説明

マルチヘッド式梳篠機

梳篠機1の動作方式を改善するために、それぞれ一つの又は二つのフィードローラー6を一つの個別の電気モーター7によって駆動することを提案する。そうすることによって、例えば、ロールが形成されたために、フィードローラーを停止したことが、別のフィードローラーに不利に作用することを防止することができる。ニッパー機器5の揺動運動と関連するようにモーター7,7’を配置することによって、駆動モーターの周りのフィードローラー6の揺動運動によりフィードローラーに加わる追加的な回転運動を制御介入によって補正する必要性が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、揺動するニッパー機器にコーミングするラップを供給するためのフィードローラーが各コーミングヘッドに個別に組み込まれたマルチヘッド式梳篠機に関する。そのような全てのフィードローラーを共通の駆動軸により駆動する梳篠機は、特許文献1の対象である。
【背景技術】
【0002】
マルチヘッド式梳篠機は、通常八つのコーミングヘッドを備えている。各コーミングヘッドは、ニッパー部、トップコーム、サーキュラーコームなどのコーミング機構にコーミングするラップを供給するためのフィードローラーを有する。八つのフィードローラーは、別個に実現されており、揺動するニッパー機器内に配置されている。それらは、中心のフィード軸を介して、位置を固定されたフィードモーターによって歯車又は歯付きベルトと噛み合う形で駆動される。
【0003】
フィードローラーが、位置を固定されたフィードモーターの周りを揺動しているので、ニッパー機器が前後に揺動した場合、追加的な回転運動がフィードローラーに伝達されることとなる。それを補正するためには、フィードモーターは、フィードローラーの送り運動に重なり合うように、ニッパー運動と同期して前後に動く回転運動を実現して、フィードローラーが、所定のフィード運動だけを実現するようにしなければならない。
【0004】
フィードローラーの中の一つでロールが形成された場合、そのことは、フィードローラーを停止させて、全てのフィードローラーがフィード軸を介して連結されているために、全てのフィードローラーを停止させる可能性が有る。
【特許文献1】ドイツ特許第19506351号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のことから、この発明の課題は、このような周知の梳篠機の動作方式を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1又は6の特徴部の特徴によって解決される。回転数と回転方向を中央で設定することができる同期した個別の電気モーターを用いて、それぞれ一つ又は少なくともそれぞれ二つのフィードローラーを駆動することによって、フィードローラーを中央で調整することができるという利点が得られる。梳篠機のフィードローラーを別個に駆動することによって、フィードローラーが相互に影響し合うという欠点が防止される。基本的には、この利点は、それぞれ二つの隣接するコーミングヘッドのフィードローラーを一つの個別の電気モーターによって共通的に駆動した場合にも得られる。
【0007】
この実施構成は、特に、梳篠機が、任意選択により六つ又は八つ以上のコーミングヘッドを備えている場合に有利である。その場合、梳篠機は、三つから五つの同種の複式コーミングヘッドから構成される。
【0008】
請求項2にもとづき個別の電気モーターをニッパー軸受ジャーナルと同軸に配置することは、個別の電気モーターの質量が、ニッパー機器の揺動運動に対して負荷をかけないか、或いはそれらが共振した場合に僅かな負荷しかかけないという利点を奏する。それに対して、請求項4にもとづきニッパー機器に個別の電気モーターを配置することは、コーミングするラップの移送運動に作用するニッパー機器の揺動運動を個別の電気モーターの回転運動によって補正する必要が無いという利点を提供する。
【0009】
請求項5にもとづき個別の電気モーターをフィードローラーと同軸に配置した場合、個別の電気モーターの回転運動に関する伝動部材が不要となる。
【0010】
個別の電気モーターは、それらの電力消費量を監視することによって、フィードローラーにおけるロール形成の開始を検知するとともに、早期の介入を促す能力を提供する。それに対して、請求項6にもとづくフィードローラー用の中央の駆動モーターは、構造をより簡単にするという利点を奏する。この場合、請求項7にもとづく回転トルク制限器は、全てのフィードローラーが共通のフィード軸を介して連結されている場合でも、フィードローラーの停止が波及することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施例が、図面に模式的に図示されている。
【0012】
図1〜4の梳篠機1の図面は、中間支柱3により分離され、少なくとも六つのコーミングヘッドを備えた梳篠機の第一の四つのコーミングヘッド2を全く模式的に図示している。このような梳篠機1の構造は周知であり、そのためここでは詳しく図示も記述も行わない。
【0013】
各コーミングヘッド2において、ニッパー機器5が、前後に揺動する形でニッパー軸受ジャーナル4に軸支されている。ニッパー機器5は、揺動用駆動部のここでは図示されていない伝動部材によって、約15°の揺動運動を与えられる。各ニッパー機器5には、フィードローラー6が回転可能な形に配置されており、そのローラーによって、コーミングするラップをニッパー部に供給している。このフィードローラー6を駆動するために、回転数と回転方向を素早く変更することが可能であるとともに、逆転することが可能である電気モーター7が配備されている。その目的のためには、特に、同期モーター又はステッピングモーターが適している。
【0014】
図1の実施構成では、各フィードローラーは、個別の電気モーター7により駆動することが可能である。その固定子は、それぞれニッパー機器5の側面部8の中の一つに、そのニッパー軸受ジャーナル4と同軸にフランジにより接合されており、ニッパー機器と共に前後に揺動することが可能である。その回転子の回転は、中間支柱3内で回転可能な形に軸支されたニッパー軸受ジャーナル4と歯車又は歯付きベルトなどの中継部材9とを介して、噛み合う形で対応するフィードローラー6に伝達される。個別の電気モーター7の回転運動は、ここでは図示されていない制御装置における目標とするコーミングする程度に応じて生起される。全ての個別の電気モーターが、同じ周波数と回転方向で動かされ、そのため同期して動作し、全てのコーミングヘッド2に同じフィード量を実現していることは明らかである。このニッパー機器5と共に揺動する形態の個別の電気モーター7の実施構成は、ニッパー機器5の揺動運動により生じる中継部材9の転動運動を補正する必要が無いという利点を奏する。
【0015】
個別の電気モーター7は、ニッパー機器5上の代わりに、ニッパー機器と同期して揺動する別の構成部品上に、ニッパー軸受ジャーナル4と同軸でない形で取り付けることもできる。
【0016】
しかし、個別の電気モーター7は、図1において最後のコーミングヘッド2の右の方に破線で図示されている通り、支持アーム10を介して機械の架枠、例えば、中間支柱3上に位置を固定して固定することもできる。個別の電気モーター7の回転運動の伝達は、前述した通り実行される。この実施構成は、個別の電気モーター7に電気エネルギーを伝えるためのケーブルが、高い揺動周波数のコーミング動作による摩擦に曝されないという利点を提供する。
【0017】
図2の実施構成では、それぞれ二つの隣接するコーミングヘッド2におけるフィードローラー6が、個別の電気モーター7により駆動されている。これらのモーターは、前述した通り、ニッパー機器5の中の一つの側面部8とフランジにより接合されており、ニッパー機器と共に揺動することが可能である。それらのモーターは、次のコーミングヘッド2にまで延びる、延長されたニッパー軸受ジャーナル4を介して両方のコーミングヘッドの伝動部材9に回転運動を伝達している。しかし、モーター7は、図1に示されている通り、支持アーム10を用いて位置を固定して保持することもできる。両方の実施構成の利点と欠点は、図1に関して既に述べたものと同じである。
【0018】
図3による実施構成では、個別の電気モーター7は、フィードローラー6と同軸に各ニッパー機器5の側面部8の中の一つに配置されている。この場合、フィードローラー6上の伝動部材が不要である。この実施構成では、特に軽量で質量の小さい個別の電気モーターが必要である。この実施構成では、外側の回転するモーター部分をフィードローラーとして構成する形態のドラムモーターとしてのフィードローラー6の構成が有利である。伝動部材が不要となるために、補正すべき転動作用が発生しない。
【0019】
最後に、図4は、ニッパー機器5の側面部8と揺動する形で接続された電気モーター7’が、貫通するフィード軸11を駆動し、そのフィード軸が、中継部材9を介してフィードローラー6を駆動する実施構成を図示している。電気モーター7’は、梳篠機1の長さに渡って分散された形でフィード軸11上に作用する複数の、即ち、二つ、四つ又は八つの小さい寸法の電気モーターと置き換えることもできる。
【0020】
この発明では、このようにフィード軸11が全てのコーミングヘッド2と連結されている場合、ロールの形成などの妨害により停止されたコーミングヘッドが別のコーミングヘッドに不利な作用を及ぼす可能性が有るので、別の実施形態において、伝動部材9のリンク内に滑り摩擦クラッチを組み込むものと規定する。このような回転トルク制限器の始動トルクは、回転トルク制限器がラップの移送に必要なトルクを確実に伝達するが、フィードローラーが停止された時には作動するような大きさとしなければならない。コーミングするスライバーのために梳篠機に標準的に設けられた個別のストッパーは、操作者にそこに問題が有ることを注意喚起し、その結果操作者が介入することができることとなる。
【0021】
そうすることによって、ロールが形成された場合、別のコーミング箇所に対して僅かな影響しか生じない。また、フィード軸が貫通する場合、フィードローラーの精確なフィード角度の実際値を検出するのに必要なことは、単一のフィードバックだけであり、そのことは、システムのコストに対して大きな効果を生み出すこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】各フィードローラーを個別に駆動する梳篠機の前面図
【図2】それぞれ二つのフィードローラーを一緒に個別に駆動する梳篠機の前面図
【図3】フィードローラーを同軸に個別に駆動する梳篠機の前面図
【図4】フィード軸が貫通する梳篠機の前面図
【符号の説明】
【0023】
1 梳篠機
2 コーミングヘッド
3 中間支柱
4 ニッパー軸受ジャーナル
5 ニッパー機器
6 フィードローラー
7,7’ 個別の電気モーター
8 ニッパー機器5の側面部
9 中継部材
10 支持アーム
11 フィード軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動するニッパー機器のニッパー部にコーミングするラップを供給するためのフィードローラーが各コーミングヘッドに個別に組み込まれたマルチヘッド式梳篠機において、
それぞれ一つの又は隣接する二つのフィードローラー(6)が、一つの個別の電気モーター(7)によって駆動され、その電気モーターの回転数と回転方向が、全てのコーミングヘッド(2)に対して共通的に中央で設定することが可能であることを特徴とするマルチヘッド式梳篠機。
【請求項2】
個別の電気モーター(7)が、ニッパー機器(5)を軸支するニッパー軸受ジャーナル(4)と同軸に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のマルチヘッド式梳篠機。
【請求項3】
個別の電気モーター(7)が、位置を固定して配置されていることを特徴とする請求項2に記載のマルチヘッド式梳篠機。
【請求項4】
個別の電気モーター(7)が、揺動するニッパー機器(5)又はニッパー機器と同期して揺動する構成部品上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のマルチヘッド式梳篠機。
【請求項5】
個別の電気モーター(7)が、フィードローラー(6)と同軸に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のマルチヘッド式梳篠機。
【請求項6】
揺動するニッパー機器のニッパー部にコーミングするラップを供給するためのフィードローラーが各コーミングヘッドに個別に組み込まれたマルチヘッド式梳篠機において、
一つの電気モーター(7’)又は複数の個別の電気モーターが、揺動するニッパー機器(5)の中の一つ又は複数の上に配置されており、回転可能なニッパー軸受ジャーナル(4)が、貫通するフィード軸(11)と接続されており、このフィード軸が、中継部材(9)を介して各フィードローラー(6)を駆動することを特徴とするマルチヘッド式梳篠機。
【請求項7】
例えば、ロールが形成されたために、フィードローラーが停止された場合に作動される滑り摩擦クラッチが、回転運動をフィードローラー(6)に伝達するための中継部材(9)に組み込まれていることを特徴とする請求項6に記載のマルチヘッド式梳篠機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−524465(P2008−524465A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547284(P2007−547284)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013469
【国際公開番号】WO2006/066783
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(504011069)ザウラー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト (17)
【Fターム(参考)】