説明

マッサージ機

【課題】力制御で生じてしまう施療子の静止状態から容易に抜け出すことができる。
【解決手段】人体に接触してマッサージを施す施療子2と、人体に加わるマッサージ力を検出する力検出手段S1と、上記施療子の駆動制御を行う制御回路1とを備える。制御回路1は上記力検出手段で検出したマッサージ力に基づいて施療子の動作を制御する力制御手段1aと、施療子をデモンストレーション的に強制動作させる施療子デモ動作制御手段1bと、マッサージ動作中に施療子の制御用の制御手段を上記両制御手段間で切り換える切り換え部1cとを備える。力制御では問題が生じても施療子デモ動作制御によって施療子を強制的に動かすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施療子の駆動を力制御で行うマッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被施療者に接触する施療子を駆動することでマッサージを行うマッサージ機において、上記施療子の駆動を力制御で行うマッサージ機がある(特許文献1参照)。この力制御のマッサージ機では、マッサージ力を検出し、検出したマッサージ力が使用者の望む力になるように力制御を行うことになる。
【特許文献1】特開平09−299425
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
施療子は機械的に動かすものであるために、その動作範囲が機構的に決まっており、被施療者の体型や姿勢によっては検出したマッサージ力が目標とする力に達することができず、これが原因で施療子の動作が停まってしまうことがある上に、被施療者が強さ調整をしても強さの変化がわかりにくい場合がある。
【0004】
すなわち、力制御をする場合、検出するマッサージ力が常に目標とする力になるように施療子を動作させるわけであるが、目標とする力が小さい場合、施療子を人体から遠ざけるように動作させるものの、施療子を動作させることができるハード的な制限による範囲の一端に達しても、マッサージ力が所望の小さな値にならない時、施療子が停まってしまう。
【0005】
逆に、目標とする力が大きい場合、施療子を人体に近づける方向に動かすが、上記ハード的な制限による範囲の一端に達しても目標とする力にならない場合も、施療子が静止してしまう。
【0006】
前者の状態を弱飽和、後者の状態を強飽和と定義すると、このような飽和状態になった時点で弱飽和の時にはマッサージ強さを強く、強飽和時にはマッサージ弱さを弱くすることで飽和状態を抜け出そうとしても、目標とする力が実際のマッサージ力よりも弱飽和のときは強く、強飽和のときは弱いと、飽和状態から抜け出せず、施療子は静止したままとなる。このような状態では被施療者は違和感を覚えるし、故障してしまったのかの不安感を被施療者に与えることになる。
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、力制御を行う際に生じてしまう施療子の静止状態から容易に抜け出すことができるマッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係るマッサージ機は、人体に接触してマッサージを施す施療子と、人体に加わるマッサージ力を検出する力検出手段と、上記施療子の駆動制御を行う制御回路とを備えたマッサージ機であって、上記制御回路は上記力検出手段で検出したマッサージ力に基づいて施療子の動作を制御する力制御手段と、施療子をデモンストレーション的に強制動作させる施療子デモ動作制御手段と、マッサージ動作中に施療子の制御用の制御手段を上記両制御手段間で切り換える切り換え部とを備えていることに特徴を有している。力制御では問題が生じても施療子デモ動作制御によって施療子を強制的に動かすことができる。
【0009】
上記施療子デモ動作制御手段は、目標とする力を一時的に変更して力制御するものを好適に用いることができる。
【0010】
上記切り換え部は、力制御手段によって動作する施療子がその動作範囲の最端位置で静止した時に施療子デモ動作制御手段に切り換えるものを用いることができるほか、
施療子の動作の強弱設定のための操作部を備えたものにおいては、操作部での強弱設定操作がなされた時に力制御手段から施療子デモ動作制御手段に切り換えるもの、あるいは被施療者に対する突出量を周期的に変化させる施療子の動作の1周期中に力制御手段と施療子デモ動作制御手段とを切り換えるものを用いることができる。
【0011】
また、施療子デモ動作制御手段は、力検出手段の計測範囲外に目標とする力を設定して力制御を行うものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、力制御による施療子の動作中に静止などの問題が生じても施療子デモ動作制御手段による制御への切り換えで施療子に動作を続行させることができ、静止感を低減することができるとともに、被施療者が強さ調整をした場合にもデモ的に施療子を動作させることで、被施療者に対して強さ段階値が変化したことを認識させることができる。
【0013】
そして請求項2の発明においては、力制御の範疇で施療子デモ動作制御も行うことができる。
【0014】
請求項3の発明においては、施療子の動作範囲の最端での静止状態から容易に抜け出すことができる。
【0015】
請求項4の発明においては、操作部の強さ調整操作に対して違和感のない動作を行わせることができる。
【0016】
請求項5の発明においては、施療子の静止状態が生じることのないマッサージ動作を得ることができる。
【0017】
そして請求項6の発明においては、計測範囲の小さい安価な力センサで力制御及び施療子デモ動作制御を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明すると、図1は本発明にかかるマッサージ機のブロック図を示しており、モータ11を駆動することによって施療子2を駆動して該施療子で被施療者を押圧してマッサージを行うマッサージ機であり、施療子2の上記動作で被施療者に加えられるマッサージ力を検出する力センサS1と、施療子2の位置を検出する位置センサS2とを備え、上記施療子2の動作を制御する制御回路1には、力制御手段1aに加えて、施療子デモ動作制御手段1bが設けられている。
【0019】
力制御手段1aは、力センサS1で検出したマッサージ力が常に目標とする力になるようにモータ11を駆動して施療子2を動かすものであり、施療子デモ動作制御手段1bは、位置センサS2で検出した施療子2の位置があらかじめ定めたマッサージ動作軌道に従うように施療子2を動作させる位置制御するもの、あるいは力制御であるものの目標とする力を一時的に大きくしたり小さくしたりすることで強制的に施療子2を動作させる手段である。上記両制御手段1a,1bは、切り換え部1cによる切り換えでどちらか一方の制御手段1a,1bのみが施療子2の動作制御について有効となる。
【0020】
次に動作について説明すると、図2はマッサージ中の施療子2の位置と時間の関係を示しており、図中PCは力制御区間、DCは施療子デモ動作制御区間、Dは施療子2の機構的制限による動作範囲を示している。
【0021】
当初は力制御によってマッサージを行っているが、図2に示す例では施療子2の動作範囲Dの関係で施療子2の人体側への突出量を小さくすることができず、これに伴ってマッサージ力を下げることができなくなると、力制御で制御している場合、施療子2はその場所で停止してしまう。しかし、この状態がTh秒続けば、上記切り換え部1cが力制御手段1aから施療子デモ動作制御手段1bに制御を切り換えることで施療子2を静止状態から解放している。
【0022】
ここでは、弱側の例を示したが、逆に強側の施療動作範囲最端で施療子2が静止した場合も同様に、静止状態がTh秒継続すれば、施療子デモ動作制御に切り換えて施療子2を動作させる。この動作のフローチャートを図3に示す。
【0023】
なお、上記の例では「施療子が動作範囲の最端でTh秒間連続静止」を条件に力制御から施療子デモ動作制御に切り換えているが、施療子最端静止累計Th秒などの条件で制御を切り換えてもよい。
【0024】
また、図4に示すように、施療子1によるマッサージの強さの変更のための強弱調整用のスイッチSW1,SW2を操作器3が備えて、これらのスイッチSW1,SW2が操作された場合、力制御中、通常は目標とする力を変更して好みのマッサージ強さが得られるようにするのであるが、施療子2の動作範囲Dの制限のために上記静止状態に陥っているならば、図5に示すように、最端位置での静止状態にあるかどうかを確認した上で、施療子デモ動作制御手段1bに制御を移して、施療子2を動作させる。
【0025】
ここでは、「強く」のスイッチSW1が操作されたときを例を示しているが、その他のスイッチが操作された時も同様に制御を切り換える。また、切り換え動作は力制御から施療子デモ動作制御の例を示しているが、その反対も可能である。
【0026】
上記の各例では、施療子2が最端で静止したときの力制御と施療子デモ動作制御の切り換えであるが、施療子2がその動作範囲D内で被施療者側への突出量を順次大きくし、更に突出量を順次小さくしていく過程内で上記両制御の切り換えを行ってもよい。
【0027】
図6にこの場合の一例を示す。突出量を大きくした後に小さくするという施療子2の1周期の動きの中で、施療子デモ動作制御で施療子2をまず駆動して、施療子2がある位置P1まで達したなら力制御に切り換え、次に施療子2の突出量を小さくする方向への動きを行わせる時は再度施療子デモ動作制御に切り換えている。1周期の序盤と終盤で施療子デモ動作制御を行って強制的に施療子2を動かすことで、施療子2が静止状態に陥るのを防ぎ、施療子2によるマッサージが効果的に働く1周期の中盤は力制御を行ったものである。なお、力制御中は、施療子2の位置が上記位置P1よりも突出量が小さくなることがないように制御することで、施療子デモ動作制御状態に入った時に静止状態が生じることがないようにしておく。
【0028】
施療子デモ動作制御手段1bとしては、位置制御を行うものであってもよいが、前述のように、力制御において目標とする力を一時的に大きくしたり小さくしたりすることで強制的に施療子2を動作させるものを好適に用いることができる。切り換え部1cは目標とする力を切り換えるだけで、力制御手段1aを施療子デモ動作制御手段1bとして機能させることができる。
【0029】
この場合、力センサS1によるマッサージ計測可能範囲をWとすると、力制御に際しての目標とする力は常に上記の計測可能範囲W内で設定するが、施療子デモ動作制御手段1bによる力制御にあたっては、図7に示すように目標とする力Tを計測範囲の上限より大きく設定したり、下限より小さくしたりするのである。力センサS1で計測したマッサージ力は計測範囲Wの上限より大きくならないために、計測した力とは無関係に強制的に施療子2を突出させることができ、施療子2をどれだけ弱方向に下げても、力センサS1計測したマッサージ力は計測範囲Wの下限より小さくならないために、計測した力とは無関係に強制的に施療子2を下げることができる。
【0030】
ところで、上記の力制御及び施療子デモ動作制御に際しての施療子2の被施療者側への突出量変化は、施療子2が図8に示すように椅子の背もたれに組み込まれて被施療者9の背面の任意の場所にマッサージを行うことができるものの場合、マッサージ対象となる部位に対して常にほぼ垂直に力を加えるように制御する。マッサージ対象部位が肩である場合は肩を上方側から押す方向に、マッサージ対象部位が背や腰であるならば、背方から押す方向に施療子2が動くように施療子2の動作方向を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態の一例のブロック図である。
【図2】同上の動作の一例の動作説明図である。
【図3】同上の動作のフローチャートである。
【図4】操作器の概略正面図である。
【図5】同上の他の動作のフローチャートである。
【図6】同上の別の動作のタイムチャートである。
【図7】同上の更に別の動作のタイムチャートである。
【図8】同上の概略側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 制御回路
1a 力制御手段
1b 施療子デモ動作制御手段
1c 切り換え部
2 施療子
S1 力センサ
S2 位置センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に接触してマッサージを施す施療子と、人体に加わるマッサージ力を検出する力検出手段と、上記施療子の駆動制御を行う制御回路とを備えたマッサージ機であって、上記制御回路は上記力検出手段で検出したマッサージ力に基づいて施療子の動作を制御する力制御手段と、施療子をデモンストレーション的に強制動作させる施療子デモ動作制御手段と、マッサージ動作中に施療子の制御用の制御手段を上記両制御手段間で切り換える切り換え部とを備えていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
施療子デモ動作制御手段は、目標とする力を一時的に変更して力制御するものであることを特徴とするマッサージ機。
【請求項3】
切り換え部は、力制御手段によって動作する施療子がその動作範囲の最端位置で静止した時に施療子デモ動作制御手段に切り換えるものであることを特徴とする請求項1または2記載のマッサージ機。
【請求項4】
施療子の動作の強弱設定のための操作部を備え、切り換え部は操作部での強弱設定操作がなされた時に力制御手段から施療子デモ動作制御手段に切り換えるものであることを特徴とする請求項1または2記載のマッサージ機。
【請求項5】
切り換え部は、被施療者に対する突出量を周期的に変化させる施療子の動作の1周期中に力制御手段と施療子デモ動作制御手段とを切り換えるものであることを特徴とする請求項1または2記載のマッサージ機。
【請求項6】
施療子デモ動作制御手段は、力検出手段の計測範囲外に目標とする力を設定して力制御を行うものであることを特徴とする請求項2記載のマッサージ機

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−240685(P2009−240685A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93579(P2008−93579)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】