説明

マスク保管用ケース

【課題】マスク本体に極力手を触れずに耳掛け紐ともどもマスクをケース内に容易に収容できるようにしたマスク保管用ケースを提供する。
【解決手段】ケース構成体Cの一部が開閉可能とされ、閉止時にマスク収容空間SにマスクMを収容するようにしたものにおいて、ケース構成体Cに、倒伏位置と起立位置の間で折り畳み展開可能な可動壁3を設け、起立位置から倒伏位置に向かう前記可動壁3でマスクMの耳掛け紐m2の動きを規制しつつ耳掛け紐m2を、マスク収容空間Sに収まる方向に案内し得るようにした

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクをより衛生的な状態で保管し得るようにしたマスク保管用ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、感染性の強いインフルエンザの流行等により、マスクの需要が高まっており、不測の事態に備えて平素より備蓄しておく人も急増している。
【0003】
このようなマスクは、通勤時の人混みのように装着が欠かせない場面以外に、会議や飲食時のように一時的に外さなければならない場面等もあるなど、常時装着しているわけではない。
【0004】
このような不使用時に、無造作にマスクをポケット等にしまい込むと不衛生であるほか二次感染の恐れがあり、都度マスクを使い捨てるのでは無駄が多く、エコロジーにも反する。
【0005】
これらの不具合を解消する上で参考になるものとして、マスクを一時的に保管するための保管用ケースが考えられている(例えば特許文献1、2等参照)。これらの文献では、マスクを構成する耳掛け紐を口当て部分であるマスク本体ともどもケース内に開閉可能に収容するようにした蓋構造にしたり、不要時にマスクを清潔な状態で保管できるようにケースの内部に薬剤等を収容したもの等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平06−48698号公報
【特許文献2】実用新案登録第3158159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる文献のものは、開閉蓋構造をなすケースの蓋を開けた状態で単にマスク本体と耳掛け紐をケース内に折り畳み、蓋を閉めるだけである。このため、一旦収めた耳掛け紐が蓋を閉めるまでの間に再び飛び出して閉めにくく、耳掛け紐が飛び出したまま中途半端に蓋が閉まった状態になり易い。これに対し、耳掛け紐が飛び出さないように手でマスクを押し込む等の補助をしながら蓋を閉める操作を行うと、手間どるだけでなく、その間にマスク本体に手が触れることで手に付着したウィルスがマスクに付着する可能性があり、二次感染の原因ともなり得る。
【0008】
再度マスクを取り出して使用する際にも、耳掛け紐がマスク本体ともどもケース内に無造作に押し込まれていると、耳掛け紐を摘むまでの間に手がマスク本体に触れてやはり二次感染につながる恐れがあるし、ウィルスが付着していなくともマスク本体に手が触れることはそもそも不衛生である。
【0009】
したがって、マスク本体に極力手を触れずに耳掛け紐ともどもマスクを挿脱できるマスク保管用ケースがあれば便利である。
【0010】
本発明は、このようなマスク保管用ケースを新たに提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち、本発明のマスク保管用ケースは、ケース構成体の一部が開閉可能とされ、閉止時にマスク収容空間にマスクを収容するようにしたものにおいて、前記ケース構成体に、倒伏位置と起立位置の間で折り畳み展開可能な可動壁を設け、起立位置から倒伏位置に向かう前記可動壁でマスクの耳掛け紐の動きを規制しつつ当該耳掛け紐を、マスク収容空間に収まる方向に案内し得るようにしたことを特徴とする。
【0013】
このように構成すると、ケース構成体を閉止する際に耳掛け紐が飛び出して閉めにくくなったり耳掛け紐が飛び出したまま中途半端にケース構成体が閉まった状態となることを可動壁によって効果的に防止することができ、マスク本体に手が触れるおそれも有効に低減することが可能となる。
【0014】
マスクを取り出す際にも同様の効果を得るためには、倒伏位置から起立位置に向けて可動壁が展開されるに伴い、マスクの耳掛け紐に対する規制を解除若しくは緩和し得るように構成しておくことが望ましい。
【0015】
操作性の向上を図るためには、可動壁の一部をケース構成体のうち相対動作を行う部位に接続して、ケース構成体の閉止動作と開放動作に可動壁の折り畳み動作と展開動作を連動させることが好ましい。
【0016】
構造の簡素化や設計自由度を優先する場合には、可動壁を、ケース構成体の開閉動作とは独立して折り畳み展開可能に構成しておくことが好適である。
【0017】
ケースの小型化を同時に実現するためには、ケース構成体の閉止動作に伴ってマスクが折り畳まれ、開放動作に伴ってマスクへの折り畳み力が解除ないし緩和されるように構成していることが望ましい。
【0018】
好ましい実施の一態様としては、一対の可動壁を、互いに相寄る方向へ倒伏するように離間位置に設けて、両可動壁で左右の耳掛け紐をそれぞれマスク収容空間に収まる方向に案内するようにしているものが挙げられる。
【0019】
また、他の好ましい実施の態様としては、可動壁と、少なくともマスクの一部を収容するポケット部とを、可動壁の倒伏方向とポケット部の開口方向とが向き合う位置関係下に配置しているものが挙げられる。
【0020】
可動壁の動きによって耳掛け紐を的確に案内するためには、可動壁に、耳掛け紐の折り返し部付近を係り合わせて当該可動壁の動きに耳掛け紐を従動させるための引っ掛け部を設けていることが望ましい。
【0021】
この場合の案内作用を確実ならしめるためには、引っ掛け部の一部に、耳掛け紐と可動壁との相対的な位置ずれに起因して当該耳掛け紐が引っ掛け部から離脱することを防止する外れ止め部を設けていることが好ましい。
【0022】
耳掛け紐全体に亘り、簡単・確実にその動きを規制して収容位置へ案内するためには、可動壁は、耳掛け紐のほぼ全域を倒伏方向へ押し付ける押し付け面を有したものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のマスク保管用ケースは、以上説明した構成であるから、マスク本体に極力手を触れずに簡単な操作で耳掛け紐ともどもマスクをケース内に容易に収容でき、再びマスクを取り出す際にもマスク本体に極力手を触れずに簡単な操作で耳掛け紐を取り出し易くして、使用中のマスクや未使用のマスクを衛生的な状態に保ち、二次感染の恐れも有効に低減可能とした、便利なキャリングケース等としての利用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の各実施形態に使用されるケース構成体を開放状態で示す斜視図。
【図2】同ケース構成体を半開状態で示す斜視図。
【図3】同ケース構成体を閉止状態で示す斜視図。
【図4】本発明の第1実施形態に係るマスク保管用ケースを模式的に示す図。
【図5】同マスク保管用ケースの作動説明図。
【図6】本発明の第2実施形態に係るマスク保管用ケースを作動とともに模式的に示す図。
【図7】本発明の第3実施形態に係るマスク保管用ケースを作動とともに模式的に示す図。
【図8】本発明の第4実施形態に係るマスク保管用ケースを模式的に示す図。
【図9】本発明の第5実施形態に係るマスク保管用ケースを作動とともに模式的に示す図。
【図10】本発明の他の実施形態に係るマスク保管用ケースを模式的に示す図。
【図11】本発明の上記以外の実施形態に係るマスク保管用ケースの一部を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
【0026】
図1は、本実施形態のマスク保管用ケースを構成するケース構成体Cを、後述する可動壁3やポケット部4の取り付け前の状態において、マスクMとの関係で示している。このケース構成体Cは、平面視長方形状をなすもので、ケース本体1と蓋2が開閉可能とされ、閉止時にマスク収容空間SにマスクMを収容するものである。
【0027】
ケース本体1は、底部11の四辺に起立壁12、13、14、15を有した上方に開口する扁平な箱状のもので、一部に二酸化塩素などの薬剤を充填したアンプルAが取り替え自在に装着され、薬剤が収容空間S内で気化するように構成される。アンプルAは、ケース本体1においてマスクMの収容の邪魔にならない位置であれば、図示想像線のように底部11と起立壁14との入隅部に配置される以外に、底部11を中蓋を用いた二重底構造にして中蓋の下にアンプルを収容する態様等によってもよい。
【0028】
蓋2は、ケース本体1の一方の長辺側に位置する起立壁14にヒンジ部20を介して図1〜図3に示すような開閉動作を行うように接続されたもので、閉止位置で前記ケース本体1との間においてマスク収容空間Sを気密に閉止するように、四辺22、23、24、25と起立壁12,13、14、15との間の適宜部位に凹凸形状等のシール構造が採用されている。
【0029】
この実施形態では、ケース本体1及び蓋2がヒンジ部20とともに樹脂により構成されていて、蓋2の閉止時に当該蓋2に設けた鉤形の爪部26がケース本体1の対応位置に設けた凹部16に係り合って蓋2の閉止状態が実現される。ケース本体1には閉止位置にある蓋2の爪部26にテーパ係合するスライダ17が設けてあり、このスライダ17により蓋2をケース本体1側に引き込んで爪部26と凹部16との係り合いを深くし、マスク収容空間Sの気密性を高めることができるようにしている。
【0030】
前記マスク収容空間Sには、長手方向の中央部にマスクMの口当て部となるマスク本体m1を位置づけ、両端側に耳掛け紐m2を位置づけて収容され、図1→図2→図3のように蓋2を閉じることによって二つ折りにされる。対象となるマスクMの耳掛け紐m2は単に伸縮性に乏しい紐が用いられてもよいし、ゴム等のような伸縮性のある素材が用いられていてもよい。或いは、いわゆるサージカルマスク等のように一部にワイヤが入っているもの等であっても構わない。
【0031】
ただし、以上のままでは、耳掛け紐m2をマスク収容空間S内に収めようとしたり、マスクMを取り出そうとした際に、マスク本体m1に手が触れて、二次感染やマスクMの汚損等につながるおそれがある。
【0032】
そこで、本実施形態は更に、以上のケース構成体Cを模式的に表した図4に示すように、ケース本体1の長手方向両端部に、マスクMの耳掛け紐m2を収めるための可動壁3とポケット部4とを対をなして設けている。
【0033】
可動壁3は、ケース本体1の底部11から立ち上がる図4(a)及び図5(a)に示す起立位置と当該ケース本体1の底部に倒れ込む図5(c)に示す倒伏位置との間でケース本体1に対する蓋2の開閉方向(Z方向)と直交する方向(Y方向)に起倒して折り畳み展開可能とされたものである。具体的には、扇状をなす壁本体30の中央に折線30cを設けて壁本体30を当該折線30cによって両側領域30a、30bに区画するとともに、各々の両側領域30a、30bの基端片31、32をケース構成体Cの相対動作を行う部位、すなわちケース本体1の底部11と蓋2の内面21とにそれぞれ接続している。そして、蓋2の展開時に図5(c)→(b)→(a)に示すように両側領域30a、30bが平面に近づく方向に連動して変形しながら起立し、蓋2の閉止時に図5(a)→(b)→(c)に示すように両側領域30a、30bが折り畳まれて重合しつつケース本体1の底部11および蓋2の内面21に倒伏する方向に連動して変形するように構成してある。
【0034】
そして、壁本体30の外周に、耳掛け紐m2の折り返し部付近を係り合わせて可動壁3の動きに耳掛け紐m2を従動させるための引っ掛け部33を形成している。この引っ掛け部33は、耳掛け紐m2を通過させるスリット33aの内奥に拡開した孔部33bを有するもので、耳掛け紐m2にテンションを加えた状態でスリット33aを通過させて孔部33bに対する耳掛け紐m2の出し入れを可能としており、特にスリット33aを、耳掛け紐m2が引っ掛け部33から離脱することを抑止する外れ止め部として機能させている。可動壁3の大きさは、引っ掛けた耳掛け紐m2がさほど大きく弛まない程度に(例えば、耳掛け紐m2の一部がケース構成体Cからはみ出す程度に弛まないように)設定されている。
【0035】
一方、ポケット部4は、折線40cを介して二分された扇形状の倒伏壁40を有するもので、倒伏壁40の各々二分された両側領域40a、40bがケース本体1の底部11及び蓋2の内面21に向けて倒伏した状態で、基端片41、42をケース本体1および蓋2の適宜部位に溶着等により取り付けられている。この実施形態は、ポケット部4は可動壁3ともども、透明樹脂を素材としている。このポケット部4は、ケース本体1の底部11や蓋2の内面21との間に所定の間隙が形成されて開口部OPを形成しており、開口部OPの開口方向(X方向)は可動壁3の倒伏方向(Y方向)に向き合うように設定され、その開口部OPを介してマスクMの一部を収容可能としている。このポケット部4を構成する倒伏壁40は、蓋2の開閉動作に伴い折線40cに沿って図5(a)→(b)→(c)に示すように両側領域40a、40bが二つ折されるが、それらの両側領域40a、40bは常にケース本体1の底部11や蓋2の内面に対して倒伏した状態を保ち、前記可動壁3のような起倒動作は殆ど行わないものである。
【0036】
次に、このように構成される本実施形態に係るマスク保管用ケースの一使用方法について説明する。マスク保管時には、図4(a)に示すように蓋2を開いて同図(b)に示すごとくポケット部4の開口部OPが上を向いた状態に開口するように一時的にケース構成体Cを傾けてマスクMの一方の耳掛け部m2を垂れ下げた状態で落とし込み、次に図5(a)に示すように他方の耳掛け部m2の折り返し部分を可動壁3の引っ掛け部33に引っ掛けて、その後に同図(b)→(c)に示すように蓋2を閉める動作を行えば、蓋2の動作に連動して可動壁3が耳掛け紐m2をマスク収容空間S側へ案内しながらケース本体1の底部11や蓋2の内面21に向かって倒れ込む結果、蓋2を閉めた状態で可動壁3が折り畳まれ、耳掛け紐m2は収容空間Sに周辺からはみ出すことなく収められる。このときマスク本体m1も短手方向に略半分に折り畳まれた状態となる。可動壁3のポケット部4側の面は、耳掛け紐m2やマスク本体m1を倒伏方向へ押し付ける押し付け面としても働く。マスク使用時には、図5(c)→(b)→(a)に示すように蓋2を開ける動作を行うことにより、連動して可動壁3が起立方向に展開しながら一方の耳掛け紐m2をケース本体1の底部11から上方かつ外側方に持ち出すので、当該耳掛け紐m2を引っ掛け部33から外して引っ張れば、他方の耳掛け紐m2がポケット部4から引き出されて、マスクMが使用可能な状態となる。
【0037】
ポケット部4を構成する倒伏壁40が軟質樹脂で構成されている場合には、指で押さえることによってケース本体1の底部11との間にマスクMの耳掛け紐m2やマスク本体m1の一部を挟み込んだ状態にすることができ、例えば図5(a)に示す引っ掛け部33への耳掛け紐m2の着脱操作を行う上で便利である。
【0038】
以上のように、本実施形態のマスク保管用ケースは、ケース構成体Cの一部が開閉可能とされ、閉止時にマスク収容空間SにマスクMを収容するように構成するにあたり、前記ケース構成体Cに、倒伏位置と起立位置の間で折り畳み展開可能な可動壁3を設け、起立位置から倒伏位置に向かう可動壁3でマスクMの耳掛け紐m2の動きを規制しつつ当該耳掛け紐m2を、マスク収容空間Sに収まる方向に案内するようにしているので、ケース構成体Cを閉止する際に耳掛け紐m2がケース構成体Cの周辺から飛び出して閉めにくくなったり耳掛け紐m2が飛び出したまま中途半端にケース構成体Cが閉まった状態となることを、マスク本体m1に直接手を触れずとも可動壁3によって効果的に防止することができ、マスク本体m1から手を媒介にした二次感染や、手からマスク本体m1に与える汚損等を有効に防止することができる。
【0039】
また、倒伏位置から起立位置に向けて可動壁3が展開されるに伴い、マスクMの耳掛け紐m2に対する規制を解除若しくは緩和するので、マスク本体m1に直接手を触れずとも耳掛け紐m2を取り出し易い状態にすることができ、この点でもマスク本体m1から手を媒介にした二次感染や、手からマスク本体m1に与える汚損等を有効に防止することができる。
【0040】
また、可動壁3の一部をケース構成体Cのうち相対動作を行う部位であるケース本体1と蓋2に接続して、ケース構成体Cの閉止動作と開放動作に可動壁3の折り畳み動作と展開動作を連動させており、ケース構成体Cを開閉するだけで可動壁3が可動し、耳掛け紐m2に対する規制と規制解除が行われるので、ケース構成体Cの開閉操作と可動壁3の起倒操作とを別個に行う場合に比べて、操作の適切な同期が図れ、操作の一連性も確保することができる。
【0041】
さらに、ケース構成体Cの閉止動作に伴ってマスクMが小さく折り畳まれ、開放動作に伴ってマスクMへの折り畳み力が解除ないし緩和されるように構成しているので、ケースの小型化が図れるとともに、ケースを開放したときにマスクMの取り出し易い状態を実現することができる。
【0042】
より具体的にこのマスク保管用ケースは、可動壁3と、少なくともマスクMの一部(例えば、耳掛け紐m2)を収容するポケット部4とを、可動壁3の倒伏方向とポケット部4の開口方向とが向き合う位置関係下に配置しており、他方の耳掛け紐m2に対しては可動壁3を作用させ、一方の耳掛け紐m2等は単にポケット部4に落とし込んだり抜き取ったりするだけでよいので、取り扱いを極めて簡素化することができる。
【0043】
また、可動壁3に、耳掛け紐m2の折り返し部付近を係り合わせて当該可動壁3の動きに耳掛け紐m2を従動させるための引っ掛け部33を設けているので、耳掛け紐m2を引っ掛け部33に引っ掛けるだけで、耳掛け紐m2にマスク収納空間S内に収まる状態とマスク収納空間Sから取り出し易い状態とを実現することができる。
【0044】
この場合、可動壁3を折り畳むまでの間に耳掛け紐m2があばれ易く、例えば単に孔33bを設けただけの構造では耳掛け紐m2が引っ掛け部33から外れる可能性があるが、本実施形態では、引っ掛け部33の一部に孔33bに通じるスリット33aを設けて、耳掛け紐m2と可動壁3との相対的な位置ずれに起因して当該耳掛け紐m2が引っ掛け部33から離脱することを防止する外れ止め部としているので、引っ掛け部33による案内作用をより確実なものにすることができる。
【0045】
さらにまた、可動壁3のポケット部4側の面を、耳掛け紐m2のほぼ全域を倒伏方向へ押し付ける本発明の押し付け面として機能させているので、耳掛け紐m2の全体に亘り、簡単・確実にその動きを規制してマスク収容空間S側へ案内したりその規制を解除する作用を奏することができる。
【0046】
以上に加え、本実施形態は、薬剤を充填したアンプルAが取り替え自在に装着されており、ケース構成体Cを構成するケース本体1と蓋2との気密構造によってガスバリヤーを形成するようにしているので、マスク本体m1のみならず耳掛け紐m2に対しても浄化作用、除菌作用を得ることができ、外しているうちにウィルスが活性化して増殖したり、感染防止のマスクのはずが逆にウィルスキャリアになったり、ウィルスが外部に漏れるといった不都合等々を有効に回避することができるものとなる。特に、可動壁3やポケット部4によって、ケース構成体Cを閉止する際に耳掛け紐m2がケース構成体Cから飛び出して閉めにくくなったり耳掛け紐m2が飛び出したまま中途半端にケース構成体Cが閉まった状態となることが回避されているので、確実な密閉状態が得られ、マスク収容空間Sを適切な薬剤雰囲気に保つことができる。
【0047】
なお、平面状に展開することが難しい立体マスク等の場合には、マスク本体m1を二つ折りにしてポケット部4に収納しておく利用の形態も可能であり、このような場合には可動壁3を耳掛け紐m2に対する押さえとして用いることも可能となる。
<第2実施形態>
【0048】
図6(a)に示す本実施形態のマスク保管用ケースは、ケース構成体Cの長手方向両端部に可動壁103を、対をなして設けたものである。
【0049】
この可動壁103は前記実施形態と同様の折線130cによって可動壁本体130を両側領域130a、130bに区分しているもので、可動壁本体130の形態は、前記実施形態における扇状の可動壁本体30の左右2箇所を折線130cに平行な線に沿って切除した形状をなし、前記実施形態よりも起立位置における高さ寸法の出し易いものである。そして、ケース構成体Cのうち相対移動するケース本体1の底部11と蓋2の内面21とに両側領域130a、130bの基端片131、132を固定し、図6(a)〜(c)に示すように蓋2の開閉動作に可動壁103の折り畳み動作と展開動作を連動させて、ケース本体1に対する蓋2の開閉方向と直交する方向に起倒して起立位置と倒伏位置との間で姿勢変更可能な点は上記実施形態と同様であり、本実施形態はこのような可動壁103を一対に設けて、互いに相寄る方向に倒伏させるようにしている。可動壁本体130の上縁には前記実施形態の引っ掛け部33と同様の引っ掛け部133が設けてある。
【0050】
可動壁130の高さは、離間距離との関係で、図6(c)に示すように倒伏しても互いに重合せず、かつ耳掛け紐m2とともにマスク本体m1の左右の一部領域を抑え得る寸法関係に設定されている。
【0051】
このマスク保管用ケースのマスク保管時には、図6(a)に示すように蓋2を開いて左右の耳掛け部m2の折り返し部分を可動壁103の引っ掛け部133に引っ掛けて、同図(b)→(c)に示すように蓋2を閉める動作を行えば、蓋2の動作に連動して可動壁3が耳掛け紐m2をマスク収容空間S側へ案内しながらケース本体1の底部11や蓋2の内面21に向かって倒れ込み、蓋2を閉めた状態で可動壁3が折り畳まれる結果、耳掛け紐m2は収容空間Sに、ケース構成体Cの周辺からはみ出すことなく収められる。マスク使用時には、図6(c)→(b)→(a)に示すように蓋2を開ける動作を行うことにより、連動して可動壁3が起立方向に展開しながら左右の耳掛け紐m2をケース本体1の底部11から上方かつ外側方に持ち出すので、それらの耳掛け紐m2を引っ掛け部133から外せば、マスクMが使用可能な状態となる。特に、左右の耳掛け紐m2がゴンドラ状に持ち上げられて取り出し易い状態になる上に、左右何れの耳掛け紐m2を摘んで取り出すこともでき、両方の耳掛け紐m2、m2を摘んで取り出すことも可能となる。
【0052】
このような構成によると、左右の可動壁103に対して耳掛け紐m2の係脱操作を行うことが必要になるが、一対の可動壁103、103を採用することによって、左右の耳掛け紐m2に対する確実な規制と確実な開放とを簡単に行うことができ、相寄る方向へ倒伏させることでマスク本体m1に対する押さえの効果もより一層高めることができるとともに、一対の可動壁103、103を起立させることによって、左右何れの耳掛け紐m2を係脱操作することもできて操作性が向上することとなる。
<第3実施形態>
【0053】
図7に示す本実施形態のマスク保管用ケースは、一対の可動壁203を有する点で上記第2実施形態と同様である。すなわち、この可動壁203も、可動壁本体230の中央に折線230cを設けその折線230cの両側領域230a、230bが折り畳み可能であるとともに、可動壁本体部230の下端側が二股に分岐し、その分岐部分の基端231、232がケース構成体Cを構成するケース本体1の底部11と蓋2の内面21とにそれぞれ固定されており、蓋2が開いて可動壁203の基端片231、232同士が離れる方向に移動するに伴って、折り畳まれていた両側領域230a、230bが図7(b)→(a)に示すように平面状に展開されながら可動壁本体130が立ち上がり、逆の操作によって図7(a)→(b)に示すように可動壁本体130が折り畳まれて倒伏するものである。
【0054】
ただし、この可動壁203は上記第2実施形態の可動壁103とは具体的形態が若干相違している。具体的にこの可動壁203は、立ち上がった可動壁本体130の上部に中央の山を形成する斜辺230dとその外側斜辺230e1、230e2との間に耳掛け紐を引っ掛けるための谷状の引っ掛け部233a、233bを形成しているものであり、その際に一方の外側斜辺230e1を他方の外側斜辺230e2よりもより高く起立させて、一方の引っ掛け部233aの谷を他方の引っ掛け部233bの谷よりも深くし、その外側斜辺230e2を、耳掛け紐m2と可動壁203との位置ずれに起因して当該耳掛け紐m2が引っ掛け部233aから離脱することを抑止する外れ止め部として機能させている。
【0055】
すなわち、図7(a)に示すようにケース本体1と蓋2に亘ってマスク本体m1を載置し、左右の引っ掛け部233a、233bに耳掛け紐m2を引っ掛けて、同図(a)→(b)に示すように蓋2を閉じる過程において、図7(b)に矢印で示すようにマスク本体m1が矢印f1に示すように蓋2に押されて二つ折りになる過程で、マスクM全体が矢印f2に示すようにケース本体1内を一方の長辺から他方の長辺側に位置ずれし易く、このとき耳掛け紐m2の外側斜辺230e1が同図(c)に示すように短いと、当該外側斜辺230e1を滑って耳掛け紐m2が離脱し易くなる。これに対して、上記のように外側斜辺230e1を高くして隣接する斜辺130dとの間の谷を深くして外れ止め部としておくこと、図7(b)に矢印f2で示すようにマスクMがケース本体1内で位置ずれしても、かかる耳掛け紐m2の離脱動作を有効に防止することができる。この実施形態においても、可動壁103の高さは倒伏しても互いに重合しない寸法に設定されている。耳掛け紐m2に対する案内作用等に鑑みれば、引っ掛け部233a、233bの高さh1(図7(d)参照)は、耳掛け紐m2を弛みなく上に延ばした際の総高さh2の2/3以上の位置に設定しておくことが適切である。これは図6の可動壁103における引っ掛け部133の位置についても同様である。
【0056】
このような可動壁203を用いても、図6に示した第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
<第4実施形態>
【0057】
図8に示すものは、上記の可動壁203を片側のみに用い、対面位置に第1実施形態のポケット部4を配置した実施形態であり、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
<第5実施形態>
【0058】
図9(a)に示す本実施形態のマスク保管用ケースは、ケース構成体Cを構成する一対のケース本体101、101が開閉可能とされ、閉止時に一対のケース本体101、101の間でマスク収容空間Sを閉止する点、マスクMが二つ折りにされて収容される点、一対の可動壁303が起立位置と倒伏位置との間で折り畳み展開可能である点、可動壁303に鋸歯状の引っ掛け部333a、333bが設けてある点など、概略構成は図6に示した第2実施形態等と同様であるが、次の点が異なっている。
【0059】
先ず、上記第2実施形態では可動壁103、103の起倒方向がケース本体1に対する蓋2の開閉方向と直交する方向に設定されていたが、この実施形態では可動壁303の起倒方向(T1方向)が一対のケース本体101、101の開閉方向(T2方向)と同一方向に設定されている点、これに伴ってマスク本体m1に対する折り畳み方向が短手方向ではなく長手方向となる点、そして、上記各実施形態では可動壁103の起倒動作がケース本体1に対する蓋2の開閉動作に連動していたが本実施形態では可動壁303の起倒動作がケース本体101の開閉動作とは独立している点である。
【0060】
すなわち、この実施形態の可動壁303は、基端331をケース本体101の底部111に、互いに相寄る方向に倒伏可能な状態で固定したものであり、一対の可動壁303、303の対向する側の面303x、303xは、耳掛け紐m2のほぼ全域を倒伏方向へ押し付けるための押し付け面として設定されている。この可動壁303には、外力を加えなければ自然に起立するような弾性を付与しておいてもよい。
【0061】
何れにせよ、可動壁303の起倒方向(T1)がケース本体101の開閉方向(T2)と同一方向であるため、図9(a)実線→図9(a)想像線(図9(b)実線)→図9(b)想像線のように可動壁303を倒伏させる動作とケース本体101を閉じる動作とを一連の操作によって行うことができ、また、展開するときには、可動壁303に起立方向の弾性が付与されているときはケース本体101を開いて押えている指を外すだけで図9(b)想像線→図9(b)実線(図9(a)想像線)→図9(a)実線のように可動壁303が起立することになる。可動壁303に起立方向の弾性が付与されていない場合にも、同図(c)に示すように一方のケース本体101の一端側を掴んで全体を軽く振れば、他方のケース本体101に付随する可動壁303を起立させることは容易であり、何れにしてもケース構成体Cの開閉操作および可動壁303の起倒操作を極めてスムーズに行うことができる。さらに、可動壁303はケース構成体Cに連動していないため、取付構造が簡素になるだけでなく、ケース構成体Cの開閉方向に対して可動壁303の起倒方向の制約を受けないため、例えば次の第6実施形態で述べるような変形実施が可能になるなど、設計自由度も向上することになる。
【0062】
なお、この実施形態では、耳掛け紐m2が外れる方向にマスクMが相対的に位置ずれすることが少ないことに鑑み、引っ掛け部333a、333bは同一形状となっている。
<他の実施形態>
【0063】
図10(a)に示す本実施形態のマスク保管用ケースは、マスクMが二つ折りに収容されるのではなく、ケース構成体Cを構成するケース本体201及び蓋202のうちのケース本体201側に全てマスクMが展開状態で収まる点で上記何れの実施形態とも異なっている。可動壁403はケース本体201側に対をなして設けられ、ケース本体201に対する蓋202の開閉方向と直交する方向に起倒動作を行う点は図5等に示した第1実施形態や図6に示した第2実施形態と同様であるり、当該可動壁403が蓋202と独立して起倒動作を行う点は図9に示した第5実施形態と同様である。そして、左右の可動壁403、403にマスクMの耳掛け紐m2を係り合わせた状態で可動壁403を倒伏させる操作と蓋202を閉める操作を行えばマスクMをマスク収容空間Sに保管することができ、逆の操作を行えばマスクMを取り出すことができる。
【0064】
図10(b)に示すものは、ケース本体201側に上記と同様の可動壁403および図5等に示した第1実施形態のポケット部4に準じたポケット部404を対をなして設けたものであり、第1実施形態と異なるのは、可動壁403が蓋の動きと独立しており、マスクが折り畳まれずに収容される点である。
【0065】
これらの構成によっても、得られる基本的作用効果は上記各実施形態と同様である。
<上記以外の実施形態>
【0066】
図11(a)に示す可動壁503は、基本的には図5や図6と同様にケース本体1と蓋2とに跨って取り付けられて、蓋2の開閉に伴って起倒動作を行うものであり、可動壁本体530のうち折線530cの両側領域530a、530bが倒伏動作に伴ってケース本体1の底部11及び蓋2の内面21に近づく方向に折り畳まれる点、可動壁本体530の上方に引っ掛け部533を有している点等も同様である。
【0067】
ただし、図5や図6の引っ掛け部133が耳掛け紐m2の比較的中間部を引っ掛けるようにしているのに対して、この可動壁503は、一対の引っ掛け部533、533に対し、図11(b)に示すように耳掛け紐m2の先端側を最も伸びた状態(若しくはそれに近い状態)で引っ掛けるようにしている点で異なるものであり、耳掛け紐m2の中間部が弛まない状態で確実にケースCに収納できるようにしている。
【0068】
また、折線530cの下方に可動壁本体530を二股に分岐させる切欠部530zを設けている点も図6等と同様であるが、特にこの実施形態における折線530cの下端部はその切欠部530zを横から見た図11(c)に示されるように顎のような出っ張り部zzとなっていて、この出っ張り部zzが、ケースCを閉じる際に可動壁503の倒伏動作に伴ってマスク本体m1を上から押さえ付ける役割をなし、マスク本体m1をバタつかせることなく蓋2を閉じることを可能にしている。このような効果は、図5や図6等の構成においても同様に得ることができる。
【0069】
なお、図11(a)等に示すように、引っ掛け部533は、狭窄部533yを経て外れ止め部として働く孔状に拡開した落とし込み部533zに通じている点で、図4等における引っ掛け部33のスリット33aと孔33bの関係と同様であるが、特に本実施形態では漸次入口の幅が狭くなる入口533xを有し、その入口533xの奥に位置する前記狭窄部533yを経て落とし込み部533zに通じており、同図(b)に矢印で示すように耳掛け紐m2を上方から近づけた場合、入口533xに沿って耳掛け紐m2がガイドされ、入口533xの奥の狭窄部533yを超えれば耳掛け紐m2が自然に落とし込み部533zに落ちて安定保持されるので、より簡単な操作で耳掛け紐m2が適切な状態で収容されることを可能にしているものである。
【0070】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、可動壁やポケット部の形態、ケース構成体の構造等を始め、各部の具体的な構成は上述した各実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1、101…ケース本体
2、102…蓋
3、103、203、303、403、503…可動壁
4、404…ポケット部
33、133、233a、233b、333a、333b、533…引っ掛け部
33a…外れ止め部(スリット)
230e1…外れ止め部(外側斜辺)
533z…外れ止め部(落とし込み部)
C…ケース構成体
M…マスク
m1…マスク本体
m2…耳掛け紐
S…マスク収容空間




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース構成体の一部が開閉可能とされ、閉止時にマスク収容空間にマスクを収容するようにしたものにおいて、
前記ケース構成体に、倒伏位置と起立位置の間で折り畳み展開可能な可動壁を設け、起立位置から倒伏位置に向かう前記可動壁でマスクの耳掛け紐の動きを規制しつつ当該耳掛け紐を、マスク収容空間に収まる方向に案内し得るようにしたことを特徴とするマスク保管用ケース。
【請求項2】
倒伏位置から起立位置に向けて可動壁が展開されるに伴い、マスクの耳掛け紐に対する規制を解除若しくは緩和し得るように構成している請求項1記載のマスク保管用ケース。
【請求項3】
可動壁の一部をケース構成体のうち相対動作を行う部位に接続して、ケース構成体の閉止動作と開放動作に可動壁の折り畳み動作と展開動作を連動させている請求項1又は2記載のマスク保管用ケース。
【請求項4】
可動壁は、ケース構成体の開閉動作とは独立して折り畳み展開可能に構成されている請求項1又は2記載のマスク保管用ケース。
【請求項5】
ケース構成体の閉止動作に伴ってマスクが折り畳まれ、開放動作に伴ってマスクへの折り畳み力が解除ないし緩和されるように構成している請求項1〜4記載のマスク保管用ケース。
【請求項6】
一対の可動壁を、互いに相寄る方向へ倒伏するように離間位置に設けて、両可動壁で左右の耳掛け紐をそれぞれマスク収容空間に収まる方向に案内するようにしている請求項1〜5記載のマスク保管用ケース。
【請求項7】
可動壁と、少なくともマスクの一部を収容するポケット部とを、可動壁の倒伏方向とポケット部の開口方向とが向き合う位置関係下に配置している請求項1〜5記載のマスク保管用ケース。
【請求項8】
可動壁に、耳掛け紐の折り返し部付近を係り合わせて当該可動壁の動きに耳掛け紐を従動させるための引っ掛け部を設けている請求項1〜7記載のマスク保管用ケース。
【請求項9】
引っ掛け部の一部に、耳掛け紐と可動壁との相対的な位置ずれに起因して当該耳掛け紐が引っ掛け部から離脱することを防止する外れ止め部を設けている請求項8記載のマスク保管用ケース。
【請求項10】
可動壁は、耳掛け紐のほぼ全域を倒伏方向へ押し付ける押し付け面を有したものである請求項1〜7記載のマスク保管用ケース。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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