説明

マニピュレータシステムの制御装置、マニピュレータシステム、及びマニピュレータシステムの制御方法

【課題】マニピュレータシステム利用上の手間を省き、使い勝手を向上させるマニピュレータシステムの制御装置、該制御装置を具備するマニピュレータシステム、及びマニピュレータシステムの制御方法を提供すること。
【解決手段】マニピュレータシステムに、次のようなスレーブ制御回路400を具備させる。スレーブ制御回路400は、当該マニピュレータシステムの終了時に、その終了態様を示す終了識別情報を生成し、該終了識別情報を記憶し、当該マニピュレータシステムの起動時に、前記終了識別情報を読み出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマニピュレータシステムの制御装置、マニピュレータシステム、及びマニピュレータシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットを用いた医療処置に係る技術について種々の提案が為されている。特に外科分野においては、多自由度アームを有する多自由度マニピュレータによって患者を処置する医療用マニピュレータシステムについて種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、次のような技術が開示されている。
【0003】
すなわち、特許文献1には、作業を行う作業部と、操作指令を生成する操作部と、前記操作部の操作指令に基づき前記作業部を駆動するための駆動部と、前記駆動部の駆動力を前記作業部に伝達するための動力伝達機構と、前記操作部の操作指令に基づき前記駆動部を制御する制御部とを備える医療用マニピュレータが開示されている。この医療用マニピュレータでは、前記動力伝達機構が、前記駆動部側にある第1動力伝達部と、前記第1動力伝達部と前記駆動部との間に設けられた減速機と、前記作業部側にあり前記第1動力伝達部と結合分離自在である第2動力伝達部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3680050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医療用マニピュレータシステムが強制終了(例えば、非常停止スイッチがオンにされることによる終了や電力供給が突然遮断されることによる終了等;通常の終了処理手順によらない終了)された後に、当該医療用マニピュレータシステムを再起動する際には、当然ながら当該医療用マニピュレータシステムを初期化処理する等の或る種の対応が必要となる。従って、このような場合には、当該医療用マニピュレータシステムの操作者は、前回使用時の終了が強制終了であったのか、正常終了(強制終了以外の終了;通常の終了処理手順による終了)であったのかを知る必要がある。
【0006】
ここで、特許文献1に開示されている医療用マニピュレータは、前回の終了が強制終了であったかのか正常終了であったのかをユーザが判定可能なように構成されている。具体的には、この判定は、当該医療用マニピュレータの関節部が真っ直ぐな状態で終了しているか否かに基づく判定である。
【0007】
従って、当該医療用マニピュレータの前回の終了状態が、当該医療用マニピュレータの関節部の状態を明確に判別できる状態ではない場合(例えば当該関節部が僅かに曲がっている場合等)には、前記判定を正確に行うことができない。また、当該医療用マニピュレータの関節部が真っ直ぐであっても、強制終了により終了されている場合もある。
【0008】
このような事情から、特許文献1に開示されている技術を適用する場合には、当該医療用マニピュレータの使用を終了する度に、その終了態様(強制終了であるのか正常終了であるのか)を別途台帳等により管理する必要がある。従って、当該管理に手間が掛かってしまい、使い勝手が良いとはいえない。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、マニピュレータシステム利用上の手間を省き、使い勝手を向上させるマニピュレータシステムの制御装置、該制御装置を具備するマニピュレータシステム、及びマニピュレータシステムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様のマニピュレータシステムの制御装置は、
当該マニピュレータシステムの終了時に、その終了態様を示す終了識別情報を生成する情報生成部と、
前記終了識別情報を記憶する記憶部と、
当該マニピュレータシステムの起動時に、前記終了識別情報を読み出す読み出し部と、
を具備することを特徴とする。
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の第2の態様のマニピュレータシステムは、
作業を行う作業部と、
操作指令を生成する操作部と、
前記操作部の操作指令に基づいて前記作業部の動作制御を行う制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
当該マニピュレータシステムの終了時に、その終了態様を示す終了識別情報を生成する情報生成部と、
前記終了識別情報を記憶する記憶部と、
当該マニピュレータシステムの起動時に、前記終了識別情報を読み出す読み出し部と、
前記読み出し部により読み出された前記終了識別情報と、前記操作部により生成された操作指令と、に基づいて、前記作業部を制御する動作制御部と、
を有する
ことを特徴とする。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第3の態様のマニピュレータシステムの制御方法は、
当該マニピュレータシステムの前回の終了態様を示す終了識別情報を読み込み、
前記終了識別情報に基づいて、前回の終了態様が強制終了であるか否かを判定し、
前回の終了態様が強制終了である場合には、その旨を操作者に提示し、
前記操作者により当該マニピュレータシステムの初期化処理操作が行われたか否かを判定し、
前記初期化処理操作が行われた場合には、当該マニピュレータシステムの初期化処理を行い、
前記初期化処理を行った後、作業を行う作業部の動作制御を開始し、
当該マニピュレータシステムが終了される際に、当該終了の態様を示す終了識別情報を生成して記憶する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マニピュレータシステム利用上の手間を省き、使い勝手を向上させるマニピュレータシステムの制御装置、該制御装置を具備するマニピュレータシステム、及びマニピュレータシステムの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る医療用マニピュレータシステムの一構成例を示す図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る医療用マニピュレータシステムのスレーブ制御回路による動作制御のフローチャートを示す図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る医療用マニピュレータシステムのスレーブ制御回路による動作制御のフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る医療用マニピュレータシステムの一構成例を示す図である。本第1実施形態においては、マスタ・スレーブ方式の医療用マニピュレータシステムへの適用例を説明する。
【0016】
ここで、マスタ・スレーブ方式の医療用マニピュレータシステムとは、マスターアームとスレーブアームとからなる2種のアームを有し、マスターアームの動作に追従させるようにしてスレーブアームを遠隔制御するシステムを指す。
図1に示す医療用マニピュレータシステムは、手術台100と、スレーブアーム200a,200b,200c,200dと、スレーブ制御回路400と、マスターアーム500a,500bと、操作部600と、入力処理回路700と、画像処理回路800と、ディスプレイ900a,900bと、提示部50A,50Bと、を有する。
【0017】
前記手術台100は、観察・処置の対象となる患者1が載置される台である。この手術台100の近傍には、複数のスレーブアーム200a、200b、200c、200dが設置されている。なお、スレーブアーム200a,200b,200c,200dを手術台100に設置しても良い。
【0018】
前記スレーブアーム200a、200b、200c、200dは、それぞれ複数の多自由度関節を有する。スレーブアーム200a、200b、200c、200dは、各関節を湾曲させることによって、手術台100に載置された患者1に対してスレーブアーム200a,200b,200c,200dの先端側(患者1の体腔に近い側)に装着された処置具や観察器具等の各種術具を位置決めする。
【0019】
これらスレーブアーム200a,200b,200c,200dの各関節は、各々のアーム内に設けられた動力部によって個別に駆動される。この動力部としては、例えばインクリメンタルエンコーダや減速器等を備えたサーボ機構を有するモータ(サーボモータ)が用いられる。このサーボモータの動作制御は、スレーブ制御回路400によって行われる。
【0020】
さらに、スレーブアーム200a,200b,200c,200dは、各々の先端側に装着される術具240a,240b,240c,240dを駆動するための複数の動力部も有している。この動力部も例えばサーボモータが用いられ、このサーボモータの動作制御もスレーブ制御回路400によって行われる。
【0021】
スレーブアーム200a,200b,200c,200dの動力部が駆動された場合には、モータの駆動量が位置検出器によって検出される。位置検出器からの検出信号はスレーブ制御回路400に入力され、この検出信号により、スレーブアーム200a,200b,200c,200dの駆動量がスレーブ制御回路400において検出される。
【0022】
前記術具240a,240b,240c,240dは、複数の自由度を有する関節部を有し、患者1の体壁に開けられた図示しない挿入孔から患者1の体腔内に挿入される。また、これら術具240a,240b,240c,240dは、先端部が湾曲駆動及び回転駆動可能なように構成されている。
【0023】
前記湾曲駆動は、例えば、スレーブアーム200a,200b,200c,200d内にそれぞれ設けられたサーボモータを駆動させて術具240a,240b,240c,240d内に挿通配置されているワイヤを押し引き操作することによって行われる。
【0024】
前記回転駆動は、例えばスレーブアーム200a,200b,200c.200d内にそれぞれ設けられたサーボモータを駆動させて術具240a,240b,240c,240d内にそれぞれ設けられた回転機構を作動させたりすることによって行われる。さらに、術具の種類によっては、術具の先端に開閉機構が設けられている。この開閉機構も、例えばスレーブアーム200a,200b,200c,200dにそれぞれ設けられたサーボモータを駆動させて術具内に挿通配置されたワイヤを押し引き操作することにより作動される。
【0025】
なお、図1において符号240eが付されているのは交換用術具であり、上述の術具240a〜240dと交換可能に構成されている。このような術具の交換作業は、例えば助手2によって行われる。
本第1実施形態においては、図1に示す4本のスレーブアーム200a,200b,200c,200dのうち、例えばスレーブアーム200a、200b、200dが処置用のスレーブアームとして用いられるとする。この場合、これらスレーブアーム200a、200b、200dには、術具240a、240b、240dとして各種の外科手術器具が装着される。
【0026】
なお、本第1実施形態における外科手術器具とは、例えばメスや鋏やリトラクタ等の、患者1の体内の組織部位に対して処置や操作を行うための術具を言うものとする。また、スレーブアーム200cが観察用のカメラアームとして用いられる場合、スレーブアーム200cには、術具240cとして各種の観察器具が装着される。本第1実施形態における観察器具とは、電子内視鏡等の、患者1の体内の組織部位を観察するための術具を言うものとする。また、術具の交換作業は、例えば助手2によって行われる。
【0027】
前記スレーブ制御回路400は、例えばCPUやメモリ等を有する制御手段である。このスレーブ制御回路400は、スレーブアーム200a,200b,200c,200dの制御を行うための所定のプログラムを記憶しており、入力処理回路700からの制御信号に従って、スレーブアーム200a,200b,200c,200d及び/又は術具240a,240b,240c,240dの動作を制御する。
【0028】
すなわち、スレーブ制御回路400は、入力処理回路700からの制御信号に基づいて、操作者3によって操作されたマスターアームの操作対象のスレーブアーム(又は術具)を特定し、該特定したスレーブアーム(又は術具)に操作者3のマスターアームの操作量に対応した動きをさせるために必要な駆動量を演算する。
【0029】
そして、スレーブ制御回路400は、算出した駆動量に応じてマスターアームの操作対象のスレーブアームの動作を制御する。この際、スレーブ制御回路400は、対応したスレーブアームに駆動信号を入力するとともに、対応したスレーブアームの動作に応じて動力部の位置検出器から入力されてくる検出信号に応じて、操作対象のスレーブアームの駆動量が目標の駆動量となるように駆動信号の大きさや極性を制御する。
【0030】
また、スレーブ制御回路400は、スレーブアーム200cに装着された観察器具から画像信号が入力されてきた場合には、入力された画像信号を画像処理回路800に出力することも行う。
さらに、スレーブ制御回路400は、記憶部400mを備えている。スレーブ制御回路400は、当該医療用マニピュレータシステムの終了時に、当該時点における各スレーブアーム及び各術具の位置・姿勢に係る情報(以下、位置・姿勢情報と称する)を生成して記憶部400mに書き込む。また、スレーブ制御回路400は、当該医療用マニピュレータシステムの終了時に、その終了態様を示す情報(以下、終了識別情報と称する)を生成して記憶部400mに書き込む。具体的には、前記終了識別情報とは、例えば強制終了による終了であることを示すフラグまたは正常終了による終了であることを示すフラグである。記憶部400mは、読み取り及び書き込みの両方が可能な記憶デバイスであって、且つ、当該医療用マニピュレータシステムの停止中も記憶を保持できる記憶デバイスである。この記憶部400mとしては、例えばハードディスクや不揮発メモリなどを挙げることができる。
なお、前記記憶部400mは、必ずしもスレーブ制御回路400内に設ける必要はなく、例えばスレーブ制御回路400とは別体として設けても勿論よい。
【0031】
そして、当該医療用マニピュレータシステムの起動時には、スレーブ制御回路400は、位置・姿勢情報及び終了識別情報を読み込んで、前回の終了が強制終了であるか否かを判定し、該判定結果に基づいて所定の処理(後述する図2に示すフローチャートに従った処理)を実行する。
【0032】
前記提示手段50Aは、スレーブ制御回路400の動作制御により、前回の終了が強制終了である場合には、その旨を操作者3や助手2に認知させる為の音声出力や発光等を行うスピーカやライト等の音声出力手段・発光手段である。
前記提示手段50Bは、例えば液晶ディスプレイで構成されている。当該医療用マニピュレータシステムの前回の終了が強制終了である場合には、次回の起動時に、その旨を操作者3や助手2に認知させる為の情報が、スレーブ制御回路400から画像処理回路800に入力される。画像処理回路800は、この情報に対応する画像データを生成し、提示手段50Bに出力する。そして、提示手段50Bは、画像処理回路800から入力された“前回の終了が強制終了である旨を操作者3や助手2に認知させる為の画像データ”を表示する。
【0033】
前記マスターアーム500a、500bは、複数のリンク機構で構成されている。リンク機構を構成する各リンクには例えばインクリメンタルエンコーダ等の位置検出器が設けられている。この位置検出器によって各リンクの動作を検知することで、マスターアーム500a、500bの操作量が入力処理回路700において検出される。
【0034】
なお、図1に示す例においては、マスターアーム500aが操作者3の右手によって操作されるアームであり、マスターアーム500bが操作者3の左手によって操作されるアームである。このように、図1は、2本のマスターアーム500a、500bを用いて4本のスレーブアームを操作する場合の例を示している。このように構成した場合、マスターアームの操作対象のスレーブアームを適宜切り替える必要が生じる。このような切り替えは、例えば操作者3の操作部600の操作によって行われる。
【0035】
なお、マスターアームの本数とスレーブアームの本数とを同数とすることで操作対象を1対1の対応とすれば、このような切り替えは不要である。
前記操作部600は、マスターアーム500a、500bの操作対象のスレーブアームを切り替える為の切替ボタン(以下、単に切替ボタンと称する)や、各マスターアームと各スレーブアームとの動作比率を変更するスケーリング変更スイッチ、システムを緊急停止させたりする為のフットスイッチ等の各種の操作部材を有している。操作者3によって操作部600を構成する何れかの操作部材が操作された場合には、対応する操作部材の操作に応じた操作信号が操作部600から入力処理回路700に入力される。
【0036】
前記入力処理回路700は、マスターアーム500a、500bからの操作信号及び操作部600からの操作信号を解析し、操作信号の解析結果に従って本医療用マニピュレータシステムを制御するための制御信号を生成してスレーブ制御回路400に入力する。
【0037】
前記画像処理回路800は、スレーブ制御回路400から入力された画像信号を表示させるための各種の画像処理を施して、操作者用ディスプレイ900a、助手用ディスプレイ900bにおける表示用の画像データを生成する。
また、当該医療用マニピュレータシステムの前回の終了が強制終了である場合には、次回の起動時に、その旨を操作者3や助手2に認知させる為の画像信号が、スレーブ制御回路400から画像処理回路800に入力される。画像処理回路800は、この画像信号に所定の画像処理を施して画像データを生成し、操作者用ディスプレイ900a及び助手用ディスプレイ900bに出力する。
【0038】
前記操作者用ディスプレイ900a及び助手用ディスプレイ900bは、例えば液晶ディスプレイで構成され、観察器具を介して取得された画像信号に従って画像処理回路800において生成された画像データに基づく画像を表示する。また、前回の終了が強制終了である場合には、その旨を操作者3や助手2に認知させる為の画像データが画像処理回路800から入力され、該画像データを表示する。
【0039】
図2は、本第1実施形態に係る医療用マニピュレータシステムのスレーブ制御回路400による動作制御(当該医療用マニピュレータシステムの起動/終了に係る処理)のフローチャートを示す図である。なお、当該医療用マニピュレータシステム各部の詳細な動作は上述した通りであるので、ここでは主として処理の流れを説明する。
【0040】
まず、当該医療用マニピュレータシステムが起動されるとシステムチェック等の必須の初期化処理(図示せず)を行い、続いてスレーブ制御回路400は、記憶部400mから終了識別情報を読み込み(ステップS1)、当該医療用マニピュレータシステムの前回の終了が強制終了によるものであるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、スレーブ制御回路400は、記憶部400mから強制終了を示すフラグを読み込んだ場合には、当該医療用マニピュレータシステムの前回の終了が強制終了によるものであると判定する(ステップS2をYESに分岐)。他方、スレーブ制御回路400は、記憶部400mから正常終了を示すフラグを読み込んだ場合には、当該医療用マニピュレータシステムの前回の終了が正常終了によるものであると判定する(ステップS2をNOに分岐)。
【0041】
前記ステップS2をYESに分岐する場合、スレーブ制御回路400は、提示手段50Aを動作制御して、“当該医療用マニピュレータシステムの前回の終了が強制終了によるものであることをユーザに認知させる為の”所定の音声出力及び/または発光を行わせる(ステップS3)。さらに、このステップS3においては、スレーブ制御回路400は、“当該医療用マニピュレータシステムの前回の終了が強制終了によるものであることを示す”画像データを画像処理回路800に生成させ、該画像データを提示手段50B、操作者用ディスプレイ900a、及び助手用ディスプレイ900bに表示させる。
【0042】
なお、前記ステップS3において、当該医療用マニピュレータシステムの前回の終了が強制終了によるものである旨を操作者3及び助手2に提示すると共に/提示する代わりに、スレーブ制御回路400は、当該医療用マニピュレータシステムを動作停止させる処理や術具を抜去位置(患者1の体腔から抜き去った位置)まで後退させる処理等を行っても勿論よい。
【0043】
前記ステップS3における処理を終えると、スレーブ制御回路400は、初期化処理(例えば必須の初期化処理であるシステムチェック処理に加えて、通常は必須ではない初期化処理である可動域確認処理や原点検出処理等)する制御信号が入力処理回路700から送信されてきたか否かを判定する(ステップS4)。換言すれば、このステップS4は、当該医療用マニピュレータシステムを初期化処理する操作が操作者3により行われたか否かを判定するステップである。
【0044】
このように、操作者3によって初期化処理する操作が行われて初めて初期化処理するように構成することで、操作者3の意思に依らずにスレーブアーム200a,200b,200c,200dや術具240a,240b,240c,240dが動作してしまうことを防ぐことができる。しかしながら、このステップS4における処理を行わずに、強制的に初期化処理を実行しても勿論よい。
【0045】
このステップS4をYESに分岐する場合には、スレーブ制御回路400は、上述の初期化処理を実行する(ステップS5)。このステップS5における処理を終えた後/前記ステップS4をNOに分岐する場合には、後述するステップS8に移行する。ステップS4をNOに分岐する場合とは、一刻を争うような緊急時などの場合である。例えば、操作者や技士(不図示)が、初期化処理無しでマニピュレータの操作が必要且つ可能であると判断した場合に、そのようなマニピュレータ動作を実行する為に、ステップS4をNOに分岐する為の操作を行う。
ところで、ステップS2をNOに分岐する場合(当該医療用マニピュレータシステムの前回の終了が正常終了によるものである場合)は、スレーブ制御回路400は記憶部400mから位置・姿勢情報を読み込む(ステップS6)。続いて、既に記憶部400mから読み込み済みの情報(前記ステップS1において読み込んだ終了識別情報と、前記ステップS6において読み込んだ位置・姿勢情報と)を記憶部400mから消去する(ステップS7)。
【0046】
なお、図2のフローチャートには示していないが、前記ステップS6において読み込んだ位置・姿勢情報は、後述するステップS8における動作制御の開始前まで/開始の際に、例えば原点検出処理等の初期化処理に適宜利用する。このようにすることで、システム開始時に毎回原点検出処理などをする必要がなくなるので、起動時間の短縮等が実現して利便性が向上する。また、スレーブアームや術具については、電源OFF時に動作してしまわないよう、駆動部に適当な減速比を設定して駆動可能に構成したり、移動時や収納時に他の機器や人などと衝突しないように設計や管理をすることが望ましい。
上述のステップS1乃至ステップS7において、当該医療用マニピュレータシステムの前回の終了状態に応じた処理を行った後、スレーブ制御回路400は、操作者3による操作部600の操作に従って、スレーブアーム200a,200b,200c,200d及び術具240a,240b,240c,240dの動作制御を開始する(ステップS8)。
【0047】
このステップS8における動作制御の開始後、スレーブ制御回路400は、当該医療用マニピュレータシステムが強制終了させられたか否かを判定する(ステップS9)。このステップS9をYESに分岐する場合は、スレーブ制御回路400は終了識別情報として強制終了を示すフラグを記憶部400mに書き込んで(ステップS10)、当該医療用マニピュレータシステムを終了させる。
【0048】
ところで、前記ステップS9をNOに分岐する場合、スレーブ制御回路400は、当該医療用マニピュレータシステムが正常終了操作されたか否かを判定する(ステップS11)。このステップS11をNOに分岐する場合は、前記ステップS8へ移行する。
【0049】
他方、ステップS11をYESに分岐する場合、スレーブ制御回路400は、当該時点における位置・姿勢情報を記憶部400mに書き込む(ステップS12)。このステップS12において位置・姿勢情報を記憶部400mに書き込んでおくことにより、次回の起動時に原点検出処理等の初期化処理を省略することが可能となる。
【0050】
続いて、終了識別情報として正常終了を示すフラグを記憶部400mに書き込み(ステップS13)、当該医療用マニピュレータシステムを終了させる。
以上説明したように、本第1実施形態によれば、マニピュレータシステム利用上の手間を省き、使い勝手を向上させるマニピュレータシステムの制御装置、該制御装置を具備するマニピュレータシステム、及びマニピュレータシステムの制御方法を提供することができる。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る医療用マニピュレータシステムについて説明する。説明の重複を避ける為、第1実施形態との相違点を説明する。前記第1実施形態と本第2実施形態との主な相違点の一つは、強制終了を示すフラグの生成の有無である。
【0051】
図3は、本発明の第2実施形態に係る医療用マニピュレータシステムのスレーブ制御回路400による動作制御のフローチャートを示す図である。同フローチャートにおいて、図2に示すフローチャートと同様のステップ番号が付されているステップは、同番号のステップにおける処理と同様の処理を行うステップである。
【0052】
前記スレーブ制御回路400は、前記ステップS8において各スレーブアーム及び各術具の動作制御を開始した後、当該医療用マニピュレータシステムが正常終了操作されたか否かを判定する(ステップS29)。このステップS29をNOに分岐する場合、前記ステップS8に移行する。
【0053】
他方、ステップS29をYESに分岐する場合、スレーブ制御回路400は、当該時点における位置・姿勢情報を記憶部400mに書き込む(ステップS30)。このステップS30において位置・姿勢情報を記憶部400mに書き込んでおくことにより、次回の起動時に原点検出処理等の初期化処理を省略することが可能となる。
【0054】
続いて、終了識別情報として正常終了を示すフラグを生成して記憶部400mに書き込み(ステップS31)、当該医療用マニピュレータシステムを終了させる(ステップS32)。
本第2実施形態に係る医療用マニピュレータシステムでは、上述した終了処理を行う為(強制終了を示すフラグを生成しない為)、ステップS2における前回終了態様の判定では、ステップS1において正常終了を示すフラグが読み出されていなければ強制終了であると判定する。
【0055】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、第1実施形態に係るマニピュレータシステムの制御装置、該制御装置を具備するマニピュレータシステム、及びマニピュレータシステムの制御方法と同様の効果を奏するマニピュレータシステムの制御装置、該制御装置を具備するマニピュレータシステム、及びマニピュレータシステムの制御方法を提供することができる。
【0056】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0057】
1…患者、 2…助手、 3…操作者、 50A,50B…提示部、 100…手術台、 200a,200b,200c,200d…スレーブアーム、 240a,240b,240c,240d…術具、 400…スレーブ制御回路、 400m…記憶部、 500a,500b…マスターアーム、 600…操作部、 700…入力処理回路、 800…画像処理回路、 900a…操作者用ディスプレイ、 900b…助手用ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータシステムの制御装置であって、
当該マニピュレータシステムの終了時に、その終了態様を示す終了識別情報を生成する情報生成部と、
前記終了識別情報を記憶する記憶部と、
当該マニピュレータシステムの起動時に、前記終了識別情報を読み出す読み出し部と、
を具備することを特徴とするマニピュレータシステムの制御装置。
【請求項2】
当該マニピュレータシステムの起動時に、前記読み出し部によって読み出された前記終了識別情報に基づいて、当該マニピュレータシステムの前回の終了態様が強制終了であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって当該マニピュレータシステムの前回の終了態様が強制終了であると判定された場合、その旨を当該マニピュレータシステムの操作者に提示する提示部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータシステムの制御装置。
【請求項3】
前記提示部による提示後に、当該医療用マニピュレータシステムを初期化処理する操作が行われたか否かを判定し、該操作が行われたと判定した場合には、当該医療用マニピュレータシステムを初期化処理する初期化処理部
を含むことを特徴とする請求項2に記載のマニピュレータシステムの制御装置。
【請求項4】
当該マニピュレータシステムはマスタスレーブ方式のマニピュレータシステムであって、
スレーブ部材の位置及び姿勢に係る情報である位置姿勢情報を生成する位置姿勢情報生成部を含み、
前記記憶部は、当該医療用マニピュレータシステムを終了させる操作が行われた場合には、前記終了識別情報と前記位置姿勢情報とを記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータシステムの制御装置。
【請求項5】
前記終了識別情報は、強制終了を示すフラグまたは正常終了を示すフラグである
ことを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータシステムの制御装置。
【請求項6】
作業を行う作業部と、
操作指令を生成する操作部と、
前記操作部の操作指令に基づいて前記作業部の動作制御を行う制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
当該マニピュレータシステムの終了時に、その終了態様を示す終了識別情報を生成する情報生成部と、
前記終了識別情報を記憶する記憶部と、
当該マニピュレータシステムの起動時に、前記終了識別情報を読み出す読み出し部と、
前記読み出し部により読み出された前記終了識別情報と、前記操作部により生成された操作指令と、に基づいて、前記作業部を制御する動作制御部と、
を有する
ことを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項7】
前記終了識別情報は、強制終了を示すフラグまたは正常終了を示すフラグである
ことを特徴とする請求項6に記載のマニピュレータシステム。
【請求項8】
マニピュレータシステムの制御方法であって、
当該マニピュレータシステムの前回の終了態様を示す終了識別情報を読み込み、
前記終了識別情報に基づいて、前回の終了態様が強制終了であるか否かを判定し、
前回の終了態様が強制終了である場合には、その旨を操作者に提示し、
前記操作者により当該マニピュレータシステムの初期化処理操作が行われたか否かを判定し、
前記初期化処理操作が行われた場合には、当該マニピュレータシステムの初期化処理を行い、
前記初期化処理を行った後、作業を行う作業部の動作制御を開始し、
当該マニピュレータシステムが終了される際に、当該終了の態様を示す終了識別情報を生成して記憶する
ことを特徴とするマニピュレータシステムの制御方法。
【請求項9】
前記終了識別情報は、強制終了を示すフラグまたは正常終了を示すフラグである
ことを特徴とする請求項8に記載のマニピュレータシステムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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