説明

マラリア抗原をコードするアデノウイルスベクター

本発明は、マラリア寄生虫の生活環の前赤内期に対する免疫を誘発することができる組換えアデノウイルスベクターを提供する。特に、本発明は、トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)を含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクターを、またそのベクターを含む免疫原性組成物(たとえば、ワクチン)、及びそのような組成物を使用する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、マラリア寄生虫の生活環の前赤内期に対する免疫を誘発することができる組換えアデノウイルスベクターに関する。特に、本発明は、トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)を含む抗原をコードする組換えサルアデノウイルスベクターを、またその前記ベクターを含む免疫原性組成物(たとえば、ワクチン)、及びそのような組成物を使用する方法も提供する。
【0002】
[発明の背景]
マラリアは、依然として世界の主要な健康問題である。少なくとも30億人、世界人口のほぼ半数が、マラリア流行地域で生活をしていると推定されており、3億から5億の臨床例と約150万の死亡が毎年報告されている[1]。効果的なワクチンを開発すれば、この疾患の問題を軽減することを助ける重要な業績となると考えられる。前赤内ワクチン接種法は、マラリア生活環のこの期に対する免疫がスポロゾイトとそれに続く肝内シゾントの両方に向けられる臨床試験においてある程度の有効性を示してきた[2]。細胞免疫応答は、CD8+T細胞とIFNγ産生が肝臓期マラリアに対する保護において主要な役割を果たす前赤内免疫では重要であることがすでに明らかにされている[3]。
【0003】
トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)は、保護的CD8+T細胞応答を誘導することがすでに明らかにされているスポロゾイト上で発現される抗原である[4]。TRAPは、ME.TRAPとして知られるいくつかのマラリア抗原由来の追加のB細胞、CD8+及びCD4+T細胞エピトープを含有するマルチエピトープストリングとの融合タンパク質としてワクチン臨床試験において広く試験されている[5、6]。
【0004】
ME.TRAP抗原をコードするプラスミドDNAに基づくワクチンベクター又は改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)は、本分野で試験されてきており(Moorthyら、(2004)PLoS、Med 1(2):e33)、初回刺激−追加免疫レジメ(prime−boost regime)で使用されると、高頻度のエフェクターT細胞を誘導することが明らかにされている。
【0005】
それにもかかわらず、ヒト対象における熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の自然感染を防ぎ、ほかにも、特にCD8+型のより強力なT細胞応答を誘導することができる改良された抗マラリアワクチンの必要性は残っている。DNAと、MVA及び鶏痘などのポックスウイルスベクターの両方でのインサートとしてのME.TRAPの臨床試験では、応答は主に、おそらくCD8+T細胞応答ほど保護的ではないCD4+型であった。
【0006】
ヒト血清型5のアデノウイルスベクターは、マラリアのプラスモディウムヨエリ(P.yoelii)マウスモデルにおいてすでに使用されており、単回投与後に顕著な免疫原性及び著しい保護作用を示していた[7]。しかし、この血清型のヒトにおける使用を妨げている1つの主要限界は、広範なAdH5の存在であり、頻繁な小児期感染は抗体陽転をもたらす。AdH5に対する既存の免疫という問題を回避するために、人間集団内で循環しないサル起源のアデノウイルス血清型の使用への関心が高まってきており、いくつかの研究では、SARS[8]及びHIV[9、10]のマウスモデルと非ヒト霊長類モデルの両方においてCD8+T細胞応答を誘発するこれらのベクターの能力が実証されている。
【0007】
[発明の概要]
本発明者らは、ME.TRAP抗原をコードするサルアデノウイルスベクター(特に、チンパンジーアデノウイルス分離株AdCh63由来のアデノウイルスベクター)が、長期間にわたって、TRAPに対する顕著なCD8+T細胞応答も高力価抗体応答も誘発することができることを、現在明らかにした。さらに、同じ導入遺伝子をコードするMVAベクターのそれに続く投与により免疫原性を追加免疫することができ、起こりえるヒト免疫原性の優れた予測因子として使用される種であるアカゲザル(rhesus macaques)において強い免疫原性が観察される。免疫原性は、第1相ヒト臨床研究においても実証されている。マウス誘発モデルにおいてME.TRAPをコードするAdCh63ベクターを使用して研究された予防効果は、他のアデノウイルスベクターの場合よりも意外に大きかった。このマウスモデルの有効性は、本分野において、ヒトに対して有用な予測的指標であると広く見られている。
【0008】
第1の態様では、本発明は、トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクターを提供する。
【0009】
一実施形態では、サルアデノウイルスベクターは、哺乳動物細胞中で導入遺伝子を発現させる調節配列に作動可能に連結された少なくとも1つの抗原をコードする導入遺伝子が安定的に組み込まれているサルアデノウイルスゲノムを含み、抗原はトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。
【0010】
一実施形態では、前記サルアデノウイルスゲノムは、チンパンジーアデノウイルスベクターのゲノムである。
【0011】
特定の非限定的な実施形態では、前記サルアデノウイルスゲノムは、チンパンジーアデノウイルス分離株63(AdCh63)のゲノムでもよい。AdC9としても知られているベクターAdC68、又はAdCh3ベクター、又はAdC6若しくはAdC7ベクターも使用してよいが、AdCh63ベクターが好ましい。したがって、本発明は、特にトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む抗原をコードする組換え複製欠損AdCh63ベクターに関する。
【0012】
本発明のすべての実施形態では、サルアデノウイルスベクターによってコードされている抗原は、ME.TRAPを含むものでも、ME.TRAPからなるものでもよい。
【0013】
特定の非限定的な実施形態では、本発明は、ME.TRAPをコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクター(特にAdCH63ベクター)であって、ME.TRAPの発現が、ヒトCMV IE1遺伝子のプロモーターと、イントロンAを含むヒトCMV IE1遺伝子の5’非翻訳領域のフラグメントとを含む調節配列(本明細書では「長い」HCMVプロモーターとも呼ばれる)により推進される、組換え複製欠損サルアデノウイルスベクター(特にAdCh63ベクター)を提供する。
【0014】
第2の態様では、本発明は、1つ又は複数の薬学的に許容可能な媒体、担体、希釈剤、又はアジュバントと混合した本発明の第1の態様に従ったサルアデノウイルスベクターを含む免疫原性組成物を提供する。
【0015】
関連する態様では、本発明は、1つ又は複数の薬学的に許容可能な媒体、担体、希釈剤、又はアジュバントと混合した本発明の第1の態様に従ったサルアデノウイルスベクターを含むワクチン組成物を提供する。
【0016】
特定の非限定的な実施形態では、本発明は、ME.TRAPをコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクター(特にAdCH63ベクター)であって、ME.TRAPの発現が、「長い」HCMVプロモーターにより推進される、組換え複製欠損サルアデノウイルスベクター(特にAdCh63ベクター)を含む免疫原性組成物又はワクチン組成物を提供する。特定の非限定的な実施形態では、前記免疫原性又はワクチン組成物は、10mMヒスチジン、7.5%ショ糖、35mM NaCl、1mM MgCl、0.1%PS80、0.1mM EDTA、0.5%エタノール、pH6.6に処方されたヒト対象への皮内投与に適している前記アデノウイルスベクターを含む。
【0017】
第3の態様では、本発明は、ヒト対象においてトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)に対する免疫応答を誘発する方法であって、対象に(本発明の第1の態様に従った)TRAPをコードする組換えサルアデノウイルスベクターを含む免疫原性組成物又はワクチン組成物を、前記対象においてTRAPに対する免疫応答を誘発するのに十分な量で投与するステップを含む方法を提供する。
【0018】
一実施形態では、免疫原性又はワクチン組成物は単回用量免疫感作(single dose immunization)として投与する。
【0019】
第4の態様では、本発明は、ヒト対象においてトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)に対する免疫応答を誘発する方法であって、
i)(本発明の第1の態様に従った)TRAPをコードする組換えサルアデノウイルスベクターを含む初回刺激用量の免疫原性組成物又はワクチン組成物を対象に投与するステップと、
ii)トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)を含む抗原をコードする非アデノウイルスベクターを含む追加免疫用量の免疫原性又はワクチン組成物を同一対象に投与するステップであって、初回刺激用量の少なくとも2週間後に追加免疫用量を投与するステップと
を含む方法を提供する。
【0020】
一実施形態では、追加免疫用量の8週間後に追加免疫用量を投与してもよい。
【0021】
1つ又は複数の追加の追加免疫用量を、その対象において誘発される免疫応答を最適化するために必要であれば同一対象に投与してもよい。
【0022】
一実施形態では、ステップii)において投与される非アデノウイルスベクターは、組換えポックスウイルスベクター、たとえば、改変されたワクシニアアンカラ(MVA)である。
【0023】
第5の態様では、本発明は、
i)TRAP、又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む抗原をコードするサルアデノウイルスベクターを含む初回刺激組成物と、
ii)非アデノウイルスベクターを含む追加免疫組成物であって、非アデノウイルスベクターがトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む抗原もコードする追加免疫組成物と
を含む製品の組合せ又はキットを提供する。
【0024】
初回刺激組成物は、好ましくは、哺乳動物細胞において導入遺伝子を発現させる調節配列に作動可能に連結された少なくとも1つの抗原をコードする導入遺伝子が安定的に組み込まれているサルアデノウイルスゲノムを含むサルアデノウイルスベクターであって、前記抗原がトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、サルアデノウイルスベクターを含む。
【0025】
一実施形態では、初回刺激組成物と追加免疫組成物が両方ともトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む同一の抗原をコードしていてもよい。
【0026】
特定の非限定的な実施形態では、初回刺激組成物と追加免疫組成物が両方ともME.TRAPをコードしていてもよい。
【0027】
追加の態様では、本発明は、ワクチンとして使用するための、TRAPを含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクター、特に、哺乳動物細胞において導入遺伝子を発現させる調節配列に作動可能に連結された少なくとも1つの抗原をコードする導入遺伝子が安定的に組み込まれているサルアデノウイルスゲノムを含み、抗原がトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含むサルアデノウイルスベクターを提供する。
【0028】
本発明は、ヒト対象においてトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)に対する免疫応答を誘発するのに使用するための薬物の製造における、TRAPを含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクター、特に、哺乳動物細胞において導入遺伝子を発現させる調節配列に作動可能に連結された少なくとも1つの抗原をコードする導入遺伝子が安定的に組み込まれているサルアデノウイルスゲノムを含み、抗原がトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含むサルアデノウイルスベクターの使用も提供する。
【0029】
本発明は、抗マラリアワクチンとして使用するための薬物の製造における、TRAPを含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクター、特に、哺乳動物細胞において導入遺伝子を発現させる調節配列に作動可能に連結された少なくとも1つの抗原をコードする導入遺伝子が安定的に組み込まれているサルアデノウイルスゲノムを含み、抗原がトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含むサルアデノウイルスベクターの使用をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1a】抗原ME.TRAPをコードするチンパンジーアデノウイルスベクターAdCh63に基づく本発明に従った例示的なアデノウイルスベクターの構築を図式的に示す図である。図1aは、プラスミドpSG2 ME−TRAPを示している。
【図1b】抗原ME.TRAPをコードするチンパンジーアデノウイルスベクターAdCh63に基づく本発明に従った例示的なアデノウイルスベクターの構築を図式的に示す図である。図1bは、AfeI及びSalIを使用した消化によりpSG2 ME−TRAPから切り出した4.7kbフラグメントを示している。このフラグメントは、HCMVプロモーター、イントロンA、METRAP及びBGHポリA配列を含有している。
【図1c】抗原ME.TRAPをコードするチンパンジーアデノウイルスベクターAdCh63に基づく本発明に従った例示的なアデノウイルスベクターの構築を図式的に示す図である。図1cは、HCMV及びBGHpAの制御下でC型肝炎ウイルスの非構造的領域(NS)を担っているプレChAd63NSmutアクセプターベクターを示している。
【図1d】抗原ME.TRAPをコードするチンパンジーアデノウイルスベクターAdCh63に基づく本発明に従った例示的なアデノウイルスベクターの構築を図式的に示す図である。図1dは、ME−TRAP抗原を含有するプレプラスミドpChAd63を示している。
【図2】単回初回刺激後のAdCh63ME.TRAPの免疫原性を示す図である。生後6〜8週間BALB/cマウスは、ME.TRAPをコードする1×1010vpのサルアデノウイルスベクターAdCh63及びAdC9で免疫感作した。免疫原性は、免疫感作の7、12、及び60日後にELISpotにより血液中で分析した。
【図3a】寄生虫誘発に対するME.TRAPをコードするサルアデノウイルスベクターAdCh63及びAdC9の無菌保護及び有効性を示す図である。BALB/cマウスは、アデノウイルス(1×1010vp)ベクターで免疫感作し、次にプラスモディウムベルゲイ(Plasmodium berghei)の1000スポロゾイトの静脈投与によって14日後(n=6)及び60日後(n=6)に誘発した。
【図3b】寄生虫誘発に対するME.TRAPをコードするサルアデノウイルスベクターAdCh63及びAdC9の無菌保護及び有効性を示す図である。BALB/cマウスは、アデノウイルス(1×1010vp)ベクターで免疫感作し、次にプラスモディウムベルゲイ(Plasmodium berghei)の1000スポロゾイトの静脈投与によって14日後(n=6)及び60日後(n=6)に誘発した。
【図4a】アデノウイルス−MVA初回刺激−追加免疫レジメによる免疫原性を示す図である。BALB/cマウスは、ME.TRAPをコードする(5×10vpの)サルアデノウイルスベクターAdCh63及びAdC9をワクチン接種した。マウスはすべて8週間後にMVA ME.TRAP(1×10pfu)で再度免疫感作し、T細胞応答を14日後にフローサイトメトリーにより(a)、追加免疫後の63日目と182日目にはELISpotにより(b)評価した。IgG抗体の誘導もMVAでの追加免疫の28日後にELISAにより定量した(c)。
【図4b】アデノウイルス−MVA初回刺激−追加免疫レジメによる免疫原性を示す図である。BALB/cマウスは、ME.TRAPをコードする(5×10vpの)サルアデノウイルスベクターAdCh63及びAdC9をワクチン接種した。マウスはすべて8週間後にMVA ME.TRAP(1×10pfu)で再度免疫感作し、T細胞応答を14日後にフローサイトメトリーにより(a)、追加免疫後の63日目と182日目にはELISpotにより(b)評価した。IgG抗体の誘導もMVAでの追加免疫の28日後にELISAにより定量した(c)。
【図4c】アデノウイルス−MVA初回刺激−追加免疫レジメによる免疫原性を示す図である。BALB/cマウスは、ME.TRAPをコードする(5×10vpの)サルアデノウイルスベクターAdCh63及びAdC9をワクチン接種した。マウスはすべて8週間後にMVA ME.TRAP(1×10pfu)で再度免疫感作し、T細胞応答を14日後にフローサイトメトリーにより(a)、追加免疫後の63日目と182日目にはELISpotにより(b)評価した。IgG抗体の誘導もMVAでの追加免疫の28日後にELISAにより定量した(c)。
【図5a】寄生虫誘発に対するアデノウイルス−MVA初回刺激−追加免疫レジメの無菌保護及び有効性を示す図である。BALB/cマウスは、最初に、アデノウイルス(5×10vp)ベクターで免疫感作し、続いて8週間後にME.TRAPをコードするMVA(1×10pfu)で追加免疫した。マウスは、プラスモディウムベルゲイの1000スポロゾイトの静脈投与によって14日後(a)、63日後(b)及び182日後(c)に誘発した。
【図5b】寄生虫誘発に対するアデノウイルス−MVA初回刺激−追加免疫レジメの無菌保護及び有効性を示す図である。BALB/cマウスは、最初に、アデノウイルス(5×10vp)ベクターで免疫感作し、続いて8週間後にME.TRAPをコードするMVA(1×10pfu)で追加免疫した。マウスは、プラスモディウムベルゲイの1000スポロゾイトの静脈投与によって14日後(a)、63日後(b)及び182日後(c)に誘発した。
【図5c】寄生虫誘発に対するアデノウイルス−MVA初回刺激−追加免疫レジメの無菌保護及び有効性を示す図である。BALB/cマウスは、最初に、アデノウイルス(5×10vp)ベクターで免疫感作し、続いて8週間後にME.TRAPをコードするMVA(1×10pfu)で追加免疫した。マウスは、プラスモディウムベルゲイの1000スポロゾイトの静脈投与によって14日後(a)、63日後(b)及び182日後(c)に誘発した。
【図6a】アカゲザルにおけるAdCh63 ME.TRAP−初回刺激、MVA ME.TRAP−追加免疫レジメの免疫原性を示す図である。マカクは、AdCh63 ME.TRAP(5×1010vp)で筋肉及び皮内で免疫感作し、8週間後にMVA ME.TRAP(2×10pfu)で追加免疫した。免疫感作後血液中でex vivo IFNγ ELISPOTを実施しa)Ad−初回刺激及びMVA−追加免疫による免疫応答の動態は血液中で全体的なME.TRAP応答を示している。b)ペプチドプールに対するIFNγ応答は、初回刺激の4週間後及び追加免疫の1週間後にME.TRAPの全配列に及んでいる(c)。
【図6b】アカゲザルにおけるAdCh63 ME.TRAP−初回刺激、MVA ME.TRAP−追加免疫レジメの免疫原性を示す図である。マカクは、AdCh63 ME.TRAP(5×1010vp)で筋肉及び皮内で免疫感作し、8週間後にMVA ME.TRAP(2×10pfu)で追加免疫した。免疫感作後血液中でex vivo IFNγ ELISPOTを実施しa)Ad−初回刺激及びMVA−追加免疫による免疫応答の動態は血液中で全体的なME.TRAP応答を示している。b)ペプチドプールに対するIFNγ応答は、初回刺激の4週間後及び追加免疫の1週間後にME.TRAPの全配列に及んでいる(c)。
【図6c】アカゲザルにおけるAdCh63 ME.TRAP−初回刺激、MVA ME.TRAP−追加免疫レジメの免疫原性を示す図である。マカクは、AdCh63 ME.TRAP(5×1010vp)で筋肉及び皮内で免疫感作し、8週間後にMVA ME.TRAP(2×10pfu)で追加免疫した。免疫感作後血液中でex vivo IFNγ ELISPOTを実施しa)Ad−初回刺激及びMVA−追加免疫による免疫応答の動態は血液中で全体的なME.TRAP応答を示している。b)ペプチドプールに対するIFNγ応答は、初回刺激の4週間後及び追加免疫の1週間後にME.TRAPの全配列に及んでいる(c)。
【図7】アカゲザルで試験された2つの異なるAdCh63 ME.TRAP−初回刺激、MVA ME.TRAP−追加免疫レジメを図式的に示す図である。時間(T)は週単位で示す。各場合で、初回刺激ワクチンはAdCh63 ME.TRAP(5×1010vpが筋肉内又は皮内に投与された)であり、8週間後の追加免疫はMVA ME.TRAP(2×10pfuが皮内に投与された)を使用した。
【図8a】アカゲザルにおけるAdCh63 ME.TRAP−初回刺激、MVA ME.TRAP−追加免疫レジメの免疫原性を示す図であり、TRAP T細胞応答と抗体価を比較している。パネル(a)は、添付例に記載されたワクチン接種研究の時間経過にわたるTRAPペプチドプール上でのIFNγ ELIspotを使用して判定されたTRAP T細胞応答を示している(T=週単位時間)。グループ1の対象は8週目と24週目に追加免疫用量のMVA ME.TRAPを受け、一方、グループ2は8、16、及び24週目に追加免疫用量のMVA ME.TRAPを受けた。AdCh63 ME.TRAPでの単回免疫感作は、100万PBMC当たり約1000SFUの強いT細胞応答を生じた。
【図8b】アカゲザルにおけるAdCh63 ME.TRAP−初回刺激、MVA ME.TRAP−追加免疫レジメの免疫原性を示す図であり、TRAP T細胞応答と抗体価を比較している。パネル(b)は、7名の個人のTRAPタンパク質に対して測定された抗体価の時間経過を示しており、強い抗体価がAdCh63 ME.TRAPでのワクチン接種により誘導され、MVA ME.TRAPで追加免疫されたことを実証している。
【図9】ワクチンインサートに重複している15アミノ酸長ペプチドプール(T9/96 TRAP15アミノ酸長)に対する、及び20アミノ酸長ペプチドが重複している同一配列(T9/96 TRAP20アミノ酸長)に対するIFNγ ELIspotにより評価される、ヒト対象の第I相臨床試験AdCh63 ME.TRAPのT細胞免疫原性の時間経過を示す図である。熱帯熱マラリア原虫の異種株を表す20アミノ酸長ペプチド(3D7 TRAP20アミノ酸長)に対する応答、及びMEポリエピトープストリングにおける短いストリングの主に九量体マラリアペプチドエピトープに対する応答も示されている(Gilbertら、Nature Biotech.1997年、11月:15、1280〜84頁)(ME)。
【0031】
[発明の詳細な説明]
以下の段落では、本発明の種々の態様がさらに詳細に説明されている。本発明の一態様に関連して好ましいとして記載されるいかなる特徴も、別段に記載されない限り、本発明の他の態様に関連しても好ましい。
【0032】
本発明者らは、前赤内マラリア(スポロゾイト)抗原トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)を含む異種抗原を発現するサルアデノウイルスベクターを構築し、そのようなベクターが2つの異なる動物モデルにおいて強いCD8+T細胞応答を誘発することができることを観察した。TRAP抗原を発現するサルアデノウイルスベクターを使用して誘発されるT細胞応答のレベルは、特に霊長類モデルで試験される場合は、意外に高く、サルアデノウイルスベクターとTRAP抗原の組合せが、この前赤内マラリア抗原に対する免疫を誘発するのに特に強力であることを示している。
【0033】
したがって、本発明の主要な態様は、TRAP又はその少なくとも1つのエピトープ(好ましくはTRAPの少なくとも1つのT細胞エピトープ)を含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクターを提供することである。組換え複製欠損サルアデノウイルスベクターは、典型的には、哺乳動物細胞において導入遺伝子を発現させる調節配列に作動可能に連結された少なくとも1つの抗原をコードする導入遺伝子が安定的に組み込まれたサルアデノウイルスゲノムであって、前記抗原がトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、サルアデノウイルスゲノムを含むことになる。
【0034】
アデノウイルスベクター、及び具体的にはサルアデノウイルスベクターは当技術分野では公知である。いくつかの複製欠損組換えサルアデノウイルスが国際公開第2005/071093号パンフレットに記載されており、その内容は参照によりその全体を本明細書に組み込まれているものとする。
【0035】
本発明のサルアデノウイルスベクターは、典型的には、哺乳動物細胞においてTRAP抗原を発現させることができる調節配列に作動可能に連結されたTRAP抗原をコードする核酸配列を含む導入遺伝子発現カセットの安定的挿入により改変されるサルアデノウイルスゲノムを含む。
【0036】
本発明の組換えサルアデノウイルスベクターは、典型的には、前記ベクターが、ウイルス複製に不可欠な遺伝子産物をコードする遺伝子の機能的欠損、又は完全な除去のために、複製が不可能にされていることを意味する「複製欠損」である。一例として、本発明のベクターは、E1遺伝子のすべて又は一部、並びに任意選択でE3領域及び/又はE4領域も除去することにより複製欠損にしてもよい。サルアデノウイルスの天然E4領域を、ヒトアデノウイルスのE4領域、たとえば、Ad5E4orf6で置き換えてもよい。「複製欠損」サルアデノウイルスベクターの一般的特徴は、たとえば、国際公開第2005/071093号パンフレットから、当技術分野では公知であり、前記特許文献の内容は参照により本明細書に組み込まれているものとする。
【0037】
特定の、しかし非限定的な一実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスベクターは、チンパンジーアデノウイルス分離株AdCh63のゲノムに基づいていてもよい。この特定のウイルス血清型は、(たとえば、国際公開第2005/071093号パンフレットから)当技術分野では公知であるが、プラスモディウム種の前赤内TRAP抗原のためのワクチン担体として記載されたことは以前は一度もなかった。本発明者らは、TRAP抗原を発現するAdCh63ベクター骨格の組合せが壮観なCD8+T細胞応答を誘導し、強いTRAP特異的抗体(IgG)応答を誘発する追加の利点を有することを観察している。
【0038】
本発明のベクターは、完全長TRAP抗原を発現してもよく、少なくとも1つのT細胞エピトープを含むそのフラグメントを発現してもよい。典型的には、少なくとも1つのT細胞エピトープを含むフラグメントは、少なくとも9アミノ酸長であり、完全長のTRAP又はME.TRAPまでのいかなる長さでもよい。たとえば、前記フラグメントは、9〜200、又は9〜100、又は9〜50アミノ酸長の範囲にあってもよい。TRAP配列内のT細胞エピトープの位置はすでに文献に記載されており、当業者には公知であろう。TRAPのT細胞エピトープの例は以下の出版物に記載されている:Aidoo M、Lalvani A、Allsopp CE、Plebanski M、Meisner SJ、Krausa P、Browning M、Morris−Jones S、Gotch F、Fidock DAら、Lancet.1995年;345:1003〜7頁;Flanagan KL、Plebanski M、Akinwunmi P、Lee EA、Reece WH、Robson KJ、Hill AV、Pinder M.Eur J Immunol.1999年、6月;29:1943〜54頁;及びFlanagan KL、Plebanski M、Odhiambo K、Sheu E、Mwangi T、Gelder C、Hart K、Kortok M、Lowe B、Robson KJ、Marsh K、Hill AV、Am J Trop Med Hyg.2006年3月;74(3):367〜75頁、これら文書の内容は、TRAPの既知T細胞エピトープを説明する目的で、参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれているものとする。
【0039】
TRAP抗原は、任意のプラスモディウム種由来でもよいが、典型的には、熱帯熱マラリア原虫の系統由来のTRAP抗原であろう。TRAP抗原配列は、任意の熱帯熱マラリア原虫系統由来でもよいが、特定の(非限定的な)実施形態では、TRAP抗原は熱帯熱マラリア原虫系統T9/96由来である。熱帯熱マラリア原虫の異なった系統のTRAP抗原は高度なアミノ酸配列同一性(典型的には、全長TRAP配列にわたり90%超)を示す。したがって、熱帯熱マラリア原虫系統T9/96のTRAP抗原と90%超、95%超、又は99%超のアミノ酸配列同一性を共有するいかなるTRAPアミノ酸配列も使用することが企図されている。
【0040】
TRAP抗原(又はそのT細胞エピトープフラグメント)は、単独で発現させてもよく、追加のポリペプチド配列と組み合わせて、たとえば、融合タンパク質として発現させてもよい。これらの追加のポリペプチド配列は、B細胞、CD8+T細胞又はCD4+T細胞エピトープ、特に、TRAP以外の熱帯熱マラリア原虫抗原由来のB細胞又はT細胞エピトープを含んでいてもよい。特に有利な組合せは、ME.TRAPと表示される構築物で、これは、他の前赤内熱帯熱マラリア抗原由来のB細胞、CD8+T細胞及びCD4+T細胞エピトープのマルチエピトープストリングに融合している完全長TRAP抗原を含む(5、6)。文献に記載されているME.TRAP抗原(及び配列番号2に示されている)は、熱帯熱マラリア原虫系統T9/96から採取した完全長TRAP配列を含有する。しかし、このME.TRAP構築物のTRAP部分は、熱帯熱マラリアの他の系統から採取したTRAP配列で置き換えてもよいことは認識されるであろう。当業者であれば、TRAP配列(及び/又はME配列)は、T細胞(又はB細胞)免疫原性を実質的に変えることなく、1つ又は複数のアミノ酸置換、挿入又は欠失により改変してもよいことも認識されるであろう。
【0041】
特定の非限定的な一実施形態では、ME.TRAP抗原は、配列番号2として示されているアミノ酸配列を含んでもよく、配列番号2として示されているアミノ酸配列からなるものでもよい。他の適切なTRAP抗原配列は、Robson KJら、Nature.1988年;335:79〜82頁、に記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれているものとする。MEエピトープストリングは、Gilbert SCら、Nat Biotechnol.1997年;15(12):1280〜4頁、に記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれているものとする。
【0042】
TRAP抗原を発現させる調節配列は、転写開始配列、プロモーター配列又はエンハンサー配列、及びその組合せを含んでいてもよい。プロモーター配列は、典型的には、(アデノウイルス及び発現された抗原の両方に関して)異種プロモーターであり、真核生物RNAポリメラーゼ(たとえば、RNA polII)により認識されるどのようなプロモーターでもよい。
【0043】
好ましいプロモーターは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の前初期(IE1)プロモーターであり、Chapmanら、NAR、19:3979〜3986頁により記載されており、この文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれているものとする。このプロモーターは、イントロンA配列を含むIE1遺伝子の5’非翻訳領域のフラグメントを含む「長い」形で使用してもよく、イントロンA配列を欠く「短い」形で使用してもよい。「長い」CMVプロモーターが一般に好まれ、典型的には、エキソンBを排除することになる。しかし、本発明が、TRAP抗原を発現させるのに「長い」HCMVプロモーターの使用に限定されるものではないことは理解されるべきである。その発現レベルが、「長い」HCMVプロモーターを使用して実現される発現レベルと実質的に等価であるプロモーターを含む、抗原を適切なレベルで発現させる他の異種プロモーターを使用してもよい。適切なプロモーターには、たとえば、マウスCMVプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、SV40初期/後期プロモーター及びβアクチンプロモーターが挙げられる。
【0044】
(TRAPを含む抗原をコードする)導入遺伝子発現カセットは、典型的には、異種転写終結配列も含む。いかなる適切なRNApolII終結配列も、たとえば、BGHポリA配列も使用してもよい。「長い」HCMVプロモーターとBGHポリA配列の組合せは特に有利であり、AdCh63ベクター骨格とともに使用するのに好ましい。
【0045】
(TRAPを含む抗原をコードする)導入遺伝子発現カセットは、典型的には、サルアデノウイルスゲノムのE1欠失領域に挿入される。しかし、1)導入遺伝子発現カセットが、アデノウイルスゲノムへの挿入に続いてTRAPを含む抗原を発現させることができるという意味で、導入遺伝子発現カセットが機能的である、並びに2)導入遺伝子の挿入が、適切な宿主細胞株においてアデノウイルスベクターの複製及び/又は感染性ウイルス粒子へのアデノウイルスベクターのパッケージングを妨げないのであれば、挿入部位の正確な位置及びベクター内での導入遺伝子発現カセットの方向は決定的ではないことは理解されるべきである。
【0046】
本発明のサルアデノウイルスベクターは、典型的には、TRAP抗原をコードする組換えアデノウイルスゲノムを含む感染性ウイルス粒子として供給され、使用される。複製欠損アデノウイルスは、ウイルス複製及びトランスでのパッケージングに不可欠な欠損遺伝子産物を提供する細胞株を使用して、組織培養で増殖させ、高力価の感染性ウイルス粒子を産生することができる。アデノウイルス骨格(ゲノム)配列は、標準組換えDNA技術を使用するクローニング及び操作を促進するために、細菌プラスミドベクターにクローン化してもよい。そのようなプラスミドは、対応するアデノウイルスベクターの「分子クローン」を表しており、組換えアデノウイルスゲノム全体を含有している。プラスミドベクターを制限酵素で消化して細菌配列を除去し逆位末端配列を暴露することに続いて、こうして得られる核酸を使用して、ウイルスゲノム配列から欠失した不可欠な遺伝子機能(たとえば、E1遺伝子産物)を提供する適切な宿主細胞株をトランスフェクトしてもよく、これにより純粋な組換えウイルス粒子が作製される。適切な例は、細胞株HEK293であり、これはE1欠損アデノウイルスの増殖を支援する。別の適切な細胞株は、PerC6と呼ばれる細胞株である。
【0047】
本発明は主に、免疫原性組成物、たとえば、ワクチンで投与することができる組換えサルアデノウイルス粒子に関するが、プラスミドベクターの形で安定的に組み込まれたTRAP(又はME.TRAP)発現カセットとともにサルアデノウイルス骨格を含む対応するプラスミドベクターも本発明の一部を形成することは理解されるべきである。そのようなプラスミドベクターは、TRAP(又はME.TRAP)抗原をコードする組換えアデノウイルスゲノムを含むアデノウイルス粒子の高力価ストックの作製に有用である。
【0048】
免疫原性組成物
本発明は、本発明の第1の態様に従ったサルアデノウイルスベクターを含む免疫原性組成物も提供する。そのような組成物は、典型的には、1つ又は複数の薬学的に許容可能な媒体、希釈剤、担体又はアジュバントと混合した感染性アデノウイルス粒子の形でサルアデノウイルスベクターを含む。
【0049】
一実施形態では、組成物は、ヒト投与に適しており、少なくともTRAP抗原に対する(CD8+、多くの場合細胞障害性、T細胞によるなどの)保護的免疫応答を誘発するために使用することができるワクチン組成物でもよい。
【0050】
本発明の第1の態様に関連して記載されるサルアデノウイルスベクターの好ましい特徴は、本発明の組成物にも当てはまる。
【0051】
本発明の組成物は、典型的には、適切な液体担体、たとえば、10mMヒスチジン、7.5%ショ糖、35mM NaCl、1mM MgCl、0.1%PS80、0.1mM EDTA、0.5%エタノール、pH6.6、エンドトキシンフリーPBS又は他のあらゆる適切な担体などの水性担体中にアデノウイルス粒子を含む液体剤形として処方されることになる。好ましい剤形は、筋肉内又は皮内投与用に処方されるが、経口、静脈内、粘膜、経皮等などの他の投与経路は除外されてはいない。ヒト投与を目的とする免疫原性又はワクチン組成物は、典型的には、1〜3×1011vp/mLの範囲の力価でウイルス粒子を含有する。
【0052】
免疫応答を誘発する方法
本発明のサルアデノウイルスベクターを含む組成物は、コードされたTRAP抗原に対する免疫応答を誘発するためにヒト対象に投与してもよい。発明者らは、本発明に従ったベクター(及び、特にME.TRAP抗原をコードするAdCh63又はAdC9ベクター)が動物モデルにおいて強いCD8+T細胞応答を誘発することができることを明らかにした。特に、マウス誘発モデルにおいてME.TRAPをコードするAdCh63ベクターを使用して明らかにされた予防効果は、他のアデノウイルスベクターを使用するよりもまったく意外にも大きい。このモデルにおける効果は、当技術分野では、ヒトに対して有用で予測的指標であると広く見なされており、したがって、ME.TRAPをコードするAdCh63を含むワクチンは、マラリアに対して人を保護するのに有用となる。実際、発明者らは、ME.TRAPをコードするAdCh63を含む実例ワクチンがヒトにおいて免疫原性であることをすでに実証している。
【0053】
したがって、本発明は、本発明に従った組成物(及び、特に、ME.TRAP抗原をコードするAdCh63ベクターを含む組成物)を、単回免疫感作において、又はより広い投薬レジメン、たとえば、初回刺激−追加免疫レジメの一部としてのいずれかで、ヒト対象に投与することを提供する。
【0054】
本発明のサルアデノウイルスベクターを使用した免疫感作を受けるヒト対象は、マラリアに対して免疫感作することが望ましいどんなヒト対象でもよい。
【0055】
単回免疫感作レジメでは、対象は典型的には、1×10〜5×1010ウイルス粒子の範囲の投与量を受けることになる。この投与量は、一般に皮内に投与されることになるが、別の投与量及び投与経路を含む他の治療レジメは除外されるべきではない。
【0056】
初回刺激−追加免疫レジメは、典型的には、最初の時点でTRAP(及び、特にME.TRAP)を含む抗原を発現する初回刺激用量の組換えサルアデノウイルスを投与し、それに続いて第2の時点でTRAP(又はME.TRAP)を含む抗原をコードする追加免疫用量の非アデノウイルスベクターを投与することを含む。第1と第2の時点は、少なくとも2週間、典型的にはほぼ8週間隔てられる。
【0057】
追加免疫用量を投与するのに使用する非アデノウイルスベクターは、TRAP(又はME.TRAP)を含む抗原をコードする非アデノウイルスベクターならどれでもよい。適切な例には、ウイルスベクター、特に組換えポックスウイルスベクター(たとえば、MVA)、及びプラスミドDNAベクターが挙げられる。
【0058】
好ましい(が、非限定的な)組合せは、初回刺激用量にME.TRAP抗原をコードする組換えAdCh63と、追加免疫用量にME.TRAPをコードするMVAを利用する(たとえば、1×10〜1×10pfuの範囲の用量で)。好ましい(が、やはり非限定的な)レジメでは、両用量は皮内に投与され、初回刺激と追加免疫用量は8週間の期間隔てられる。
【0059】
本明細書に記載されるワクチン及びワクチン接種レジメにより誘導されるT細胞は、マラリア予防に有用でも、マラリア治療に有用でもよい。しかし、前記T細胞は、他の適用も有する。前記T細胞を使用して、マラリア感染を診断するためのT細胞の使用におけるような、マラリア診断において使用する試薬を作製してもよい。又は、使用されるT細胞は、マラリア免疫療法のためのT細胞移行プロトコルにおいて価値があるものでもよい。さらに、個人がワクチン接種後に十分な免疫応答を生じる能力は、特異的免疫又は遺伝子欠損を排除するための免疫能の尺度として使用してもよい。
【0060】
本発明は、以下の非限定的な実験の例を参照すればさらに理解されるであろう。
【0061】
実施例1
AdCh63ME.TRAPベクターの作製
AdCh63 ME−TRAPは、マラリアを予防するためのワクチン接種のために使用されることになるME−TRAPを発現する複製欠損サルアデノウイルスベクターである。
【0062】
AdCh63 ME−TRAPは、完全前赤内期抗原であるトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)に融合している熱帯熱マラリア原虫前赤内期抗原由来の一連の既知細胞障害性Tリンパ球(CTL)エピトープを発現する遺伝子の配列を含有するサルアデノウイルス、チンパンジーアデノウイルス血清型63からなる。
【0063】
ME−TRAPの「複数のエピトープ」部分を構成する個々のCTLエピトープは、種々の潜在的に保護的な標的抗原を表し、ワクチン接種を受けた集団の大多数におけるワクチンに対する免疫応答を保証するために含まれる。TRAPは豊富な前赤内期抗原である。照射スポロゾイトで免疫感作されマラリアに対して保護されているヒトボランティアは、TRAPに対するT細胞応答を発現し、TRAPはマラリアワクチンに含むための有力な候補になっている。
【0064】
ワクチンインサートのヌクレオチド配列は配列番号1として示されている。
【0065】
プラスミドpChAd63 ME−TRAPを、AdCh63 ME−TRAP作製のための出発原料として使用した。このプラスミドを作製するために、ME−TRAP発現カセットを、相同組換えを介して直鎖化されたプレアデノアクセプターベクターにクローン化した。このプラスミドの構築は、図1に図式的に示されている。
【0066】
プラスミドpSG2 ME−TRAP(図1a)は、AfeIとSalIで切断して、HCMVプロモーター、METRAP及びBGHポリA配列を含有する4.7Kbフラグメントを切り出した。
【0067】
HCMVプロモーター、イントロンA及びBGHポリA配列も含有するこうして得られたME−TRAP4.7Kbフラグメント(図1b)は、HCMVとBGHpAの制御下でC型肝炎ウイルスの非構造領域(NS)を担うpreChAd63NSmutアクセプターベクターに組み換えられた(図1c)。pChAd63ベクターは、pChAd63ウイルス骨格の異なる領域に以下の改変物を担っているプラスミドベクターにクローン化された野生型チンパンジーアデノウイルス63ゲノム由来である:
1)ウイルスゲノムのE1領域(bp455〜bp3421)の欠失
2)E3領域bp27207〜bp31788の欠失
3)E4領域bp33834〜bp36216の欠失
4)Ad5E4orf6 bp33319〜bp34200の挿入
【0068】
アクセプターベクター、ChAd63(c)NSmutは、HpaIとSnabIでの切断により直鎖化された。ME−TRAPカセットは、大腸菌(E.coli)中で相同組換えによりプレアデノベクターにクローン化された。BJ 5183細胞は、約30ngの直鎖化アクセプターベクター(△HpaI、△SnabI)と約100ngの消化されたpSG2 ME−TRAP(△AfeI、△SalI)で同時形質転換した。組換えは4.7kbフラグメントとプレアデノChAd63NSmutアクセプターベクターの間で起こり、4.7kbフラグメント(HCMVプロモーター、ME−TRAP遺伝子及びBGHポリA配列を含有する)が、HCMVプロモーターとBGHポリA配列間に存在する相同性を利用してアデノウイルスベクターに挿入された。陽性クローンは、HindIIIとEcoRIを使用した制限消化分析により同定された。
【0069】
図1dは、ME−TRAP抗原を含有する新規のChAd63ベクターの地図である。HindIII及びEcoRI部位が示されている。プラスミドDNAの同一性の確認は、制限酵素分析及び塩基配列決定により得られた。予想されたHindIII−EcoRI制限酵素プロファイルは、ME−TRAP含有フラグメントについてアガロースゲル電気泳動上で観察された。塩基配列分析は、異なるオリゴで実施され、ME−TRAPインサートの配列が正しいことが確認された。
一次ウイルスストック(PVS)の製造
HEK293細胞の調製

プラスミドDNAの直鎖化
↓トランスフェクション
アデノウイルス感染を開始する

アデノウイルスを回収する
【0070】
ヒト胎児由来腎臓293(HEK293)細胞株は、剪断されたヒトアデノウイルス5型DNAにより形質転換された一次ヒト胎児由来腎臓の永久株である。前記細胞はヒトアデノウイルスに特に感受性であり、E1A欠失複製欠損アデノウイルスの増殖を支援することになる。HEK293細胞は、Bio Reliance社、Todd Campus、West of Scotland Science Park、グラスゴーG20 OXAから入手した。
【0071】
HEK293細胞株は、接着細胞として培養した。前記細胞は、無菌状態で、グルタミン及び10%認定ウシ胎児血清(FBS)を補充したDMEM中で抗生物質なしで増殖させた。
【0072】
PVSを作製するために、対数期HEK293細胞は、化学的に定義されたカチオン性リポソームトランスフェクション試薬であるLipofectamine2000(Invitrogen社製)を使用して、5μgのPmeI直鎖化プラスミドDNAでトランスフェクトした(播種の18時間後)。
【0073】
制限酵素PmeI及び特異的緩衝液はNew England Biolabs(NEB)社から購入した。この緩衝液中のBSAは米国起源と定義されていた。4ユニットのPmeI(10,000U/mL)を使用して、1μgのDNAを直鎖化した。減菌水を希釈用に使用した。ウシ胎児血清(FBS)無添加のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)をトランスフェクション段階のために使用した(FBSの存在はトランスフェクション効率を低下させる)。トランスフェクトされた細胞は、最大細胞変性効果(CPE)が観察された10日目に回収された。ウイルスは3回の凍結融解により細胞から回収し、10%無菌グリセロール中細胞上清で貯蔵し、最終容量を4.1mLとした。PVSのバイアルはスナップ凍結し、−80℃で保存した。このストックには6か月の再試験日付を付けた。
【0074】
プレ作業ベクターストックの製造
HEK293細胞の単一バイアルを解凍し、10%FBSを含有するDMEM+グルタミンに広げ、5継代後、2Cellbindローラーの平らに分散した接着細胞を作製した。感染の日に、1ローラー中の細胞は組換えトリプシンを使用して懸濁し、数を数えた。細胞密度は1.06×10細胞/cmであった。第2ローラー中の細胞は、113mLの接種菌液中0.64pfu/細胞の感染効率(MOI)で一次ウイルスストックを感染させた。ストックウイルスの必要量(1.25mL)は、湿った氷上で解凍し、細胞培地(DMEM+グルタミン及び2%FBS)で115mLまで希釈した。
ローラー瓶は一度手作業で回転させ、次に、37℃に設定されたインキュベーター内の0.1rpmで回転するローラーバンク上に48時間置いた。ローラー瓶はCPEの存在を毎日調べた。典型的CPEは細胞の円形化を伴う。対照細胞培養物はCPEの不在について調べる。
【0075】
ウイルス感染ローラー瓶は、1回のウイルス複製後及び全CPEの出現とともに回収した(48時間)。ウイルス感染細胞は培地中に穏やかに再懸濁されて、細胞懸濁液を形成し、次に20℃、2000rpmで15分間、遠心分離によりペレット化した。上清は取り除き、細胞ペレットは8.0mLの細胞溶解緩衝液(CBF精製水で調製した10mM Tris、135mM NaCl、1mM MgCl、pH7.9)に再懸濁した。次に、細胞ペレットは50mLポリプロピレン管に移した。細胞ペレットは、3回の凍結融解にかけた(IPA/乾燥CO浴槽中で凍結させ、次に37℃水槽中で解凍した)。細胞ライセートは、4℃で30分間、3000rpmで追加の遠心分離により清澄させた。上清(細胞ライセート)は、少量のアリコートを−80℃でスナップ凍結した。感染力価(3.34×10pfu/mL)の細胞ライセートから試料を採取した。感染及び非感染細胞上清の試料(両方とも100mL)はバイオバーデンについて分析した(両方ともネガティブ)。
【0076】
作業ベクターストック(WVS)1及び2の製造
プレ作業ベクターストック(preWVS)を使用して、作業ベクターストック1(WVS1)を製造し、WSV1を使用してWVS2を製造した。両方とも、Cellbindローラー瓶中に平らに接着しているHEK293細胞中での1回のウイルス複製を含んでいた。WVS2の大きさは、バッチ製造ロットが全WVS2の10%以下を使用するように計算されている。WVS1では、細胞密度1.29×10/cmでの14ローラーのHEK293細胞をウイルス増殖のために使用し、WVS2では、細胞密度1.54×10/cmでの29ローラーを使用した。WVS1とWVS2の両方の製造仕様書は同じであった。ウイルス接種菌液(それぞれプレWVS又はWVS1)は、DMEM+グルタミン及び2%FBSで、WVS1では113mL/ローラーまで、WVS2では2時間で20mL/ローラーまで、次に最終的に113mL/ローラーまで希釈された。最終MOIは、それぞれWVS1で1.01、WVS2で8.6pfu/細胞であった。瓶は1回手作業で回転させ、次に、それぞれ48時間と71時間、37℃で0.1rpmのローラーバンク上に置いた。ローラー瓶は、CPEの存在を毎日調べた。非感染HEK293細胞を含有するネガティブコントロールローラーを、比較と細胞数カウント手順の両方のために含めた。
【0077】
WVS1は、感染48時間後に回収され、WVS2は感染71時間後に回収された。ウイルス感染細胞は、細胞上清中に穏やかに再懸濁されて、細胞懸濁液を形成し、次に、遠心分離管にデカントされて、20℃で15分間、2000rpmでの遠心分離によりペレット化された。細胞上清は取り除かれ、各細胞ペレットは、ローラー当たり8.0mLの細胞溶解緩衝液(10mM Tris、135mM NaCl、1mM MgCl、pH7.9)中に再懸濁した。次に、細胞ペレット懸濁液は、ポリプロピレン管に貯蔵した。前記管は3回の凍結融解を受けた(IPA/乾燥CO浴槽内で凍結され、次に37℃水槽で解凍された)。こうして得られた細胞ライセートは、4℃で30分間、3000rpmでの追加の遠心分離により清澄させた。ウイルス(WSV1又はWSV2)を含有する上清(細胞ライセート)を貯蔵し、試料採取し、アリコートにし、−80℃でスナップ凍結した。ストックごとの最終容量の112mLと236mLを調製した。
【0078】
AdCh63 ME−TRAPのバルク回収臨床ロットの製造
WVS2を使用して、AdCh63 ME−TRAPの3バルク回収ロットを製造した。各ロットはWVS2からの単回ウイルス複製からなる。手法は上記のWVS2の製造に類似しており、20mL/ローラーで2時間の開始接種、続いて最大最終容量の113mL/ローラーであったが、細胞溶解中の第1回凍結/融解サイクル後ベンゾナーゼを添加した。ウイルス接種菌液(WVS2)は、上記の通り、2%FBSとグルタミンを含有するDMEMで希釈し、MOIの2〜3pfu/細胞で20mLのHEK293ローラー瓶中に添加された。瓶は1回手作業で回転させ、次に、合計71時間37℃のインキュベーター中の0.1rpmで回転するローラーバンク上に置いた。ローラー瓶をCPEの存在について毎日調べ、ウイルス感染ローラー瓶は全体CPEの出現後に回収した。ウイルス感染細胞は培地に穏やかに再懸濁され、細胞懸濁液を形成した。細胞懸濁液と上清の2.5mL試料を各ローラーから取り出し貯蔵した。これには、「プレバルク回収プールロット1、2又は3」とラベルを貼った。これらの「バルク回収」試料は最終貯蔵のために採取して、外来性ウイルスのインプロセス外部試験用、及び逆転写酵素用のバルク回収試料を作製した。次に、残りの懸濁液は20℃で30分間、2000rpmでの遠心分離によりペレット化した。上清は取り除き、各細胞ペレットは8.0mLの細胞溶解緩衝液(10mM Tris、135mM NaCl、1mM MgCl、pH7.9)中に再懸濁した。次に、細胞ペレット懸濁液は貯蔵(プール)し、ポリプロピレン管に分注した。前記管は1回の凍結融解を受けた(IPA/乾燥CO浴槽内で凍結され、次に37℃水槽で解凍された)。最小凍結時間は30分であった。次に、ベンゾナーゼを添加して、精製に先立って、残留宿主細胞DNAを分解した(8mL細胞ライセート当たり1500ユニット)。細胞ライセートは、全速に設定したジャイロロッカー上、20℃±2℃で25〜35分間ベンゾナーゼとともにインキュベートし、その後、上記のように追加の2回の凍結融解を行った。細胞ライセートは、4℃で30分、3000rpmで追加の遠心分離により清澄した。細胞ライセート上清は、無菌ピペットを使用して取り除き、容量を測定して、貯蔵し、アリコートにし、−80℃でスナップ凍結した。
【0079】
精製された回収ロットを調製するための下流処理
BHL解凍(54〜128mL)

CsCl段階勾配(1又は2回/ロット)

CsCl平衡勾配(1回/ロット)

処方(緩衝液交換)

希釈及びアグリゲート濾過(0.45μ)

単回精製ロットとしてスナップ凍結
【0080】
アデノウイルス粒子は、塩化セシウム(CsCl)中で特徴的な密度を有しており、Beckman Optima超遠心分離機での密度勾配超遠心分離により、大多数の汚染ウイルス性及び宿主細胞タンパク質並びにDNAからのその精製が可能になる。パッケージされたDNAを欠くウイルス粒子(空のカプシド)は、密度が低くなっているので完全なビリオンから分離することができる。典型的には、段階勾配超遠心分離に続いて、下のほうのバンドの「感染性」ウイルス粒子が見られ、その上のバンドが空のカプシドを含有している。第1段階勾配からの回収物は、20時間の平衡CsCl密度勾配超遠心分離によりさらに精製される。精製ロットの大きさは、遠心管及びローター(Beckman SW40)が保持することができると考えられるバルク回収物の容積により制約を受けた。バルク回収ロットアリコートの大きさは、その容積がこのプロセスへの移行に適しているように選ばれており、適切な容積のバルク回収物は各精製ロットの開始時に解凍された。1と2の予備的段階勾配遠心分離試行の間からのウイルス回収物は、第2の平衡遠心分離段階の出発原料として使用した。したがって、バルク回収ロットの精製は、一連の繰り返し衛生処理において実施された。全体では、開始少ロット(毒性及び安定性研究のため)並びに10精製ロットは、3バルク回収ロットから調製された。
【0081】
不連続CsCl超遠心分離
段階勾配は、3つの異なった密度のCsClを使用して、14mL超透明遠心管(Beckman社製)において、手作業で調製した。塩化セシウム溶液は、CBF精製水中10mM Tris、pH7.9において調製した。最初に、2mLの1.25g/L CsCl溶液が各管に添加され、2mLの1.35g/L CsClを下層にした。最後に、最大密度のCsCl(0.5mLの1.50CsCl)の溶液が下層にした。段階勾配は、使用1時間以内に冷却溶液を使用して調製した。
【0082】
バルク回収ロット細胞ライセートの個々の試料は冷水(4〜10℃)中で解凍した。ほぼ8.5mLの細胞ライセートは、CsCl勾配上に手作業で層状化された。管は即座に(1時間未満)180,000gで3時間遠心分離された。細胞残渣の上方領域、空のカプシド物質の拡散バンド及び感染性ウイルスの下方鮮明バンドが、遠心分離中に分離した。下方バンドは、1mL注射器に取り付けられた16G水平針で各管の側面を突き刺すことにより回収された。平均で、管当たり0.6mLのウイルスが収集され、貯蔵され、必要であれば、4〜10℃で保存された。最大保持時間は4時間であった。
【0083】
平衡CsCl超遠心分離
同一遠心管を使用して、平衡超遠心分離を実施した。これらの管は最初6mLのCsCl密度1.35で満たされ、第1超遠心分離段階から回収された1.0〜1.5mLのウイルスプールで重層した。追加の緩衝液は、注射用蒸留水で調製されたリン酸緩衝生理食塩水であった。ウイルスは10℃で20時間、150,000gで遠心分離された。これにより、拡散薄淡上方バンドと無傷のウイルス粒子の下方鮮明バンドが生じた。鮮明バンドのいずれの側の2つの薄淡バンドも可視化することもできると考えられる。感染性ウイルス粒子の主な鮮明バンドは、以前と同じ16G水平針と注射器いずれかを使用して回収した。管当たり0.5と1.0mLの間のウイルスが回収され、緩衝液交換による最終処方前の最大2時間、保冷容器内4〜10℃で保存された。
【0084】
最終緩衝液への処方
ウイルスのCsCl精製プールは、殺生物剤として0.15%Kathonを含有する水中で8.3mLのSephadexG25(GEヘルスケア社のアマシャムバイオサイエンス事業部)を含有する使い捨てポリプロピレンがすでに注入されたPD−10カラムを使用したSephadexG25上でのクロマトグラフ脱塩を介して最終処方緩衝液(A438)に緩衝液交換された。衛生化に先立って、カラム溶出液からKathonの99.5%超を取り除く6カラム容積の水洗浄の条件が確立された。
【0085】
洗浄後、次にカラムは、0.5M水酸化ナトリウムで最小20分間衛生化され、5カラム容積のリン酸緩衝生理食塩水を使用して、水酸化ナトリウムを中和した。カラムは最終的に処方緩衝液中に洗浄された:(3カラム容積)処方緩衝液(A438):10mM ヒスチジン、35mM NaCl、1mM MgCl、0.1mM EDTA、0.5%(V/V)エタノール、7.5%ショ糖、0.1%PS80、pH6.6は注射用蒸留水を使用して調製された。皮下塩化セシウム注射のため、ラットLD50に相当するよう調整された重量より低い最終製品最大患者用量6log超中の最終CsCl濃度を生じる、ウイルス試料(1.5mL未満)及び収集容積(2.25mL未満)のための条件が確立された。一連のカラム(5以下)を使用して、特定の容量を適用させ収集することができるように、各精製ロットを緩衝液交換した。ウイルスピークは各カラムから単一画分として収集され、その画分は貯蔵されて、濃縮された精製ロットを作製した。QCウイルス粒子決定から、ロットは氷冷したA438で、2〜3×1011vp/mL間まで希釈され、0.45ミクロンフィルター(Millipore Millex HV 33mm直径PVDFディスクフィルター)で濾過して、大きなウイルス凝集体を取り除いた。各精製ロットは、イソプロピルアルコール/ドライアイス中でスナップ凍結させ、−80℃で保存した。最大保持時間は処方後1時間であった。
【0086】
最終剤形は、0.6mLのガラスバイアルで提示される。AdCh63 ME−TRAPの各バイアルは、10mM ヒスチジン、7.5%ショ糖、35mM NaCl、1mM MgCl、0.1%PS80、0.1mM EDTA、0.5%エタノール、pH6.6に処方された1.3×1011vp/mLを含有する。(この力価は、260nmでの吸光度により決定された)。使用されるAdCh63 ME−TRAPの用量は、典型的には、皮内投与による1×10vpと5×1010vpの間である。投与される量は、任意の最新の濃度に従って変化してもよい。
【0087】
実施例2−AdCh63 ME.TRAPベクターの試験
材料と方法
マウスの免疫感作
生後6〜8週のメスBALB/cマウスは、ジョンラドクリフホスピタル、オックスフォードのバイオメディカルサービスユニットから購入し、全動物は英国内務省Animals Act Project Licenseの条件に従って保証されている。免疫感作は皮内で実施され、この経路は、他の経路、たとえば、皮下、筋肉内と比べると、より良好な免疫原性を誘発することがすでに明らかにされている[11]。アデノウイルスは、単回初回刺激を含む実験では、1×1010ウイルス粒子(v.p.)の用量で、初回刺激−追加免疫プロトコルではより低い用量の5×10vpで投与された。MVAは、T細胞応答を追加免疫するために1×10pfuの用量で使用された。ベクターはすべて、免疫感作に先立ってエンドトキシンフリーPBS中に再懸濁された。
【0088】
マカクにおける免疫感作及びT細胞応答の分析
アカゲザルは、用量5×1010v.p.のAdCh63 ME.TRAPの三角筋への筋肉内注射(マカク識別番号:0033、1029、2013及び4073)並びに皮内投与(識別番号:0043、2009、及び6015)の2つの異なる経路により免疫感作された。マカクはすべて、8週間後に、用量2×10pfuのMVA ME.TRAPでの皮内免疫感作により追加免疫を与えられた。
【0089】
ex vivoIFNγELISpotは、ME.TRAPの全領域に及ぶ4ペプチドプールでT細胞を刺激することにより実施された。TRAPに対する全応答は、個々のプールに応答を加え、DMSOのみを含有する非刺激試料の背景値を減算することにより計算された。
【0090】
ウイルスベクター
本実験において使用したすべてのウイルスベクター、すなわちAdCh63、AdC9及びMVAは、すでに記載されている導入遺伝子ME.TRAP[5、12]を発現する。本明細書の別の場所に記載しているように、インサートME.TRAPは、789アミノ酸のタンパク質をコードする2398bpのハイブリッド導入遺伝子である。MEストリングは、いくつかの他のB及びT細胞エピトープの間にBALB/c H−2KdエピトープPb9を含有する[13]。サルアデノウイルスベクターAdC9(SAdV)は、上記の通りに構築し増殖させた[14]。
【0091】
AdCh63 ME.TRAPのための製造及びベクター作製は、実施例1に記載の通りに実施した。AdCh63は、このプロトコルを使用して良好な力価で首尾よく作製されており、類似のプロトコルを使用して、代わりのサルアデノウイルスベクター骨格に基づいたME.TRAPベクターを作製してもよい。
【0092】
ex vivoIFNγELISPOT
ACK処理脾細胞又はPBMCは、最終濃度1μg/mlの免疫優性H−2Kd制限エピトープPb9(SYIPSAEKI)とともにIPVH膜プレート(Millipore社製)上で18〜20時間培養した。ELISPOTは、以前記載された通りに実施した[15]。
【0093】
ELISA
TRAP領域に対するIgG抗体は、以前記載された通りにELISAにより分析した[16]。この実験では、血清は、アデノウイルス−MVA初回刺激−追加免疫レジメでの免疫感作の4週間後に、少なくとも3匹のBALB/cマウスのグループから得た。
【0094】
寄生虫誘発
プラスモディウムベルゲイ(ANKA株クローン234)スポロゾイト(spz)は、メスハマダラカステフェンス(Anopheles stephensi)蚊の唾液腺から単離した。寄生虫は、RPMI−1640培地に再懸濁され、各マウスは静脈経路を介して合計1,000spzを受けた。血液試料は5日〜20日にかけて毎日採取され;スメアはギムザで染色され、赤血球内でのシゾントの存在についてスクリーニングされた。生存は、血液中での寄生虫の完全な不在として定義された。
【0095】
統計的分析
フローサイトメトリー試料の統計的有意性は、一元配置又は二元配置ANOVAのいずれか及びボンフェローニポストテストで分析された。統計的検査はすべて、ウィンドウズ用GraphPad Prism4.03版、GraphPad Software社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、www.graphpad.com.を使用して実施された。
【0096】
結果
マウスにおけるAdCh63 ME.TRAPの単回初回刺激による免疫原性
単回免疫感作すると、アデノウイルスベクターは強い長期のCD8+T細胞応答を誘導することができた。図2は、両方ともME.TRAP導入遺伝子をコードするAdCh63とAdC9間の比較を示している。導入遺伝子のMEストリングに免疫優性H−2Kd制限エピトープPb9(SYIPSAEKI)が存在するために、我々はウイルスベクターにより誘発される免疫応答の効力を評価することができた。我々の研究室での結果によれば、AdC9は、もっとも免疫原性なベクターの1つであり、ヒト血清型AdH5よりも優れているCD8+T細胞応答を誘導することができることが明らかになった。図2には、AdCh63 ME.TRAPは60日の期間にわたりAdC9に類似の応答を誘導することが示されている。AdCh63 CD8応答は初期のワクチン接種7日後にはAdC9よりも有意に高く、その後に有意差は見られなかった。どんなウイルスベクターワクチンもその重要な目標は、強い記憶CD8+T細胞応答を誘導する可能性であり、それに関しては、AdC9とAdCh63 ME.TRAPの両ベクターは、60日の長期間後でも類似の免疫原性を示した。
【0097】
マウスにおけるプラスモディウムベルゲイでの誘発に対する保護
本研究の結果によりはじめて、アデノウイルスベクターでの単回ワクチン接種が、プラスモディウムベルゲイスポロゾイトでの誘発によるマラリアに対する高レベルの無菌保護を誘発することができることが明らかになった。初期実験では、AdH5、AdC7及びAdC9などのベクターが、1回のみのワクチン接種(1×1010v.pの用量で)後に高い割合のマウスを保護することができることが明らかになった。図3は、ワクチン投与と誘発間の、免疫感作後すぐの14日目(a)と60日の長期間後(b)のAdCh63 ME.TRAPとAdC9の保護レベルの比較を示している。当期間にわたる両ベクターによる類似の免疫原性にもかかわらず(図2)、AdCh63 ME.TRAPにより誘発される保護レベルは、両時点でAdC9よりも優れていた。特に重要なのは、ワクチン接種後の14日目の誘発では、AdCh63が15日間感染に対してすべてのマウスを保護しており、実験の最後で6匹のうち1匹のマウスのみが感染したことを我々は見出した。AdC9が短期間(図3a)と長期間(図3b)で示した保護レベルはもっと低かった。
【0098】
初回刺激−追加免疫レジメ
AdH5での初回刺激とそれに続く同一導入遺伝子をコードするMVAでの追加免疫(A−Mレジメ)は、ベクターの単回投与と又はDNA若しくはFP9とそれに続くMVAなどの他のベクターでの初回刺激−追加免疫レジメと比較すると免疫原性を増加させることが報告されている[11]。したがって、我々は、サルアデノウイルスベクターとそれに続く8週間後のポックスウイルスベクターMVAを組み合わせた初回刺激−追加免疫レジメを使用したアプローチを試験した。図4は、AdCh63−MVAとAdC9−MVAレジメにより誘発されるCD8+T細胞応答(図4a、b)と抗体応答(図4c)間の比較を示している。免疫感作後すぐに(図4a)、AdCh63は高レベルのCD8応答を示し、AdC9応答はもっと強力であったが、統計学的差異は見られなかった。長期間の応答の分析により、単回初回刺激に対する初回刺激−追加免疫レジメの大きな優位が明らかにされた。図4bに示されるように、CD8応答は追加免疫後60日目でも依然として高く(25,000SFC/100万PBMC超)、単回ワクチン接種による同一時点でのレベル(10,000SFC/100万PBMC未満、図2)と依然対照的であった。MVA追加免疫の6か月後、免疫原性レベルは依然としてまだ10,000spot/100万PBMC超であり、試験した2つのサルアデノウイルスベクター間には有意差は見られなかった。
【0099】
このシステムでは、保護効率は細胞免疫応答を利用しているが、アデノウイルスベクターは強い導入遺伝子特異的抗体応答を誘導するという追加の利点を提供する[17]。細胞免疫応答に加えて抗体が提供する特別な保護のために、アデノウイルスベクターがヒトにおいてワクチン目的で使用される場合にはこの特徴は潜在的に重要になる。液性応答は、A−M初回刺激−追加免疫レジメにより誘発されるIgGを定量することにより評価された。図4cに示すように、抗体応答は試験された両レジメで高く、AdCh63−MVA組合せを使用すると、AdC9と比べてIgGレベルは有意に高かった。
【0100】
免疫原性レベルは初回刺激−追加免疫レジメにより改善されたために、無菌保護のレベルは逐次ワクチン接種という同一戦略を使用して分析された(図5)。両レジメにおいて追加免疫後の短い間隔及び長い間隔で顕著なレベルが見られた。しかし、AdCh63−MVAレジメは、試験したすべての時点でAdC9−MVAより優れていた。興味深いことに、AdCh63−MVAレジメは短期間では動物の100%において無菌保護を誘発した。その保護は時間とともに減少したが、保護は依然高く、際立っているのは、追加免疫ワクチン接種の6か月後でも両レジメが顕著なレベルの保護を誘導したことであった(図5c)。
【0101】
アカゲザルにおける免疫原性
多くの先行技術例では、ベクターワクチンの有効性は、マウスにおける応答と比べた場合、非ヒト霊長類又はヒトにおいて試験したときには減少することが観察される。したがって、マウスにおける上記のレジメに類似する初回刺激−追加免疫レジメがアカゲザルにおいて試験された。
【0102】
実施例1に従って調製されたAdCh63 ME.TRAPワクチンの5×1010vpの用量で7匹のアカゲザルが免疫感作された。前記ワクチンは皮内又は筋肉内のいずれかで投与されたが、経路間で免疫原性の差異は観察されなかったので、総合データが示されている。AdCh63 ME−TRAPでの免疫感作後の種々の時間に、ME−TRAPをコードする異種ウイルスベクターであるMVAでの追加免疫感作が行われた(図7参照)。データでは、AdCh63 ME−TRAPが、ヒトにおけるワクチン免疫原性を有用に予測すると広く見なされている種であるマカクザルにおいて高度に免疫原性であったことが示されている(図8)。単回免疫感作後、ELISPOTアッセイにおいて100万PBMCあたり約1000SFUの平均のT細胞応答が観察され、このワクチンインサートではヒトにおける保護に依然関連していたレベルであった(Websterら、PNAS 2005年、102:4836〜41頁)。強い抗体価もワクチン接種により誘導された。MVAでの異種追加免疫感作は、T細胞も抗体応答もはるかに高いレベルにまで追加免疫することができた。選択された時点からのT細胞の表現型の限られた分析では、CD8とCD4 T細胞の両方がワクチン接種レジメにより誘導され、これらの細胞が、インターフェロンγ、TNF及びIL2を発現する多機能細胞である可能性があることが明らかになった。
【0103】
図6aに示すように、AdCh63 ME.TRAPでの初回刺激は、ワクチン接種後4週間目に最大になる強固なT細胞応答を誘発した。興味深いことに、1匹(4073)を除くすべてのマカクが体重3〜4kg間である若年であり、もっと年長で体重のある動物番号4073(10kg超)は初回刺激すると並はずれて良好な免疫応答を示した。重要なことに、T細胞応答は、その後に続くMVA ME.TRAPでのワクチン接種により追加免疫することができ、初回刺激のピーク対追加免疫後のピークを比較すると、いくつかの場合には最大5倍の差異が見られた。免疫応答と完全なME.TRAP領域に及ぶペプチドプールを比較した後の追加の観察が行われた。T細胞応答は、AdCh63初回刺激後プールT2に主に集中していた(図6b)。しかし、MVA追加免疫は、ME.TRAPに対する免疫応答の幅を増加させるという追加の利点を与え、この場合、主な焦点はT2だけではなく完全なME.TRAP配列にも向かっていた(図6c)。重要なことに、マカクにおいて誘導されるこれらの強いT細胞応答は、おそらく、これまでマラリア抗原に対して誘導されたもっとも強い応答であり、今まで企てられたあらゆる臨床試験によりME.TRAPに対して誘導されたT細胞応答よりもはるかに高い。TRAPに対して誘導されたT細胞応答の大きさは、ヒト臨床試験において測定される保護の量と相関性があったために(Websterら、PNAS;Dunachieら、Infection and Immunity)、このワクチンレジメは、ヒトにおいて今まで試験されたどのME.TRAPワクチンよりも効果的であるはずだと我々は予測している。
【0104】
ヒトにおけるAdCh63 ME.TRAPの使用
サルアデノウイルスベクターAdCh63 ME.TRAPは、AdCh63 ME.TRAPの単回免疫感作、及び以前のアデノウイルス、それに続く8週間後のMVA追加免疫を含む初回刺激−追加免疫レジメによるヒトにおける安全性及び免疫原性を試験する第一相ヒト臨床試験において評価済みである。
【0105】
採用されたボランティア全員が健常な成人男性であった。今回はじめてチンパンジーアデノウイルスベクターがヒトにおいて評価されたので、ワクチン接種を受けるヒトの最初のグループは、非常に低用量のワクチン、10vpを受けた。これは、マカクに投与された5×1010vp用量とは対照的であってもよく、ヒトアデノウイルスベクターの以前のワクチン試験において典型的な用量である1〜10×1010vpが使用された。この低用量の10vpでは、最初の8名のボランティアにおける局所的安全性も全身的安全性も良好であった。これらの個人のうち4名は、用量2×10pfuのME−TRAPをコードするMVAでの追加免疫感作を受けた。これらの4名のボランティアのT細胞免疫原性の時間経過を、図9に平均応答として示している。ワクチンインサートに重複する15アミノ酸長ペプチドプール:T9/96TRAP15アミノ酸長に対する、及びまた20アミノ酸長ペプチドが重複する同一配列:T9/96TRAP20アミノ酸長に対する免疫原性は、ex vivo γインターフェロンELISPOTにより測定された。熱帯熱マラリア原虫の異種系統を表す20アミノ酸長ペプチド:3D7 TRAP 20アミノ酸長に対する応答も示されている。最後に、ME−ポリエピトープストリング中の主に九量体マラリアペプチドエピトープの短いストリングに対する応答(Gilbertら、Nature Biotechnol.1997年、11月;15:1280〜4頁)が示されている:ME。
【0106】
これらの結果は、使用された非常に低い投与量でも、TRAPに対する検出可能なT細胞応答が、ヒトにおけるAdCh63 ME−TRAPでの単回免疫感作後の4週間目に観察されることを示している。さらに、これらの応答はMVAワクチンにより強く追加免疫することができ、ヒトにおいて記憶T細胞がアデノウイルスベクターにより初回刺激されていることを示している。
【0107】
本明細書に引用されている特許、特許出願、及び公開されている参考文献はすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。本発明は特に、好ましい実施形態への言及とともに明らかにされ説明されているが、特許請求の範囲により包含されている本発明の範囲から逸脱することなく形式及び詳細な点に種々の変更を加えることができることは当業者により理解されるであろう。
【0108】
REFERENCES
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12 McConkey,S.J.,Reece,W.H.,Moorthy,V.S.,Webster,D.,Dunachie,S.,Butcher,G.,Vuola,J.M.,Blanchard,T.J.,Gothard,P.,Watkins,K.,Hannan,C.M.,Everaere,S.,Brown,K.,Kester,K.E.,Cummings,J.,Williams,J.,Heppner,D.G.,Pathan,A.,Flanagan,K.,Arulanantham,N.,Roberts,M.T.,Roy,M.,Smith,G.L.,Schneider,J.,Peto,T.,Sinden,R.E.,Gilbert,S.C. and Hill,A.V., Enhanced T−cell immunogenicity of plasmid DNA vaccines boosted by recombinant modified vaccinia virus Ankara in humans. Nat Med 2003. 9:729−735.
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクター。
【請求項2】
哺乳動物細胞中で導入遺伝子を発現させる調節配列に作動可能に連結された少なくとも1つの抗原をコードする導入遺伝子が安定的に組み込まれているサルアデノウイルスゲノムを含み、抗原がトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、請求項1に記載のサルアデノウイルスベクター。
【請求項3】
サルアデノウイルスゲノムが、チンパンジーアデノウイルスベクターのゲノムである、請求項2に記載のサルアデノウイルスベクター。
【請求項4】
サルアデノウイルスゲノムが、チンパンジーアデノウイルス分離株63(AdCh63)、AdCh68(AdC9)、AdC3、AdC6又はAdC7のゲノムである、請求項3に記載のサルアデノウイルスベクター。
【請求項5】
抗原が、ME.TRAPを含む、又はME.TRAPからなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のサルアデノウイルスベクター。
【請求項6】
導入遺伝子を発現させる調節配列がCMVプロモーターを含む、請求項2〜5のいずれか一項に記載のサルアデノウイルスベクター。
【請求項7】
調節配列が、HCMV IE1遺伝子のプロモーターと、イントロンAを含むHCMV IE1遺伝子の5’非翻訳領域のフラグメントとを含む、請求項6に記載のサルアデノウイルスベクター。
【請求項8】
感染性ウイルス粒子にパッケージングされたサルアデノウイルスゲノムを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のサルアデノウイルスベクター。
【請求項9】
1つ又は複数の薬学的に許容可能な媒体、担体、希釈剤、又はアジュバントと混合した請求項1〜8のいずれか一項に記載のサルアデノウイルスベクターを含む免疫原性組成物。
【請求項10】
1つ又は複数の薬学的に許容可能な媒体、担体、希釈剤、又はアジュバントと混合した請求項1〜8のいずれか一項に記載のサルアデノウイルスベクターを含むワクチン組成物。
【請求項11】
ヒト対象においてトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)に対する免疫応答を誘発する方法であって、対象に請求項9に記載の免疫原性組成物又は請求項10に記載のワクチン組成物を、前記対象においてTRAPに対する免疫応答を誘発するのに十分な量で投与するステップを含む方法。
【請求項12】
免疫原性組成物又はワクチン組成物を、TRAPに対するT細胞媒介応答を誘発するのに十分な量で投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
免疫原性組成物又はワクチン組成物を単回用量免疫感作として投与する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
ヒト対象においてトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)に対する免疫応答を誘発する方法であって、
i)初回刺激用量の請求項9に記載の免疫原性組成物又は請求項10に記載のワクチン組成物を対象に投与するステップと、
ii)トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)を含む抗原をコードする非アデノウイルスベクターを含む追加免疫用量の免疫原性又はワクチン組成物を同一対象に投与するステップであって、初回刺激用量の少なくとも2週間後に追加免疫用量を投与するステップと
を含み、それによって前記対象にTRAPに対する免疫応答が誘発される方法。
【請求項15】
追加免疫用量の8週間後に追加免疫用量を投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップii)において投与される非アデノウイルスベクターが、組換えポックスウイルスベクター又はプラスミドDNAベクターである、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
組換えポックスウイルスベクターが改変ワクシニアアンカラ(MVA)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
i)トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクターを含む初回刺激組成物と、
ii)非アデノウイルスベクターを含む追加免疫組成物であって、非アデノウイルスベクターがトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む抗原もコードする追加免疫組成物と
を含む製品の組合せ又はキット。
【請求項19】
サルアデノウイルスベクターが、哺乳動物細胞において導入遺伝子を発現させる調節配列に作動可能に連結された少なくとも1つの抗原をコードする導入遺伝子が安定的に組み込まれているサルアデノウイルスゲノムを含み、抗原がトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、請求項18に記載の製品の組合せ又はキット。
【請求項20】
初回刺激組成物と追加免疫組成物が両方ともトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む同一の抗原をコードする、請求項18又は請求項19に記載の製品の組合せ又はキット。
【請求項21】
初回刺激組成物と追加免疫組成物が両方ともME.TRAPをコードする、請求項18〜20のいずれか一項に記載の製品の組合せ又はキット。
【請求項22】
ワクチンとして使用するための、トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクター。
【請求項23】
ベクターが、哺乳動物細胞において導入遺伝子を発現させる調節配列に作動可能に連結された少なくとも1つの抗原をコードする導入遺伝子が安定的に組み込まれているサルアデノウイルスゲノムを含み、前記抗原がトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、請求項22に記載の使用のためのサルアデノウイルスベクター。
【請求項24】
ヒト対象においてトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)に対する免疫応答を誘発するのに使用するための薬物の製造における、トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクターの使用。
【請求項25】
抗マラリアワクチンとして使用するための薬物の製造における、トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む抗原をコードする組換え複製欠損サルアデノウイルスベクターの使用。
【請求項26】
サルアデノウイルスベクターが、哺乳動物細胞において導入遺伝子を発現させる調節配列に作動可能に連結された少なくとも1つの抗原をコードする導入遺伝子が安定的に組み込まれているサルアデノウイルスゲノムを含み、抗原がトロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)又はその少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、請求項24又は請求項25に記載の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−523137(P2010−523137A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502560(P2010−502560)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001175
【国際公開番号】WO2008/122769
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(503342649)アイシス イノヴェイション リミテッド (13)
【出願人】(509280453)オカイロス アーゲー (3)
【Fターム(参考)】