説明

マジックミラーユニット、窓構造及び手摺

【課題】日中及び夜間のいずれにおいても、室内空間からの眺望景観の確保と室外空間からの覗き見防止とを実現する。
【解決手段】マジックミラーユニット101は、板状部201と、照明部301とを有する。板状部201は、透光性を有する基材202の第1の面202aに金属薄膜層203を設けて形成され、マジックミラーMとして機能する。照明部301は、板状部201の第2の面204を照明する。マジックミラーユニット101は、壁部503に設けられた孔部Hに嵌め込まれ、手摺501等としても用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マジックミラーユニットと、このマジックミラーユニットを用い、建物内空間からの景観の確保と建物外空間からの覗き見防止とを実現する窓構造と、この窓構造を採用し建物のベランダ等に適用される手摺とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マジックミラー(明るい側からは鏡のように見え、暗い側から見ると透過しているように見えるビームスプリッター)を用いた窓構造に関する発明が、種々開示されている。
【0003】
一例として、特許文献1には、窓枠に嵌め込まれたハーフミラー等の透明板状体の室外側に窓枠の上下ないし左右にかけて照明装置を設け、照明装置からの光を反射して照明を均一なものにする反射体を室外側に設けることが記載されている。特許文献1によれば、室外側から室内を見た場合に室内が見えることはなく、室内側から外部を見た場合には夜間においても室内から室外の様子が見えることになる、とされる。
【0004】
別の一例として、特許文献2には、透明のガラス基板や樹脂基板の片面に金属薄膜層を形成してハーフミラーとすること、この金属薄膜層の表面に光拡散粒子を分散させた半透明で強靭な樹脂製結像シートを貼着積層して窓用の採光面材料とすること、及び、樹脂製結像シートを室内側としてこの採光面材料を用いることが記載されている。特許文献2によれば、室外側が相対的に明るい昼間においては、透明のガラス基板(又は樹脂基板)と金属薄膜層とがハーフミラーとして機能し、室外側が相対的に暗くなる夜間においては、樹脂製結像シートがブラインドとして機能し室外からの視線を遮断する、とされる。
【0005】
さらに別の一例として、特許文献3には、戸建てや集合住宅に用いられるベランダや窓際の手摺り柵に、ハーフミラーフィルムを蒸着させた回転開閉式羽根部を複数並列に設けたものが示されている。特許文献3には、この手摺り柵に関して、柵としての安全性を確保しながら内部からの可視性と採光性を保持すること、及び、外部からの視認を阻害し、風の流入と遮断を必要に応じて対応させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平06−001691号公報
【特許文献2】特開2010−001628号公報
【特許文献3】実用新案登録第3093997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の窓では、照明装置が、透明板状体の中央部に位置している。このため、室内側から透明板状体を通して室外側を見通す場合、窓の中心部を見通せず、見通しが悪い。また、照明装置のコストやメンテナンスの問題も生じる。
【0008】
特許文献2に記載の採光用材料は、昼間にハーフミラーとして機能し、採光用材料が外部側から内部側の覗き見を防ぐ。しかしながら、内部側から外部側を見通す場合、採光用材料に含まれる結像シートによって、見通しが悪くなる。
【0009】
特許文献3に記載のベランダ手摺り柵では、通気のために並列する短冊状の羽根部を回転させると、隙間が生じ、この隙間から内部側が見えてしまう。
【0010】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、日中及び夜間のいずれにおいても、室内空間からの眺望景観の確保と室外空間からの覗き見防止とを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1のマジックミラーユニットは、第1の面に金属薄膜層が設けられ透光性を有しマジックミラーとして機能する板状部と、前記板状部の第2の面を明るくする照明部と、を備える。
【0012】
本発明の請求項2のマジックミラーユニットは、前記照明部は、前記板状部に対して前記第2の面の側に位置付けられて、前記第2の面を照らす照明体を含む。
【0013】
本発明の請求項3のマジックミラーユニットは、前記照明部は、前記板状部の端面から前記板状部内に光を照射する照明体と、前記第2の面に配置され、光を拡散させる拡散部とを含む。
【0014】
本発明の請求項4のマジックミラーユニットは、前記の照明体は、発光源として発光ダイオード(LED)を用いたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項5のマジックミラーユニットは、前記の拡散部は、第2の面に光を拡散する反射粒子が分散された透光性シート層が形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項6のマジックミラーユニットは、前記の拡散部は、第2の面の表面に細かな凹凸加工処理が施されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項7のマジックミラーユニットは、前記の拡散部は、第2の面の表面に所定の間隔で透光性の突起部が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項8のマジックミラーユニットは、前記の拡散部は、第2の面の表面に所定の間隔で光を拡散する斑点模様が印刷されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項9のマジックミラーユニットは、前記照明部は、蓄光材を含み前記第2の面に配置される蓄光部を含むことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項10のマジックミラーユニットは、前記照明部は、前記第2の面に配置される有機EL照明板を含むことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の窓構造は、上記のマジックミラーユニットと、前記マジックミラーユニットが嵌め込まれる孔部を形成する壁部と、を備える。
【0022】
本発明の手摺は、上記のマジックミラーユニットと、前記マジックミラーユニットが嵌め込まれる孔部を形成する壁部と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
1)室内空間と室外空間とを仕切る箇所にマジックミラーユニットを設置した場合、日中のように室内空間が室外空間より暗い場合に板状部はマジックミラーとしての機能し、夜間のように室内空間が室外空間より明るい場合にも照明部を用いて第2の面を明るくし、板状部にマジックミラーとしての機能を発揮させることができる。したがって、日中及び夜間のいずれにおいても、室内空間からの眺望景観の確保と室外空間からの覗き見防止とを実現できる。
【0024】
2)通常のライトではなく、LED灯を使用するので、ランニングコストが安価である。
【0025】
3)LED灯を使用するので、耐久性が良く、また、小型軽量でありメンテナンスが容易である。
【0026】
4)夜間のライトアップとなるので、窓や手すりに使用すると、景観が良くなる。
【0027】
5)LED照明をミラーガラスの内部に入光して乱反射により表面全体を光らせることができる。
【0028】
6)蓄光材を用いると、光源における電源が不要となる。
【0029】
7)有機ELを用いると、ハーフミラー全体を直接光らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第一の実施の形態における、マジックミラーユニットを断面視で見た模式図である。
【図2】第二の実施の形態における、窓構造を室外空間側から見た模式図である。
【図3】第三の実施の形態における、手摺を室外空間側から見た模式図である。
【図4】第四の実施の形態における、マジックミラーユニットを断面視で見た模式図である。
【図5】第五の実施の形態における、マジックミラーユニットを断面視で見た模式図である。
【図6】第六の実施の形態における、マジックミラーユニットを断面視で見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施の一形態を、図1に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第一の実施の形態と呼ぶ。
【0032】
図1は、マジックミラーユニット101を断面視で見た模式図である。マジックミラーユニット101は、板状部201と、照明部301とを有する。
【0033】
板状部201は、透光性を有する板状の基材202を有する。図示はしないが、基材202は、図1の右側又は左側から見て、矩形状に形成される。基材202には、ソーダガラス等のガラス素材、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を用いることができる。基材202は、無色透明であっても有色透明であってもよい。基材202の一方の面(第1の面202a)には、金属薄膜層203が積層される。金属薄膜層203は、アルミニウムや銀等の光線反射率の高い金属によって、所定の光線透過率(光線反射率)を有するように設けられた薄膜層である。金属薄膜層203は、蒸着やコーティングによって基材202の第1の面202aに形成される。
【0034】
基材202と金属薄膜層203とは、いわゆるマジックミラーMを構成する。マジックミラーMが明るい空間と暗い空間とを仕切る箇所に配置される場合、明るい空間からマジックミラーMを見る人には、マジックミラーMに映ったその人自身の像が見える。また、明るい空間からマジックミラーMを見る人は、このマジックミラーM越しに明るい空間を見ることができる。
【0035】
照明部301は、板状部201の上部に配置される。照明部301は、照明体302と、ハウジング303と、制御回路(図示せず)とを有する。照明体302には、LED照明(発光ダイオード)、より好ましくは直管蛍光灯型のLED照明が用いられる。なお、照明体302に用いられる光源には、LED照明以外の種々のものを用いることができる。また、制御回路は、外部電源から給電される電力を照明体302に供給して照明体302を点灯させたり、この電力を遮断して照明体302を消灯させたりする。
【0036】
ハウジング303は、取付部304と、迫出部305とを有する。取付部304は、板状部201の上部に取付けられる。迫出部305は、取付部304から、基材202における金属薄膜層203とは反対の面(第2の面204)の側に迫り出す。迫出部305には、照明体302が収納される。照明体302は、基材202の第2の面204を照らす。
【0037】
マジックミラーユニット101は、室内空間V1と室外空間V2とを仕切る箇所に設けられる。このとき、照明体302は、室外空間V2に配置される。
【0038】
第1の場合として、室内空間V1が室外空間V2より暗い場合(例えば、日中)を考える。この場合、室内空間V1にいる人はマジックミラーユニット101の板状部201を通して室外空間V2を視認できる。一方、室外空間V2にいる人はマジックミラーユニット101の板状部201を通して室内空間V1を視認できない。即ち、第1の場合には、照明体302を点灯させなくても、室内空間V1からの眺望景観の確保と室外空間V2からの覗き見防止とが実現される。
【0039】
第2の場合として、室内空間V1が室外空間V2より明るい場合(例えば、夜間)を考える。この場合、照明体302を点灯して第2の面204を明るくすることにより、室内空間V1側から室外空間V2内を視認できるようになり、室外空間V2側から室内空間V1内が視認できなくなる。即ち、第2の場合には、照明体302を点灯させることで、室内空間V1からの眺望景観の確保と室外空間V2からの覗き見防止とが実現される。
【0040】
このように、本実施の形態のマジックミラーユニット101では、照明体302を点灯して第2の面204を明るくし、夜間であっても、板状部201にマジックミラーMとしての機能を発揮させることができる。従って、日中及び夜間のいずれにおいても、室内空間V1からの眺望景観の確保と室外空間V2からの覗き見防止とが実現される。
【0041】
さらに、本実施の形態のマジックミラーユニット101によれば、室内空間V1から室外空間V2を見るときに、照明部301が視界を遮らない。
【0042】
さらに、本実施の形態のマジックミラーユニット101にLED照明が採用されている。このため、消費電力が少なく電気代は非常に安価になる。また、耐久性が良くメンテナンスの手間が大幅に減少する。
【0043】
別の実施の形態を、図2に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第二の実施の形態と呼ぶ。ここで、前述した第一の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。本実施の形態は、第一の実施の形態のマジックミラーユニットを窓構造に用いた適用例である。
【0044】
図2は、窓構造401を室外空間V2側から見た模式図である。窓構造401は、壁部402と、マジックミラーユニット101(第一の実施の形態を参照)とにより構成される。壁部402は、室内空間V1側(図2における紙面奥側)と、室外空間V2側(図2における紙面手前側)とに仕切る箇所に設けられる。壁部402には、室内空間V1側と室外空間V2側とを連通する矩形状の孔部Hが設けられる。壁部402には、この孔部Hの縁に沿うように、窓枠部403が設けられる。窓枠部403には、マジックミラーユニット101が嵌め込まれる。このとき、照明部301は、窓枠部403の上縁部に沿って配置される。また、金属薄膜層203は室内空間V1側に向けられる。これにより、ハウジング303の迫出部305は、壁部402から室外空間V2側に向けて突出する。
【0045】
このように、本実施の形態の窓構造401では、照明体302を点灯して室外空間V2側(第2の面204)を明るくし、夜間であっても、板状部201にマジックミラーMとしての機能を発揮させることができる。従って、日中及び夜間のいずれにおいても、室内空間V1からの眺望景観の確保と室外空間V2からの覗き見防止とが実現される。
【0046】
別の実施の形態を、図3に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第三の実施の形態と呼ぶ。ここで、これまでに述べた実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。本実施の形態は、第一の実施の形態のマジックミラーユニットを手摺(ベランダ手摺)に用いた適用例である。
【0047】
図3は、手摺501を室外空間V2側から見た模式図である。手摺501は、戸建住宅やマンション等の建物から迫り出しているベランダ(図示せず)を構成する。ベランダは、床部502と、床部502から立設する手摺501とを有する。建物の出入口から出た住人は、床部502の上に滞留できる。手摺501は、床部502の上に滞留する住人のベランダからの落下を防ぐ。
【0048】
手摺501は、壁部503と、複数のマジックミラーユニット101(第一の実施の形態を参照)とにより構成される。壁部503は、第二の実施の形態における壁部402に相当する。床部502は、壁部503から室内空間V1側(図3における紙面の奥側)に向けて水平に延びている。
【0049】
壁部503には、室内空間V1側と室外空間V2側とを連通する矩形状の孔部Hが、水平方向に並んで複数設けられる。各孔部Hには、マジックミラーユニット101が嵌め込まれる。このとき、第二の実施の形態における窓構造401と同様に、照明部301は板状部201の上方に位置し、金属薄膜層203室内空間V1側に向けられ、ハウジング303の迫出部305は壁部402から室外空間V2側に向けて突出する。ここで、壁部503とマジックミラーユニット101との間に、窓枠部(第一の実施の形態を参照)を設けるようにしても良い。
【0050】
このように、本実施の形態の手摺501では、照明体302を点灯して室外空間V2側(第2の面204)を明るくし、夜間であっても、板状部201にマジックミラーMとしての効果を発揮させることができる。従って、日中及び夜間のいずれにおいても、室内空間V1からの眺望景観の確保と室外空間V2からの覗き見防止とが実現される。
【0051】
別の実施の一形態を、図4に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第四の実施の形態と呼ぶ。本実施の形態は、マジックミラーユニットに関するものである。前述した第一の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0052】
図4は、マジックミラーユニット101Aを断面視で見た模式図である。本実施の形態のマジックミラーユニット101Aは、板状部201と、照明部301Aとを有する。
【0053】
照明部301Aは、発光部301Aaと、拡散部301Abと、反射部301Acとを含む。発光部301Aaは、板状部201の上部に配置される。拡散部301Abは、第2の面204に沿って配置される。反射部301Acは、板状部201の下部に配置される。
【0054】
発光部301Aaは、照明体302と、ハウジング303Aと、制御回路(図示せず)とを有する。ハウジング303Aは、板状部201の上端面に取付けられ、照明体302を収納する。照明体302は、板状部201の上端面に対面させて配置される。
【0055】
拡散部301Abは、透光性を有するシート状のもので、第2の面204に貼着される。拡散部301Ab内には、反射粒子306が、分散した状態で含まれる。反射粒子306には、例えば、銀粒子が採用される。照明体302から板状部201の上端面を通して基材202を通過し301Abに入射された光Lは、反射粒子306により拡散される。
【0056】
反射部301Acは、板状部201の下端面に取付けられる。反射部301Acには、例えば、平面鏡や凸面鏡が採用される。反射部301Acは、板状部201の上端面から入射され基材202を通過し基材202の下端面まで到達した照明体302からの光Lを、上方に偏向する。反射部301Acは、入射された光Lを拡散部301Abに到達させるような向きに向けられる。
【0057】
本実施の形態のマジックミラーユニット101Aを用いる場合、室内空間V1が室外空間V2より明るい場合(例えば、夜間)に、照明体302を点灯する。照明体302から照射された光Lは、拡散して下方に照射され、一部は直接、拡散部301Abに入り、反射粒子306によって拡散される。また、一部は、金属薄膜層203のマジックミラー面で反射し、拡散部301Abに入り、拡散する。さらに一部は直接的に反射部301Acで反射して拡散部301Abに入り、拡散される。
【0058】
これにより、第2の面204が明るくなり、夜間であっても、板状部201にマジックミラーMとしての機能を発揮させ、室外空間V2側から室内空間V1側を視認できなくすることができる。
【0059】
尚、本実施例では、拡散部301Abは、透光性を有するシート状のものを用いたが、基材202の第2の面204側に、光を拡散するための反射粒子306を分散して固着したものでも良く、多数の細かな突起部を形成するようにしたものでも良い。基材202の表面処理や蒸着、印刷等で突起部を形成しても良い。
【0060】
また、シルク印刷で透明色、白色、あるは銀色などの光を反射しやすい色を斑点状に印刷したものでも良い。
【0061】
シルク印刷において、多数の斑点を形成する場合には、発光源に遠い部分は近い部分より斑点の大きさを大きくするか、あるいは斑点の間隔を狭くすると良い。さらに、拡散効果を高めるために、印刷する斑点の形状は、円形の他に多角形状や星形などの不定形としても良い。さらにまた、使用するインクにおいて、透明色に反射粒子を混在させたインクを使用しても良い。
【0062】
また、本実施例では、基材202の第1の面202a側に金属薄膜層203を形成してマジックミラーMとしているが、基材202の第1の面202a側にマジックミラー機能を有するフィルムを貼着したものでも良い。
【0063】
このように、本実施の形態のマジックミラーユニット101Aによれば、日中及び夜間のいずれにおいても、室内空間V1からの眺望景観の確保と室外空間V2からの覗き見防止とが実現される。
【0064】
さらに、本実施の形態のマジックミラーユニット101Aによれば、ハウジング303Aが迫出部305(図1参照)を有さず、室内空間V1から板状部201を通して見た視界が一層広がる。また、迫出部305が無く、迫出部305と板状部201との間に汚れが溜まらない。さらに、迫出部305が破損するような事態も生じ得ない。
【0065】
さらに、本実施の形態のマジックミラーユニット101Aは、反射部301Acを有している。このため、照明体302からの光Lが無駄なく拡散部301Abに導かれ、第2の面204側が一層明るくなり、室外空間V2からの覗き見防止が一層確実になる。
【0066】
別の実施の一形態を、図5に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第五の実施の形態と呼ぶ。本実施の形態は、マジックミラーユニットに関するものであって、第四の実施の形態に準ずるものである。第一の実施の形態又は第四の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0067】
図5は、マジックミラーユニット101Bを断面視で見た模式図である。本実施の形態のマジックミラーユニット101Bには、拡散部301Ab(第四の実施の形態を参照)に代えて、蓄光部301Bbが第2の面204に沿って配置される。
【0068】
蓄光部301Bbは、透光性を有するシート状のもので、第2の面204に貼着される。蓄光部301Bb内には、微粒子状の蓄光材307が、分散した状態で含まれる。蓄光材307には、市販されている蓄光顔料を使用でき、例えば、根本特殊化学株式会社製の高輝度長残光性蓄光顔料 N夜光(ルミノーバ)(登録商標)などが好ましい。蓄光材307には、板状部201の上端面を通過し基材202を通過した照明体302からの光Lが入射される。蓄光材307には、金属薄膜層203の反射面や基材202の下面の反射部301Acにより偏向された照明体302からの光Lも入射される。さらに、蓄光材307には、照明体302からの光Lのみならず、室内空間V1や室外空間V2からの光(例えば、太陽光)も入射される。
【0069】
本実施の形態のマジックミラーユニット101Bを用いる場合、照明体302を点灯し、照明体302からの光Lを直接的に、又は金属薄膜層203の反射面202a、又は反射部301Acを経由して蓄光部301Bbに入射させる。そして、室内空間V1が室外空間V2より明るくなっても、発光した蓄光部301Bbにより第2の面204が明るくなる。これにより、第2の面204が明るくなり、夜間であっても、板状部201にマジックミラーMとしての機能を発揮させ、これにより、室内空間V1側から室外空間V2側を視認できるようになり、室外空間V2側から室内空間V1内が視認できなくすることができる。なお、夜間において、照明体302を消灯しても点灯したままにしてもよい。
【0070】
このように、本実施の形態のマジックミラーユニット101Bによれば、日中及び夜間のいずれにおいても、室内空間V1からの眺望景観の確保と室外空間V2からの覗き見防止とが実現される。
【0071】
なお、昼間に太陽光を受ける等により蓄光部301Bbに光が充分に入射される場合、マジックミラーユニット101Bに照明部301Aを設けなくても良い。この場合、照明部301Aの照明体302を点灯させるための電源が不要となる。
【0072】
また、シート状の蓄光部301Bの中に、反射粒子306(第四の実施の形態を参照)を蓄光材307とともに混在させても良く、あるいは基材202の中に、蓄光材307(本実施の形態(第五の実施の形態)を参照)と反射粒子306(第四の実施の形態を参照)との両方を混在させてもよい。この場合、夜間においては、蓄光材307が発光して室外空間V2から室内空間V1を見通せなくなる。そして、昼間の天候不順等により蓄光材307に十分な蓄光ができなかった場合にも、照明体302を点灯させて、室外空間V2から室内空間V1を見通せなくすることができる。
【0073】
別の実施の一形態を、図6に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第六の実施の形態と呼ぶ。本実施の形態は、マジックミラーユニットに関するものであって、基本的には第一の実施の形態に準ずるものである。第一の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0074】
図6は、マジックミラーユニット101Cを断面視で見た模式図である。本実施の形態のマジックミラーユニット101Cは、板状部201と、照明部301Cとを有する。
【0075】
照明部301Cは、有機EL照明板308と、制御回路309とを有する。有機EL照明板308は、第2の面204に貼着される。制御回路309は、有機EL照明板308に加えられる電圧の制御を行う。有機EL照明板308は、電圧が印加されていないと透光を許容した状態となり、電圧が印加されると板全体が均等に光る。
【0076】
本実施の形態のマジックミラーユニット101Cを用いる場合、室内空間V1が室外空間V2より明るい場合(例えば、夜間)に、制御回路309を用いて有機EL照明板308に電圧を印加する。これにより、有機EL照明板308の全体が光り、第2の面204が明るくなり、夜間であっても、板状部201にマジックミラーMとしての機能を発揮させ、室外空間V2側から室内空間V1側を視認できなくすることができる。
【0077】
図7は、マジックミラーユニット101Dを断面視で見た模式図である。本実施の形態のマジックミラーユニット101Dは、ガラス板部600と、照明部301Aとを有する。
【0078】
照明部301Aは、発光部301Aaと、拡散部601と、反射部301Acとを含む。発光部301Aaは、板状部201の上部に配置される。拡散部601は、第2の面204の表面に配置される。反射部301Acは、ガラス板部600の下部に配置される。
【0079】
発光部301Aaは、LED発光体302Aと、ハウジング303Aと、制御回路(図示せず)とを有する。ハウジング303Aは、板状部201の上端面に取付けられ、LED発光体302Aを収納する。該LED発光体302Aは、ガラス板部600の上端面に対面させて配置される。
【0080】
拡散部601は、光拡散粒子を斑点状に第2の面204に分散して固着されたものである。該光拡散粒子としては、LED光に対して光を拡散するものであればいずれでも良く、例えば、塗料、インク、ガラス製粒子、樹脂性粒子、アルミナ粒子、アルミ金属粒子、銀粒子などが使用できる。
【0081】
本実施例の拡散部601は、ガラス板部600の第2の面204の表面に白色インクにより、斑点を配置したものであり、直径1mm〜2mmの円形の斑点を0.5mm〜2mm間隔で全体に分散してシルク印刷により形成したものである。
【0082】
図8に拡散部601の光拡散粒子による斑点602の配置状況を示す。(斑点は白色であるが図面では黒色で示している。)斑点602の径は、最上部では直径が1mm程度であり、下部になるにしたがって大きくなり最下部では2mm程度となっている。また、斑点602の間隔についても、上部では、間隔が広く(2mm程度)、下部になるにしたがって間隔が狭く(0.5mm程度)なっている。
【0083】
LED発光体302Aから照射される光は、ガラス板部400の上端面を通してその内部に入光し、L1の矢印に示すように、直接、第2の面204の表面に形成された拡散部601の光拡散粒子による斑点602により、拡散して室外空間V2側に発光する。
【0084】
また、LED発光体302Aから照射された光の一部は、L2の矢印に示すように、金属薄膜層203のマジックミラー面で反射し、第2の面204側に反射光として照射される。そして拡散部601の光拡散粒子による斑点602により拡散し、室外空間V2側が発光する。
【0085】
さらにまた、LED発光体302Aから照射された光の一部は、L3の矢印に示すように、直接、ガラス板部600の底部に配置された反射部301Acで第2の面204側に反射し、また、一部は上記の金属薄膜層203のマジックミラー面で反射し、拡散部601の光拡散粒子による斑点602で拡散し、室外空間V2側が発光する。
【0086】
該反射部301Acには、例えば、平面鏡や凸面鏡が採用される。また、反射部301Acは、LED発光体302Aからの光を、上方に偏向するとともに、入射された光を拡散部601に到達させるような向きに向けられる。
【0087】
本実施の形態のマジックミラーユニット101Dを用いる場合、室内空間V1が室外空間V2より明るい場合(例えば、夜間)に、LED発光体302Aを点灯する。
【0088】
LED発光体302Aから照射された光Lは、拡散して下方に照射され、直接または間接的に、拡散部601に入り、拡散し発光する。
【0089】
これにより、第2の面204が明るくなり、夜間であっても、板状部201にマジックミラーMとしての機能を発揮させ、室外空間V2側から室内空間V1側を視認できなくすることができる。
【0090】
本実施の形態のマジックミラーユニット101Dを用い、図3に示す如く、手摺(ベランダ手摺)に用いたマンションのベランダ手すりにおいて、金属薄膜面402の内側面と第2の面204外側面の照度の違いをデジタル照度計((株)マザーツール社製)で調べた結果を示す。
【0091】
●マジックミラーユニットの仕様
白色LED 光束:0.611m(ルーメン)
取り付けピッチ:14mm
金属薄膜シート 厚さ:46μm、日射反射率:40%
ガラス板 フロート透明 板厚:8mm
拡散部 印刷処理 白色インク斑点 直径1〜2mm、ピッチ0.5〜2mm
●測定時間:日没2時間後
●測定場所:沖縄県糸満市内マンション 2階ベランダ手すり
●測定結果
室内側面照度 ユニット 上部: 12Lux
(402内側面) ユニット中央部: 8Lux
ユニット 下部: 3Lux
室外側面照度 ユニット 上部:100Lux
(204外側面) ユニット中央部: 80Lux
ユニット 下部: 55Lux
【0092】
測定結果より、本マジックミラーユニット101Dにおける室内側面と室外側面の照度差は約10倍となった。夜間においては、図9に示す如く、外部からは、青白く光り、内部を見通すことはできなかった。(図9はグレースケールである。)また、ベランダ内部から外部を見た場合には、一部反射するが外部を見通すことが可能であった。
【0093】
尚、日中においては、LED発光体203Aは消灯しているが、通常のマジックミラーとしての機能が発揮され、ベランダ内部から外部を見通すことができ、外部からは鏡面となって反射し、内部を見通すことはできなかった。
【0094】
このように、本実施の形態のマジックミラーユニットによれば、日中及び夜間のいずれにおいても、室内空間V1からの眺望景観の確保と室外空間V2からの覗き見防止とが実現される。
【0095】
さらに、本実施の形態のマジックミラーユニット101Cでは、板状部201の縁部にハウジング(図1、図4及び図5参照)が取付けられておらず、窓構造401(図2参照)や手摺501(図3参照)にも適用しやすい。
【0096】
なお、第四の実施の形態として述べたマジックミラーユニット101A、第五の実施の形態として述べたマジックミラーユニット101B、及び、第六の実施の形態として述べたマジックミラーユニット101Cのいずれも、窓構造401(第二の実施の形態)や手摺501(第三の実施の形態)に適用できることは、言うまでもない。
【0097】
また、照明部301(第一の実施の形態)、照明部301A(第四の実施の形態、第五の実施の形態)を、板状部201の上縁部のみならず、下縁部、側縁部のいずれに設けても良い。この場合には、反射部301Acを、照明部301が設けられる板状部201の縁部と対向する縁部に配置することになる。
【0098】
さらに、これまでに述べたマジックミラーユニット101、101A、101B、101Cは、手摺501のみならず、中空の窓構造を有したどのような被取付物(例えば、ビルの壁部、看板、店舗のショーウィンドウ)に対しても適用できる。そして、室外空間V2側をライトアップすることにより、室内空間V1からの眺望景観の確保、室外空間V2からの覗き見防止、さらには、室外空間V2から見える被取付物の外観のデザイン性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0099】
101、101A、101B、101C マジックミラーユニット
201 板状部
202a 第1の面
203 金属薄膜層
204 第2の面
301、301A、301C 照明部
301Ab 拡散部
301Bb 蓄光部
302 照明体
302A LED発光体
306 反射粒子
307 蓄光材
308 有機EL照明板
401 窓構造
402 壁部
501 手摺
503 壁部
H 孔部
600 ガラス板部
601 拡散部
602 斑点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面に金属薄膜層が設けられ透光性を有しマジックミラーとして機能する板状部と、
前記板状部の第2の面を明るくする照明部と、
を備えるマジックミラーユニット。
【請求項2】
前記照明部は、前記板状部に対して前記第2の面の側に位置付けられて、前記第2の面を照らす照明体を含む、
請求項1記載のマジックミラーユニット。
【請求項3】
前記照明部は、
前記板状部の端面から前記板状部内に光を照射する照明体と、
前記第2の面に配置され、光を拡散させる拡散部と、
を含む、請求項1記載のマジックミラーユニット。
【請求項4】
前記の照明体は、発光源として発光ダイオード(LED)を用いた照明体であることを特徴とする請求項3に掲載のマジックミラーユニット。
【請求項5】
前記の拡散部は、第2の面に光を拡散する反射粒子が分散された透光性シート層が形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のマジックミラーユニット。
【請求項6】
前記の拡散部は、第2の面の表面に細かな凹凸加工処理が施されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のマジックミラーユニット。
【請求項7】
前記の拡散部は、第2の面の表面に所定の間隔で透光性の突起部が形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のマジックミラーユニット。
【請求項8】
前記の拡散部は、第2の面の表面に所定の間隔で光を拡散する斑点模様が印刷されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のマジックミラーユニット。
【請求項9】
前記照明部は、蓄光材を含み前記第2の面に配置される蓄光部を含む、
請求項1記載のマジックミラーユニット。
【請求項10】
前記照明部は、前記第2の面に配置される有機EL照明板を含む、
請求項1記載のマジックミラーユニット。
【請求項11】
第1の面に金属薄膜層が設けられ透光性を有しマジックミラーとして機能する板状部と、
前記板状部の第2の面を明るくする照明部と、を有する請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のマジックミラーユニットと、
前記マジックミラーユニットが嵌め込まれる孔部を形成する壁部と、
を備える窓構造。
【請求項12】
第1の面に金属薄膜層が設けられ透光性を有しマジックミラーとして機能する板状部と、
前記板状部の第2の面を明るくする照明部と、を有する請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のマジックミラーユニットと、
前記マジックミラーユニットが嵌め込まれる孔部を形成する壁部と、
を備える手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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