説明

マルチメタルゴルフ

【課題】複数の金属材料による複合構造を有するマルチメタルゴルフクラブの剥離や腐食による性能の劣化や故障を防止したマルチメタルゴルフクラブを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブヘッド10は、第1の金属から製造される本体部分24と、第2の金属から製造され本体部分24の一部に圧入されるフェースインサート12とを具備する。第1の金属が第2の金属より重くなるように金属を選択する。第2の金属は本体部分24のフロントに配置される。さらに、インターロック構造が本体部分に形成され、フェースインサート12がインターロック構造に埋めこまれて本体部分に固着する。ゴルフクラブヘッドの各部分、フェースインサート12またはソール20が陽極酸化されて腐食から防護される。陽極酸化コーティングは着色され美的特性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴルフクラブに関係し、とくに、マルチメタルゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブで周囲に重み付けを行ってクラブの質量を周辺に分散させ、ゴルフクラブのフェースにスウィートスポットから離れてゴルフボールがフェースに芯から外れて当たる影響を最小化し、より正確でより一貫性のあるゴルフボールの軌道を実現する。周囲の重み付けは、フェースすなわち打撃面の反対に位置するゴルフクラブのバックにキャビティーを形成することによって実現する。このキャビティーを形成することによって確保した材料の重量をゴルフクラブのヘッドの周囲に再分配する。一般に、キャビティーの体積を大きくすると、周囲に分散される質量が大きくなる。その上、周囲の重量が一層クラブのソールに移動させられて重心が下方および後方に移動させられる。
【0003】
クラブヘッドにおいて、ゴルフクラブヘッドの重心を下方及び後方に移動させる代替的な手法は複合構造を採用する。これら複合構造は2、3またそれ以上の、種々な物理特性、例えば、種々の密度を具備する材料を採用する。所望の強度特性をより少ない重量で実現する材料を、ゴルフクラブヘッドのクラウンまたはトップラインに配置することによって、ゴルフクラブヘッドの総重量のより多くのパーセンテージをクラブヘッドのソールに移動させる。この結果、重心が下方および後方に移動させられる。好都合なことに、この手法はマッスルバックアイアンクラブまたはフェアウェイウッドに適応できる。なぜならば、これがボールの下方及び後方での打ち上げに役立つからである。ただし、複合材料は相互に結合され、例えば、溶接、成型、結合剤、具体的に、エポキシを使用して結合しなければならず、時間の経過とともに剥離や腐食にさらされる。このような部品の剥離、腐食によって、ゴルフクラブヘッドの性能が劣化し、クラブヘッドの故障につながる。
【0004】
したがって、部品の剥離、腐食、または分離に伴う問題を最小化する態様で設計された種々の密度を有する部品を採用する複合ゴルフクラブに対する要望が依然としてある。
【発明の開示】
【0005】
この発明は複合材料から構築されたゴルフクラブヘッドに向けられている。ゴルフクラブヘッドは、本体部分、例えば注型または鍛造の本体部分を含み、この本体部分が第1の金属から製造され、フェースインサートに結合される。フェースインサートは第2の金属から製造される。第1の金属および第2の金属は第1の金属の密度が第2の金属の密度より大きくなるように選択される。適切な金属の例は、第1の金属に対してチタンまたはシチールであり、第2の金属に対してアルミニウムである。フェースインサートはトップライン(またはクラウン)に隣接して本体部分のフロントに配置され、クラブヘッドの打撃面の少なくとも一部を形成する。本体およびフェースインサートの間の剥離または分離を最小化するために、インターロック構造(係合構造)が好ましくは本体部分に形成され、フェースインサートを本体部分にフィットさせるときに、フェースインサートと係合するようになっている。このインターロック構造は、フェースインサートが結合される、本体部分のトップセクションを通じて伸びる1または複数のチャンネルを含む。結合時に、フェースインサートはチャンネルと係合して、フェースインサートと本体部分との間に十分でかつ安定した結合を実現する。チャンネルは、量部品の間の結合を一層増強するような形状をとる。これらの形状は、これに限定されないが、矩形断面、オーバーハング断面、例えば鳩の尻尾の断面を含む。
【0006】
この発明は、また、ゴルフクラブヘッドの少なくとも一部、好ましくはフェースインサートを陽極酸化処理することに向けられている。代替的な実施例では、クラブヘッドのすべての部品が陽極酸化処理される。クラブヘッドのフェースインサート、本体、または双方が陽極酸化処理される。例えば、フェースインサートが陽極酸化処理アルミニウムから製造されて良く、また、本体部分が陽極酸化処理チタンから製造されて良く、または双方がそうであってよい。ポリマー、例えば、PTFE、ポリウレタンまたはポリ尿素を、陽極酸化処理層に付加してクラブの性能を増強させて良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
添付の図1〜図7を参照してこの発明に従うゴルフクラブヘッド10の事例的な実施例は、フェースインサート12及び本体部分24を含み、これがホーゼル16に結合されている。ホーゼル16はシャフト(図示しない)を収容するようになっている。クラブヘッド10は適切な材料、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、チタンから、好ましくは、鋳造または鍛造される。1実施例においては、本体部分24は鋳造された本体部分である。本体部分24はクラウンまたはトップライン14、トウ22、ソール20、およびヒール18を含みこれらが本体部分24の周囲を構成する。ホーゼル16は一般的には本体部分24のヒール118からのびる。1実施例では、クラブヘッド10はマッスルバックアイアン型クラブヘッドとして構成され、厚い底部のバック部分を具備する。本体部分24は打撃面を形成するフロント32も含む。
【0008】
この発明に従ってゴルフクラブの重心の位置の改良するには、種々の重量または密度を具備する種々の材料を採用する複合構造を用いる。具体的には、ゴルフクラブヘッド10は2つの材料を採用する。本体部分24は第1の材料、例えば、第1の金属から構築され、これは第1の重量または密度を有する。本体部分24に適した材料は、これに限定されないがステンレス鋼、炭素鋼、ベリリウム銅、チタンおよび金属マトリックス複合材料(MMC)を含む。好ましくは、本体部分24は高密度金属、例えば、ステンレス鋼またはチタンから製造される。クラブヘッド10も本体部分24のフロント32に結合されたフェースインサート12を含む。フェースインサート12は第2の材料すなわち第2の密度有する第2の金属から構築される。インサート12に適切な材料はチタン、アルミニウム及び合金を含む。1実施例では、第1の重量または第1の密度は第2の重量または第2の密度より大きい。
【0009】
クラブヘッド10の重心を下方および後方に移動させるために、軽量フェースインサート12が本体部分24に結合されて、フェースインサート12が本体部分24のフロント32上にクラウンまたはトップライン14に近接して配置される。したがって、フェースインサート12はクラブヘッド10のクラブフェースすなわち打撃面の一部を形成する。フェースインサート12が本体部分24から剥離するのを最小化するために、本体部分24は、トップライン14に近接して本体部分24のフロント32の少なくとも一部上に形成されたインターロック構造25を含む。フェースインサート12が本体部分24のフロント32に結合され、または圧入されるときにフェースインサート12はインターロック構造25中に固着され保持される。オプションとして、接着剤溶接または他の結合剤を使用してフェースインサート12をインターロック構造25に固着するのを支援する。フェースインサート12のインターロック構造25との相互関係及びメッシュが十分でフェースインサート12を本体部分24に強固に結合させる。
【0010】
1実施例ではインターロック構造25は少なくとも溝26を含みこれが本体部分24のフロント32のトップを通じて設けられている。代替的には、複数の平行な溝26が本体部分24のフロント32に形成され、さらにこれが複数の関連する尾根部すなわち立ち上がり部分28を設ける。1実施例において複数の平行な溝26は本体部分24のトップライン14またはソール20と実質的に平行なように配される。1実施例ではフェースインサート12は本体部分24に圧接されて、フェースインサーと12が本体部分24に結合されるときにフェースインサート12の第2の金属が溝26の各々を実質的に満たすようになっている。溝26は直線円形を含む任意の計上として配されてよいが、好ましくは溝26は全体としてソール20と平行に配された直線である。
【0011】
フェースインサート12を溝26を具備したインターロック部材25に埋め込むとフェースインサート12と本体部分24の間により強固で弾力性のある結合が形成される。溝の形状、特に、断面のプロフィールに応じて圧入したときに本体部分24とフェースインサート12との間で接触面積が増大し機械結合が増大する。図3に示す、1実施例では溝の各々は全体として矩形の断面形状を有する。他の実施例では少なくとも1つ、好ましくは2つのアンダーカット34(図4)が各溝に形成される。アンダーカット34は、開放端に近づくにつれ溝26をせまくして形成される。1実施例では溝26はハトの尻尾の形状の断面を有する。代替的に、溝26は全体として丸い断面(図5)例えば、円形または楕円の断面を有する。また尾根部28は丸または曲線であってよくフェースインサート12及び本体部分24を圧着するときに両者の間の係合を容易にする。これらの実施例では各溝26は本体部分24のフロント32に向かって開放されているけれども他の構成も可能である。例えば、図6に示されるように溝26は本体部分24のクラウンまたはトップライン14に向かって開放されてよい。好ましくは、この実施例において、溝26はハトの尻尾の形状の断面を有する。フェースインサート26は、本体部分24に、好ましくは、接着剤で結合されるときに、このような上向きに開放した溝の中に埋め込まれることとなる。
【0012】
他の実施例において、インターロック部材25は、図7に示すように、交差するチャンネル26、すなわち、一組の水平のチャンネル26および他の組の垂直なチャンネルにより形成される複数の直立したポスト27を有する。フェースインサート12は本体部分24へハンマで打ちつけられ、または圧接され、具体的にはスエージまたは冷間鍛造される。この方法は図4および5に示す実施例にも採用できる。
【0013】
1実施例において、本体部分のフロントにインターロック構造を形成するために、少なくとも1つのチャンネルがケース本体のフロントの部分を通るように形成される。代替的には、複数の平行なチャンネルが本体のフロントに形成され、各チャンネルは本体部分のトップラインまたはソールの少なくとも1つに平行である。チャンネルは全体として矩形の断面となるように形成して良い。代替的には、チャンネルは鳩の尻尾の断面となるように形成される。インターロック構造を本体のフロントに形成した後、フェースインサートを注型本体のフロントに圧接してフェースインサートの一部をインターロック構造の内部に取り付ける。
【0014】
この発明に従う事例的な実施例は、クラブヘッドの本体部分のフロントの一部にそのトップラインに近接させてインターロック構造を形成することによりゴルフクラブを製造する方法を含む。上述したように、本体は、トップライン、ソール、トウ、ヒール、フロント、およびこのフロントの反対側のバックを含み、本体は第1の金属から製造される。フェースインサートは、フェースインサートの一部を本体のインターロック構造の内部に取り付けることにより、注型本体のフロントに結合される。フェースインサートは第2の金属から構築される。第1および第2の金属は、第1の金属の密度または重量が第2の金属より大きくなるように選択される。例えば、第1の金属はチタンまたはチタン合金から選択され、第2の金属はアルミニウムまたはアルミニウム合金から選択される。フェース芯サーと12はクラブヘッドの体積に10%から40%の間を占めてよい。
【0015】
低密度、高強度の合金、例えばアルミニウムから製造した合金が、この発明に対してはとくに適切である。以下の表は、アイアンタイプのゴルフクラブの対応する典型的なフェースインサートの質量および厚さを説明する。
【表1】

【0016】
種々の材料では材料強度が異なるのでこれら種々の材料に対してフェースインサートの厚さを変える必要がある。これらフェースインサートは実質的に類似の強度を有する。これらの材料のうちで、スチールが最も強く、最も薄いフェースを逍遥できるけれども、密度がアルミニウムおよびチタンの双方に較べて大きい。この結果、スチールのフェースは、チタンや高強度アルミニウムのフェースに較べて薄いけれども重量が大きい。さらに、高強度アルミニウムのフェースインサートの密度が小さいので、重量を再配置して重心の位置を改善し、スイートスポットのサイズをおお菊で来る。
【0017】
低密度金属、例えば高強度アルミニウム合金をフェースインサートに採用するとき、それは、適切な材料強度および機械特性、例えば、降伏強度、引っ張り強度、硬度、延伸等を具備し、クラブの損傷や性能劣化を回避するようにしなければならない。好ましくは、高強度アルミニウム合金、例えば、スカンジウムを含有する合金、および7系列の高強度アルミニウム合金(「Sc−7」)、または、所定パーセントのセラミックを含有するアルミニウム合金(「M5C」)が採用される。これら合金の材料特性は、適切な合金MMC−7および13Aとともに以下の表に列挙される。
【表2】

【0018】
ただし、高強度アルミニウム合金、例えば、Sc−7およびM5Cを含むアルミニウム合金は腐食を受けやすく、ある場合には、典型的なステンレスシチールや治安材料に較べて腐食を受けやすい。アルミニウム合金がスチール合金と接触するとき、電解腐食がアルミニウムに悪影響を与える。
【0019】
この発明の実施例によれば、この発明のゴルフクラブの金属は酸化され、好ましくは陽極酸化されて、その強度および腐食耐性を向上させる。多くの未処理の金属、例えばアルミニウムの酸化は、金属が長期間に渡って空気に接触することにより自然に起こる。陽極酸化は、金属の表面を改質するために採用される処理であり、自然の専科により形成される酸化層に較べて著しく均一で高密度で硬い酸化層を形成する。これは、金属を剥離や腐食から防ぎ、異なる表面形状を生成し、結晶構造を変更し、また、さらには金属表面を着色するために用いることができる。陽極酸化の間、化学反応が起こり、金属の表面に結合した酸化層を生成する。例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金の物体を陽極酸化するために、通常の油脂洗浄剤で前処理される。そののち、好ましくは、エッチング処理により傷または既存の酸化物が除去される。物体はクロム酸、または、より好ましくは硫酸溶液中に浸される。つぎに、アルミニウム物体を陽極として動作させクロム酸を通じて直流電流を流すことにより、アルミニウム酸化物層が物体上に形成される。電流は陰極で水素を開放し、アルミニウムの陽極表面で酸素を開放し、酸化アルミニウムの積層を形成する。12ボルトDCでの陽極酸化で、約15.5平方インチの面積のアルミニウム片は約1アンペアの電流を消費する。商業的な用途では、使用される電圧は通常15から21ボルトの範囲である。酸濃度、溶液温度および電流のような条件を制御して一貫した酸化層の生成を可能にし、これにより、そうしない場合に較べて何倍もの厚さの層を形成できる。この酸化層は、アルミニウム表面に硬度および腐食耐性の双方を増強する。この酸化物は、コランダムの六角形の「パイプ」結晶として形成され、これら結晶が中央の六角形の空隙を具備し、これらが、染料処理において陽極酸化処理部分が着色する原因となる。満足のいく酸化コーティングが形成されたら、この後、陽極酸化物体をシールして剥離耐性の程度を最小化する。シールは、物体をシール用溶媒、例えば、ナトリウムまたはカリウムのクロム酸塩の5%水溶液(pH5.0から6.0)に10分間、約90°Cから100°Cの温度で浸すことにより達成され、また、沸騰した脱イオン水、コバルトまたはニッケルアセテート、または他の適切な化学溶液により達成される。
【0020】
種々のタイプの陽極酸化、タイプI、II、およびIIIがMIL−Spec MIL−A−8625F(Anodic Coating for Aluminium and Aliminium Alloys)に説明されており、その内容は参照してここに組み入れる。最も好ましくは、フェースインサートは、MIL−A−8625Fに従ってタイプIIIでハード陽極酸化される。ハード陽極酸化のコーティングは標準的なタイプIまたはIIの陽極酸化コーティングに較べて0.0035インチだけ厚く、コート金属中に標準的なタイプIまたはIIの陽極酸化コーティングに較べてより深く浸入する。MIL−A−8625Fから引用した次の表は陽極酸化コーティングのタイプの間の一般的な厚さの範囲を示す。
【表3】

【0021】
タイプIII準拠陽極酸化プロセスの商業的な例は、マサチューセッツ州、NatickのDuralectraによるSanford Hardcoat(商標)プロセス、およびミシガン州、DexterのAlpha Metal Finishing社により実施されるハードコート陽極酸化であり、これらは参照してここに組み入れる。タイプIIIハード陽極酸化プロセスはタイプIおよびIIのプロセスと類似であるけれども、タイプIIIは0°Cに近い低温での硫酸浴を、大きな電流とともに使用する。MIL−A−8625Fに従うと、タイプIIIコーティングは一般に5%を越える名目銅含量または8%を越える名目シリコン含量のアルミニウム合金に適用しない。約5%を越える多硬質量の合金はタイプIIIにはより不向きである。さらに、タイプIIIコーティングは耐摩耗性が大きいので、以下に述べるように、タイプIまたはIIのような態様でコーティングをポリマーでシールまたは注入する必要がなく、コーティングは幾分多孔性を保持する。さらに、多孔性が未シールの構造であるので、ハード陽極酸化のコーティングは着色染料を注入して物体の外観を変更でき、ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリエポキシド(エポキシ)またはポリウレタンベースの樹脂を注入して物体の摩擦特性を調整できる。
【0022】
ハード陽極酸化をポリマーで注入する方法は米国特許第5,439,712号「複合アルミニウム製品」に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。ハード陽極酸化プロセスが完了すると、陽極酸化された物体が注入溶液中に浸される。この注入溶液は、非イオン活性剤を用いて溶液中に分散された正帯電ポリマー粒子を含む。溶液およびアルミニウム物体は40°Cから80°Cの範囲まで加熱され、2から10ボルトの電圧が印可される。アルミニウム物体は陽極として動作し、正に帯電したポリマー粒子がハード陽極酸化コーティングに吸着されて均一な単分子層を形成する。当業者は容易に理解するように、任意の正帯電のポリマー粒子を使用でき、合金のタイプまたは使用されるポリマーに応じて温度および電圧が変更される。
【0023】
図8および9はこの発明の1実施例を示し、フェースインサート102がクラブヘッド100の本体104に結合されている。フェースインサート102は、結合の前に、好ましくはハード陽極酸化、すなわち、タイプIIIで処理され、ハード陽極酸化コーティング110で被着される。フェースインサートは、陽極酸化された後に、好ましくは、クラブヘッドの本体に樹脂111、例えばエポキシまたはウレタンにより結合され、この際、フェースインサート102の周囲が、その反対側で、暮れ部ヘッド本体104の一部を形成する棚部(図示しない)により支持される。ただし、他の結合方法も当業者により創案でき、これには先の実施例で説明した結合方法が含まれる。他の結合方法は、これに限定されないが、図9に示すネジ112を用い、また、図9bに示すようにフェースインサート102上に本体104の部分103を冷間鍛造またはスエージ処理してフェース102を保持する。インサート102は、部分103を収容する形状および寸法の棚部をその周囲に具備して打撃フェースが平坦になるようにしてよい。さらに、コーティング110が陽極酸化処理において所定領域を満たすので、フェースインサート102にネジ112用の穴を通常より大きくあけることが有益であり、そうでなければ小さいサイズのネジを用いる。
【0024】
ハード陽極酸化コーティングはしばしば無着色、灰色、または透明であるけれども、フェースインサートを着色または染料コーティングでハード陽極酸化して改善された美観を創出してよい。上述のDeralectraによるSaford Hardcoat(商標)処理は、アルミニウムに着色の陽極酸化コーティングを被着できる。着色は、二段階電解法、陽極酸化および着色を結合する一体化着色プロセス、上述したポリマー注入による有機または無機染色、干渉着色等によっても実現できる。そのような着色コーティングを用いてクラブヘッド表面に打撃領域すなわち「スイートスポット」を枠づけまたは影付けしてよい。図8のスイートスポット114はフェースインサートの表面のそのような着色領域の例である。物体の一部のみ着色するには、物体の陽極酸化されない部分を保護マスクによりマスキングすればよい。そのようなコーティングまたはマスキングはしばしばビニルまたは他のポリマーから製造され、通常容易に被着または剥離可能になっている。ハード陽極酸化処理に好適な商業的に利用可能な剥離可能なマスクは、ミシガン州、デトロイトのGeneral Chemical社から入手可能なPlateOff Mask 4210である。
【0025】
この発明はフェースインサートをハード陽極酸化する例に限定されない。フェースインサート102は、好ましくは、クラブヘッド本体104より軽く密度が小さい材料から構築されるけれども、陽極酸化処理に先立ってフェースインサート102をクラブヘッド本体104に結合することが可能である。図9aに示すように、フェースインサート102を固着した後、本体104およびフェースインサート102を含む全体のクラブヘッド100を実質的にハード陽極酸化コーティング110を非着してよい。これは、フェースインサート102をアルミニウムまたはアルミニウム合金で製造し、かつ、クラブヘッド本体104をチタンまたはチタン合金で製造する時にとくに好ましい。なぜならば、これら財用は容易に陽極酸化できるからである。アルミニウムはMIL−A−8625Fに従って陽極酸化され、チタンはAMF−2488またはMIS−23545に従って陽極酸化され、これらの内容は参照してここに組み入れる。カリフォルニア州、Huntington BeachのTiodize(商標)社は、これらの仕様で、Tiodize(商標)Processesの名称でチタンおよびチタン合金を処理し、これらの内容は参照してここに組み入れる。Tiodize(商標)社は「Tiodize Process」という名称のパンフレットを制作しており、これがそれらの処理を説明している。その内容も参照してここに組み入れる。チタンは、全体としては、チタンの物体を溶液中に浸して溶液を介して電流を通じることによって、アルミニウムと類似の態様で陽極酸化される。ただし、チタンは典型的にはアルカリ溶液に室温で浸され、これはアルミニウムおよびその合金と異なる点である。アルミニウムおよびチタンの陽極酸化のプロセスは同一ではないけれども、反陽極酸化処理の間マスキングが施されてコーティングまたは金属の間の干渉を回避してよい。この実施例では、本体104およびインサート102を陽極酸化に先立って結合する場合、フェースインサート102をクラブヘッド本体104に結合するのに先立ってハード陽極酸化する場合に較べて、結合方法に幅広い選択が可能となり、結合処理のおける陽極酸化コーティング110の損傷を最小化する。
【0026】
さらに他の実施例では、図11に示すように、陽極酸化コーティングに、ポリマー、例えば、DuPont社からTefron(商標)として入手可能で、かつ広く知られているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を注入または含浸させて低摩擦コーティング130を形成して良い。このような処理はSanford Hardlube(商標)処理としてDuralectraから入手可能であり、その内容は参照してここに組み入れる。陽極酸化処理された物体がPTFE正イオンを含む溶液に浸され、電流が供給される。正イオンは物体に吸引され、これが陽極として働き、正イオンが低摩擦コーティング130の孔中に注入される。ハード陽極酸化コーティングをPTFEで含浸させると、低摩擦コーティング130をドライバまたはフェアウェイウッドのような、スピンの減少が望まれる歩ゴルフクラブのフェースに被着するときにとくに有益である。なぜならば、PTFEは、知られている範囲で、最も摩擦係数が小さいものの1つであるからである。
【0027】
オプションのソールプレート108を陽極酸化させて、標準のハード陽極酸化コーティング110またはポリマー例えばPTFEで含浸させた低摩擦コーティング130を形成させて良く、後者は、ソールプレート108が地面に接触した時により防護的であり、受ける摩擦も小さく、スイング速度や寿命を増大させるので、フェアウェイウッドのとくに有益である。ハード陽極酸化のソールプレート108はドライバに適用しても有益であり、とくに、標準のプラスチック製のドライブ領域マットから打撃が外れた場合にも、PTFE注入コーティングにより摩擦が減少され、追加の防護が付加されるので、有益である。これは、されにアイアンタイプのクラブヘッド(図9に示すようなもの)またはパタークラブにも適用できる。図10に示すように、個別のソールプレート108に代えて、一体型のフェース/ソールピース120をこの発明で実現して良く、この一体型のピース120はハード陽極酸化されてPTFEが注入された低摩擦コーティング130を実現する。一体型のピース120は、先の実施例において理解されるようなこの発明の分離型のフェースインサートおよびソールプレートと同様の利点を実現でき、さらに、クラブヘッド100の下方部分に防護を付加し摩擦を減少させる。
【0028】
図11aに示すように、他の実施例において、大きなスピンが望まれるとき、すなわち、アイアンタイプのクラブの場合、フェースインサート102状のハード陽極酸化コーティングは摩擦が大きなポリマー材料137、例えば、エポキシベースの樹脂、ポリウレタン、またはポリ尿素でシールされて、ハード陽極酸化の高摩擦コーティング140を実現して良い。これは、グリーンへのアプローチショットを打つ時にボールを十分に制御したい、十分に熟練したゴルファーに有益である。なぜならばこれはボールおよびフェースインサート102の間の摩擦を増大させ、どのようなタイプのショットが望まれる場合でもより大きな制御および「作業性」を実現するからである。高摩擦ポリマーをコーティングに注入する処理は上述のPTFEで用いられた処理と類似である。陽極酸化された物体が正ポリマーイオンを含む溶液に浸され電流が供給される。正イオンは物体に吸引され、これが陽極として働き、正イオンが摩擦増強コーティング140の孔中に注入され、構造をシールする。1例において、クラブセットから選択されたアイアンクラブ、例えばショートアイアンおよびウェッジが摩擦増強コーティング140を伴って構築され、ボールスピンを増大させ、ショートゲームの制御を改善する。
【0029】
ここに開示されたこの発明の事例的な実施例は上述の目的を実現することは明らかであるけれども、当業者は多くの変更や他の実施例を実装できることを理解されたい。さらに、任意の実施例の特徴および/または要素を単独または他の実施例と組み合わせて採用して良く、この発明に従う方法のステップおよび要素を任意の適切な順番で実行してよい。したがって、特許請求の範囲がこのような変更は実施例のすべてをカバーするように意図され、この発明の趣旨の範囲内であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明に従うゴルフクラブヘッドの実施例の正面図である。
【図2】この発明の、フェースインサートを省略した本体部分の実施例の正面図である。
【図3】図2の3−3線に沿う図である。
【図4】この発明の、インターロック構造の他の実施例を示す本体部分の断面図である。
【図5】この発明の、インターロック構造の他の実施例を示す本体部分の断面図である。
【図6】この発明の、インターロック構造の他の実施例を示す本体部分の断面図である。
【図7】図2の他の実施例である。
【図8】この発明のクラブヘッドの実施例の正面図である。
【図9】この発明のクラブヘッドの実施例の断面図である。
【図9a】この発明のクラブヘッドの他の実施例の断面図である。
【図9b】この発明のクラブヘッドの他の実施例の断面図である。
【図10】この発明のクラブヘッドの他の実施例の断面図である。
【図11】この発明に従ってフェースインサートに被着させた注入ハード陽極酸化コーティングの断面図である。
【図11a】この発明に従ってフェースインサートに被着させた注入ハード陽極酸化コーティングの断面図である。
【図12】この発明のドライバ型のクラブヘッドの実施例である。
【図13】この発明のドライバ型のクラブヘッドの他の実施例である。
【符号の説明】
【0031】
14 トップライン
20 ソール
24 本体部分
25 インターロック構造
26 チャンネル
32 フロント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属を有する本体部と、
クラブヘッドのクラウンに隣接して上記本体部のフロントの少なくとも一部に形成された係合構造と、
上記本体部の上記フロントに結合され上記係合構造中に固着された、第2の金属を有するフェースインサートとを有し、
上記第1の金属の密度が上記第2の金属の密度より大きいことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
上記係合構造は少なくとも1つのチャンネルを有する請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
上記チャンネルは全体として矩形の断面を有する請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
上記チャンネルは少なくとも1つのアンダーカットを有する請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
上記チャンネルは鳩の尻尾の形状の断面を有する請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
上記フェースインサートの上記第2の金属が、上記フェースインサートが上記本体に結合されるときに、上記チャンネルを満たす請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
上記チャンネルは少なくとも上記クラウンまたはソールと全体として平行である請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
上記第1の金属はチタンまたはスチールを有し、上記第2の金属はアルミニウムを有する請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
上記チャンネルは上記クラウンに向かって開いている請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
上記チャンネルは鳩の尻尾の形状に溝である請求項9記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
上記フェースインサートの上記第2の金属が、上記フェースインサートが上記本体に結合されるときに、上記チャンネルを満たす請求項9記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
上記フェースインサートは上記ゴルフクラブヘッドの体積の約10%から40%の間である請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
さらに複数の平行なチャンネルを有し、これらが上記本体のトップラインおよびソールの少なくとも一方に実質的に平行である請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
上記係合構造は上記少なくとも1つのチャンネルを交差する少なくとも1つの第2のチャンネルをさらに有する請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
第1の金属を有する本体部と、
上記本体部の上記フロントに結合され、第2の金属を有するフェースインサートとを有し、
上記第1の金属は上記第2の金属と実質的に異なり、上記フェースインサートは陽極酸化処理されることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
上記第1の金属の密度が上記第2の金属の密度より大きい請求項15記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
上記第2の金属はアルミニウムである請求項15記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項18】
上記第2の金属は約5%未満の名目銅成分、約8%未満の名目珪素成分、および約5%未満の多孔質を有する請求項17記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
上記第2の金属はチタンを有する請求項15記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項20】
上記フェースインサートはハードアノダイズド処理されている請求項15記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項21】
上記フェースインサートはエポキシで上記本体に結合される請求項20記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項22】
上記フェースインサートはネジで上記本体に結合される請求項20記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項23】
上記第2の金属は、約5%未満の名目銅成分および約8%未満の名目珪素成分を具備するアルミニウムを有する請求項20記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項24】
上記陽極酸化処理されたフェースインサートの少なくとも一部が着色される請求項15記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項25】
上記陽極酸化処理されたフェースインサートは所定量のポリマーを注入される請求項15記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項26】
上記ポリマーはポリテトラフルオロエチレンを有する請求項25記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項27】
上記ポリマーは、ポリエポキシド、ポリ尿素、およびポリウレタンからなるグループから選択される請求項25記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項28】
上記フェースインサートは冷間加工またはかしめ(スエージ)により上記本体部に結合される請求項15記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項29】
上記本体の一部も陽極酸化処理され、上記陽極酸化処理される部分は、ホーゼル領域、ソールプレート、クラウン、バック領域、および本体部全体からなるグループから選択される請求項15記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項30】
上記本体部の上記陽極酸化処理される部分は着色される請求項29記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項31】
上記本体部の上記陽極酸化処理される部分は所定量のポリマーを注入される請求項29記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項32】
上記本体部の上記陽極酸化処理される部分はソールプレートであり、上記ソールプレートおよび上記フェースインサートが一体の部分を有する請求項29記載のゴルフクラブヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図9a】
image rotate

【図9b】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図11a】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−100056(P2008−100056A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−246309(P2007−246309)
【出願日】平成19年9月22日(2007.9.22)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
【Fターム(参考)】