説明

マルチホーン傾き防止装置

【課題】碍子によって吊下げられる電線のサイズに関わらず、マルチホーンの傾きを防止し、放電ギャップ長を所定値に確保することが可能なマルチホーン傾き防止装置を提供する。
【解決手段】一方に取付けられたマルチホーン20と他方に取付けられたカウンターウエイト30との間に吊下げ部10aが形成されるホーン取付金具10を有し、前記ホーン取付金具の前記吊下げ部に、電線を吊下げる碍子50が揺動可能に連結されるマルチホーン傾き防止装置1であって、前記碍子とホーン取付金具との間に、懸垂碍子とホーン取付金具との角度を一定に保つ角度維持具40を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送電線路への落雷による短絡事故を防止するマルチホーンに関し、とくにホーン取付金具の傾きに伴うマルチホーンの傾きを防止することが可能なマルチホーン傾き防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
架空送電線の鉄塔には、落雷から送電系統を保護するための避雷装置が設けられている。従来型の避雷装置の取付けは、鉄塔腕金部の改造を必要とし、コストが高くなるという問題があることから、鉄塔腕金部の改造が不要なマルチホーン(簡易型避雷装置)が開発されている。マルチホーンは、片持ち構造の碍子の先端部に放電ホーンが設けられており、落雷時には放電ホーンからアーク放電が行われるようになっている。マルチホーンは、放電ホーンからアークホーンまでのギャップ長が一定値に保たれない場合は、他の箇所で地絡が発生することになり、瞬時停電を防止することができない。したがって、落雷による瞬間停電を確実に防止するためには、マルチホーンの放電ギャップを所定値に維持することが必要となる。
【0003】
従来から、架空送電線路におけるアークホーン間のギャップを調整する技術は知られている(例えば、特許文献1参照。)。このギャップ調整方法では、上部のアークホーンと下部のアークホーンとの間にギャップゲージを挿入して、ギャップ長が最適になるように調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−303624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、マルチホーンは、アークホーンに比べて重量が大であり、かつ片持ち構造であるため、マルチホーンをホーン取付金具の一端部に取付けると、マルチホーンの自重によってホーン取付金具が傾き、これに伴ってマルチホーンが傾くという問題がある。これは、ホーン取付金具に碍子を介して吊下げられる電線のサイズが小となる場合に顕著となる。すなわち、大きなサイズの電線の場合は、電線にかかる張力が大きいため、電線を吊下げる碍子も傾きにくくなり、マルチホーンが自重によってほとんど傾くことはないが、小さなサイズの電線を用いた送電線路においては、電線に作用する張力が小であるため、マルチホーンを取り付けると、マルチホーンの自重によってホーン取付金具が傾き、これに伴ってマルチホーンも傾くという問題がある。
【0006】
マルチホーンの傾きの修正は、ホーン取付金具の他端部に取付けられたカウンターウエイトを用いて行うようにしているが、放電ギャップ長を最適な状態に調整することが難しい。すなわち、カウンターウエイトによって一時的に放電ギャップ長を所定値に調整することは可能であるが、電線が低張力であるため、時間の経過と共にマルチホーンの自重によってホーン取付金具が傾き、放電ギャップが変化してしまうという問題がある。また、カウンターウエイトをより重くするために、カウンターウエイトのサイズを大きくした場合は、アークホーンからカウンターウエイトまでの間隔が放電ギャップ長よりも短くなってしまい、カウンターウエイト側で地絡が発生するという問題が生じる。
【0007】
そこでこの発明は、碍子によって吊下げられる電線のサイズに関わらず、マルチホーンの傾きを防止し、放電ギャップ長を所定値に確保することが可能なマルチホーン傾き防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、一方に取付けられたマルチホーンと他方に取付けられたカウンターウエイトとの間に吊下げ部が形成されるホーン取付金具を有し、前記ホーン取付金具の前記吊下げ部に、電線を吊下げる碍子が揺動可能に連結されるマルチホーン傾き防止装置であって、前記碍子と前記ホーン取付金具との間に、前記碍子と前記ホーン取付金具との角度を一定に保つ角度維持具を設けたことを特徴とするマルチホーン傾き防止装置である。
【0009】
この発明によれば、角度維持具によって碍子とホーン取付金具との角度が一定に保たれるので、ホーン取付金具にマルチホーンを取付けた場合でも、碍子に対してホーン取付金具が傾くことが阻止され、ホーン取付金具の傾きに伴うマルチホーンの傾きが防止される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマルチホーン傾き防止装置において、前記カウンターウエイトの取付け位置は、前記吊下げ部に対して水平方向に調整可能であることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のマルチホーン傾き防止装置において、前記角度維持具は、一方が前記ホーン取付金具の前記吊下げ部よりも外側に連結され、他方が前記碍子の連結金具に連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、碍子とホーン取付金具との間に、碍子とホーン取付金具との角度を一定に保つ角度維持具を設けるようにしたので、マルチホーンをホーン取付金具へ取付けてもホーン取付金具が碍子に対して傾くことを阻止することができ、ホーン取付金具の傾きに伴うマルチホーンの傾きを防止することができる。これにより、碍子によって吊下げられる電線のサイズに関わらず、マルチホーンの放電ギャップ長を所定値に確保でき、瞬時停電の原因となる落雷による短絡事故の発生を防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、カウンターウエイトの取付け位置は、吊下げ部に対して水平方向に調整可能あるので、吊下げ部を支点とするマルチホーンとカウンターウエイトとのモーメントのバランスを適正に保つことができ、ホーン取付金具の揺れを抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、角度維持具の他方を碍子の連結キャップ金具に連結するようにしたので、碍子の強度の高い部分を連結箇所とすることができ、角度維持具に大きな外力が作用して場合でも、碍子の損傷を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係わるマルチホーン傾き防止装置の正面図である。
【図2】図1のマルチホーン傾き防止装置における角度維持具の拡大正面図である。
【図3】図2の角度維持具の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係わるマルチホーン傾き防止装置の正面図である。
【図5】図4のホーン取付金具の部分拡大正面図である。
【図6】図5のホーン取付金具の変形例を示す部分拡大正面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係わるマルチホーン傾き防止装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1ないし図3は、この発明の実施の形態1を示している。図1は、例えば送電電圧66kVの架空送電線路における送電鉄塔100に設けられたマルチホーン傾き防止装置1を示している。マルチホーン傾き防止装置1は、ホーン取付金具10と、マルチホーン20と、カウンターウエイト30を有している。ホーン取付金具10は、水平方向に延びる略T字状の金属板から構成されており、表面には亜鉛メッキなどの防錆処理が施されている。ホーン取付金具10には、一端部10bにマルチホーン20が取付けられており、他端部10cにカウンターウエイト30が取付けられている。
【0018】
ホーン取付金具10におけるマルチホーン20とカウンターウエイト30との間には、吊下げ部10aが形成されている。吊下げ部10aは、略T字状のホーン取付金具10の下方に突出する部位の近傍に位置している。吊下げ部10aには、送電鉄塔100の腕金金具101と揺動可能に連結される支点S1が形成されている。ホーン取付金具10における吊下げ部10aの支点S1の直下には、電線103を吊下げるための懸垂碍子50が連結されている。この実施の形態1においては、ホーン取付金具10には、送電電圧に対応した複数の懸垂碍子50が直列に連結されている。
【0019】
懸垂碍子50は、図2に示すように、第1の連結金具51と、碍子部53と、第2の連結金具54とを有している。第1の連結金具51の下部には、碍子部53に固定される円錐台状の保持部52が形成されている。第1の連結金具51の上端部(クレビス部)には、連結ボルト(図示略)が挿入される第1の連結穴51aが形成されている。保持部52における碍子部53との付け根部には、周方向に延びる突起52aが形成されている。碍子部53の裏側には、第2の連結金具54が固定されている。第2の連結金具54には、連結ボルト(図示略)が挿入される第2の連結穴54aが形成されている。第1の連結金具51と第2の連結金具54は、碍子部53を介して電気的に絶縁されている。
【0020】
複数の懸垂碍子50のうち最も下位に位置する懸垂碍子50における第2の連結金具54には、下部連結金具55が連結されている。下部連結金具55には、略T字形に形成された下部ホーン取付金具15が連結ボルト55aを介して連結されている。下部ホーン取付金具15の長手方向の両端部には、アークホーン70がそれぞれ取付けられている。下部ホーン取付金具15の長手方向の中央部には、電線103を保持する電線保持金具102が揺動可能に連結される支点S2が形成されている。
【0021】
図1に示すように、ホーン取付金具10に一方に取付けられるマルチホーン20は、リンク部21と、マルチホーン本体部22と、放電ホーン23を有している。マルチホーン20は、マルチホーン本体部22がリンク部21を介してホーン取付金具10側に片持ち状態で支持される構造となっている。リンク部21は、マルチホーン本体部22の姿勢を一定に保つ機能を有している。マルチホーン本体部22の先端部には、アークホーン70との間で放電を行うための放電ホーン23が設けられている。マルチホーン20は、放電ホーン23の先端が一方のアークホーン70の先端部70aに対して円弧Rを描くように動くことが可能となっている。
【0022】
ホーン取付金具10に他方に取付けられるカウンターウエイト30は、2本の固定用ボルト31によってホーン取付金具10に固定されている。カウンターウエイト30は、略三角形に形成されており、一部がホーン取付金具10に対して下方に突出している。ホーン取付金具10における吊下げ部10aとカウンターウエイト30が取付けられる他端部10cとの間には、アークホーン60が取付けられている。アークホーン60は、下部ホーン取付金具15に取付けられた他方のアークホーン70との間で放電を行うようになっている。
【0023】
最も上位に位置する懸垂碍子50とホーン取付金具10との間には、懸垂碍子50とホーン取付金具10との角度を一定に保つ角度維持具40が設けられている。図2および図3に示すように、角度維持具40は、支持部41と、第1の把持部42と、第2の把持部43とから構成されている。支持部41は、略L字状に形成されており、上端部にホーン取付金具10との連結を行うための連結穴41aが形成されている。支持部41の下端には第1の把持部42が溶接によって固定されている。第1の把持部42は、第2の把持部42との合体により、懸垂碍子50の第1の連結金具51の外面を把持する機能を有している。
【0024】
第1の把持部42は、平面形状が円弧状に形成されており、内面には懸垂碍子50における第1の連結金具51の突起52aに対して上下方向に係合可能な係合溝42aが形成されている。係合溝42aは、第1の把持部42の内面の全長にわたって延びている。同様に、第2の把持部43は、平面形状が円弧状に形成されており、内面には懸垂碍子50における第1の連結金具51の突起52aに対して上下方向に係合可能な係合溝43aが形成されている。係合溝43aは、第2の把持部43の内面の全長にわたって延びている。第1の把持部42の周方向の端部には、締結用フランジ42b、42cが形成されている。同様に、第2の把持部43の周方向の端部には、締結用フランジ43b、43cが形成されている。第1の把持部42の締結用フランジ42bと第2の把持部43の締結用フランジ43bは、ボルト44を介して締結可能となっている。第1の把持部42の締結用フランジ42cと第2の把持部43の締結用フランジ43cは、ボルト44を介して締結可能となっている。
【0025】
つぎに、マルチホーン傾き防止装置1の取付け手順および作用について説明する。
【0026】
まず、マルチホーン20を取付ける際には、送電鉄塔100の腕金金具101にホーン取付金具10を吊下げることが行われる。ホーン取付金具10の吊下げは、吊下げ部10aに形成された支点S1をボルト(図示略)を介して送電鉄塔100の腕金金具101と揺動可能に連結することにより行われる。そして、ホーン取付金具10における吊下げ部10aの直下に、電線103を吊下げるための懸垂碍子50を連結する。
【0027】
つぎに、ホーン取付金具10にアークホーン60を取付ける。その後、最も上位に位置する懸垂碍子50とホーン取付金具10との間に、懸垂碍子50とホーン取付金具10との角度を一定に保つ角度維持具40を設ける。角度維持具40の取付けは、一方をホーン取付金具10の吊下げ部10aよりも外側に連結し、他方を懸垂碍子50の第1の連結金具51に連結することにより行う。詳しくは、図2および図3に示すように、予め懸垂碍子50の第1の連結金具51の突起52aを第1の把持部42と第2の把持部42とによって外側から把持し、その後、支持部41の連結穴41aに挿入されるボルト(図示略)を使用して、支持部41をホーン取付金具10に連結する。この状態では、ホーン取付金具10は、懸垂碍子50の第1の連結穴51aに挿入されているボルト(図示略)を中心として揺動することができなくなり、懸垂碍子50の軸心Pと水平方向に延びるホーン取付金具10とのなす角度は直角に維持される。その後、ホーン取付金具10の他端部にカウンターウエイト30がボルト31を介して固定される。
【0028】
つぎに、ホーン取付金具10の一端部10bには、マルチホーン20が取付けられる。ここで、懸垂碍子50の軸心Pと水平方向に延びるホーン取付金具10とは、既に角度維持具40によって常に直角となるように保たれるので、ホーン取付金具10の一端部10bにマルチホーン20を取付けても、懸垂碍子50に対するホーン取付金具10の角度が変化することはなく、ホーン取付金具10の傾きに伴ってマルチホーン20が矢印F1方向に傾くことが防止される。
【0029】
このように、懸垂碍子50とホーン取付金具10との間に、懸垂碍子50とホーン取付金具10との角度を一定に保つ角度維持具40を設けるようにしたので、マルチホーン20の自重によってホーン取付金具10が懸垂碍子50に対して傾くことを阻止することができ、マルチホーン20の傾きを防止することができる。これにより、懸垂碍子50によって吊下げられる電線103のサイズの大小に関わらず、すなわち電線103に作用する水平方向の引張り力の大小に関わらず、マルチホーン20の放電ギャップ長H1を所定値に確保でき、瞬時停電の原因となる落雷による短絡事故の発生を防止することができる。つまり、電線103のサイズが小である場合は、電線103に作用する水平方向の引張り力も小となるので、従来ではマルチホーン20の自重によってホーン取付金具10が支点S1を中心として矢印F1方向に傾くことになるが、本発明のように、角度維持具40を設けることにより、懸垂碍子50の軸心Pに対するホーン取付金具10の傾きを阻止することができ、片持ち支持構造であるマルチホーン20の傾きを防止することができる。
【0030】
また、角度維持具40の他方を懸垂碍子50の第1の連結金具51に連結するようにしたので、懸垂碍子50における碍子部53よりもの強度の高い部分を連結箇所とすることができ、例えば角度維持具40に大きな外力が作用して場合でも、懸垂碍子50の損傷を確実に防止することができる。
【0031】
(実施の形態2)
図4ないし図6は、本発明の実施の形態2を示している。実施の形態2が実施の形態1と異なるところは、カウンターウエイトの位置調整の有無のみであり、その他の部分は実施の形態1に準じるので、準じる部分に実施の形態1と同一の符号を付すことにより、準じる部分の説明を省略する。後述する他の実施の形態についても同様とする。
【0032】
実施の形態1においては、ホーン取付金具10に取付けられるカウンターウエイト30は、同じ位置に固定される構成としたが、実施の形態2においては、カウンターウエイト30は、吊下げ部10aに対して水平方向に移動可能となっている。図4に示すように、実施の形態2においては、ホーン取付金具10Aは、図1のホーン取付金具10に対して軸方向の長さが長くなっている。図5に示すように、ホーン取付金具10Aの他端部10cには、複数の固定孔K1〜K6が形成されている。固定孔K1〜K6は、水平方向に所定の間隔をもって配置されている。これにより、カウンターウエイト30が固定位置は、吊下げ部10aに対して水平方向(矢印F3方向)に調整可能となっている。
【0033】
このように構成された実施の形態2においては、カウンターウエイト30は、ホーン取付金具10の吊下げ部10aに対して水平方向に移動で可能あるので、吊下げ部10aの支点S1を中心とするマルチホーン20とカウンターウエイト30とのモーメントのバランスを適正なものとすることができ、ホーン取付金具10の揺れを抑制することができる。すなわち、マルチホーン20の重量に応じてカウンターウエイト30の固定位置を調整することにより、支点S1を中心としてマルチホーン20とカウンターウエイト30とのモーメントのバランスを最適なものとすることができ、支点S1を中心とするホーン取付金具10の揺れを抑制することができる。
【0034】
図6は、図5の変形例を示している。図6に示すように、カウンターウエイト30を固定するための孔を長孔K7、K8、に形成している。図6に示すように、長孔K7、K8の長手方向の長さを、図5の固定孔K1〜K6における各孔の間隔よりも大としているので、カウンターウエイト30の固定位置をきめ細かく調整することが可能となり、マルチホーン20とカウンターウエイト30とのモーメントのバランスをより最適なものとすることができる。
【0035】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3を示している。図1は、送電電圧66kVの架空送電線路における送電鉄塔100に適用した場合を示したが、図7は送電電圧110kVの架空送電線路における送電鉄塔100に適用した場合を示している。送電電圧110kVの架空送電線路においては、2つのマルチホーン20が用いられる。すなわち、実施の形態3においては、上下に2つのホーン取付金具10Aが配置されており、上側のホーン取付金具10Aに取付けられたマルチホーン20の放電ホーン23と、下側のホーン取付金具10Aに取付けられたマルチホーン20の放電ホーン23との間で、放電が行われるようになっている。
【0036】
図7に示すように、上側のホーン取付金具10Aと懸垂碍子50とを連結する角度維持具40は、図2および図3と同じ構成となっているが、下側の上側のホーン取付金具10Aと懸垂碍子50とを連結する角度維持具46は、構造が異なっている。実施の形態3においては、懸垂碍子50の第2の連結金具54側をホーン取付金具10Aと連結する必要があることから、角度維持具46は略L字状に形成されている。すなわち、角度維持具46は、一方が連結部46aを介してホーン取付金具10Aに連結されており、他方が連結部46bを介して懸垂碍子50の第2の連結金具54側と連結される下部連結金具55に連結されている。これにより、懸垂碍子50の軸心Pと下側の水平方向に延びるホーン取付金具10Aとのなす角度は直角に維持されている。
【0037】
このように構成された実施の形態3においては、下側のホーン取付金具10Aと懸垂碍子50とは、角度維持具40によって常に直角となるように保たれるので、下側のホーン取付金具10Aの一端部10bに、マルチホーン20を取付けた場合でも、懸垂碍子50に対する下側のホーン取付金具10Aの角度が変化することはなく、下側のホーン取付金具10Aの傾きに伴ってマルチホーン20が矢印F2方向に傾くことが防止される。これにより、上側のマルチホーン20と下側のマルチホーン20との放電ギャップ長H2を所定値に確保でき、瞬時停電の原因となる落雷による短絡事故の発生を防止することができる。
【0038】
また、カウンターウエイト30は、下側のホーン取付金具10Aの吊下げ部10aに対して水平方向に移動で可能あるので、支点S2を中心としてマルチホーン20とカウンターウエイト30とのモーメントのバランスを適正なものとすることができ、支点S2を中心とするホーン取付金具10Aの揺れを抑制することができる。
【0039】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態においては、角度維持具40に係合溝42a、43aを形成し、懸垂碍子50の突起52aを把持する構造としたが、角度維持具40と懸垂碍子50の連結構造はこれに限定されることはなく、懸垂碍子50の別な部位を連結する構成であってもよい。また、図6においては、2つの長孔K7、K8を形成する構成としたが、1つの長孔を水平方向に延びるように形成する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 マルチホーン傾き防止装置
10 ホーン取付金具
10A ホーン取付金具
20 マルチホーン
23 放電ホーン
30 カウンターウエイト
40 角度維持具
41 支持部
42 第1の把持部
43 第2の把持部
46 角度維持具
50 懸垂碍子(碍子)
100 送電鉄塔
101 腕金金具
102 電線保持金具
103 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に取付けられたマルチホーンと他方に取付けられたカウンターウエイトとの間に吊下げ部が形成されるホーン取付金具を有し、前記ホーン取付金具の前記吊下げ部に、電線を吊下げる碍子が揺動可能に連結されるマルチホーン傾き防止装置であって、前記碍子と前記ホーン取付金具との間に、前記碍子と前記ホーン取付金具との角度を一定に保つ角度維持具を設けたことを特徴とするマルチホーン傾き防止装置。
【請求項2】
前記カウンターウエイトの取付け位置は、前記吊下げ部に対して水平方向に調整可能であることを特徴とする請求項1に記載のマルチホーン傾き防止装置。
【請求項3】
前記角度維持具は、一方が前記ホーン取付金具の前記吊下げ部よりも外側に連結され、他方が前記碍子の連結金具に連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマルチホーン傾き防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−54894(P2013−54894A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192106(P2011−192106)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】