説明

マルチフィラメント糸、マルチフィラメント糸の交絡付与装置および交絡付与方法

【課題】多繊条化かつ高速度化での好適な原糸交絡を与え得る合成繊維マルチフィラメント糸を製造するのに用いられる交絡付与装置と方法を提供する。
【解決手段】単繊維繊度が2dtex以下である合成繊維フィラメントからなり、また、糸条に交絡を付与する糸処理部5と、糸処理部に開口し互いに交叉する2つの流体噴射孔からなる流体噴射部6と、糸処理部と外部とを連通するスリット部からなる交絡付与装置1において、糸処理部の軸線と2つの流体噴射孔の軸線がなす角θ(°)と、噴射孔が交叉する交差角α(°)と、糸処理部の 軸線方向の長さL(mm)が以下の式(a)〜(c)を満足するマルチフィラメント糸の交絡付与装置と交絡付与方法。 70°≦θ≦88° …(a) 60°≦α≦100° …(b) 3mm≦L≦15mm …(c)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチフィラメント糸、マルチフィラメント糸の交絡付与装置および交絡付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融紡糸されてくる合成繊維マルチフィラメント糸の製造プロセスにおいて、該マルチフィラメント糸に集束性を与えるために、比較的、交絡数が少なめで交絡の弱い、所謂、原糸交絡と呼ばれる交絡の付与処理を施すことが行われている。
【0003】
この交絡の付与は、本来、集束性を伴わずに溶融紡糸されてくる合成繊維マルチフィラメント糸に集束性を与えて取扱い性を向上させるために行うものである。
【0004】
かかる交絡の付与は、合成繊維の溶融紡糸速度の著しい高速化や多繊条化(フィラメント本数の多数化)に伴い、近年でも、均斉かつ均一に効率良く行う手法の検討がされ具体的な提案もなされている(特許文献1)。
【0005】
この特許文献1においてされている提案は、流体噴射交絡装置の上流・下流にそれぞれ設ける糸道規定ガイドの位置の適正化に関するものであるが、その目標レベルの前提は、高速ではあるものの(特許文献1の段落0026)、実施例などに表されている如くに、特に、せいぜい、フィラメント本数は50本以下、単繊維太さ(単フィラメント太さ)は4デニール以上というものであって、近年のより多繊条化(フィラメント本数の多数化)には十分に対応できたものと言えず、特に、細繊度化を伴う多繊条化(例えば、フィラメント本数100本以上、単繊維太さ2dtex以下(概して、0.1〜2.0dtex程度、より実際工業的には0.6〜1.5dtex程度))であって、かつ高速度での処理が要求されるものには十分でなかった。
【0006】
本発明は、特に、細繊度化を伴う多繊条化(例えば、フィラメント本数100本以上、単繊維太さ2dtex以下(概して、0.1〜2.0dtex程度))であって、かつ高速度での処理が要請される合成繊維マルチフィラメント糸の原糸交絡についてのものである。
【0007】
一方、流体交絡処理装置としても、さまざまなものが提案されている(特許文献2、同3)。
【0008】
しかし、これらのものは原糸交絡というべきものでなく、加工糸としての交絡マルチフィラメント糸、例えば、ループ等を形成させ、かつそのループの発生を均一にさせること等をねらいとするものであり、それぞれの実施例などの記載からも明らかなように、交絡数では糸1m当たり80個/m程度から、さらには100個/m以上というレベル、糸速度も300〜600m/分程度というレベルのものであり、合成繊維の溶融紡糸プロセスとしての処理ではなく、加工以前の原糸に対する交絡処理に関するものではなかった。
【特許文献1】特開2002−69780号公報
【特許文献2】特開平8−92839号公報
【特許文献3】特開2001−248031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、近年の、特に、細繊度化を伴う多繊条化(例えば、フィラメント本数100本以上、単繊維太さ2dtex以下(概して、0.1〜2.0dtex程度))であって、かつ高速度での処理が要請される合成繊維マルチフィラメント糸において、好適な原糸交絡を与え得た新規な合成繊維マルチフィラメント糸を提供すること、さらに、該合成繊維マルチフィラメント糸を製造するのに好適に用いられるマルチフィラメント糸の交絡付与装置と交絡付与方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成する本発明の合成繊維マルチフィラメント糸は、以下の(1) の構成からなる。
(1)単繊維繊度が2dtex以下である合成繊維フィラメントからなるマルチフィラメント糸であり、交絡数が2個/m以上20個/m以下であるとともに毛羽数が7個/50000m以下であることを特徴とするマルチフィラメント糸。
【0011】
かかる本発明のマルチフィラメント糸は、好ましくは、以下の(2) の構成を有するものである。
(2)部分配向未延伸マルチィラメント糸であることを特徴とする上記(1) 記載のマルチフィラメント糸。
【0012】
また、上述した目的を達成する本発明のマルチフィラメント糸の交絡付与装置は、以下の(3) の構成からなる。
(3)糸条に交絡を付与する糸処理部と、該糸処理部に開口し互いに交叉する2つの流体噴射孔からなる流体噴射部と、前記糸処理部と外部とを連通するスリット部からなる交絡付与装置において、前記糸処理部の軸線と前記2つの流体噴射孔の軸線がなす角θ(°)と、前記噴射孔が交叉する交差角α(°)と、前記糸処理部の軸線方向の長さL(mm)が以下の式(a)〜(c)を満足することを特徴とするマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
70°≦θ≦88° …(a)
60°≦α≦100° …(b)
3mm≦L≦15mm …(c)
【0013】
また、かかる本発明のマルチフィラメント糸の交絡付与装置において、より具体的に好ましくは、以下の(4) 〜(5) の構成を有するものである。
(4)加圧流体の導入路を内部に設けた流体供給部と、該流体供給部の前記加圧流体導入路に沿って間隔をおいて列状に配置された少なくとも三つの糸道部材を備え、該少なくとも三つの糸道部材は、隣接する他の糸道部材との間に、糸処理部と、該糸処理部と外部とを連通するスリットが介在するように隔離され、該それぞれの糸道部材には、糸処理部に向かって開口する開口する互いに交叉する2つの流体噴射孔が穿孔されていることを特徴とする上記(3) 記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
(5)前記2つの流体噴射孔の中間に、上記糸処理部の軸線方向に形成されるV字形形状の凹部を有することを特徴とする上記(3) または(4) 記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
【0014】
また、本発明のマルチフィラメント糸の交絡付与方法は、以下の(6) の構成からなる。
(6)上記(3) 〜(5) のうちのいずれかに記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置を用いてマルチフィラメント糸に交絡を付与することを特徴とするマルチフィラメント糸の交絡付与方法。
【発明の効果】
【0015】
請求項1にかかる本発明によれば、特に、細繊度化を伴う多繊条化(例えば、フィラメント本数100本以上、単繊維太さ2dtex以下(概して、0.1〜2.0dtex程度))であって、かつ高速度での処理が要請される合成繊維マルチフィラメント糸において、好適な原糸交絡を有する新規な合成繊維マルチフィラメント糸が提供される。
【0016】
また、請求項3、請求項6にかかる本発明によれば、特に上述の優れた合成繊維マルチフィラメント糸を製造することができる優れたマルチフィラメント糸の交絡付与装置と交絡付与方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、更に詳しく本発明について、説明する。
【0018】
本発明にかかるマルチフィラメント糸は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの合成繊維フィラメントからなり、その単繊維(単フィラメント)繊度が2dtex以下、かつ、交絡数が2個/m以上20個/m以下、毛羽数が7個/50000m以下であるマルチフィラメント糸である。
【0019】
かかる合成繊維マルチフィラメント糸は、近年であれば、通常、引取り速度が3000m/分以上などの高速紡糸により製造され、いわゆるPOY糸(部分配向未延伸糸)として製造されるものである。単繊維繊度は、2dtex以下であることが重要で、2dtexよりも大きい場合には、単繊維としても、もしくは糸全体としても、あるいは布帛としても剛性感が強くなり、本発明の所期の目的の一つであるソフト感や柔らかいふくらみ感を醸し出す風合いを有した生地を得ることが難しくなる。単繊維繊度は、その加減は0.1dtex程度までが良く、より実際工業的には0.25〜1.5dtex程度の範囲内とするのが最も好ましい。また、風合いを最も生かす点で、ポリエチレンテレフタレート繊維を代表とするポリエステル系合成繊維で構成するのが最も好ましいものである。
【0020】
本発明の合成繊維マルチフィラメント糸において、交絡数は2個/m以上20個/m以下であること、毛羽数が7個/50000m以下であることが重要であり、交絡数が2個/m未満であると集束性がなく好ましくない。また、20個/mよりも多く交絡部が存在すると、該交絡部分が存在することに基づいて、後の延伸工程で延伸の微妙なムラが発生することがあり、その延伸ムラが染色ムラとなって最終製品に影響を与えることがあるので好ましくない。毛羽数は、上記範囲よりも多いと、後の高次加工工程での糸通過性が低下し好ましくない。毛羽数の存在個数は、本発明者らの知見によれば、好ましくは3個/50000m以下であり、下限は0個/50000mまでである。
【0021】
本発明にかかるマルチフィラメント糸の交絡付与装置は、糸条に交絡を付与する糸処理部と、糸処理部に開口し互いに交叉する2つの流体噴射孔からなる流体噴射部と、糸処理部と外部とを連通するスリット部からなる交絡付与装置において、糸処理部の軸線と2つの流体噴射孔の軸線がなす角θ(°)と、噴射孔が交叉する交差角α(°)と、糸処理部の軸線方向の長さL(mm)が、以下の式(a)〜(c)を満足するマルチフィラメント糸の交絡付与装置である。
70°≦θ≦88° …(a)
60°≦α≦100° …(b)
3mm≦L≦15mm …(c)
【0022】
θが70°よりも小さくなると、糸送り作用を空気流が強く持つ方向となり、毛羽やタルミを多く生じさせる結果となり、また、88°よりも大きくなると、流体噴射孔から噴射された空気流が糸条進行方向に対して逆方向にも多く流れるので毛羽やタルミが増加し、特に、本発明のような原糸への交絡という点からは、均質さが強く要求されているのであり好ましくないものである。
【0023】
また、αが60°よりも小さくなると、糸の交絡に必要な各繊維挙動が低調となり、交絡付与が難しくなるので好ましくなく、100°よりも大きくなると糸挙動が大きくなりすぎて、交絡を付与するには有利となるもののとる、毛羽・タルミが増加する傾向となり、特に、本発明のような原糸への交絡という点からは、均質さが強く要求されるのであり好ましくないものである。
【0024】
また、Lが3mmよりも小さいと安定した交絡付与処理が難しくなり、Lが15mmよりも大きいと噴射空気流と被処理糸との接触する時間が長くなり、やはり毛羽やタルミが多くなる方向であり、原糸への交絡という点からは、均質さが強く要求されるのであり好ましくないものである。
【0025】
図1は、本発明にかかるマルチフィラメント糸の交絡付与装置の構造を概略的に示した概略斜視図であり、交絡付与装置1は、流体供給部2、流体噴射ノズル部3および側板4からなっており、矢印Yで示したのがマルチフィラメント糸の通過方向である。
【0026】
この図1に示した流体交絡付与装置1におけるマルチフィラメント糸の通過方向Yと垂直方向の断面をとった概略断面モデル図を、図2に示した。
【0027】
図2において、交絡付与装置1は、2の流体供給部、3の流体噴射ノズル部、4の側板とからなり、6は流体噴射部であり、2つの流体噴射孔は交差角αを呈して交叉している。
【0028】
同図において、5は糸処理部であり、糸が通過する空間であるとともにこの部分で走行糸が振動挙動を起こして空気交絡が施される。
【0029】
7はスリット部であり、8は流体導入通路である。スリット部7は交絡付与装置1に走行する連続マルチフィラメント糸を糸通しする際に糸導入部として用いられるものであり、また、交絡付与のために噴射される空気を排出する通路でもある。
【0030】
流体導入通路8は、交絡処理に使用される圧空を供給する通路であり、圧力空気は流体噴射ノズル部3内に設けられた空間に導かれ、さらに2つの流体噴射孔から空気流が噴射される。
【0031】
図3は、図1と図2に示した交絡付与装置を1の概略平面モデル図であり、糸処理部の軸線方向の長さL(mm)と、糸処理部の軸線と2つの流体噴射孔の軸線がなす角θ(°)を説明するための図であって、図3の(a)は、概ね本発明において特定したθの角度範囲に入るもののモデル図であり、同(b)は、θが90°であり本発明に含まれないものの概略モデル図である。
【0032】
本発明の流体交絡付与装置は、図4(a)、(b)に示したように、複数本のマルチフィラメント糸を平行同時的に、かつ物理的に一つの処理装置に集中させて処理が可能なように一体の流体処理装置として組立てられた多糸条用流体交絡処理ノズルとして使用される場合に、より高い実際的効果を発揮する。
【0033】
ここで、図4の(a)が該多糸条用流体交絡処理ノズルの概略斜視図、(b)が図2と同様に流体交絡付与装置1におけるマルチフィラメント糸の通過方向Yと垂直方向の断面をとった概略断面モデル図である。
【0034】
このような構造の流体交絡処理装置は、特開平9−250043号公報や特開2002−309460号公報などによって、その基本構造が知られているものである。
【0035】
すなわち、一糸条に対する流体噴射孔を有する流体噴射ノズル部3が、一方でその背面壁部において隣の糸条の糸処理部5の一部をなす壁を形成していて、そのような兼用構造で多糸条分が連立して一つのユニット体を形成しているという基本的構造を有する流体交絡処理ノズルである。図4において、13は一体化のためのボルトである。
【0036】
本発明において、この図4に示したような流体処理装置を用いる場合、同時に処理されるマルチフィラメント糸は、3本以上であることが好ましい。
【0037】
すなわち、本発明において、好ましくは請求項3に記載した如くに、加圧流体の導入路を内部に設けた流体供給部と、該流体供給部の前記加圧流体導入路に沿って間隔をおいて列状に配置された少なくとも三つの糸道部材を備え、該少なくとも三つの糸道部材は、隣接する他の糸道部材との間に、糸処理部と、該糸処理部と外部とを連通するスリットが介在するように隔離され、該それぞれの糸道部材には、糸処理部に向かって開口する互いに交叉する2つの流体噴射孔が穿孔されている交絡付与装置であることである。
【0038】
本発明の交絡付与装置において、2つの流体噴射孔の中間に、上記糸処理部の軸線方向に形成されるV字形形状の凹部(糸処理部としてみれば、V字形形状の凸部)を有することが好ましい。該V字形形状部を有することにより、走行フィラメント糸の振動挙動が定常的な安定したものとなり糸質・糸品位を均一・均質化する上で好ましいものである。
【実施例】
【0039】
[マルチフィラメント糸の実施例]
【0040】
以下の実施例において、交絡数の測定と判定、毛羽数の測定と判定、糸の延伸斑(染め斑の評価を行って延伸斑の評価とした)の判定は、以下の手法によったものである。
(1)交絡数の測定と評価:
本発明の各実施例・比較例で得られた各ポリエステル部分配向未延伸糸について、ロッシールド社製自動連続交絡度試験器R−2072を用い、プリテンションを10CN、トリップテンションを17CNと設定し、設定計数交絡部数を20個として試料糸を走行させて、交絡部が20個カウントされるまでに要した糸長さ(走行糸長さ)を測定し、該交絡部20個当たりの糸長さの値を、まず求めた。
【0041】
さらに、該交絡部20個当たりの糸長さの値から、糸長さ1mあたりの交絡の個数に換算し、該換算値を「糸長さ1mあたり交絡数」として求めた。測定に当たっては、n数を20回としてその平均値を求めた。
【0042】
交絡数についての判定は、糸1m長さ当たりの交絡数が、2個未満を「不良」として表1では「×」で表記し、2個以上5個未満を「良」として表1では「△」で表記し、5個以上を「優秀」として表1では「○」で表記し、「良」および「優秀」を合格とし、「不良」は不合格とした。
(2)毛羽数の測定と判定:
本発明の各実施例・比較例で得られた各ポリエステル部分配向未延伸糸について、東レ・エンジニアリング株式会社製毛羽計数装置DT−105を用いて、S型検出器により検出高さを2mmに設定し、パッケージの解舒速度を500m/分として、50000mの糸長さについて測定して、そのまま糸50000m長さ当たりに存在する毛羽数として求めた。測定に当たり、n数は20回としてその平均を求めた。
【0043】
毛羽数についての判定は、糸50000m長さ当たりの毛羽数が、7個を越えるものを「不良」として表1では「×」で表記し、5.5個以上7個以下のものを「良」として表1では「△」で表記し、5.5個未満を「優秀」として表1では「○」で表記し、「良」および「優秀」を合格とし、「不良」は不合格とした。
(3)交絡の存在に基づく延伸ムラの評価:
本発明の各実施例・比較例で得られた各ポリエステル部分配向未延伸糸における交絡の存在に基づく延伸ムラが染色に及ぼす影響を確認するために、染色ムラの指標となる熱収縮応力の変動状態を調べた。
【0044】
具体的には、東レ・エンジニアリング株式会社製熱収縮応力測定装置 FTA−500を使用して、糸条をリラックス率98%、糸速度20m/分、走行張力を2gに設定し走行させて、130℃に設定したヒーターで加熱し、10分間における該張力の変動を測定した。
【0045】
該測定において、同熱量における交絡部と開繊部の熱処理の差から得られる走行張力の変動値を変動張力とし、該変動張力値に基づいて以下の判定を行った。
【0046】
判定は、該測定で得られた変動張力が0.3未満であるものを「優秀」として表1では「○」で表記し、0.3g以上0.5g未満を「良」として表1では「△」で表記し、0.5g以上のものを「不良」として表1では「×」で表記した。
(4)仮撚機を用いた工程通過性:
216錘建てからなる東レ・エンジニアリング株式会社製の延伸仮撚加工装置を使用して900m/分の加工速度で延伸仮撚加工をしたときの交絡不良に起因するパッケージ解舒不良が原因の停機率を調べて、本発明の各実施例・比較例で得られたポリエステル部分配向未延伸糸についての工程通過性の評価を行った。
【0047】
停機率の求め方は、加工回数×216錘を、加工回数×停機数で割り返し百分率で表した。
【0048】
評価は、停機率が8%未満のものを「優秀」として表1では「○」で表記し、8%以上10%未満のものを「良」として表1では「△」で表記し、10%以上のものを「不良」として表1では「×」で表記した。
(5)原糸としての総合評価:
上記(1)〜(4)の各項目の評価において、「×」が一つでもあるものは「不良」として表1では「×」で表記し、○および△が各2個ずつあるものは「普通」として表1では「△〜○」で表記し、○が3個かつ△が一つのものは「良」として「○」で表記し、すべて「○」のときは「優秀」として表1では「◎」で表記した。
実施例1〜3、比較例1〜10
図5に示した装置・工程により130dtex、フィラメント本数144本のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸を製造した。
【0049】
巻取り速度は3000m/分、第1ゴデットロールの速度3000m/分、第2ゴデットロールの速度3000m/分である。
【0050】
流体交絡付与装置は、図4に示したものを第1ゴデットロールの上流に設置し、圧力を0.05〜0.4MPaの範囲で変更し、表1に示したように、各種の交絡数、毛羽数のものを得た。このときの紡糸張力は50gであった。
【0051】
【表1】

[交絡付与装置の実施例]
【0052】
実施例1〜3、比較例1〜10
表2に示した各種ディメンジョンの条件の流体交絡付与装置を用いて、図5に示した工程概要でポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸を溶融紡糸して流体交絡処理に供して巻取り速度3000m/分で巻き取り、流体交絡マルチフィラメント糸を製造した。
【0053】
流体交絡付与装置は、表2に示した条件の他、噴射孔径1.0mmとしたものを用い、流体(圧空)噴射圧力を0.2MPaとし、交絡処理を施した。
【0054】
各実施例・比較例で得られた各ポリエステル部分配向未延伸糸の糸質を表2に示した。
【0055】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明にかかるマルチフィラメント糸の交絡付与装置の構造を概略的に示した概略斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した流体交絡付与装置1におけるマルチフィラメント糸の通過方向Yと垂直方向の断面をとった概略断面モデル図である。
【図3】図3は、図1と図2に示した交絡付与装置を1の概略平面モデル図であり、糸処理部の軸線方向の長さL(mm)と、糸処理部の軸線と2つの流体噴射孔の軸線がなす角θ(°)を説明するための図であって、図3の(a)は、糸処理部の軸線と2つの流体噴射孔の軸線がなす角度が、概ね、本発明において特定したθの角度範囲に入るもののモデル図であり、同(b)は、θが90°であり本発明に含まれないものの概略モデル図である。
【図4】図4(a)、(b)は、多糸条を同時に集中して処理可能な一体の流体処理装置として組立てられた本発明にかかる交絡付与装置の構造の1例を示したもので、(a)が概略斜視図、(b)が図2と同様に、流体交絡付与装置1におけるマルチフィラメント糸の通過方向Yと垂直方向の断面をとった概略断面モデル図である。
【図5】図5は、実施例で採用したポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸を溶融紡糸して流体交絡処理に供して、流体交絡マルチフィラメント糸を製造するプロセスの1例をモデル的に示したものである。
【符号の説明】
【0057】
1:交絡付与装置
2:流体供給部
3:流体噴射ノズル部
4:側板部
5:糸処理部
6:流体噴射部
7:スリット部
8:流体導入通路
9:第1ゴデットロール
10:第2ゴデットロール
11:巻取機
12:給油ガイド
13:ボルト
Y:マルチフィラメント糸条
L:糸処理部の軸線方向の長さ
θ:糸処理部の軸線と2つの流体噴射孔の軸線がなす角
α:2つの流体噴射孔が交叉する交差角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度が2dtex以下である合成繊維フィラメントからなるマルチフィラメント糸であり、交絡数が2個/m以上20個/m以下であるとともに毛羽数が7個/50000m以下であることを特徴とするマルチフィラメント糸。
【請求項2】
部分配向未延伸マルチィラメント糸であることを特徴とする請求項1記載のマルチフィラメント糸。
【請求項3】
糸条に交絡を付与する糸処理部と、該糸処理部に開口し互いに交叉する2つの流体噴射孔からなる流体噴射部と、前記糸処理部と外部とを連通するスリット部からなる交絡付与装置において、前記糸処理部の軸線と前記2つの流体噴射孔の軸線がなす角θ(°)と、前記噴射孔が交叉する交差角α(°)と、前記糸処理部の軸線方向の長さL(mm)が以下の式(a)〜(c)を満足することを特徴とするマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
70°≦θ≦88° …(a)
60°≦α≦100° …(b)
3mm≦L≦15mm …(c)
【請求項4】
加圧流体の導入路を内部に設けた流体供給部と、該流体供給部の前記加圧流体導入路に沿って間隔をおいて列状に配置された少なくとも三つの糸道部材を備え、該少なくとも三つの糸道部材は、隣接する他の糸道部材との間に、糸処理部と、該糸処理部と外部とを連通するスリットが介在するように隔離され、該それぞれの糸道部材には、糸処理部に向かって開口する互いに交叉する2つの流体噴射孔が穿孔されていることを特徴とする請求項3記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
【請求項5】
前記2つの流体噴射孔の中間に、上記糸処理部の軸線方向に形成されるV字形形状の凹部を有することを特徴とする請求項3または4記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置。
【請求項6】
請求項3〜5のうちのいずれかに記載のマルチフィラメント糸の交絡付与装置を用いてマルチフィラメント糸に交絡を付与することを特徴とするマルチフィラメント糸の交絡付与方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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