説明

マット施薬機

【課題】苗載台上の苗マット上に薬剤を散布しつつ、殺虫殺菌剤や除草剤を散布することができる、つまり田植と同時に肥料等の散布と除草剤等の散布を行うことができるマット施薬機を提供する。
【解決手段】薬剤が貯溜される薬剤ホッパ41と、該薬剤ホッパ41の薬剤を苗載台16上の苗マットに散布する散布部43と、を具備するマット施薬機10に、除草剤等を貯溜して散布する除草剤散布機90を備えた除草剤等を貯溜して散布する除草剤散布機90を備え、前記除草剤散布機90を、前記薬剤ホッパ41及び散布部43を支持する支持フレーム53の後下部55に着脱自在に装着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機等の苗載台上に載置された苗マット上に肥料や農薬等の薬剤を散布するマット施薬機の技術に関し、詳しくは苗マット上に薬剤の散布を行いながら圃場に除草剤等の散布を行うことができるマット施薬機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多忙な田植え直前の時期に手散布により育苗箱に所定量の薬剤を丁寧に散布する作業は非常に煩わしい作業であるため、従来から動力散布機等を用いて大量の薬剤散布作業を施す方法が採られていた。
しかし、そのような動力散布機を用いる薬剤散布では、植え付けられる苗に薬剤を均一に散布することが難しく面倒であったため、近年では、田植機の苗載台上方にマット施薬機を搭載し、該マット施薬機によって苗マット上に薬剤を散布する、つまり、田植えと同時に施薬を行うことができる作業機が用いられるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−027895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献に記載のマット施薬機の場合、田植機にはマット施薬機のみが装着されているため、除草剤の散布は、植付作業の前に散布したり、植付後に散布機を用いて散布を行う必要があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、苗載台上の苗マット上に薬剤を散布しつつ、殺虫殺菌剤や除草剤を散布することができる、つまり田植と同時に肥料等の散布と除草剤等の散布を行うことができるマット施薬機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、薬剤が貯溜される薬剤ホッパと、該薬剤ホッパの薬剤を苗載台上の苗マットに散布する散布部と、を具備するマット施薬機において、除草剤等を貯溜して散布する除草剤散布機を備えたものである。
【0006】
請求項2においては、前記除草剤散布機を、前記薬剤ホッパ及び散布部を支持する支持フレームの後下部に着脱自在に装着したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、苗載台の苗マットに薬剤を散布しつつ、殺虫殺菌剤や除草剤を散布することができる、つまり田植と同時に肥料等の散布と除草剤等の散布を行うことができ、作業効率を向上することができ、労力を軽減できる。
【0009】
請求項2においては、除草剤散布を植付作業や施肥作業と干渉することなく行うことができる。また、マット施薬機を取り付けるための支持フレームを利用して除草剤散布機を取り付けることが可能となり、除草剤散布を行わないとき等にマット施薬機から除草剤散布機を取り外すことができるので、田植機全体のコンパクト化・軽量化を図ることができる。また、除草剤散布機を装備したマット施薬機の重心位置が低くなるため、機体の安定性が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係わる乗用田植機100の全体構成を示した側面図、図2は乗用田植機100後部を示した側面図、図3は同じく背面図、図4はマット施薬機10を後方へ傾倒させた状態を示す側面図、図5は横ノズルステー59L・59Rを示した平面図である。
【0011】
以下では、図1及び図2を用いて本発明のマット施薬機の実施の一形態であるマット施薬機10を具備した乗用田植機100の全体構成について説明する。
なお、本発明に係るマット施薬機10は田植機に広く適用可能であって、その適用範囲は本実施例の乗用田植機100に限定されるものではない。ここで、「田植機」とは、水田に稲の苗を植え付ける機械を指し、作業者が乗って操作する乗用田植機及び作業者が手で押して操作する歩行式田植機の両方を含む。
以下の説明では、便宜上機体進行方向(図1中の矢印A方向)を「前方」と定義し、進行方向に向かって左方向(図5において左方向)を左方とし、進行方向に向かって右方向(図5において右方向)を右方として説明を行う。
【0012】
乗用田植機100は田植機の実施の一形態であり、走行部1の後部に昇降リンク機構27を介して植付部4が配設されている。
走行部1は車体フレーム3の前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にてフロントアクスルケースを介して前輪6を支持し、後下部にてリヤアクスルケース7を介して後輪8を支持する。エンジン2はボンネット9に覆われている。
【0013】
乗用田植機100はボンネット9の後部に設けられたダッシュボード5の上に操向ハンドル14を配置し、ボンネット9の左右両側およびボンネット9の後部の車体フレーム3の上面を車体カバー12で覆っている。該操向ハンドル14の後方には座席13を配置し、ボンネット9の左右両側と座席13の前方と座席13の左右両側と座席13の後方を作業者が足を載せるステップとしている。
乗用田植機100には、座席13の側部に走行変速レバー30や植付昇降および作業走行変速用の副変速レバー31や植付感度調節レバー等が配設され、ダッシュボード5の下部のステップ上には主クラッチペダル32や左右ブレーキペダルが配設されて、座席13の後方に施肥機33が配設されている。
【0014】
植付部4は、苗載台16・植付爪17・フロート34等から構成され、該植付部4にマット施薬機10と除草剤散布機90とが装着される。苗載台16は前高後低に配設されて、その下部が下ガイドレール18に、前面上部が上ガイドレール19に左右往復摺動自在に支持されている。該下ガイドレール18および該上ガイドレール19は、フレーム等を介して植付センターケース20によって支持されている。植付センターケース20には、連結パイプを介して後方へと植付ケース21が突設されており、該植付ケース21の後部には一方向に回動するロータリケース22が設けられ、該ロータリケース22の両側に一対の植付爪17・17が設けられる。
【0015】
このようにして、乗用田植機100は、前進走行とともに苗載台16を横送り機構により左右に往復運動(摺動)し、この往復運動に同期させて植付爪17・17・・・を駆動して各条ごとに一株分の苗を切り出しながら、連続的に植付作業を行うものである。
なお、植付センターケース20の前部には、図示しないローリング支点軸を介して昇降リンク機構27が連結されており、詳しくは、該昇降リンク機構27がトップリンク25やロワーリンク26等から構成されて、座席13下方に配置した昇降シリンダ28によって植付部4を昇降する構成になっている。
【0016】
図2及び図3に示す如く、苗載台16の上面には各条の左右両側にリブ85・85・・・が前後方向に立設され、該リブ85・85・・・間に苗マット載置部86・86・・・が形成されている。つまり、隣り合うリブ85・85間に形成された苗マット載置部86とその上に載置された苗マットとが、乗用田植機100が植付作業を行う一条分に対応している。
該苗マットの縦送り機構は、従動ローラ37・駆動ローラ38・苗送りベルト35等から構成される。苗マット載置部86の下部から上下中間位置にかけて開口部が設けられ、該開口部の上下に従動ローラ37と駆動ローラ38とが配設され、従動ローラ37と駆動ローラ38の間に苗送りベルト35が巻回される。該苗送りベルト35・35・・・の表面には多数の突起が設けられ、苗マット載置部86の下部から上下中間位置にかけて設けられた開口部から該ベルト表面が露出する。
【0017】
このような構成にして、苗マットの縦送り機構の上方に設けられた苗マット押え機構36と苗送りベルト35とによって苗マットを保持しつつ、苗マットを正確に下方へ縦送りしながら、安定した苗の植付けを行う。
詳しくは、苗載台16の左右往復運動と、該往復運動に同期して植付爪17・17・・・が行う苗の切り出し作業によって、苗マットの下端が一定幅ずつ切断され、切断された苗マットが下方へと搬送されて、苗が水田に植え付けられていく。また、苗マットは苗載台16の左右端での折り返し時に縦送り機構の苗送りベルト35によって下方へと運ばれる。
そして、この植付作業の際、苗載台16上方に配設されたマット施薬機10によって、苗の植付と同時に苗マット上に散布ムラのない確実な施薬が行われる。
【0018】
以下では、図1乃至図3を用いて、本発明の要部であるマット施薬機10の詳細構成を説明する。
図1乃至図3に示すように、マット施薬機10は乗用田植機100の苗載台16の後上方に設けられ、移植作業である苗載台16の横方向往復運動や植付爪17・17・・・の植付駆動と同時に繰出部42を駆動して苗マットに肥料や農薬等の薬剤を施薬するものである。つまり、マット施薬機10は苗載台16の苗マット載置部86に対向して配置される。マット施薬機10が取り扱う薬剤は、主に粉体の原料を粒状に成形したものであるが、他の粒状の薬剤(例えば、表面にコーティングを施した粒状の薬剤)に適用することも可能である。
【0019】
本実施例の乗用田植機100は8条植えの田植機であるため、4つの苗マット載置部86・86・86・86の左右中央上方に1台のマット施薬機10が配置される。即ち、苗載台16上方左右両側に1つずつマット施薬機10・10が配設される。これは、一台のマット施薬機10によって4つの苗マット載置部86・86・86・86に施薬可能な構成としているためである。
【0020】
本実施例におけるマット施薬機10は主に薬剤ホッパ41・繰出部42・散布部43等から構成される。
まず、薬剤ホッパ41は苗マットに施薬される薬剤を貯溜する容器であって、該薬剤ホッパ41の上部には蓋41aが着脱自在に設けられている。作業者等は、該蓋41aを開けて薬剤ホッパ41の内部に薬剤を補充する。薬剤ホッパ41の下半部は漏斗状になっており、下端部には開口部が設けられている。つまり、薬剤ホッパ41に貯溜された薬剤が、自重で薬剤ホッパ41の下端部に設けられた開口部より下方の繰出部42に落下する構成になっている。
【0021】
そして、繰出部42は、前記薬剤ホッパ41に貯溜された薬剤を所定量ずつ後述する散布部43へと繰り出すものであって、その内部には図示しない繰出ロールが一方向クラッチを介して回動可能に収容されている。
詳しくは、図2及び図3に示すように、植付ケース21の後部上にロッド駆動ケース67を設け、該ロッド駆動ケース67より出力軸を突出し、該出力軸に植付爪17・17・・・を駆動する動力を分岐して伝える。該出力軸からは、下繰出用ロッド68・伝動プレート69・70・上繰出用ロッド71等を介して、図示しない繰出アームへと動力が伝達され、該繰出アームと前記ロール軸49の間に配置した一方向クラッチを介して該繰出ロール45が間欠的に一方向へ回動する構成となっている。
【0022】
図2乃至図4に示す如く、散布部43は繰出部42に連結され、繰出部42により繰り出された薬剤を導いて、苗マットへと施薬するものである。散布部43は主に分岐部材61、ガイドホース64・64・64・64、散布ノズル65・65・65・65等から構成される。
分岐部材61は繰出部42下端に連結される略漏斗状の部材であって、下端部に4箇所の開口部が設けられて、それぞれがガイドホース64・64・64・64に連結されるものである。
【0023】
図2乃至図4に示す如く、ガイドホース64・64・64・64は管状の部材であり、その上端部が分岐部材61の下端部に連結され、その下部は後述する前後ノズルステー51・52に各条ごとに連結固定されているホース支持部材60によって支持されている。各ガイドホース64の下端には散布ノズル65が枢設されている。
前後ノズルステー51・52に支持された際のガイドホース64・64・64・64の姿勢は、ガイドホース64・64・64・64の上端部が機体後方かつ上方を向き、ガイドホース64・64・64・64の下端部が機体前方かつ下方を向く、つまり、苗載台16下部方向に向くように定められている。
図3に示すように、本発明のマット施薬機10は、4条分の苗マット載置部86・86・86・86の略中央部に配設されており、本実施例における8条乗用田植機100の場合には、苗載台16の上方に2台のマット施薬機10・10が配設される。
【0024】
次に、図2乃至図4を用いて、マット施薬機10の支持構成について説明する。
支持フレーム53は、マット施薬機10・10を乗用田植機100の苗載台16の後上方に固定するための部材であって、主に、基部フレーム54・下支持柱55・上支持柱56・上横フレーム57・前ノズルステー51・後ノズルステー52・横ノズルステー59等から構成されている。
【0025】
基部フレーム54は支持フレーム53の下部を成す部材であって、前記植付ケース21の後上部に立設されながら、下支持柱55下端部を枢支するものである。詳しくは、植付ケース21の後上部にボルト固定または溶接等よって基部フレーム54の下部が固設されており、該基部フレーム54の上下中途部に下支持柱55の下端が枢支されている。そして、該基部フレーム54の上部には前後方向に向かって円弧状の長穴54bが形成されており、一方の下支持柱55の下部には、該長穴54bと略同じ高さの位置にネジ孔55bが形成されている。つまり、ネジ等を長穴54bに通して、該下支持柱55と該基部フレーム54とを締め付け固定することにより、基部フレーム54の長穴54bの範囲内において下支持柱55の下部を中心に任意の傾きで保持することが可能になっている(図2及び図4参照)。
【0026】
換言すれば、該長穴54bの範囲内において、下支持柱55を前後方向に揺動させることができ、マット施薬機10と除草剤散布機90とを前後方向に揺動させることが可能になり、マット施薬機10と除草剤散布機90とを植付部4に対して「作業位置」と後方へ回動した「退避位置」とに移動可能とし、苗載台後部上方の空間を大きくしてメンテナンス等を容易に行えるようにしている。但し、長穴54bの代わりにストッパー等により前後揺動範囲を規制する構成とすることも可能である。
【0027】
本実施例においては、前記長穴54bを貫通させるネジ等に、田植機100外側方向の端部に握り部が設けられたネジ(以下、ノブ62とする。)を使用しており、作業者等は該ノブ62を緩めることによって、基部フレーム54と下支持柱55との締め付けを緩めて下支持柱55を基部フレーム54に対して前後揺動可能とする構成になっている。逆に、該ノブ62を締め付けることによって、マット施薬機10を田植機100の走行部1に対して固定可能としている。
【0028】
そして、図2及び図4に示すように、マット施薬機10の後部には除草剤散布機90が装着されている。
該除草剤散布機90は、上部の除草剤ホッパ91や中部の除草剤繰出部92や下部の除草剤散布部93等から構成されるものであって、圃場上に殺虫殺菌剤や除草剤(以下、除草剤等とする。)を散布するための装置である。詳しくは、該除草剤ホッパ91内に貯溜されている除草剤等が、繰出部92を通って、除草剤散布部93から圃場へと散布される構成になっている。なお、除草剤散布機90は図示しないモータによって駆動され、該モータは植え付け操作部と連動されて植付作業と連動して駆動できるようにしている。
以下、除草剤散布機90のマット施薬機10への装着機構について説明する。
【0029】
前記下支持柱55の下部には、取り付けフレーム94がボルトによって固定されて後方へと突設されており、該取り付けフレーム94後上部には側方に向かってピン95が立設されている。一方、除草剤散布機90前部には掛止部材96が固設されており、該掛止部材96には前記ピン95に掛合する切欠96cが形成されている。そして、該取り付けフレーム94と掛止部材96とにはネジ孔94b・96bが形成されており、除草剤散布機90を所定の姿勢にした状態においてネジ等を該ネジ孔94b・96bに螺入することにより、該除草剤散布機90をマット施薬機10に強固に固設することが可能になっている。
【0030】
即ち、作業者等は、除草剤散布機90に固設された掛止部材96の切欠96cを、前記取り付けフレーム94のピン95に掛合してから、該ネジ孔94b・96b同士の位置を合わせてネジ等を螺入し、除草剤散布機90をマット施薬機10に装着することができるのである。
逆に、ネジ等をネジ孔94b・96bから抜いてから、切欠96cをピン95から取り外すことにより、除草剤散布機90をマット施薬機10から取り外すことができる。但し、除草剤散布機90をマット施薬機10の支持フレーム53に着脱する構成は限定するものではなく、該除草剤散布機90をパイプに嵌合したり、フックに係合したりする構成にすることも可能である。
【0031】
このように、薬剤が貯溜される薬剤ホッパ41と、該薬剤ホッパ41の薬剤を苗載台16上の苗マットに散布する散布部43と、を具備するマット施薬機10において、除草剤等を貯溜して散布する除草剤散布機90を備えたので、苗載台16の苗マットに薬剤を散布しつつ、殺虫殺菌剤や除草剤を散布することができる、つまり田植と同時に肥料等の散布と除草剤等の散布を行うことができ、作業効率を向上することができ、労力を軽減できる。
【0032】
また、前記除草剤散布機90を、前記薬剤ホッパ41及び散布部43を支持する支持フレーム53の後下部に着脱自在に装着したので、除草剤散布を植付作業や施肥作業と干渉することなく行うことができる。また、マット施薬機10を取り付けるための支持フレーム53を利用して除草剤散布機90を取り付けることが可能となり、除草剤散布を行わないとき等にマット施薬機10から除草剤散布機90を取り外すことができるので、田植機100全体のコンパクト化・軽量化を図ることができる。また、除草剤散布機90を装備したマット施薬機10の重心位置が低くなるため、機体の安定性が高くなる。
【0033】
図2乃至図4に示すように、下支持柱55及び上支持柱56は略角柱形状の部材であり、前述したように該下支持柱55の下端部が前後方向揺動可能に基部フレーム54に枢支されており、下支持柱55の上端部には上支持柱56下端部が溶接等によって固設されている。該上支持柱56は、その上端部が植付ケース21から略上方となる姿勢となるように、下支持柱55と上支持柱56が側面視「く」字状に構成されている。
該上支持柱56の上下略中央部には後上方へ向けて収納ステー63が立設されている。該収納ステー63の後部にはネジ孔63bが形成されており、後述するように前ノズルステー51のネジ孔51cとともにネジやピンを螺挿することによって、該収納ステー63と前ノズルステー51とを連結することができる構成となっている。つまり、前ノズルステー51を後方へ移動させた状態で上支持柱56を固定できる構成であれば、直接ボルト等で固定しても良く、その構成は限定するものではない。
【0034】
上横フレーム57は上支持柱56の上端に左右方向に横設される略角柱形状の部材である。なお、隣り合うマット施薬機10・10にそれぞれ対応する上横フレーム57・57を図示しない連結フレーム等で連結し、支持フレーム53の剛性を更に向上させることが可能である。
そして、該上横フレーム57の前部にマット施薬機10が取り付けられ、このようにマット施薬機10が支持フレーム53の前部に取り付けられ、除草剤散布機90が支持フレーム53の後部に取り付けられることによって、前後重量バランスが安定することになる。
【0035】
前ノズルステー51及び後ノズルステー52は、下支持柱55と上支持柱56との連結部から前方へ向けて直列に横設される棒状の部材であって、前ノズルステー51の前端部には左右方向に横ノズルステー59が横設されている。詳しくは、前ノズルステー51の前端部に横ノズルステー59が固設され、後ノズルステー52の後端部が下支持柱55と上支持柱56との連結部に溶接等によって固定されている。そして、該前ノズルステー51の後端部と後ノズルステー52の前端部にはネジ孔51b・52bが形成されており、該ネジ孔51b・52bにネジ等を螺入することによって両ノズルステー51・52を直列状態にて連結固定できる構成になっている。
そして、前ノズルステー51にはその前後中途部にもネジ孔51cが形成されており、後述するように前記収納ステー63のネジ孔63bに螺設可能になっている。但し、前ノズルステー51と後ノズルステー52とはその連結部において折り畳める構成にすることも可能である。
【0036】
該横ノズルステー59には、苗載台16の各条ごとにホース支持部材60・60・・・が溶接固定されており、それぞれのホース支持部材60・60・・・によって前記ガイドホース64・64・・・の下部が支持されている。そして、図5に示すように、該横ノズルステー59は左右中途部にて分割されており、即ち左ノズルステー59Lと右ノズルステー59Rとが回動可能に連結されて成るものである。但し、10条植えの場合には、横ノズルステー59を中央と左右両側に分割して左右両側が回動可能とされる。
詳述すると、該右ノズルステー59Rの左端部には回動連結部材59Mが溶接されており、該回動連結部材59Mは側面視逆「コ」字状に形成されて、該回動連結部材59Mの内側に左ノズルステー59Lの右端部が後水平方向に回動可能に枢支されているのである。
【0037】
そして、該回動連結部材59Mの左中部と左後部にはピン孔59f・59rが形成されており、該左ノズルステー59Lの右部にもピン孔59bが形成されている。即ち、左ノズルステー59Lのピン孔59bを左中部のピン孔59fに合わせて両者にピンを嵌入することにより、左ノズルステー59Lを右ノズルステー59Rの延長線上に固定することができ、左ノズルステー59Lのピン孔59bを左後部のピン孔59rに合わせて両者にピンを嵌入することにより、左ノズルステー59Lを該回動連結部材59Mを軸にして後方へと回動した位置にて固定することができるのである。
【0038】
このように、左ノズルステー59Lを後方へ回動することにより、ガイドホース64や散布ノズル65が後方へと移動されて、苗載台16の後方の空間を広げることが可能となり、更に、支持フレーム53を後方へ傾倒させることで更に大きな空間が得られて、苗載台16上の苗のメンテナンス等が容易にできるようになるのである。
ステー50・50は上横フレーム57から前方に突設される板状部材であり、該ステー50・50にマット施薬機10・10の薬剤ホッパ41や繰出部42が固設される。
【0039】
最後に、図2・図4・図5を用いて、マット施薬機10を田植機100の苗載台16に対して後方へと傾倒(移動)させるための作業手順について説明する。
まず、作業者等は、前記ノブ62を回動して下支持柱55と基部フレーム54との締め付けを緩め、該下支持柱55の下部に螺入された状態のノブ62とともに該下支持柱55を前記長穴54bに沿って後方へと傾倒(回動)させる。即ち、図2の状態から図4の状態へと移行させるのである。該下支持柱55が後方へと傾倒すると、ノブ62を逆方向に締め直して、再び下支持柱55と基部フレーム54とを締め付け固定する。
【0040】
そして、前記ネジ孔51b・52bからネジを取り外して、前ノズルステー51後部と後ノズルステー52前部との連結を解除して、ガイドホース64を撓ませながら前ノズルステー51を後方へとスライドさせる。そして、前ノズルステー51のネジ孔51cを前記収納ステー63のネジ孔63bの位置に合わせ、ネジやピンにて前ノズルステー51の中部を収納ステー63の後部に螺設するのである。このとき、図4に示すように、前記横ノズルステー59が後ノズルステー52と上支持柱56との連結部に当接して嵌り込むように構成すると、該横ノズルステー59が後方へ移動した状態で安定するため好ましい。
【0041】
該前ノズルステー51を後方へ移動させることによって、前ノズルステー51に連結されている横ノズルステー59が後方へと移動し、前記ホース支持部材60・60・・・を介して該横ノズルステー59に連結されているガイドホース64・64・・・や散布ノズル65・65・・・が後方へと移動する。その結果、マット施薬機10の前端(ガイドホース64や散布ノズル65)と苗載台16との間隔が広がり、作業者等が間に入って作業が行い易くなる。
【0042】
このように、走行部1と、苗マットの苗を圃場に植え付ける植付部4と、該苗マットに薬剤を散布するマット施薬機10と、を具備する田植機100において、該マット施薬機10を支持する支持フレーム53の下端を該走行部1の後部に前後揺動可能に支承し、該マット施薬機10の散布部43を支持するノズルステー51を該支持フレーム53近傍にて支持可能としたので、散布部43(マット施薬機の前端部)ごと前ノズルステー51を後方へ移動させることができるため、苗載台16とマット施薬機10との間の空間を広くすることが可能になり、作業者が苗載台16とマット施薬機10との間に入り込み易くなる。その結果、作業者等が一人しかいなくても、苗載台16上に苗マットを載置し易くなり、メンテナンスも行い易くなる。
【0043】
また、前記ノズルステー51・52を前後に分割し、該前ノズルステー51を支持フレーム53に固設された収納ステー63に連結可能としたので、簡単な構成でマット施薬機10の前端部を後方へと移動可能とできるため、安価な製造コストで作業者等が苗載台16上に苗マットを載置し易くなって、メンテナンスも行い易くなる。
【0044】
そして、図5に示すように、前記横ノズルステー59のピン孔59f・59bからピンを抜き出して左ノズルステー59Lを回動可能とし、該左ノズルステー59Lを前記回動連結部材59Mを軸にして後方へと回動させて、そのように回動させた状態にてピン孔59r・59bにピンを挿入して固定する。これによって、左ノズルステー59Lの端部が後方へと移動し、前記ホース支持部材60・60・60を介して該左ノズルステー59Lに連結されているガイドホース64・64・64や散布ノズル65・65・65が後方へと移動する。これによって、マット施薬機10の前端(ガイドホース64や散布ノズル65)と苗載台16との間隔が広がり、作業者等が間に入って作業が行い易くなる。
【0045】
このように、前記ノズルステー51の前部によって支持されながら前記散布部43を支持する横ノズルステー59を左右に分割し、該横ノズルステーの一側59Lを、田植機100の後方へと回動可能に他側59Rに連結したので、マット施薬機10の側部43・59Lを後方へ移動させることができるため、苗載台16側部とマット施薬機10の側部43・59Lとの間の距離を広くすることが可能になり、作業者が苗載台16側部とマット施薬機側部43・59Lとの間に入り込み易くなり、その結果として、作業者等が苗載台16上に苗マットを載置し易くなり、メンテナンスも行い易くなる。
【0046】
そして、乗用田植機100によって田植等の作業を行う際には、上記作業と逆の作業手順を踏むことによって、該マット施薬機10を直立若しくは回動させ、マット施薬機10と苗載台16との距離を狭めることが可能になり、マット施薬機10による苗マットへの正確な薬剤散布を行うことが可能になる。
即ち、前記左ノズルステー59Lを前方へと回動し、前記前ノズルステー51を前方へ移動させて後ノズルステー52と連結して固定し、前記マット施薬機10自体を直立状態へと回動すれば良いのである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例に係わる乗用田植機の全体構成を示した側面図。
【図2】乗用田植機後部を示した側面図。
【図3】同じく背面図。
【図4】マット施薬機を後方へ傾倒させた状態を示す側面図。
【図5】横ノズルステーを示した平面図。
【符号の説明】
【0048】
1 走行部
4 植付部
10 マット施薬機
16 苗載台
41 薬剤ホッパ
42 薬剤繰出部
43 薬剤散布部
51 ノズルステー(前ノズルステー)
52 後ノズルステー
53 支持フレーム
59 横ノズルステー
63 収納ステー
90 除草剤散布機
100 田植機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が貯溜される薬剤ホッパと、
該薬剤ホッパの薬剤を苗載台上の苗マットに散布する散布部と、を具備するマット施薬機において、
除草剤等を貯溜して散布する除草剤散布機を備えたことを特徴とするマット施薬機。
【請求項2】
前記除草剤散布機を、前記薬剤ホッパ及び散布部を支持する支持フレームの後下部に着脱自在に装着したことを特徴とする請求項1に記載のマット施薬機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−54604(P2008−54604A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236843(P2006−236843)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】