説明

マクロライドを精製する方法

マクロライドを精製するための方法が提供されており、ここでマクロライドの負荷充填物は、ぬれた吸着樹脂の床と並列して配置され、負荷充填物は、THF、アセトニトリル、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、及びアセトンから成る群から選択された有機溶媒による溶出により30℃未満の温度で溶出され、溶出物のヒートカットが回収されそして精製されたマクロライドが回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロライド、特にタクロリムス、アスコマイシン、シロリムス、エベロリムス、又はピメクロリムスを、約30℃超の溶出温度において吸着樹脂を使用する分離方法によって精製する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本願は、2004年12月22日に提出された米国仮出願第60/638,628号、及び2004年12月23日に提出された米国仮出願第60/638,815号の優先権を主張し、それらの内容は全体を参照よって組み込まれている。
【0003】
発明の背景
マクロライドは、基質として1又は複数のデオキシ糖を有する多員ラクトン環である。エリスロマイシン、アジスロマイシン、及びクラリスロマイシンは、静細菌性及び/又は殺細菌活性を有するマクロライドである。
【0004】
タクロリムス(FK506)も、免疫抑制剤としても働くマクロライド抗生物質である。タクロリムスは、T−リンパ球に対してシクロスポリンよりも一層有力な選択的阻害効果を有することが報じられている。
【0005】
ピメクロリムスは、T−細胞及びマスト細胞による炎症前サイトカインの誘導を阻害することが報じられているマクロラクタム及びアスコマイシンである。Merck Index 1331(Maryadele J. O'Neilら著、第13版、2001)。ピメクロリムスは免疫抑制剤として使用されることが報じられている。
【0006】
他のマクロライドのシロリムスは、免疫抑制剤であることが報じられている。シロリムスは、シクロスポリン及びコルチコステロイド共に、移植後、移植片拒絶を避けるために投与されてきた。Martindale:The Complete Drug Reference 568 (Sean C. Sweetman著、 Phrmaceutical Press 第33版、2002)。
【0007】
シロリムスの誘導体である、エバロリムスは、器官移植において使用される免疫抑制剤であることが報じられている。Martindale、539。
【0008】
マクロライドは典型的に発酵によって獲得されるが、合成経路もいくつか知られている。マクロライドは、獲得された場合、典型的に、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)などの様々な手段によって検出されて良い不純物を含む。医薬化合物中の不純物の存在は望ましいことではなく、健康に関する多くの管轄当局(例えば、米国医薬食品局)は、医薬における不純物の許容できるレベルに関するガイドラインを確立している。全ての医薬において不純物のレベルを下げることの必要性及び商業上の有益性は自明である。
【0009】
例えば、米国特許第4,894,366号、6,576,135号、6,881,134号及び6,492,513号は、タクロリムスの精製方法を開示する。マクロライドを精製するための他の一層効率的な方法に関する要請がある。
【発明の開示】
【0010】
本発明は一つの実施態様において、マクロライドを精製するためのクロマトグラフィーによる方法を提供する。本方法は、マクロライドの装填充填物(loading charge)を提供し、マクロライドの装填充填物を吸着樹脂の床に装填して、THF、アセトニトリル、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、及びアセトン及び水から成る群から選択される少なくとも1つの有機溶媒を含む溶出物を、約30℃超の温度〜溶媒の沸騰する温度で溶出せしめて流出物を獲得し、流出物の主画分を収集し、そしてマクロライドを回収することを含んで成る。
【0011】
他の観点において、本発明は、上記方法によって調製したマクロライド、特に、タクロリムス、アスコマイシン、シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムス、及びピメクロリムスに関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用された場合、「減圧」とは、約760mmHg未満の圧力を意味する。そしてまた、用語「エリア%」とは、本発明の方法によって獲得されるHPLCクロマトグラムのエリア%を意味する。
【0013】
本明細書中で使用された場合、用語「アンチ溶媒」とは、周囲温度において通常液体の物質を意味し、ここにおいてマクロライドは最も溶けにくい。
【0014】
本明細書中で使用された場合、用語「不純物」とは、所望のマクロライドとは異なるリテンションタイムを有する全ての化合物を意味する。異なるリテンションタイムは、例えば、本明細書中下に記載のHPLC法によって測定されて良い。
【0015】
本明細書中で使用された場合、用語「RRT0.95」及び「RRT1.25」とは、それぞれアスコマイシン及びジヒドロタクロリムスを意味し、それらはタクロリムスの不純物であり、下に記載のように、HPLC分析において約0.95及び1.25の相対リテンションタイム(タクロリムスに対して)を有する。
【0016】
液体の混合物又は組み合わせとの関係おいて本明細書中で使用された場合、用語「体積%」又は「体積による%」(vol.%)とは、以下のようにして計算した体積画分を意味する(物質Aについて説明した)。
【0017】
vol%A=WtA×ρA/(WtA×ρA + WtB×ρ
(式中、WtA及びρAは、それぞれ物質A及びBの重量(g)であり、そしてρA及びρBは密度(物質A及び物質Bのg/ml)である)。
【0018】
マクロライドから不純物を約30℃超〜溶媒(溶出物に含まれる)の約沸騰する温度において分離するためのクロマトグラフィー法を適用することによって、より良い純度が達成されうる。
【0019】
一つの実施態様において、本発明はマクロライドを精製するためのクロマトグラフィー法(即ち、マクロライドの不純物のレベルを下げるための)を供する。当該方法は、マクロライドの装填物を提供し、マクロライドの充填負荷物を吸着樹脂の床に装填して、THF、アセトニトリル、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、及びアセトン及び水から成る群から選択される有機溶媒を少なくとも1つ含む溶出物を約30℃超の温度〜溶媒の沸騰する温度で溶出せしめて流出物を獲得し、流出物の主画分を収集し、そしてマクロライドを回収することを含んで成る。
【0020】
本発明を実施するための好適なマクロライドには、タクロリムス、アスコマイシン、シロリムス、エベロリムス、及びピメクロリムスが含まれる。タクロリムスがマクロライドである場合、減らされる不純物には少なくともタクロリムス(RRT1.19)及びジヒドロタクロリムスのアスコマイシン異性体を含み、そのHPLCによる定量化は、本明細書中以下に記載されている。アスコマイシンがマクロライドである場合、減らされる不純物には少なくともタクロリムスが含まれる。使用されるマクロライドは、任意の源に由来しうる。
【0021】
本発明の実施において有用な吸着樹脂は、周知であり且つ好適に非架橋、非イオン性スチレン−ジビニルベンゼン物質であるが、化学的に修飾されて良い。アクリル型の吸着樹脂も公知である。吸着樹脂は非常に多孔質の構造を有し且つその表層は、様々な化学物質を吸着、次いで脱着することができる。吸着及び脱着は、環境、例えば使用される溶媒によって影響される。極性溶媒(例えば、水)の存在下で、吸着樹脂は疎水性挙動を示す。非極性溶媒が使用される場合(例えば、炭化水素)、吸収樹脂はいくらか疎水性挙動を示しうる。典型的に、吸収樹脂は、マクロ網状構造及び約300m2/g以上の表層領域を有する。
【0022】
本発明の実施において有用な吸収樹脂には、Rohm and Hassから入手可能である例えば、AMBERLITE(登録商標)XRD;XRD4、XRD7HP、XAD16HP、XAD761、及びXAD1180が挙げられる。そしてまたMitsubishiから入手可能な例えば、DIAION(登録商標)吸着樹脂;HP10、HP20、HP21、HP30、HP40、HP50、SP800、SP825、SP850、SP875、SP205、SP206、SP207、HP1MG及びHP2MGが挙げられる。AMBERLITE(登録商標)XRD1180は、本発明の実施において有用な好適な吸着樹脂の例である。AMBERLITE(登録商標)XAD1180は、網状架橋芳香族ポリマーである。それは、非イオン性、疎水性、架橋ポリマーであり、それは、吸着特性をその特許されたマクロ網状構造(連続ポリマー相及び連続孔相の両方を含む)、高表層領域、及びその表層の芳香性を誘導する。表層領域は500m2/g以上である。多孔性は、0.60ml/ml以上である。PDS0205A-Jan.98-1/2によりこの樹脂に関して更なる情報が得られる。
【0023】
負荷充填物は、有機溶媒中のもしくは水と組み合わせた有機溶媒中のマクロライドの溶液として、又は吸着樹脂の負荷部分上へ吸着されるマクロライドであるマクロライド負荷充填部分として提供されて良い。
【0024】
マクロライドの負荷充填物が、吸着樹脂の床へ充填される前に吸着樹脂の充填部分へと吸着(沈着)される場合、吸着には、有機溶媒中でマクロライドの溶液を調製すること、任意に水を含むこと、そして溶液と吸着樹脂及び水の部分を組み合わせることが含まれる。吸着樹脂は、床を調製するために使用されるものと同じであって良い、又は異なる吸着樹脂であって良い。吸着樹脂の負荷部分は、床の体積の約33%〜50%でありうる。吸着樹脂上へのマクロライドの吸着が実質上完了した後、負荷充填物は、残りの溶液から分離される。分離はろ過によって行われて良い。負荷充填物を調製するための再循環カラム法が使用される場合、カラムは単に当該再循環系から分離される。
【0025】
溶液であって、そこから負荷充填物が充填又は沈着させられる溶液を調製するために使用される有機溶媒は、好適に、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、アセトニトリル(ACN)、メタノール、エタノール、n−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エステル(例えば、酢酸エチル)、及び双極性非プロトン溶媒の例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)から成る群から選択される。最も好適に、周囲溶液温度において、有機溶媒は、THF、アセトン又はACNである。
【0026】
水の添加により溶媒:水の比が下がり、従って、吸着樹脂上のマクロライドの吸着が増加する。
【0027】
マクロライド溶液の負荷充填物の組み合わせ、吸着樹脂の負荷部分、及び水は、撹拌器を備えた任意の都合良い容器でありうる(例えば、撹拌タンクリアクター)。
【0028】
例えば、周囲温度において、マクロライドがタクロリムスである場合、溶液は約100g/lであって良く且つアンチ溶媒の体積は、溶液の体積の5倍以上でありうる。しかし、より高い溶出温度において、精製のために必要な溶媒の量は減らされる。吸着樹脂の負荷部分のかさ体積は、溶液の体積とほぼ等しくて良い。当業者は、所定の実験により、吸着樹脂の負荷部分へマクロライドの吸着を達成するように割合を最適化することを知るだろう。
【0029】
この実施態様の後の段階において、マクロライド負荷部分は、ぬれた吸着樹脂の調製された床に並列させられている。この床は、適切な容器中閉じ込められている。好適に、床はカラム内に閉じ込められており、好適に環状断面のカラム内に閉じ込められている。床を調製するために、所望量の吸着樹脂が水又は水と溶媒(例えば、THF、CNF、メタノール、アセトンなど)の混合物でスラリー状にされている。水−溶媒組合は、床がより大きな直径を有するようにされる場合に有利である。次いで、スラリーは所望の容器、好適に、例えばカラムクロマトグラフィーで使用するためのような円筒カラムへ移される。水(又は水−溶媒組み合わせ)は、ぬれた吸着樹脂の床を離れるように流される。クロマトグラフィーカラムの調製及び充填(packing)の実際は、当業者に明らかであり且つ公知の実施は、本発明の実施に容易に適用される。
【0030】
負荷部分は、ぬれた吸収樹脂の床に、単なる層として、並列されて良い。負荷充填物が再循環系で調製される場合、負荷充填物を含有する容器は、ぬれた吸着樹脂の床を維持する容器へ、流体連絡を確立するような任意の手段で連結されて良い。
【0031】
マクロライド中の不純物のレベルが下がるような、マクロライド(例えば、タクロリムス、アスコマイシン、シロリムス、エベロリムス、又はピメクロリムス)と不純物の分離は、溶出物を負荷充填物へ通しそしてその後それに並列且つ流体連絡した吸着樹脂の床を通すことによって行われる。任意に、溶離液は、方法の第一段階においてマクロライドを溶解させるために使用される溶媒の群から選択される更なる有機溶媒を含んで成る。
【0032】
負荷充填物が有機溶媒中、又は水と組み合わせた有機溶媒中のマクロライドの溶液として提供された場合、溶液は、ぬれた吸着樹脂の調製された床へ注入され、当該カラムはマクロライド溶液の流れと接触し、溶離液は、吸着樹脂の負荷部分とその周囲を流れる溶液の流れへ導入され、それによってマクロライドサンプルは吸着樹脂の装填部分へ序々に吸着される。
【0033】
第一の溶出の後、床は、第一の床からの流出液が第二の床を介して溶出するように第二の床と流体連絡において配置されて良い。第一及び第二の床の溶出後、第二の床は好適に、第一の床から切り離され(即ち、流体連絡が破壊され)て良く、そして溶出が第二の床を単独で介して続く。任意に、溶離液は、33体積%〜37体積%を有するTHFと水の混合物である。溶離液画分は、回収されて水で希釈されて、その後第三の床(カラム)を通過させられて良い。任意に、更なるカラムは系に連結されて良く且つより純粋な産物を獲得するために更なる量の水で希釈されて良い。好適に、更なる量の水が、マクロライドの吸着樹脂上への吸着を増加させるために加えられる。
【0034】
溶出物は、約30℃超〜溶媒の約沸騰温度において水及び有機溶媒を含む。好適な溶出物は、特に、タクロリムスがマクロライドである場合、本質的に、約20体積%〜約50体積%、一層好適に約31体積%〜約40体積%を有するTHFと水の混合物、THFである。有機溶媒の例えば、メタノール、アセトニトリル、アセトン又はn−ブタノールがTHF−水溶離液と共に使用される場合、THF含有率は38体積%未満、好適には約4〜約38体積%である。他の好適な溶離液は、約4〜38体積%を有するアセトニトリルと水の混合物である。他の好適な溶離液は、約30体積%〜70体積%、最も好適には約40体積%〜約65体積%を有するアセトニトリルと水の混合物、アセトニトリルである。溶離液がアセトニトリルと水の混合物である場合、溶離液は、1部の溶離液に対して約0.0005〜約0.003部のリン酸をも含む。再度、必要な溶媒の量は、周囲より高い温度で好適に約25〜約35%である。
【0035】
流出物は、負荷充填物及びそれに並列する吸着樹脂の床を介し、床の切断面領域に依存する速度(溶離液の流れに対して垂直に測定した)で流出する。好適に、流速(切断面領域に対する)は約25cm/時間未満、好適に約15cm/時間未満である。より少ない溶出速度が時間を延すが、分離効率が改善する。分離効率増加のための好適な溶出速度は約9cm/時間〜約11cm/時間である。
【0036】
吸着樹脂の床から流れ出る流出物(即ち、流出物)は、当業者にとって普通の、固定相(例えば静止床)上の化学物質の好適なリテンションに依存する分離方法のクロマトグラフィーなどを使用することで、1又は複数の画分において回収される。
【0037】
溶出した画分の内容及び組成は、任意の都合良い手段によってモニタリングされて良い。マクロライド、詳細にはアスコマイシン及びタクロリムス中のジヒドロタクロリムスにおける不純物の検出及び定量化は、下に記載のHPLC法により行われて良い。
【0038】
とりわけ、カラム負荷物並びに溶出物の組成及び流速に依存して、主画分が回収され、従って、最後に単離された製品は、不純物アスコマイシンを約0.1エリア%未満(下記のHPLCによる)を有する。
【0039】
所望ならば、マクロライドは不純物から分離され、従って不純物レベルが下がったマクロライドが任意の常用の方法(例えば、抽出、凍結乾燥、蒸発、アンチ溶媒の添加)によって単離されて良い。水、アルカン及びシクロアルカンが有用なアンチ溶媒として挙げられうる。単離方法が組み合わされて良い。例えば、アンチ溶媒は、濃縮された溶離液と組み合わされて良い。
【0040】
単離の好適な方法は、主画分の70℃以下、好適には60℃以下において、好適には760mmHg以下の圧力において、初期体積の約50%へ濃縮することを含み、それによって濃縮されたマクロライド画分が獲得される。リン酸、約1〜約10ml/L溶離液は、好適にマクロライドを安定化するように濃縮前に好適に加えられる。
【0041】
任意に、濃縮された主画分は保持時間に渡り周囲温度で保たれる。保持時間が使用される場合、好適な保持時間は約1〜4日である。
【0042】
水混和性溶媒の例えば、酢酸エチル又はジクロロメタン、及び塩基例えば、水酸化ナトリウム、有機アミン又はアンモニア溶液が濃縮されたマクロライド画分へ加えられ且つ水混和性溶媒相は、分離されてマクロライドの結晶を獲得するように濃縮されている。塩基は、pHが約9以下になる迄加えられる。
【0043】
不純物が減少したマクロライドの結晶は、任意の常用の手段の例えば、ろ過(重力又は真空)によって回収される。
【0044】
不純物の更なる減少は、回収された産物を、結晶化及び再結晶化などの数回の更なる処理へ委ねることによって達成されて良い。
【0045】
本発明の方法によって達成されるマクロライドにおける不純物の減少は、下記のHPLC法によってモニタリングされて良い。
【0046】
上で論じたように、約30℃超〜溶媒の沸点する温度の溶出温度が、マクロライドの例えば、タクロリムス、アスコマイシン、シロリムス、エベロリムス及びピメクロリムスの、吸着樹脂クロマトグラフィーを使用することでの精製を向上させるために使用されて良い。
【0047】
上記のように、溶媒と水の溶離液において使用される有機溶媒の量は、所望分離選択性に依存する。有機溶媒の濃度が増加するにつれ、分離選択性は低下し、従って所定の限界より上では、溶出プロセスの間の分離選択性がなくなる。マクロライドは水中で可溶性ではなく、そして有機溶媒:水混合物中で中程度のみ溶解性を有し、ここで有機溶媒濃度は上記分離選択性限界未満である。
【0048】
他の観点において、本発明は、上記方法によって調製されたマクロライド、特にタクロリムス、アスコマイシン、シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムス、及びピメクロリムスに関連する。
【0049】
一般に、約30℃超〜溶媒(溶出物中に含まれる)の沸騰する温度の溶出温度が、最終産物の純度を向上せしめる及び/又は必要な溶媒の量を減らす吸着樹脂クロマトグラフィーを使用するマクロライドの効率的精製を供する。溶出物中に含まれる有機溶媒は、分離選択性によって特定されて良い。溶出温度は、より良い分離選択性をもたらし且つより多量の溶媒を使用可能にする約30℃超〜約溶媒の沸騰する温度である。
【0050】
実施例において使用したカラムクロマトグラフィー条件
カラム:ZORBAX SB-C18 75×4.6mm;3.5μm
プレカラム:Symmetry Shield RP18 3.9×20mm;5μm
溶離液
A:200mlのアセトニトリルを2000mlの容量フラスコへ量りとり、次いで希釈して体積を2000mlの総体積にし、しかる後に50%酢酸を100μl加える。
B:100μlの50%酢酸を2000mlのアセトニトリルへ加える。
【0051】
【表1】

【0052】
リテンションタイムはタクロリムスに対して、不純物アスコマイシン(RRT0.95)、ジヒドロタクロリムス(RRT1.25)及びタクロリムスの異性体(RRT1.19)であり、クロマトグラムにおける全てのピークのエリアに対するエリア%として表されている。
【実施例】
【0053】
実施例
本発明に従い、上記条件下で行った多くの実験の結果を表1に供した。
【0054】
実験の出発物質はタクロリムス粗製産物であった。10gの粗製タクロリムス産物を溶かし且つ1mの高さを有する、直径3.2cmのカラム中のAMBERLITE XAD 1180の吸着樹脂へ吸着させた。溶出を表1に開示するようにして、90ml/時間の溶出速度で行った。画分を回収した。ここで各画分の体積は90mlであった。
【0055】
いくつかの画分を上記分析方法によって分析した。適切な画分を組み合わせ、そして少量のリン酸を、組み合わせた画分へ加えた。次いで、この組み合わさった画分を減圧下で濃縮し、含有溶媒の主要部分を除去した(濃縮した体積は、出発体積の約1/3であった)。次いで少量の水酸化アンモニウム溶液を濃縮するために加え、そして濃縮物の活性物質を酢酸エチルで抽出した(濃縮物の1/4の体積)。
【0056】
酢酸エチル相の固体含有物を、減圧下で乾燥させるために少量の溶液の蒸発によって確立した。酢酸エチル相を、計算した固形塊の質量の1.9倍の減圧下で濃縮した。シクロヘキサンを、計算した固形塊の体積の6倍において、濃縮物へ加えた。水を、計算した固形塊の体積の0.2倍において、この溶液へ1/2時間に渡り、加えた。次いで、周囲温度で1時間に渡り適用した。次いで、結晶懸濁を約20時間に渡り約5℃で維持した。この結晶をろ過し、そして100mlのn-へキサンで懸濁させた。70℃未満において12時間以上に渡る乾燥後に固形産物を獲得した。
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロライドを精製する方法であって:
a)マクロライドの負荷充填物を提供し;
b)マクロライドの負荷充填物を吸着樹脂の床上へ負荷し;
c)約30℃超〜溶媒の約沸とうする温度において、THF、アセトニトリル、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、及びアセトン及び水からなる群から選択される有機溶媒を少なくとも1種類含む溶離液で溶出せしめて流出物を獲得し;
d)流出物の主画分を回収し;そして
e)マクロライドを回収する、
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記マクロライドが、アスコマイシン、シロリムス、エベロリムス、及びピメクロリムスからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸着樹脂が、AMBERLITE(登録商標)XAD1180である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記負荷充填物が有機溶媒中の、又は水と組み合わせた有機溶媒中のマクロライドの溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記負荷充填物が、吸着樹脂の負荷部分上へ吸着されるマクロライドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記吸着が、有機溶媒中でマクロライドの溶液を調製すること、当該溶液を吸着樹脂の一部及び水と組み合わせること、及び吸着された負荷充填物を残りの溶液から分離することを含んで成る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記吸着樹脂の部分が、床を調製するために使用されたものと同じである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記吸着樹脂の部分が、床を調製するために使用された吸着樹脂とは異なる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記分離がろ過による、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、アセトニトリル(ACN)、メタノール、エタノール、n−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エステル(例えば、酢酸エチル)、及び双極性非プロトン溶媒の例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)から成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記有機溶媒が、THF、アセトン又はアセトニトリルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記吸着樹脂の床がカラム中に閉じ込められている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
段階c)における溶離液が有機溶媒を1種類以上含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、アセトニトリル(ACN)、メタノール、エタノール、n−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エステル(例えば、酢酸エチル)、及び双極性非プロトン溶媒の例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶離液が、約20体積%〜約50体積%を有するTHFと水の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記溶離液が、約31体積%〜約40体積%を有するTHFと水の混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶離液流速が、約25cm/時間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記溶離液流速が、約15cm/時間未満である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶離液流速が、約9cm/時間〜約11cm/時間である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記段階d)の前に床を吸着樹脂の第二の床と流体連絡において配置する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第二の床を前記第一の床らから切り離している、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記吸着樹脂の更なる床を前記系へ連結することを更に含んで成る、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
更なる量の水を最後のカラムへ加える、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記段階e)における回収が、約70℃以下の温度で約760mmHg以下の圧力において、リン酸の存在下での主画分の濃縮、水混和性溶媒及び塩基の添加、水混和性溶媒相の分離及びそれを濃縮することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記水混和性溶媒が酢酸エチル又はジクロロメタンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記塩基が、水酸化ナトリウム、有機アミン又はアンモニア溶液から成る群から選択される、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2007−523200(P2007−523200A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554355(P2006−554355)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046856
【国際公開番号】WO2006/069333
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(501309071)テバ ジョジセルジャール ザ−トケルエン ムケド レ−スベニュタ−ルシャシャ−グ (30)
【Fターム(参考)】