説明

マスターバッチの製造方法及びマスターバッチ

【課題】充填材の表面に吸着され効果失う老化(酸化)防止剤の量を大幅に低減し、薬品投入量に対する老化(酸化)防止効果の優れたゴム薬品含有マスターバッチを効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】ゴム成分、充填材及びゴム薬品を含有するマスターバッチを製造する方法であって、第一混練機で捏和されたゴム成分と充填材を含むマスターバッチに対して、第二混練機を用いて、さらにゴム薬品を混合することを特徴とするゴム薬品含有マスターバッチの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、その方法で得られたゴム薬品含有マスターバッチ、並びに該マスターバッチを用いてなるゴム組成物及びタイヤに関する。さらに詳しくは、本発明は、混練りされる原材料によって第一混練機、第二混練機と混練り機の種類を変えることにより、マスターバッチ中の一定した薬品量の確保、マスターバッチ中の充填材の優れた分散性を得ることができ、かつ薬品投入量に対する効果の良好なマスターバッチを効率よく製造する方法、その方法で得られたゴム薬品含有マスターバッチ、並びに前記マスターバッチを用いてなるゴム組成物及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ウエットマスターバッチの保管中の劣化を防ぐため、老化(酸化)防止剤を添加することは知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
ウエットマスターバッチへの老化(酸化)防止剤の添加にあたっては、合成ゴムで通常行われているように、ラテックスに老化(酸化)防止剤を混合する手法がとられている。この場合、老化(酸化)防止剤をそのまま混合するとラテックスが沈殿したり、部分的に凝固してしまうため、一般には界面活性剤を加えエマルジョンにして用いる。
また、特許文献3には、ウエットマスターバッチのカーボンブラックスラリーにゴム添加剤(薬品)を混合することが記載されている。しかし、具体的な分散方法については記述がなく、実施例として開示されているのは予めラテックスにエマルジョンとして薬品を添加している例のみである(例えば、段落〔0055〕、〔0064〕及び〔0095〕)。
しかし、これら従来法のようにラテックスや充填材スラリー溶液に老化(酸化)防止剤を加え場合には、加えた老化(酸化)防止剤が充填材の表面に吸着することにより、その活性が低下し、添加量対比充分な耐熱老化効果が得られない。
【0003】
【特許文献1】特公昭54−10576号公報
【特許文献2】特公昭51−43851号公報
【特許文献3】特表2001−518401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、特に、充填材の表面に吸着され効果失う老化(酸化)防止剤の量を大幅に低減し、薬品投入量に対する老化(酸化)防止効果の優れたゴム薬品含有マスターバッチを効率よく製造する方法、その方法で得られたゴム薬品含有マスターバッチ、並びに前記マスターバッチを用いてなるゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、先ず、第一混練り機により充填材が十分ゴム成分に捏和された状態を形成し、次に第二混練機を用いてゴム薬品を混合させる、マスターバッチの製造方法により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1] ゴム成分、充填材及びゴム薬品を含有するマスターバッチを製造する方法であって、第一混練機で捏和されたゴム成分と充填材を含むマスターバッチに対して、第二混練機を用いて、さらにゴム薬品を混合することを特徴とするゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[2] 前記第一混練機が、二軸押出機である上記[1]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[3] 前記第二混練機が、噛合式インターナルミキサー、接線式インターナルミキサー、オープンロール及びニーダーの中から選ばれるいずれかである上記[1]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[4] 前記第二混練機が、噛合式インターナルミキサーである上記[3]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[5] 前記ゴム薬品が、樹脂、加硫促進剤、加硫剤及び老化防止剤の中から選ばれる少なくとも一種である上記[1]〜[4]いずれかのゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[6] 前記老化防止剤が、アミン系老化防止剤である上記[5]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[7] 前記アミン系老化防止剤に加え、さらにヒドラジド化合物を配合する上記[6]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[8] 前記樹脂の軟化点が80〜140℃である上記[5]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[9] 前記マスターバッチがウエットマスターバッチであって、(a)前記ゴム成分を含むゴム液を凝固処理する工程、(b)前記(a)工程で形成された凝固物を取り出す工程、及び(c)前記(b)工程で取り出された凝固物を第一混練機を用いて捏和し乾燥させると共に充填材を分散させる工程、(d)前記(c)工程で乾燥された凝固物にさらに第二混練機を用いてゴム薬品を混合する上記[1]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[10] (a)工程におけるゴム液が、カーボンブラック、シリカ及び一般式(I)
nM・xSiOy・zH2O・・・・・・・・(I)
[式中,Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物または水酸化物、それらの水和物、及び前記金属の炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y、及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。]
で表される無機充填材の中から選ばれる少なくとも一種の充填材を、高速せん断ミキサーを用いて分散溶媒中に分散させてなるスラリー溶液を含む上記[9]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[11] (a)工程におけるゴム液が、天然ゴムラテックス及び/又は合成ゴムラテックスである上記[9]に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[12] 前記(c)工程の第一混練機が、二軸押出機である上記[9]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[13] 前記(d)工程の第二混練機が、噛合式インターナルミキサー、接線式インターナルミキサー、オープンロール及びニーダーの中から選ばれるいずれかである上記[9]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[14] 前記(d)工程の第二混練機が、噛合式インターナルミキサーである上記[13]のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法、
[15] (c)工程の第一混練機には加硫促進剤、加硫剤及び老化防止剤を混入しない上記[6]又は9に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
[16] 上記[1]〜[15]いずれかの方法で得られたことを特徴とするゴム薬品含有マスターバッチ、
[17] 上記[16]のゴム薬品含有マスターバッチを用いてなるゴム組成物、及び
[18] 上記[17]のゴム組成物を用いてなるタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、先ず、ゴム成分と充填材を第一混練機によって捏和させてゴム成分/充填材マスターバッチを調製し次に、該マスターバッチにゴム薬品を第二混練機によって混練することによって、特に、充填材の表面に吸着され効果失う老化(酸化)防止剤の量を大幅に低減し、薬品投入量に対する老化(酸化)防止効果の優れたゴム薬品含有マスターバッチを効率よく製造する方法、その方法で得られたゴム薬品含有マスターバッチ、並びに前記マスターバッチを用いてなるゴム組成物及びタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、本発明のゴム薬品含有スターバッチの製造方法について説明する。
本発明のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法は、ゴム成分、充填材及びゴム薬品を含有するマスターバッチを製造する方法であって、第一混練機で捏和されたゴム成分と充填材を含むマスターバッチに対して、第二混練機を用いて、さらにゴム薬品を混合することを特徴とする。
すなわち、本発明は、物理・化学吸着力の高い状態にある充填材成分と、例えばゴム薬品として代表される老化(酸化)防止剤成分を直接接触させる機会を極力少なくして、ゴム薬品がゴム成分に対して、その機能を十分に発揮することができるゴム成分・充填材・ゴム薬品を含有するマスターバッチを製造することにある。
充填材とゴム成分を混練するに当り、機械的せん断をかけた場合充填材が割れ、割れた面にラジカルが発生する。該ラジカル部位はポリマーとの反応性が高く、この時点で老化防止剤も同時に混練していれば、老化防止剤と前記ラジカル部位が反応し、この反応性の高いラジカルを安定化させ、ポリマーと充填材の反応が減少しポリマーと充填材の補強性を低下させる。
充填材成分に吸着した老化防止剤成分は、目的とする本来の性能を発揮しない。本発明のマスターバッチの製造方法では第一混練機による、第一練工程においては老化防止剤は含まれていないために補強性が向上する。第二練工程において第二混練機によってゴム成分・充填材マスターバッチに老化防止剤を混入した場合は充填材の表面に吸着され効果失う老化防止剤の量を大幅に低減し、老化防止剤を本来の目的のために有効に活用することができる。
【0008】
[ゴム成分・充填材マスターバッチ]
ゴム成分、充填材及びゴム薬品を含有するマスターバッチを製造するには、先ず初めに第一混練り機によって充填材の表面活性を抑えるべく捏和されたゴム成分・充填材マスターバッチを製造することが必要である。
上記ゴム成分・充填材マスターバッチを製造する方法については特に制限はなく、ウエットマスターバッチ又はドライマスターバッチによって得ることができる。
ゴム成分中への優れた充填材の分散、加硫ゴムの破壊特性に代表される優れた力学特性を得るためにはウエットマスターバッチが好ましい。
【0009】
<第一混練機>
ゴム成分・充填材ドライマスターバッチは通常、ブロッック状の天然ゴム、合成ゴムとカーボンブラック、シリカなどの充填材とを混練りすることによって得ることができる。代表的な第一混練機としては接線式(非噛合式)インターナルミキサー(以下接線式バンバリーミキサーと称することがある)、又は二軸押出機が挙げられるが、ブロック状のゴムの噛み込みがよく2本のローターの回転半径が互いに異なっている接線式バンバリーミキサーが好ましい。
また、ゴム成分・充填材ウエットマスターバッチの製法については後に詳述するが、混練機としては、乾燥、充填材のゴム成分への分散が同時に可能な二軸押出し機が好ましい。
【0010】
[ゴム成分・充填材・ゴム薬品マスターバッチ]
上記ゴム成分・充填材・ゴム薬品マスターバッチは、前述の捏和されたゴム成分・充填材(ウエット)マスターバッチに対して、第二混練機を用いて、さらにゴム薬品を混合することが必要である。
【0011】
<第二混練機>
前記第二混練機が、2本のローターが互いに噛み合っている噛合式インターナルミキサー(以下、噛合式バンバリーミキサーと称することがある)接線式バンバリーミキサー、オープンロール及びニーダーの中から選ばれるいずれかであることが好ましい。
中でも、第二混練機としては噛合式バンバリーミキサーを用いることが好ましい。
ここで、前述の第一混練機の項で記載した接線式バンバリーミキサーと第二混練機として好ましい噛合式バンバリーミキサーについて説明する。
2本のローターの回転半径が互いに異なっている接線式バンバリーミキサーの主な混練作用は、ローターチップの先端とケーシング内面の間のせん断作用であり、材料の食い込みが早く、コンパウンドの適用範囲が広い。しかしながら、低融点、低軟化点のゴム薬品などは上記ケーシング内面に密着し薬品の分散不良を起こす可能性がある。
一方、2本のローターが互いに噛み合っている噛合式バンバリーミキサーの主な混練作用は2本のローター間での破砕、ニーデング作用でありポリマーへの粉砕が大きく、冷却面積が大きく、材料の温度上昇が抑えられる特徴を有し、低融点、低軟化点のゴム薬品などの混練に特に好ましい。
【0012】
<ゴム薬品>
また、ゴム成分・充填材・ゴム薬品マスターバッチに用いられるゴム薬品としては、樹脂、加硫促進剤、加硫剤及び老化防止剤の中から選ばれる少なくとも一種であるゴム薬品を用いることが好ましい。特に本発明のゴム薬品マスターバッチの製造法において本発明の機能を十分に発揮させるゴム薬品として老化防止剤が挙げられ、中でも、低融点の材料が多いアミン系老化防止剤を用いた場合本発明の優れた効果を奏することができる。
樹脂としては通常ゴム工業で用いられるロジン、テルペンなどに代表される天然樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
樹脂は通常軟化点が低く第一練工程において第一混練機で混練をした場合練中に溶解する樹脂は、ゴム組成物(マスターバッチ)の粘度を低下させトルクが伝わりにくくなり練効率低下により分散性が低下するため第一混練機で混入しないことが望ましい。
本発明においては、低融点、低軟化点にゴム薬品に適した噛合式バンバリーミキサーを第二混練機に用いることによって軟化点が80〜140℃である樹脂を用いても練効率の低下を抑制することができる。
架橋剤としては硫黄が挙げられ、粉末硫黄,沈降性硫黄,コロイド硫黄,表面処理硫黄及び不溶性硫黄等が使用できる。
また、加硫促進剤の中には、加熱により活性硫黄を放出し無硫黄加硫が可能な架橋剤としても用いられる含硫黄加硫促進剤がある。
【0013】
本発明において用いられる加硫促進剤は、前記加熱により活性硫黄を放出する加硫促進剤を除けば特に制限はなく、例えば、ジフェニルグァニジン(融点145℃)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(融点85℃)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(融点94〜102℃),ジベンゾチアジルジスルフィド(融点170℃),2−メルカプトベンゾチアゾール(融点173℃以上),N−N'−ジエチルチオカルバモイル−2−ベンゾチアゾイルサルファイド融点(70℃以上)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(融点90℃以上)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(融点75〜90℃)、ジンクジ−n−ブチルジチオカーバメイト(融点103℃以上),ジンクジメチルジチオカーバメイト(融点245℃)等が挙げられる。
【0014】
本発明のマスターバッチに使用される老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤などが挙げられる。
フェノール系老化防止剤としては、2,5-ジ-tert-アミルハイドロキノン(融点165℃)、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン(融点210℃)、4,4−ジ−ヒドロキシジフェニルシクロヘキサン(融点175℃)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert-ブチルフェノール)(融点125〜130℃)、2−tert−ブチル−6(3−tert−ブチル−2ヒドロキシ5-メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(融点128℃)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(融点69℃)、4,4'−チオ−ビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)(150℃以上)、スチレネイテッドフェノールなどが挙げられる。
イミダゾール系老化防止剤としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール(融点285〜290℃)、2−メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩(分解点300℃)、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール亜鉛塩(分解点270℃以上)、トリブチルチオウレア、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール(融点250℃以上)、1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)2−チオウレアなどが挙げられる。
アミン系老化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン(融点50℃)、オクチレイテッドジフェニルアミン(融点75℃以上)、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン(融点140℃)、N−(1,3−ジメチル−ブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン(融点40〜49)、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(融点70℃)などが挙げられる。
尚、これらゴム薬品のゴム成分100質量部に対する配合量はその組成物の用途に応じて適宜決定される。
また、加硫剤と加硫促進剤の組み合わせや活性硫黄を放出しする含硫黄加硫促進剤の使用はマスターバッチのヤケが発生する可能性があり、これらが配合されたゴム組成物(マスターバッチ)は練温度を上げることや、練時間を長くすることができないため使用に当っては十分注意をする必要がある。
【0015】
本発明においては、前記アミン系老化防止剤に加え、さらにヒドラジド化合物またはヒドラゾンを配合することが好ましい。アミン系老化防止剤とヒドラジド化合とを組み合わせて使用することによってヒドラジド化合物が2次老化防止剤の役割を果たし、飛躍的な老化防止効果が期待でき、本発明の効果を大幅に改善することができる。
ヒドラジド化合物は発熱を抑制し加硫戻り等に起因する耐熱老化性等を改善する観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、ヒドラジド化合物を0.3〜2質量部の割合で配合することが好ましい。上記ヒドラジド化合物は、耐リバージョン性に優れ、ゴム成分として特に天然ゴムを含むゴム組成物に好適である。
ヒドラジド化合物としては、例えば、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド(HNH)の誘導体の他、N’-(1,3-ジメチルブチリデン)サリチル酸ヒドラジド(BMS)、4-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、アントラニル酸ヒドラジド、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジドの各誘導体等が挙げられる。3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド(HNH)の誘導体としては、例えば、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(1-メチルエチリデン)ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(1-メチルプロピリデン)ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(1,3-ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(1-フェニルエチリデン)ヒドラジド等の3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド等が挙げられる。これらの中でも、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド(HNH)の誘導体や、N’-(1,3-ジメチルブチリデン)サリチル酸ヒドラジド(BMS)の誘導体は、発熱性を悪化させることなく、ムーニー粘度を低く抑えることができる点で好ましく、効果が顕著な点で、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド(HNH)の誘導体である3-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド(BMH)が特に好ましい。
【0016】
[ゴム成分・充填材・ゴム薬品ウエットマスターバッチ]
次に、上記ゴム成分・充填材・ゴム薬品ウエットマスターバッチ(以下、単にウエットマスターバッチと称することがある。)の製造方法いて詳細に説明する。
本発明のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法であって、(a)前記ゴム成分を含むゴム液を凝固処理する工程、(b)前記(a)工程で形成された凝固物を取り出す工程、及び(c)前記(b)工程で取り出された凝固物を第一混練機を用いて捏和し乾燥させると共に充填材を分散させる工程、(d)前記(c)工程で乾燥された凝固物にさらに第二混練機を用いてゴム薬品を混合する。
[(a)工程]
この工程は、ゴム成分を含むゴム液を凝固処理する工程である。
当該(a)工程において用いられるゴム液としては、天然ゴムラテックス及び/又は合成ゴムラテックス、あるいは溶液重合による合成ゴムの有機溶媒溶液などを挙げることができるが、これらの中で、得られるウエットマスターバッチの性能や製造しやすさなどの観点から、天然ゴムラテックス及び/又は合成ゴムラテックスが好適である。
天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、酵素で処理した脱蛋白ラテックス、前記のものを組み合わせたものなど、いずれも使用することができる。
合成ゴムラテックスとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ニトリルゴム、ポリクロロプレンゴムなどのラテックスを使用することができる。
【0017】
本発明のウエットマスターバッチの製造方法においては、前記ゴム液は、カーボンブラック、シリカ及び一般式(I)
nM・xSiOy・zH2O ・・・(I)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及び前記金属の炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。]
で表される無機充填材の中から選ばれる少なくとも一種の充填材を、高速せん断ミキサーを用いて分散溶媒中に分散させてなるスラリー液を含むことができる。
ここで、カーボンブラックとしては、通常ゴム工業に用いられるものが使用できる。例えば、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなど種々のグレードのカーボンブラックを単独に又は混合して使用することができる。
シリカは特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。これらは単独に又は混合して使用することができる。
【0018】
前記一般式(I)で表わされる無機充填材は、具体的には、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al23)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5 、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。
また、一般式(I)で表される無機充填材としては、Mがアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一種のものが好ましい。
【0019】
本発明において、スラリー液の調製に用いられる高速せん断ミキサーとは、ローターとステーター部からなる高速せん断ミキサーであって、高速で回転するローターと、固定されたステーターが狭いクリアランスで設置され、ローターの回転によって高いせん断速度を生み出す。
高速せん断とは、せん断速度が2000/s以上、好ましくは4000/s以上であることを意味する。
高速せん断ミキサーは、市販品としては、例えば特殊機化工業社製ホモミキサー、独PUC社製コロイドミル、独キャビトロン社製キャビトロン、英シルバーソン社製ハイシアーミキサーなどが挙げられる。
【0020】
前記の高速せん断ミキサーを用いて得られたスラリー液の特性としては、(i)スラリー液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)スラリー液から回収した乾燥充填材の24M4DBP吸油量は、分散溶媒に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上保持することが好ましい。ここで、24M4DBP吸油量は、ISO 6894に準拠して測定される値である。
さらに好ましくは、体積平均粒子径(mv)が20μm以下、かつ90体積%粒径(D90)が25μm以下である。粒度が大きすぎるとゴム中の充填材分散が悪化し、補強性、耐摩耗性が悪化することがある。
【0021】
他方、粒度を小さくするためにスラリーに過度のせん断力をかけると、充填材のストラクチャーが破壊され、補強性の低下を引き起こす。スラリー液から回収乾燥した充填材の24M4DBP吸油量が、分散溶媒に分散させる前の充填材の24M4DBP吸油量の93%以上であることが望ましい。さらに好ましくは96%以上である。
スラリー液において、前記充填材の濃度は1〜15質量%とするのが好ましく、特に2〜10質量%の範囲であることが好ましい。充填材の濃度が1質量%未満では必要とするスラリー容量が多くなりすぎ、また15質量%以上では、スラリー液の粘度が高くなりすぎて、作業上問題が生じる。
本発明においては、このスラリー液としては、水分散スラリー液であることが、特にゴム液として天然ゴムラテックス及び/又は合成ゴムラテックスを用いる場合に、混合性の観点から好ましい。
【0022】
このスラリー液と前記ゴム液との混合は、例えば、ホモミキサー中に該スラリー液を入れ、攪拌しながら、ラテックスを滴下する方法や、逆にラテックスを攪拌しながら、これに該スラリー液を滴下する方法がある。また、一定の流量割合をもったスラリー流とラテックス流とを、激しい水力攪拌の条件下で混合する方法などを用いることもできる。
当該(a)工程においては、ゴム液、好ましくは前記のようにして得られたスラリー液を含むゴム液を凝固処理して、凝固物を形成させる。この凝固方法としては、従来公知の方法、例えば蟻酸、硫酸などの酸や、塩化ナトリウムなどの塩の凝固剤を用いて行われる。
【0023】
[(b)工程及び(c)工程]
(b)工程は、前記(a)工程で形成された凝固物を、従来公知の固液分離手段を用いて取り出し、充分に洗浄する工程である。洗浄は、通常水洗法が採用される。
(c)工程は、前記(b)工程で取り出され、充分に洗浄された凝固物を第一混練機を用いて機械的せん断力をかけながら捏和し乾燥させると共に充填材を分散させる工程である。
当該(c)工程においては、第一混練機を用いて機械的せん断力をかけながら捏和し乾燥させると共に充填材を分散させるため、工業的生産性の観点から、連続混練機を用いることが好ましい。
さらには、同方向回転、あるいは異方向回転の多軸混練押出機を用いることがより好ましく、特に二軸混練押出機を用いることが好ましい。
【0024】
[(d)工程]
(d)工程は(c)工程で得られたゴム成分・充填材ウエットマスターバッチにさらに、第二混練機を用いてゴム薬品を混合し本発明のゴム薬品含有マスターバッチを得る工程である。
前記第二混練機が、2本のローターが互いに噛み合っている噛合式インターナルミキサー(以下、噛合式バンバリーミキサーということがある)接線式バンバリーミキサー、オープンロール及びニーダーの中から選ばれるいずれかであることが好ましい。
中でも、第二混練機としては噛合式バンバリーミキサーを用いることが好ましい。
また、通常、二軸押し出し機に代表される連続式の混練機はバンバリーミキサーに代表されるバッチ式の混練機に比べて単位体積当りの配合量のバラツキが大きく、配合量の少ないゴム薬品をゴム組成物中に均一に分散させるためにはバンバリーミキサーのようなバッチ式の混練機が好ましい。
尚、ゴム成分・充填材・ゴム薬品ウエットマスターバッチに関する、第一混練機、第二混練機及びゴム薬品については上述の説明とおなじである。
【0025】
本発明はまた、前記本発明の方法で得られたゴム薬品含有マスターバッチをも提供する。
本発明のゴム組成物は、前記本発明の方法で得られたゴム薬品含有マスターバッチを配合することにより得られる。該ゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、加硫剤、加硫促進剤、亜鉛華、スコーチ防止剤、ステアリン酸等の通常ゴム業界で用いられる各種薬品を添加することができる。
また、このゴム組成物において、ゴム成分の全体に対して上記ゴム薬品含有マスターバッチおけるゴム成分を30質量%以上含むことが好ましい。上記ウエットマスターバッチに追加して用いられる他のゴム成分としては、通常の天然ゴム及びジエン系合成ゴムが挙げられ、ジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0026】
本発明のゴム組成物は、タイヤ用途を始め、防振ゴム、ベルト、ホースその他の工業用品等の用途にも用いることができる。特にタイヤ用ゴムとして好適に使用され、例えばトレッドゴム、サイドゴム、プライコーティングゴム、ビードフイラーゴム、ベルトコーティングゴムなどあらゆるタイヤ部材に適用することができる。
本発明はまた、前記本発明のゴム組成物を用いてなるタイヤをも提供する。
本発明のタイヤは、前記本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、ウエットマスターバッチと共に必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させたゴム組成物が未加硫の段階で、例えばタイヤトレッドに加工され、タイヤ成型機上で通常の方法により貼り付け成型され、生タイヤが成型される。この生タイヤを加硫機中で加熱、加圧してタイヤが得られる。
このようにして得られた本発明のタイヤは、耐熱老化性、補強性、耐摩耗性などに優れている。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
各実施例、比較例における各種測定は下記の方法により行なった。
(1)充填材の24M4DBP吸油量
ISO 6894に準拠して測定した。
(2)破壊強力試験
JIS K6251−1993に準拠し、23℃で測定した時の引張強さを求めた。値が大きいほど補強性が高い。
(3)ランボーン耐摩耗試験
ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率40%で摩耗量を測定し、その逆数を、比較例4のゴム組成物(耐熱老化前)を100とする指数で表示した。値が大きいほど質量減少が少なく耐摩耗性は良好である。
(8)耐熱老化試験
ゴム薬品含有マスターバッチを作製後、すぐに配合、加硫したものと、一ヶ月間40℃にて放置して配合、加硫したものについて、ゴム組成物の破壊強力及びランボーン耐摩耗性を評価した。
【0028】
実施例1
(1)スラリー液の調製
水中にカーボンブラック(N110)を5質量%の割合で入れ、シルバーソン社製ハイシアーミキサーにて微分散させてスラリー液を作製した。
また、分散前のカーボンブラック(CB)の24M4DBP吸油量は98mL/100g、スラリー回収乾燥CBの24M4DBP吸油量は94mL/100gであり、DBP吸油量の保持率([スラリー回収乾燥CBの24M4DBP吸油量/分散前CBの24M4DBP吸油量]×100)は96%であった。
(2)ウエットマスターバッチの調製
上記(1)で作製したスラリー液3kgと、10質量%に希釈した天然ゴム濃縮ラテックス3kgとを攪拌しながら混合したのち、これを蟻酸にてPH4.5に調整して凝固させた。この凝固物をろ取し、充分に洗浄してウェット凝固物900gを得た。その後、計量カップに60g(固形分30g)ずつ量り取ったウェット凝固物を1分間隔で、第一混練機の神戸製鋼社製二軸連続混練機「KTX−30」に投入し、捏和し乾燥したゴム成分・充填材ウエットマスターバッチ450gを得た。冷却されたマスターバッチ450g、と老化防止剤6C[N−(1.3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン]3gとを第二混練機である噛合式ローターを有するバンバリーミキサー(三菱重工業社製)に投入し混練することによってゴム薬品含有ウエットマスターバッチを作成した。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は1質量部であった。
【0029】
実施例2
老化防止剤6C[N−(1.3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン]1.5g、老化防止剤[N’−(1,3ジメチルブチリデン)−3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド]1.5g投入した以外は実施例1と同様な操作によりゴム薬品含有ウエットマスターバッチを作成した。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は0.5質量部、ヒドラジド化合物は0.5質量部であった。
【0030】
実施例3
実施例1の(2)ウエットマスターバッチの調製工程において第二混練機で老化防止剤6Cに加えてアルキルフェノールフォルムアルデヒド(粘着付与)樹脂、商品名「ヒタノール1502P」軟化点93.5℃日立化成社製、を15g混練することでゴム薬品含有ウエットマスターバッチを作成した。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は1質量部及びアルキルフェノールフォルムアルデヒド樹脂の量は5質量部であった。
【0031】
実施例4
実施例1の(2)ウエットマスターバッチの調製工程において第二混練機で老化防止剤6Cに加えて加硫促進剤NSを3.6g混練することでゴム薬品含有ウエットマスターバッチを作成した。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は1質量部及び加硫促進剤の量は1.2質量部であった。
【0032】
実施例5
実施例1の(2)ウエットマスターバッチの調製工程において第二混練機で老化防止剤6Cに加えて硫黄を4.5g混練することでゴム薬品含有ウエットマスターバッチを作成した。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は1質量部及び硫黄の量は1.5質量部であった。
【0033】
実施例6
実施例1の(2)ウエットマスターバッチの調製工程において第二混練機をオープンロールに替えた以外は実施例と同様にしてゴム薬品含有ウエットマスターバッチを作成した。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は1質量部であった。
尚、オープンロールの操作条件であるロール表面温度、ロール間隔、ロール回転比及びロール回転数は適宜最適な範囲が選択される。
2本のロール間隔は、好ましくは0.1〜10mm、さらに好ましくは1〜3mmである。また、各ロールの構造、大きさ、材質等については特に制限は無く、ロール表面は平滑であってもよく、波型、凹凸型であっても良い。
さらに、ロールの回転数は、周速度2〜100m/minであることが好ましく、2本ロールの回転数比は1/10〜9/10であることがより好ましい。
また、ロール表面温度は、30〜200℃が好ましく、70〜150℃がより好ましい。
【0034】
比較例1
(1)スラリー液の調製
実施例1の(1)と同様にして作製した。
(2)老化防止剤含有ラテックスの調製
老化防止剤6C10gをベンゼン30gに溶解した液Iと、水60g、水酸化カリウム0.2g、オレイン酸2gを混合した液IIを、激しく攪拌して混合し、濃度10質量%のエマルジョン液を作製した。このエマルジョン液を天然ゴムラテックスに添加し、天然ゴム濃度10質量%、老化防止剤6C濃度0.1質量%のラテックスを作製した。
(3)ウエットマスターバッチの調製
上記(1)で得られたスラリー液3kgと(2)で得られた老化防止剤含有ラテックスとを3kgとを混合した後、これを蟻酸にてPH4.5に調整して凝固させた。この凝固物をろ取し、充分に洗浄してウェット凝固物900gを得た。その後、計量カップに60g(固形分30g)ずつ量り取ったウェット凝固物を1分間隔で、神戸製鋼社製二軸連続混練機「KTX−30」に投入し、老化防止剤含有マスターバッチを作製した。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は1質量部であった
【0035】
比較例2
(1)スラリー液の調製
実施例1の(1)と同様にして調製した。
(2)ウエットマスターバッチの調製
上記(1)で作製したフラリー液3kgと、10質量%に希釈した天然ゴム濃縮ラテックス3kgとを攪拌しながら混合したのち、これを蟻酸にてPH4.5に調整して凝固させた。この凝固物をろ取し、充分に洗浄してウェット凝固物900gを得た。その後、60g(固形分30g)のウェット凝固物及び老化防止剤6C0.2gをそれぞれ同一の計量カップに量り、1分間隔で、第一混練機の神戸製鋼社製二軸連続混練機「KTX−30」に投入し老化防止剤含有ウエットマスターバッチを作成した。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は1質量部であった。
【0036】
比較例3
(1)スラリー液の調製
実施例1の(1)と同様にして作製した。
(2)老化防止剤含有ラテックスの調製
老化防止剤6Cを5g及び実施例2に記載のヒドラジド化合物を5gをベンゼン30gに溶解した液Iと、水60g、水酸化カリウム0.2g、オレイン酸2gを混合した液IIを、激しく攪拌して混合し、濃度10質量%のエマルジョン液を作製した。このエマルジョン液を天然ゴムラテックスに添加し、天然ゴム濃度10質量%、老化防止剤6C濃度0.05質量%、ヒドラジド化合物0.05質量のラテックスを作製した。
(3)ウエットマスターバッチの調製
比較例1のウエットマスターバッチの調製法によって老化防止剤含有ウエットマスターバッチを作製した。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は0.5質量部、ヒドラジド化合物は0.5質量部であった。
【0037】
比較例4
比較例2の老化防止剤含有マスターバッチを用いてステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤及び硫黄などのゴム薬品の混練をオープンロールでおこなった。
尚、オープンロールの操作条件であるロール表面温度、ロール間隔、ロール回転比及びロール回転数は適宜最適な範囲が選択される。
各条件の好ましい範囲については実施例6に記載の通りである。
【0038】
比較例5
実施例(1)で作製したスラリー液3kgと、10質量%に希釈した天然ゴム濃縮ラテックス3kgとを攪拌しながら混合したのち、これを蟻酸にてPH4.5に調整して凝固させた。この凝固物をろ取し、充分に洗浄してウェット凝固物900gを得た。その後、60g(固形分30g)のウェット凝固物、老化防止剤6C0.2g及び前出の樹脂を1.0gをそれぞれ同一の計量カップに量り、1分間隔で、第一混練機の神戸製鋼社製二軸連続混練機「KTX−30」に投入し老化防止剤含有ウエットマスターバッチを作成した。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は1質量部及び樹脂の量は5質量部であった。
【0039】
比較例6
比較例5において樹脂の替わりに加硫促進剤NSを0.24g投入した以外は比較例5と同様な操作にて老化防止剤含有ウエットマスターバッチを得た。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は1質量部及び加硫促進剤NSの量は1.2質量部であった。
【0040】
比較例7
比較例5において樹脂の替わりに硫黄を0.30g投入した以外は比較例5と同様な操作にて老化防止剤含有ウエットマスターバッチを得た。
このマスターバッチにおいては、天然ゴム100質量部当りのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤6Cの量は1質量部及び硫黄の量は1.5質量部であった。
【0041】
実施例7〜12及び比較例8〜14
実施例1〜6及び比較例1〜3、5〜7で得られたウエットマスターバッチを用い、非噛合式ローターを有するバンバリーミキサーを使用し、表1−1及び表1−2に示す配合組成の各ゴム組成物を調製した。尚、比較例4はオープンロールを用いて組成物を調製した。
各ゴム組成物を150℃で30分間加硫して、試験用サンプルを作製し、耐熱老化試験前後における破壊強力及びランボーン耐摩耗性を求めた。その結果を表1−1及び表1−2に示す。
尚、表1−1及び表1−2の配合組成の欄の( )内に記載の天然ゴム、カーボンブラック、老化防止剤6C、ヒドラジド化合物、粘着性付与樹脂、加硫促進剤及び硫黄の配合量(質量部)はウエットマスターバッチ由来の値である。
【0042】
【表1】

[注]
1)加硫促進剤NS:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0043】
【表2】

表1−1及び表1−2から分かるように、実施例のゴム組成物は、比較例のゴム組成物に比べて、耐熱老化試験前における破壊強力及び耐摩耗性に優れている。また、耐熱老化試験後の結果から、実施例のゴム組成物は、比較例のゴム組成物に比べて耐熱老化性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の老ゴム薬品含有マスターバッチの製造方法は、ゴムの耐熱老化性、補強性、耐摩耗性などの改良を図ることがでるマスターバッチを効率よく製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、充填材及びゴム薬品を含有するマスターバッチを製造する方法であって、第一混練機で捏和されたゴム成分と充填材を含むマスターバッチに対して、第二混練機を用いて、さらにゴム薬品を混合することを特徴とするゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項2】
前記第一混練機が、二軸押出機である請求項1に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項3】
前記第二混練機が、噛合式インターナルミキサー、接線式インターナルミキサー、オープンロール及びニーダーの中から選ばれるいずれかである請求項1に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項4】
前記第二混練機が、噛合式インターナルミキサーである請求項3に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項5】
前記ゴム薬品が、樹脂、加硫促進剤、加硫剤及び老化防止剤の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項6】
前記老化防止剤が、アミン系老化防止剤である請求項5に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項7】
前記アミン系老化防止剤に加え、さらにヒドラジド化合物を配合する請求項6に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂の軟化点が80〜140℃である請求項5に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項9】
前記マスターバッチがウエットマスターバッチであって、(a)前記ゴム成分を含むゴム液を凝固処理する工程、(b)前記(a)工程で形成された凝固物を取り出す工程、及び(c)前記(b)工程で取り出された凝固物を第一混練機を用いて捏和し乾燥させると共に充填材を分散させる工程、(d)前記(c)工程で乾燥された凝固物にさらに第二混練機を用いてゴム薬品を混合する請求項1に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項10】
(a)工程におけるゴム液が、カーボンブラック、シリカ及び一般式(I)
nM・xSiOy・zH2O・・・・・・・・(I)
[式中,Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物または水酸化物、それらの水和物、及び前記金属の炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y、及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。]
で表される無機充填材の中から選ばれる少なくとも一種の充填材を、高速せん断ミキサーを用いて分散溶媒中に分散させてなるスラリー溶液を含む請求項9に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項11】
(a)工程におけるゴム液が、天然ゴムラテックス及び/又は合成ゴムラテックスである請求項9に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項12】
前記(c)工程の第一混練機が、二軸押出機である請求項9に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項13】
前記(d)工程の第二混練機が、噛合式インターナルミキサー、接線式インターナルミキサー、オープンロール及びニーダーの中から選ばれるいずれかである請求項9に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項14】
前記(d)工程の第二混練機が、噛合式インターナルミキサーである請求項13に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項15】
(c)工程の第一混練機には加硫促進剤、加硫剤及び老化防止剤を混入しない請求項6又は9に記載のゴム薬品含有マスターバッチの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の方法で得られたことを特徴とするゴム薬品含有マスターバッチ。
【請求項17】
請求項16に記載のゴム薬品含有マスターバッチを用いてなるゴム組成物。
【請求項18】
請求項17に記載のゴム組成物を用いてなるタイヤ。

【公開番号】特開2010−65126(P2010−65126A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232430(P2008−232430)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】