マグネシウム合金部材のせん断加工用金型およびせん断加工方法
【課題】マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなり加工断面が滑らかになるようにしてせん断加工を行えるせん断加工用金型およびせん断加工方法を提供する。
【解決手段】マグネシウム合金部材を貫通する貫通部を備えたマグネシウム合金部材のせん断加工用金型を次のように構成する。すなわち、貫通部は、その貫通部よりも硬度の高い硬質膜が表面上に形成されている硬質端部を有し、その硬質端部は、先端部からの幅wおよびマグネシウム合金部材の厚さdについて下記関係式を満たし、かつ先端部から幅wの部分がその幅wの部分以外の部分よりも径を狭めた縮径部となっているようにする。d≦w≦3d
【解決手段】マグネシウム合金部材を貫通する貫通部を備えたマグネシウム合金部材のせん断加工用金型を次のように構成する。すなわち、貫通部は、その貫通部よりも硬度の高い硬質膜が表面上に形成されている硬質端部を有し、その硬質端部は、先端部からの幅wおよびマグネシウム合金部材の厚さdについて下記関係式を満たし、かつ先端部から幅wの部分がその幅wの部分以外の部分よりも径を狭めた縮径部となっているようにする。d≦w≦3d
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム合金部材のせん断加工に用いられる金型およびせん断加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金は実用されている合金の中でも強度が高く、軽くて丈夫なことから、近年、自動車等の輸送機器、パーソナルコンピュータ等のモバイル電子機器、家庭用電化製品等に採用され、需要の伸びが期待されている。しかしながら、マグネシウム合金はアルミニウム合金に比べて加工性が低いという課題があり、その課題のため、原材料価格の高騰も相まってマグネシウム合金部材の成形品は製造コストが高くなっている。マグネシウム合金の加工性が低いことの原因に室温での展延性の低さがあり、そのため、非特許文献1に記載されているように、マグネシウム合金部材のプレス加工は温間から熱間域で行うことが有効であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−317989号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】古閑伸裕:塑性と加工(日本塑性加工学会誌)第44巻、第506号、p.250−255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マグネシウム合金部材やアルミニウム合金部材といった金属部材について、せん断加工を行うときは、例えば特許文献1に示されているようにパンチ(ポンチともいう)やダイといったせん断加工用の金型を用いる。
【0006】
しかし、マグネシウム合金部材は室温での展延性が低く、しかも脆いため、従来のせん断加工用の金型を用いてせん断加工を行うと、せん断加工によって現れた切口面(加工断面ともいう)に、凹凸の大きな破断面が凹凸のない滑らかなせん断面よりも大きく現われ、表面がでこぼこになってしまう、という課題があった。
【0007】
加工断面に破断面が現われると、マグネシウム合金部材の脆さゆえに破断面から細かいかけらやくずが落ちやすくなる。すると、せん断加工によってマグネシウム合金部材を例えば電子部品を載せるための基板に加工していたときは、破断面から落ちたかけらによって配線がショートするといった動作不良を起こすおそれが生じる。また、せん断加工で孔を形成すると、その孔に螺子を挿通する際、破断面の凹凸が邪魔になってスムーズな挿通が行いにくいといった課題もある。さらに、マグネシウム合金部材に孔開け加工をしたときは、孔の入口(だれ面)と出口(かえり面)とで内径差を生じてしまうため、孔の寸法精度を高められないといった課題もある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなり加工断面が滑らかになるようにしてせん断加工を行えるせん断加工用金型およびせん断加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、マグネシウム合金部材を貫通する貫通部を備えたマグネシウム合金部材のせん断加工用金型であって、貫通部は、その貫通部よりも硬度の高い硬質膜が表面上に形成されている硬質端部を有し、その硬質端部は、先端部からの幅wおよびマグネシウム合金部材の厚さdについて下記関係式を満たし、かつ先端部から幅wの部分がその幅wの部分以外の部分よりも径を狭めた縮径部となっているマグネシウム合金部材のせん断加工用金型を特徴とする。
d≦w≦3d
【0010】
このせん断加工用金型では、縮径部によってマグネシウム合金部材に形成される孔の内周面を漸次押し広げながらせん断加工を行える。
【0011】
上記せん断加工用金型の場合、縮径部は、その縮径部とその縮径部以外の部分との境目となる接続部から先端部に向かい漸次縮径されているようにすることができる。
【0012】
また、上記せん断加工用金型の場合、縮径部は、先端部から幅wの部分が均等な太さで形成されているようにすることができる。
【0013】
さらに、縮径部の先端部側に、太さの均等な均等縮径部が形成されているようにすることもできる。
【0014】
上記せん断加工用金型はいずれも、縮径部以外の部分の太さh1および縮径部の太さh2について下記関係式を満たすようにすることができる。
0.96≦h2/h1≦0.99
【0015】
そして、本発明は、マグネシウム合金部材を貫通する貫通部を備えたせん断加工用金型を用いたマグネシウム合金部材の加工方法であって、貫通部を挿通させる挿通孔を備えた受台にマグネシウム合金部材を載置し、貫通部との隙間がマグネシウム合金部材の厚さの2パーセントから16パーセントになるように挿通孔の内径を設定して、挿通孔に貫通部を挿通させるマグネシウム合金部材のせん断加工方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、本発明によれば、マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなり加工断面が滑らかになるようにしてせん断加工を行えるせん断加工用金型およびせん断加工方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るせん断加工用金型を備えたせん断加工装置の概略の構成を模式的に示す正面図である。
【図2】せん断加工用金型におけるパンチユニットを取付部とともに示した断面図で(a)は上型の下降前、(b)は上型の下降後を示す断面図である。
【図3】パンチを示す図で(a)は側面図、(b)は貫通部の正面図である。
【図4】テーパー部を備えた貫通部の先端部分を示す側面図である。
【図5】均等縮径部を備えた貫通部の先端部分を示す側面図である。
【図6】テーパー部および均等縮径部を備えた貫通部の先端部分を示す側面図である。
【図7】ストレート型の貫通部の先端部分を示す側面図である。
【図8】パンチによりマグネシウム合金板の孔開け加工が行われている様子を示す断面図で(a)はテーパー部を備えたパンチの場合、(b)はストレート型のパンチの場合を示している。
【図9】マグネシウム合金板を示す平面図である。
【図10】テーパー部を備えたパンチによりマグネシウム合金板の孔開け加工が行われている様子を示す断面図で、(a)はパンチの貫通部がマグネシウム合金板に接触した直後、(b)は貫通部が下降してマグネシウム合金板に亀裂が生じたとき、(c)は貫通部がさらに下降したときを示している。
【図11】均等縮径部を備えたパンチによりマグネシウム合金板の孔開け加工が行われている様子を示す断面図で、(a)はパンチの貫通部がマグネシウム合金板に接触した直後、(b)は貫通部が下降してマグネシウム合金板に亀裂が生じたとき、(c)は貫通部がさらに下降したときを示している。
【図12】先端部分(貫通部)の形状の異なるパンチを用意し、クリアランスを0.02mmにした場合と0.04mmにした場合とでそれぞれマグネシウム合金板について孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。
【図13】マグネシウム合金板について、“ストレート”を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像である。
【図14】同じく、拡大したSEM画像である。
【図15】マグネシウム合金板について、“テーパー”を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像である。
【図16】同じく、拡大したSEM画像である。
【図17】形状が“ストレート”で材質の異なる複数のパンチを用いてマグネシウム合金板について孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。
【図18】マグネシウム合金板について、“ハイス”で構成されたパンチを用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像である。
【図19】同じく、拡大したSEM画像である。
【図20】形状が“ストレート”で無処理のパンチと、ICFレッドDLC、ICFイエローDLC、CrN、TiCNの硬質膜を形成したパンチの5種類のパンチを用いてマグネシウム合金板について孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。
【図21】TiCNの硬質膜を形成したパンチを用いて孔開け加工を行った場合の孔の内周面を示すSEM画像である。
【図22】同じく、拡大したSEM画像である。
【図23】無処理のパンチを用いてアルミニウム合金板について孔開け加工を行った場合の孔の内周面を示すSEM画像である。
【図24】同じく、拡大したSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は本発明の実施の形態に係るせん断加工用金型を備えたせん断加工装置30の概略の構成を模式的に示す正面図である。図1に示すとおり、せん断加工装置30は、上型1と下型2とを有し、上型1がガイドポスト3によって上下に移動し、マグネシウム合金部材(例えば後述するマグネシウム合金板51、図9参照)に打ち抜きによる孔開け加工を行うようになっている。
【0020】
上型1は下型2と対向する側に取付部5が固定され、この取付部5に3本のパンチユニット6が下型2に向かって張り出すようにして固定されている。また、下型2の上型1と対向する側に受台(ダイス)4が固定されている。
【0021】
受台4は、上面が孔開け加工の対象となるマグネシウム合金部材を載せられる大きさの平坦に形成され、その一部に後述する貫通部11(図3,図4,図8等参照)を挿通させる寸法調整可能な挿通孔4aが形成されている(挿通孔4aは図8参照)。
【0022】
パンチユニット6は図2(a),(b)に詳しく示すように、取付部5により押されることによって撓みながら変形するパンチプレート7と、パンチプレート7の内側に摺動自在に納められたパンチ8と、パンチプレート7の取付部5から最も離れた端部に固定された押え部材9とを有している。
【0023】
押え部材9は厚肉円板状部材の中央に中心軸に沿った貫通孔が形成された構成を有している。その貫通孔は貫通部11の外形形状に応じた大きさで形成されている。また、貫通孔は図2(a)に示すように貫通部11の先端部分が挿入され、孔開け加工が行われるときに貫通部11が図2(b)に示すようにして摺動するようになっている。
【0024】
パンチ8は図3に示すように、鍔部10aと、鍔部10aに固定されているパンチ本体部10bと、パンチ本体部10bに固定され、マグネシウム合金部材を貫通する形状に形成された貫通部11とを有している。パンチ8は、パンチ本体部10bと貫通部11との径の大きさの異なるショルダーパンチと呼ばれる構造を有しており、貫通部11がマグネシウム合金部材を貫通することによって孔開けを行うために用いられる。パンチ8は例えばダイス鋼(SKDともいう)を用いることができる。
【0025】
鍔部10aは、取付部5からの脱落防止のために設けたものであって、厚肉円板状に形成されている。パンチ本体部10bは鍔部10aよりも径が小さく中心軸方向に沿って細長い円柱状に形成されている。
【0026】
貫通部11はパンチ本体部10bよりも径が小さく中心軸方向に沿って細長い円柱状に形成されている。この貫通部11は、パンチ本体部10bから離れた先端部分が図4に示すような構造を有している。貫通部11は、マグネシウム合金部材に最も先に接する部分、すなわち、先端部13aから所定範囲の部分に形成された硬質端部12を有し、その硬質端部12のうちの先端部13aから所定範囲の部分(後述する接続部15までの部分)がテーパー部13となったテーパー金型を構成している。
【0027】
硬質端部12は、太さの一様な貫通部本体12aよりも硬度の高い硬質膜12bが貫通部本体12aの表面上に形成された部分である。図4に示す網目部分が硬質端部12を示している。硬質膜12bは、例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)によって形成することができる。そのほか、硬質膜12bはCrN,TiCNなどによって形成することもできる。
【0028】
テーパー部13は中心軸に沿った長さ(高さ)が貫通部本体12aよりも短い(低い)円錐台と同等の形状を有し、その周面は、貫通部本体12aとの境目になる接続部15において最も径が大きく、接続部15から先端部13aに向かって漸次縮径されて形成されている。先端部13aは円形状の平坦面になっている。
【0029】
そして、貫通部11は貫通部本体12aの径の大きさ(太さ)をh1、テーパー部13の最も縮径された部分(先端部13a)の大きさをh2としたときにh2はh1よりも小さい大きさである。テーパー部13を設けることにより、マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなるようにするためには、下記式1に示すように、h1とh2との比が一定範囲内に納まるようにする必要がある。h1、h2の具体的な数値については後述する。
式1:0.96≦h2/h1≦0.99
【0030】
また、貫通部11はマグネシウム合金部材の孔開けしようとする部分(孔開け部分ともいう)の厚さdと、テーパー部13の中心軸に沿った長さ(幅ともいう)wについての下記の式2の関係を満たす形状に形成されている。d、wの具体的な数値については後述する。
式2:d≦w≦3d
【0031】
以上のような構成を有するせん断加工装置30の使用手順および動作内容について述べれば次のとおりである。
【0032】
まず、せん断加工を行おうとするマグネシウム合金部材を孔開け部分がパンチユニット6の真下に位置するようにして受台4の上に載せる。また、図8(a)に示すように、受台4の挿通孔4aの寸法を調整して、貫通部11の先端部13aとの隙間(クリアランスともいう)tがマグネシウム合金部材(マグネシウム合金板51)の厚さdの2〜16%程度になるように、挿通孔4aの内径を設定する。
【0033】
ここで、マグネシウム合金部材として、例えばマグネシウム合金板51を用いることができる。マグネシウム合金板51は図9に示すような平面視の寸法(面積)に対して厚さが薄い平面視矩形状の板材である。マグネシウム合金板51は圧延加工によって形成されているので、図9に示すような圧延方向を有している。
【0034】
次に、ガイドポスト3によって上型1をD1で示す方向(下向き)に移動させる。そして、パンチユニット6の押え部材9を孔開け部分に接触させ、パンチユニット6により、マグネシウム合金板51を受台4上に押さえつける。
【0035】
それから、さらに上型1を方向D1に移動させると、図2(b)に示すように取付部5から押されることによってパンチプレート7が撓み、パンチプレート7の長さが縮む。このパンチプレート7の縮みに伴い押え部材9が貫通部11に沿って上向きに摺動し、相対的に貫通部11の先端部分が押え部材9から突出する。このとき、貫通部11の先端部分がマグネシウム合金板51に接触して、下向きの力をさらに受けて終には貫通部11がマグネシウム合金板51を貫通する。こうして、マグネシウム合金板51に貫通部11の外形寸法に応じた孔を開ける孔開け加工が行われる。孔開け加工が行われるとマグネシウム合金板51には図9に示すような孔52が形成される。
【0036】
ここで、マグネシウム合金板51について、以上のような孔開け加工が行われているときについて図8(a)、図10を参照して詳しく述べれば次のとおりである。マグネシウム合金板51は、押え部材9と受台4とで挟み込まれて動かないように位置が固定されている。その状態のまま貫通部11が上から下に向かって押え部材9から突出するため、貫通部11の接触した部分が押し出される(飛び出る)ようにしてマグネシウム合金板51が変形する。このとき、マグネシウム合金板51は展延性が低いので、押し出される部分と、押え部材9および受台4に挟み込まれている部分との間に比較的早く亀裂(後述する亀裂e)を生じる。
【0037】
詳しくは、図10(a)に示すように、マグネシウム合金板51は貫通部11が接触してある程度食い込むまでは亀裂を生じることなく変形する。ところが、貫通部11が上側からさらに下降すると、図10(b)に示すように、マグネシウム合金板51は貫通部11によって押し出されている部分(押し出され部)51aと、それ以外の部分(本体部)51bとに分離し、双方の間に亀裂eが生じる。すると、マグネシウム合金板51は脆いため、押し出され部51aと本体部51bとに、亀裂eに起因して凹凸の大きな切口面54,55が現れる。
【0038】
そして、貫通部11は先端部分にテーパー部13が形成されているが、テーパー部13は先端部13aまで漸次縮径されている。そのため、テーパー部13は本体部51bの切口面55を図10(b)のfで示す方向に押し出し、したがって、孔の内周面を漸次押し広げながら押し出され部51aを下方に押し出していく。テーパー部13によるこのような動作は接続部15がマグネシウム合金板51に接触するまで継続する。
【0039】
接続部15がマグネシウム合金板51に接触すると、そこから後、貫通部11の太さが一様なので、切口面55に対する押し広げは治まるものの、切口面55に突出している部分があれば図10(c)に示すように接続部15によって削られる。このような過程を経ることにより、マグネシウム合金板51に孔を形成することができる。
【0040】
以上のように、貫通部11によってマグネシウム合金板51に孔開け加工を行った場合、テーパー部13により、孔の内周面(切口面55)を漸次押し広げながら孔開け加工を行うことができる。
【0041】
特に、テーパー部13の幅wがマグネシウム合金板51の厚さdに対して、d≦wの関係を満たしているから(前述の式2参照)、テーパー部13による押し広げが孔の内周面の厚さ方向全体に対して行われる。仮にd≦wの関係を満たしていないとすると、孔の内周面の中で押し広げが行われ難い箇所ができてしまい、切口面を滑らかにする効果が減殺されてしまうので好ましくない。
【0042】
一方、孔の内周面(切口面55)を滑らかにするには、適切なタイミングで接続部15がマグネシウム合金板51に到達する必要があり、そのためには、幅wが厚さdに対してw≦3dとすることが適切である。w>3dになるまでテーパー部13の幅を大きくすると、接続部15がマグネシウム合金板51に到達する前に孔開けが完了しやすくなり、好ましくない。
【0043】
さらに、貫通部11の太さh1、h2は、それらの比が前述の式1に示す一定範囲内に納まるように設定されている。ここで、太さh1、h2の比が式1を満たさない場合、例えば、h2/h1<0.96にすると、テーパー部13の周面の傾斜が孔の内周面に対して急になり、テーパー部13の周面から孔の内周面までの間隔が離れやすくなって孔の内周面への適切な押し広げを行い難くなる。また、0.99<h2/h1にすると、テーパー部13の周面の傾斜が緩慢になり、この場合も孔の内周面への適切な押し広げを行い難くなる。
【0044】
さらに、クリアランスtをマグネシウム合金板51の厚さdの2%〜16%の範囲内に納まるようにしている。この数値範囲は、後述する実施例1〜3に示すクリアランスtをいずれもカバーする範囲である。クリアランスtを厚さdの2%よりも小さくすると、先端部13aが挿通孔4aを通り難くなり、破断面が形成されやすくなるから好ましくない。クリアランスtを厚さdの16%よりも大きくすると、テーパー部13による押し広げ効果が減殺されるので好ましくない。
【0045】
このようなことを考慮し、テーパー部13を前述した構成とした上で、クリアランスtを厚さdの2%〜16%の範囲内に納まるようにすることにより、図10(c)に示すように切口面55について大きな凹凸を減らすことができるようになり、切口面55を滑らかにすることができる。したがって、貫通部11を用いてマグネシウム合金板51に孔開け加工を行うと、マグネシウム合金板51に形成された孔の表面には、凹凸のない滑らかなせん断面が大きく現れ、凹凸の大きな破断面はせん断面よりも小さくなる。
【0046】
すると、マグネシウム合金板51に孔開け加工を行い、例えば、電子部品を載せるための基板を形成した場合、形成された孔にはせん断面が破断面よりも大きく現れているため、破断面から落ちたかけらによって配線がショートするような不具合はほぼ解消されることとなる。しかも、孔に螺子を挿通する作業も行いやすくなり、孔の寸法精度を高めることもできる。
【0047】
その上、貫通部11は硬質端部12を有している。硬質端部12は貫通部本体12aの表面に硬質膜12bが形成されている。マグネシウム合金板51のようなマグネシウム合金部材は他の物質と溶着しやすい性質を有するものの、貫通部11が硬質端部12を有するため、貫通部11とマグネシウム合金板51との溶着が起こることはない。さらに、硬質端部12を有することによって貫通部11の耐摩耗性を高めることもできるから、パンチ8の耐久性を高めることもできる。
【0048】
(第2の実施形態)
前述したせん断加工装置30は、貫通部11(図4参照)を有するパンチ8(図2および図3)の代わりに図5に示すような貫通部21を有するパンチ8を用いることができる。貫通部21は図5に示すような構造を有している。貫通部21は貫通部11と比較して、テーパー部13の代わりに均等縮径部14を有し、均等縮径部14の貫通部本体12aに固定される付け根部分に、円環状に張り出す鍔部16が形成されて段付金型を構成している点で相違している。
【0049】
均等縮径部14は、貫通部本体12aと同様に円柱状に形成されているが、貫通部本体12aよりもやや径が小さく縮径されており、その付け根部分から先端まで(幅wの範囲が)均等な太さで形成されている。また、均等縮径部14の幅wが厚さdに対して前述した式2の関係を満たしている。
【0050】
貫通部21は貫通部本体12aの径の大きさ(太さ)をh1、均等縮径部14の径の大きさをh2としたときに、h2はh1よりも小さい大きさである。均等縮径部14を設けることにより、マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなるようにするためには、前述の式1に示すように、h1とh2との比が一定範囲内に納まるようにする必要がある。
【0051】
そして、マグネシウム合金板51について、貫通部21を備えたパンチ8によって前述と同様の孔開け加工が行われているときについて詳しく述べれば次のとおりである。
【0052】
すなわち、図11(a)に示すように、マグネシウム合金板51は貫通部21が接触してある程度食い込むまでは亀裂を生じることなく変形する。ところが、マグネシウム合金板51は展延性が低いので押し出され部51aと、押え部材9および受台4に挟み込まれている本体部51bとの間に亀裂を生じる。貫通部21が上側からさらに下降すると、図11(b)に示すように、マグネシウム合金板51は押し出され部51aと本体部51bとに分離して、亀裂に起因して凹凸の大きな切口面56,57が現れる。
【0053】
そして、貫通部21は先端部分に均等縮径部14が形成されている。均等縮径部14は貫通部本体12aよりも縮径された均等な太さを有し、鍔部16が均等縮径部14よりも張り出すような格好になっている。すると、図11(b)に示すように、鍔部16が孔の内部に進入していくときに切口面57のうちの突出している部分を鍔部16の張出幅(均等縮径部14の付根部分から張り出している円環状部分の幅)に応じた大きさで掻き落としながら進んでいく。そのため、図11(c)に示すように、切口面57のうちの大きく突出している部分が鍔部16によりその張出幅に応じた大きさで掻き落とされていく。
【0054】
一方、貫通部21の太さh1、h2について、h2/h1<0.96になっていたとすると、鍔部16の張出幅が大きくなりすぎてしまい、突出している部分が大きく掻き落とされてしまう。そうすると、マグネシウム合金板51の脆さゆえに切口面57が崩れて余計なかけらが発生してしまい、切口面57を滑らかにすることが困難である。また、0.99<h2/h1にすると、鍔部16の張出幅が小さくなりすぎてしまい、掻き落としが不十分になりやすい。
【0055】
しかし、貫通部21を前述した式1を満たす形状にすれば、切口面57に対して必要十分な大きさで掻き落としを行うことができ、切口面57を滑らかにすることができる。また、均等縮径部14の幅wが厚さdに対して前述した式2の関係を満たしているから、鍔部16による掻き落としを確実に行える。
【0056】
以上のように、貫通部21によってマグネシウム合金板51に孔開け加工を行った場合、鍔部16により、孔の内周面を鍔部16の張出幅に応じた大きさで掻き落とししながら孔開け加工を行うことができる。そのため、図11(c)に示すように切口面57について大きな凹凸を減少させることができ、切口面57を滑らかにすることができる。したがって、貫通部21を用いてマグネシウム合金板51に孔開け加工を行うと、マグネシウム合金板51の形成された孔の表面には、凹凸のない滑らかなせん断面が破断面よりも大きく現れる。よって、貫通部11を用いた場合同様に、配線がショートするような不具合は解消され、孔に螺子を挿通する作業も行いやすくなり、孔の寸法精度を高めることもできる。
【0057】
(第3の実施形態)
前述したせん断加工装置30は、貫通部11を有するパンチ8の代わりに図6に示すような貫通部22を有するパンチ8を用いることができる。貫通部22は図6に示すような構造を有している。貫通部22は貫通部11と比較して、テーパー部13における貫通部本体12aから離れた先端部分に均等縮径部17が形成されている点、テーパー部13と均等縮径部17との部分が幅w1になっている点とで相違している。均等縮径部17は、均等縮径部14と同様の円柱状に形成されているが、先端部13aよりもやや径が小さく縮径されており、その付け根部分から先端まで均等な太さで形成されている。
【0058】
貫通部22は貫通部本体12aの径の大きさ(太さ)をh1、均等縮径部17の径の大きさをh2としたときに、太さh1、h2の比が前述の式1を満たす形状に形成されている。
【0059】
そして、マグネシウム合金板51について、貫通部22を備えたパンチ8によって前述の同様の孔開け加工を行うと、テーパー部13により、孔の内周面を漸次押し広げながら孔開け加工を行うことができ、その後、接続部15によって切口面の突出している部分を掻き落としながら孔を開けることができる。そのため、この場合も、マグネシウム合金板51に形成された孔の表面には、凹凸のない滑らかなせん断面が破断面よりも大きく現れるようになる。
【実施例1】
【0060】
次に、以上のようなパンチ8を用いてマグネシウム合金板51について実際に行った孔開け加工の結果について述べれば次のとおりである。
【0061】
ここで、図12は、貫通部の形状の異なるパンチ8を用意し、クリアランスを0.02mmにした場合と0.04mmにした場合とでそれぞれマグネシウム合金板51について孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。マグネシウム合金板51は厚さdを0.5mmにしているため、クリアランスtは、0.02mm、0.04mmの場合で厚さdに対してそれぞれ4%、8%になる。
【0062】
図12において、“ストレート”とは、図7、図8(b)に示す貫通部100を備えたパンチのように、先端部分の太さが均一な貫通部を備えたパンチを意味している。また、“段つき”とは、貫通部21を備えたパンチ8(図5)を意味し、“テーパー”とは、貫通部11を備えたパンチ8(図4)を意味している。
【0063】
貫通部21(図5)について、h1は直径3.1mm、h2は直径3.02mm、貫通部11(図4)について、h1は直径3.1mm、h2は直径3.03mmとし、テーパー部13のテーパー角(図4に示す角度x)は2°に設定している。また、幅wは1mmに設定している。
【0064】
図12に示すように、“ストレート”(図7に示した貫通部100)を用いて孔開け加工を行った場合、せん断面の長さがクリアランスを0.02mm、0.04mmにした場合でそれぞれマグネシウム合金板51の厚さの40%、20%に留まるため、破断面がせん断面よりも大きくなる。これに対し、“段つき”を用いて孔開け加工を行うと、せん断面の長さがクリアランスを0.02mm、0.04mmにした場合でそれぞれマグネシウム合金板51の厚さの100%、60%にまで拡大されるから、せん断面の方が破断面よりも大きくなる。また、“テーパー”を用いて孔開け加工を行うと、せん断面の長さがクリアランスを0.02mm、0.04mmにした場合でいずれも80%にまで拡大されるから、この場合もせん断面の方が破断面よりも大きくなる。
【0065】
この結果からみて明らかなとおり、前述した貫通部11(“テーパー”)、貫通部21(“段つき”)を備えたパンチ8を用いて孔開け加工を行うと、せん断面が破断面よりも大きくなった孔を形成することができる。特に、“段つき”の場合はクリアランスtをマグネシウム合金板51の厚さdの4%にした場合の方がせん断面が大きくなるから、クリアランスtを厚さdの4%に設定して孔開け加工を行うことが好ましい。
【0066】
図13は、マグネシウム合金板51として,代表的なマグネシウム合金であるAZ31からなるマグネシウム合金板51(厚さdは0.5mm)について、“ストレート”(図7に示した貫通部100)を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像であり、図14はその拡大したSEM画像である。いずれもクリアランスtは8%に設定されている。図13,14に示すように、孔の内周面には大きな凹凸が多数現れており、表面がでこぼこしてざらついていることが理解される。
【0067】
一方、図15は、同じAZ31からなるマグネシウム合金板51(厚さdは0.5mm)について、“テーパー”を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像であり、図16はその拡大したSEM画像である。クリアランスtは4%に設定されている。図15,16に示すように、孔の内周面の下側2割程度の範囲にやや大きな凹凸が現れているものの、上側8割程度は極めて滑らになっている。したがって、“テーパー”を用いることによって、破断面よりも大きなせん断面を備えた孔が形成されることが理解される。
【0068】
図13〜16から明らかなとおり、“テーパー”(貫通部11を備えたパンチ8)を用いることによって、破断面よりも大きなせん断面を備えた孔を形成することができる。
【0069】
一方、図23は、アルミニウム合金を用いたマグネシウム合金板51と同様の板材(アルミ合金板)について、“ストレート”を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像であり、図24はその拡大したSEM画像である。アルミニウム合金は展延性が高いので、“ストレート”を用いて孔開け加工を行っても、図23,24に示すように、孔の内周面には、下側1割から2割程度の部分にやや大きな凹凸が現れているものの、それ以外の部分はとても滑らになっている。
【0070】
つまり、“テーパー”(貫通部11を備えたパンチ8)を用いることにより、たとえ展延性が低くて脆いマグネシウム合金板であっても、アルミ合金板とほぼ同等の品質で孔開け加工を行えるようになる、ということが理解される。
【実施例2】
【0071】
次に、材質の違いによる孔開け作用の相違を調べるため、形状が“ストレート”であるが、材質の異なる複数のパンチを用いてマグネシウム合金板51について孔開け加工を行った。その結果は、図17に示されている。
【0072】
図17は、形状は“ストレート”であるが、材質の異なる複数のパンチを用意し、クリアランスを0.04mm、0.06mm、0.08mmにした場合についてそれぞれマグネシウム合金板51について孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。マグネシウム合金板51は厚さdを0.5mmにしているため、クリアランスtは、0.04mm、0.06mm、0.08mmの場合で厚さdに対してそれぞれ8%、12%、16%になる。
【0073】
図17において、“SKD”とは、ダイス鋼(Die Steel)とも呼ばれ、耐摩耗性および靭性の高い高炭素、高クロム鋼や、炭素鋼にCrなどを添加した工具鋼を用いたパンチ8を意味している。また、“ハイス”とは、ハイス鋼(High Speed Steel)を意味し、高速度工具鋼を用いたパンチ8を意味している。高速度工具鋼は成分中にタングステンを多量に含むタングステ系ハイスと、モリブデンを含むモリブデン系ハイスとに分けられる。さらに、“粉末ハイス”とは、粉末治金法により生成されたパンチ8を意味している。粉末治金法とは、霧吹状にした合金成分素材を集め焼き固める技術であり、粒子が均一で精密な素材を生成することができる。
【0074】
図17に示すように、“SKD”では、クリアランスを0.04mm、0.06mm、0.08mmにした場合でそれぞれせん断面の長さが40%、70%、60になったのに対し、“ハイス”では、90%、60%、60%にまで拡大されている。また、“粉末ハイス”では、90%、40%、20%になっている。この結果からみて、せん断面の方が破断面よりも大きくなる、すなわち、せん断面の長さが50%を超えるのは、“SKD”でクリアランスを0.06mm、0.08mmにした場合、“ハイス”でクリアランスを0.04mm、0.06mm、0.08mmにした場合、“粉末ハイス”でクリアランスを0.04mmにした場合である。
【0075】
したがって、パンチの材質は、“SKD”、“ハイス”、“粉末ハイス”のいずれでもよいが、クリアランスによることなく大きなせん断面が現れるという点では3つの中では“ハイス”が好ましい。また、クリアランスtはマグネシウム合金板51の厚さdの8%〜16%の範囲に設定することで、せん断面が破断面よりも大きくなることが理解される。図17は、形状が“ストレート”のパンチについての結果を示しているが、“段つき”や“テーパー”についても同様であると考えられる。なお、図18は、“ハイス”を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像であり、図19は拡大したSEM画像である。
【実施例3】
【0076】
次に、硬質膜の違いによる孔開け作用の相違を調べるため、形状が“ストレート”であるが、膜質の異なる硬質膜を形成したパンチを用いてマグネシウム合金板51について孔開け加工を行った。その結果は、図20に示されている。
【0077】
図20は、形状は“ストレート”であるが、無処理(硬質膜を形成しない場合)のパンチと、ICFレッドDLC、ICFイエローDLC、CrN、TiCNの硬質膜をそれぞれ形成したパンチという5種類のパンチを用いてクリアランスを0.02mm、0.04mmにした場合のそれぞれについてマグネシウム合金板51に孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。マグネシウム合金板51は厚さdを0.5mmにしているため、クリアランスtは、0.02mm、0.04mmの場合で厚さdに対してそれぞれ4%、8%になる。
【0078】
無処理では、クリアランスを0.02mm、0.04mmにした場合のそれぞれでせん断面の大きさが40%、20%に留まるのに対し、ICFレッドDLC、ICFイエローDLC、CrN、TiCNの硬質膜を形成した場合はいずれも60%以上になっている。したがって、これらの硬質膜を形成することにより、破断面よりも大きなせん断面を備えた孔が形成されることが理解される。図20は、形状が“ストレート”のパンチについての結果を示しているが、“段つき”や“テーパー”についても同様であると考えられる。なお、図21は、TiCNの硬質膜を形成した場合の孔の内周面を示すSEM画像であり、図22は拡大したSEM画像である。
【0079】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【0080】
例えば、以上の説明では、平面視の大きさに対して厚さの薄いマグネシウム合金板51について孔開け加工を行う場合を例にとって説明しているが、マグネシウム合金板51と厚さは同じであるが平面視の大きさが小さい部材について孔開け加工を行う場合についても本発明は適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明を適用することにより、マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなり加工断面が滑らかになるようにしてせん断加工を行える。
【符号の説明】
【0082】
8…パンチ、11、21,22…貫通部、12…硬質端部、12a…貫通部本体、13…テーパー部、14,17…均等縮径部、15…接続部、16…鍔部、51…マグネシウム合金板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム合金部材のせん断加工に用いられる金型およびせん断加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金は実用されている合金の中でも強度が高く、軽くて丈夫なことから、近年、自動車等の輸送機器、パーソナルコンピュータ等のモバイル電子機器、家庭用電化製品等に採用され、需要の伸びが期待されている。しかしながら、マグネシウム合金はアルミニウム合金に比べて加工性が低いという課題があり、その課題のため、原材料価格の高騰も相まってマグネシウム合金部材の成形品は製造コストが高くなっている。マグネシウム合金の加工性が低いことの原因に室温での展延性の低さがあり、そのため、非特許文献1に記載されているように、マグネシウム合金部材のプレス加工は温間から熱間域で行うことが有効であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−317989号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】古閑伸裕:塑性と加工(日本塑性加工学会誌)第44巻、第506号、p.250−255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マグネシウム合金部材やアルミニウム合金部材といった金属部材について、せん断加工を行うときは、例えば特許文献1に示されているようにパンチ(ポンチともいう)やダイといったせん断加工用の金型を用いる。
【0006】
しかし、マグネシウム合金部材は室温での展延性が低く、しかも脆いため、従来のせん断加工用の金型を用いてせん断加工を行うと、せん断加工によって現れた切口面(加工断面ともいう)に、凹凸の大きな破断面が凹凸のない滑らかなせん断面よりも大きく現われ、表面がでこぼこになってしまう、という課題があった。
【0007】
加工断面に破断面が現われると、マグネシウム合金部材の脆さゆえに破断面から細かいかけらやくずが落ちやすくなる。すると、せん断加工によってマグネシウム合金部材を例えば電子部品を載せるための基板に加工していたときは、破断面から落ちたかけらによって配線がショートするといった動作不良を起こすおそれが生じる。また、せん断加工で孔を形成すると、その孔に螺子を挿通する際、破断面の凹凸が邪魔になってスムーズな挿通が行いにくいといった課題もある。さらに、マグネシウム合金部材に孔開け加工をしたときは、孔の入口(だれ面)と出口(かえり面)とで内径差を生じてしまうため、孔の寸法精度を高められないといった課題もある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなり加工断面が滑らかになるようにしてせん断加工を行えるせん断加工用金型およびせん断加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、マグネシウム合金部材を貫通する貫通部を備えたマグネシウム合金部材のせん断加工用金型であって、貫通部は、その貫通部よりも硬度の高い硬質膜が表面上に形成されている硬質端部を有し、その硬質端部は、先端部からの幅wおよびマグネシウム合金部材の厚さdについて下記関係式を満たし、かつ先端部から幅wの部分がその幅wの部分以外の部分よりも径を狭めた縮径部となっているマグネシウム合金部材のせん断加工用金型を特徴とする。
d≦w≦3d
【0010】
このせん断加工用金型では、縮径部によってマグネシウム合金部材に形成される孔の内周面を漸次押し広げながらせん断加工を行える。
【0011】
上記せん断加工用金型の場合、縮径部は、その縮径部とその縮径部以外の部分との境目となる接続部から先端部に向かい漸次縮径されているようにすることができる。
【0012】
また、上記せん断加工用金型の場合、縮径部は、先端部から幅wの部分が均等な太さで形成されているようにすることができる。
【0013】
さらに、縮径部の先端部側に、太さの均等な均等縮径部が形成されているようにすることもできる。
【0014】
上記せん断加工用金型はいずれも、縮径部以外の部分の太さh1および縮径部の太さh2について下記関係式を満たすようにすることができる。
0.96≦h2/h1≦0.99
【0015】
そして、本発明は、マグネシウム合金部材を貫通する貫通部を備えたせん断加工用金型を用いたマグネシウム合金部材の加工方法であって、貫通部を挿通させる挿通孔を備えた受台にマグネシウム合金部材を載置し、貫通部との隙間がマグネシウム合金部材の厚さの2パーセントから16パーセントになるように挿通孔の内径を設定して、挿通孔に貫通部を挿通させるマグネシウム合金部材のせん断加工方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、本発明によれば、マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなり加工断面が滑らかになるようにしてせん断加工を行えるせん断加工用金型およびせん断加工方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るせん断加工用金型を備えたせん断加工装置の概略の構成を模式的に示す正面図である。
【図2】せん断加工用金型におけるパンチユニットを取付部とともに示した断面図で(a)は上型の下降前、(b)は上型の下降後を示す断面図である。
【図3】パンチを示す図で(a)は側面図、(b)は貫通部の正面図である。
【図4】テーパー部を備えた貫通部の先端部分を示す側面図である。
【図5】均等縮径部を備えた貫通部の先端部分を示す側面図である。
【図6】テーパー部および均等縮径部を備えた貫通部の先端部分を示す側面図である。
【図7】ストレート型の貫通部の先端部分を示す側面図である。
【図8】パンチによりマグネシウム合金板の孔開け加工が行われている様子を示す断面図で(a)はテーパー部を備えたパンチの場合、(b)はストレート型のパンチの場合を示している。
【図9】マグネシウム合金板を示す平面図である。
【図10】テーパー部を備えたパンチによりマグネシウム合金板の孔開け加工が行われている様子を示す断面図で、(a)はパンチの貫通部がマグネシウム合金板に接触した直後、(b)は貫通部が下降してマグネシウム合金板に亀裂が生じたとき、(c)は貫通部がさらに下降したときを示している。
【図11】均等縮径部を備えたパンチによりマグネシウム合金板の孔開け加工が行われている様子を示す断面図で、(a)はパンチの貫通部がマグネシウム合金板に接触した直後、(b)は貫通部が下降してマグネシウム合金板に亀裂が生じたとき、(c)は貫通部がさらに下降したときを示している。
【図12】先端部分(貫通部)の形状の異なるパンチを用意し、クリアランスを0.02mmにした場合と0.04mmにした場合とでそれぞれマグネシウム合金板について孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。
【図13】マグネシウム合金板について、“ストレート”を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像である。
【図14】同じく、拡大したSEM画像である。
【図15】マグネシウム合金板について、“テーパー”を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像である。
【図16】同じく、拡大したSEM画像である。
【図17】形状が“ストレート”で材質の異なる複数のパンチを用いてマグネシウム合金板について孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。
【図18】マグネシウム合金板について、“ハイス”で構成されたパンチを用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像である。
【図19】同じく、拡大したSEM画像である。
【図20】形状が“ストレート”で無処理のパンチと、ICFレッドDLC、ICFイエローDLC、CrN、TiCNの硬質膜を形成したパンチの5種類のパンチを用いてマグネシウム合金板について孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。
【図21】TiCNの硬質膜を形成したパンチを用いて孔開け加工を行った場合の孔の内周面を示すSEM画像である。
【図22】同じく、拡大したSEM画像である。
【図23】無処理のパンチを用いてアルミニウム合金板について孔開け加工を行った場合の孔の内周面を示すSEM画像である。
【図24】同じく、拡大したSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は本発明の実施の形態に係るせん断加工用金型を備えたせん断加工装置30の概略の構成を模式的に示す正面図である。図1に示すとおり、せん断加工装置30は、上型1と下型2とを有し、上型1がガイドポスト3によって上下に移動し、マグネシウム合金部材(例えば後述するマグネシウム合金板51、図9参照)に打ち抜きによる孔開け加工を行うようになっている。
【0020】
上型1は下型2と対向する側に取付部5が固定され、この取付部5に3本のパンチユニット6が下型2に向かって張り出すようにして固定されている。また、下型2の上型1と対向する側に受台(ダイス)4が固定されている。
【0021】
受台4は、上面が孔開け加工の対象となるマグネシウム合金部材を載せられる大きさの平坦に形成され、その一部に後述する貫通部11(図3,図4,図8等参照)を挿通させる寸法調整可能な挿通孔4aが形成されている(挿通孔4aは図8参照)。
【0022】
パンチユニット6は図2(a),(b)に詳しく示すように、取付部5により押されることによって撓みながら変形するパンチプレート7と、パンチプレート7の内側に摺動自在に納められたパンチ8と、パンチプレート7の取付部5から最も離れた端部に固定された押え部材9とを有している。
【0023】
押え部材9は厚肉円板状部材の中央に中心軸に沿った貫通孔が形成された構成を有している。その貫通孔は貫通部11の外形形状に応じた大きさで形成されている。また、貫通孔は図2(a)に示すように貫通部11の先端部分が挿入され、孔開け加工が行われるときに貫通部11が図2(b)に示すようにして摺動するようになっている。
【0024】
パンチ8は図3に示すように、鍔部10aと、鍔部10aに固定されているパンチ本体部10bと、パンチ本体部10bに固定され、マグネシウム合金部材を貫通する形状に形成された貫通部11とを有している。パンチ8は、パンチ本体部10bと貫通部11との径の大きさの異なるショルダーパンチと呼ばれる構造を有しており、貫通部11がマグネシウム合金部材を貫通することによって孔開けを行うために用いられる。パンチ8は例えばダイス鋼(SKDともいう)を用いることができる。
【0025】
鍔部10aは、取付部5からの脱落防止のために設けたものであって、厚肉円板状に形成されている。パンチ本体部10bは鍔部10aよりも径が小さく中心軸方向に沿って細長い円柱状に形成されている。
【0026】
貫通部11はパンチ本体部10bよりも径が小さく中心軸方向に沿って細長い円柱状に形成されている。この貫通部11は、パンチ本体部10bから離れた先端部分が図4に示すような構造を有している。貫通部11は、マグネシウム合金部材に最も先に接する部分、すなわち、先端部13aから所定範囲の部分に形成された硬質端部12を有し、その硬質端部12のうちの先端部13aから所定範囲の部分(後述する接続部15までの部分)がテーパー部13となったテーパー金型を構成している。
【0027】
硬質端部12は、太さの一様な貫通部本体12aよりも硬度の高い硬質膜12bが貫通部本体12aの表面上に形成された部分である。図4に示す網目部分が硬質端部12を示している。硬質膜12bは、例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)によって形成することができる。そのほか、硬質膜12bはCrN,TiCNなどによって形成することもできる。
【0028】
テーパー部13は中心軸に沿った長さ(高さ)が貫通部本体12aよりも短い(低い)円錐台と同等の形状を有し、その周面は、貫通部本体12aとの境目になる接続部15において最も径が大きく、接続部15から先端部13aに向かって漸次縮径されて形成されている。先端部13aは円形状の平坦面になっている。
【0029】
そして、貫通部11は貫通部本体12aの径の大きさ(太さ)をh1、テーパー部13の最も縮径された部分(先端部13a)の大きさをh2としたときにh2はh1よりも小さい大きさである。テーパー部13を設けることにより、マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなるようにするためには、下記式1に示すように、h1とh2との比が一定範囲内に納まるようにする必要がある。h1、h2の具体的な数値については後述する。
式1:0.96≦h2/h1≦0.99
【0030】
また、貫通部11はマグネシウム合金部材の孔開けしようとする部分(孔開け部分ともいう)の厚さdと、テーパー部13の中心軸に沿った長さ(幅ともいう)wについての下記の式2の関係を満たす形状に形成されている。d、wの具体的な数値については後述する。
式2:d≦w≦3d
【0031】
以上のような構成を有するせん断加工装置30の使用手順および動作内容について述べれば次のとおりである。
【0032】
まず、せん断加工を行おうとするマグネシウム合金部材を孔開け部分がパンチユニット6の真下に位置するようにして受台4の上に載せる。また、図8(a)に示すように、受台4の挿通孔4aの寸法を調整して、貫通部11の先端部13aとの隙間(クリアランスともいう)tがマグネシウム合金部材(マグネシウム合金板51)の厚さdの2〜16%程度になるように、挿通孔4aの内径を設定する。
【0033】
ここで、マグネシウム合金部材として、例えばマグネシウム合金板51を用いることができる。マグネシウム合金板51は図9に示すような平面視の寸法(面積)に対して厚さが薄い平面視矩形状の板材である。マグネシウム合金板51は圧延加工によって形成されているので、図9に示すような圧延方向を有している。
【0034】
次に、ガイドポスト3によって上型1をD1で示す方向(下向き)に移動させる。そして、パンチユニット6の押え部材9を孔開け部分に接触させ、パンチユニット6により、マグネシウム合金板51を受台4上に押さえつける。
【0035】
それから、さらに上型1を方向D1に移動させると、図2(b)に示すように取付部5から押されることによってパンチプレート7が撓み、パンチプレート7の長さが縮む。このパンチプレート7の縮みに伴い押え部材9が貫通部11に沿って上向きに摺動し、相対的に貫通部11の先端部分が押え部材9から突出する。このとき、貫通部11の先端部分がマグネシウム合金板51に接触して、下向きの力をさらに受けて終には貫通部11がマグネシウム合金板51を貫通する。こうして、マグネシウム合金板51に貫通部11の外形寸法に応じた孔を開ける孔開け加工が行われる。孔開け加工が行われるとマグネシウム合金板51には図9に示すような孔52が形成される。
【0036】
ここで、マグネシウム合金板51について、以上のような孔開け加工が行われているときについて図8(a)、図10を参照して詳しく述べれば次のとおりである。マグネシウム合金板51は、押え部材9と受台4とで挟み込まれて動かないように位置が固定されている。その状態のまま貫通部11が上から下に向かって押え部材9から突出するため、貫通部11の接触した部分が押し出される(飛び出る)ようにしてマグネシウム合金板51が変形する。このとき、マグネシウム合金板51は展延性が低いので、押し出される部分と、押え部材9および受台4に挟み込まれている部分との間に比較的早く亀裂(後述する亀裂e)を生じる。
【0037】
詳しくは、図10(a)に示すように、マグネシウム合金板51は貫通部11が接触してある程度食い込むまでは亀裂を生じることなく変形する。ところが、貫通部11が上側からさらに下降すると、図10(b)に示すように、マグネシウム合金板51は貫通部11によって押し出されている部分(押し出され部)51aと、それ以外の部分(本体部)51bとに分離し、双方の間に亀裂eが生じる。すると、マグネシウム合金板51は脆いため、押し出され部51aと本体部51bとに、亀裂eに起因して凹凸の大きな切口面54,55が現れる。
【0038】
そして、貫通部11は先端部分にテーパー部13が形成されているが、テーパー部13は先端部13aまで漸次縮径されている。そのため、テーパー部13は本体部51bの切口面55を図10(b)のfで示す方向に押し出し、したがって、孔の内周面を漸次押し広げながら押し出され部51aを下方に押し出していく。テーパー部13によるこのような動作は接続部15がマグネシウム合金板51に接触するまで継続する。
【0039】
接続部15がマグネシウム合金板51に接触すると、そこから後、貫通部11の太さが一様なので、切口面55に対する押し広げは治まるものの、切口面55に突出している部分があれば図10(c)に示すように接続部15によって削られる。このような過程を経ることにより、マグネシウム合金板51に孔を形成することができる。
【0040】
以上のように、貫通部11によってマグネシウム合金板51に孔開け加工を行った場合、テーパー部13により、孔の内周面(切口面55)を漸次押し広げながら孔開け加工を行うことができる。
【0041】
特に、テーパー部13の幅wがマグネシウム合金板51の厚さdに対して、d≦wの関係を満たしているから(前述の式2参照)、テーパー部13による押し広げが孔の内周面の厚さ方向全体に対して行われる。仮にd≦wの関係を満たしていないとすると、孔の内周面の中で押し広げが行われ難い箇所ができてしまい、切口面を滑らかにする効果が減殺されてしまうので好ましくない。
【0042】
一方、孔の内周面(切口面55)を滑らかにするには、適切なタイミングで接続部15がマグネシウム合金板51に到達する必要があり、そのためには、幅wが厚さdに対してw≦3dとすることが適切である。w>3dになるまでテーパー部13の幅を大きくすると、接続部15がマグネシウム合金板51に到達する前に孔開けが完了しやすくなり、好ましくない。
【0043】
さらに、貫通部11の太さh1、h2は、それらの比が前述の式1に示す一定範囲内に納まるように設定されている。ここで、太さh1、h2の比が式1を満たさない場合、例えば、h2/h1<0.96にすると、テーパー部13の周面の傾斜が孔の内周面に対して急になり、テーパー部13の周面から孔の内周面までの間隔が離れやすくなって孔の内周面への適切な押し広げを行い難くなる。また、0.99<h2/h1にすると、テーパー部13の周面の傾斜が緩慢になり、この場合も孔の内周面への適切な押し広げを行い難くなる。
【0044】
さらに、クリアランスtをマグネシウム合金板51の厚さdの2%〜16%の範囲内に納まるようにしている。この数値範囲は、後述する実施例1〜3に示すクリアランスtをいずれもカバーする範囲である。クリアランスtを厚さdの2%よりも小さくすると、先端部13aが挿通孔4aを通り難くなり、破断面が形成されやすくなるから好ましくない。クリアランスtを厚さdの16%よりも大きくすると、テーパー部13による押し広げ効果が減殺されるので好ましくない。
【0045】
このようなことを考慮し、テーパー部13を前述した構成とした上で、クリアランスtを厚さdの2%〜16%の範囲内に納まるようにすることにより、図10(c)に示すように切口面55について大きな凹凸を減らすことができるようになり、切口面55を滑らかにすることができる。したがって、貫通部11を用いてマグネシウム合金板51に孔開け加工を行うと、マグネシウム合金板51に形成された孔の表面には、凹凸のない滑らかなせん断面が大きく現れ、凹凸の大きな破断面はせん断面よりも小さくなる。
【0046】
すると、マグネシウム合金板51に孔開け加工を行い、例えば、電子部品を載せるための基板を形成した場合、形成された孔にはせん断面が破断面よりも大きく現れているため、破断面から落ちたかけらによって配線がショートするような不具合はほぼ解消されることとなる。しかも、孔に螺子を挿通する作業も行いやすくなり、孔の寸法精度を高めることもできる。
【0047】
その上、貫通部11は硬質端部12を有している。硬質端部12は貫通部本体12aの表面に硬質膜12bが形成されている。マグネシウム合金板51のようなマグネシウム合金部材は他の物質と溶着しやすい性質を有するものの、貫通部11が硬質端部12を有するため、貫通部11とマグネシウム合金板51との溶着が起こることはない。さらに、硬質端部12を有することによって貫通部11の耐摩耗性を高めることもできるから、パンチ8の耐久性を高めることもできる。
【0048】
(第2の実施形態)
前述したせん断加工装置30は、貫通部11(図4参照)を有するパンチ8(図2および図3)の代わりに図5に示すような貫通部21を有するパンチ8を用いることができる。貫通部21は図5に示すような構造を有している。貫通部21は貫通部11と比較して、テーパー部13の代わりに均等縮径部14を有し、均等縮径部14の貫通部本体12aに固定される付け根部分に、円環状に張り出す鍔部16が形成されて段付金型を構成している点で相違している。
【0049】
均等縮径部14は、貫通部本体12aと同様に円柱状に形成されているが、貫通部本体12aよりもやや径が小さく縮径されており、その付け根部分から先端まで(幅wの範囲が)均等な太さで形成されている。また、均等縮径部14の幅wが厚さdに対して前述した式2の関係を満たしている。
【0050】
貫通部21は貫通部本体12aの径の大きさ(太さ)をh1、均等縮径部14の径の大きさをh2としたときに、h2はh1よりも小さい大きさである。均等縮径部14を設けることにより、マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなるようにするためには、前述の式1に示すように、h1とh2との比が一定範囲内に納まるようにする必要がある。
【0051】
そして、マグネシウム合金板51について、貫通部21を備えたパンチ8によって前述と同様の孔開け加工が行われているときについて詳しく述べれば次のとおりである。
【0052】
すなわち、図11(a)に示すように、マグネシウム合金板51は貫通部21が接触してある程度食い込むまでは亀裂を生じることなく変形する。ところが、マグネシウム合金板51は展延性が低いので押し出され部51aと、押え部材9および受台4に挟み込まれている本体部51bとの間に亀裂を生じる。貫通部21が上側からさらに下降すると、図11(b)に示すように、マグネシウム合金板51は押し出され部51aと本体部51bとに分離して、亀裂に起因して凹凸の大きな切口面56,57が現れる。
【0053】
そして、貫通部21は先端部分に均等縮径部14が形成されている。均等縮径部14は貫通部本体12aよりも縮径された均等な太さを有し、鍔部16が均等縮径部14よりも張り出すような格好になっている。すると、図11(b)に示すように、鍔部16が孔の内部に進入していくときに切口面57のうちの突出している部分を鍔部16の張出幅(均等縮径部14の付根部分から張り出している円環状部分の幅)に応じた大きさで掻き落としながら進んでいく。そのため、図11(c)に示すように、切口面57のうちの大きく突出している部分が鍔部16によりその張出幅に応じた大きさで掻き落とされていく。
【0054】
一方、貫通部21の太さh1、h2について、h2/h1<0.96になっていたとすると、鍔部16の張出幅が大きくなりすぎてしまい、突出している部分が大きく掻き落とされてしまう。そうすると、マグネシウム合金板51の脆さゆえに切口面57が崩れて余計なかけらが発生してしまい、切口面57を滑らかにすることが困難である。また、0.99<h2/h1にすると、鍔部16の張出幅が小さくなりすぎてしまい、掻き落としが不十分になりやすい。
【0055】
しかし、貫通部21を前述した式1を満たす形状にすれば、切口面57に対して必要十分な大きさで掻き落としを行うことができ、切口面57を滑らかにすることができる。また、均等縮径部14の幅wが厚さdに対して前述した式2の関係を満たしているから、鍔部16による掻き落としを確実に行える。
【0056】
以上のように、貫通部21によってマグネシウム合金板51に孔開け加工を行った場合、鍔部16により、孔の内周面を鍔部16の張出幅に応じた大きさで掻き落とししながら孔開け加工を行うことができる。そのため、図11(c)に示すように切口面57について大きな凹凸を減少させることができ、切口面57を滑らかにすることができる。したがって、貫通部21を用いてマグネシウム合金板51に孔開け加工を行うと、マグネシウム合金板51の形成された孔の表面には、凹凸のない滑らかなせん断面が破断面よりも大きく現れる。よって、貫通部11を用いた場合同様に、配線がショートするような不具合は解消され、孔に螺子を挿通する作業も行いやすくなり、孔の寸法精度を高めることもできる。
【0057】
(第3の実施形態)
前述したせん断加工装置30は、貫通部11を有するパンチ8の代わりに図6に示すような貫通部22を有するパンチ8を用いることができる。貫通部22は図6に示すような構造を有している。貫通部22は貫通部11と比較して、テーパー部13における貫通部本体12aから離れた先端部分に均等縮径部17が形成されている点、テーパー部13と均等縮径部17との部分が幅w1になっている点とで相違している。均等縮径部17は、均等縮径部14と同様の円柱状に形成されているが、先端部13aよりもやや径が小さく縮径されており、その付け根部分から先端まで均等な太さで形成されている。
【0058】
貫通部22は貫通部本体12aの径の大きさ(太さ)をh1、均等縮径部17の径の大きさをh2としたときに、太さh1、h2の比が前述の式1を満たす形状に形成されている。
【0059】
そして、マグネシウム合金板51について、貫通部22を備えたパンチ8によって前述の同様の孔開け加工を行うと、テーパー部13により、孔の内周面を漸次押し広げながら孔開け加工を行うことができ、その後、接続部15によって切口面の突出している部分を掻き落としながら孔を開けることができる。そのため、この場合も、マグネシウム合金板51に形成された孔の表面には、凹凸のない滑らかなせん断面が破断面よりも大きく現れるようになる。
【実施例1】
【0060】
次に、以上のようなパンチ8を用いてマグネシウム合金板51について実際に行った孔開け加工の結果について述べれば次のとおりである。
【0061】
ここで、図12は、貫通部の形状の異なるパンチ8を用意し、クリアランスを0.02mmにした場合と0.04mmにした場合とでそれぞれマグネシウム合金板51について孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。マグネシウム合金板51は厚さdを0.5mmにしているため、クリアランスtは、0.02mm、0.04mmの場合で厚さdに対してそれぞれ4%、8%になる。
【0062】
図12において、“ストレート”とは、図7、図8(b)に示す貫通部100を備えたパンチのように、先端部分の太さが均一な貫通部を備えたパンチを意味している。また、“段つき”とは、貫通部21を備えたパンチ8(図5)を意味し、“テーパー”とは、貫通部11を備えたパンチ8(図4)を意味している。
【0063】
貫通部21(図5)について、h1は直径3.1mm、h2は直径3.02mm、貫通部11(図4)について、h1は直径3.1mm、h2は直径3.03mmとし、テーパー部13のテーパー角(図4に示す角度x)は2°に設定している。また、幅wは1mmに設定している。
【0064】
図12に示すように、“ストレート”(図7に示した貫通部100)を用いて孔開け加工を行った場合、せん断面の長さがクリアランスを0.02mm、0.04mmにした場合でそれぞれマグネシウム合金板51の厚さの40%、20%に留まるため、破断面がせん断面よりも大きくなる。これに対し、“段つき”を用いて孔開け加工を行うと、せん断面の長さがクリアランスを0.02mm、0.04mmにした場合でそれぞれマグネシウム合金板51の厚さの100%、60%にまで拡大されるから、せん断面の方が破断面よりも大きくなる。また、“テーパー”を用いて孔開け加工を行うと、せん断面の長さがクリアランスを0.02mm、0.04mmにした場合でいずれも80%にまで拡大されるから、この場合もせん断面の方が破断面よりも大きくなる。
【0065】
この結果からみて明らかなとおり、前述した貫通部11(“テーパー”)、貫通部21(“段つき”)を備えたパンチ8を用いて孔開け加工を行うと、せん断面が破断面よりも大きくなった孔を形成することができる。特に、“段つき”の場合はクリアランスtをマグネシウム合金板51の厚さdの4%にした場合の方がせん断面が大きくなるから、クリアランスtを厚さdの4%に設定して孔開け加工を行うことが好ましい。
【0066】
図13は、マグネシウム合金板51として,代表的なマグネシウム合金であるAZ31からなるマグネシウム合金板51(厚さdは0.5mm)について、“ストレート”(図7に示した貫通部100)を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像であり、図14はその拡大したSEM画像である。いずれもクリアランスtは8%に設定されている。図13,14に示すように、孔の内周面には大きな凹凸が多数現れており、表面がでこぼこしてざらついていることが理解される。
【0067】
一方、図15は、同じAZ31からなるマグネシウム合金板51(厚さdは0.5mm)について、“テーパー”を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像であり、図16はその拡大したSEM画像である。クリアランスtは4%に設定されている。図15,16に示すように、孔の内周面の下側2割程度の範囲にやや大きな凹凸が現れているものの、上側8割程度は極めて滑らになっている。したがって、“テーパー”を用いることによって、破断面よりも大きなせん断面を備えた孔が形成されることが理解される。
【0068】
図13〜16から明らかなとおり、“テーパー”(貫通部11を備えたパンチ8)を用いることによって、破断面よりも大きなせん断面を備えた孔を形成することができる。
【0069】
一方、図23は、アルミニウム合金を用いたマグネシウム合金板51と同様の板材(アルミ合金板)について、“ストレート”を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像であり、図24はその拡大したSEM画像である。アルミニウム合金は展延性が高いので、“ストレート”を用いて孔開け加工を行っても、図23,24に示すように、孔の内周面には、下側1割から2割程度の部分にやや大きな凹凸が現れているものの、それ以外の部分はとても滑らになっている。
【0070】
つまり、“テーパー”(貫通部11を備えたパンチ8)を用いることにより、たとえ展延性が低くて脆いマグネシウム合金板であっても、アルミ合金板とほぼ同等の品質で孔開け加工を行えるようになる、ということが理解される。
【実施例2】
【0071】
次に、材質の違いによる孔開け作用の相違を調べるため、形状が“ストレート”であるが、材質の異なる複数のパンチを用いてマグネシウム合金板51について孔開け加工を行った。その結果は、図17に示されている。
【0072】
図17は、形状は“ストレート”であるが、材質の異なる複数のパンチを用意し、クリアランスを0.04mm、0.06mm、0.08mmにした場合についてそれぞれマグネシウム合金板51について孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。マグネシウム合金板51は厚さdを0.5mmにしているため、クリアランスtは、0.04mm、0.06mm、0.08mmの場合で厚さdに対してそれぞれ8%、12%、16%になる。
【0073】
図17において、“SKD”とは、ダイス鋼(Die Steel)とも呼ばれ、耐摩耗性および靭性の高い高炭素、高クロム鋼や、炭素鋼にCrなどを添加した工具鋼を用いたパンチ8を意味している。また、“ハイス”とは、ハイス鋼(High Speed Steel)を意味し、高速度工具鋼を用いたパンチ8を意味している。高速度工具鋼は成分中にタングステンを多量に含むタングステ系ハイスと、モリブデンを含むモリブデン系ハイスとに分けられる。さらに、“粉末ハイス”とは、粉末治金法により生成されたパンチ8を意味している。粉末治金法とは、霧吹状にした合金成分素材を集め焼き固める技術であり、粒子が均一で精密な素材を生成することができる。
【0074】
図17に示すように、“SKD”では、クリアランスを0.04mm、0.06mm、0.08mmにした場合でそれぞれせん断面の長さが40%、70%、60になったのに対し、“ハイス”では、90%、60%、60%にまで拡大されている。また、“粉末ハイス”では、90%、40%、20%になっている。この結果からみて、せん断面の方が破断面よりも大きくなる、すなわち、せん断面の長さが50%を超えるのは、“SKD”でクリアランスを0.06mm、0.08mmにした場合、“ハイス”でクリアランスを0.04mm、0.06mm、0.08mmにした場合、“粉末ハイス”でクリアランスを0.04mmにした場合である。
【0075】
したがって、パンチの材質は、“SKD”、“ハイス”、“粉末ハイス”のいずれでもよいが、クリアランスによることなく大きなせん断面が現れるという点では3つの中では“ハイス”が好ましい。また、クリアランスtはマグネシウム合金板51の厚さdの8%〜16%の範囲に設定することで、せん断面が破断面よりも大きくなることが理解される。図17は、形状が“ストレート”のパンチについての結果を示しているが、“段つき”や“テーパー”についても同様であると考えられる。なお、図18は、“ハイス”を用いて形成した孔の内周面を示すSEM画像であり、図19は拡大したSEM画像である。
【実施例3】
【0076】
次に、硬質膜の違いによる孔開け作用の相違を調べるため、形状が“ストレート”であるが、膜質の異なる硬質膜を形成したパンチを用いてマグネシウム合金板51について孔開け加工を行った。その結果は、図20に示されている。
【0077】
図20は、形状は“ストレート”であるが、無処理(硬質膜を形成しない場合)のパンチと、ICFレッドDLC、ICFイエローDLC、CrN、TiCNの硬質膜をそれぞれ形成したパンチという5種類のパンチを用いてクリアランスを0.02mm、0.04mmにした場合のそれぞれについてマグネシウム合金板51に孔開け加工を行った結果をまとめたグラフである。マグネシウム合金板51は厚さdを0.5mmにしているため、クリアランスtは、0.02mm、0.04mmの場合で厚さdに対してそれぞれ4%、8%になる。
【0078】
無処理では、クリアランスを0.02mm、0.04mmにした場合のそれぞれでせん断面の大きさが40%、20%に留まるのに対し、ICFレッドDLC、ICFイエローDLC、CrN、TiCNの硬質膜を形成した場合はいずれも60%以上になっている。したがって、これらの硬質膜を形成することにより、破断面よりも大きなせん断面を備えた孔が形成されることが理解される。図20は、形状が“ストレート”のパンチについての結果を示しているが、“段つき”や“テーパー”についても同様であると考えられる。なお、図21は、TiCNの硬質膜を形成した場合の孔の内周面を示すSEM画像であり、図22は拡大したSEM画像である。
【0079】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【0080】
例えば、以上の説明では、平面視の大きさに対して厚さの薄いマグネシウム合金板51について孔開け加工を行う場合を例にとって説明しているが、マグネシウム合金板51と厚さは同じであるが平面視の大きさが小さい部材について孔開け加工を行う場合についても本発明は適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明を適用することにより、マグネシウム合金部材について、破断面がせん断面よりも小さくなり加工断面が滑らかになるようにしてせん断加工を行える。
【符号の説明】
【0082】
8…パンチ、11、21,22…貫通部、12…硬質端部、12a…貫通部本体、13…テーパー部、14,17…均等縮径部、15…接続部、16…鍔部、51…マグネシウム合金板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム合金部材を貫通する貫通部を備えたマグネシウム合金部材のせん断加工用金型であって、
前記貫通部は、該貫通部よりも硬度の高い硬質膜が表面上に形成されている硬質端部を有し、該硬質端部は、先端部からの幅wおよび前記マグネシウム合金部材の厚さdについて下記関係式を満たし、かつ前記先端部から前記幅wの部分が該幅wの部分以外の部分よりも径を狭めた縮径部となっていることを特徴とするマグネシウム合金部材のせん断加工用金型。
d≦w≦3d
【請求項2】
前記縮径部は、該縮径部と該縮径部以外の部分との境目となる接続部から前記先端部に向かい漸次縮径されていることを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金部材のせん断加工用金型。
【請求項3】
前記縮径部は、前記先端部から前記幅wの部分が均等な太さで形成されていることを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金部材のせん断加工用金型。
【請求項4】
前記縮径部の前記先端部側に、太さの均等な均等縮径部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のマグネシウム合金部材のせん断加工用金型。
【請求項5】
前記縮径部以外の部分の太さh1および前記縮径部の太さh2について下記関係式を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のマグネシウム合金部材のせん断加工用金型。
0.96≦h2/h1≦0.99
【請求項6】
マグネシウム合金部材を貫通する貫通部を備えたせん断加工用金型を用いたマグネシウム合金部材の加工方法であって、
前記貫通部を挿通させる挿通孔を備えた受台に前記マグネシウム合金部材を載置し、
前記貫通部との隙間が前記マグネシウム合金部材の厚さの2パーセントから16パーセントになるように前記挿通孔の内径を設定して、前記挿通孔に前記貫通部を挿通させることを特徴とするマグネシウム合金部材のせん断加工方法。
【請求項1】
マグネシウム合金部材を貫通する貫通部を備えたマグネシウム合金部材のせん断加工用金型であって、
前記貫通部は、該貫通部よりも硬度の高い硬質膜が表面上に形成されている硬質端部を有し、該硬質端部は、先端部からの幅wおよび前記マグネシウム合金部材の厚さdについて下記関係式を満たし、かつ前記先端部から前記幅wの部分が該幅wの部分以外の部分よりも径を狭めた縮径部となっていることを特徴とするマグネシウム合金部材のせん断加工用金型。
d≦w≦3d
【請求項2】
前記縮径部は、該縮径部と該縮径部以外の部分との境目となる接続部から前記先端部に向かい漸次縮径されていることを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金部材のせん断加工用金型。
【請求項3】
前記縮径部は、前記先端部から前記幅wの部分が均等な太さで形成されていることを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金部材のせん断加工用金型。
【請求項4】
前記縮径部の前記先端部側に、太さの均等な均等縮径部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のマグネシウム合金部材のせん断加工用金型。
【請求項5】
前記縮径部以外の部分の太さh1および前記縮径部の太さh2について下記関係式を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のマグネシウム合金部材のせん断加工用金型。
0.96≦h2/h1≦0.99
【請求項6】
マグネシウム合金部材を貫通する貫通部を備えたせん断加工用金型を用いたマグネシウム合金部材の加工方法であって、
前記貫通部を挿通させる挿通孔を備えた受台に前記マグネシウム合金部材を載置し、
前記貫通部との隙間が前記マグネシウム合金部材の厚さの2パーセントから16パーセントになるように前記挿通孔の内径を設定して、前記挿通孔に前記貫通部を挿通させることを特徴とするマグネシウム合金部材のせん断加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−194575(P2010−194575A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42030(P2009−42030)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【出願人】(594069959)株式会社増田金属工業所 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【出願人】(594069959)株式会社増田金属工業所 (1)
【Fターム(参考)】
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