説明

マグネトプランバイト型六方晶フェライトおよびそれを用いた電波吸収体

【課題】 電波吸収体に使用したとき、その厚さが変動しても整合周波数が変化しにくい性質を発揮する、マグネトプランバイト型六方晶フェライトを開発し提供すること。
【解決手段】 組成式AFe(12−X)(B10.5B20.5)19で表され、AはBa、Srの1種または2種、B1はTi、Zrの1種または2種、B2は2価金属元素であり、Co、Mn、Cu、Mg、Zn、Niのうち2種以上を含有するマグネトプランバイト型六方晶フェライトによって達成される。上記B2として少なくともZnを含有し、特にCoとZn、あるいはMnとZnを含有するものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GHz帯域用の電波吸収体に適したマグネトプランバイト型六方晶フェライト、およびそれを用いた電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術の高度化に伴い、GHz帯域の電波が種々の用途で使用されるようになってきた。例えば、携帯電話、無線LAN、衛生放送、高度道路交通システム、ノンストップ自動料金徴収システム(ETC)、自動車走行支援システム(AHS)などが挙げられる。このように高周波域での電波利用形態が多様化すると、電子部品同士の干渉による故障、誤動作、機能不全などが懸念され、その対策が重要となってくる。その1つとして、電波吸収体を用いて不要な電波を吸収し、電波の反射および侵入を防ぐ方法が有効である。昨今、GHz帯域用の電波吸収体は需要が増大しつつある。
【0003】
従来、高周波帯域用の電波吸収体には、主としてフェライト等の酸化物系磁性材料が多く用いられている。フェライトの中でも、MHz帯域では主としてスピネル系のものが使用されるが、GHz以上の高周波帯域において優れた特性を発揮するものとしてマグネトプランバイト型六方晶フェライトが有望視されており、例えばFe3+の一部を4価の陽イオンと2価の陽イオンで置換したマグネトプランバイト型六方晶フェライトが知られている(特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−354972号公報
【非特許文献1】日本応用磁気学会誌、22、297−300(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェライトを用いた電波吸収体は「インピーダンス整合型」であり、材料定数が定まると整合周波数と整合厚さが決定される。発明者らは、Fe3+の一部を置換したタイプのマグネトプランバイト型六方晶フェライトを用いた電波吸収体について、電波吸収特性を種々調査してきた。その結果、この種の電波吸収体の場合、厚さによる整合周波数の変化が大きいことが明らかになった。すなわち、シート厚さが変動すると整合周波数が大きく変化してしまうため、厚さの微妙な違いによって目的周波数領域の電波が的確に吸収できないといった問題が生じやすい。つまり、工業生産において安定した品質を得るためには、厚さについて高い寸法精度が要求され、これは生産コストを増大させる一因となる。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑み、電波吸収体に使用したとき、その厚さが変動しても整合周波数が変化しにくい性質を発揮する、マグネトプランバイト型六方晶フェライトを開発し提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、組成式AFe(12−X)(B10.5B20.5)19で表され、AはBa、Srの1種または2種、B1はTi、Zrの1種または2種、B2は2価金属元素であり、Co、Mn、Cu、Mg、Zn、Niのうち2種以上を含有するマグネトプランバイト型六方晶フェライトによって達成される。上記B2として少なくともZnを含有し、特にCoとZn、あるいはMnとZnを含有するものが好適な対象となる。
【0008】
具体的には、例えば以下の組成式に示すものが挙げられる。
組成式 AFe(12−X)(B10.5(Co(1−y)Zn)0.5)19で表され、AはBa、Srの1種または2種、B1はTi、Zrの1種または2種であり、xは0.1〜2.0、yは0.2〜0.8であるマグネトプランバイト型六方晶フェライト。また、組成式 AFe(12−X)(B10.5(Mn(1−y)Zn)0.5)19で表され、AはBa、Srの1種または2種、B1はTi、Zrの1種または2種であり、xは0.2〜4.0、yは0.5±0.1であるマグネトプランバイト型六方晶フェライトである。
【0009】
また本発明では、上記のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉末を用いた電波吸収体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マグネトプランバイト型六方晶フェライトにおいて、電波吸収体の厚さ変動による整合周波数の変化を小さく抑えるものが提供可能になった。この改良されたマグネトプランバイト型六方晶フェライトを用いると、電波吸収体の製造において、従来ほど厳格な厚さの寸法精度を要求しなくても、所定周波数領域に対する優れた電波吸収性能を安定して得ることができる。また、厚さが変動しやすい塗料や射出成形品においても、整合周波数を所望の周波数領域に合致させることが容易になる。したがって本発明は、マグネトプランバイト型六方晶フェライトを用いた電波吸収体の工業生産コスト低減により、その普及に寄与し、ひいてはGHz帯域の電波障害防止に貢献するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、Fe3+の一部を他の元素で置換したマグネトプランバイト型六方晶フェライトのうち、以下の組成式で表されるものを対象とする。
AFe(12−X)(B10.5B20.5)19
ここで、AはBa、Srの1種または2種、B1はTi、Zrの1種または2種、B2は2価金属元素である。
ただし本発明では、上記組成式のB2元素として、Co、Mn、Cu、Mg、Zn、Niのうち2種以上を含有させる。このとき、電波吸収体の厚さ変動による整合周波数の変化を顕著に減少させることができるのである。その理由は現時点で不明な点も多いが、多種元素を複合添加することで結晶歪が小さくなり、結晶構造上安定してくることによって、その歪に起因する周波数変動がより小さく抑えられることが考えられる。
【0012】
その実用的な組成を例示すると、例えばB2元素としてCoとZnを複合添加した組成式BaFe(12−X)(Ti0.5(Co(1−y)Zn)0.5)19で表されるものが挙げられる。検討の結果、CoとZnのモル比については少なくとも上式中のyが0.2〜0.8の範囲において厚さによる整合周波数の変化が顕著に減少する効果が得られる。yは0.3〜0.8の範囲とすることが好ましく、0.4〜0.8の範囲で特に大きな効果が得られる。置換量xにより吸収周波数領域をコントロールすることができ、例えばxは0.1〜2.0の範囲とすることができる。
【0013】
別の実用的な組成を例示すると、例えばB2元素としてMnとZnを複合添加した組成式BaFe(12−X)(Ti0.5(Mn(1−y)Zn0.519で表されるものが挙げられる。検討の結果、少なくともMnとZnのモル比が1:1付近(上式中のyが0.5±0.1)において、厚さによる整合周波数の変化が顕著に減少する効果が得られる。この場合、xは例えば0.2〜4.0の範囲とすることができる。
【0014】
本発明のマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、一般的なソフトフェライトの製造方法に準じて製造することができる。例えば、原料として酸化物や炭酸塩の粉体を用いて、これらを所定のフェライト組成となるように秤量し、混合、造粒したのち、焼成することにより所定組成のマグネトプランバイト型六方晶フェライトが得られる。これを粉砕して粉末とすればよい。
【0015】
得られたマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉末は、高分子基材とともに混練することにより電波吸収体素材(混練物)が得られる。混練物中におけるマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉末の配合量は60質量%以上とすることが好ましい。ただし95質量%を超えると高分子基材との混練が難しくなる。マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉末の混合割合は80〜95質量%とすることがより好ましく、85〜95質量%が一層好ましい。
【0016】
高分子基材としては、使用環境に応じて、耐熱性、難燃性、耐久性、機械的強度、電気的特性を満足する各種のものが使用できる。例えば、樹脂(ナイロン等)、ゲル(シリコーンゲル等)、熱可塑性エラストマー、ゴムなどから適切なものを選択すれば良い。また2種以上の高分子化合物をブレンドして基材としてもよい。
【0017】
高分子基材との相溶性や分散性を改善するために、マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉末には予めシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等による表面処理を施すことができる。また、マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉末と高分子化合物との混合に際し、可塑剤、補強剤、耐熱向上剤、熱伝導性充填剤、粘着剤などの各種添加剤を添加することができる。
【0018】
上記電波吸収体素材(混練物)を圧延により所定のシート厚に成形することで電波吸収体が得られる。また、本発明のマグネトプランバイト型六方晶フェライトを用いると電波吸収体の厚さ寸法精度の許容量が緩和されるので、圧延の代わりに射出成形を施すこともできる。マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉末を直接塗料中に分散させて、基体表面に塗布することにより、塗膜としての電波吸収体を形成することもできる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、実施例において用いた、試料の諸物性の測定方法・装置について説明する。
【0020】
<比表面積>
フェライト粉の比表面積(SSA)は、BET法に基づいて、ユアサ アイオニクス株式会社製のモノソーブ(Model Number:MS−17)を用いて測定を行った。
【0021】
<圧縮密度>
フェライト粉の圧縮密度は、内径2.54cmφの円筒形金型にフェライト粉10gを充填した後、1ton/cmの圧力で圧縮した。このときのフェライト粉の密度を圧縮密度として測定した。
【0022】
<粒度分布>
フェライト粉の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社日本レーザー製、HELOS&RODOS)を用いて、focal length=20mm、分散圧 5.0bar、吸引圧 130mbarの条件にて粒度分布・ピーク粒径を測定した。
尚、当該粒度分布において、D16、D50、D84とは、それぞれ、体積16%、50%、84%における累積粒度分布のことであり、−0.3μ、−0.52μ、−1μ、+5μ、+8.6μとは、それぞれ、粒径0.3μmアンダー、粒径0.52μmアンダー、粒径1μmアンダー、粒径5μmアッパー、粒径8μmアッパーの粒子の存在割合である。
【0023】
<磁気特性>
フェライト粉の磁気特性は、VSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いてσs(emu/g)、σr(emu/g)、Hc(Oe)、SQの測定を行った。
【0024】
<X線測定>
フェライト粉のX線回折の測定条件は、管球:コバルト管球、Goniometer:Ultima+水平ゴニオメーターI型、Attachment:ASC−43(縦型)、Monochrometer:全自動モノクロメータ、ScannigMode:2θ/θ、ScaninigType:CONTINUOUS、X−Ray:40kV/30mA、発散スリット:1/2deg.、散乱スリット:1/2deg.、受光スリット:0.15mm、測定範囲:30°〜70°である。
【0025】
〔実施例1〕
原料粉として、α−Fe、BaCO、TiO、CoおよびZnOを用い、これらを下記組成に対応する量比で秤量した。
組成:BaFe(12−X)(Ti0.5(Co0.5Zn0.50.5)19、x=0.4
秤量後の原料粉をハイスピードミキサーで混合し、更に振動ミルにより乾式法で混合強化した。得られた混合粉をペレット状に造粒成形し、この成形体をローラーハース型電気炉に装入し、大気中1250℃で2時間保持することにより焼成した。得られた焼成品をハンマーミルで分散し,更に解粒の為、アトライター(AT)で5min湿式分散した後、脱水・乾燥した。当該脱水・乾燥した乾燥品をハンマーミルで解砕して、マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉を得た。
【0026】
得られたマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果と磁気特性の測定結果を表1に示した。
【0027】
次に、上記粉砕後の磁性粉体(マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体)の含有量が表2に示す割合となるように、当該粉体と高分子基材を混練して電波吸収体素材(混練物)を作製した。高分子基材としては合成ゴム(JSR(日本合成ゴム)製、N215SL)を使用した。この電波吸収体素材を圧延ロールにより所定の厚さに圧延し、電波吸収体シートを得た。
【0028】
各電波吸収体シートについて、自由空間法により電波吸収特性を調べた。HVSテクノロジーズ社(HVS Technologies,Inc.)製のフリー・スペース・マイクロ波測定システム(HVS FreeSpaceMicrowave Measurement System)を利用してKバンド(18.0〜26.5GHz)およびKaバンド(26.5〜40.0GHz)の電波を試料に入射させ、その反射減衰量を測定した。
【0029】
〔実施例2〕
原料粉として、α−Fe、SrCO、TiO、CoおよびZnOを用い、これらを下記組成に対応する量比で秤量した。
組成:SrFe(12−X)(Ti0.5(Co0.5Zn0.50.5)19、x=0.5
その後、実施例1と同様のプロセスを経てフェライト粉を得た。X線回折の結果、この微粉砕品はマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。このマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉を用いて実施例1と同様の方法で所定の厚さのシートとし、後述の電波吸収特性の測定に供した。
【0030】
〔実施例3〕
実施例1と同じ原料粉を用い、これらを下記組成に対応する量比で秤量した。
組成:BaFe(12−X)(Ti0.5(Co0.5Zn0.50.5)19、x=1.8
その後、実施例1と同様のプロセスを経てフェライト粉を得た。X線回折の結果、この微粉砕品はマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。このマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉を用いて実施例1と同様の方法で所定の厚さのシートとし、後述の電波吸収特性の測定に供した。
【0031】
〔実施例4〕
原料粉として、α−Fe、BaCO、TiO、MnOおよびZnOを用い、これらを下記組成に対応する量比で秤量した。
組成:BaFe(12−X)(Ti0.5(Mn0.5Zn0.50.5)19、x=0.4
その後、実施例1と同様のプロセスを経てフェライト粉を得た。X線回折の結果、この微粉砕品はマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。このマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉を用いて実施例1と同様の方法で所定の厚さのシートとし、後述の電波吸収特性の測定に供した。
【0032】
〔比較例1〕
原料粉として、α−Fe、BaCO、TiOおよびCoを用い、これらを下記組成に対応する量比で秤量した。
組成:BaFe(12−X)(Ti0.5Co0.519、x=0.4
その後、実施例1と同様のプロセスを経てフェライト粉を得た。X線回折の結果、この微粉砕品はマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。このマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉を用いて実施例1と同様の方法で所定の厚さのシートとし、後述の電波吸収特性の測定に供した。
【0033】
〔比較例2〕
原料粉として、α−Fe、SrCO、TiOおよびZnOを用い、これらを下記組成に対応する量比で秤量した。
組成:SrFe(12−X)(Ti0.5Zn0.519、x=0.5
その後、実施例1と同様のプロセスを経てフェライト粉を得た。X線回折の結果、この微粉砕品はマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。このマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉を用いて実施例1と同様の方法で所定の厚さのシートとし、後述の電波吸収特性の測定に供した。
【0034】
〔比較例3〕
原料粉として、α−Fe、BaCO、TiOおよびCoを用い、これらを下記組成に対応する量比で秤量した。
組成:BaFe(12−X)(Ti0.5Co0.5)19、x=1.8
その後、実施例1と同様のプロセスを経てフェライト粉を得た。X線回折の結果、この微粉砕品はマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。このマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉を用いて実施例1と同様の方法で所定の厚さのシートとし、後述の電波吸収特性の測定に供した。
【0035】
〔比較例4〕
原料粉として、α−Fe、BaCO、TiO、MnOおよびZnOを用い、これらを下記組成に対応する量比で秤量した。
組成:BaFe(12−X)(Ti0.5Mn0.5)19、x=0.4
その後、実施例1と同様のプロセスを経てフェライト粉を得た。X線回折の結果、この微粉砕品はマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。このマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉を用いて実施例1と同様の方法で所定の厚さのシートとし、後述の電波吸収特性の測定に供した。
【0036】
表2に、実施例1のシート厚さと周波数の関係(測定結果)を例示する。厚さの異なる各シートの測定結果から、縦軸にシート厚さを、横軸に約−20dB以下の吸収量が得られる周波数(以下、整合周波数と示す)のうち、そのピーク値を読み取りプロットする。その結果、整合周波数とシート厚さの関係は概ね直線状の関係になる。そこで最小二乗法により各プロットの並びを直線で近似する。この近似直線の傾きの絶対値が大きいほど、電波吸収体厚さの変動に対する整合周波数の変化量が小さくなり、所定の周波数領域に適用可能な厚さの許容範囲が拡大することになる。
【0037】
他の実施例、比較例についても上記と同様の手法により、電波吸収体の厚さ変動による整合周波数の変化の程度を評価した。各実施例、比較例についての目標とする周波数と、傾きの絶対値の計算結果を表2に示した。
【0038】
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2から判るように、比較例1および比較例2の傾きの絶対値はそれぞれ0.102および0.137であるのに対し、実施例1および実施例2の傾きの絶対値はそれぞれ0.319および0.315と大きかった。すなわち、2価の金属元素としてCoとZnを複合添加した実施例1、2のマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉は、Co単独添加の比較例1もしくはZn単独添加の比較例2のものと比べ、電波吸収体の厚さ変動による整合周波数の変化の程度が顕著に小さくなっていることがわかる。
【0039】
実施例3、比較例3から判るように、比較例3の傾きの絶対値は0.249であるのに対し、実施例3の傾きの絶対値は0.536と大きかった。すなわち、2価の金属元素としてCoとZnを複合添加した実施例1のマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、Co単独添加の比較例1のものと比べ、電波吸収体の厚さ変動による整合周波数の変化の程度が顕著に小さくなっていることがわかる。
【0040】
実施例4、比較例4から判るように、比較例4の傾きの絶対値は0.173であるのに対し、実施例3の傾きの絶対値は0.429と大きかった。すなわち、2価の金属元素としてMnとZnを複合添加した実施例4のマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、Mn単独添加の比較例4のものと比べ、電波吸収体の厚さ変動による整合周波数の変化の程度が顕著に小さくなっていることがわかる。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
AFe(12−X)(B10.5(Co(1−y)Zn)0.5)19の組成式で表され、AはBa、Srの1種または2種、B1はTi、Zrの1種または2種であり、xは0.1〜2.0、yは0.2〜0.8であるマグネトプランバイト型六方晶フェライト。
【請求項2】
AFe(12−X)(B10.5(Mn(1−y)Zn)0.5)19の組成式で表され、AはBa、Srの1種または2種、B1はTi、Zrの1種または2種であり、xは0.2〜4.0、yは0.5±0.1であるマグネトプランバイト型六方晶フェライト。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉末を用いた電波吸収体。



【公開番号】特開2010−260766(P2010−260766A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112859(P2009−112859)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】