説明

マグネシウム含有粉末の製法および粉末健康食品

【課題】味覚に優れ、しかも、携帯や服用に便利なマグネシウム含有粉末の製法を提供する。
【解決手段】水と有機酸とを混合して第1混合液を作製する工程と、この第1混合液に水に難溶性または不溶性のマグネシウム塩を混合して第2混合液を作製する工程と、この第2混合液にグリシンを混合してマグネシウム含有液を作製する工程と、このマグネシウム含有液を真空乾燥させて粉末状にする工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム含有粉末の製法および粉末健康食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マグネシウムは血糖値を下げたり、血行を良くしたり、エネルギー代謝を高めたりする効果があると言われているが、体内では作られないため、食事等から摂取する必要がある。ところが、現在の食生活においては、充分なマグネシウムを摂取することが困難であり、体内にマグネシウムを補給するための栄養機能食品(サプリメント)が市販されている。
【0003】
一般に、マグネシウムを含む栄養機能食品は、酸化マグネシウムやドロマイト(カルシウムおよびマグネシウムを含む鉱石)を含有する液体からなっているため、強い苦味が生じて味覚的に劣るという問題がある。そこで、苦味をなくして味覚を改善するため、水と有機酸との混合液に、水に難溶性または不溶性のマグネシウム塩と混合したのち、さらにグリシンを混合するようにしたミネラル含有液が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このミネラル含有液では、その混合液中に、水に難溶性または不溶性のマグネシウム塩を長期間安定に分散させることができ、溶液状態を長期間安定化させることができる点でも、優れている。
【特許文献1】特許第3763801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のミネラル含有液でも、味覚の改善が充分ではないという問題がある。しかも、液体であることから、携帯や服用に不便であるという問題もある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、味覚に優れ、しかも、携帯や服用に便利なマグネシウム含有粉末の製法および粉末健康食品の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、水と有機酸とを混合して第1混合液を作製する工程と、この第1混合液に水に難溶性または不溶性のマグネシウム塩を混合して第2混合液を作製する工程と、この第2混合液にグリシンを混合してマグネシウム含有液を作製する工程と、このマグネシウム含有液を真空乾燥させて粉末状にする工程とを備えたマグネシウム含有粉末の製法を第1の要旨とし、上記マグネシウム含有粉末の製法により得られたマグネシウム含有粉末が含有されている粉末健康食品を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
すなわち、本発明のマグネシウム含有粉末の製法では、マグネシウム含有液を作製したのち、これを真空乾燥させて粉末状にしているため、液体のものと比べ体積が小さくて携帯時に嵩張らず、携帯に便利であるうえ、服用時に粉末の状態でそのまま、もしくは他物(例えば、穀物類やパン類)にふりかけた状態で、また液体(例えば、水やジュース)に混入させた状態で服用でき、服用に便利である。しかも、本発明のマグネシウム含有粉末の製法では、真空乾燥によりマグネシウム含有液を粉末化しているため、粉末化の際にマグネシウム含有液中の有機酸を加熱等することがなく、この加熱等による有機酸の変成を防ぐことができる。したがって、粉末化後もマグネシウム含有液の味覚を維持することができ、粉末化の際にマグネシウム含有液中の有機酸を加熱する加熱乾燥方法に比べ、味覚に優れている。そのうえ、真空乾燥は、上記の加熱乾燥方法に比べ、工程数が少なく、工程の効率化を図ることができる。一方、本発明の粉末健康食品は、上記のマグネシウム含有粉末を含有しているため、上記と同様の優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0009】
本発明のマグネシウム含有粉末の製法は、水と有機酸とを混合して第1混合液を作製する工程と、この第1混合液に水に難溶性または不溶性のマグネシウム塩を混合して第2混合液を作製する工程と、この第2混合液にグリシンを混合してマグネシウム含有液を作製する工程と、このマグネシウム含有液を真空乾燥させて粉末状にする工程とを備えている。
【0010】
本発明では、有機酸が用いられている。有機酸としては、例えば、クエン酸,リンゴ酸,グルコン酸,コハク酸,酒石酸,乳酸,酢酸,イタコン酸,アジピン酸もしくはフマル酸が用いられ、好適には、クエン酸もしくはリンゴ酸が用いられる。有機酸がクエン酸もしくはリンゴ酸である場合には、本発明におけるマグネシウム含有液の溶液状態をより長期間安定化させることができ、溶液中における沈殿物の発生を抑止することができる。このような有機酸を1種類だけでなく、2種類以上併用することもできる。
【0011】
また、本発明では、水に難溶性または不溶性のマグネシウム塩が用いられている。水に易溶性のマグネシウム塩を多量に用いる場合には、マグネシウム含有液に強い苦味が生じるため、これを飲食するのは非常に困難であるからである。本発明において、「水に難溶性または不溶性のマグネシウム塩」とは、当業界において一般的に水に難溶性または不溶性として認識されているマグネシウム塩のことを指し、特殊条件下において水に難溶性または不溶性の性質を示すマグネシウム塩のことを指すものではない。
【0012】
上記の水に難溶性または不溶性のマグネシウム塩としては、例えば、水酸化マグネシウム,酸化マグネシウムもしくは炭酸マグネシウムが用いられ、好適には、水酸化マグネシウムもしくは酸化マグネシウムが用いられる。このようなマグネシウム塩を1種類だけでなく、2種類以上併用することもできる。
【0013】
また、本発明では、アミノ酸としてグリシンが用いられている。このようにグリシンを用いると、本発明のように水に難溶性または不溶性のマグネシウム塩を用いる場合にも、グリシンの作用により、上記マグネシウム塩をマグネシウム含有液の溶液中においてより安定に分散させることができるようになる。また、アミノ酸特有の味覚や甘味を、本発明により製造されるマグネシウム含有粉末に付与することができる。
【0014】
本発明では、上記マグネシウム含有液に含まれるマグネシウムの濃度は、水100重量部(以下「部」と略す)に対するマグネシウムの含有量が、1.0〜21.0部であることが好ましく、10.0〜21.0部であることがより好ましい。また、水と有機酸との第1混合液に対するマグネシウムの濃度は、第1混合液100部に対して0.1〜12.0部であることが好ましく、1.0〜12.0部であることがより好ましい。これらの場合には、上記マグネシウム含有液に含まれるマグネシウムの濃度をできるだけ高濃度に設定することができ、また、マグネシウム含有液の溶液状態の安定性も保持することができる。
【0015】
また、上記マグネシウム含有液に含まれる有機酸:マグネシウム:グリシンのモル比が、1:0.05〜2.7:0.01〜1.2であることが好ましく、1:0.05〜1.2:0.4〜0.8であることがより好ましい。この場合には、上記マグネシウム含有液の溶液状態の安定性をより向上させることができる。
【0016】
なお、上記マグネシウムの濃度およびモル比の計算において、上記マグネシウム含有液中におけるマグネシウムがイオン化しているものおよびイオン化していないものの双方を含めた質量に基づいて計算を行うものとする。
【0017】
上記マグネシウム含有液を真空乾燥させる方法としては、マグネシウム含有液を収容したトレイを真空容器内部の加熱板棚に静置し、温水もしくは蒸気での加熱板棚からの伝熱および輻射による間接加熱で真空乾燥する棚式真空乾燥方法や、マグネシウム含有液を氷点以下(例えば、−20〜−40℃程度)で急送凍結し、細かく砕いたのち、真空状態で水分を昇華させて乾燥するフリーズドライ(真空凍結乾燥)方法等、各種の真空乾燥方法が行われる。上記の棚式真空乾燥方法では、真空乾燥を、真空度3332Pa〜13332Pa(ゲージ圧)(すなわち、25〜100トール)、温度(温水の温度)60〜120℃の真空状態で行うことが好ましく、真空度4000〜9332Pa(ゲージ圧)(すなわち、30〜70トール)、温度(温水の温度)70〜90℃の真空状態で行うことがより好ましい。
【0018】
また、上記マグネシウム含有液には、有機酸,マグネシウム,グリシン以外に、鉄含有組成物,グルコン酸亜鉛等の亜鉛含有組成物,銅含有組成物等のいずれか1種もしくは2種以上を混合することができる。
【0019】
本発明により製造されるマグネシウム含有粉末中には、通常、その粉末100部中に、有機酸が69〜74部、好適には71〜72部含まれている。有機酸が69部を下回ると、マグネシウム含有液の溶液状態を長期間安定化させることができないという傾向がみられ、74部を上回ると、マグネシウム,グリシンの含有量が少なくなり、これらによる効果に劣るというおそれがある。また、有機酸として、クエン酸とリンゴ酸との双方を用いる場合には、有機酸100部に対して、クエン酸が47〜53部、好適には49〜51部含まれており、また、リンゴ酸が47〜53部、好適には49〜51部含まれている。これらクエン酸,リンゴ酸が上記範囲を下回ると、健康増進効果が不充分となり、上回ると、味が鋭くなりすぎるという傾向がみられる。
【0020】
また、上記マグネシウム含有粉末100部中に、通常、マグネシウムが12〜17部、好適には14〜15部含まれている。マグネシウムが12部を下回ると、血糖値を下げたり、血行を良くしたりする等の効果に劣り、17部を上回ると、有機酸,グリシンの含有量が少なくなり、これらによる効果に劣るというおそれがある。
【0021】
また、上記マグネシウム含有粉末には、通常、有機酸,マグネシウム以外に、その粉末100部中に、グリシンが少なくとも7〜17部含まれている。グリシンが7部を下回ると、マグネシウム含有液の溶液状態を長期間安定化させることができにくくなり、また、甘味に欠ける傾向がみられる。
【0022】
また、本発明の粉末健康食品は、上記のマグネシウム含有粉末を含有しているが、このマグネシウム含有粉末のみで構成されていてもよいし、マグネシウム含有粉末以外に、炭酸カルシウム、ブドウ糖、果糖、清涼剤、甘味料、香料、ビタミン類(ビタミンA,ビタミンB1 ,ビタミンB2 ,ビタミンB6 ,ビタミンB12,ビタミンC,ビタミンD,ビタミンE等)、コラーゲン、果汁,着色料、鉄含有組成物、グルコン酸亜鉛等の亜鉛含有組成物、銅含有組成物等のいずれか1種もしくは2種以上が粉末状態で混合されていてもよい。このような本発明の粉末健康食品には、マグネシウム含有粉末が50〜100部、好適には60〜75部含まれている。
【0023】
本発明の粉末健康食品は、例えば、清涼飲料,ミネラルウォーター,嗜好飲料,アルコール飲料,コーヒー,紅茶,ジュース,ココア,スープ類,穀物類,パン類,ふりかけ類,ムース類,ゼリー類,練り製品類,豆腐類,納豆類,調味料,冷菓類,飴類,チョコレート類,クラッカー類,クッキー類,ビスケット類,チーズ類,ジャム類,カステラ類,ドーナツ類,シュークリーム類,ケーキ類,麺類,マーガリン類,せんべん類,ヨーグルト類,漬物類等に好適に用いることができる。
【0024】
つぎに、実施例について説明する。ただし、本発明は、この実施例に限られるものではない。
【0025】
本発明のマグネシウム含有粉末の製法は、例えばつぎのようにして行われる。すなわち、まず、水1000gとクエン酸500gおよびリンゴ酸500gを混合して攪拌し、ついで、水にクエン酸およびリンゴ酸が溶解された第1混合液に酸化マグネシウム193.5gを添加して攪拌し、つぎに、第1混合液に酸化マグネシウムが溶解した第2混合液にグリシン200gを添加して攪拌し、第2混合液にグリシンが溶解したマグネシウム含有液を作製した。つぎに、汎用の棚式真空乾燥機を用い、マグネシウム含有液を真空度略4000Pa(ゲージ圧)、温度略80℃で真空乾燥することにより、マグネシウム含有粉末を得た。このとき、マグネシウム含有液は発泡しながら乾燥され、マグネシウム含有粉末の体積がマグネシウム含有液の12倍以上に増える。このようにして得られたマグネシウム含有粉末の組成およびその重量割合を、下記の表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
そののち、得られたマグネシウム含有粉末1.54gに対し、炭酸カルシウム0.050g,ブドウ糖0.363g,果糖0.235g,ビタミン類0.022g,コラーゲン0.023g,甘味料0.004g,香料0.013gをそれぞれ粉末状態で混合し、粉末健康食品2.250gを得た。このようにして得られた粉末健康食品(実施例1品)の組成およびその重量割合を、下記の表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
つぎに、上記製法にもとづいて、実施例1品とは別に、下記の表3に示す組成のマグネシウム含有粉末(実施例2〜7品)を得た。
【0030】
【表3】

【0031】
上記実施例1〜7品を、10名のパネラーに試食させ、甘味の評価を行った。そして、10名のパネラー中7名が、甘味があると評価したものを○、それ以外を×とした。その結果を下記の表4に示す。
【0032】
【表4】

【0033】
上記表4から明らかなように、実施例1〜7品中に×のものはなく、実施例1〜7品が甘味に優れていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と有機酸とを混合して第1混合液を作製する工程と、この第1混合液に水に難溶性または不溶性のマグネシウム塩を混合して第2混合液を作製する工程と、この第2混合液にグリシンを混合してマグネシウム含有液を作製する工程と、このマグネシウム含有液を真空乾燥させて粉末状にする工程とを備えたことを特徴とするマグネシウム含有粉末の製法。
【請求項2】
上記真空乾燥を真空度3332〜13332Pa(ゲージ圧)、温度60〜120℃の真空状態で行う請求項1記載のマグネシウム含有粉末の製法。
【請求項3】
上記マグネシウム含有液を真空乾燥させて得られるマグネシウム含有粉末100重量部中に、有機酸が69〜74重量部、マグネシウムが12〜17重量部、グリシンが少なくとも7〜17重量部含有されている請求項1または2記載のマグネシウム含有粉末の製法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載のマグネシウム含有粉末の製法により得られたマグネシウム含有粉末が含有されていることを特徴とする粉末健康食品。

【公開番号】特開2009−165384(P2009−165384A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5708(P2008−5708)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(391015410)
【Fターム(参考)】