説明

マルチプロセッサ式電子交換機の並列試験制御方式

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はマルチプロセッサ式電子交換機の並列試験処理方式に関し,詳しくは該マルチプロセッサ式電子交換機に収容された多数の加入者回路の並列試験制御する方式に関する。
【0002】多数の加入者を収容する電子交換機は,一定数の加入者回路を集線する処理を行うラインプロセッサ(Line Processor: LPRと称する),発着信の呼処理を行ってスイッチングネットワークを制御するコールプロセッサ(Call Processor): CPRと称する)及び複数のコールプロセッサを管理するメインプロセッサ(Main Processor:MPRと称する)等で構成されている。このようなマルチプロセッサ式の電子交換機において各加入者回路の正常性を確認するために定期的に試験が行われており, 従来の方法では時間がかかるためその改善が望まれている。
【0003】
【従来の技術】図4は従来例の構成と処理フローを示す図,図5は従来例の試験方式の説明図である。図4のA.は従来のマルチプロセッサ式電子交換機のシステム構成が示され,図においてネットワーク(NW)には,多数の集線装置(LC)と接続するハイウェイが収容され,各LCには多数の加入者回路が収容されている。そして,各集線装置LCは各加入者回路について監視,処理を行うためのラインプロセッサ(LPR)が設けられ,これらの複数のLPRに対して各加入者に対する呼処理を行うと共にネットワークの制御を行うコールプロセッサ(CPR)が各ネットワークに対応して設けられ,更に複数のCPRを管理及び制御するメインプロセッサ(MPR)が各CPRに接続されている。各NW(CPR)には,LCに収容されている複数の加入者回路の正常性を確認するため,加入者回路の電気的特性(絶縁,抵抗等)や,機能を試験(ライン試験という)するためのライン試験装置(LTE:Line Test Equipment)が設けられている。
【0004】従来のライン試験の処理フローは図4のB.に示されている。この処理フローによる試験実行の様子を図5を用いて説明する。図5のA.は従来例の試験を行うための動作の様子を示し,B.はタイミングチャートである。図5の50はメインプロセッサMPR,51はMPR内の試験制御部,52はコールプロセッサCPR,53はCPR内の試験実行制御部,54はラインプロセッサLPR,55はLPR内の試験実行部,56は各CPRに対し1乃至複数台設けられ,各LPRにより共用されるライン試験装置である。
【0005】最初にMPR50の試験制御部51から試験を開始する指令が発生すると,各CPR52の試験実行制御部53が起動する。すると,図4のB.に示す処理が起動され,1つのLPR54の試験実行部55をコールする。CPR52の試験実行制御部53によりコールされたLPR54の試験実行部55は,図4のB.に示すように,CPR内の空きLTE56を捕捉する(LTEが1台の場合は,そのLTEが空きの時捕捉する)。
【0006】次に捕捉されたLTE56を使用して,各加入者回路について定められた試験を行い,終了すると,試験実行制御部53の制御に復帰する。試験実行制御部53は,同じCPR52の制御下にある次の順番のLPR54の試験実行部55をコールして,上記と同様に試験を実行し,以下順番に同じCPR52の制御下にある全てのLPR54に対して試験を実行する。上記の動作のタイミングチャートを図5のB.に示す。この図により複数のCPR1〜CPRiが,それぞれ一斉に起動して,それぞれLPR1から試験が開始され,LPRjまで順番に試験が実行されることが分かる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来のマルチプロセッサ式電子交換機における加入者回路の試験方式によれば,CPR単位で試験を制御していたので,CPRに収容されるLPRの処理能力が向上するに従って,CPRに収容可能な加入者数も大幅に増加し,1つのLPRに2000加入者を収容する場合もある。このため,加入者を直接収容する装置の規模が増大し,1つのCPRに収容された全ての加入者回路の試験にかかる時間が増大するという問題があった(図5のB.参照)。さらに,試験時間がかかると,障害の発見と修復に要する時間が増大化するという問題が発生する。
【0008】本発明はライン試験に要する時間を短縮化できるマルチプロセッサ式電子交換機における並列試験制御方式を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の基本構成図である。図において,1は各コールプロセッサを管理するメインプロセッサ(MPR),2はMPR1に備えられた試験制御部,3はラインプロセッサと接続されネットワーク(図示せず)の制御を行うと共に呼処理を行うコールプロセッサ(CPR),4はCPR3に備えられた試験実行制御部,5は複数の加入者が収容された集線装置を制御し各加入者回路の監視・制御を行うラインプロセッサ(LPR),6はLPR5内に設けられた試験実行部,7はライン試験装置(LTE)である。
【0010】本発明は多数の加入者が収容された集線装置対応にライン試験装置を設け,コールプロセッサが制御下の複数のラインプロセッサに対してほぼ同時に試験実行を指示すると各ラインプロセッサは並行してそれぞれの集線装置内の加入者回路の試験をラインプロセッサ対応に設けられたライン試験装置により試験を実行するものである。
【0011】
【作用】MPR1の試験制御部2から試験開始の指示が各CPR3に送出されると,各CPR3の試験実行制御部4が起動する。これにより試験実行制御部4はそれぞれの制御下にある複数のLPR5に対し,順次ライン試験を実行開始する指令が送出される。各LPR5の試験実行部6はこの指令を受けると,それぞれの集線装置に設けられたライン試験装置7を同じ集線装置に収容された各加入者回路に接続して,順次決められた試験を実行する。各LPR5において,それぞれ収容された全ての加入者回路についてのライン試験を終了すると,ライン試験装置7を解放する。このように,複数のLPR5においてほぼ一斉にライン試験が実行されるので試験時間を短縮することができる。
【0012】
【実施例】図2は実施例のマルチプロセッサ式電子交換機のハードウェア構成図,図3は実施例の処理フローとタイミングチャートである。図2において,1はメインプロセッサMPR,3はコールプロセッサCPR,5はラインプロセッサLPR,7は各集線装置に対応して設けられたライン試験装置LTEを表すことは上記図1と同様であり,8は集線装置LC,9は加入者回路,10はネットワークNWを表す。
【0013】図2に示すハードウェア構成を用いて,本発明による試験制御方式を図3に示す処理フローを用いて説明する。最初に保守コンソールからの指示またはプログラムによりMPR1から各CPR3に対してライン試験開始を指示する指令が送出される。これを受け取った各CPR3は,それぞれに備えたプログラムで構成する試験実行制御部が起動される。その試験実行制御部の処理フローは図3のA.に示され,起動すると,このCPR3に制御されるNW10に収容された複数の集線装置8のLPR5内の試験実行部の1つをコールする指令を発生する。この試験実行部をコールする動作は,順次各LPR5に対して実行され,このCPRの制御下にある全てのLPR5に対して実行されると,このCPR3の処理は終了する。
【0014】一方,各LPR5にはプログラムで構成する試験実行部が備えられ,CPR3からコールされると起動し,図3のA.に示すようにLC8内の空きLTEを捕捉し,ライン試験を実行する。このライン試験は,図2に示す構成において,LTE7と試験の対象となる1つの加入者回路9とを接続するスイッチをオンにした上で実行され,1つの加入者回路9について試験が終了すると,次の加入者回路9が選択されて同様にLTE7と接続されて試験が行われ,同じLC8に収容された全ての加入者回路9の試験が終了することにより,このLPR5における試験実行部の処理が終了する。
【0015】図3のB.には,上記の実施例の試験におけるタイミングチャートが示され,図に示すにように,各CPR1〜CPRiにおける試験動作は,各CPR内のLPRによる試験時間により決まり,従来例の図5のB.と比べて試験時間が大幅に短縮されることが明らかである。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば一回の試験時間が1つのラインプロセッサに収容される試験対象装置の数で決まり,何千という装置の試験も短時間で実行でき,電子交換機のサービス性および信頼性の向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成図である。
【図2】本発明の実施例のハードウェア構成図である。
【図3】実施例の処理フロー図である。
【図4】従来例の構成と処理フローを示す図である。
【図5】図5は従来例の試験方式の説明図である。
【符号の説明】
1 メインプロセッサ(MPR)
2 試験制御部
3 コールプロセッサ(CPR)
4 試験実行制御部
5 ラインプロセッサ(LPR)
6 試験実行部
7 ライン試験装置(LTE)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のコールプロセッサが対応するネットワークを制御し,各コールプロセッサにより制御される複数のラインプロセッサがそれぞれ多数の加入者回路を収容する集線装置を制御するマルチプロセッサ式電子交換機において,各集線装置に対応してライン試験装置を設け,各コールプロセッサは,それぞれ試験開始の指示により制御下にある複数のラインプロセッサに対して一斉にライン試験の起動を指示し,各ラインプロセッサはこれに応じ,前記ライン試験装置を集線装置に収容された各加入者回路に接続して試験することを特徴とするマルチプロセッサ式電子交換機の並列試験制御方式。
【請求項2】 請求項1において,複数のコールプロセッサを制御するメインプロセッサを備え,該メインプロセッサからの指示により各プロセッサはライン試験の起動を指示することを特徴とするマルチプロセッサ式電子交換機の並列試験制御方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2922314号
【登録日】平成11年(1999)4月30日
【発行日】平成11年(1999)7月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−412359
【出願日】平成2年(1990)12月20日
【公開番号】特開平4−220855
【公開日】平成4年(1992)8月11日
【審査請求日】平成9年(1997)5月16日
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000237651)富士通コミュニケーション・システムズ株式会社 (4)