク面積=(不純物のピーク面積)×(純度%)/(不純物の濃度) (B)
標準化したマクロライドのピーク面積=(マクロライドのピーク面積)×(純度%)/(マクロライドの濃度) (C)。
【0051】
未知の量の不純物を含有する試験サンプル中の不純物の量は、本明細書中に記載のHPLC−MSアッセイまたはHPLC−ECDアッセイを使用して不純物を同定し、その後、同定された不純物の参照サンプルおよびマクロライドの参照サンプルに対して上記HPLC−UVアッセイを行ない、上記のHPLC−UVアッセイに従って試験サンプルをアッセイし、試験サンプル中の不純物の量を計算するために計算された応答因子を使用して同定された不純物に対する応答因子を計算することによって決定され得る。
【0052】
(システム)
上記の構成要素の集合を含むシステムもまた本発明に包含される。例えば、本発明のシステムは、a)以下、i)逆相固体支持体マトリックスを含む固定相;およびii)上記の移動相を含む逆相高速液体クロマトグラフィーカラム(RP−HPLC);ならびにb)電気化学的検出器または質量分析検出器を備え得る。
【0053】
本発明に従ってHPLCアッセイを適用し、最適化するためのさらなるパラメーターは、例えば、Snyderら、Practical HPLC Method Development、第2版、Wiley、New York、1997(その開示は、本明細書中にその全体が参考として援用される)のような文献に明らかにされるように、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0054】
本発明は、特定の実施例により、より詳細に記載される。以下の実施例は、例示目的で提供され、どのような形ででも本発明を制限することを意図しない。当業者は、本質的に同じ結果を生じるように変化または改変され得る種々の重要ではないパラメーターを容易に認識する。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
(9−(S)−エリスロマイシルアミンの電気化学的検出および質量分析検出のためのHPLCパラメーター)
9−(S)−エリスロマイシルアミンサンプルのHPLC分析を、以下のパラメーターに従って実施した。パーセントは、体積パーセントである。
【0056】
(機器)
Waters 2690 HPLCポンプ
ESA Model 5200A Coulochem II 電気化学的検出器
ESA Model 5010 分析用セル
ACE C18 HPLCカラム(150×4.6mm、3μm、MAC−MOD、P/N#ACE−111−1546)
Finnigan SSQ7000またはJEOL LC−Mate 質量分析計システム。
【0057】
(移動相)
溶出液A:0.22μmのフィルターを通して減圧ろ過した水中の0.0671M酢酸アンモニウム(pH7.04)
溶出液B:57.6体積%のアセトニトリルと42.4体積%のメタノール中の0.0671M酢酸アンモニウム(0.22μmフィルターを通して減圧濾過)
サンプル希釈液:C18ディスクで精製したミリQ水を71%と、57.6%のアセトニトリルと42.2%のメタノールとの混合物を29%。
【0058】
(標準およびサンプルの調製)
9−(S)−エリスロマイシルアミン標準溶液および0.8〜0.9mg/mLのサンプル溶液を、サンプル希釈液を用いて50.00mLのメスフラスコに調製した。
【0059】
(カラムパラメーター)
流速:1mL/分
カラム温度:40℃
ECDの注入体積:10μL
MSの注入体積:50μL
適用時間:60分間
【0060】
【表1】


【0061】
(電気化学的検出パラメーター)
ガードセル:1000mV
電極1:0mV
電極2:850mV
ノイズフィルター:5秒間
範囲:50μA。
【0062】
(質量分析計検出パラメーター)
APCIポジティブ様式
キャピラリー温度:180℃
蒸発器温度:350℃。
【0063】
(実施例2)
(異なるロットの9−エリスロマイシルアミンのHPLC分析)
異なる製造供給元の9−(S)−エリスロマイシルアミンのサンプルを、実施例1に記載されるパラメーターに従って質量分析計もしくは電気化学的検出のどちらかまたはその両方を使用してHPLCにより分析した。仮の構造の指定を質量に基づいて行い、対応する構造を図1および図2に提供する。文字「ND」は、「検出されなかった」ことを示す。
【0064】
(表2 9−(S)−エリスロマイシルアミンのロット36188CA00および6E0101の対するHPLC−MSのデータおよびHPLC−ECDのデータ)
【0065】
【表2】


【0066】
(表3 9−(S)−エリスロマイシルアミンのロット(S)AE/ii32/56および3535に対するHPLC−MSのデータおよび電気化学的検出器(ECD)のデータ)
【0067】
【表3】


【0068】
(表4 9−(S)−エリスロマイシルアミンのロット6E0201およびPDC325/Vd070202に対するHPLC−MSのデータおよび電気化学的検出器(ECD)のデータ)
【0069】
【表4】


【0070】
(表5 9−(S)−エリスロマイシルアミンのロットPD2012/WRS/328/016および10006647に対するHPLC−MSのデータ)
【0071】
【表5】


【0072】
(実施例3)
(9−(S)−エリスロマイシルアミンのサンプル中の不純物の同定および定量)
以下の手順に従って、6個のマクロライド不純物(表6および上記式VI〜XIを参照のこと)は、夾雑物であると考えられ、APIとして使用するための9−(S)−エリスロマイシルアミンのバッチ中の存在または非存在について確認した。検出された不純物の量もまた定量した。
【0073】
(表6)
【0074】
【表6】

上記6個の不純物と考えられるそれぞれの参照サンプルおよび9−(S)−エリスロマイシルアミンを、Alembic,Inc(India)から購入し、その構造を、FT−IRおよびHPLC−MSにより確認した。その手順は、実施例1に記載の手順に従って行なった。約2mgの参照サンプルと約100mgの乾燥KBrを瑪瑙の乳鉢中で混合し、微細な粉末に粉砕することによりFT−IRサンプルを調製した。この粉末を11mmのペレットの型に装填し、減圧下で圧縮した。4cm−1で16回スキャニングすることによりIRスペクトルを得た。IRスペクトルおよびMSのデータは、表6の6個の化合物のそれぞれと一致していた。
【0075】
上記6個の考えられる化合物のそれぞれに対する応答因子を、以下の手順により決定した。6個の考えられる化合物のそれぞれの参照サンプルを、以下に示すHPLC−UVパラメーターに従って光度検出を用いてHPLCによりアッセイした。
【0076】
(機器)
製造業者の指示書に従って操作した以下の装置を使用してHPLCクロマトグラムを得た。同等の性能を有する装置を代用し得る。
【0077】
減圧脱気装置:Waters 2690
ポンプ:Waters 2690
インジェクター:Waters 2690
・針の洗浄用としてアセトニトリルと水との50:50(体積)混合物
・100μLのインジェクションループ
プレカラム:ODSカートリッジを備えるPhenomenex Security Guard(P/N AJO−4287)
カラム:Phenomenexカラム、C18(2)、150mm×4.6mm、5μm(P/N 00F−4252−E0)
・カラムを、カラムのラベルに指示されるとおりに溶出液の流れの向きに設置し、20±1℃に維持されたJonesクロマトグラフィーカラム冷却装置/加熱装置内に配置した
・使用していないときには、カラムを70:30(v/v)のアセトニトリル:水中に保存した
検出器:Waters 2487二重波長検出器
・波長=200nm
カラム冷却装置:Jonesクロマトグラフィーモデル 7955
・温度を20±1℃に設定した
データシステム:Perkin−Elmer Nelson Turbochromデータシステム、バージョン6.2.1。
【0078】
(作用溶液)
(サンプル希釈液)
50mM Bis−Tris (Sigma)pH 7.4。
【0079】
(溶出液A)
20%アセトニトリル(HPLCグレード、Fisher)
15mM 1−オクタンスルホネートナトリウム(Fluka)
13mM NaSO(Sigma)
pH3.1。
【0080】
(溶出液B)
50%アセトニトリル(HPLCグレード、Fisher)
12mM 1−オクタンスルホネートナトリウム(Fluka)
10.5mM NaSO(Sigma)
pH3.1。
【0081】
(HPLC分析)
サンプル分析を以下のパラメーターの下で行なった:
流速:1.0mL/分
注入体積:20μL
適用時間:40分間
波長:200nm
サンプル濃度:0.5mg/mL。
【0082】
データシステムを、40分間の取得時間で1ポイント/秒を得るように設定した。
勾配移動相を、以下の表Aに従って適用した。
【0083】
(表A)
【0084】
【化7】


【0085】
各不純物の参照サンプルに対する標準化したピーク面積および9−(S)−エリスロマイシルアミンの参照サンプルに対する標準化したピーク面積を、式(D)を用いて計算し、応答因子を、式(E)を用いて計算した。面積1は、一番目の注入のピーク面積であり、面積2は、二番目の注入のピーク面積である。
【0086】
標準化したピーク面積=(面積1+面積2)/2×(純度%)/濃度(mg/mL) (D)
応答因子=(不純物の標準化したピーク面積)/(9−(S)−エリスロマイシルアミンの標準化したピーク面積) (E)。
【0087】
6個の不純物と考えられるそれぞれに対する計算した応答因子を、9−(S)−エリスロマイシルアミンに対する応答因子とともに以下の表7に示す。
【0088】
(表7)
【0089】
【表7】

9−(S)−エリスロマイシルアミンの試験サンプル中の6個の不純物それぞれの量を、試験サンプルを上記のHPLC−UVカラムに流し、表7の応答因子を使用することにより決定した。結果を以下の表8に示す。9−(R)−エリスロマイシルアミンは、検出可能な量では、観察されなかった。
【0090】
(表8)
【0091】
【表8】

明瞭性のために別個の実施形態の文脈で記載される本発明の特定の特徴はまた単一の実施形態中で組合せて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔性のために単一の実施形態の文脈で記載される本発明の種々の特徴はまた、別個にまたは任意の適切なより小さな組合せで提供され得る。
【0092】
本明細書中に記載される改変に加えて本発明の種々の改変は、前述の記載から当業者には明らかである。このような改変はまた、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。本出願に引用した各参考文献は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1および図2は、本発明の方法およびシステムに従って検出、同定および定量化され得る9−(S)−エリスロマイシルアミンの可能性のある不純物を示す。
【図2】図1および図2は、本発明の方法およびシステムに従って検出、同定および定量化され得る9−(S)−エリスロマイシルアミンの可能性のある不純物を示す。
【図3】図3は、9−(S)−エリスロマイシルアミンの合成の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験サンプルの重量による主要な成分がマクロライドである試験サンプル中のマクロライドを検出する方法であって、該方法は、以下:
a)該試験サンプルを逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用する工程;
b)該試験サンプルを、揮発性緩衝液、水、アセトニトリルおよびアルコールを含有する勾配移動相で溶出する工程;ならびに
c)該カラムからの流出液を電気化学的検出器または質量分析検出器を用いてモニタリングして、該マクロライドに対応するピーク電流または質量ピークをそれぞれ検出する工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記マクロライドが9−(S)−エリスロマイシルアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マクロライドが、約180nm〜約220nmの紫外光−可視光の範囲で最大の吸収を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記揮発性緩衝液が酢酸アンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記移動相が約6〜約8のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アルコールがメタノールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記移動相が、溶出液Aと溶出液Bとの混合物を含み、その相対的な量は、溶出の過程の間に変動し、ここで、溶出液Aは本質的に、水中約60mM〜約75mMの酢酸アンモニウムからからなり、溶出液Bは本質的に、約50体積%〜約70体積%のアセトニトリルと約30体積%〜約50体積%のメタノールとの混合物中の約60mM〜約75mMの酢酸アンモニウムからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試験サンプル中の前記マクロライドの電流のピークの面積または高さを、参照標準と比較することにより該マクロライドの量を定量する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
試験サンプルの重量による主要な成分がマクロライドである試験サンプルの純度を決定する方法であって、該方法は、以下:
a)該試験サンプルを逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用する工程;
b)該試験サンプルを、揮発性緩衝液、水、アセトニトリルおよびアルコールを含有する勾配移動相で溶出する工程;
c)該カラムからの流出液を電気化学的検出器を用いてモニタリングして、
i)該マクロライドに対応するピーク電流;および
ii)必要に応じて、該試験サンプル中の一種以上の不純物に対応する一種以上のさらなるピーク電流;
を検出する工程;ならびに
d)該試験サンプル中の不純物含有量を計算するために、該検出器によって検出された一つ以上のピーク電流の特徴を測定する工程;
を包含する、方法。
【請求項10】
前記測定する工程が、以下:
i)検出された不純物および前記マクロライドのそれぞれに対する電流のピーク面積を決定する工程;および
ii)該マクロライドに起因する全電流のピーク面積のパーセントを計算する工程;
によって行なわれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
試験サンプルの重量による主要な成分がマクロライドである試験サンプル中の不純物を同定する方法であって、該方法は、以下:
a)該試験サンプルを逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用する工程;
b)該試験サンプルを、揮発性緩衝液、水、アセトニトリルおよびアルコールを含有する勾配移動相で溶出する工程;
c)該カラムからの流出液を質量分析検出器を用いてモニタリングして、以下:
i)該マクロライドに対応する質量ピーク;および
ii)さらに該試験サンプル中の該不純物に対応するさらなる質量ピーク;
を検出する工程;ならびに
d)該不純物に対応するさらなる質量ピークの質量を決定する工程;
を包含する、方法。
【請求項12】
前記マクロライドが9−(S)−エリスロマイシルアミンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記不純物がマクロライドである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記不純物が、以下:
エリスロマイシンB;
エリスロマイシンヒドラゾンB;
9−イミノエリスロマイシンB;
エリスロマイシルアミンB;
エリスロマイシンヒドラゾンアセトン付加物;
9−ヒドロキシイミノエリスロマイシン;
エリスロマイシルアミン水酸化物;
9−ヒドロキシイミノエリスロマイシンB;
エリスロマイシルアミンB水酸化物;
9−(R)−エリスロマイシルアミン;
エリスロマイシルアミンC;
エリスロマイシルアミンD;または、
以下の式:
【化1】

を有する化合物;
である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記不純物が、式VI、VII、VIII、IX、XまたはXI:
【化2】

の化合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
試験サンプルの重量による主要な成分がマクロライドである試験サンプル中の不純物の量を決定する方法であって、該方法は、以下:
a)請求項11に記載の方法に従って該不純物を同定する工程;
b)以下:
i)既知の量の該不純物および既知の量の該マクロライドを、約180nmと約220nmとの間の検出波長を有する紫外光(UV)検出器を備えた逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用する工程;
ii)既知の量の該不純物を、イオン対試薬を含有する移動相で溶出する工程;
iii)カラム流出液を該UV検出器を用いてモニタリングして該検出波長にて一番目の吸収ピークを検出する工程であって、該一番目の吸収ピークが該不純物に対応する、工程;
iv)該カラム流出液を該UV検出器を用いてモニタリングして該検出波長にて二番目の吸収ピークを検出する工程であって、該二番目の吸収ピークが該マクロライドに対応する、工程;および
v)該不純物の応答因子を、該一番目の吸収ピークおよび該二番目の吸収ピークのピーク面積を使用して計算する工程;
を包含する方法によって該不純物に対する応答因子を決定する工程;
c)以下:
i)工程b)と同じアッセイ条件下で該試験サンプルを流して該不純物に対応する三番目の吸収ピークを検出する工程;および
ii)該応答因子を使用して該試験サンプル中の該不純物の量を計算する工程;
を包含する方法によって該試験サンプル中の該不純物の量を決定する工程;
を包含する、方法。
【請求項17】
前記不純物が、式VI、VII、VIII、IX、XまたはXI:
【化3】

の化合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
9−(S)−エリスロマイシルアミンの試験サンプル中の不純物を検出するためのシステムであって、以下:
a)以下:
i)C18カラム;
ii)溶出液Aおよび溶出液Bの混合物を含む勾配移動相であって、その相対的な量は、溶出の過程の間に変動し、ここで溶出液Aは本質的に、水中約60mM〜約75mMの酢酸アンモニウムからなり、溶出液Bは本質的に、約50体積%〜約70体積%のアセトニトリルと約30体積%〜約50体積%のメタノールとの混合物中の約60mM〜約75mMの酢酸アンモニウムからなる、勾配移動相;
を含む逆相高速液体クロマトグラフィーカラム;
b)ガード電極、スクリーニング電極および作用電極を備える電気化学的検出器、または質量分析検出器
を備える、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−536526(P2007−536526A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511690(P2007−511690)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/016104
【国際公開番号】WO2005/108984
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)