説明

マッサージ装置

【要 約】
【課 題】 従来のマッサージ装置は、施療部位の筋肉側において適切な圧迫力を加えることができず、施療部位の血液を心臓に向けて送り返して施療部位の血流を良好にさせるマッサージ効果やツボ押し施療のできないものである。
【解決手段】 身体の施療部位と対応する箇所に開口21を有して施療部位周囲に巻装される剛性体にて形成された環状の施療帯2と、自らの変形にて開口21に対しその施療部61が出入り自在となるよう配設される弾性体3と、弾性体3を狭持するように施療帯2へ固着された形状記憶合金部からなるアクチュエータ4と、形状記憶合金体部への通電を制御して加熱期間と冷却期間とを交互に繰り返すことで該形状記憶合金体部を変態させアクチュエータ4の両端部を中央部に対して伸縮させる駆動制御部5とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマッサージ装置に関し、特に形状記憶合金体の変態を用いたマッサージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなマッサージ装置は、形状記憶合金体のマルテンサイト変態、オーステナイト変態による伸縮力を利用して身体のマッサージを行うもので、例えば本出願人にて出願され、特開2002−48053号公報として開示されたものが知られている。(特許文献1参照)。
【0003】
このマッサージ装置は、図6に示したように、メッシュ状にした形状記憶合金101をメッシュ体とし、複数を複合させたメッシュ状の形状記憶合金アクチュエータ100を人体の脚等に巻き付け、温度制御部(図示せず)より直流を通電しジュール熱により加熱を図り、記憶した形状に急激に戻る際の超弾性作用を利用したアクチュエータとしての形状記憶合金101の伸縮力を圧迫マッサージの圧迫力又はその一部に用いるものである。このような構成によれば、従来のエアセルにより圧迫マッサージをおこなうものと比べ、小型(薄型)・軽量で装着時に人が負担を感じないマッサージ機器を提供することができる。
【特許文献1】特開2002−48053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べた従来のマッサージ装置では、形状記憶合金体が硬い金属であり、脚部等、身体の施療部位を包み込むように装着したときに、形状記憶合金体の伸縮力による圧迫マッサージの圧迫力を施療部位全周に亘って均一に加えることとなる。その結果、施療部位の筋肉側において適切な圧迫力を加えることができず、施療部位の血液を心臓に向けて送り返して施療部位の血流を良好にさせるマッサージ効果やツボ押し施療のできないものであった。
【0005】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、形状記憶合金体の変態を用いて、小型(薄型)・軽量で施療部位に適切な圧迫力を加えることが出来てツボ押し施療も可能なマッサージ装置を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、本発明は上記目的を達成するために、身体の施療部位と対応する箇所に開口を有して施療部位周囲に巻装される剛性体にて形成された環状の施療帯と、自らの変形にて前記開口に対しその施療部が出入り自在となるよう配設される弾性体と、同弾性体を狭持するように前記施療帯へ固着された形状記憶合金部からなるアクチュエータと、前記形状記憶合金体部への通電を制御して加熱期間と冷却期間とを交互に繰り返すことで該形状記憶合金体部を変態させ前記アクチュエータの両端部を中央部に対して伸縮させる駆動制御部とを備えたものである。
【0007】
また、第2の課題解決手段としては、前記弾性体が、前記開口に対して進退自在に配設される剛性体にて成る施療子を有して成るのが好ましい。
【0008】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、駆動制御部がアクチュエータの形状記憶合金体部への通電を制御し加熱期間と冷却期間とを交互に繰り返すことにて当該形状記憶合金体部を変態させることで、剛性体にて形成された施療部位周囲に巻装される環状の施療帯に固着されたアクチュエータの両端部が中央部に対して伸縮され、施療帯と身体の施療部位との間に狭持するように配設された弾性体が変形すると、弾性体の一部である施療部が環状施療帯の開口に対して出入りするため、施療部位に適切な圧迫力を加えるツボ押し施療をすることができる。また、弾性体が施療帯とアクチュエータとの間に狭持されるようにして構成されるために、小型(薄型)・軽量の程度は従来のマッサージ装置と大差無い。
【0009】
また、第2の課題解決手段による作用は、開口に対して進退自在に配設される剛性体にて成る施療子設けたことによりこの施療子にて施療部位が圧迫されるため、さらにツボ押し施療作用が増大するという効果を発揮する。
【発明の効果】
【0010】
上述したように本発明のマッサージ装置は、弾性体の一部である施療部を環状施療帯の開口に対して出入りさせることができ、施療部位に適切な圧迫力を加えるツボ押し施療のできるマッサージ装置を提供できる。
【0011】
また、剛性体にて成る施療子設けたことによりこの施療子にて施療部位が圧迫されるため、さらにツボ押し施療作用が増大するという効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の上記および他の効果、特徴および利点を明確にすべく、添付した図1〜図5を参照しながら、本発明の実施の形態を以下に詳述する。
【0013】
図1を参照すると、本発明の一実施例としてのマッサージ装置の概略構成を説明する平面断面図が示されている。このマッサージ装置1は、身体の施療部位と対応する箇所に開口21を有して施療部位周囲に巻装される剛性体にて形成された環状の施療帯2と、自らの変形にて前記開口21に対しその施療部が出入り自在となるよう配設される弾性体3と、同弾性体3を狭持するように前記施療帯2へ固着された形状記憶合金部からなるアクチュエータ4と、前記形状記憶合金体部への通電を制御して加熱期間と冷却期間とを交互に繰り返すことで該形状記憶合金体部を変態させ前記アクチュエータの両端部を中央部に対して伸縮させる駆動制御部5とを備えている。
【0014】
また、前記弾性体3が、前記開口21に対して進退自在に配設される剛性体にて成る施療子6を有してもいる。
【0015】
詳しくは、マッサージ装置1は、図1のように、環状で且つ略円筒状の施療帯2と、弾性体3と、施療帯2の開口21を挟んだ表面部に両端が固着されたアクチュエータ4と、駆動制御部5と、施療子6とで1組の施療帯Aを構成し、この施療帯Aは、施療対象となる上肢や下肢の長さに合わせるために複数用いるようになっている。
【0016】
なお、各施療帯Aのアクチュエータ4となる形状記憶合金体部に電源を供給する電源部(E)と、形状記憶合金体部に対する通電を制御することで形状記憶合金体を加熱する加熱期間と冷却期間とを交互に作り出し形状記憶合金体を伸縮させる制御スイッチ(SW)を有して成る制御回路(図3参照)等を備えた駆動制御部5たるコントローラBが外付けされる。
【0017】
次に各構成要素について詳説する。
【0018】
ここで、図1の場合、アクチュエータ4の各形状記憶合金体は、図2(a)に示すような極めて小さな線径(例えば0.2mm)の形状記憶合金体線を極めて小さい直径(例えば0.8mm)のコイル状に巻回して形成されたもので、両端が施療帯2の外面に機械的に接合されるとともに上記コントローラBと電気的に接続される。なお、形状記憶合金体の形状としては、上記コイル状以外に、同図(b)に示すように線状の形状記憶合金体をメッシュ状に編んだものや、同図(c)に示すように波状に曲げて配設したものでも良い。
【0019】
施療帯2は、ポリプロピレンや塩化ビニルなどの成形加工が可能なシート材に、1つあるいは2つ以上の複数個の、円形あるいは四角形などの多角形状をもった開口21を設けた後、例えば加熱しながら湾曲させて略円筒状に形成される。なお、この施療帯2は、開口21の対向する側を縦方向に切り欠いて、形状記憶合金体に予歪を与えつつ施療帯2を上肢や下肢に巻き付けて固定するための、分離自在の締結部を設けても良い。
【0020】
弾性体3は、変形自在の袋体内部に、空気などの気体や水などの液体、あるいはゲル状、スポンジ状の固体を封入させて形成され、施療帯2と、施療帯2へ固着された形状記憶合金部からなるアクチュエータ4との間に介装される。
【0021】
施療子6は、上記施療帯2の開口21と嵌合する円形あるいは四角形などの多角形状をもった先端の施療部61が、開口21より大きい外形をもった基板に突設され形成される。
【0022】
コントローラBの制御回路は、図3に示すように、施療帯Aの形状記憶合金体(アクチュエータ4)の近傍に設けられ形状記憶合金体の温度を検知するための温度センサ50と、コントローラBに内蔵され、使用環境の温度を検知する環境温度検知用温度センサ51と、予め環境温度と形状記憶合金体に供給する投入電力値との関係を示すデータからなるデータベース52と、温度センサ51の検知温度に基づいてデータベース52から目標となる電力値を設定する目標電力設定部53と、形状記憶合金体の直列回路と直流電源部+Eとの間に挿入され形状記憶合金体の通電をオン・オフするためのスイッチング素子SWからなる電流アンプ部54と、前記目標電力値に対応したPWM信号のデュティ比を予め設定し、このデュティ比で設定されたPWM信号を電流アンプ部54のスイッチング素子SWのゲートに加えてスイッチング素子SWのスイッチング動作を制御し、スイッチング素子SWを介して形状記憶合金体の直列回路に印加する加熱用電圧をPWM制御することにより投入電力(通電電流)を制御するともに、PWM制御された電圧によって通電される期間(加熱期間)を一定周期で設定するPWM制御部55とからなる。
【0023】
なお、PWM制御部55には、温度センサ50の検知温度が形状記憶合金体の温度が形状記憶合金体のオーステナイト変態点の温度を越えたことを検知すると、検知温度が変態点の温度(目標温度)付近で維持されるように目標電力値を変更設定機能と、後述する下肢用(或いは上肢用)の複数の施療帯A1〜A4の形状記憶合金体に対する逐次通電制御機能とを備えている。
【0024】
以下、上記構成によるマッサージ装置の動作を説明する。
【0025】
例えば施療部位Lたる下肢に対してマッサージを行おうとした場合には、まず、4つの施療帯A1〜A4を下肢の足首付近から膝付近までの間に順次巻き付ける。この巻き付けに際しては下肢の筋肉側に形状記憶合金体が位置するように配置する。次いで、コントローラBの電源を投入して制御動作を開始させると、制御回路の目標電力設定部53は温度センサ51の検知温度を取り込み、その検知温度に対応する投入する目標電力値をデータベース52から抽出し、PWM制御部55に出力する。PWM制御部55は受け取った目標電力値に対応するデュティ比からなるPWM信号を生成する。図4(a)はデータベース52に登録されている環境温度と投入電力目標値との関係を示す。
【0026】
このPWM信号は、まず施療部位Lである下肢の最も下に巻く付けてある施療帯A1の形状記憶合金体の通電をスイッチングする電流アンプ部54のスイッチング素子SWのゲートに出力して、スイッチング素子SWを駆動する。
【0027】
これにより施療帯A1の形状記憶合金体には図4(b)に示すようにPWM制御された電圧が印加されて通電が制御され所定の電力が供給されることになる。これにより形状記憶合金体は自己加熱して温度上昇する。図4(c)は温度センサ50が検知する当該形状記憶合金体の温度変化を示す。
【0028】
形状記憶合金体の温度がオーステナイト変態点に対応する温度以上に達すると、形状記憶合金体は変態収縮することになる。この収縮により開口21を挟んだ施療帯2の表面部に固着されたアクチュエータ4の両端が内側に向けて変位して移動する形となり、そのため弾性体3がアクチュエータ4に圧迫されて、形状記憶合金体収縮前(図1(a))の状態から対応する施療部位L、特に筋肉部位を施療子6の施療部61が圧迫しツボ押しするように施療帯A1の全体が縮径することになる(図1(b)参照)
この状態を一定時間T1の間保持されるようにPWM制御部55は当該施療帯A1に対するPWM制御による通電を継続する(図5(d))。一方通電開始時点t0からから0.5〜1秒程度経過した時点t1で施療帯A2のアクチュエータ4の形状記憶合金体に対応したスイッチング素子SWに対するPWM制御を開始する(図5(c))。これにより施療帯A2のアクチュエータの形状記憶合金体も上述と同様に収縮し、対応する施療部位を圧迫することになる。このようにして最下段の施療帯A1の形状記憶合金体から最上段の施療帯A4の形状記憶合金体に対する通電を切り替えて図5(d)〜(a)に示すようにそれぞれ一定時間T1の間行うことで、心臓に最も遠い位置から心臓に近い方に向けて血流を効率良くポンプアップすることができ、ツボ押しマッサージ効果が増大する。
【0029】
図5(a)〜(d)は各施療帯A1〜A4における身体圧迫の遷移パターンを示している。(a)は非通電時、(b)は施療帯A1の圧迫動作から施療帯A2への圧迫動作への移行時を、(c)は施療帯A2の圧迫動作から施療帯A3への圧迫動作への移行時を、更に(d)は施療帯A3の圧迫動作から施療帯A4への圧迫動作への移行時を示している。
【0030】
各施療帯A1〜A4においてアクチュエータ4の形状記憶合金体に対する通電が止まると、それぞれの形状記憶合金体を冷却してその温度をマルテンサイト変態点の温度以下にし、そのスプリング形状による弾発力により伸びた態に戻す冷却期間を設定することになる。
【0031】
かかるマッサージ装置1においては、駆動制御部5がアクチュエータ4の形状記憶合金体部への通電を制御し加熱期間と冷却期間とを交互に繰り返すことにて当該形状記憶合金体部を変態させることで、剛性体にて形成された施療部位周囲に巻装される環状の施療帯2に固着されたアクチュエータ4の両端部が中央部に対して伸縮され、施療帯2と身体の施療部位との間に狭持するように配設された弾性体3が変形すると、弾性体3の一部である施療部61が環状施療帯2の開口21に対して出入りするため、施療部位に適切な圧迫力を加えるツボ押し施療をすることができる。
【0032】
また、開口21に対して進退自在に配設される剛性体にて成る施療子6を設けたことによりこの施療子6にて施療部位が圧迫されるため、さらにツボ押し施療作用が増大するという効果を発揮する。
【0033】
なお、本発明は上記各実施例に限定されず、例えば、施療子6を設けることなく、弾性体3の一部を施療部とする等、本発明の技術思想の範囲内において、各実施例は適宜変更され得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態の、マッサージ装置の施療部位に巻装した一施療帯の状態を示す図であって、(a)は(a)は形状記憶合金体の伸張時の使用状態図、(b)は形状記憶合金体の収縮時の使用状態図である。
【図2】同マッサージ装置に用いる形状記憶合金体を示し、(a)はその一例の斜視図、(b)は別の例の一部省略せる正面図、(c)は他の例の一部省略せる正面図である。
【図3】同マッサージ装置に用いるコントローラの制御回路の構成図である。
【図4】(a)は同マッサージ装置の制御回路に用いるデータベースのデータ内容の説明図、(b)は同マッサージ装置の施療帯の形状記憶合金体に印加する電圧の波形図、(c)は同マッサージ装置の施療帯の形状記憶合金体の温度制御の説明図である。
【図5】同マッサージ装置の動作説明用タイミングチャートである。
【図6】従来のマッサージ装置の説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 マッサージ装置
2 施療帯
21 開口
3 弾性体
4 アクチュエータ
5 駆動制御部
6 施療子
61 施療部
L 施療部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の施療部位と対応する箇所に開口を有して施療部位周囲に巻装される剛性体にて形成された環状の施療帯と、自らの変形にて前記開口に対しその施療部が出入り自在となるよう配設される弾性体と、同弾性体を狭持するように前記施療帯へ固着された形状記憶合金部からなるアクチュエータと、前記形状記憶合金体部への通電を制御して加熱期間と冷却期間とを交互に繰り返すことで該形状記憶合金体部を変態させ前記アクチュエータの両端部を中央部に対して伸縮させる駆動制御部とを備えたマッサージ装置。
【請求項2】
前記弾性体が、前記開口に対して進退自在に配設される剛性体にて成る施療子を有して成る請求項1に記載のマッサージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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