説明

マニピュレータのツール保持具

【課題】チャックを垂直状態で保持する際に、マニピュレータ自体や周辺機械の振動、作業者の接触等によりツールが離脱したり、ツールを一定の姿勢で長期にわたって安定的に保持する。マニピュレータに対してツールを正確に位置出しした状態で装着してツール自動交換を可能にする。
【解決手段】起立面に水平方向へ軸線を有して突出するセンター軸及び該センター軸から離間した位置にて水平方向に軸線を有して突出する位置決め軸を設けた固定側保持部材と、ツールに固定され、上記センター軸及び位置決め軸を軸支する軸支孔をそれぞれ有した可動側保持部材とからなると共に固定側保持部材における可動側保持部材の相対面に磁気吸着部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業ロボット等のように制御プログラムに基づいて所定の動作を反復継続するように制御されるマニピュレータのアームに取り付けられて所定動作を実行する各種ツールを着脱可能に保持するマニピュレータのツール保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
マニピュレータの一種である産業ロボットとしての成形品取出しロボットに装着されるツール(アタッチメント)としてのチャックにあっては、成形品の種類に応じて個々に製作する必要があり、樹脂成形機の近傍(成形品開放位置に至る途中または反操作側)に成形品に対応して個々に製作された複数個のチャックを保持するツール保持台を配置し、取り出す成形品に応じて成形品取出しロボットに装着されるチャックを交換できるようにしている。
【0003】
上記ツール保持台に取り付けられて各種ツール(チャック)を交換可能に保持するツール保持具としては、例えば非特許文献1に示すものが知られている。該非特許文献1に示すツール保持具は、樹脂成形機に取り付けられるマニピュレータとしての成形品取出しロボットに装着される各種成形品に応じて製作されたツールとしての各チャックを着脱可能に保持するもので、樹脂成形機における成形品開放位置に至る途中または反操作側に配置されたスタンドに取り付けられ、位置出し及び係止用の突入軸が固定された固定側保持部材及びチャックに固定され、上記突入軸が挿嵌される軸孔が形成された可動側保持部材から構成される。
【0004】
上記ツール保持具に対してチャックを水平状態で保持させる場合には、スタンドに対して固定側保持部材を、その突入軸の軸線が垂直方向を向くように固定させる。そして成形品取出しロボットのアームを、固定側保持部材の突入軸に対して可動側保持部材の軸孔が一致するように移動制御した後に突入軸に対して軸孔が挿嵌するように移動制御してチャックを水平状態で保持させる。この場合にあっては、ツール保持具は、チャックを一定の水平姿勢で長期にわたって安定的に保持させることができる。
【0005】
しかし、上記したツール保持具を使用してチャックを垂直状態で保持する場合には、スタンドに対して固定側保持部材を、その突入軸が水平方向を向くように固定し、該突入軸に対して可動側保持部材の軸孔を挿嵌させてチャックを保持することになる。
【0006】
このため、固定側保持部材に対するチャックの保持姿勢が軸孔に対する突入軸の挿嵌状態に大きく依存することになるため、樹脂成形機における可動盤の移動、成形品取出しロボットにおけるアームの移動に伴って発生する振動や作業者の接触等により軸孔から突入軸が容易に離脱したり、位置ずれし易く、スタンドに対してチャックを一定の姿勢で長期にわたって安定的に保持できない問題を有している。
【0007】
この結果、マニピュレータによるツールの自動交換を可能にするには、ツールが常に一定の姿勢で保持されていることが要求されるが、ツールの保持姿勢が乱れた場合には、マニピュレータを移動制御してツールを自動交換する際に、マニピュレータに対してツールを正確に位置出しした状態で装着させることができなかった。従って、上記した従来のツール保持具は、マニピュレータによるツールの自動交換を困難化していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】カタログ「Eins」 株式会社スター精機 Vol. 2 290頁〜295頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、従来のツール保持具によりチャックを垂直状態で保持する際には、マニピュレータ自体や周辺機械の振動、作業者の接触等によりツールが離脱し易く、ツールを一定の姿勢で長期にわたって安定的に保持できない点にある。また、マニピュレータに対してツールを正確に位置出しした状態で装着するツール自動交換を困難にする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アームに着脱可能に取付けられたツールを移動制御して所定動作を実行するマニピュレータにおいて、所定動作に応じて製作された複数のツールを垂直状態で着脱可能に保持するツール保持具であって、該ツール保持具は、起立面に水平方向へ軸線を有して突出するセンター軸及び該センター軸から離間した位置にて水平方向に軸線を有して突出する位置決め軸を設けた固定側保持部材と、ツールに固定され、上記センター軸及び位置決め軸を軸支する軸支孔をそれぞれ有した可動側保持部材とからなると共に固定側保持部材における可動側保持部材の相対面には、磁気吸着部材を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、チャックを垂直状態で保持する際に、マニピュレータ自体や周辺機械の振動、作業者の接触等によりツールが離脱したり、ツールを一定の姿勢で長期にわたって安定的に保持することができる。また、マニピュレータに対してツールを正確に位置出しした状態で装着してツール自動交換を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ツール保持具をマニピュレータとしての成形品取出し機に適用した例を示す概略斜視図である。
【図2】チャックの取付け状態及びツール保持具の分解斜視図である。
【図3】ツール着脱装置の中央縦断面図である。
【図4】固定側保持部材に対する可動側保持部材の相対状態を示す縦断面説明図である。
【図5】ツール着脱装置によるチャックの突出し状態を示す縦断面説明図である。
【図6】固定側保持部材に対する可動側保持部材の磁気吸着状態を示す縦断面説明図である。
【図7】ツール着脱装置によるチャックの固定状態を示す縦断面説明図である。
【図8】固定側保持部材から可動側保持部材を突出して離脱した状態を示す横断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、起立面に水平方向へ軸線を有して突出するセンター軸及び該センター軸から離間した位置にて水平方向に軸線を有して突出する位置決め軸を設けた固定側保持部材と、ツールに固定され、上記センター軸及び位置決め軸を軸支する軸支孔をそれぞれ有した可動側保持部材とからなると共に固定側保持部材における可動側保持部材の相対面に磁気吸着部材を設けることを主要な特徴とする。
【実施例1】
【0014】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1乃至図3において、マニピュレータとしての成形品取出しロボット1は、ツールとしてのチャック3を樹脂成形機の金型間及び成形品開放位置の間で移動制御して成形された成形品を取り出す機能を備えている。該成形品取出しロボット1は、基端部が樹脂成形機の固定盤5に固定され、樹脂成形機の中心軸線と直交する方向で樹脂成形機の操作側または反操作側へ延出する走行フレーム7上を長手方向へ往復移動するように支持される第1走行体9に、上記中心軸線と一致する方向へ延出する前後フレーム11上にて長手方向へ往復移動するように支持される第2走行体13と、該第2走行体13に、上下方向へ軸線を有し、所定のストロークで昇降移動するように支持される上下アーム15と、該上下アーム15の下部に取り付けられるチャック3により構成される。該チャック3は、図示の例では吸着パッド等の保持部材3aにより成形品を保持して成形品開放位置へ取り出す。
【0015】
これら第1及び第2走行体9・13及び上下アーム15は、数値制御可能にサーボモータ、リニアモータ等の各電動モータ(いずれも図示せず)により所定の方向へ往復移動される。また、チャック3は、樹脂成形機により成形される各成形品に対応して吸着部材やクランプ部材を配置して製作される。
【0016】
そして上記チャック3は、上下アーム15の下部に対してツール着脱装置17により固定される。該ツール着脱装置17は、本出願人が所有する特許第4126074号に係るロボットアームカップリング装置と同様の構造で、上下アーム15の下部に固定されるアーム側アタッチメント19及びチャックに固定されるツール側アタッチメント21により構成される。
【0017】
上記アーム側アタッチメント19は、ロック位置及びロック解除位置の間で移動し、外周面に複数のロック用傾斜溝19aを周方向に等間隔に有したカム部材19b、該カム部材19bをロック位置及びロック解除位置の間で移動する作動部材19c、該カム部材19bの外周面側に設けられ、ロック用傾斜溝19aに相対して配置されたロック用ボール19dをカム部材19bの移動方向と直交する半径方向へ移動可能に支持するボール支持部材19e、ロック用ボール19d間に位置するボール支持部材19eに、カム部材19bの移動方向と直交する半径方向へ移動可能に支持されるロック解除用ボール19f、ロック用傾斜溝19a間に位置するカム部材19bの外周面に設けられ、ロック用傾斜溝19aと反対方向に傾斜する複数の突出し用傾斜溝19gからなる。
【0018】
一方、ツール側アタッチメント21は、中心部に空間部を有し、カム部材19bがロック位置に移動した際に、ロック用ボール19dが係合されて両アタッチメント19・21を連結保持する複数の係合用傾斜溝21aを有したボール受け部材21b、係合用傾斜溝21a間に位置するボール受け部材21bに設けられ、係合用傾斜溝21aと反対方向に傾斜する複数の離脱用傾斜溝21cからなる。
【0019】
そして上記ツール着脱装置17は、作動部材19cを作動してカム部材19bをロック解除位置からロック位置へ移動させると、ロック用傾斜溝19aに摺接するロック用ボール19dを半径方向外側へ移動して係合用傾斜溝21aへ係合させてアーム側アタッチメント19にツール側アタッチメント21を固定させる。
【0020】
また、上記状態にて作動部材19cを復動してカム部材19bをロック位置からロック解除位置へ移動させると、係合用傾斜溝21aに係合するロック用ボール19dが半径方向内側へ移動可能な状態になると共に突出し用傾斜溝19gによりロック解除用ボール19fを半径方向外側へ移動して離脱用傾斜溝21cに摺接させることによりアーム側アタッチメント19からツール側アタッチメント21を強制的に離脱させる。
【0021】
上記ツール側アタッチメント21におけるアーム側アタッチメント19と反対側の面には、チャック3及びツール保持具23の一部を構成する可動側保持部材25が固着されている。上記可動側保持部材25は、磁気吸着可能な金属材により形成される。そして可動側保持部材25には、水平方向中央部に中央軸支孔25a及び該中央軸支孔25aから水平方向へ所定の間隔をおいた各端部に側部軸支凹部25bがそれぞれ形成されている。
【0022】
樹脂成形機外で、成形品開放位置に至る途中には、複数のツール保持具23が設けられてチャック3をそれぞれ着脱可能に保持する保持スタンド27が配置されている。該保持スタンド27は、チャック3の成形品保持面に対向する側に複数の保持アーム29が上下方向及び水平方向へ、保持されるチャック3相互が干渉しない間隔をおいて設けられている。
【0023】
そして各保持アーム29の先端部には、ツール保持具23の一部を構成する固定側保持部材31が固定されている。該固定側保持部材31は、保持アーム29の先端部に固定される取付け板31aの先端部にて垂直方向へ起立する起立板31bと、中心軸支孔21dに相対する起立板31bに固定され、水平方向に軸線を有して所定の軸線長さで突出するセンター軸31cから構成される。
【0024】
また、側部軸支凹部25bに相対する起立板31bには、水平方向に軸線を有して所定の軸線長さで突出する位置決め軸31dがそれぞれ配置され、これら位置決め軸31dは、側部軸支凹部25bに挿嵌して可動側保持部材25、従ってチャック3を所定の姿勢に位置決めする。
【0025】
なお、センター軸31cは、中央軸支孔21d内に挿嵌した際に、その先端部がチャック3に形成された孔3b及びツール側アタッチメント21のボール軸受部材21bを挿通し、アーム側アタッチメント19のカム部材19bがロック位置へ移動した際に、該カム部材19bの移動途中において先端面に当接可能な軸線長さからなる。また、位置決め軸31dは、側部軸支凹部25bに挿嵌する軸線長さからなる。
【0026】
更に、起立板31bにおけるチャック3の相対面には、例えばネオジム磁石、電磁石等からなる複数個の磁気吸着部材33が水平方向及び垂直方向へ適宜の間隔をおいて取り付けられている。
【0027】
次に、上記のように構成されたツール保持具23によるチャック3の保持作用を説明する。なお、保持スタンド27にあっては、例えばチャック3側から見た右上個所のツール保持具23には、チャック3が保持されていず、他の個所のツール保持具23には、異なるチャック3がそれぞれ保持されているとする。
【0028】
第1及び第2走行体9・13及び上下アーム15を移動制御してチャック3を、保持スタンド27におけるチャック3が保持されていないツール保持具23における固定側保持部材31のセンター軸31cが可動側保持部材25における中心軸支孔25aに、また位置決め軸31dが側部軸支凹部25bにそれぞれ相対するように位置させる。(図4参照)
【0029】
上記状態にて第2走行体13を更に前進させてセンター軸31cを中央軸支孔25a内に、また位置決め軸31dを側部軸支凹部25b内へそれぞれ突入させた後、作動部材19cを復動してカム部材19bをロック位置からロック解除位置へ移動し、係合用傾斜溝21aに係合するロック用ボール19dを半径方向内側へ移動可能にさせると共に突出し用傾斜溝19gによりロック解除用ボール19fを半径方向外側へ移動して離脱用傾斜溝21cに摺接させることによりアーム側アタッチメント19からツール側アタッチメント21を強制的に離脱させる。(図5参照)
【0030】
上記動作によりアーム側アタッチメント19からツール側アタッチメント21が強制的に離脱されると、固定側保持部材31に対して可動側保持部材25、従ってチャック3が磁気吸着部材33により磁気吸着されてチャック3が保持スタンド27に保持される。(図6参照)
【0031】
なお、アーム側アタッチメント19の作動部材19cを作動させるタイミングは、例えば固定側保持部材31に光学的検出器、ホール素子等の検知器(図示せず)を取付け、固定側保持部材31に対して可動側保持部材25が所定の範囲内に近接した際に、該検知器から出力される信号に基づいて作動部材19cを作動させればよい。
【0032】
これによりチャック3は、保持スタンド27の固定側保持部材31に対し、センター軸31cが中央軸支孔25a内に、また位置決め軸31dが側部軸支凹部25b内に挿嵌された位置出し状態及び回止め状態で、かつ磁気吸着部材33により磁気吸着された垂直状態で保持される。
【0033】
なお、アーム側アタッチメント19に対するツール側アタッチメント21のロック解除動作及び突出し動作は、第2走行体13の前進動作時にセンター軸31cが中央軸支孔25a内に、また位置決め軸31dが側部軸支凹部25b内へそれぞれ突入したタイミングで実行してもよい。この場合、突出されたツール側アタッチメント21に固定されたチャック3は、磁気吸着部材33の磁気吸着力により固定側保持部材31に保持される。
【0034】
一方、上記のように上下アーム15に成形品に対応する別のチャック3を固定するには、上記と同様に第1及び第2走行体9・13及び上下アーム15を移動制御してアーム側アタッチメント19を、保持スタンド27に保持されたチャック3に固定されたツール側アタッチメント21に相対させる。
【0035】
次に、第2走行体13を前進制御してツール側アタッチメント21にアーム側アタッチメント19を挿嵌した後に作動部材19cを作動してカム部材19bをロック解除位置からロック位置へ移動し、ロック用傾斜溝19aに摺接するロック用ボール19dを半径方向外側へ移動して係合用傾斜溝21aへ係合させることによりアーム側アタッチメント19にツール側アタッチメント21を固定させる。これにより上下アーム15の下部にチャック3が固定される。
【0036】
上記したカム部材19bがロック位置へ移動する途中で、ロック用ボール19dが係合用傾斜溝21aが一部係合した際に、移動するカム部材19bをセンター軸31cの先端面に当接させて固定側保持部材31からツール側アタッチメント21及びチャック3に固定された可動側保持部材25を、磁気吸着部材33の磁気吸着力に抗して強制的に離脱させた後、第2走行体13を後退移動させて新たに取り出そうとする成形品に応じた所定のチャック3の装着作業を完了する。(図7及び図8参照)
【0037】
本実施例は、保持スタンド27の固定側保持部材31に対してチャック3を、センター軸31cが中央軸支孔25a内に、また位置決め軸31dが側部軸支凹部25b内に挿嵌した位置出しした状態で、かつ磁気吸着部材33により磁気吸着された垂直状態で保持させることができる。
【0038】
このため、保持スタンド27によるチャック3の保持時においては、装置等の振動や作業者の接触によりチャック3が保持スタンド27から落ちたり、保持姿勢の乱れを防止した状態で保持し、チャック3の自動交換を可能にさせる。
【0039】
また、保持スタンド27にセットされた別のチャック3を装着する際には、アーム側アタッチメント19をツール側アタッチメント21に挿嵌した状態でカム部材19bをロック位置へ移動してロック用ボール19dが係合用傾斜溝21aが一部係合した際に、移動するカム部材19bをセンター軸31cの先端面に当接させて固定側保持部材31からツール側アタッチメント21及びチャック3に固定された可動側保持部材25を、磁気吸着部材33の磁気吸着力に抗して強制的に離脱させて保持解除を確実に行うことができる。
【0040】
上記説明は、アーム側アタッチメント19がツール側アタッチメント21に挿嵌した状態でカム部材19bをロック位置へ移動し、移動するカム部材19bをセンター軸31cの先端面に当接させて固定側保持部材31からツール側アタッチメント21及びチャック3に固定された可動側保持部材25を、磁気吸着部材33の磁気吸着力に抗して強制的に離脱させたが、第2走行体13の後退移動力により磁気吸着部材33による磁気吸着力に抗して強制的に離脱させる構成としてもよい。
【0041】
また、固定側保持部材31におけるセンター軸31c及び位置決め軸31dの少なくとも位置決め軸31dを、例えばエアーシリンダや電磁ソレノイド等の作動部材により突出可能に構成し、位置決め軸31dを作動部材の作動により可動側保持部材25側へ突出させて固定側保持部材31からツール側アタッチメント21及びチャック3が固定された可動側保持部材25を、磁気吸着部材33の磁気吸着力に抗して強制的に離脱させる構成としてもよい。
【0042】
また、磁気吸着部材33を永久磁石としたが、電磁石で構成してもよい。この場合にあっては、第2走行体13を後退移動させるタイミングで電磁石の磁気駆動をOFF制御することにより固定側保持部材31からチャック3を容易に離脱させることができる。
【0043】
上記説明は、可動側保持部材25を磁気吸着可能な鉄、ステンレス等の金属材で構成したが、該可動側保持部材25は、チャック3に固定されて一体に移動される。このため、チャック3の移動応答性を高めて高速移動を可能にするには、可動側保持部材25を、アルミニウム(アルミニウム合金を含む。)等で、非磁気吸着特性を有した金属材で形成するのが望ましい。
【0044】
この場合にあっては、固定側保持部材31に設けられた磁気吸着部材33による可動側保持部材25の磁気吸着を可能にするため、磁気吸着部材33に対応する個所に上記した被磁気吸着金属材を固着した構成としてもよい。
【0045】
上記説明においては、保持スタンド27を樹脂成形機に操作側で、成形品開放位置に至る途中にて上下アーム15の下部に垂直状態で取り付けられたチャック3をそのままの姿勢で保持する態様としたが、上下アーム15の下部に対してツール着脱装置17を含むチャック3を180度、回動する姿勢回動ユニット(図示せず)を設けて取り付けて姿勢を回動制御する構成にあっては、保持スタンド27を、樹脂成形機の操作側で、走行フレーム7の下方に配置してもよい。
【0046】
同様に、走行フレーム7の走行原点側を樹脂成形機の反操作側へ延出し、保持スタンド27を樹脂成形機の反操作側へ配置してもよいことは、勿論である。
【0047】
また、上記実施例は、マニピュレータを成形品取出しロボットを例に説明したが、各種産業ロボットに適用することができる。その場合においては、アームに装着されるツールは、各産業ロボットに要求される動作を実行するためのツールとすればよい。また、保持スタンドにおける27におけるツールの保持姿勢を垂直状態としたが、本発明にあっては、ツールを水平状態で保持できるように固定側保持部材を、センター軸及び位置決め軸の軸線が垂直方向を向くように取り付けた構成のものを使用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 マニピュレータとしての成形品取出しロボット
3 ツールとしてのチャック
3a 保持部材
3b 孔
5 固定盤
7 走行フレーム
9 第1走行体
11 前後フレーム
13 第2走行体
15 上下アーム
17 ツール着脱装置
19 アーム側アタッチメント
19a ロック用傾斜溝
19b カム部材
19c 作動部材
19d ロック用ボール
19e ボール支持部材
19f ロック解除用ボール
19g 突出し用傾斜溝
21 ツール側アタッチメント
21a 係合用傾斜溝
21b ボール受け部材
21c 離脱用傾斜溝
23 ツール保持具
25 可動側保持部材
25a 中央軸支孔
25b 側部軸支凹部
27 保持スタンド
29 保持アーム
31 固定側保持部材
31a 取付け板
31b 起立板
31c センター軸
31d 位置決め軸
33 磁気吸着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームに着脱可能に取付けられたツールを移動制御して所定動作を実行するマニピュレータにおいて、
所定動作に応じて製作された複数のツールを垂直状態で着脱可能に保持するツール保持具であって、
該ツール保持具は、
起立面に水平方向へ軸線を有して突出するセンター軸及び該センター軸から離間した位置にて水平方向に軸線を有して突出する位置決め軸を設けた固定側保持部材と、
ツールに固定され、上記センター軸及び位置決め軸をそれぞれ軸支する軸支孔を有した可動側保持部材とからなると共に、
固定側保持部材における可動側保持部材の相対面には、磁気吸着部材を設けたことを特徴とするマニピュレータのツール保持具。
【請求項2】
請求項1において、位置決め軸を、対応する軸支孔内に挿嵌する位置と可動側保持部材が固定側保持部材から離間する位置の間で移動させる作動部材を設け、固定側保持部材に対して磁気吸着部材による可動側保持部材の磁気吸着を強制的に解除可能にしたマニピュレータのツール保持具。
【請求項3】
請求項2において、磁気吸着部材は、永久磁石としたマニピュレータのツール保持具。
【請求項4】
請求項1において、磁気吸着部材は、電磁石としたマニピュレータのツール保持具。
【請求項5】
請求項1において、ツールは、マニピュレータのアームに対してツール着脱手段を介して着脱可能に取付けたマニピュレータのツール保持具。
【請求項6】
請求項5において、ツール着脱手段は、アーム側に固定されるアーム側アタッチメント及びツール側に固定されるツール側アタッチメントからなり、アーム側アタッチメントは、ロック位置及びロック解除位置の間で移動し、外周面に複数のロック用傾斜溝が形成されたカム部材、該カム部材をロック位置及びロック解除位置の間で移動する作動部材、該カム部材の外周面側に設けられ、ロック用傾斜溝に相対して配置されたロック用ボールをカム部材の移動方向と直交する半径方向へ移動可能に支持するボール支持部材からなると共にツール側アタッチメントは、カム部材がロック位置に移動した際に、ロック用ボールが係合される複数の係合用傾斜溝が形成されたボール受け部材を備えたマニピュレータのツール保持具。
【請求項7】
請求項5において、ツール着脱手段は、アーム側に固定されるアーム側アタッチメント及びツール側に固定されるツール側アタッチメントからなり、アーム側アタッチメントは、ロック位置及びロック解除位置の間で移動し、外周面に複数のロック用傾斜溝が形成されたカム部材、該カム部材をロック位置及びロック解除位置の間で移動する作動部材、該カム部材の外周面側に設けられ、ロック用傾斜溝に相対して配置されたロック用ボールをカム部材の移動方向と直交する半径方向へ移動可能に支持するボール支持部材、ロック用ボール間に位置するボール支持部材に、カム部材の移動方向と直交する半径方向へ移動可能に支持されるロック解除用ボール、ロック用傾斜溝間に位置するカム部材の外周面に形成され、ロック用傾斜溝と反対方向に傾斜する複数の突出し用傾斜溝からなると共にツール側アタッチメントは、カム部材がロック位置に移動した際に、ロック用ボールが係合される複数の係合用傾斜溝を有したボール受け部材、係合用傾斜溝間に位置するボール受け部材に形成され、係合用傾斜溝と反対方向に傾斜する複数の離脱用傾斜溝からなるマニピュレータのツール保持具。
【請求項8】
請求項6及び請求項7のいずれかにおいて、カム部材は、固定側保持部材に対して可動側保持部材が磁気吸着部材により磁気吸着された状態で、かつアーム側アタッチメントがツール側アタッチメントに挿嵌された状態でロック解除位置からロック位置へ移動する際に、センター軸に当接して固定側保持部材から可動側保持部材を磁気吸着力に抗して強制的に離脱可能にしたマニピュレータのツール保持具。
【請求項9】
請求項1において、ツール側保持部材は、低比重で非磁気吸着金属材からなると共に磁気吸着部材に相対する個所に被磁気吸着金属材を設けたマニピュレータのツール保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−255434(P2011−255434A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130126(P2010−130126)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000132231)株式会社スター精機 (47)
【Fターム(参考)】