説明

マスク

【課題】マスクの調整と交換、洗浄とを不要ならしめ、被覆作業の効率を高め、マスクの洗浄液の廃棄処理に伴う環境汚染の問題や洗浄作業者の健康被害等の問題を解消する。
【解決手段】ワーク13における見切りライン15とマスク11における該見切りラインに対向する面11aとの間の間隔19を0.7〜2.0mmとし、ワークにおける該見切りラインを被覆材料から覆うひさし状障壁21をマスクに突設し、ワークにおける該見切りラインと該ひさし状障壁における該見切りラインに対向する面21aとの間の間隔23を2.5〜4.0mmとしたことを特徴とするマスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関するものであり、例えば自動車部品等のワークに対し塗装、真空蒸着等の手法により被覆を行う際に該ワークのマスキングを行うためのマスクに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマスクを図5〜図9に示す。
【0003】
図5〜図9に示す事例において、符号1に示すものは従来のマスク、符号3に示すものはワークである。
【0004】
符号5に示すものは、ワーク3における被覆部3aと非被覆部3bとの境界線である見切りラインである。従来のマスク1においては、塗料等の被覆材料7が見切りライン5を越えて非被覆部3bに廻り込むことを防止するために、マスク1とワーク3における見切りライン5との間の間隔9を0.3mm以下になるようにしている。符号10に示すものはワーク3に向かう被覆材料7の方向を示す矢印である。
【0005】
特開平8−173894号公報は、ワークである車両用外装品における見切りラインに沿って有色テープを接着ないし粘着するようにした車両用外装品の塗装境界部構造を開示している。
【特許文献1】特開平8−173894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5〜図9に示す従来のマスク1においては、マスク1とワーク3における見切りライン5との間の間隔9が0.3mm以下と狭いため、次のような問題が生じている。
【0007】
(イ)マスク1とワーク3における見切りライン5との間の間隔9を調整する必要がある。即ち、最適な間隔を得るために、被覆テストと間隔の調整とを繰り返し行う必要がある。この調整には長い時間と熟練とが要求される。
【0008】
(ロ)被覆テストと間隔の調整は、量産工程の合間に行われるため、これらを頻繁に行うと量産工程にも悪影響を及ぼす。
【0009】
(ハ)最適な間隔を備えた良好なマスクが完成しても、被覆工程を数回繰り返すと、(a)マスクの表面に付着した被覆材料7が間隔9を詰め(図6参照)、(b)被覆材料7がワーク3の表面からマスク1の表面まで連なり(図7参照)、(c)ワーク3をマスク1から分離させたときに被覆材料7がワーク1の表面から剥がれ、不良品が発生する(図8における符号7‘参照)。
【0010】
(ニ)即ち、マスクを連続して使用することができる回数が少なく、マスクを頻繁に交換し、洗浄しなければならない。従って、作業工程が煩雑になり、生産性が低下する。更に、マスクの洗浄にはシンナー等の洗浄液が使用されるため、洗浄液の廃棄処理に伴う環境汚染の問題や洗浄作業者の健康被害等の問題が生ずるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記従来のマスクにおける上述の如き問題を解決しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は下記のマスクを提供する。
【0013】
ワークにおける見切りラインとマスクにおける該見切りラインに対向する面との間の間隔を0.7〜2.0mmとし、ワークにおける該見切りラインを被覆材料から覆うひさし状障壁をマスクに突設し、ワークにおける該見切りラインと該ひさし状障壁における該見切りラインに対向する面との間の間隔を2.5〜4.0mmとしたことを特徴とするマスク。
【発明の効果】
【0014】
ワークにおける見切りラインを被覆材料から覆うひさし状障壁をマスクに備えさせたため、ワークにおける見切りラインとマスクにおける該見切りラインに対向する面との間の間隔を0.7〜2.0mmに広げることが可能となる。
【0015】
即ち、ワークにおける見切りラインとマスクにおける該見切りラインに対向する面との間の間隔は、前記従来のマスクにおける0.3mm以下に比べて非常に大きいものであり、厳密な調整は不要である。従って、従来のマスクにおける上述の(イ)(ロ)の問題は解消すると共にマスクの製造も容易になる。
【0016】
ワークにおける見切りラインとマスクにおける該見切りラインに対向する面との間の間隔を0.7〜2.0mmと大きくし、更に、ワークにおける該見切りラインと該ひさし状障壁における該見切りラインに対向する面との間の間隔(見切りラインとひさし状障壁との間の間隔)を2.5〜4.0mmと大きくしたため、従来のマスクにおける上述の(ハ)の問題は解消する。
【0017】
なお、ワークにおける見切りラインとマスクにおける見切りラインに対向する面(11a)との間の間隔を0.7〜2.0mmと大きくしたため、マスクにおける見切りラインに対向する面(11a)に付着した被覆材料(17‘)がマスクの連続使用回数が少ない段階でワークに接触するおそれはない。
【0018】
即ち、マスクを連続して使用することができる回数が飛躍的に増加し、作業工程が簡素化され、生産性が向上し、不良品の発生が防止される。マスクを洗浄する頻度が著しく低下するため、洗浄液の廃棄処理に伴う環境汚染の問題や洗浄作業者の健康被害等の問題は改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明によるマスクを図1〜図4を参照して説明する。
【0020】
符号11に示すものはマスク、符号13に示すものはワークである。符号15に示すものは、ワーク13における被覆部13aと非被覆部13bとの境界線である見切りラインである。
【0021】
ワーク13における見切りライン15とマスク11における該見切りライン15に対向する面11aとの間の間隔19を0.7〜2.0mmとする。
【0022】
ワーク13における該見切りライン15を被覆材料から覆うひさし状障壁21をマスク11に突設する。
【0023】
ワーク13における該見切りライン15と該ひさし状障壁21における該見切りライン15に対向する面21aとの間の間隔23を2.5〜4.0mmとする。
【0024】
ひさし状障壁21の突出長さ25(図2参照)及び上記間隔19、23は、ワーク13の形状、見切りライン21の位置等に応じて決定する。しかるときは、被覆材料17が見切りライン15を越えて非被覆部13bに廻り込むことはない。
【0025】
図3、図4に示すマスク11とワーク13は、それぞれ図1、図2に示すものと形状が若干ことなるものの、上述の説明が妥当する。
【0026】
符号30に示すものはワーク13に向かう被覆材料17の方向を示す矢印である。
【0027】
マスク11は、一例として合成樹脂により形成する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明におけるマスクとワークとを示す側面図である。
【図2】同上マスクとワークとに被覆材料が付着した状態を示す側面図である。
【図3】本発明における別のマスクとワークとを示す側面図である。
【図4】同上マスクとワークとに被覆材料が付着した状態を示す側面図である。
【図5】従来のマスクとワークとを示す側面図である。
【図6】被覆材料が付着したマスクに新しいワークを取り付けた状態を示す側面図である。
【図7】同上マスクとワークとに被覆材慮を付着させた状態を示す側面図である。
【図8】同上ワークをマスクから分離させた状態を示す側面図である。
【図9】従来の別のマスクとワークとを示す側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 マスク
3 ワーク
3a 被覆部
3b 非被覆部
5 見切りライン
7 被覆材料
9 間隔
10 矢印
11 マスク
11a 面
13 ワーク
13a 被覆部
13b 非被覆部
15 見切りライン
17 被覆材料
19 間隔
21 ひさし状障壁
21a 面
23 間隔
25 突出長さ
30 矢印


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークにおける見切りラインとマスクにおける該見切りラインに対向する面との間の間隔を0.7〜2.0mmとし、ワークにおける該見切りラインを被覆材料から覆うひさし状障壁をマスクに突設し、ワークにおける該見切りラインと該ひさし状障壁における該見切りラインに対向する面との間の間隔を2.5〜4.0mmとしたことを特徴とするマスク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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