説明

マルチチャンネル音響システムにおけるマルチチャンネル処理方法

本発明は、マルチチャンネル音響システムにおけるマルチチャンネル処理方法に関する。それに関して、まずチャンネルまたはチャンネルミックスを独立チャンネルに分割する。その後に、パラメータであるチャンネルフェーダ、スレッシュホールド、リリースおよび出力レベルの値を調整することによって、この独立チャンネルを制限する。独立チャンネルの符号化がそれに続く。エンコードサラウンドミックスを、デコードされるミックスのデータ伝送体として機能させるだけではなく、並行してそれ自体がステレオおよびモノラルに対して存在し得るようにこの方法を発展させるために、本発明は、プロセスステップc)で、少なくとも2つのチャンネルが均一な出力レベル値に圧縮および/または制限され、1つのチャンネルに、それぞれ処理されるオーディオマテリアル毎に、調整されるべき、逸れた出力レベル値が供給され、それ以外の各チャンネルは、均一な出力レベル値より小さい少なくとも1つのデシベルである出力レベル値を有するように圧縮および/または制限され、プロセスステップd)に続いて、パラメータであるチャンネルフェーダ、スレッシュホールド、リリースおよび出力レベルの少なくとも1つの値を調整することによって、エンコード(符号化)ステレオ集合体へまとめられた独立チャンネルの更なる制限が行われることを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチャンネル音響システム、特にサラウンドマルチチャンネル音響技術におけるマルチチャンネル処理方法に関し、以下のプロセスステップ、則ち
a)チャンネルまたはチャンネルミックスを独立チャンネルへ分割するステップと、
b)パラメータであるチャンネルフェーダを調整することによって、生じた独立チャンネルを処理するステップと、
c)パラメータであるチャンネルフェーダ、スレッシュホールド、リリースおよび出力レベルの値を調整することによって、独立チャンネルを制限するステップと、
d)独立チャンネルをエンコードするステップと
を有する。
【背景技術】
【0002】
マルチチャンネル音響システムの開発は、特にドルビー研究所により進められている。70年代にドルビー研究所により考案された「ドルビーサラウンド」を引き継いで、今日までに例えばドルビープロロジック、プロロジック2、サークルサラウンド、サークルサラウンド2などのいわゆる「マトリックスサラウンド方式」が存在している。このようにして、7.1チャンネル、則ちチャンネルFL(FL=左フロント(Front left))、チャンネルC(C=センター(center))、チャンネルFR(FR=右フロント(Front right))、サイドのサラウンドチャンネルLS(左サラウンド(Leftsurround))、RS(右サラウンド(Rightsurround))、バックのサラウンドチャンネルBL(左バック(Back left))、BR(右バック(Back right))並びにチャンネルLFE(低域効果音(low frequency effect))をエンコード(符号化)する可能性が生じた。これらのチャンネルから2つの伝送チャンネルLt(L=左、t=総数)、Rt(R=右、t=総数)がマトリックス化され、これらは、対応するデコードにより再び元のチャンネルに分配するための、則ちデコード後に元のチャンネルとして再生されるための全ての情報を含む。エンコード(符号化)では、とりわけサラウンドチャンネルLS、RS、BL、BR内の情報の音響部分が+/−90°位相をずらしてチャンネルLおよびRへ加算され、音量レベルが少し下がり、フロントチャンネルR、L内へ埋め込まれる。
【0003】
マルチチャンネル音響処理において、独立チャンネルのこのエンコードには、更なるプロセスステップが先行する。則ち、各構成のステレオ/モノラルからサラウンドへのオーディオマテリアルのアップミキシングの領域における慣例のマルチチャンネル処理プロセスの第1ステップは、チャンネルまたはチャンネルミックスの独立チャンネルへの分割である。この分割は、対応するソフトウェアによって実現することができる。この分割後に、独立チャンネルに更なる処理をして、特に、マルチチャンネル圧縮/制限によって、元のステレオミックスなどに比べてマルチチャンネルミックスの安定性が保証されるようにする。このためにコンプレッサ/リミッタが設けられる。コンプレッサ/リミッタは、過変調を防止するために最大レベルを超過しないようにする制限器である。また、これらは、楽器群/歌声または話し言葉の音量/音声調整器と理解される。さらにこれらは、チャンネルまたはチャンネルミックスの独立チャンネルへの分割によって生じるエネルギー損失の一部を、エンコード前に補償する。この場合、各独立チャンネルまたはチャンネル群に1つのコンプレッサ/リミッタが割り当てられる。コンプレッサおよび/またはリミッタ内で、パラメータであるチャンネルフェーダ、スレッシュホールド、(存在する場合には)アタック、リリース並びにアウトプットレベル(出力レベル)の値を調整することによって独立チャンネルの互いの関係が調整される。この調整によって、すでにエンコード前に独立チャンネルの音量−/音声バランスを互いに安定化させることができるようになる。音響スタジオ内の重要な成分を表すミキシングコンソール内で、チャンネルフェーダはボリュームを使用して、それぞれ独立チャンネルの音量を調整する。チャンネルフェーダの標準音位置は0dBである。1つのチャンネルフェーダが0dBに設定されると、最初からこの独立チャンネルにある信号は、対応するチャンネル列において元から均一にされ、正しく基準化され中間に調整されたゲイン値を仮定するように響き始める。このチャンネルゲイン値は、チャンネルフェーダを通過する前の信号の予備増幅を調整する。スレッシュホールド値は、チャンネルフェーダにある信号の閾値のように作用する。この場合、そこにある信号がスレッシュホールド値を超えるとすぐにコンプレッサ/リミッタがその信号を制限するように働く。リリース値は、その信号が再びスレッシュホールド値より低下した後に、再び零位置に戻すためにコンプレッサ/リミッタに必要な時間に関する情報を提供する。アタック値は、スレッシュホールド値超過の際の反応時間を確定する。出力レベルは、コンプレッサ/リミッタによる処理後、チャンネルの信号がどのくらい強いかを最終的に示す。出力レベルは、ある意味では信号増幅器である。
【0004】
冒頭で挙げられた方式の方法は、ここに略述されたマトリックスサラウンド技術の範囲では、ほとんど容認されないか、わずかに容認されるだけである。関係専門文献には、マトリックスサラウンド技術が、今日のディスクリートディジタル方式と肩を並べることができないとさえ確言されている(例えばChristian Birkner「サラウンド、マルチチャンネル音響技術への導入(Surround,Einfuehrung in die Mehrkanaltontechnik)(非特許文献1)」、PPVプレッセプロジェクトフェアラグスゲーエムベーハー(Presse Projekt Verlags GmbH)、ベルクキルヒェン、2002年を参照)。これは、とりわけ、通常の技術的水準にしたがって作成されたLt、Rtステレオの総和は、テレビジョン(TV)領域、ラジオおよび音楽領域ではほぼ百パーセントプログラム内で処理されるような、慣習的に作製されたステレオミックスに比べて音質において遅れを取らぬようにすることができないという知見から生じる。エンコードにより生じる位相のずれは、音響を弱め、周波数特性に影響するので、これは「弱く曖昧に」聞こえる。
【0005】
他方では、マトリックスサラウンド技術は、使用可能な互換性サラウンド方式に対する全ての要求を満足する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Christian Birkner著「サラウンド、マルチチャンネル音響技術への導入(Surround,Einfuehrung in die Mehrkanaltontechnik)」、PPVプレッセプロジェクトフェアラグスゲーエムベーハー(Presse Projekt Verlags GmbH)、ベルクキルヒェン、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、この問題を鑑み、示された従来技術の価値を認めて、本発明は、Lt、Rtエンコードサラウンドミックスが、デコードされるミックスのデータ伝送体として機能するだけではなく、並行してステレオおよびモノラルに対して独自に存在し、考案された方法で処理することによって、必要に応じてその品質を改善できるように、冒頭で挙げられた方式の方法を発展させるという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴によって解決される。本発明の有利な形態は、従属請求項で明らかになる。
【0009】
本発明によると、チャンネルフェーダは均一な値に調整され、プロセスステップc)では、少なくとも2つのチャンネルが均一な出力レベル値に制限され、この場合、チャンネルC(センター)は出力レベル値内で可変であり、それ以外の各チャンネルは、2つのチャンネルの均一な出力レベル値より小さい少なくとも1つのデシベルである出力レベル値を有するように制限され、プロセスステップd)に続いて、パラメータであるチャンネルフェーダ、スレッシュホールド、リリースおよび出力レベルの内の少なくとも1つの値を調整することによって、エンコードチャンネルの更なる圧縮および/または制限が行われる。
【0010】
それに従って、例えばまずプロセスステップb)において、基本位置で独立チャンネル、好ましくは5つの独立チャンネルが、均一なチャンネルフェーダ値(音量)に調整される。すると、5.1システム内の第6チャンネルは、処理されるオーディオマテリアルに関係して、例えばより高いチャンネルフェーダ値を取得するであろう。この値は、好ましくは0.1〜5dbである。この基本調整は、本発明の範囲では、全プロセッシングによって維持されるか、または手動で変更することも可能である。これは、6チャンネル全て(5.1構成の例)に関して適用されるであろう。チャンネルフェーダ値を標準化調整または手動調整した後に、信号は、プロセスステップc)での制限のために転送される。
【0011】
本発明によると、スレッシュホールドおよびリリースを等しく調整する場合に、少なくとも2つのチャンネルを均一な出力レベル値に制限することができ、この場合、1つのチャンネルは、スレッシュホールドにおいても出力レベルにおいても特定の基準値内で自由に、則ち処理されるオーディオマテリアルに関係させて調整することができる。
【0012】
本発明は、独立チャンネルへの分割と同時に、他方では音量/音声の配置に作用し、ミックス内に位相位置を有する、エネルギーの制御できない分割が起こるという知見に基づく。則ち、チャンネルFLおよびFRに整合し、音量および音声が最適となっている作製ステレオミックスが分割されると、元のバランスが後々まで壊れてしまう結果となる。ミックス内のバランス、位相位置も、音量/音声の配置も維持できない。則ち、エネルギーの分割は、結果として独立チャンネルを弱めてしまう。本発明の基本となる概念は、制限することで、元の型のミックスが再び作り出されるか、音響および表現において改善されるように独立チャンネル間のバランスを調整することである。サラウンドミックス内の位相位置は、本発明によると、チャンネルフェーダの配置(プロセスステップb))および制限によって、すでにエンコード前に安定化されている。本発明によると、最適な音声は、プロセスステップd)に続く更なる制限によって、パラメータであるチャンネルフェーダ、スレッシュホールド、リリースおよび出力レベルの少なくとも1つの値を調整することで達成される。
【0013】
従来技術から公知であり、プロセスステップc)で明示された第1の制限は、ミックス内で可能な限り高い音量を保持するためにサラウンド領域で一般に使用される。しかし、これは、分割されたチャンネルを本発明により安定化させるものではない。本発明の更なる概念は、支配的な見解に反して、プロセスステップd)に続いて独立チャンネルの更なる制限を行うことである。エンコードされたサラウンドミックスは、ステレオミックスおよびモノラルミックスに直接比較すると音響が劣っているので、ここでは、エンコードされたミックスをステレオミックスおよびモノラルミックスと競合させる、ラジオやTVなどに対するフロープログラムにはあまり適さない。従って本発明は、エンコード後に、音声、則ちミックスのエネルギー並びに音響概念を最適にするために、マキシマイザの形態のリミッタを接続するようになっている。その結果は、ステレオコンテキストおよびモノラルコンテキストにおいて絶対的に等価値に振る舞うサラウンド符号化ミックスである。この制限によって、ステレオミックスおよびモノラルミックスのエネルギーもそのまま維持され、ここでは、ステレオオリジナルの音響に対応するか、若しくはこれを改善する音響が生成される。
【0014】
さらに、本発明の長所は、サラウンドエンコードミックスが位相安定であることに見出される。
【0015】
更なる長所は、ステレオエンコードミックスが、発明された方法による処理後に、これまで公知のステレオより明らかに改善されて聞こえることである。さらに聴き手の聴取空間がこの方法によって含められるので、エンコードされたステレオミックスは、より明瞭に、多次元的に、およびより強く響く。
【0016】
さらにこの方法によって、すでにマトリックスサラウンド方法で任意の方式が、エンコードされたステレオミックスを、各オーディオ構成における新しい安定性および音響品質に移行するように処理することも可能となる。
【0017】
更なる適用範囲は、ディジタルサラウンド方式のために作製された存在する独立チャンネルを新しい成果へ転換することである。このようにして、例えば聴き手のためのドルビーディジタルおよびdts製品を、全ステレオ互換性およびモノラル互換性において、ディジタル復号装置を使用することなく聴くことができるようになる。
【0018】
本発明の範囲では、プロセスステップc)の出力レベルに関しては、チャンネルFLおよびFRの一様な値が調整され、この場合、出力レベル値は好ましくは−8.0dB(dB=デシベル)〜−24.0dBに調整される。チャンネルCの出力レベル値は、それぞれ処理されるオーディオマテリアル毎に自由に適合される。好ましくは、このチャンネルの出力レベル値は、チャンネルFRおよびFLに対して+1〜+6db異なる。7.1チャンネルまで制限するために、本発明の更なる有利な形態では、プロセスステップc)において、追加でチャンネルLs、Rs、Bl、Br、LFEの均一な出力レベル値が調整されるようになっている。この場合、−9.0dB〜−25.0dBの出力レベル値の調整と、7.0dB〜10.0dBのチャンネルフェーダ値の調整と、−1.0dB〜−10dBのスレッシュホールド値の調整並びに0.5〜2.0のリリース値の調整が特に有効であると実証された。
【0019】
それに加えて、プロセスステップd)に続く更なる制限に関して、−1.0dB〜−10.0dBのスレッシュホールド値の調整と、0dB〜−1.0dBの出力レベル値の調整並びに0.5〜2.0のリリース値の調整が特に有利であることが判明した。
【0020】
チャンネル当たり1つの多帯域コンプレッサを随意で使用することによって、本発明の範囲でミックスの周波数へさらに影響を及ぼすことができる。対応する周波数領域を強調するか弱めることによって、例えば2から6チャンネルへの復号範囲で音響概念が変化する場合に生じる失った周波数を合目的に繰り返すことができる。この効果は、同じく随意で多帯域コンプレッサに使用することができるイコライザのものと同等である。
【0021】
同様に、対応する出発マテリアルでは、プロセスステップb)で独立チャンネル当たり1つの解凍が有利である。分割後の独立チャンネル当たり1つの解凍は、これまで頻繁に使用されてきた、プロセスステップa)前の分割された合計の解凍より高価値の成果を提供することが本発明で認識される。デコーダは、パラメータであるスレッシュホールド、アタック、リリース、レシオおよび出力レベルを供与するコンプレッサである。値1.00未満のレシオ値の調整並びに長いアタック値およびリリース値は、すでにそのものからハートウォール圧縮へ、またはブリックウォール圧縮によって不利に使用された対応する出発マテリアルでは、動的結果を招く。出発マテリアルに適合されたスレッシュホールドおよび出力レベルは、調整を前提としている。
【0022】
最終的に本発明は、記録媒体、音声搬送波、ディジタルデータレコード並びに従来のオーディオフォーマットから新しい音響可能性への自動変換器のための方法の使用を提供する。これは、オーディオ/ビデオ装置内に組み込まれるか、またはスタンドアローンハードウェアまたはソフトウェアとして動作可能であり、ソフトウェアおよびハードウェアをベースにしたホストアプリケーション内で実行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下のように調整されたパラメータを有する5.1チャンネルサラウンドシステムをもとに、以下に、本発明の特に好ましい実施形態を示す。
【0024】
例5.1でのエンコード前の制限
【0025】
a)予め分割されたオーディオトラックのチャンネルフェーダFL、FR、Ls、Rs、LFEは0dbに調整され、それぞれ処理されるオーディオマテリアルに応じて、Cのチャンネルフェーダ値は上方へ逸れる。
ミキシングコンソール内で、チャンネルフェーダは各チャンネルの音量を調整する。1つのフェーダの標準音声位置は0dBである。このチャンネルフェーダは0dBに調整され、そのため、チャンネルの信号は、元から均一にされ、正しく基準化され中間に調整されたゲイン値を前提とする。この構成にしたがって、信号はリミッタを備えたチャンネルフェーダに転送される。
【0026】
b)リミッタを備えた6チャンネルの各チャンネルフェーダは+8.3dbに調整される。
6チャンネルのそれぞれは、8.3dbだけ飛ばされる。このようにして、実際には弱過ぎる6独立チャンネルが再び増幅されるので、このことは重要である。
【0027】
c)6リミッタのそれぞれは−3.3dbの「スレッシュホールド」値を有する。
「スレッシュホールド」値は、チャンネルフェーダにある信号の閾値を表し、この値からリミッタが動作を開始する。リミッタは、信号がスレッシュホールド値を超えるとすぐに信号を制限するように動作する。しかし、コンプレッサとは対照的にリミッタはすぐに反応するので、これはむしろ単純に行われ、一方コンプレッサは、どれだけ正確に圧縮するかを決める複数の独立調整を有する。リミッタは、むしろ信号圧縮の性質を有する。値−この場合は−3.3db−を超えると、その性質が変わらないように上方から厳密に制限(し、また、レベルがそれ以上高くならないために、信号は、信号内部のエネルギーが増大することによって音声を獲得)する。全てのチャンネルが単純に強く制限されるだけであるならば、結果はなるほど強いように思われるが、平らで深さがなく、「ポンピング」効果を伴うであろう。
【0028】
チャンネルCにおけるスレッシュホールド値は、それぞれ処理されるオーディオに応じてスレッシュホールド値内で可変である。
【0029】
d)各リミッタは1.00の「リリース」値を有する
「リリース」値は、その信号が再びスレッシュホールド値より低下した後に、再び零位置に戻すために、リミッタがどのくらいの長さを必要とするかを表す。1つの信号がスレッシュホールド限界を超えるとリミッタはレベルを制限する。信号が再び低下すると、「リリース」値を選択する複数の可能性が生じる。
【0030】
e)「出力レベル」値
「出力レベル」値は、リミッタによる処理後、チャンネルの信号の強さを表す。要するに、標準的な信号増幅器/制限器である。この値の長所は、後のステレオ/モノラルでも全サラウンドフォーマットでも、音量の正確な比率を再び見つけられる確実な構成を見出せることである。
【0031】
有利な調整は、
−チャンネルFL: −17.5db
−チャンネルFR: −17.5db
−チャンネルC: −17.5db
−チャンネルLS: −18.5db
−チャンネルRS: −18.5db
−チャンネルLFE: −18.5db
である。
【0032】
チャンネルCの「出力レベル」値は、処理されるオーディオマテリアルに関連させて変更することができる。
【0033】
この構成は、再びミックスを安定化させる。エンコードプロセスでは、6チャンネルから再び2チャンネル(Lt、Rt)になるので、基本的に非常に低い出力レベル値は、ミックスがエネルギーを再び大幅に蓄積することによって実現する。則ち結果はエネルギーの増大である。比較的高い出力レベル値の場合には、エンコードにおいて強い過変調となり、その結果ミックスは破壊される。
【0034】
プロセスステップd)に続く、コンプレッサ/リミッタ/マキシマイザを用いた更なる制限に関しては、好ましくは以下の値が選択される。
【0035】
a)スレッシュホールド値
スレッシュホールド値を標準化することはできない。ここでは聴覚が支配する。則ち、この値を下方へ下げれば下げるほど(つまりマキシマイザの動作開始を早めるほど)、可変周波数概念および音響概念でエンコードミックスはより多くの音声を取得する。この調整はオーディオに関係している。オリジナル信号(例えばダンスミュージック)の音声が大きければ大きいほど、低いスレッシュホールドが必要とされる。−2.6dBのスレッシュホールド値が有利であることが立証された。
【0036】
b)出力レベル
−0.1dBのアウトシーリング値は、ほぼ全てのミックスにおいて適することが実証されている。スレッシュホールド値が調整され、信号が−(マイナス)0.1dBになると、サラウンドミックス内の独立チャンネルが加算されることによって、ミックス内のレベルのピークが捕獲される。この場合、0dBマークの過変調は避けられる。
【0037】
このことによって、ステレオオリジナルと全く同じかそれより良く聞こえるが、振幅では異なって見えるという結果が生じる。音響結果は、同時に音声が大きくなる場合にはより動的に作用し、このことは通常両立しない。オーディオマテリアルが通常圧縮/制限によってより大きな音になると、同時に動的にはより低くなり、このことは、ここで論じている方法では両立せず、動力学も音声も取得することができる。
【0038】
c)リリース値
マキシマイザでは、1.00の「リリース」値が使用される。この値は、結果が本物のように聞こえることで実証された。
【0039】
発明された方法における全ての値を最適に調整することによって、各オーディオ環境において、オリジナルに比べてより高い音響品質が作り出される。
【0040】
この方法は、Lt、Rtトラックを形成するために、サラウンドミックスの作製し終えた独立トラック(ディスクリートトラック)にも適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)チャンネルまたはチャンネルミックスを独立チャンネルへ分割するステップと、
b)パラメータであるチャンネルフェーダを調整することによって、生じた独立チャンネルを処理するステップと、
c)パラメータであるチャンネルフェーダ、スレッシュホールド、リリースおよび出力レベルを調整することによって、前記独立チャンネルを圧縮および/または制限するステップと、
d)前記独立チャンネルをエンコードするステップと
を有する、マルチチャンネル音響システム、特にサラウンドマルチチャンネル音響技術におけるマルチチャンネル処理方法において、
プロセスステップb)でチャンネルフェーダが均一な値に調整され、プロセスステップc)で少なくとも2つのチャンネルが均一な出力レベル値に制限され、この場合、チャンネルC(センター)は均一出力レベル値内で可変であり、それ以外の各チャンネルは、2つのチャンネルの前記均一な出力レベル値より小さい少なくとも1つのデシベルである出力レベル値を有するように制限され、プロセスステップd)に続いて、パラメータであるチャンネルフェーダ、スレッシュホールド、リリースおよび出力レベルの少なくとも1つの値を調整することによって、エンコードチャンネルの更なる圧縮および/または制限が行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
少なくとも1つのチャンネルフェーダが、前記均一な値以上に調整されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つのチャンネルまたは1つのチャンネル群の独立チャンネルへの分割後に、チャンネルフェーダの値が全てのチャンネルについて等しいことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのチャンネルフェーダが、前記同一の値以上に調整されることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記同一のチャンネルフェーダ値が、−5db〜+2db、好ましくは0dbに調整されることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
チャンネルC(センター)が、制限後に前記均一な出力レベル値を超えることを特徴とする、請求項1〜5の一項記載の方法。
【請求項7】
チャンネルC(センター)が、それ以外のチャンネルフェーダに比べて+0.1〜+10db逸れていることを特徴とする、請求項1〜6の一項記載の方法。
【請求項8】
チャンネルCのチャンネルフェーダ値が、+2.3dbに調整されることを特徴とする、請求項1〜7の一項記載の方法。
【請求項9】
プロセスステップc)で、チャンネルFL、FRの均一な出力レベル値が調整されることを特徴とする、請求項1〜8の一項記載の方法。
【請求項10】
出力レベル値が、−8.0dB〜−24.0dBに調整されることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記出力レベル値が、−17.5dBに調整されることを特徴とする、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
プロセスステップc)で、チャンネルLS、BL、BR、RS、LFEの均一な出力レベル値が追加で調整されることを特徴とする、請求項9〜11の一項記載の方法。
【請求項13】
出力レベル値が、−9.0dB〜−25.0dBに調整されることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記出力レベル値が、−18.5dBに調整されることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
独立チャンネルのために、逸れた出力レベル値が調整されることを特徴とする、請求項1〜14の一項記載の方法。
【請求項16】
プロセスステップc)で、チャンネルフェーダ値が、7db〜10dBに調整されることを特徴とする、請求項1〜15の一項記載の方法。
【請求項17】
前記チャンネルフェーダ値が、8.3dBに調整されることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
プロセスステップc)で、スレッシュホールド値が−1dB〜−10dBに調整されることを特徴とする、請求項1〜17の一項記載の方法。
【請求項19】
前記スレッシュホールド値が−3.3dBに調整されることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
プロセスステップc)で、リリース値が0.5〜2.0に調整されることを特徴とする、請求項1〜19の一項記載の方法。
【請求項21】
リリース値が1.0に調整されることを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
プロセスステップd)に続いて、スレッシュホールド値が−1.0dB〜−10.0dBに調整されることを特徴とする、請求項1〜21の一項記載の方法。
【請求項23】
前記スレッシュホールド値が−2.6dBに調整されることを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
プロセスステップd)に続いて、出力レベル値が0dB〜−1dBに調整されることを特徴とする、請求項1〜23の一項記載の方法。
【請求項25】
−0.1dBの出力レベル値が調整されることを特徴とする、請求項24記載の方法。
【請求項26】
プロセスステップd)に続いて、リリース値が0.5〜2.0に調整されることを特徴とする、請求項1〜25の一項記載の方法。
【請求項27】
前記リリース値が1.0に調整されることを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項28】
それぞれの様式および形状並びにそれぞれのフォーマットの記録媒体および記憶媒体に使用するために、オーディオマテリアルを手動または自動でマスタリングするための、請求項1〜27記載の方法の使用。
【請求項29】
それぞれの様式および形状並びにそれぞれのフォーマットの音声搬送波に使用するために、オーディオマテリアルを手動または自動でマスタリングするための、請求項1〜27記載の方法の使用。
【請求項30】
ラジオ放送、テレビジョン放送およびインターネットブロードキャストの領域のための、アナログおよびディジタルでの、請求項1〜27記載の方法の使用。
【請求項31】
ホームシネマレシーバなどのオーディオビデオ再生のための技術装置内のハードウェアまたはソフトウェアとしての、請求項1〜27記載の方法の使用。
【請求項32】
ロジックスタジオ、キューベース、ヌエンド、プロツールスなどのディジタルウォークステーションおよびミュージックソフトウェアのようなホストアプリケーション内のソフトウェアまたはハードウェアとしての、請求項1〜27記載の方法の使用。
【請求項33】
モノラル/ステレオから新しいエンコード(符号化)ステレオトラックへの、インターネットベースの相互変換方式内のハードウェアまたはソフトウェアとしての、請求項1〜27記載の方法の使用。

【公表番号】特表2011−530843(P2011−530843A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521440(P2011−521440)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/011128
【国際公開番号】WO2010/015275
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(511033025)
【Fターム(参考)】