説明

マルチアプリケーションICカード、およびICカード

【課題】異なるカード規格のICモジュールを複数備えているにもかかわらず、1個のリーダライタのみで各ICモジュールとの間で個別に送受信を確立できるマルチアプリケーションICカードを提供する。併せてICカードの構造を簡素化して全体コストを削減する。
【解決手段】カード本体4に、第1ICモジュール1と、第2ICモジュール2と、アンテナ3とを設ける。アンテナ3の始端リード部8、および終端リード部9のそれぞれに、第1・第2の両ICモジュール1・2を並列接続して、両ICモジュール1・2でアンテナ3を共有する。リーダライタ20に、個々のICモジュール1・2に対応したアプリケーションプログラムを格納する。リーダライタ20から送信される起動コマンドの違いで、複数のICモジュール1・2を個別に起動させて、リーダライタ20と前記ICモジュール1・2のひとつとが択一的に送受信できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でデータを送受信する複数のICモジュールを備えたマルチアプリケーションICカード、およびICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のICカードは、例えば特許文献1に公知である。そこでは、第1アンテナおよび第1ICモジュールと、第2アンテナおよび第2ICモジュールと、第1・第2の両ICモジュールに接続されるCPUチップなどをカード本体に実装して、非接触式のマルチアプリケーションICカードを構成している。この種のICカードに類似するICカードは特許文献2、3にも見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4035873号公報(段落番号0030、図3、図5)
【特許文献2】特開2009−043167号公報(段落番号0015、図1)
【特許文献3】特開2005−190043号公報(段落番号0011、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のマルチアプリケーションICカードによれば、規格が異なる第1・第2の両ICモジュールで送受信を行なって、1枚のICカードで2種類のカード機能を発揮できる。例えば、身分証、登録証、クレジットカードなどの個人認証機能、許可証、免許証、パスポートなどの資格認証機能、あるいは電子通貨機能などの各種のカード機能から選択される、ふたつのカード機能を発揮することができる。さらに、ICモジュールおよびアンテナを追加することにより、3以上のカード機能を発揮できるマルチアプリケーションICカードとすることができるであろう。
【0005】
しかし、各ICモジュールごとに専用のアンテナを設けるので、ICカードの構造が複雑になるのはもちろんのこと、各構成部品をカード本体に組み付けるのに多くの手間が掛かり、ICカードの全体コストが嵩むのを避けられない。また、一方のカード機能を利用するとき、他方のカード機能を継続して利用するには、各カード機能に対応した2種類のリーダライタを用意する必要があり、リーダライタの設置費用が嵩みカード発行者の経済的な負担が増す。リーダライタを設置するのに必要なスペースも大となる。特許文献2、3のマルチアプリケーションICカードにおいても同様の問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、異なるカード規格のICモジュールを複数備えているにもかかわらず、1個のリーダライタのみで各ICモジュールとの間で個別に送受信を確立でき、したがって、ICカードの使用現場における使用形態を簡素化して利便性を向上できるマルチアプリケーションICカードを提供することにある。本発明の目的は、ICカードの構造を簡素化して、従来のICカードに比べて全体コストを削減でき、したがってカード発行者の経済的な負担を減少できるマルチアプリケーションICカードを提供することにある。本発明の目的は、ICモジュールやアンテナの組立をより少ない手間で確実に行なえるマルチアプリケーションICカードを提供することにある。本発明の目的は、複数のICモジュールを備えているにもかかわらず、1個のリーダライタのみで各ICモジュールとの間で個別に送受信を確立できるICカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマルチアプリケーションICカードは、カード本体4に、それぞれ異なるカード規格のアプリケーションプログラムが格納された複数個のICモジュール1・2と、1個のアンテナ3とが設けてある。ICモジュール1・2は、アンテナ3の始端リード部8、および終端リード部9に対してそれぞれ並列接続されてアンテナ3を共有している。リーダライタ20には、個々のICモジュール1・2に対応したアプリケーションプログラムが格納してある。リーダライタ20から送信される起動コマンドの違いで、複数のICモジュール1・2を個別に起動させて、リーダライタ20と前記ICモジュール1・2のひとつとが択一的に送受信できることを特徴とする。本発明において異なるカード規格とは、非接触型ICカードにおけるICモジュールの規格を意味し、現状では、密着型、近接型(タイプA、タイプB)、近傍型、遠隔型などが知られている。
【0008】
アンテナ3の共振周波数を、ICモジュール1・2のいずれかひとつのカード規格に対応した電磁波の周波数に一致させる。
【0009】
カード本体4に第1ICモジュール1と、第2ICモジュール2を実装する。両ICモジュール1・2のそれぞれに、一対の接続端子部15・16を設ける。接続端子部15・16を、一対の接続リード17で並列に接続する。接続リード17の一方に始端リード部8を接続し、残る接続リード17に終端リード部9を接続する。
【0010】
カード本体4に第1ICモジュール1と、第2ICモジュール2を実装する。両ICモジュール1・2のそれぞれに、一対の接続端子部15・16を設ける。始端リード部8および終端リード部9の導出中途部を、第1ICモジュール1の一対の接続端子部15・15に電気的に接続する。始端リード部8および終端リード部9の導出端を、第2ICモジュール2の一対の接続端子部16・16に電気的に接続する。
【0011】
本発明に係るICカードにおいては、カード本体4に、カード規格が同じ複数個のICモジュール1・2と、1個のアンテナ3とが設けてある。前記ICモジュール1・2は、アンテナ3の始端リード部8、および終端リード部9に対してそれぞれ並列接続されてアンテナ3を共有している。リーダライタ20と前記複数のICモジュール1・2の少なくともいずれかひとつとの間で通信を行なうことができる。
【0012】
前記複数個のICモジュール1・2は、それぞれアンチコリジョン対応のICモジュールで構成する。リーダライタ20と、複数のICモジュール1・2のひとつとの間で択一的に送受信できるようにする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマルチアプリケーションICカードでは、異なるカード規格の複数個のICモジュール1・2をアンテナ3に並列接続してアンテナ3を共有できるようにした。また、リーダライタ20から送信される起動コマンドの違いで、各ICモジュール1・2を個別に起動させて、リーダライタ20とICモジュール1・2のひとつとが択一的に送受信できるようにした。
【0014】
したがって、本発明のマルチアプリケーションICカードによれば、カード規格が異なる複数のICモジュール1・2とリーダライタ20との間で個別に送受信を行なって、1枚のICカードで複数種のカード機能を発揮できる。また、一方のカード機能を利用したのち、他方のカード機能を継続して利用する場合であっても、1個のリーダライタ20のみで対応できるので、ICカードの使用現場における使用形態を簡素化して利便性を向上できる。さらに、リーダライタ20の設置費用、および設置に必要なスペースを小さくできる。加えて、1個のアンテナ3を複数のICモジュール1・2で共有するので、ICカードの構造を簡素化して、従来のICカードに比べて全体コストを削減でき、その分だけカード発行者の経済的な負担を減少できる。また、リーダライタ20から送信される起動コマンドの違いで、各ICモジュール1・2を個別に起動させるので、アンチコリジョンに非対応のICモジュールであっても、支障なく適用できる。
【0015】
アンテナ3の共振周波数をICモジュール1・2のいずれかひとつのカード規格に対応した電磁波の周波数に一致させると、先のカード規格に対応するひとつのICモジュールに関して、アプリケーションプログラムを変更する必要もなくそのまま使用できる。例えば、カード規格に対応して市販されているICモジュールを購入してカード本体に実装すればよいので、マルチアプリケーションICカードを低コスト化できる。
【0016】
第1・第2の両ICモジュール1・2に一対の接続端子部15・16を設け、接続端子部15・16を一対の接続リード17で並列に接続したうえで、その一方に始端リード部8を、他方に終端リード部9を接続すると、より少ない手間で確実に組立を行なえる。例えば、両ICモジュール1・2の接続端子部15・16を、あらかじめ一対の接続リード17・17で接続することにより、両ICモジュール1・2と接続リード17・17の組立を、カード本体4の外で確実に行なえる。さらに、両ICモジュール1・2をカード本体4に組み付けて位置決めした状態で、始終端の両リード部8・9を接続リード17・17に接続すればよく、始終端の両リード部8・9の組立をより少ない手間で確実に行なえる。
【0017】
始終端の両リード部8・9の導出中途部を、第1ICモジュール1の接続端子部15に接続し、始終端の両リード部8・9の導出端を、第2ICモジュール2の接続端子部16に接続すると、アンテナ3の一部を利用して両ICモジュール1・2を並列接続できる。したがって、接続リード17を省略して、その分だけマルチアプリケーションICカードの製造に要する工数を減らすことができる。
【0018】
本発明に係るICカードにおいては、カード規格が同じ複数のICモジュール1・2とリーダライタ20との間で個別に、あるいは両ICモジュール1・2のいずれかひとつと送受信を行なうことができる。両ICモジュール1・2とリーダライタ20との間で個別に通信を確立する場合には、1枚のICカードで複数種のカード機能を発揮できるなど、マルチアプリケーションICカードと同様の作用効果を発揮できる。さらに、一方のICモジュールを他方のICモジュールのバックアップとして、あるいは一方のICモジュールを他方のICモジュールのメモリーとして、記録容量を拡張することができる。片方のICモジュールが破壊し、あるいは動作不良に陥ったような場合であっても、他方のICモジュールによって支障なくカード機能を発揮することができる。個々のICモジュールに異種の鍵を設定しておくことにより、ICカードに2重のセキュリティ機能を付与することができる。また、情報を複数のICモジュールに記録して置くことにより、複数のICモジュールのデータを復号して初めて、意味を成す有効なデータが得られるようにようにすることができ、セキュリティ性をさらに向上することができる。
【0019】
複数個のICモジュール1・2のそれぞれをアンチコリジョン対応のICモジュールで構成すると、両ICモジュール1・2とリーダライタ20との間で個別に通信を確立する場合に、通信の衝突が発生するのを確実に防止できる。したがって、リーダライタ20と複数のICモジュール1・2のひとつとの間で、択一的な送受信を確実に行なって、1枚のICカードに複数種のカード機能を的確に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ICカードの一部を破断した平面図である。
【図2】ICカードの等価回路を示す説明図である。
【図3】リーダライタとICカードの平面図である。
【図4】別の実施例に係るICカードの一部を破断した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施例) 本発明に係るマルチアプリケーションICカード(以下、単にICカードという。)の実施例を図1に示す。ICカードは、第1ICモジュール(ICモジュール)1と、第2ICモジュール(ICモジュール)2と、1個のアンテナ3とをカード本体4に実装して構成する。カード本体4はISOカード規格に合致する、外形が所定寸法のカードからなり、先の各部材1〜3が実装されるカード基部4aと、各部材1〜3の外面を覆う保護シート4bなどで構成する。カード基部4aは絶縁性を備えたプラスチックシート、フィルム、または絶縁性の紙などを積層して形成でき、あるいはプラスチック成形によって形成することができる。
【0022】
アンテナ3は、銅の細線をカード基部4aの各辺部に沿って渦巻状に配置して構成してあり、全体が四角枠状に形成してある。アンテナ3は、渦巻き状のコイル部7と、コイル部7から平行に導出される始端リード部8および終端リード部9とで構成してある。始端リード部8および終端リード部9は、コイル部7より内側のカード基部4aの表面へ向かって、カード本体4の長辺部と平行に導出してある。これらの両リード部8・9の導出領域に臨む状態で、第1・第2の両ICモジュール1・2を左右に隣接配置してカード本体4に固定してある。
【0023】
第1ICモジュール1および第2ICモジュール2は、それぞれ金属シートにエッチングを施して形成される長方形状のベース11・12と、各ベース11・12の片面にモールドされるICチップ13・14とで構成してある。両ICモジュール1・2の全厚寸法は0.4mmである。各ICチップ13・14を間に挟む各ベース11・12の短辺部には、一対の接続端子部15・16が設けてある。第1ICモジュール1は、例えば近接型のICカード用のICモジュールと同じ規格のアプリケーションプログラムが格納してあり、さらに各種のデータを格納するメモリー領域などを備えている。また、第2ICモジュール2は、例えば遠隔型のICカード用のICモジュールと同じ規格のアプリケーションプログラムが格納してあり、さらに各種のデータを格納するメモリー領域などを備えている。
【0024】
異なるカード規格のICモジュール1・2でアンテナ3を共有するために、両ICモジュール1・2の一対の接続端子部15・16が、両リード部8・9に対して並列接続してある。具体的には、第1ICモジュール1の接続端子部15と、第2ICモジュール2の接続端子部16とを、一対の接続リード17・17で並列に接続し、一方の接続リード17に始端リード部8を接続し、他方の接続リード17に終端リード部9を接続している。なお、両ICモジュール1・2は、それぞれの接続端子部15・16を一対の接続リード17・17で接続したのち、カード基部4aに固定しておくことにより、始端リード部8および終端リード部9の両接続端子部15・16に対する接続を簡便に行なうことができる。
【0025】
両ICモジュール1・2をアンテナ3に並列接続した状態は、図2に示す等価回路に等しく、アンテナ3がコイルに相当し、両ICモジュール1・2はコンデンサに相当する。この等価回路における共振周波数は、f=1/2Π×√(L×C)で求めることができる。但し、Lはコイルのインダクタンス、Cはコンデンサの静電容量である。コンデンサが並列接続してある場合の、コンデンサの静電容量C=(C1+C2)である。したがって、上記の式は、f=1/2Π×√(L×(C1+C2))と表記することができ、この式から算出された共振周波数に対応してアンテナ3の長さおよび巻き数を調整した。
【0026】
得られたアンテナ3の共振周波数は、両ICモジュール1・2のうち、例えば第1ICモジュール1用の電磁波の周波数に一致させてあり、対応するリーダライタ20と先の周波数の電磁波を介して送受信を行なう。もちろん、電磁波の周波数は、両ICモジュール1・2のカード規格に対応した電磁波の周波数と異なっていてもよい。ちなみに、両ICモジュール1・2を並列接続した場合のアンテナ3は、1個のICモジュールに対応してアンテナを設ける場合に比べて、アンテナの長さを短くできる傾向があり、したがって、銅の細線の使用量を減らして、アンテナ3の占有面積を小さくできる。これは、共振周波数fを一定とするとき、コンデンサの静電容量Cが大きいほどコイルのインダクタンスLを小さくでき、インダクタンスLが小さいほどアンテナ3の長さを小さくできるからである。
【0027】
2個のICモジュール1・2は、それぞれのカード規格に応じて異なるアプリケーションプログラムが格納してあるので、これを使い分ける必要がある。そのために、リーダライタ20には、個々のICモジュール1・2に対応したアプリケーションプログラムを格納しておき、リーダライタ20から送信される起動コマンドの違いで、両ICモジュール1・2を個別に起動できるようにしている。
【0028】
例えば、第1ICモジュール1に対応する起動コマンドを含む送信データがリーダライタ20から送信された場合には、第1ICモジュール1が起動コマンドを認識して起動し、リーダライタ20と送受信を開始する。このときの起動コマンドは第2ICモジュール2にも同時に送信されるが、第2ICモジュール2は起動コマンドであることを認識できないので起動することはない。同様に、第2ICモジュール2に対応する起動コマンドを含む送信データをリーダライタ20から送信することにより、第2ICモジュール2のみを起動させて、リーダライタ20との送受信を確立できる。したがって、リーダライタ20と個々のICモジュール1・2とは択一的に送受信できることとなる。
【0029】
ユーザーが希望するICカードの使用目的に応じて、特定のICモジュールとリーダライタと間の送受信を確立するために、リーダライタ20に切り換えスイッチを設けることができる。その場合には、ユーザーが希望するICカードの使用目的に対応してスイッチを切り換えることにより、特定のICモジュールに対応した送信データを送信することができる。あるいは、いずれか一方のICモジュールに対応した起動コマンドを含む送信データを発信して、現在応答しているICモジュールのカード機能の内容を、リーダライタが接続されたコンピュータのディスプレイで表示することができる。その場合には、ユーザーの希望するICカードの使用目的が、現在表示されているカード機能と合致しているか否かで、タッチスイッチ等で送信データを切り換えることができる。
【0030】
本発明者は、上記構造のICカードを試作し、リーダライタ20との間で送受信できるか否かを確認した。その結果、各ICモジュール1・2とリーダライタ20とは、問題なく個別に送受信でき、データの読み込みや書き換えを支障なく行なうことができた。
【0031】
以上のように構成したICカードによれば、規格が異なる第1・第2の両ICモジュール1・2とリーダライタ20との間で送受信を行なって、1枚のICカードで2種類のカード機能を発揮できる。たとえば、第1ICモジュール1でICカードの所有者の身分証の機能を発揮し、第2ICモジュール2で電子通貨機能を発揮することができる。また、一方のカード機能を利用したのち、他方のカード機能を継続して利用する場合であっても、1個のリーダライタ20のみで対応できるので、ICカードの使用現場における使用形態を簡素化して利便性を向上できる。さらに、リーダライタ20の設置費用、および設置に必要なスペースを小さくできる。
【0032】
先に説明したように、現在応答しているICモジュールのカード機能の内容をディスプレイで表示することにより、勘違いによるICカードの誤使用を防ぐことができる。1個のアンテナ3を2個のICモジュール1・2で共有するので、ICカードの構造を簡素化して、従来のICカードに比べて全体コストを削減でき、したがってカード発行者の経済的な負担を減少できる。
【0033】
図4は、ICカードの別の実施例を示す。そこでは、第1ICモジュール1と、第2ICモジュール2を、カード基部4aの所定位置に固定しておき、始端リード部8および終端リード部9を両ICモジュール1・2に接続するようにした。詳しくは、始端リード部8および終端リード部9の導出中途部を、第1ICモジュール1の一対の接続端子部15・15に電気的に接続し、始端リード部8および終端リード部9の導出端を、第2ICモジュール2の一対の接続端子部16・16に電気的に接続した。また、図4のICカードにおいては、第3のICモジュール30と、接触式の入出力端子31とをカード本体4に設けて、ICカードをさらに多機能化できるようにした。
【0034】
上記の実施例では、第1ICモジュール1と第2ICモジュール2のカード規格が異なる場合について説明したが、本発明に係るICカードは、次の形態で実施することができる。第1ICモジュール1と第2ICモジュール2のカード規格を同じにして、両ICモジュール1・2を、図1あるいは図4と同様にアンテナ3の始端リード部8および終端リード部9に対して並列に接続する。両ICモジュール1・2は、アンチコリジョン対応のICモジュールで構成してあり、リーダライタ20と両ICモジュール1・2のひとつとの間で択一的に送受信を行なって、各ICモジュール1・2ごとにデータの更新や格納を行なうことができる。
【0035】
上記のICカードによれば、先に説明したマルチアプリケーションICカードと同様に、1枚のICカードで2種類のカード機能を発揮できるなど、マルチアプリケーションICカードと同様の作用効果を発揮できる。さらに、一方のICモジュールを他方のICモジュールのバックアップとして使用することにより、片方のICモジュールが破壊し、あるいは動作不良に陥ったような場合であっても、他方のICモジュールによって支障なくカード機能を発揮することができる。個々のICモジュールに異種の鍵を設定しておくことにより、ICカードに2重のセキュリティ機能を付与することができる。また、情報を複数のICモジュールに記録して置くことにより、複数のICモジュールのデータを復号して初めて、意味を成す有効なデータが得られるようにようにすることができ、セキュリティ性をさらに向上することができる。
【0036】
上記のICカードにおいては、両ICモジュール1・2の一方をメモリー用ICとして使用することができる。その場合には、リーダライタ20と両ICモジュール1・2のいずれか一方との間で通信を確立して、他方のICモジュールをメモリーとして使用することにより、前記一方のICモジュールの記録容量を拡張することができる。これにより、ICカードのメモリー容量を概ね2倍に増加して格納可能なデータ量を拡大できる。
【0037】
図1から図4に係る実施例では、近接型と遠隔型の2種のICモジュールをカード本体に組み込む場合について説明したがその必要はなく、密着型、近接型(タイプA、タイプB)、近傍型、遠隔型、などの各種のICモジュールのうちのふたつ以上を、自由に組み合わせることができる。
【0038】
本発明のマルチアプリケーションICカード、およびICカードは、アンテナ3をICチップに直接接合したものであってもよい。また、アンテナ3とICモジュール1・2の接合形態に関して、アンテナ3がワイヤで形成してある場合には抵抗溶接で、またアンテナ3がアルミニウムまたは銅をエッチングして形成してある場合には、フリップチップ実装(接着剤)で、それぞれ接合することができる。アンテナ3の配置形態は、実施例で説明した四角枠状である必要はなく、丸枠状や矩形波状など任意形状に形成することができる。アンテナ3は、銅の細線で形成する必要はなく、エッチング(フォトレジスト法)で形成することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 第1ICモジュール
2 第2ICモジュール
3 アンテナ
4 カード本体
8 始端リード部
9 終端リード部
20 リーダライタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード本体(4)に、それぞれ異なるカード規格のアプリケーションプログラムが格納された複数個のICモジュール(1・2)と、1個のアンテナ(3)とが設けてあるICカードであって、
前記ICモジュール(1・2)は、アンテナ(3)の始端リード部(8)、および終端リード部(9)に対してそれぞれ並列接続されてアンテナ(3)を共有しており、
リーダライタ(20)には、個々のICモジュール(1・2)に対応したアプリケーションプログラムが格納されており、
リーダライタ(20)から送信される起動コマンドの違いで、複数のICモジュール(1・2)を個別に起動させて、リーダライタ(20)と前記ICモジュール(1・2)のひとつとが択一的に送受信できることを特徴とするマルチアプリケーションICカード。
【請求項2】
アンテナ(3)の共振周波数が、前記ICモジュール(1・2)のいずれかひとつのカード規格に対応した電磁波の周波数に一致させてある請求項1に記載のマルチアプリケーションICカード。
【請求項3】
カード本体(4)に第1ICモジュール(1)と、第2ICモジュール(2)が実装されており、
両ICモジュール(1・2)のそれぞれに、一対の接続端子部(15・16)が設けられており、
前記接続端子部(15・16)が、一対の接続リード(17)で並列に接続されており、
前記接続リード(17)の一方に始端リード部(8)が接続され、残る接続リード(17)に終端リード部(9)が接続してある請求項2に記載のマルチアプリケーションICカード。
【請求項4】
カード本体(4)に第1ICモジュール(1)と、第2ICモジュール(2)が実装されており、
両ICモジュール(1・2)のそれぞれに、一対の接続端子部(15・16)が設けられており、
始端リード部(8)および終端リード部(9)の導出中途部が、第1ICモジュール(1)の一対の接続端子部(15・15)に電気的に接続されており、
始端リード部(8)および終端リード部(9)の導出端が、第2ICモジュール(2)の一対の接続端子部(16・16)に電気的に接続してある請求項2に記載のマルチアプリケーションICカード。
【請求項5】
カード本体(4)に、カード規格が同じ複数個のICモジュール(1・2)と、1個のアンテナ(3)とが設けてあるICカードであって、
前記ICモジュール(1・2)は、アンテナ(3)の始端リード部(8)、および終端リード部(9)に対してそれぞれ並列接続されてアンテナ(3)を共有しており、
リーダライタ(20)と前記複数のICモジュール(1・2)の少なくともいずれかひとつとの間で通信を行なうことができることを特徴とするICカード。
【請求項6】
前記複数個のICモジュール(1・2)が、それぞれアンチコリジョン対応のICモジュールで構成されており、
リーダライタ(20)と、複数のICモジュール(1・2)のひとつとの間で択一的に送受信できる請求項5に記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−70321(P2011−70321A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219615(P2009−219615)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(591009093)マクセル精器株式会社 (30)
【Fターム(参考)】