説明

マルチディスプレイシステム

【課題】最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を行うディスプレイを複数個含むマルチディスプレイシステムにおいて、各ディスプレイの輝度のばらつきを抑えることができるマルチディスプレイシステムを提供する。
【解決手段】マルチディスプレイシステムにおいて、各ディスプレイ10に、表示部11とバックライトユニット12と制御演算部13とを設け、マスタディスプレイであるディスプレイの制御演算部13を、表示画面のエリアに表示可能な画像の色のうちで最も明るい色に対応する輝度制御値である最大輝度制御値を、各ディスプレイ10間で統一する制御を行うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチディスプレイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、プラズマディスプレイなどの自発光型のディスプレイを複数個用意してマトリクス状に配置し、互いにデータ通信可能に接続したマルチディスプレイシステムが記載されている。このマルチディスプレイシステムでは、隣接するディスプレイにおける輝度にばらつきが出ないように、各ディスプレイの輝度が制御されている。
【0003】
自発光型のディスプレイに対して、非自発光型のディスプレイとしては、液晶ディスプレイが知られている。一般に、液晶ディスプレイは、画像が表示される表示画面を有する液晶表示パネルと、液晶表示パネルの表示画面とは反対側、すなわち背面側に配置されるバックライトユニットとを備える。液晶ディスプレイは、バックライトユニットによって液晶表示パネルに光を照射させることで、液晶表示パネルの表示画面に画像を表示させる。
【0004】
液晶表示パネルは、画素電極および画素電極と電気的に接続された薄膜トランジスタを有するアレイ基板、共通電極およびカラーフィルタを有するカラーフィルタ基板、ならびに、アレイ基板とカラーフィルタ基板との間に介在する液晶層を含む。液晶層は、画素電極と共通電極との間に形成される電場によって配列が変更され、それによって液晶層を透過する光の透過率が変更される。たとえば、光の透過率を大きくすると、液晶表示パネルは明るい色、すなわち階調値の大きな色の画像を表示することができ、光の透過率を小さくすると、液晶表示パネルは暗い色、すなわち階調値の小さな色の画像を表示することができる。
【0005】
バックライトユニットは、液晶表示パネルの表示画面を分割した複数のエリアに対応して、複数の発光部を備えており、各発光部はパルス幅変調方式や電流値制御方式などによって出射する光の明るさが制御される発光素子を含んでいる。発光素子は、パルス幅変調方式の場合、印加されるパルス波のデューティー比が制御され、電流値制御方式の場合、印加される電流の振幅が制御される。パルス波のデューティー比や電流の振幅は、発光部から出射される光の明るさを制御するための輝度制御値であり、輝度制御値が大きいほど、発光部は明るい光を出射することになる。
【0006】
従来では、バックライトユニットに含まれる各発光部の輝度制御値は一律に制御されていたけれども、近年では、表示される画像のコントラスト比を向上させるために、特許文献3〜5に記載のように、画像に応じて各発光部の輝度制御値を異ならせるローカルディミング処理が行われる。ローカルディミング処理では、たとえば、白色の画像を表示すべきエリア、すなわち液晶層の光の透過率が最大となるように液晶が制御されるエリアに対応する発光部については、輝度制御値を最大値とし、黒色の画像を表示すべきエリア、すなわち液晶層の光の透過率が最小となるように液晶が制御されるエリアに対応する発光部については、輝度制御値を最小値とし、これによって、表示される画像のコントラスト比を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−92431号公報
【特許文献2】特開2009−204790号公報
【特許文献3】特開2009−175740号公報
【特許文献4】特開2010−44389号公報
【特許文献5】特開2009−265671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献5に記載のローカルディミング処理では、表示画面において白色の画像を表示するエリアの数に応じて、バックライトユニットの最大輝度を制御している。具体的には、白色の画像を表示するエリアの数が多いほど、バックライトユニットの最大輝度が小さくなるように各発光部を制御している。これによって、白色の画像を表示するエリアの数が多いときにディスプレイの過度な温度上昇および消費電力の増加を抑えることができる。
【0009】
最大輝度制御を伴うローカルディミング処理としては、特許文献5に記載のローカルディミング処理以外に、許容制御値に基づく最大輝度制御を伴うローカルディミング処理が挙げられる。許容制御値には、バックライトユニットに含まれるすべての発光部の輝度制御値の総和について予め設定された総許容制御値と、各発光部の輝度制御値について共通して予め設定された個別許容制御値とがある。
【0010】
図5は、許容制御値に基づく最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を示すフローチャートである。液晶ディスプレイに画像データが入力されると、液晶ディスプレイの制御部は、ステップA1〜A8の処理を行う。
【0011】
ステップA1では、制御部は、画像データに基づいて、表示画面のエリアごとに、代表階調値を算出する。代表階調値は、たとえば、エリアに含まれる各画素について、R階調値、G階調値、およびB階調値に基づいて、輝度値Y=0.2126R+0.7152G+0.0722Bをそれぞれ算出し、各画素の輝度値Yについてエリアにおける算術平均値を算出することで得られる。
【0012】
ステップA2では、制御部は、代表階調値に基づいて、各エリアに対応する各発光部の輝度制御値を仮設定する。具体的には、代表階調値が最大値のときに対応する輝度制御値を、上記個別許容制御値以下の範囲内で予め設定された基準輝度制御値、たとえばデューティー比80%として、この基準輝度制御値以下の範囲内で、代表階調値が大きいほど輝度制御値が大きくなるように、各発光部の代表階調値を仮設定する。
【0013】
ステップA3では、制御部は、各発光部について仮設定された輝度制御値の総和を算出し、この総和で上記総許容制御値を除した値を、第1演算値として取得する。第1演算値が1未満である場合、仮設定された輝度制御値が大き過ぎて、輝度制御値の総和が総許容制御値を超えることを意味している。
【0014】
ステップA4では、制御部は、上記基準輝度制御値で上記個別許容制御値を除した値である第2演算値と、上記第1演算値とを比較する。ステップA4の比較の結果、第1演算値が第2演算値以上である場合、制御部は、ステップA5において第2演算値を輝度決定係数として取得し、ステップA4の比較の結果、第1演算値が第2演算値未満である場合、制御部は、ステップA6において第1演算値を輝度決定係数として取得する。
【0015】
ステップA7では、制御部は、各発光部について仮設定された輝度制御値に、上記輝度決定係数を乗じた値を、各発光部の輝度制御値として設定する。
【0016】
ステップA8では、制御部は、画像データに基づいて、液晶表示パネルの液晶を制御し、かつ、バックライトユニットの各発光部を、設定された輝度制御値で制御して、表示画面に画像を表示させる。
【0017】
このような処理によれば、表示される画像のコントラスト比を向上させつつ、総許容制御値および個別許容制御値以下の範囲内で各発光部の輝度制御値を設定することによって、ディスプレイの過度な温度上昇および消費電力の増加を抑えることができ、さらに、この範囲内でできるだけディスプレイの輝度を高めることができる。
【0018】
しかしながら、最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を行うディスプレイを複数個用意してマルチディスプレイシステムを構成すると、各ディスプレイの輝度にばらつきが生じてしまう。たとえば、図6に示すように、白画像を表示するエリアの数が多いディスプレイZ1と、白画像を表示するエリアの数が少ないディスプレイZ2とが存在する場合、特許文献5に記載の方法や上述した方法によって最大輝度制御を行うと、白画像を表示するエリアの数が多いディスプレイは、白画像を表示するエリアの数が少ないディスプレイに対して、白画像を表示するエリアの輝度が小さく制御されるので、マルチディスプレイシステムにおいて各ディスプレイの輝度にばらつきが生じるという問題がある。
【0019】
特許文献1,2には、マルチディスプレイシステムにおいて、各ディスプレイにおける輝度にばらつきが出ないように、各ディスプレイの輝度を制御する方法が記載されているけれども、自発光型のディスプレイを対象としており、ローカルディミング処理を行う液晶ディスプレイを対象としていないので、上記の問題を解決することができない。
【0020】
本発明は、このような課題を解決するためのものであり、最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を行うディスプレイを複数個含むマルチディスプレイシステムにおいて、各ディスプレイの輝度のばらつきを抑えることができるマルチディスプレイシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、データ通信可能に接続される複数のディスプレイであって、
画像が表示される表示画面を有する表示部と、
前記表示画面を分割したエリアごとに設けられ、輝度制御値が大きいほど出射する光が明るくなる複数の発光部であって、対応する各前記エリアに向けて光を出射することで前記表示画面に画像を表示させる複数の発光部を備える発光装置と、
前記発光装置に対して、最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を、前記表示画面に表示される各画像に応じて行う発光装置制御部と、をそれぞれ備える複数のディスプレイと、
前記エリアに表示可能な画像の色のうちで最も明るい色に対応する輝度制御値である最大輝度制御値を、各前記ディスプレイ間で統一する制御を行う輝度統一制御部と、を備えることを特徴とするマルチディスプレイシステムである。
【0022】
また本発明は、前記輝度統一制御部は、各前記ディスプレイにおける前記最大輝度制御値を、各前記最大輝度制御値のうちで最も小さな値に統一する制御を行うことを特徴とする。
【0023】
また本発明は、各前記発光装置制御部は、
前記ローカルディミング制御において、各前記発光部の輝度制御値を、各前記発光部の輝度制御値を仮設定するための予め定める、前記最も明るい色に対応する基準輝度制御値以下の値に仮設定し、
各前記発光部について仮設定された輝度制御値の総和で、すべての前記発光部についての予め定める総許容制御値を除した値である第1演算値と、前記基準輝度設定値で、前記発光部についての予め定める個別許容制御値を除した値である第2演算値とのうちで小さい方の値を、前記最大輝度制御値を決定するための輝度決定係数として取得し、
各前記発光部について仮設定された輝度制御値に前記輝度決定係数を乗じた値を、各前記発光部の輝度制御値にそれぞれ設定するように構成され、
前記輝度統一制御部は、各前記ディスプレイにおける前記輝度決定係数を、各前記輝度決定係数のうちで最も小さな値に統一する制御を行うことを特徴とする。
【0024】
また本発明は、前記輝度統一制御部は、前記複数のディスプレイのうちの1つに設けられることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、各前記ディスプレイは、それぞれ、識別番号が予め設定され、
前記輝度統一制御部が設けられる前記ディスプレイは、前記識別番号が最も小さな値であるディスプレイであることを特徴とする。
【0026】
また本発明は、前記輝度統一制御部は、1フレームごとに前記制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、最大輝度制御を伴うローカルディミング処理により、各ディスプレイにおいて、コントラスト比向上の効果、ならびに、過度な温度上昇および消費電力の増加の抑止効果が得られる。そして、輝度統一制御部によって各ディスプレイにおける最大輝度制御値が統一されるので、各ディスプレイ間における輝度のばらつきを抑えることができる。
【0028】
また本発明によれば、輝度統一制御部は、各ディスプレイにおける最大輝度制御値を、最も小さな値に統一することができる。
【0029】
また本発明によれば、各ディスプレイは、総許容制御値および個別許容制御値に基づいて最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を行うので、過度な温度上昇および消費電力の増加を抑止しつつ、輝度をできるだけ高めることができる。そして、輝度統一制御部によって、各ディスプレイにおける輝度決定係数が最も小さな値に統一されるので、各ディスプレイ間における輝度のばらつきを抑えることができる。
【0030】
また本発明によれば、輝度統一制御部を、複数のディスプレイのうちのいずれか1つに設けることができる。
【0031】
また本発明によれば、識別番号が最も小さな値であるディスプレイに、輝度統一制御部を設けることができる。
【0032】
また本発明によれば、輝度統一制御部は、1フレームごとに、最大輝度制御値を統一する制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】マルチディスプレイシステム1を示す模式図である。
【図2】ディスプレイ10の構成を示すブロック図である。
【図3】マルチディスプレイシステム1が拡大画像を表示するときのフローチャートである。
【図4】本発明の効果を表した図である。
【図5】許容制御値に基づく最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明が解決しようとする課題を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の実施形態であるマルチディスプレイシステム1を示す模式図である。マルチディスプレイシステム1は、ハブ20を介して、互いにデータ通信可能に接続される複数のディスプレイ10を有する。データ通信の規格は、たとえば、ギガビットイーサネットであり、通信速度は1ギガビット/秒である。
【0035】
各ディスプレイ10は、互いに同様に構成された液晶ディスプレイであり、それぞれ、ディスプレイID「1」〜「9」が、予め設定されている。各ディスプレイ10を区別する場合、ディスプレイID「1」が割り当てられたディスプレイ10をディスプレイ10aと称し、ディスプレイID「2」が割り当てられたディスプレイ10をディスプレイ10bと称し、以下同様にして、ディスプレイID「3」〜「9」が割り当てられたディスプレイ10を、ディスプレイ10c〜10iとそれぞれ称する。ディスプレイIDが最も小さい「1」であるディスプレイ10aは、マスタディスプレイとなり、それ以外のディスプレイ10b〜10iは、マスタディスプレイからの命令を受信し、命令に従って制御を行うスレーブディスプレイとなる。
【0036】
図2は、ディスプレイ10の構成を示すブロック図である。ディスプレイ10は、表示部11と、バックライトユニット12と、制御演算部13と、表示部コントローラ14と、バックライトユニットコントローラ15と、通信部16とを有する。
【0037】
表示部11は、画像が表示される表示画面を有する液晶表示パネルである。液晶表示パネルは、画素電極および画素電極と電気的に接続された薄膜トランジスタを有するアレイ基板、共通電極およびカラーフィルタを有するカラーフィルタ基板、ならびに、アレイ基板とカラーフィルタ基板との間に介在する液晶層を含む。液晶層は、画素電極と共通電極との間に形成される電場によって配列が変更され、これによって液晶層を透過する光の透過率が変更される。たとえば、光の透過率を大きくすると、液晶表示パネルは明るい色、すなわち階調値の大きな色の画像を表示することができ、光の透過率を小さくすると、液晶表示パネルは暗い色、すなわち階調値の小さな色の画像を表示することができる。
【0038】
バックライトユニット12は、表示部11の表示画面とは反対側、すなわち背面側に配置され、背面側から表示部11に光を照射することで表示画面に画像を表示させる直下型またはタンデム型の発光装置である。バックライトユニット12は、表示画面を分割した複数のエリアに対応して、複数の発光部を備えている。各発光部は、マトリクス状または千鳥状に配置され、パルス幅変調方式や電流値制御方式などによって出射する光の明るさが制御される1または複数の発光素子を含む。本実施形態では、発光部は、白色の光を出射する発光素子を1つだけ含んでいるものとする。
【0039】
発光素子は、パルス幅変調方式の場合、印加されるパルス波のデューティー比を制御され、電流値制御方式の場合、印加される電流の振幅が制御される。パルス波のデューティー比や電流の振幅は、発光部から出射される光の明るさを制御するための輝度制御値であり、輝度制御値が大きいほど、発光部は明るい光を出射することになる。本実施形態では、発光素子は、パルス幅変調方式によってデューティー比が制御されるものとする。
【0040】
制御演算部13は、CPU(Central Processing Unit)などの制御演算回路、DDR SDRAM(Double Data Rate Synchronous Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリ、および、フラッシュROM(Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性メモリから構成され、表示部コントローラ14、バックライトユニットコントローラ15、および通信部16に電気的に接続される。揮発性メモリおよび不揮発性メモリには、上述したディスプレイIDが記憶されている。また、揮発性メモリおよび不揮発性メモリには、バックライトユニット12の発光部についての許容制御値が記憶される。
【0041】
許容制御値には、総許容制御値と個別許容制御値とが含まれる。個別許容制御値は、バックライトユニット12の各発光部の輝度制御値について共通して予め設定される値であり、輝度制御値がデューティー比である場合は、デューティー比100%が個別許容制御値である。総許容制御値は、バックライトユニット12に含まれるすべての発光部の輝度制御値の総和について予め設定される値であり、たとえば、消費電力設定として、ユーザにより、15段階で設定される。
【0042】
消費電力設定が、1レベルのとき、総許容制御値は、5%×n(nは、バックライトユニット12に含まれる発光部の総数)であり、2レベルのとき、総許容制御値は、10%×nであり、以下同様にして、総許容制御値は5%×nずつ増加し、15レベルのときは、総許容制御値は、75%×nとなる。なお、各ディスプレイ10が単独で用いられるときは、消費電力設定は個別に設定可能であるけれども、マルチディスプレイシステム1の一部として用いられるときは、消費電力設定は、マスタディスプレイによって、後述するローカルディミング処理が行われる前に、マスタディスプレイに記憶される消費電力設定のレベルに統一される。
【0043】
制御演算部13は、画像データに基づいて、表示部制御信号およびバックライトユニット制御信号を生成し、表示部コントローラ14およびバックライトユニットコントローラ15に対して、それぞれ出力する。表示部制御信号およびバックライトユニット制御信号の生成および出力は、1フレームごとに行われる。フレームレートは、たとえば、60fpsである。
【0044】
表示部制御信号は、表示部11の各画素電極に印加する電圧を示す信号であり、表示部コントローラ14は、表示部制御信号に従って、各画素電極に電圧を印加し、サブ画素単位で液晶を制御する。バックライトユニット制御信号は、バックライトユニット12の各発光部の輝度制御値を示す信号であり、バックライトユニットコントローラ15は、バックライトユニット制御信号に従って、各発光部の発光素子に電流を印加する。バックライトユニット制御信号は、後述するローカルディミング処理によって生成される。
【0045】
通信部16は、ディスプレイ10の外部の機器との間でデータ通信を行うための通信手段であり、通信部16を介して外部の機器から画像データが入力される。外部の機器としては、マルチディスプレイシステム1を構成するディスプレイ10の他に、PC(Personal Computer)などが挙げられる。
【0046】
このように構成されるディスプレイ10において、制御演算部13は、入力される画像データごとに、最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を行って、表示画面に画像を表示させる発光装置制御部として機能する。さらに、マスタディスプレイであるディスプレイ10aの制御演算部13は、各ディスプレイ10において表示画面に表示可能な画像の色のうちで最も明るい色、すなわち最も階調値が高い色に対応する輝度制御値である最大輝度制御値を、各ディスプレイ10間で統一する制御を行う輝度統一制御部として機能する。なお、各色が256階調で表現されるとき、R階調値、G階調値、およびB階調値がすべて255である白色が最も明るい色となる。
【0047】
以下に、1つの画像をマルチディスプレイシステム1全体に亘る拡大画像として表示する場合について説明する。この場合、マスタディスプレイは、拡大画像を分割した分割画像を表す分割画像データのうち、自装置に表示すべき分割画像を表す分割画像データ以外の分割画像データを、各分割画像を表示すべき各スレーブディスプレイに送信する。そして、各ディスプレイ10は、最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を行って、各表示画面に各分割画像を表示し、これによってマルチディスプレイシステム1全体に亘って拡大画像が表示される。
【0048】
図3は、マルチディスプレイシステム1が拡大画像を表示するときのフローチャートである。ステップB1〜ステップB10は、スレーブディスプレイによる処理であり、ステップC1〜ステップC11は、マスタディスプレイによる処理である。ステップB1〜ステップB6の処理と、ステップC1〜ステップC6の処理とは、処理の主体が異なること以外は同一の処理である。また、ステップB9,B10の処理と、ステップC10,C11の処理とは、処理の主体が異なること以外は同一の処理である。
【0049】
ステップB1,C1では、制御演算部13は、分割画像データに基づいて、表示画面のエリアごとに、代表階調値を算出する。代表階調値は、たとえば、エリアに含まれる各画素について、R階調値、G階調値、およびB階調値に基づいて、輝度値Y=0.2126R+0.7152G+0.0722Bをそれぞれ算出し、各画素の輝度値Yについてエリアにおける算術平均値を算出することで得られる。
【0050】
なお、輝度値Yの代わりに、R階調値、G階調値、およびB階調値の係数を他の値に変更した値が用いられてもよい。また、各画素の輝度値Yについてのエリアにおける算術平均値の代わりに、エリアにおける輝度値Yの最大値または最小値が用いられてもよい。
【0051】
ステップB2,C2では、制御演算部13は、各代表階調値に基づいて、各エリアに対応する各発光部の輝度制御値を仮設定する。具体的には、最も明るい色、すなわち代表階調値が最大値となる白色に対応する輝度制御値を、予め設定された基準輝度制御値として、この基準輝度制御値以下の範囲内で、代表階調値が大きいほど輝度制御値が大きくなるように、各発光部の代表階調値を仮設定する。
【0052】
基準輝度制御値は、各ディスプレイ10において、各発光部の輝度制御値を仮設定するための値として、個別許容制御値以下の範囲内で予め設定された値であり、たとえばデューティー比80%である。なお、各ディスプレイ10において基準輝度制御値が異なっていた場合、マスタディスプレイにより、各スレーブディスプレイの基準輝度制御値は、各スレーブディスプレイにおいてステップB1の処理が行われる前に、マスタディスプレイに記憶される基準輝度制御値に統一される。
【0053】
ステップB3,C3では、制御演算部13は、各発光部について仮設定された輝度制御値の総和を算出し、この総和で総許容制御値を除した値を、第1演算値として取得する。第1演算値が1未満である場合、仮設定された輝度制御値が大き過ぎて、輝度制御値の総和が総許容制御値を超えることを意味している。
【0054】
ステップB4,C4では、制御演算部13は、基準輝度制御値で個別許容制御値を除した値である第2演算値と、上記第1演算値とを比較する。第2演算値は、制御演算部13の不揮発性メモリに予め記憶されていてもよいし、ステップB4,C4において算出されてもよい。
【0055】
ステップB4,C4での比較の結果、第1演算値が第2演算値以上である場合、ステップB5,C5において、制御演算部13は、第2演算値を輝度決定係数として取得する。ステップB4,C4での比較の結果、第1演算値が第2演算値未満である場合、ステップB6,C6において、制御演算部13は、第1演算値を輝度決定係数として取得する。
【0056】
ステップB7では、スレーブディスプレイの制御演算部13は、取得した輝度決定係数を、マスタディスプレイに送信する。ステップC7では、マスタディスプレイの制御演算部13は、スレーブディスプレイから、輝度決定係数を受信する。
【0057】
ステップC8では、マスタディスプレイの制御演算部13は、自装置が取得した輝度決定係数と、各スレーブディスプレイから受信した輝度決定係数のうち、最小の値を、真の輝度決定係数として取得する。
【0058】
ステップC9では、マスタディスプレイの制御演算部13は、真の輝度決定係数を、各スレーブディスプレイに送信する。ステップB8では、スレーブディスプレイの制御演算部13は、マスタディスプレイから、真の輝度決定係数を受信する。ステップB7,B8およびステップC7〜ステップC9の処理により、各ディスプレイ10の輝度決定係数が最小の値に統一される。
【0059】
ステップB9,C10では、制御演算部13は、各発光部について仮設定された輝度制御値に、真の輝度決定係数を乗じた値を、各発光部の輝度制御値として設定する。ステップB9,C11では、制御演算部13は、分割画像データに基づいて、表示部11の液晶を制御し、かつ、バックライトユニット12の各発光部を、設定された輝度制御値で制御して、表示画面に分割画像を表示させる。
【0060】
以上のように、本発明に係るマルチディスプレイシステム1では、輝度決定係数がディスプレイ10間で最小の値に統一されるので、最も明るい色に対応する最大輝度制御値が、ディスプレイ10間で最小の値に統一される。より詳細には、各ディスプレイ10のバックライトユニット12の各発光部の輝度制御値は、基準輝度制御値に真の輝度決定係数を乗じた値を最も明るい色に対応する最大輝度制御値として、この最大輝度制御値以下の範囲内で、対応するエリアにおける代表階調値が大きいほど輝度制御値が大きくなるように設定される。
【0061】
したがって、ローカルディミング処理によるコントラスト比向上の効果、ならびに、総許容制御値および個別許容制御値以下の範囲内で各発光部の輝度制御値を設定することによる、各ディスプレイ10の過度な温度上昇および消費電力の増加を抑止しつつ、この範囲内でできるだけ各ディスプレイ10の輝度を高めることができるという効果だけではなく、さらに、各ディスプレイ10間における輝度のばらつきを抑えることができるという効果を発揮することができる。
【0062】
たとえば、図6に示したように、各ディスプレイ10において、許容制御値に基づく最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を行うのみであると、個々のディスプレイZ1,Z2においてコントラスト比向上の効果、ならびに、過度な温度上昇および消費電力の増加を抑止しつつ、できるだけ輝度を高めるという効果は達成できるけれども、白色の画像が表示されるエリアの数が多いディスプレイZ1における白色のエリアの輝度は、白色の画像が表示されるエリアの数が少ないディスプレイZ2における白色のエリアの輝度よりも低くなり、ディスプレイZ1とディスプレイZ2との間で輝度のばらつきが生じてしまう。
【0063】
これに対して、本実施形態によれば、各ディスプレイ10において、最大輝度制御値が統一された上で、許容制御値に基づく最大輝度制御を伴うローカルディミング処理が行われるので、図4に示すように、各ディスプレイ10の最大輝度制御値は、白色の画像が表示されるエリアの数が最も多いディスプレイ10eの最大輝度制御値に統一され、各ディスプレイ10間で輝度のばらつきを抑えることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、各スレーブディスプレイが輝度決定係数を算出してマスタディスプレイに送信していたけれども、本発明の他の実施形態としては、マスタディスプレイが各スレーブディスプレイに対応する輝度決定係数を算出するように構成されてもよい。より詳細には、マスタディスプレイが、各スレーブディスプレイに対応する各分割画像データに基づいて、仮の輝度制御値および輝度決定係数を算出し、算出した各輝度決定係数に基づいて真の輝度決定係数を取得し、各スレーブディスプレイに対応する各仮の輝度制御値に真の輝度決定係数を乗じた値を、各分割画像データとともに、各スレーブディスプレイに送信するように構成されてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、マスタディスプレイであるディスプレイ10aの制御演算部13が、各ディスプレイ10において表示画面に表示可能な画像の色のうちで最も明るい色に対応する最大輝度制御値を、各ディスプレイ10間で統一する制御を行う輝度統一制御部として機能するけれども、本発明の他の実施形態としては、このような機能を有する輝度統一制御部を備え、各ディスプレイ10とデータ通信可能に接続されるPCなどが、マルチディスプレイシステム1に含まれていてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、バックライトユニット12が有する各発光部に含まれる発光素子は、白色の光を出射する1つの発光素子であるとしたけれども、複数の発光素子であってもよい。発光素子が複数である場合は、各発光部における複数の発光素子の輝度制御値は同一の値とし、各エリアに対応する発光部ごとに、輝度制御値を異ならせるローカルディミング処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
1 バックライトユニット
10,10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h,10i,Z1,Z2 ディスプレイ
11 表示部
12 バックライトユニット
13 制御演算部
14 表示部コントローラ
15 バックライトユニットコントローラ
16 通信部
20 ハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ通信可能に接続される複数のディスプレイであって、
画像が表示される表示画面を有する表示部と、
前記表示画面を分割したエリアごとに設けられ、輝度制御値が大きいほど出射する光が明るくなる複数の発光部であって、対応する各前記エリアに向けて光を出射することで前記表示画面に画像を表示させる複数の発光部を備える発光装置と、
前記発光装置に対して、最大輝度制御を伴うローカルディミング処理を、前記表示画面に表示される各画像に応じて行う発光装置制御部と、をそれぞれ備える複数のディスプレイと、
前記エリアに表示可能な画像の色のうちで最も明るい色に対応する輝度制御値である最大輝度制御値を、各前記ディスプレイ間で統一する制御を行う輝度統一制御部と、を備えることを特徴とするマルチディスプレイシステム。
【請求項2】
前記輝度統一制御部は、各前記ディスプレイにおける前記最大輝度制御値を、各前記最大輝度制御値のうちで最も小さな値に統一する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項3】
各前記発光装置制御部は、
前記ローカルディミング制御において、各前記発光部の輝度制御値を、各前記発光部の輝度制御値を仮設定するための予め定める、前記最も明るい色に対応する基準輝度制御値以下の値に仮設定し、
各前記発光部について仮設定された輝度制御値の総和で、すべての前記発光部についての予め定める総許容制御値を除した値である第1演算値と、前記基準輝度設定値で、前記発光部についての予め定める個別許容制御値を除した値である第2演算値とのうちで小さい方の値を、前記最大輝度制御値を決定するための輝度決定係数として取得し、
各前記発光部について仮設定された輝度制御値に前記輝度決定係数を乗じた値を、各前記発光部の輝度制御値にそれぞれ設定するように構成され、
前記輝度統一制御部は、各前記ディスプレイにおける前記輝度決定係数を、各前記輝度決定係数のうちで最も小さな値に統一する制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項4】
前記輝度統一制御部は、前記複数のディスプレイのうちの1つに設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項5】
各前記ディスプレイは、それぞれ、識別番号が予め設定され、
前記輝度統一制御部が設けられる前記ディスプレイは、前記識別番号が最も小さな値であるディスプレイであることを特徴とする請求項4に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項6】
前記輝度統一制御部は、1フレームごとに前記制御を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のマルチディスプレイシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−7862(P2013−7862A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139890(P2011−139890)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】