マッサージ装置
【課題】 被施療者に良好な揉捏マッサージを施すことができ、且つ施療子の上下位置を変更する際に該施療子がカバーに引っ掛かることが防止されたマッサージ装置を提供する。
【解決手段】 カバー41を介して被施療者30に施療子1を押し当てるとともに該施療子1を少なくとも上下左右方向に駆動させてマッサージを行うマッサージ装置において、上記施療子1に、施療子1とカバー41との間の上下方向Yの摩擦係数μyを左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくさせる摩擦異方性構造を設けたものとする。
【解決手段】 カバー41を介して被施療者30に施療子1を押し当てるとともに該施療子1を少なくとも上下左右方向に駆動させてマッサージを行うマッサージ装置において、上記施療子1に、施療子1とカバー41との間の上下方向Yの摩擦係数μyを左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくさせる摩擦異方性構造を設けたものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施療子を被施療者に押圧させることでマッサージを行うマッサージ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カバーを介して被施療者側に施療子を押し付けながらこれを駆動することで各種マッサージを行うマッサージ装置が提供されている。上記施療子としては、ゴム又は樹脂を用いて円筒状に形成されるとともにアームの先端に遊転自在に取付けられるローラ型のものが一般的であり、アームの駆動形態に応じて叩き、揉捏、背筋伸ばし等の各種マッサージを行うようになっている。
【0003】
上記ローラ型の施療子を備えたマッサージ装置にあっては、例えば背筋伸ばしのように施療子を上下方向に移動させる動作を行う場合には該施療子が転動して被施療者に快適なマッサージ効果を与えることができる。しかし、マッサージ師が拇指を用いて行うような揉捏マッサージを行わせる場合には、上記ローラ型の施療子では被施療者の筋をピンポイントで押圧して引張るような感覚を与えることが困難であって快適なマッサージ効果を与え難いという問題があった。
【0004】
良好な揉捏マッサージを行わせるためには、施療子は上記ローラ型でなく例えば特許文献1に開示されるような凸状のものを固定させて用いることが好適である。しかし、このような施療子を用いてマッサージ装置を構成した場合には、施療子の上下位置を大きく変更しようとする場合に該施療子がカバーに引っ掛かり易くなり、これに伴ってカバーや施療子の破損等の不具合を生じる可能性があるといった問題がある。
【特許文献1】特開2003−325626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、被施療者に良好な揉捏マッサージを施すことができるとともに、施療子の上下位置を変更する際に該施療子がカバーに引っ掛かることを防止することができて信頼性の高いマッサージ装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明を、カバー41を介して被施療者30に施療子1を押し当てるとともに該施療子1を少なくとも上下左右方向に駆動させてマッサージを行うマッサージ装置において、上記施療子1に、施療子1とカバー41との間の上下方向Yの摩擦係数μyを左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくさせる摩擦異方性構造を設けたものとする。このようにすることで、被施療者30に特に左右方向Xに筋を引張る効果を与えて良好な揉捏マッサージを施すことができるとともに、施療子1の上下位置を大きく変更する際には該施療子1がカバー41に引っ掛かることが防止されるものである。
【0007】
ここで、上記摩擦異方性構造としては、施療子1の少なくともカバー41との接触部分近傍に、上下方向Yと左右方向Xとで変形量に異方性を有する層8を設けることも好適であるし、或いは上記摩擦異方性構造として、施療子1のカバー41との接触部分に、上下方向Yを長さ方向とする溝部10を形成することも好適である。
【0008】
また上記課題を解決するために本発明を、カバー41を介して被施療者30に施療子1を押し当てるとともに該施療子1を少なくとも上下左右方向に駆動させてマッサージを行うマッサージ装置において、上記カバー41内面の施療子1と接触する部分に、施療子1とカバー41との間の上下方向Yの摩擦係数μyを左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくさせる摩擦異方性構造を設けたものとすることも好適である。このようにすることで、被施療者30に特に左右方向Xに筋を引張る効果を与えて良好な揉捏マッサージを施すことができるとともに、施療子1の上下位置を大きく変更する際には該施療子1がカバー41に引っ掛かることが防止されるものである。
【0009】
そして、上記構成のマッサージ装置にあっては、施療子1が人体の拇指型に形成したものであることが好適である。このような拇指型とすることで、被施療者30は人体の拇指で押された場合と同様のピンポイントの刺激により良好なマッサージ感を得ることができる。
【0010】
また、上記の施療子1の上下移動と同期して該施療子1を振動させる振動子6を設けることも好適である。このようにすることで、施療子1のカバー41に対する滑りを向上させて上下移動の際の施療子1とカバー41との引っ掛かりを更に確実に防止することができる。
【0011】
また、上記の施療子1の上下移動と同期して被施療者30の荷重を受けるように動作する荷重分散部16を設けることも好適である。このようにすることで、施療子1への荷重の集中と分散が適宜切換え可能となるので、例えば施療子1を用いたマッサージを行う際には荷重分散部16を動作させず施療子1に荷重を集中させるとともに、施療子1を上下移動させる際には荷重分散部16を動作させてこれに荷重を分散させ、施療子1のカバー41との引っ掛かりを更に確実に防止することができる。
【0012】
また、上記の施療子1とこれを駆動させる施療子駆動部とを回動自在に連結させる球対偶部18と、施療子1の上下方向Yの姿勢を弾性的に支持する上下ばね部22と、左右方向Xの姿勢を弾性的に支持する左右ばね部21とを設けるとともに、上下ばね部22を左右ばね部21よりもばね定数の小さなものとすることも好適である。このようにすることで、左右方向Xに充分な揉み力を保持しながらも、施療子1の上下位置を変更する際には施療子1を逃がしてカバー41との引っ掛かりを更に確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、被施療者に良好な揉捏マッサージを施すことができるとともに、施療子の上下位置を変更する際に該施療子がカバーに引っ掛かることを防止することができて信頼性の高いマッサージ装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。本発明の実施の形態における第1例のマッサージ装置は椅子型マッサージ装置であって、背凭れ部40内において前方に突出させた状態にある施療子1を、背凭れ部40の少なくとも前面を覆うカバー41を介して被施療者30に押し当て(図2参照)、この状態で施療子1を上下、左右、強弱方向に駆動させることで揉捏マッサージ等の各種マッサージを実行させるものである。なお、施療子1以外の構成は周知のマッサージ装置の構成と同様であることから、以下の説明文中においては施療子1の構成についてのみ詳述する。
【0015】
本例のマッサージ装置の施療子1は、図1、図2に示すように凸状であり且つその先端が反るように湾曲させた、人体の拇指のような形状及び寸法を有するものであって、先端の沿った施療子1の腹部分1aを被施療者30側に向けて押当てるようになっている。上記施療子1は、ゴムやエラストマー等の弾性材料から成る施療部2内に、樹脂、鉄、アルミニウム、ステンレス等の施療部2よりも弾性率が大きな剛性材料から成る芯部3を配設して形成したものである。上記芯部3は、施療子1全体と略相似な形状であって、凸状であり且つその先端が反るように湾曲させた、人体の拇指の指骨のような形状及び寸法を有している。なお上記施療部2は芯部3を覆うように肉付けをするものであり、その厚みは少なくとも被施療者30側を向く部分において略一定に保持させている。
【0016】
芯部3の基端部分からは連結部4を突設しており、該連結部4に連結される施療子駆動部(図示せず)により、先端を反らせて湾曲形成してある芯部3の外方に凸状に湾曲した腹部分3aを被施療者30側へ向けて押圧することで、施療部2の外方に凸状に湾曲した腹部分2a(即ち施療子1の腹部分1a)が芯部3を介して被施療者30側に押圧されるようになっている。
【0017】
上記芯部3の腹部分3aの表面は、その長手方向Yの曲率半径が該長手方向Yと直交する短手方向Xの曲率半径より大きくなるように形成された凸曲面である。上記長手方向Yの曲率半径は28mm程度、上記短手方向Xの曲率半径は12mm程度に設定することが本例の施療子1を用いた揉捏マッサージには好適である。
【0018】
加えて、施療子1及びその内側に配される芯部3においては、その腹部分1a,3aから長手方向Yに連続して先端部分1b,3bを形成している。上記先端部分1b,3bの表面は、長手方向Yにおいて腹部分1a,3a表面の曲率半径よりも小さな曲率半径の凸曲面となるように形成している。したがって、本例の施療子1を被施療者30側に押圧させた場合には、従来のローラ型の施療子(図示せず)を押圧させた場合と比べて、接触面中央付近に圧力分布が集中するという特性を有する。これは施療子1及び芯部3の先端に、被施療者30から離れる方向に大きく傾斜した上記端面を形成しているからであり、したがって被施療者30は人体の拇指で押された場合と同様のピンポイントの刺激により良好なマッサージ感を得ることができる。
【0019】
そして、本例の施療子1にあっては図1に示すように、芯部3の周囲を覆う施療部2の少なくとも接触面近傍にシート体7を埋設させている。上記シート体7は、直交する二方向に伸びる多数の繊維を交差させて成るビニロンクロス等の網目状繊維であり、同一の負荷に対してピッチPの大きな方向の変形量がピッチPの小さな方向の変形量よりも大きくなるという性質を有しているので、ピッチPを二方向で相違させて変形量に異方性を与えることで、結果として施療子1の接触面における摩擦抵抗μが二方向で相違するようになっている。ここで、異方性を有する上記二方向は施療子1の短手方向X及び長手方向Yであり、施療子1は背凭れ部40内においてその短手方向Xが左右方向となり且つ長手方向Yが上下方向となるように配されるので、上記二方向はつまり左右方向及び上下方向である。したがって、以下の説明文中においては左右方向をX、上下方向をYとして述べる。ここでの左右方向X及び上下方向Yは、マッサージ中の被施療者から見た方向を基準とするものである。
【0020】
上記シート体7は、左右方向XのピッチPxと上下方向のピッチPyとをPx<Pyとなるように設けており、したがって施療子1は接触面において左右方向Xの摩擦係数μxよりも上下方向Yの摩擦係数μyが小さくなるようになっている。
【0021】
ここで、マッサージ師の揉捏マッサージにおいては図3の軌跡に示すように指先の押圧面を上下方向Yに比して左右方向Xに大きく移動させ、被施療者30の筋を筋繊維と略直交する方向に引張ることで高いマッサージ効果を得るものであるが、上記の如く本例の施療子1にあっては左右方向Xの摩擦抵抗μxが大きいので特に左右方向Xに筋を引張る効果が高く得られるとともに、施療子1の上下位置を大きく変更する際には、拇指のような凸状を成すにも関わらず上下方向Yの摩擦抵抗μyが小さいことからカバー41と引っ掛かることが防止されるものである。
【0022】
即ち、本例においては上記シート体7が上下方向Yと左右方向Xとで変形量に異方性を有する層8であって、この異方性を有する層8が、施療子1とカバー41との間の上下方向Yの摩擦係数μyを左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくさせる摩擦異方性構造となっている。これにより揉捏マッサージにおける高いマッサージ効果を確保しながらもカバー41との引っ掛かりによる不具合の発生は防止されることとなる。
【0023】
図4には、本発明の実施形態における第2例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、摩擦異方性構造として、拇指型を成す施療子1の表面であって揉捏マッサージの際にカバー41と接触する腹部分1a(即ち施療部2の腹部分2a)に、その先端側から基端側にかけて上下方向Yに伸びる溝部10を複数本凹設してある。この上下方向Yを長さ方向とする複数の溝部10は左右方向Xに平行に形成されており、溝部10内にカバー41の布地が入り込むことで、施療子1がカバー41を介して被施療者30を押圧しながら移動する際の上下方向Yの摩擦係数μyが、左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくなる構造となっている。
【0024】
上記のシンプルな摩擦異方性構造によっても、第1例と同様に揉捏マッサージにおいては施療子1により左右方向Xに筋を引っ張る効果が高く得られると同時に、施療子1の上下位置を大きく変更する際にカバー41に引っ掛かることが防止されるものである。
【0025】
図5には、本発明の実施形態における第3例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第2例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第2例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては摩擦異方性構造として、第2例と同様の溝部10を施療子1表面のカバー41と接触する部分に設けるとともに、上記カバー41内面の施療子1と接触する部分には、上下方向Yを長さ方向とする複数のレール状の小突起11を左右方向Xに平行に形成している。
【0026】
上記小突起11は幅を0.5〜3mm程度、突起量を0.5〜5mm程度として施療子1側の溝部10内に嵌入する形状に設け、更に隣接する小突起11間の距離Lを隣接する溝部10間の距離Lに一致させることで、マッサージの際には施療子1側の各溝部10内にカバー41の小突起11が嵌まり込み、施療子1が上下方向Yに移動する際には小突起11が溝部10内を円滑にスライドするとともに、左右方向Xに移動する際には小突起11が溝部10との引っ掛かりを一旦乗り越える必要があるように設けている。これにより、施療子1がカバー41を介して被施療者30を押圧しながら移動する際の上下方向Yの摩擦係数μyが、左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくなる構造となっている。
【0027】
なお上記小突起11の配置個所は、カバー41内面のうちで被施療者30の肩位置近傍となる部分のみであってもよい。この場合には、揉捏マッサージのニーズが高い肩部においてのみ左右方向Xの摩擦力を高めてマッサージ効果を向上させるとともに、他のマッサージ動作(背筋伸ばし、腰部圧迫揉み等)の揉み感には影響を及ぼさないことが可能となる。
【0028】
また、摩擦異方性構造として、施療子1側には溝部10等の特別な構造を設けずカバー41側にだけ上記小突起11を設けてあっても構わない。
【0029】
図6には、本発明の実施形態における第4例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第3例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第3例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては摩擦異方性構造としてカバー41内面に配する小突起11を、カバー41に対して上下方向Yに移動自在なプレート状の支持体12上に形成し、これにより小突起11を、カバー41内面における施療子1との接触部分と非接触部分との間で移動自在に設けている。
【0030】
したがって、例えば運転初期段階で被施療者30の体型をセンシングして肩位置を検知するとともにその検知された肩位置に向けて支持体12が上下方向Yに自動的に移動するように設けることや、或いは使用者がマッサージをして欲しい部位を操作盤(図示せず)から指示するとその指示に従った位置にまで支持体12が上下方向Yに自動的に移動するように設けることで、被施療者30の体型や凝り具合等の個人差に応じて揉捏マッサージによるマッサージ感を適宜向上させることができる。揉捏マッサージ以外の他のマッサージ(背筋伸ばし、腰部圧迫揉み等)を行う際には支持体12は施療部位から外れた場所に移動させておけばよい。
【0031】
図7には、本発明の実施形態における第5例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、上方に反った拇指型を成す施療子1の上下動時にカバー41の布地弛み部分が引っ掛かる部分(即ち施療子1の上方を向く先端部)に、上記布地弛み部分を押出して引っ掛かりを解消する押出し部材13を設けている。
【0032】
上記押出し部材13は、図示の如く上方に向けて凸状に湾曲する形状であるとともに一端側が施療子1の先端部に回動自在に連結されるものであり、他端側に連結させてあるソレノイド等の駆動子(図示せず)を施療子1の上下移動と同期して駆動させることで、カバー41の布地弛み部を上方に押出し、施療子1が上方に移動する際のカバー41との引っ掛かりを防止する構造である。押出し部材13の材質としてはカバー41の布地との摩擦が小さくなるようにPOM等の樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
図8には、本発明の実施形態における第6例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、施療子1と施療子駆動部との間に該施療子1を振動させる振動子6を配している。振動子6はソレノイド等を用いたものであり、施療子1の上下移動と同期してこれを駆動させることで、施療子1のカバー41に対する滑りを向上させることができる。これにより施療子1の上下位置を大きく変更する際のカバー41との引っ掛かりが更に確実に防止されるものである。
【0034】
図9には、本発明の実施形態における第7例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、拇指型の施療子1と隣接して配されるローラ型の施療子1′と、拇指型及びローラ型の施療子1,1′のいずれか一方を選択的に被施療者30側に押出す切換機構14とを備えている。図示例では上記切換機構14は両施療子1,1′と施療子駆動部との間に配される回転機構であり、この回転機構から突設されて該回転機構の回転に伴って姿勢を上下方向Yに変更自在なアーム5の先端部分であってその回転方向(即ち上下方向Y)に僅かにずれた位置に両施療子1,1′を支持させてあるので、図9(b)に示すように回転機構を駆動させてアーム5の上下方向Yの向きを変更することで、被施療者30を押圧する施療子1,1′を択一的に選択可能となっている。なお、切換機構14は図示例の回転機構に限定されず、ソレノイド等を用いたものであっても構わない。
【0035】
したがって、揉捏マッサージを行う場合は拇指型の施療子1を被施療者30側に突出させ、背筋伸ばし等のマッサージを行う場合はローラ型の施療子1′を被施療者30側に突出させればよい。また、施療子1,1′を上下移動させる際にはローラ型の施療子1′を被施療者30側に突出させておくことで、施療子1,1′とカバー41との引っ掛かりは確実に防止されるものである。
【0036】
図10には、本発明の実施形態における第8例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては背凭れ部40の施療子1よりも下側部分に膨縮自在なエアバッグ15を配しており、このエアバッグ15が被施療者30を施療子1から逃がすように膨張することで、被施療者30の荷重を施療子1との間で分散して受けるようになっている。つまり上記エアバッグ15は施療子1への荷重の集中と分散を切換可能な荷重分散部16を成すものであり、図示例のように施療子1側に圧力センサ17を設けて被施療者30から施療子1にかかる圧力(即ち施療子1から被施療者30にかかる圧力)を計測し、これがマッサージに適した所定圧力を超える場合にはエアバッグ15を膨張させて被施療者30を遠ざけることで、マッサージ力を調整することができる。
【0037】
また、施療子1が上下移動する際にこれと同期してエアバッグ15を膨張させることで、被施療者30を逃がして施療子1とカバー41との引っ掛かりを防止することができる。
【0038】
図11には、本発明の実施形態における第9例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、施療子1とこれを駆動させる施療子駆動部との間に球対偶部18を介在させており、この球対偶部18によって施療子1を施療子駆動部と回動自在に連結させている。
【0039】
上記球対偶部18は、拇指型を成す施療子1の基端側に連結される球体部19と、施療子駆動部側に連結されて上記球体部19を回動自在に保持する球受部20とから成り、更に、施療子1と球受部20を左右方向Xに連結させるように配されて該施療子1の左右方向Xの姿勢を弾性的に保持させる左右一対のばね部材から成る左右ばね部21と、施療子1と球受部20を上下方向Yに連結させるように配されて該施療子1の上下方向Yの姿勢を弾性的に保持させる上下一対のばね部材から成る上下ばね部22とを備えている。
【0040】
そして、左右ばね部21の各ばね部材のばね定数K1,K2と上下ばね部22の各ばね部材のばね定数K3,K4を、K1=K2>K3=K4を満たす適当な関係に設定することで、左右ばね部21全体としては揉捏マッサージ時の荷重として最適とされる約50N以下の荷重に対しては施療子1の左右方向Xの姿勢変化を殆ど生じない程度のばね定数とし、上下ばね部22全体としては施療子1の上下移動に際してカバー41との摩擦を低減させる方向に施療子1の上下方向Yの姿勢を変化させる程度のばね定数とする。
【0041】
上記の如く左右ばね部21側のばね定数を上下ばね部22側のばね定数よりも大きなものに設定することで、揉捏マッサージにおいて左右方向Xに充分な揉み力を保持しながらも、施療子1の上下位置を変更する際には施療子1を逃がしてカバー41との引っ掛かりを防止することができる。加えて、左右方向Xにおいても施療子1を完全に固定するものではないので、例えば左右両側の施療子1で人体の頭部を挟むような事態が生じた場合には施療子1を左右方向Xに逃がして安全を確保することが可能である。
【0042】
図12には、本発明の実施形態における第10例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第9例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第9例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、球対偶部18を介しての施療子1の回動動作を固定するロック機構を設けている。
【0043】
上記ロック機構は、施療子1に固着される球体部19を受ける球受部20を左右球受部24と上下球受部25に分割するとともに、左右球受部24及び上下球受部25にそれぞれ各球受部24,25を球体部19側に押し付けるアクチュエータ26を備えることで形成している。上記アクチュエータ26としてはソレノイド等を用いる。
【0044】
したがって、施療子1を用いたマッサージを行う場合にはロック機構を駆動させることで球受部20を球体部19に圧接させ、施療子1の回動をロックさせた状態でマッサージを行う。そして施療子1の位置を変更する際にはロック機構を解除して施療子1を回動自在とした状態で行い、施療子1の回動によって該施療子1のカバー41との引っ掛かりを防止するものである。
【0045】
なお、上記各例のマッサージ装置において施療子1は転動自在なローラ型のもの以外であれば足り、図示例の拇指型に限定されず例えば円筒型等の各種形状であっても構わない。また、上記各例のマッサージ装置の構成を適宜組合せて用いてよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態における第1例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図であり、(a)は施療子、(b)はシート体を示している。
【図2】(a)は同上のマッサージ装置の施療状態を示す説明図であり、(b)は(a)のA部拡大図である。
【図3】マッサージ師の拇指揉捏軌跡を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態における第2例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態における第3例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態における第4例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態における第5例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態における第6例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図9】(a)、(b)は本発明の実施形態における第7例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図10】本発明の実施形態における第8例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図11】本発明の実施形態における第9例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態における第10例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 施療子
6 振動子
8 層
10 溝部
16 荷重分散部
18 球対偶部
21 左右ばね部
22 上下ばね部
30 被施療者
41 カバー
X 左右方向
Y 上下方向
μx 左右方向の摩擦係数
μy 上下方向の摩擦係数
【技術分野】
【0001】
本発明は、施療子を被施療者に押圧させることでマッサージを行うマッサージ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カバーを介して被施療者側に施療子を押し付けながらこれを駆動することで各種マッサージを行うマッサージ装置が提供されている。上記施療子としては、ゴム又は樹脂を用いて円筒状に形成されるとともにアームの先端に遊転自在に取付けられるローラ型のものが一般的であり、アームの駆動形態に応じて叩き、揉捏、背筋伸ばし等の各種マッサージを行うようになっている。
【0003】
上記ローラ型の施療子を備えたマッサージ装置にあっては、例えば背筋伸ばしのように施療子を上下方向に移動させる動作を行う場合には該施療子が転動して被施療者に快適なマッサージ効果を与えることができる。しかし、マッサージ師が拇指を用いて行うような揉捏マッサージを行わせる場合には、上記ローラ型の施療子では被施療者の筋をピンポイントで押圧して引張るような感覚を与えることが困難であって快適なマッサージ効果を与え難いという問題があった。
【0004】
良好な揉捏マッサージを行わせるためには、施療子は上記ローラ型でなく例えば特許文献1に開示されるような凸状のものを固定させて用いることが好適である。しかし、このような施療子を用いてマッサージ装置を構成した場合には、施療子の上下位置を大きく変更しようとする場合に該施療子がカバーに引っ掛かり易くなり、これに伴ってカバーや施療子の破損等の不具合を生じる可能性があるといった問題がある。
【特許文献1】特開2003−325626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、被施療者に良好な揉捏マッサージを施すことができるとともに、施療子の上下位置を変更する際に該施療子がカバーに引っ掛かることを防止することができて信頼性の高いマッサージ装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明を、カバー41を介して被施療者30に施療子1を押し当てるとともに該施療子1を少なくとも上下左右方向に駆動させてマッサージを行うマッサージ装置において、上記施療子1に、施療子1とカバー41との間の上下方向Yの摩擦係数μyを左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくさせる摩擦異方性構造を設けたものとする。このようにすることで、被施療者30に特に左右方向Xに筋を引張る効果を与えて良好な揉捏マッサージを施すことができるとともに、施療子1の上下位置を大きく変更する際には該施療子1がカバー41に引っ掛かることが防止されるものである。
【0007】
ここで、上記摩擦異方性構造としては、施療子1の少なくともカバー41との接触部分近傍に、上下方向Yと左右方向Xとで変形量に異方性を有する層8を設けることも好適であるし、或いは上記摩擦異方性構造として、施療子1のカバー41との接触部分に、上下方向Yを長さ方向とする溝部10を形成することも好適である。
【0008】
また上記課題を解決するために本発明を、カバー41を介して被施療者30に施療子1を押し当てるとともに該施療子1を少なくとも上下左右方向に駆動させてマッサージを行うマッサージ装置において、上記カバー41内面の施療子1と接触する部分に、施療子1とカバー41との間の上下方向Yの摩擦係数μyを左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくさせる摩擦異方性構造を設けたものとすることも好適である。このようにすることで、被施療者30に特に左右方向Xに筋を引張る効果を与えて良好な揉捏マッサージを施すことができるとともに、施療子1の上下位置を大きく変更する際には該施療子1がカバー41に引っ掛かることが防止されるものである。
【0009】
そして、上記構成のマッサージ装置にあっては、施療子1が人体の拇指型に形成したものであることが好適である。このような拇指型とすることで、被施療者30は人体の拇指で押された場合と同様のピンポイントの刺激により良好なマッサージ感を得ることができる。
【0010】
また、上記の施療子1の上下移動と同期して該施療子1を振動させる振動子6を設けることも好適である。このようにすることで、施療子1のカバー41に対する滑りを向上させて上下移動の際の施療子1とカバー41との引っ掛かりを更に確実に防止することができる。
【0011】
また、上記の施療子1の上下移動と同期して被施療者30の荷重を受けるように動作する荷重分散部16を設けることも好適である。このようにすることで、施療子1への荷重の集中と分散が適宜切換え可能となるので、例えば施療子1を用いたマッサージを行う際には荷重分散部16を動作させず施療子1に荷重を集中させるとともに、施療子1を上下移動させる際には荷重分散部16を動作させてこれに荷重を分散させ、施療子1のカバー41との引っ掛かりを更に確実に防止することができる。
【0012】
また、上記の施療子1とこれを駆動させる施療子駆動部とを回動自在に連結させる球対偶部18と、施療子1の上下方向Yの姿勢を弾性的に支持する上下ばね部22と、左右方向Xの姿勢を弾性的に支持する左右ばね部21とを設けるとともに、上下ばね部22を左右ばね部21よりもばね定数の小さなものとすることも好適である。このようにすることで、左右方向Xに充分な揉み力を保持しながらも、施療子1の上下位置を変更する際には施療子1を逃がしてカバー41との引っ掛かりを更に確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、被施療者に良好な揉捏マッサージを施すことができるとともに、施療子の上下位置を変更する際に該施療子がカバーに引っ掛かることを防止することができて信頼性の高いマッサージ装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。本発明の実施の形態における第1例のマッサージ装置は椅子型マッサージ装置であって、背凭れ部40内において前方に突出させた状態にある施療子1を、背凭れ部40の少なくとも前面を覆うカバー41を介して被施療者30に押し当て(図2参照)、この状態で施療子1を上下、左右、強弱方向に駆動させることで揉捏マッサージ等の各種マッサージを実行させるものである。なお、施療子1以外の構成は周知のマッサージ装置の構成と同様であることから、以下の説明文中においては施療子1の構成についてのみ詳述する。
【0015】
本例のマッサージ装置の施療子1は、図1、図2に示すように凸状であり且つその先端が反るように湾曲させた、人体の拇指のような形状及び寸法を有するものであって、先端の沿った施療子1の腹部分1aを被施療者30側に向けて押当てるようになっている。上記施療子1は、ゴムやエラストマー等の弾性材料から成る施療部2内に、樹脂、鉄、アルミニウム、ステンレス等の施療部2よりも弾性率が大きな剛性材料から成る芯部3を配設して形成したものである。上記芯部3は、施療子1全体と略相似な形状であって、凸状であり且つその先端が反るように湾曲させた、人体の拇指の指骨のような形状及び寸法を有している。なお上記施療部2は芯部3を覆うように肉付けをするものであり、その厚みは少なくとも被施療者30側を向く部分において略一定に保持させている。
【0016】
芯部3の基端部分からは連結部4を突設しており、該連結部4に連結される施療子駆動部(図示せず)により、先端を反らせて湾曲形成してある芯部3の外方に凸状に湾曲した腹部分3aを被施療者30側へ向けて押圧することで、施療部2の外方に凸状に湾曲した腹部分2a(即ち施療子1の腹部分1a)が芯部3を介して被施療者30側に押圧されるようになっている。
【0017】
上記芯部3の腹部分3aの表面は、その長手方向Yの曲率半径が該長手方向Yと直交する短手方向Xの曲率半径より大きくなるように形成された凸曲面である。上記長手方向Yの曲率半径は28mm程度、上記短手方向Xの曲率半径は12mm程度に設定することが本例の施療子1を用いた揉捏マッサージには好適である。
【0018】
加えて、施療子1及びその内側に配される芯部3においては、その腹部分1a,3aから長手方向Yに連続して先端部分1b,3bを形成している。上記先端部分1b,3bの表面は、長手方向Yにおいて腹部分1a,3a表面の曲率半径よりも小さな曲率半径の凸曲面となるように形成している。したがって、本例の施療子1を被施療者30側に押圧させた場合には、従来のローラ型の施療子(図示せず)を押圧させた場合と比べて、接触面中央付近に圧力分布が集中するという特性を有する。これは施療子1及び芯部3の先端に、被施療者30から離れる方向に大きく傾斜した上記端面を形成しているからであり、したがって被施療者30は人体の拇指で押された場合と同様のピンポイントの刺激により良好なマッサージ感を得ることができる。
【0019】
そして、本例の施療子1にあっては図1に示すように、芯部3の周囲を覆う施療部2の少なくとも接触面近傍にシート体7を埋設させている。上記シート体7は、直交する二方向に伸びる多数の繊維を交差させて成るビニロンクロス等の網目状繊維であり、同一の負荷に対してピッチPの大きな方向の変形量がピッチPの小さな方向の変形量よりも大きくなるという性質を有しているので、ピッチPを二方向で相違させて変形量に異方性を与えることで、結果として施療子1の接触面における摩擦抵抗μが二方向で相違するようになっている。ここで、異方性を有する上記二方向は施療子1の短手方向X及び長手方向Yであり、施療子1は背凭れ部40内においてその短手方向Xが左右方向となり且つ長手方向Yが上下方向となるように配されるので、上記二方向はつまり左右方向及び上下方向である。したがって、以下の説明文中においては左右方向をX、上下方向をYとして述べる。ここでの左右方向X及び上下方向Yは、マッサージ中の被施療者から見た方向を基準とするものである。
【0020】
上記シート体7は、左右方向XのピッチPxと上下方向のピッチPyとをPx<Pyとなるように設けており、したがって施療子1は接触面において左右方向Xの摩擦係数μxよりも上下方向Yの摩擦係数μyが小さくなるようになっている。
【0021】
ここで、マッサージ師の揉捏マッサージにおいては図3の軌跡に示すように指先の押圧面を上下方向Yに比して左右方向Xに大きく移動させ、被施療者30の筋を筋繊維と略直交する方向に引張ることで高いマッサージ効果を得るものであるが、上記の如く本例の施療子1にあっては左右方向Xの摩擦抵抗μxが大きいので特に左右方向Xに筋を引張る効果が高く得られるとともに、施療子1の上下位置を大きく変更する際には、拇指のような凸状を成すにも関わらず上下方向Yの摩擦抵抗μyが小さいことからカバー41と引っ掛かることが防止されるものである。
【0022】
即ち、本例においては上記シート体7が上下方向Yと左右方向Xとで変形量に異方性を有する層8であって、この異方性を有する層8が、施療子1とカバー41との間の上下方向Yの摩擦係数μyを左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくさせる摩擦異方性構造となっている。これにより揉捏マッサージにおける高いマッサージ効果を確保しながらもカバー41との引っ掛かりによる不具合の発生は防止されることとなる。
【0023】
図4には、本発明の実施形態における第2例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、摩擦異方性構造として、拇指型を成す施療子1の表面であって揉捏マッサージの際にカバー41と接触する腹部分1a(即ち施療部2の腹部分2a)に、その先端側から基端側にかけて上下方向Yに伸びる溝部10を複数本凹設してある。この上下方向Yを長さ方向とする複数の溝部10は左右方向Xに平行に形成されており、溝部10内にカバー41の布地が入り込むことで、施療子1がカバー41を介して被施療者30を押圧しながら移動する際の上下方向Yの摩擦係数μyが、左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくなる構造となっている。
【0024】
上記のシンプルな摩擦異方性構造によっても、第1例と同様に揉捏マッサージにおいては施療子1により左右方向Xに筋を引っ張る効果が高く得られると同時に、施療子1の上下位置を大きく変更する際にカバー41に引っ掛かることが防止されるものである。
【0025】
図5には、本発明の実施形態における第3例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第2例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第2例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては摩擦異方性構造として、第2例と同様の溝部10を施療子1表面のカバー41と接触する部分に設けるとともに、上記カバー41内面の施療子1と接触する部分には、上下方向Yを長さ方向とする複数のレール状の小突起11を左右方向Xに平行に形成している。
【0026】
上記小突起11は幅を0.5〜3mm程度、突起量を0.5〜5mm程度として施療子1側の溝部10内に嵌入する形状に設け、更に隣接する小突起11間の距離Lを隣接する溝部10間の距離Lに一致させることで、マッサージの際には施療子1側の各溝部10内にカバー41の小突起11が嵌まり込み、施療子1が上下方向Yに移動する際には小突起11が溝部10内を円滑にスライドするとともに、左右方向Xに移動する際には小突起11が溝部10との引っ掛かりを一旦乗り越える必要があるように設けている。これにより、施療子1がカバー41を介して被施療者30を押圧しながら移動する際の上下方向Yの摩擦係数μyが、左右方向Xの摩擦係数μxよりも小さくなる構造となっている。
【0027】
なお上記小突起11の配置個所は、カバー41内面のうちで被施療者30の肩位置近傍となる部分のみであってもよい。この場合には、揉捏マッサージのニーズが高い肩部においてのみ左右方向Xの摩擦力を高めてマッサージ効果を向上させるとともに、他のマッサージ動作(背筋伸ばし、腰部圧迫揉み等)の揉み感には影響を及ぼさないことが可能となる。
【0028】
また、摩擦異方性構造として、施療子1側には溝部10等の特別な構造を設けずカバー41側にだけ上記小突起11を設けてあっても構わない。
【0029】
図6には、本発明の実施形態における第4例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第3例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第3例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては摩擦異方性構造としてカバー41内面に配する小突起11を、カバー41に対して上下方向Yに移動自在なプレート状の支持体12上に形成し、これにより小突起11を、カバー41内面における施療子1との接触部分と非接触部分との間で移動自在に設けている。
【0030】
したがって、例えば運転初期段階で被施療者30の体型をセンシングして肩位置を検知するとともにその検知された肩位置に向けて支持体12が上下方向Yに自動的に移動するように設けることや、或いは使用者がマッサージをして欲しい部位を操作盤(図示せず)から指示するとその指示に従った位置にまで支持体12が上下方向Yに自動的に移動するように設けることで、被施療者30の体型や凝り具合等の個人差に応じて揉捏マッサージによるマッサージ感を適宜向上させることができる。揉捏マッサージ以外の他のマッサージ(背筋伸ばし、腰部圧迫揉み等)を行う際には支持体12は施療部位から外れた場所に移動させておけばよい。
【0031】
図7には、本発明の実施形態における第5例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、上方に反った拇指型を成す施療子1の上下動時にカバー41の布地弛み部分が引っ掛かる部分(即ち施療子1の上方を向く先端部)に、上記布地弛み部分を押出して引っ掛かりを解消する押出し部材13を設けている。
【0032】
上記押出し部材13は、図示の如く上方に向けて凸状に湾曲する形状であるとともに一端側が施療子1の先端部に回動自在に連結されるものであり、他端側に連結させてあるソレノイド等の駆動子(図示せず)を施療子1の上下移動と同期して駆動させることで、カバー41の布地弛み部を上方に押出し、施療子1が上方に移動する際のカバー41との引っ掛かりを防止する構造である。押出し部材13の材質としてはカバー41の布地との摩擦が小さくなるようにPOM等の樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
図8には、本発明の実施形態における第6例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、施療子1と施療子駆動部との間に該施療子1を振動させる振動子6を配している。振動子6はソレノイド等を用いたものであり、施療子1の上下移動と同期してこれを駆動させることで、施療子1のカバー41に対する滑りを向上させることができる。これにより施療子1の上下位置を大きく変更する際のカバー41との引っ掛かりが更に確実に防止されるものである。
【0034】
図9には、本発明の実施形態における第7例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、拇指型の施療子1と隣接して配されるローラ型の施療子1′と、拇指型及びローラ型の施療子1,1′のいずれか一方を選択的に被施療者30側に押出す切換機構14とを備えている。図示例では上記切換機構14は両施療子1,1′と施療子駆動部との間に配される回転機構であり、この回転機構から突設されて該回転機構の回転に伴って姿勢を上下方向Yに変更自在なアーム5の先端部分であってその回転方向(即ち上下方向Y)に僅かにずれた位置に両施療子1,1′を支持させてあるので、図9(b)に示すように回転機構を駆動させてアーム5の上下方向Yの向きを変更することで、被施療者30を押圧する施療子1,1′を択一的に選択可能となっている。なお、切換機構14は図示例の回転機構に限定されず、ソレノイド等を用いたものであっても構わない。
【0035】
したがって、揉捏マッサージを行う場合は拇指型の施療子1を被施療者30側に突出させ、背筋伸ばし等のマッサージを行う場合はローラ型の施療子1′を被施療者30側に突出させればよい。また、施療子1,1′を上下移動させる際にはローラ型の施療子1′を被施療者30側に突出させておくことで、施療子1,1′とカバー41との引っ掛かりは確実に防止されるものである。
【0036】
図10には、本発明の実施形態における第8例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては背凭れ部40の施療子1よりも下側部分に膨縮自在なエアバッグ15を配しており、このエアバッグ15が被施療者30を施療子1から逃がすように膨張することで、被施療者30の荷重を施療子1との間で分散して受けるようになっている。つまり上記エアバッグ15は施療子1への荷重の集中と分散を切換可能な荷重分散部16を成すものであり、図示例のように施療子1側に圧力センサ17を設けて被施療者30から施療子1にかかる圧力(即ち施療子1から被施療者30にかかる圧力)を計測し、これがマッサージに適した所定圧力を超える場合にはエアバッグ15を膨張させて被施療者30を遠ざけることで、マッサージ力を調整することができる。
【0037】
また、施療子1が上下移動する際にこれと同期してエアバッグ15を膨張させることで、被施療者30を逃がして施療子1とカバー41との引っ掛かりを防止することができる。
【0038】
図11には、本発明の実施形態における第9例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第1例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第1例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、施療子1とこれを駆動させる施療子駆動部との間に球対偶部18を介在させており、この球対偶部18によって施療子1を施療子駆動部と回動自在に連結させている。
【0039】
上記球対偶部18は、拇指型を成す施療子1の基端側に連結される球体部19と、施療子駆動部側に連結されて上記球体部19を回動自在に保持する球受部20とから成り、更に、施療子1と球受部20を左右方向Xに連結させるように配されて該施療子1の左右方向Xの姿勢を弾性的に保持させる左右一対のばね部材から成る左右ばね部21と、施療子1と球受部20を上下方向Yに連結させるように配されて該施療子1の上下方向Yの姿勢を弾性的に保持させる上下一対のばね部材から成る上下ばね部22とを備えている。
【0040】
そして、左右ばね部21の各ばね部材のばね定数K1,K2と上下ばね部22の各ばね部材のばね定数K3,K4を、K1=K2>K3=K4を満たす適当な関係に設定することで、左右ばね部21全体としては揉捏マッサージ時の荷重として最適とされる約50N以下の荷重に対しては施療子1の左右方向Xの姿勢変化を殆ど生じない程度のばね定数とし、上下ばね部22全体としては施療子1の上下移動に際してカバー41との摩擦を低減させる方向に施療子1の上下方向Yの姿勢を変化させる程度のばね定数とする。
【0041】
上記の如く左右ばね部21側のばね定数を上下ばね部22側のばね定数よりも大きなものに設定することで、揉捏マッサージにおいて左右方向Xに充分な揉み力を保持しながらも、施療子1の上下位置を変更する際には施療子1を逃がしてカバー41との引っ掛かりを防止することができる。加えて、左右方向Xにおいても施療子1を完全に固定するものではないので、例えば左右両側の施療子1で人体の頭部を挟むような事態が生じた場合には施療子1を左右方向Xに逃がして安全を確保することが可能である。
【0042】
図12には、本発明の実施形態における第10例のマッサージ装置の特徴部分を示している。以下、第9例と同様の構成については詳しい説明を省略し、第9例とは相違する本例特有の構成についてのみ詳述する。本例にあっては、球対偶部18を介しての施療子1の回動動作を固定するロック機構を設けている。
【0043】
上記ロック機構は、施療子1に固着される球体部19を受ける球受部20を左右球受部24と上下球受部25に分割するとともに、左右球受部24及び上下球受部25にそれぞれ各球受部24,25を球体部19側に押し付けるアクチュエータ26を備えることで形成している。上記アクチュエータ26としてはソレノイド等を用いる。
【0044】
したがって、施療子1を用いたマッサージを行う場合にはロック機構を駆動させることで球受部20を球体部19に圧接させ、施療子1の回動をロックさせた状態でマッサージを行う。そして施療子1の位置を変更する際にはロック機構を解除して施療子1を回動自在とした状態で行い、施療子1の回動によって該施療子1のカバー41との引っ掛かりを防止するものである。
【0045】
なお、上記各例のマッサージ装置において施療子1は転動自在なローラ型のもの以外であれば足り、図示例の拇指型に限定されず例えば円筒型等の各種形状であっても構わない。また、上記各例のマッサージ装置の構成を適宜組合せて用いてよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態における第1例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図であり、(a)は施療子、(b)はシート体を示している。
【図2】(a)は同上のマッサージ装置の施療状態を示す説明図であり、(b)は(a)のA部拡大図である。
【図3】マッサージ師の拇指揉捏軌跡を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態における第2例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態における第3例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態における第4例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態における第5例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態における第6例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図9】(a)、(b)は本発明の実施形態における第7例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図10】本発明の実施形態における第8例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図11】本発明の実施形態における第9例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態における第10例のマッサージ装置の特徴部分を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 施療子
6 振動子
8 層
10 溝部
16 荷重分散部
18 球対偶部
21 左右ばね部
22 上下ばね部
30 被施療者
41 カバー
X 左右方向
Y 上下方向
μx 左右方向の摩擦係数
μy 上下方向の摩擦係数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーを介して被施療者に施療子を押し当てるとともに該施療子を少なくとも上下左右方向に駆動させてマッサージを行うマッサージ装置において、上記施療子に、施療子とカバーとの間の上下方向の摩擦係数を左右方向の摩擦係数よりも小さくさせる摩擦異方性構造を設けることを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
摩擦異方性構造として、施療子の少なくともカバーとの接触部分近傍に、上下方向と左右方向とで変形量に異方性を有する層を設けることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
【請求項3】
摩擦異方性構造として、施療子のカバーとの接触部分に、上下方向を長さ方向とする溝部を形成することを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
【請求項4】
カバーを介して被施療者に施療子を押し当てるとともに該施療子を少なくとも上下左右方向に駆動させてマッサージを行うマッサージ装置において、上記カバー内面の施療子と接触する部分に、施療子とカバーとの間の上下方向の摩擦係数を左右方向の摩擦係数よりも小さくさせる摩擦異方性構造を設けたことを特徴とするマッサージ装置。
【請求項5】
施療子が人体の拇指型に形成したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のマッサージ装置。
【請求項6】
施療子の上下移動と同期して該施療子を振動させる振動子を設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のマッサージ装置。
【請求項7】
施療子の上下移動と同期して被施療者の荷重を受けるように動作する荷重分散部を設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のマッサージ装置。
【請求項8】
施療子とこれを駆動させる施療子駆動部とを回動自在に連結させる球対偶部と、施療子の上下方向の姿勢を弾性的に支持する上下ばね部と、左右方向の姿勢を弾性的に支持する左右ばね部とを設けるとともに、上下ばね部を左右ばね部よりもばね定数の小さなものとすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のマッサージ装置。
【請求項1】
カバーを介して被施療者に施療子を押し当てるとともに該施療子を少なくとも上下左右方向に駆動させてマッサージを行うマッサージ装置において、上記施療子に、施療子とカバーとの間の上下方向の摩擦係数を左右方向の摩擦係数よりも小さくさせる摩擦異方性構造を設けることを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
摩擦異方性構造として、施療子の少なくともカバーとの接触部分近傍に、上下方向と左右方向とで変形量に異方性を有する層を設けることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
【請求項3】
摩擦異方性構造として、施療子のカバーとの接触部分に、上下方向を長さ方向とする溝部を形成することを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
【請求項4】
カバーを介して被施療者に施療子を押し当てるとともに該施療子を少なくとも上下左右方向に駆動させてマッサージを行うマッサージ装置において、上記カバー内面の施療子と接触する部分に、施療子とカバーとの間の上下方向の摩擦係数を左右方向の摩擦係数よりも小さくさせる摩擦異方性構造を設けたことを特徴とするマッサージ装置。
【請求項5】
施療子が人体の拇指型に形成したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のマッサージ装置。
【請求項6】
施療子の上下移動と同期して該施療子を振動させる振動子を設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のマッサージ装置。
【請求項7】
施療子の上下移動と同期して被施療者の荷重を受けるように動作する荷重分散部を設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のマッサージ装置。
【請求項8】
施療子とこれを駆動させる施療子駆動部とを回動自在に連結させる球対偶部と、施療子の上下方向の姿勢を弾性的に支持する上下ばね部と、左右方向の姿勢を弾性的に支持する左右ばね部とを設けるとともに、上下ばね部を左右ばね部よりもばね定数の小さなものとすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のマッサージ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−89695(P2007−89695A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280908(P2005−280908)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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