説明

マッサージ機

【課題】施療子を人体側に向けて駆動することをコンパクトな機構で行う上に、施療子の動きに不要な成分も少なくする。
【解決手段】施療子1の位置を前後上下左右に変更する駆動機構を備えたものにおいて、人体を押圧する方向である前後方向に施療子の位置を変更する駆動機構は、固定された軸11と、この固定された軸によって回転自在に支持された従動リンク2と、直動する軸30と、直動する軸によって回転自在に支持された原動リンク3と、上記従動リンクと上記原動リンクとを連結する軸31とからなるリンク機構を備え、施療子を備えたアーム4が上記原動リンク3または従動リンク2に連結されている。原動リンクを動かすための直動する軸の動作スペースを確保すれば施療子の前後方向の位置変更を上下の位置ずれが小さい状態で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機、殊に人体に接触する施療子を人体側に向けて駆動する駆動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
施療子に三次元的なもみマッサージの動きを行わせるマッサージ機は従来から種々のものが提供されており、また、近年は上記三次元的な動きを上下左右前後の3軸の個別の動きを組み合わせることで実現させたものも提供されている。
【0003】
ここで、上記三次元的な動きを単一のもみ駆動部で得られるようにしたものにおいても、マッサージの強弱を調整することができるようにするために、上記もみ駆動部とは別に施療子を人体側に向けて駆動することができる駆動機構を設けたものがある。この駆動機構は、上記3軸の個別の動きを組み合わせたものにおける施療子を人体側に向けて駆動する駆動部と同様の構成を用いることができる。
【0004】
ここにおいて、施療子を人体側に向けて駆動する駆動機構としては、膨張収縮するエアセルを用いたもの(特許文献1参照)、ねじ軸の正ねじ部と逆ねじ部とに夫々送りナットを螺合させて、ねじ軸の回転による両送りナットの軸方向移動をリンクで方向転換して施療子をねじ軸と直交する方向に移動させるもの(特許文献2,3参照)、軸の回りに施療子を供えるアームを回転させることで施療子を移動させるもの(特許文献4参照)等がある。
【0005】
しかし、エアセルを用いたものでは施療子の位置の正確な制御が難しい。ねじ軸の正ねじ部と逆ねじ部とに夫々送りナットを螺合させたものでは長いねじ軸が必要であるとともに、両送りナットの移動スペースを確保しなくてはならず、全体として大型化してしまう。更に軸の回りに施療子を回転させることで施療子を移動させるものでは、施療子の移動軌跡は弧を描くために、本来の動き以外の成分(たとえば上下の動き)も持つものとなり、施療子を人体のある1点に接触させた状態のままで施療子が人体を押す力を強くしようとすれば、他の成分の動きを打ち消す動き(上下の動き)を別に加えなくてはならず、制御が複雑となる上に、上記の補正のための動きを確保できるように上下の可動範囲を更に大きくしなくてはならない。
【特許文献1】特開平09−271499号公報
【特許文献2】特開2001−204778号公報
【特許文献3】特許3981593号公報
【特許文献4】特開2006−34635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、施療子を人体側に向けて駆動することをコンパクトな機構で行うことができる上に、施療子の動きに不要な成分も少なくすることができるマッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係るマッサージ機は、施療子の位置を前後上下左右に変更する駆動機構を備えたものにおいて、人体を押圧する方向である前後方向に施療子の位置を変更する駆動機構は、固定された軸と、この固定された軸によって回転自在に支持された従動リンクと、直動する軸と、直動する軸によって回転自在に支持された原動リンクと、上記従動リンクと上記原動リンクとを連結する軸とからなるリンク機構を備えており、施療子を備えたアームが上記原動リンクまたは従動リンクに連結されて、上記直動する軸の動きによって施療子が前後方向の位置を変更するものであることに特徴を有している。
【0008】
リンク機構の一方は固定された軸で支持された従動リンクであり、原動リンクを動かすための直動する軸の動作スペースを確保すれば施療子の前後方向の位置変更を行うことができるものであり、しかもこの前後方向の位置変更は上下の位置ずれを小さく納めることが可能なためにコンパクトながらも施療子の前後方向駆動を適切に行うことができる。
【0009】
この時、アームは原動リンクと一体的に動くものであることが、コンパクト化について有利である上に、施療子を前後方向に動かした時の施療子の上下方向の位置ずれを小さくすることができ、これに伴って上下の位置ずれ補償のために上下の可動範囲を大きくすることが殆ど必要なく、この点においてもコンパクト化に有利である。
【0010】
また、固定された軸が直動する軸の直動方向の延長線上に位置し、原動リンクと従動リンクとを連結する軸から施療子までの長さが、原動リンクの長さ及び従動リンクの長さと等しくなっていると、施療子の前後方向の位置変更を上下の位置ずれなく行わせることができる。
【0011】
上記の直動する軸と、原動リンクと従動リンクとを連結する軸とを結ぶ線の延長線よりも上記の固定された軸寄りに施療子が位置していると、直動する軸の移動量に比して施療子の移動量を大きくすることができる。
【0012】
駆動機構における上記リンク機構は、施療子及びアームが配される部分の側方に設けられていることが好ましい。前後方向の全体の厚みを薄くすることができる。
【0013】
施療子を左右の幅方向に駆動する駆動機構を備えるとともに、該駆動機構における左右方向移動をガイドするガイド軸が、前記直動する軸または従動リンクと原動リンクとを連結する軸または固定された軸を兼ねていたり、施療子を上下方向に駆動する駆動機構を備えるとともに、該駆動機構における上下方向移動のガイド部材が、直動する軸の直動ガイドを兼ねていたり、更に施療子を上下方向に駆動する駆動機構における駆動軸が前記固定された軸を兼ねていると、部品点数の削減を図ることができる上に、コンパクト化についても有利となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、固定された軸で支持された従動リンクと直動する軸で動く原動リンクとを軸で連結して施療子を備えたアームを上記原動リンクまたは従動リンクに連結しているために、上記の直動する軸の動作スペースを確保すれば施療子の前後方向の位置変更を行うことができるもので、確保しなくてはならない動作スペースが小さくて済む上に、機構的にもコンパクトに纏めることができるものであり、しかも直動する軸で原動リンク及び従動リンクを動かすことによって得ることができる施療子の前後方向の動きは、上下の位置ずれが小さいものとなるために、コンパクトながらも施療子の前後方向駆動を適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明すると、図2は椅子の背もたれ内に内蔵されて椅子の背もたれ内を上下に自走するマッサージ機構を示しており、図中Zが上下方向、Yが背もたれの幅方向、Xが背もたれの前後方向であり、施療子1はX方向に駆動されることで、人体側に向けて駆動されることになる。
【0016】
上記マッサージ機構は、水平断面がコ字形のフレーム10を備えたもので、該フレーム10の上下に軸11,12を夫々架設するとともに、これらの軸11,12の各両端にコロ13を遊転自在に配置し、更に正逆回転自在なモータ21によって軸回りの回転駆動がなされる軸11の両端にピニオン14を取り付けてある。
【0017】
上記の各コロ13は、椅子の背もたれ内に配されたガイドフレーム20におけるガイド溝22(図10参照)内に位置し、上記ピニオン14はガイド溝22に沿って設けたラック23と噛合するものであり、モータ21による軸11の回転駆動に伴い、上下Z方向に移動する。
【0018】
また、上記フレーム10には、図3に示すように軸方向が上下Z方向となっているねじ軸15と、左右一対のガイド軸17とが設けられている。このねじ軸15は、正逆回転自在なモータ24によってその軸回りに回転駆動されるもので、可動軸受け部16に設けた送りナット18が螺合しており、さらに上記ガイド軸17には同じく可動軸受け部16に設けたスライダー19が軸方向スライド自在に係合している。図中40はガイド軸17を支持する軸受である。
【0019】
そして、上記軸11によって一端が回動自在に連結されている従動リンク2,2の他端と、上記可動軸受け部16に一端が軸30で回動自在に連結されている原動リンク3,3とが軸31で連結されている。また、連結軸33によって連結されている左右一対の原動リンク3,3間には幅送りねじ33と上記軸30,31とが架設されている。
【0020】
施療子1はアーム4の一端に設けられている。ここにおけるアーム4は、上記幅送りねじ33に螺合する送りナット34と、上記軸30,31にスライド自在に係合するスライダー35とを備えたものであり、図では一つしか示していないが、実際は左右で一対のアーム4,4が配されているとともに、一方のアーム4の送りナット34は幅送りねじ33の正ねじ部に螺合し、他方のアーム4の送りナット34は幅送りねじ33の逆ねじ部に螺合している。
【0021】
このために、左右一対の原動リンク3,3間に配されている正逆回転自在な幅駆動用モータ29によって幅送りねじ33を軸回りに回転させる時、左右一対のアーム4,4(施療子1,1)は幅Y方向においてその位置を互いに逆方向に変化させる。図9は施療子1をもっとも外側まで移動させて、左右の施療子1,1間の間隔を最大にした状態を示している。
【0022】
施療子1の前後X方向の動きは、前述のねじ軸15の回転によって行われる。ねじ軸15を回転させたならば、前述の可動軸受け部16はねじ軸15の軸方向である上下Z方向に移動するが、可動軸受け部16と原動リンク3とが軸30で連結されているとともに、原動リンク3は従動リンク2に軸31で連結されているために、原動リンク30はその軸30の位置を変化させつつ軸30のまわりに回転する。この回転は軸31の位置を前後X方向に変化させる。
【0023】
一方、施療子1を備えたアーム4は、原動リンク3,3間に架設された幅送りねじ33と軸30,31とに連結されていることから、アーム4も原動リンク3,3と同じ動きを行って施療子1,1の位置を前後X方向に変化させる。この施療子1,1の動きは、原動リンク3や従動リンク2及びアーム4の長さにもよるが、図4に示すようにほぼ前後X方向の直線的なものとなる。
【0024】
特に、図5に示すように、軸30の移動方向の延長線上に軸11が位置し、更に軸30,31間の長さ(原動リンク3の長さ)aと軸11,31間の長さ(従動リンク2の長さ)bと軸31から施療子1までの距離cとを等しく(a=b=c)した時には、施療子1は前後X方向に完全に直線を描く移動を行う。
【0025】
なお、このマッサージ機では、上記3軸X,Y,Z方向の個別の動きを組み合わせることによってもみマッサージなどの三次元的な動きを施療子1に行わせるものである。
【0026】
原動リンク3を動かすための軸30用の直動機構として、ここではねじ軸16と送りナット18とを用いているが、その他、ラックアンドピニオン機構などを直動機構として用いてもよい。
【0027】
また、上記の例では、原動リンク3と一体的な動きを施療子1が設けられているアーム4が行うようにしたが、図5に示すように、従動リンク2と同じ動きをアーム4が行うようにしてもよい。
【0028】
このほか、原動リンク3と同じ動きを施療子1が備えたアーム4が行うようにしたものにおいて、原動リンク3の延長線(厳密には軸30,31を結ぶ線の延長線)よりも施療子1が軸11側にくるようにアーム4を形成した場合、施療子1の前後X方向の動きは図7に示すように少し傾く。これは、上下方向Zの動きが人体の上下方向と一致していなくても、図中の角度αの調整によって、人体背面に直交する前後X方向の動きを得られることを意味する。また、軸30の移動量に対する施療子1の移動量を大きくすることができる。
【0029】
ところで、従動リンク2や原動リンク3等で構成されるリンク機構MLは、図8からも明らかなように、施療子1やアーム4等で構成される施療機構MAの左右方向外側に位置するものであり、このためにマッサージ機構全体の前後方向の厚みを薄くすることができる。
【0030】
前述の実施例において、従動リンク2の一端を支持する軸11が上下方向の走行用の軸を兼ねている点、従動リンク2と原動リンク3とをつなぐ軸31及び原動リンク3の一端を動かすための軸30が施療子1を幅Y方向に駆動する時のガイド軸を兼ねている点などは、いずれも部品点数の削減とコンパクト化に寄与するものである。
【0031】
図10に示すように、軸30の両端にコロ13を設けたならば、マッサージ機構全体を上下移動させる際のガイドとなるガイドフレーム20が、リンク機構MLにおける軸30を上下動させる際の機構のガイドを兼ねることになるために、前述のガイド軸17が不要となって、更に部品点数の削減とコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すもので、(a)(b)は側面図である。
【図2】同上の斜視図である。
【図3】同上の機構の一部を省いた状態での正面図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】同上の他例の動作説明図である。
【図6】同上の更に他例の動作説明図である。
【図7】同上の別の例の動作説明図である。
【図8】同上の正面図である。
【図9】同上の斜視図である。
【図10】同上の上下走行のためのガイドフレームを含めた斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 施療子
2 従動リンク
3 原動リンク
4 アーム
11 軸
30 軸
31 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施療子の位置を前後上下左右に変更する駆動機構を備えたマッサージ機において、人体を押圧する方向である前後方向に施療子の位置を変更する駆動機構は、固定された軸と、この固定された軸によって回転自在に支持された従動リンクと、直動する軸と、直動する軸によって回転自在に支持された原動リンクと、上記従動リンクと上記原動リンクとを連結する軸とからなるリンク機構を備えており、施療子を備えたアームが上記原動リンクまたは従動リンクに連結されて、上記直動する軸の動きによって施療子が前後方向の位置を変更するものであることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
アームは原動リンクと一体的に動くものであることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項3】
固定された軸が直動する軸の直動方向の延長線上に位置し、原動リンクと従動リンクとを連結する軸から施療子までの長さが、原動リンクの長さ及び従動リンクの長さと等しくなっていることを特徴とする請求項2記載のマッサージ機。
【請求項4】
上記の直動する軸と、原動リンクと従動リンクとを連結する軸とを結ぶ線の延長線よりも上記の固定された軸寄りに施療子が位置していることを特徴とする請求項2または3記載のマッサージ機。
【請求項5】
駆動機構における上記リンク機構は、施療子及びアームが配される部分の側方に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマッサージ機。
【請求項6】
施療子を左右の幅方向に駆動する駆動機構を備えるとともに、該駆動機構における左右方向移動をガイドするガイド軸が、前記直動する軸または従動リンクと原動リンクとを連結する軸または固定された軸を兼ねていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマッサージ機。
【請求項7】
施療子を上下方向に駆動する駆動機構を備えるとともに、該駆動機構における上下方向移動のガイド部材が、直動する軸の直動ガイドを兼ねていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のマッサージ機。
【請求項8】
施療子を上下方向に駆動する駆動機構を備えるとともに、該駆動機構における駆動軸が前記固定された軸を兼ねていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−172312(P2009−172312A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16881(P2008−16881)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】