説明

マグロ稚魚用配合飼料

【課題】クロマグロを含むマグロ科の魚であって、ふ化後20日〜70日又は全長20〜200mm程度の稚魚が好む配合飼料を提供すること。
【解決手段】従来から海産魚用飼料に使用されている配合飼料に、ゼラチンやグアガムなどのゲル化剤を混じ加熱・冷却することにより、破断強度が10〜200g/mmの範囲で、もちもちした食感の配合飼料とする。これを乾燥してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマグロなどの稚魚に適した配合飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クロマグロ(いわゆる本マグロ)は、天然魚の漁獲において資源減少や生物保護の観点から漁獲量規制を実施することが国際的に進んでいる。例えば、天然マグロ資源の国際管理機関(中西部太平洋まぐろ類管理委員会や大西洋まぐろ類保存国際委員会)の決定として大西洋・地中海マグロの漁獲については2010年の漁獲枠を2009年比で40%の漁獲量削減、メバチマグロは2009年から3年間で40%削減、ミナミマグロ(市場ではクロマグロと同等の扱い)は2010年と2011年は20%削減が実施されることになった。今後、マグロ漁獲量規制は世界的にさらに拡大することが懸念される
【0003】
このような状況下でマグロ養殖の需要はますます高まっているが、現在のクロマグロ養殖用の稚魚の95%以上は日本近海で漁獲される天然クロマグロ幼魚(15−25センチ、別名:ヨコワ)であり、クロマグロ養殖業は天然発生の稚魚に依存していると言える。
【0004】
数年前に近畿大学水産研究所がクロマグロの完全養殖に成功したが(特許文献1)、国内養殖用マグロの需要をまかなうほどの供給体制は完成していない。これは卵からヨコワにいたる過程での生残率が数%以下で、しかもクロマグロ仔魚の育成にマダイなどのふ化仔魚、クロマグロ稚魚にはイカナゴなどのシラスなどを給餌しているため、給餌作業、給餌コスト、餌の保存性などが非効率的であり、さらに生残率が低いために大量生産を行いにくい状況があるからである。
そのため、生残率を高めることができるクロマグロ稚魚用配合飼料の開発が望まれていた。
【0005】
従来、養殖魚用の配合飼料として多種多様なものが開発、市販されてきた。特に、生産金額が大きいブリ、マダイ、トラフグ、ヒラメなどの稚魚用配合飼料は、安価、ドライペレットであるため取り扱い・保存が容易、成長速度が速い、などの優れた特徴を有するものが多い。
【0006】
しかし、クロマグロ稚魚を従来の配合飼料だけで育成した成功例はなく、仔魚以降ヨコワまでの期間はイカナゴなどのシラスを餌とせざるを得なかった。その原因として配合飼料に餌付かせることがほとんどできなかったためである。
【0007】
従来、クロマグロ稚魚の育成にはイカナゴやカタクチイワシのシラスを給餌することによりクロマグロ稚魚の育成は技術的には可能となっている。しかし、これらの魚種のシラスは大きな資源変動があるため入手性が安定せず、しかもシラス以外のものが混ざらないものやマグロ稚魚に適当な大きさのものは高価で地域や期間が限定される貴重なものである。さらに今後は地球温暖化等の影響によりこれまでのシラス入手経路が変化したり、大幅に価格が上昇する可能性も考えられる。また、シラスは栄養成分の変動が大きく、クロマグロ稚魚に適した栄養価への補正が困難なこと、シラス由来の疾病感染の恐れがあるなどの欠点もある。
【0008】
このような状況からマグロ稚魚の育成体制は餌用のシラス使用の依存からはやく脱却することが望まれている。特に、大量に餌を要求するマグロ稚魚の育成には天然餌料ではなく、人工的に作製可能な配合飼料の開発が必要である。
【0009】
加えて、マグロ稚魚には一日当たり4−7回もの給餌が必要であるが、シラスは保存性が悪く、冷凍ブロックとして保存されているため、解凍後に給餌することが必要であり、マグロ稚魚の給餌作業を煩雑にさせている。
【0010】
シラスなどの天然餌以外のマグロ属魚類の稚魚用の飼料として、グアガム、ゼラチンなどからなるシェルと魚餌を含有する固形飼料が提案されている(特許文献2)が、この飼料は、全長約25cm以上、体重約300g以上のマグロ若齢魚(ふ化後約80〜90日)を対象としたものであり、ふ化直後の仔魚から全長25cm以下の稚魚を対象とするものではない。
【0011】
ふ化後20日程度以上のマグロ属魚類の稚魚用の飼料として、脱脂酵素処理魚粉、脂質源として極性脂質動物油脂又は植物油脂、及び糖質源として活性澱粉を含有してなるとともに、ビタミンCを200mg/kg以上配合してなるマグロ属魚類用飼料が提案されている(特許文献3)。
しかし、そのままでは天然餌料と比べ稚魚の食いつきが劣るため、摂取促進物質としてグルタミン酸、スチジン、及びイノシン一リン酸を添加する必要があった。このような添加物は魚類飼料用添加物としては高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−75021号公報
【特許文献2】再公表2006−90866号公報
【特許文献3】特開2008−148652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
多くの海産魚類の種苗生産は、配合飼料を使用することにより省力化が図られている。常温あるいは冷蔵で保存可能な配合飼料は保管庫から出してすぐに使用可能である。自動給餌器を使用することも可能である。一方、生物餌料(ワムシ、アルテミアなど)や冷凍餌料(オキアミやシラス)は培養や解凍を必要とし、保存性が低く、給餌の機械化が難しい。
【0014】
本発明は、上記のような問題点を解決すべく実験を重ね、クロマグロ稚魚の嗜好性を検討し、配合飼料の原料に拘らずそのテクスチャーを工夫することによりクロマグロの稚魚が好む配合飼料を新たに開発したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の態様は以下のとおりである。
(1)ゲル化剤を添加しグミ状のテクスチャー、すなわち、表面がなめらかでつるりとし、水中ではすこしヌルヌルし、もちもちした弾力性がある状態としたことを特徴とする直径0.1〜30.0mm、好ましくは0.5〜10.0mmの範囲にあるマグロ稚魚用配合飼料。
(2)食品添加物として認可されているゲル化剤で例えばゼラチンまたはグアガムなどであることを特徴とする(1)のマグロ稚魚用配合飼料。
(3)(1)又は(2)のマグロ稚魚用配合飼料を乾燥させたことを特徴するマグロ稚魚用配合飼料。
【0016】
本発明は、クロマグロを含むマグロ属の魚類であって、ふ化後おおむね30〜70日、または全長20〜200mm程度の稚魚を対象とする。
【0017】
従来から海産魚類用配合飼料の多くは乾燥クランブル(ペレット)状であるが、そのほとんどについてクロマグロ稚魚は摂餌しない。しかし、興味深いことにうどんやグミ菓子のようにつるりとして柔らかく、もちもちした食感のものを摂餌することを発明者らは経験的に知っていたため、このようなものの食感があり、栄養的に優れ、さらに安価なものを目標に試行錯誤した。
【0018】
その結果、飼料原料にゼラチンやグアガムなどのゲル化剤を混じ加熱・冷却することにより理想的なものを作製できた。飼料原料としては、従来から海産魚用飼料に使用されている、魚粉、大豆タンパクなどが使用でき、必要に応じてビタミン類やミネラルを添加すればよい。
【0019】
本発明でいう「グミ状のテクスチャー」とは、破断強度が10〜200g/mmの範囲のことであり、より好ましくは40〜60g/mmである。この程度の弾力性を有する飼料であれば、マグロ幼魚が好んで摂取する。
破断強度が200g/mmを超えると硬すぎて、本発明でいう「グミ状のテクスチャー」が損なわれて摂餌性が低下し、破断強度が10g/mm未満では保形性が悪くなり、水質汚染の原因となる。
乾燥した本発明の配合飼料の場合は、水中に浸漬後、1分以内に表面が本件発明の破断強度の範囲内となれば、未乾燥のものと同様、マグロ幼魚が好んで摂取する。
本件発明の破断強度の範囲内の配合飼料を乾燥する場合、乾燥飼料の破断強度は、300〜900g/mmの範囲内とすることが望ましい。この範囲よりも高いものは水に入れたときの戻りが悪く、マグロが摂餌する前に飼料が沈んでしまい無駄となり、逆に低いものは自動給餌器での詰まりが生じ易い。
また、この範囲内となるよう乾燥した本発明の飼料は、20℃の水に浸漬後最大5分以内に内部まで水が浸透し、乾燥前と同様、破断強度が10〜200g/mmの範囲となる。
【0020】
また、本発明でいう「破断強度」とは、「破断応力/凹み」で求められる数値である。ここで、破断応力及び凹みは、測定装置としてサンレオテックスSD700(株式会社サン科学製)を用い、直径5mmの球形プランジャーにて、プランジャー速度60mm/分、プランジャー加重35gの条件で測定されたものである。測定方法は、プランジャーを測定物に垂直に押し当てていき、測定物が抵抗を失って破断するのに要した力〔=破断応力(g)〕とそのときの距離〔=凹み(mm)〕を求めるものである。破断応力と凹みは、正の比例関係を有するため、破断応力を凹みで割り、その係数を破断強度(g/mm)とした。
【発明の効果】
【0021】
本発明の配合飼料を使用することにより、イカナゴなどのシラス給餌を停止し配合飼料給餌に切り替えても摂餌量が多く、成長速度の低下は許容範囲内で、移送によるストレスを与えた場合にはミンチ給餌区を上回る生残率を達成させられることが可能となった。
【0022】
また、主原料は魚粉であるため安価で入手が安定的、成形後の冷蔵保存が可能である、作製中に栄養強化剤などの添加物を加えることが容易、という従来使用されてきたシラスに比較して多くの優位性を有し、さらに、テクスチャーを良好にする添加物としてのゼラチン(コラーゲン)は、タンパク質であるため可消化物である上に健康食品的なイメージが社会的に定着しており、グアガム(水溶性植物繊維)も食品添加物として広く使用されているものであるから、特に新規の物質を添加する必要がないため特段の安全性証明が不要、などの利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実験3における各飼料区における脂肪魚数
【図2】実験3における各飼料区の7日後の体重
【図3】実験3における各飼料区の7日後の肥満度
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0024】
実験1<摂餌活発性>
マグロ稚魚の摂餌活発性を調べるため、以下の飼料を用意し、10m生簀収容後2週間経過した全長80mmのマグロ稚魚、1200尾にこれらの飼料を給餌した。各々の飼料の組成は表1に示すとおりである。なお、生簀収容後2週間はイカナゴシラスのみで育成し、配合飼料は一切与えていない。
【0025】
(1)市販の海産魚用配合飼料:商品名「おとひめS2」(日清丸紅社製)
マダイやトラフグなど多くの魚種での使用実績がある。ビーズ(ペレットあるいはクランブル)状の乾燥飼料で自動給餌器の使用可。
(2)クランブル状飼料:原料コストを度外視して魚類用に考えられうる良原料を使用した乾燥クランブル状飼料(直径1mmφ、長さ2〜3mm)で自動給餌器の使用可。
(3)グミ状飼料:上記クランブル状飼料の原料にゼラチンを加え、モチモチしたテクスチャーにしたもの(直径1mmφ、長さ2〜5mm)。高温(32℃以上)で融合しやすく、真夏の炎天下では自動給餌器の使用不可。
(4)低価格グミ状飼料:上記クランブル状飼料の原料から高価格原料を除去しにゼラチンを加え、モチモチしたテクスチャーにしたもの(直径1mmφ、長さ2〜5mm)。高温(32℃以上)で融合しやすく、真夏の炎天下では自動給餌器の使用不可。
(5)低価格グミ状(グアガム)飼料:上記クランブル状飼料の原料から高価格原料を除去し、ゼラチンに替えてグアガム(10%)を加え、モチモチしたテクスチャーにしたもの(直径1mmφ、長さ2〜5mm)。高温(32℃以上)で融合しやすく、真夏の炎天下では自動給餌器の使用不可。
(6)低価格グミ状(乾燥)飼料:上記(4)低価格グミ状飼料をエアコンが運転された室温(25℃)で6時間乾燥させたもの。高温で融合しにくく自動給餌器の使用可。
(7)イカナゴシラス:マグロ稚魚の育成にもっとも一般的な餌。成長に実績がある。冷凍ブロックで販売され、解凍後手蒔きで給餌。保存性が悪く、給餌ごとに解凍・調整することが望ましい。自動給餌器の使用不可。
【0026】
以上の飼料をマグロ稚魚に給餌し、その摂餌活性を比較した。その結果を表2に示す。摂餌活性は表の下に示した定義に基づいて評価した。
市販の海産魚用配合飼料(商品名:おとひめS2)の摂餌は認められるが、摂餌が観察された個体は、口に入れてもはき出すことが観察された。
ドライクランブル状飼料は、吐き出し行動が認められず、飲み込んでいると判断できる。しかし連続的な摂餌行動は認められなかった。
これに対し、グミ状飼料は何れも活発に摂餌し、特に餌に対して多数回の突進行動をとり、連続的な摂餌行動が認められた。興奮による飛び跳ねも観察された。
しかし、冷凍イカナゴシラスではさらに摂餌行動が活発で、水面付近での飛び跳ねが活発で、ピチャピチャさせながら突進行動をとりながらの連続的な摂餌行動が観察された。
【0027】
ドライクランブル状飼料とグミ状飼料は構成成分および比率がほとんど同じで、ゼラチンの有無のみが異なるため、グミ状かクランブル状かだけの違いである。
したがって、テクスチャーがマグロ稚魚の摂餌にかなり重要なポイントであると考えられる。また、微量高価格原料(ラクトフェリン、アスタキサンチンなど)を除去した低価格グミ状でも同様の結果だったことから、グミ状飼料では微量高価格原料を除去しても同様の効果が期待できると結論される。さらに、低価格グミ状の原料中のゼラチンをグアガムに置換したものについても摂餌活発性を比較したが、摂餌活発性は成分や成分を変更してもまったく低下しなかった。
【0028】
以上のことから、クロマグロ稚魚の摂餌活性に関しては、微量高価格原料は不要で、クロマグロ稚魚が好む飼料は、ゼラチンやグアガムなどの添加によりモチモチした食感にすることが重要と考えられる。
さらに、グミ状(乾燥)飼料は、低価格グミ状をエアコンが運転された部屋(25度)で6時間乾燥させたものである。そのテクスチャーはインスタントラーメンを砕いたものによく似ており、グミ状よりもクランブル状飼料に似ているが、水に浸すとすぐに表面は多少のぬめりが出てくる。これはゼラチン(コラーゲンを主成分とする)の高い親水性によると考えられる。
【0029】
本実験によれば、グミ状(乾燥)飼料もグミ状飼料と同じ摂餌活発性を示した。このことは、グミ状飼料は乾燥させても摂餌性を低下させない飼料であり、乾燥させることにより従来、ほかの海産魚で一般的に使用されてきた自動給餌器(注)による給餌も可能とさせる。すなわち、グミ状は乾燥させ自動給餌器を使用することにより従来の給餌作業を大幅に省力化させることが可能となる。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

摂餌活発性の定義
− :摂取しない
± :摂取は認められるが、吐き出す
+ :摂取は認められるが活発ではなく連続的ではない
++ :連続的に摂餌するが活発ではない
+++ :++++よりも泳ぐ速度は遅いが連続的によく食べる
餌に向かって突進して摂餌する行動が多く見られる
興奮による飛び跳ねも観察される
++++ :水面近くで飛び跳ねが活発でピチャピチャさせながら活発に連続的に食べる
突進して摂餌する行動の連続
【0032】
実験2<蝟集性及び摂餌性>
次に育成に使用した飼料の蝟集性及び摂餌性に与える影響についての実験を行なった。
【0033】
イカナゴシラスで育成したクロマグロ稚魚をイカナゴシラス、ドライクランブル、低価格グミで11日間育成し、その後、実験1で使用した各飼料を与えた際の摂餌活発性を比較した。その結果を表3に示す。
【0034】
【表3】

蝟集性の定義
− :蝟集しない
+ :蝟集が認められる
++ :投餌場所付近の70%の個体が集まる
+++ :投餌場所付近の100%の個体が集まる
【0035】
イカナゴシラス区ではいずれの飼料についても蝟集性が認められたが、ドライクランブルについては摂餌が認められなかった。低価格グミ状の蝟集性、摂餌活発性が強かったが、イカナゴシラスがもっとも強かった。
ドライクランブル区ではすべての飼料について蝟集性は認められたが、摂餌性ではイカナゴシラス以外を活発に摂餌した。
低価格グミ状区ではいずれの飼料にも蝟集性が認められ活発に摂餌した。
【0036】
以上の結果は、イカナゴシラスやドライクランブルで育成すると摂餌しない飼料が生じることを示している。その一方、低価格グミ状で育成するといずれの飼料についても活発に摂餌することが示された。このことは低価格グミ状により育成された稚魚はいつでもどの飼料へも変更が可能で、稚魚育成者の経済性や労力との兼ね合いから餌の変更や一部時間(一日の中の昼だけ、あるいは午後だけなど)の自動給餌器の使用を可能とするものであると考えられる。また、従来型のいずれの飼料も大きな成分変更は餌付け期間や馴致期間を必要とする点からも本発明の飼料は画期的である。特に、養魚の状態や環境(水温や日照など)にあわせて、餌付け期間や馴致期間不要で餌料成分を大きく改変できるフレキシビリティーは従来型のいずれの飼料にも無い。グアガム使用グミ状についてもグミ状と同様の摂餌活発性を示した。
【0037】
このことから実験1の結果と同様にクロマグロ稚魚が好む飼料は、ゼラチンやグアガムなどのモチモチした食感にすることが重要と考えられる。グミ状(乾燥)についてもグミ状と同じ結果が得られた。
グミ状(乾燥)飼料は、グミ状飼料の代替品として使用可能であることをここでも示している。
【0038】
実験3<生存率>
クロマグロ稚魚(全長:45mm)を6基の陸上生け簀(2x2x2m)に200個体ずつ収容し、1基を無給餌とし、それ以外の生け簀にそれぞれ、イカナゴシラス、ドライクランブル、低価格グミ状を給餌した。7日後に実験魚をとりあげ、体長、体重、肥満度(100,000x体重(g)/体長(mm)の3乗)を測定した。また、死亡魚を毎日取り上げ計数した。7:00〜19:00の間に2時間ごとに給餌した。
【0039】
死亡魚数はいずれの生け簀でも3日目にもっとも多くなり(図1)、その後減少した。低価格グミ状を給餌した生け簀がもっとも死亡魚数が少なかった。このことは低価格グミ状の給餌が移送後の死亡率を減少させる効果があることを示している。
【0040】
実験開始から7日後の体重(図2)はいずれの生け簀でも実験開始時よりも有意に増加していた(ANOVA、P<0.05)。イカナゴシラス区と低価格グミ状区がもっとも成長量が高く、ドライクランブルがこれらに続いた。肥満度も同様であった(図3)。これらのことは低価格グミ状を給餌してもイカナゴシラスと同等の成長速度が期待でき、肥満度も低下しないことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により、クロマグロ稚魚の効率的生産と生残率向上が可能となる。その結果、安定且つ大量にクロマグロ稚魚が養殖業者に供給され、天然資源に依存しない完全クロマグロ養殖の実現に寄与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品添加物として認可されているゲル化剤を魚用飼料原料に添加しグミ状としたことを特徴とするふ化後おおむね20〜70日又は全長20〜200mm程度のマグロ稚魚用配合飼料。
【請求項2】
グミ状が、破断強度で10〜200g/mmの範囲である請求項1記載のマグロ稚魚用配合飼料。
【請求項3】
ゲル化剤がゼラチンまたはグアガムであることを特徴とする請求項1または2記載のマグロ稚魚用配合飼料。
【請求項4】
請求項3記載の飼料を乾燥させたことを特徴するマグロ稚魚用配合飼料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−206052(P2011−206052A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53451(P2011−53451)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業委託事業のうち「マグロ類の人工種苗による新規養殖技術の開発」、産業技術強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501168814)独立行政法人水産総合研究センター (103)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【出願人】(000251130)林兼産業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】