説明

マグネシウム合金部材

【課題】表面に活性な改質層を備え、接着性や塗装性に優れたマグネシウム合金部材を提供すること。
【解決手段】Alを含有するマグネシウム合金から成るマグネシウム合金部材において、その表面に、原質部よりも高いAlを含有する改質層を形成する。このような改質層を介して他の部材と接着したり、塗膜を形成したりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム合金の表面改質技術と、これを利用した接着、塗装技術に係わり、マグネシウム合金の表面を活性化し、接着性に優れた改質層を備えたマグネシウム合金部材に関するものである。また、上記改質層を介して他の部材と接着されたマグネシウム合金部材、さらには、上記改質層を介して塗膜層を備えたマグネシウム合金部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の軽量化を目的に、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂材料と並んで、アルミニウムやマグネシウムなどを主成分とする軽金属材料の適用が拡大している。
【0003】
これら軽金属材料同士、あるいは軽金属材料と他の材料から成る部材とを接着して一体化する技術の発展は、被着材である軽金属材料の表面改質と接着剤の技術開発に支えられており、このうち被着材である軽金属材料の表面改質、すなわち接着前の処理方法としては、クロムフリー酸性組成物による表面処理方法、例えば、耐食性に優れる皮膜となり得る成分の水溶液で処理した後、水洗を行わずに焼付け・乾燥することによって皮膜を固定化する表面処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−195244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、皮膜の生成に化学反応を伴わないため、鉄や鋼、亜鉛合金、アルミニウム合金のみならず、マグネシウム合金などの様々な金属材料に適用することが可能ではある。
しかし、処理・乾燥によって表面処理皮膜を作るため、車両部材のような複雑な構造物を均一に処理することは困難であり、特に、マグネシウム合金に対しては、耐久性に優れた処理皮膜が得られず、接着性が得られ難いといった課題があった。
【0006】
本発明は、軽金属材料、特にマグネシウム合金に関する従来の表面処理方法や表面改質技術における上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、表面に活性な改質層を備え、接着性に優れたマグネシウム合金部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を繰り返した結果、Alを含有するマグネシウム合金部材において、その表面に、部材の原質部よりも高いAlを含有する改質層を形成することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のマグネシウム合金部材は、上記知見に基づくものであって、Alを含有するマグネシウム合金から成るものであって、その表面に改質層を備え、当該改質層の表面におけるAl含有量が原質部よりも高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Alを含有するマグネシウム合金から成る部材の表面に、改質層を備え、その表面におけるAl含有量を原質部よりも高いものとしたから、当該改質層の表面活性を高めることができ、マグネシウム合金部材の接着性が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例において接着性の評価に用いたマグネシウム合金部材の形状・寸法を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例において接着性の評価に用いた接着試験片の形状・寸法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のマグネシウム合金部材について、その製造方法などと共に、さらに具体的かつ詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」については、特記しない限り質量百分率を意味するものとする。
【0012】
本発明のマグネシウム合金部材は、上記したように、その表面に改質層を備え、当該改質層の表面におけるAl含有量が原質部よりも高いものとなっている。
すなわち、改質層表面にはAlが富化されているため、相対的にMgの含有量が少なくなって、難接着性の酸化マグネシウムが減少すると共に、接着剤や塗料に含まれる官能基とAlとの共有結合や水素結合が形成されやすくなって、接着性や塗装性が向上することになる。
【0013】
本発明のマグネシウム合金部材におけるAl含有量については、Alが含有されている限り、必ずしも限定はないが、2%以上のAlを含有するマグネシウム合金であることが望ましく、表面活性に富む改質層をより確実に形成することができる。
【0014】
このような合金材の具体例としては、例えばSAE(米国自動車技術協会規格)J465に規定されるAZ31、AZ31B、AZ61、AZ91、AZ91D、AM50、AM60、AM60BなどのAl含有マグネシウム合金を挙げることができる。
ここで、表記の「AZ」や「AM」は、添加されている金属元素を示し、「A」はアルミニウムであり、「M」はマンガン、「Z」は亜鉛を意味する。また、これらの表記に続く数字は、これら添加元素の添加割合を示しており、例えば、AZ91であれば、アルミニウムが9%であり、亜鉛が1%含まれることを示している。これらマグネシウム合金のうちでは、AZ31、AZ61、AZ91、AM60、AM60Bを代表例として挙げることができる。
【0015】
また、他の具体例としては、AS21X(2%のAlと1%のSiを含有するマグネシウム合金板の商品名)、MRI153(8%のAlと1%のCaを含有するマグネシウム合金板の商品名)などのマグネシウム合金板を使用することも可能である。
【0016】
本発明のマグネシウム合金部材の本体部分の製法については、特に限定はなく、例えば金型や砂型による鋳造(ダイカストも含む)、押出し、鍛造、プレスなどの成形方法により得たものを用いることができる。
また、改質層は、必ずしも合金部材の全面に施す必要はなく、処理の必要な部分、例えば接着や塗装を施す部位のみに局所的に施すことも可能である。
【0017】
改質層表面のAl含有量については、マグネシウム合金部材の本体部、すなわち合金基材の原質部におけるAl含有量の1.5倍以上に富化されていることが望ましく、これによって、極めて優れた接着性や塗装性(塗料の密着性)が発揮されることになる。
【0018】
本発明のマグネシウム合金部材の製造方法、すなわち、マグネシウム合金基材の表面にAlが富化された改質層を形成する方法については、特に限定されるものではなく、例えば基材表面を高温の水蒸気に曝すスチーム処理などを適用することができる。この場合、マグネシウム合金表面のMgが溶出するため、表面の酸化マグネシウムが消失し、マグネシウム合金内に存在しているAlが露出してくるため、Alが富化される。また、スチーム処理の他にAlメッキ、イオン注入などでもマグネシウム合金表面のAlを富化させることは可能である。
【0019】
一方、無機塩化物の少なくとも1種を含む水溶液中に、マグネシウム合金基材を浸漬させる浸漬処理を採用することが好ましい。
当該浸漬処理に用いる処理液としては、無機塩化物の中でも、金属塩化物が好ましく、例えば塩化リチウム、塩化ルビジウム、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどを単独、あるいは種々に組み合わせて水溶液としたものを用いる。このときの水溶液中における塩素濃度としては、0.004モル%以上〜飽和濃度以下であることが望ましい。
【0020】
このような無機塩化物、とりわけ金属塩化物は、水中において単純に塩素イオンと金属イオン(カチオン)とに乖離(電離)し、水に対する溶解性が高いため、水溶液中のOHイオン濃度が増加する。したがって、後述するようなマグネシウム合金材の表面における複水酸化物の生成も効率的なものとなる。
【0021】
このような塩化物水溶液にマグネシウム合金を浸漬することによって、合金表面のMg元素が優先的に溶出することになり、合金中のAl元素を表面に露出させて濃化させることができ、合金基材の強度低下や表面改質層の耐久性劣化を引き起こすことなく、信頼性の高い改質層を効率的に形成することができる。
すなわち、マグネシウム合金の表面においては、Mgの溶出によって、難接着性成分である酸化マグネシウム含有率が低下し、Al元素の含有率が相対的に増加する。これによって、接着性樹脂や塗料の成分樹脂に含まれるアクリル基やエポキシ基、イソシアネート基、水酸基などの官能基が、共有結合や水素結合などの化学結合を形成しやすくなり、極めて優れた接着性や塗装性(塗料の密着性)が発揮されることになる。
【0022】
なお、本発明において、マグネシウム合金部材の表面にAlが露出し、Alが濃化されていることを確認する方法としては、例えば、X線光電子分光分析方法(XPS)を挙げることができ、Al元素の含有率(mol%)をこの方法に基づいて求めることにより、容易に確認することができる。
【0023】
本発明のマグネシウム合金部材における改質層の表面には、Al及びMgを含む複水酸化物が形成されていることが望ましい。このような複水酸化物は、例えば上記した浸漬処理によって形成することができる他、2価と3価の混合金属塩水溶液と、アルカリ性溶液とを混合することで沈殿物として生成することもできる。
上記複水酸化物は、例えば、Mg8−xAl2xCO・nHO(x=2,3,4,5、n=0,1,2,3・・・)で表わすことができ、接着剤や塗料の成分樹脂に含まれるアクリル基やエポキシ基、イソシアネート基、水酸基などの官能基と、共有結合や水素結合などの化学結合を形成し易い特性を有する。また、当該複水酸化物中に含まれる結晶水や吸着水の凝着力によって、接着剤や塗料の密着性や耐久性を大幅に向上させる機能を発揮する。なお、上記化学式中のCは、空気中の二酸化炭素とMgが反応して炭酸マグネシウムが生成されることに由来する。
【0024】
なお、マグネシウム合金部材の改質層に上記のような複水酸化物が形成されていることを確認するには、例えば、フーリエ変換型赤外分光分析(FT−IR)によって観測されたスペクトルを解析することによって行うことができる。
【0025】
本発明のマグネシウム合金部材は、原質部よりも高いAl含有量を備えた改質層の表面において接着性樹脂層を介して他の部材と接合した接合体とすることができる。
ここで、他の部材、すなわち接合の相手部材としては、何ら限定はなく、種々の材料から成る部材や物品などを適用することができる。もちろん、改質層を備えた本発明のマグネシウム合金部材を相手材とすること、すなわち本発明のマグネシウム合金部材同士を接合することも含まれる。
【0026】
相手部材の具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂やポリプロピレン(PP)樹脂などを含むポリオレフィン樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール(PF)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂などから成る樹脂成形品や、鉄鋼材料、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金などから成る金属成形品、炭素繊維やアラミド繊維、ガラス繊維、天然繊維などから成る織物、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)などから成るゴム成形品、ガラスやセラミック製品などが挙げられる。これら部材のうちでは、樹脂成形品や金属成形品が好ましい。
【0027】
また、上述の接着性樹脂層としては、マグネシウム合金部材の改質層の少なくとも一部、代表的には改質層の表面全体に塗布され、任意の材料から成る他の部材と接合した後に硬化する樹脂であれば、特に限定されず、種々の接着性樹脂を用いることができる。具体的には、
(1)ポリオレフィン系(ポリエチレン(PE)系、エチレン−酢酸ビニル(EVA)系など)、合成ゴム系(ポリブタジエン(SBS)系、ポリイソプレン(SIS)系など)、ポリアミド系、ポリエステル系などのホットメルト樹脂
(2)エポキシ樹脂
(3)ウレタン樹脂
(4)天然ゴム系、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)系、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)系、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)系、クロロプレンゴム(CR)系、ブチルゴム(IIR)系、ブタジエンゴム(BR)系などの合成ゴム
(5)第二世代アクリル系(SGA)などのアクリル樹脂
(6)ユリア樹脂
(7)メラミン樹脂
(8)フェノール樹脂
(9)変性シリコーンを含むシリコーン樹脂などを挙げることができる。
【0028】
このような接着性樹脂の、マグネシウム合金部材の改質層上への塗布方法としては、刷毛や筆で直接塗布したり、布に予め含浸させて塗布したり、スプレーやブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、フローコーター、カーテンコーターなどの塗工装置を用いた塗布方法や、ディッピング、塗布ガンなどによる塗布方法があるが、特にこれらに限定される訳ではない。
また、接着性樹脂を塗布し、相手部材と接合した後、接着性樹脂の硬化を促進するために、加熱処理や加湿処理を適宜必要に応じて実施することができる。特に、エポキシ樹脂やウレタン樹脂、シリコーン樹脂を用いる場合、温度40℃〜150℃、湿度30%RH〜100%RHで硬化を促進させることが好ましい。
【0029】
なお、上記した各種接着性樹脂のうちでは、特にアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂から成る群から少なくとも1種を用いることが好ましく、これによって優れた作業性、速硬化性と共に、十分な耐久接着性を実現することができる。
【0030】
アクリル樹脂としては、熱可塑性アクリル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、湿気硬化性アクリル樹脂などがあるが、特に限定されず、種々のアクリル樹脂を用いることができる。 上記熱可塑性アクリル樹脂の具体的な例としては、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのアクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルの重合体及び共重合体などが挙げられる。この場合、エステル化物のエステル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−へキシル、ラウリル、ステアリルなどのアルキル基でよい。共重合体の場合、エステル基の種類は、2種以上併用できる。
【0031】
熱硬化性アクリル樹脂の具体例としては、分子中に架橋構造を形成できるような官能基(カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メチロール基、エポキシ基など)を持ったモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどの群と、このような官能基を持たない、例えばスチレン並びに上記のアクリル酸もしくはメタクリル酸エステルの群という2つの群から選ばれる2種以上のモノマーを共重合して得られるポリマーが挙げられる。
【0032】
また、湿気硬化性アクリル樹脂の具体例としては、メチルシアノアクリレートやエチルシアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレートなどが挙げられる。
これらアクリル樹脂のうちでは、熱硬化性アクリル樹脂又は湿気硬化性アクリル樹脂が好ましい。
【0033】
さらに、上記アクリル樹脂は、必要に応じて添加剤を含んでもよい。かかる添加剤としては、
(1)ヒンダードアミン、ハイドロキノン、ヒンダードフェノール、硫黄含有化合物などの酸化防止剤類
(2)ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、サリチル酸エステル、金属錯塩などの紫外線吸収剤類
(3)金属石鹸、重金属の無機及び有機塩、有機錫化合物などの耐候性安定剤類
(4)フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステルなどの可塑剤類
(5)パラフィンワックス、重合ワックス、密ロウ、鯨ロウ、低分子量ポリオレフィンなどのワックス類
(6)炭酸カルシウム、カオリン、タルク、マイカ、ベントナイト、クレー、カーボンブラック、ガラスバルーン、アクリル樹脂粉、フェノール樹脂粉、セラミック粉末、ゼオライト、酸化チタンなどの有機及び無機充填材類
(7)ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維などの有機及び無機繊維類
(8)帯電防止剤類
(9)抗菌剤類
(10)脱水剤類
(11)難燃剤類
(12)溶剤類
(13)顔料類
(14)香料類
(15)硬化促進剤などを例示することができる。これらの添加剤は2種以上を併用することができる。
【0034】
次に、ウレタン樹脂としては、分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物を含んでいれば、特に限定されず、種々のウレタン樹脂を使用することができる。
上記イソシアネート基を分子中に2個以上有する化合物の具体的な例としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'−MDI)、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ジイソシアネート類やヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ジイソシアネート類、トランスシクロヘキサンー1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6−XDI(水添XDI)、H12−MDI(水添MDI)などの脂環式ジイソシアネート類、上記ジイソシアネートのカルボジイミド変性ジイソシアネート類、またはこれらのイソシアヌレート変性ジイソシアネート類などが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、4,4'−MDI、2,4'−MDI、HDI、XDI、またはこれらの化合物をプレポリマー化したものが好ましい。
【0035】
また、ウレタン樹脂としては、上記イソシアネート基を分子中に2個以上有する化合物以外に、必要に応じてポリオール化合物を併用することができる。このポリオール化合物としては、分子中に水酸基を2個以上有する化合物を含んでいれば、特に限定されない。
具体例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)などのポリエーテルポリオール類、縮合系やラクトン系のポリエステルポリオール類などが挙げられる。これらポリオール化合物のうちでも、ポリエーテルポリオール類が好ましい。
【0036】
さらに、上記ウレタン樹脂は、上記イソシアネート基を分子中に2個以上有する化合物以外に、必要に応じて触媒を含んでもよい。この触媒としては、ウレタン樹脂の硬化速度を、必要に応じて促進したり、遅延したりするものであれば、特に限定されず、種々のものを使用することができる。
具体的な例としては、トリエチルアミン(TEA)、N,N'−ジメチルシクロヘキシルアミン(DMEDA)などのモノアミン類、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン(TMHMDA)などのジアミン類、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジプロピレン−トリアミン(PMDPTA)、テトラメチルグアニジン(TMG)などのトリアミン類、トリエチレンジアミン(TEDA)、N,N'−ジメチルピペラジン(DMP)、N−メチルモルホリン(NMMO)などの環状アミン類、ジメチルアミノエタノール(DMEA)、N−メチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン(MHEP)などのアルコールアミン類が挙げられる。これら触媒のうちでもトリアミン類、環状アミン類が好ましい。
【0037】
加えて、上記ウレタン樹脂は、上記イソシアネート基を分子中に2個以上有する化合物以外に、必要に応じて添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、上述の添加剤と同様であり、2種以上併用することもできる。
【0038】
エポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と硬化剤を含んでいれば、特に限定されず、各種のエポキシ樹脂を使用することができる。
このようなエポキシ化合物の具体例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グルシジルエステル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂などが挙げられるが、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である。
【0039】
上記硬化剤の具体的な例としては、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、イソフォロンジアミン(IPDA)、N−アミノエチルピペラジン(N−AEP)などの脂肪族アミン類、m−キシレンジアミン(MXDA)などの脂肪族芳香族アミン類、メタフェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルフォン(DDS)などの芳香族アミン類、ジシアンジアミド(DICY)、アジピン酸ジヒドラジド(AADH)などのその他のアミン類、エポキシ化合物付加ポリアミンやマイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミンなどの変性ポリアミン類、ポリアミドアミン類、無水フタル酸(PA)やテトラヒドロ無水フタル酸(THPA)、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MeTHPA)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(MeHHPA)、無水メチルナジック酸(MNA)、ドデシル無水コハク酸(DDSA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物(BTDA)、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)(TMEG)、無水トリメリット酸(TMA)、ポリアゼライン酸無水物(PAPA)の酸無水物類などが挙げられるが、好ましくは、脂肪族アミン類、その他のアミン類、変性ポリアミン類、ポリアミドアミン類である。
【0040】
また、上記エポキシ樹脂は、エポキシ基を分子中に2個以上有する化合物と硬化剤以外に、必要に応じて触媒を含んでもよい。このような触媒としては、エポキシ樹脂の硬化速度を、必要に応じて促進したり、遅延したりするものであれば、特に限定されることなく使用することができる。
具体的な例としては、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−10)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、トリエタノールアミン、テトラメチルグアニジン、ピリジン、ピコリン、ピペリジン、ピロリジン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)など3級アミン類などが挙げられるが、DMP−10、DMP−30が好ましく使用できる。
【0041】
さらに、上記エポキシ樹脂は、エポキシ基を分子中に2個以上有する化合物と硬化剤以外に、必要に応じて添加剤を含んでもよい。この添加剤としては、上述の添加剤と同様であり、2種以上併用することができる。
【0042】
そして、シリコーン樹脂としては、熱硬化型シリコーン樹脂や湿気硬化型シリコーン樹脂などがあるが、特に限定されず、各種のシリコーン樹脂を用いることができる。
熱硬化型シリコーン樹脂の具体的な例としては、ビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、Si−H基を有するオルガノヒドロポリシロキサンとを主成分とし、白金錯体を触媒とする組成物などが挙げられる。湿気硬化型シリコーン樹脂の具体的な例としては、脱アルコール型シリコーン樹脂、脱オキシム型シリコーン樹脂、脱酢酸型シリコーン樹脂、脱アミド型シリコーン樹脂、脱アセトン型シリコーン樹脂などが挙げられる。これらシリコーン樹脂のちでも、湿気硬化型シリコーン樹脂が好ましい。
【0043】
上記シリコーン樹脂は、必要に応じて添加剤を含んでもよい。この添加剤としては、上述の添加剤と同様であり、2種以上を併用することもできる。
【0044】
これら接着性樹脂の使用方法としては、金属表面の少なくとも一部に塗布し、任意の材料から成る部材と接合した後、硬化させる方法であれば、特に限定されない。ただし、耐久接着性の観点からは、上記硬化性樹脂をあらかじめ溶剤で希釈した硬化性樹脂溶液を改質表面の少なくとも一部に塗布し、溶剤を揮発・乾燥させた後、さらに塗布ガンを用いて接着性樹脂を塗布し、相手部材と接合・硬化させる方法が好ましい。なお、必要に応じて、相手部材の接合面にも同様に、接着性樹脂溶液をあらかじめ塗布・乾燥させておいてもよい。
【0045】
本発明のマグネシウム合金部材を接着して成る接合体においては、改質層表面にAlが富化され、難接着性の酸化マグネシウムが減少すると共に、接着性樹脂(接着剤)に含まれる官能基とAlとの共有結合や水素結合が形成されやすくなって、優れた接着性が長期に亘って発揮されることになる。
特に、改質層表面に上記のような複水酸化物が形成されている場合の接着力は、複水酸化物と、接着性樹脂に含まれるアクリル基やエポキシ基、イソシアネート基、水酸基などの官能基との共有結合や水素結合などといった化学結合の形成や、結晶水、吸着水の存在により発生する物理的な凝着力の総和と考えられる。したがって、従来の化成処理やブラスト処理などに対して、極めて優れた耐久接着性を示すことになる。
【0046】
また、本発明のマグネシウム合金部材は、改質層表面の少なくとも一部に、インキや塗料を用いて印刷や塗装を施すことができ、上記した接合(接着)の場合と同様の原理に基づく化学的及び物理的効果によって、塗料やインクとの優れた密着性を確保することができる。
【0047】
上述のインキや塗料については、本発明のマグネシウム合金部材における改質層の表面の少なくとも一部、代表的には全面に塗布され、インキや塗料本来の機能を発現することができる限り、何らの限定はなく、種々のインキや塗料を用いることができる。
【0048】
インキの具体的な例としては、オフセットインキ、印刷インキ、グラビアインキ、建築インキなどが挙げられる。また、塗料の具体的な例としては、プラスチック用塗料、金属用塗料、セラミック用塗料、合成皮革用塗料、導電性塗料、電気絶縁塗料、紫外線硬化型塗料、電子線硬化型塗料などを挙げることができる。
このようなインキや塗料の改質表面への塗布方法としては、上述の接着性樹脂の塗布方法と同様な方法を採用することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいて、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
無機塩化物として塩化カリウムを3%となるように計量し、水中に混合した後、スターラーで攪拌し、塩化カリウム水溶液から成る浸漬処理液を調製した。
この処理液中に、2%のAlと1%のSiを含有するマグネシウム合金板(AS21X:25×50×3mm)を浸漬させ、1分間放置した後、表面を水で洗浄し、次いで、200℃に保持したオーブン中で2時間乾燥させ、本例のマグネシウム合金部材を得た。なお、本例は、改質層表面のAl含有量及び複水酸化物の影響を確認することを目的に、塩化カリウム水溶液中への浸漬時間を比較的短くして、Alの表面への露出を少なくすると共に、処理後に加熱することによって結晶水を飛ばし、複水酸化物を除去するようにしたものである。
【0051】
そして、以下に示す方法によって、表面に形成された改質層の表面状態(合金原質部のAl含有量に対する改質層表面のAl含有量の比率、複水酸化物の形成の有無)、初期接着性、耐久接着性についてそれぞれ評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
<評価方法>
〈表面状態〉
マグネシウム合金原質部のAl含有量を確認するために、まず、浸漬処理前のマグネシウム合金板の表面を粗さ320番のサンドペーパーを用いて、1分間一定方向に研磨した後、エアーブローで表面に付着した異物を吹き飛ばし、5〜10分ほど放置した。そして、X線光電子分光分析装置(JPS−9200、JEOL社製)を用いて、各金属原子の結合エネルギー値(化学シフト)から、金属原子の結合状態を確認し、これらの情報に基づいて、Al含有率(モル%)を測定し、原質部のAl含有量とした。
マグネシウム合金に形成された改質層表面のAl含有量の確認方法としては、浸漬処理後のマグネシウム合金部材の処理表面におけるAl含有率(モル%)を上記X線光電子分光分析装置によって同様に測定した。そして、先に求めた原質部に対するAl含有量の比を算出した。
【0053】
改質層表面における複水酸化物の確認方法としては、フーリエ変換型赤外分光分析(FT−)IR)を用いて、上記浸漬処理後のマグネシウム合金部材の処理表面に存在する各化合物の吸収ピーク値から、金属原子の結合状態を確認した。そして、これらの情報をもとに、改質層表面におけるMg,Al元素の結合状態を判定した。
【0054】
〈初期接着性〉
図1に示すように、上記により表面に改質層1aを生成したマグネシウム合金部材1における処理表面の端部10mmの領域1bに、塗布ガンを用いてシリコーン系接着剤2(TB1217H、スリーボンド社製)を塗布した。次いで、図2に示すように、他の部材としてのアルミニウム合金板3(ADC12:25×125×3mm)の表面端部を貼り合せて、室温で168時間養生し、接着試験片とした。なお、上記接着剤の塗布量としては、硬化後の接着性樹脂層2の膜厚が2mmとなるようにした。
そして、このような試験片を用いて引張せん断試験を行った。引張せん断試験はオートグラフ(AG−I 20kN、島津製作所社製)を使用し、50mm/minの引張速度の条件下でせん断強さを測定した。試験後、目視によって接着剤の塗布面積に対する接着剤が凝集破壊している面積の割合を求め、凝集破壊率とした。
【0055】
〈耐久接着性〉
上記した初期接着性評価と同様の方法により、接着試験片を作製後、予め150℃に温調したエンジンオイル5W−30(SMストロングセーブ・X)中に168時間放置し、さらに室温で24時間養生したのち、同様の引張せん断試験を行った。
【0056】
(実施例2)
上記実施例1における浸漬処理時間1分を5分間としたこと以外は、実施例1と同様な操作を繰り返すことにより、本例のマグネシウム合金部材を得た。
そして、各種評価試験を上記同様の要領で実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0057】
(実施例3)
浸漬処理後における200℃での乾燥処理を省略したこと以外は、上記実施例2と同様な操作を繰り返すことにより、本例のマグネシウム合金部材を得た。
そして、各種評価試験を上記同様の要領で実施し、その結果を表1に併せて示す。
【0058】
(実施例4)
上記マグネシウム合金板を3%のAlと1%のZnを含有するマグネシウム合金板(AZ31)としたこと以外は、上記実施例3と同様な操作を繰り返すことにより、本例のマグネシウム合金部材を得た。
そして、各種評価試験を上記同様の要領で実施し、その結果を表1に併せて示す。
【0059】
(実施例5)
上記マグネシウム合金板を9%のAlと1%のZnを含有するマグネシウム合金板(AZ91)としたこと以外は、実施例3と同様な操作を繰り返すことによって、本例のマグネシウム合金部材を得た。
そして、当該部材について、各種評価試験を上記同様の要領で実施し、その結果を表1に併せて示す。
【0060】
(実施例6)
上記マグネシウム合金板を8%のAl、1%のCaを含有するマグネシウム合金板(MRI153)としたこと以外は、実施例3と同様な操作を繰り返すことにより、本例のマグネシウム合金部材を得た。
そして、当該合金部材について、各種評価試験を上記同様の要領で実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0061】
(比較例1)
実施例1〜3に用いたマグネシウム合金板(AS21X)に上記浸漬処理による表面改質を行うことなく、金属表面を粗さ320番のサンドペーパーを用いて1分間、一定方向に研磨した後、エアーブローを施して5〜10分ほど放置し、本例のマグネシウム合金部材とした。
そして、無処理の当該部材について、各種評価試験を上記同様の要領で実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0062】
(比較例2)
上記マグネシウム合金板をAZ31(3%Al、1%Zn)から成るものとしたこと以外は、上記比較例1と同様な操作を繰り返すことによって、本例のマグネシウム合金部材を得た。
そして、各種評価試験を上記同様の要領で実施し、その結果を表1に併せて示す。
【0063】
(比較例3)
上記マグネシウム合金板をAZ91(9%Al、1%Zn)から成るものとしたこと以外は、上記比較例1と同様な操作を繰り返すことによって、本例のマグネシウム合金部材を得た。
そして、各種評価試験を上記同様の要領で実施し、その結果を表1に併せて示す。
【0064】
(比較例4)
上記マグネシウム合金板をMRI153(8%Al、1%Ca)から成るものとしたこと以外は、上記比較例1と同様な操作を繰り返すことによって、本例のマグネシウム合金部材を得た。
そして、各種評価試験を上記同様の要領で実施し、その結果を表1に併せて示す。
【0065】
(比較例5)
マグネシウム合金板として、純マグネシウム板を用いたこと以外は、上記比較例1と同様な操作を繰り返すことによって、本例のマグネシウム合金部材を得た。
そして、各種評価試験を上記同様の要領で実施し、その結果を表1に併せて示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示すように、表面のAl含有量が原質部のAl含有量より多い改質層を備えた本発明の実施例によるマグネシウム合金部材を用いた接着試験片においては、優れた初期接着性、耐久接着性を示すことが認められた。
特に、その表面に複水酸化物を含む改質層が形成された実施例3〜6によるマグネシウム合金部材においては、このような複水酸化物を除去した実施例1,2に較べて、より優れた性能を示しており、このような改質層を有することによって、より良好な接着性を発揮することが確認された。
【0068】
これに対して、塩化カリウム水溶液中への浸漬処理を施さないままのマグネシウム合金においては、Alを含有していたとしても、表面におけるAl含有量の富化がなされていないことから、接着強度に劣ることが確認された。
【符号の説明】
【0069】
1 マグネシウム合金部材
1a 改質層
2 接着剤(接着性樹脂層)
3 アルミニウム合金板(他の部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alを含有するマグネシウム合金から成り、その表面に改質層を備え、当該改質層の表面におけるAl含有量が原質部よりも高いことを特徴とするマグネシウム合金部材。
【請求項2】
原質部のAl含有量が質量比で2%以上であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金部材。
【請求項3】
改質層表面のAl含有量が原質部の1.5%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネシウム合金部材。
【請求項4】
上記改質層の表面に、Al、Mgを含む複水酸化物が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のマグネシウム合金部材。
【請求項5】
上記改質層の表面が接着性樹脂層を介して他の部材と接合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のマグネシウム合金部材。
【請求項6】
上記接着性樹脂層がアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂から成る群から選ばれた少なくとも1種の樹脂から成ることを特徴とする請求項5に記載のマグネシウム合金部材。
【請求項7】
上記改質層の表面に塗膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のマグネシウム合金部材。
【請求項8】
上記改質層が無機塩化物を含む水溶液への浸漬処理により形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載のマグネシウム合金部材。
【請求項9】
上記無機塩化物が金属塩化物であることを特徴とする請求項8に記載のマグネシウム合金部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−12318(P2011−12318A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158432(P2009−158432)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】