説明

マルチリーフコリメータ

【課題】 アイソセンタ上に投影される照射像の輪郭形成の精度を向上することができるマルチリーフコリメータを提供すること。
【解決手段】 複数枚のリーフ13,14で構成されるコリメータブロック11,12を照射線の照射方向に2段備えたマルチリーフコリメータ10において、それぞれの段のコリメータブロックを構成する前記リーフを、照射線によってアイソセンタ上に投影される当該リーフの照射像で所定ピッチ分ずつずれるように構成する。
これにより、粒子線などの照射線が平行でなく円錐状であっても、アイソセンタ15上に投影される照射像A1,A2で所定ピッチずれるようにすることで、実際に照射される像の輪郭を高精度にできるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マルチリーフコリメータに関し、粒子線によるがん治療における照射野を規制するマルチリーフコリメータで、粒子線の広がりを考慮して照射像の輪郭の再現性を向上できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
近年、がんの治療に陽子線や素粒子線などの粒子線を用いた治療が行われており、加速器で作られた粒子線ビームを、照射野形成装置でがん患部の形状に加工して照射するようにしている。
【0003】
この照射野形成装置では、加速器から出た粒子線ビームを次のような操作を行ってがん患部の形状にする。
【0004】
まず、加速器から出た粒子線ビームをワブラ電磁石により振動させてドーナツ状にし、次いで、散乱体により、ドーナツ状のビームをより平坦なビームにする。
【0005】
そして、レンジシフタによりエネルギレベルを調整し、線量のピークががん患部に合うように調整するとともに、リッジフィルタによりビームに厚みを持たせる。
【0006】
最後に、加工されたビームをコリメータによりがん患部の形状に合わせるようにして加工が完了する。
【0007】
このような加工されたビームをがん患部の形状に合わせる操作を行うため、コリメータが用いられており、そのひとつにマルチリーフコリメータがある。
【0008】
このマルチリーフコリメータは、例えば特許文献1の従来技術に開示されているものを図7に示すように、粒子線Bを遮蔽できる素材の薄い板状のリーフ1を縦に配置して横に多数枚並べるようにするとともに、横に重ねられた1対のリーフ1同士を前後に相対向させる。
【0009】
そして、対向する各リーフ1同士の間隔とその位置を調整することで形成される間の空間2をビームBの照射部分とするとともに、これ以外のリーフ1部分でビームBを遮蔽し、多数のリーフ1の位置を変えることでがん患部の輪郭形状を再現するようにしている。
【0010】
ところが、それぞれのリーフ1の間に移動のための隙間3があると、この隙間3からビームBが漏れ、健常な細胞に悪影響を与えることから、これを防止する必要がある。
【0011】
その方法のひとつに、図8に示すように、リーフ4,5をビームBの照射方向に2段配置し、上下のリーフ4,5を半ピッチずらして千鳥状に配置することで、上段のリーフ4間を通過するビームBを下段のリーフ5で遮蔽するようにすることが提案されている(特許文献1参照)。
【0012】
また、上下2段にリーフを配置する同様なマルチリーフコリメータが特許文献2,3などにも開示されている。
【0013】
このような上下2段のリーフを半ピッチずつずらしたマルチリーフコリメータでは、照射野の輪郭が、理論的には、1段のリーフを用いる場合のピッチに応じた精度になるのに比べ、半ピッチに応じた高精度(2倍)になると考えられる。
【特許文献1】特公平7−67491号公報
【特許文献2】特開2003−210595号公報
【特許文献3】特開2004−16563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、このような上下のリーフを半ピッチずつずらしたマルチリーフコリメータを用いて必要な照射野を再現しようとしても、実際にアイソセンタ上に投影される照射像の輪郭再現性が理論的な輪郭ほど良くならないという問題がある。
【0015】
この発明は、かかる従来技術の有する課題に鑑みてなされたもので、アイソセンタ上に投影される照射像の輪郭形成の精度を向上することができるマルチリーフコリメータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来技術が有する課題を解決するため鋭意検討を重ねたところ、マルチリーフコリメータに照射されるビームは理論的な平行ビームでなく、実際のビームBは、図9に示すように、ワブラ電磁石を頂点とする円錐状となるため、頂点Oに近い上段のリーフ4が遮蔽した照射像6と、頂点Oから離れた下段のリーフ5に遮蔽された照射像7の大きさが異なり、同一ピッチのリーフ4,5では、上段のリーフ4の照射像6が大きくなってしまう。
【0017】
このため上段のリーフ4で形成された照射像6の外側は、図2(b)に示すように、下段のリーフ5によりさえぎられてしまうため、実際にアイソセンタ8上に投影される照射像6の輪郭再現性が良くならないことが分かった。特に、普及型の小型の粒子線がん治療装置では、一層ワブラ電磁石からアイソセンタまでの距離が短く、円錐状のビームの頂点Oの角度の影響が大きくなってしまう。
【0018】
このような検討結果から完成したこの発明の具体的な構成は、以下の通りである。
すなわち、この発明の請求項1記載のマルチリーフコリメータは、複数枚のリーフで構成されるコリメータブロックを照射線の照射方向に複数段備えたマルチリーフコリメータにおいて、それぞれの段のコリメータブロックを構成する前記リーフを、照射線によってアイソセンタ上に投影される当該リーフの照射像で所定ピッチ分ずつずれるように構成したことを特徴とするものである。
【0019】
このマルチリーフコリメータによれば、複数枚のリーフで構成されるコリメータブロックを照射線の照射方向に複数段備えたマルチリーフコリメータにおいて、それぞれの段のコリメータブロックを構成する前記リーフを、照射線によってアイソセンタ上に投影される当該リーフの照射像で所定ピッチ分ずつずれるように構成するようにしており、粒子線などの照射線が平行でなく円錐状であっても、アイソセンタ上に投影される照射像で所定ピッチずれるようにすることで、実際に照射される像の輪郭を高精度にすることができるようになる。
【0020】
また、この発明の請求項2記載のマルチリーフコリメータは、請求項1記載の構成に加え、前記照射線の照射方向下流側の段のコリメータブロックの前記リーフを、上流側の段のコリメータブロックの前記リーフに比べてリーフのピッチを広くして、アイソセンタ上での同一照射方向のリーフの照射像を同じ大きさに構成したことを特徴とするものである。
【0021】
このマルチリーフコリメータによれば、前記照射線の照射方向下流側の段のコリメータブロックの前記リーフを、上流側の段のコリメータブロックの前記リーフに比べてリーフのピッチを広くして、アイソセンタ上での同一照射方向のリーフの照射像を同じ大きさに構成するようにしており、上流側と下流側のリーフの照射像がアイソセンタ上で同一の大きさとなるようにすることで、照射線の角度の影響を受けずに高精度の照射野の輪郭形状にできるようになる。
【0022】
さらに、この発明の請求項3記載のマルチリーフコリメータは、請求項1または2記載の構成に加え、前記照射線を、頂点から円錐状に広がるビームで構成し、前記リーフを、このビームの広がりに基づき前記アイソセンタ上の照射像で前記段数分の1ずつピッチがずれるように構成したことを特徴とするものである。
【0023】
このマルチリーフコリメータによれば、前記照射線を、頂点から円錐状に広がるビームで構成し、前記リーフを、このビームの広がりに基づき前記アイソセンタ上の照射像で前記段数分の1ずつピッチがずれるように構成しており、照射線が円錐状であっても、多段のリーフを照射像上で段数分の1ずつずれるピッチとすることで、多段のリーフによる照射野の輪郭を最も高精度にできるようにしている。
【0024】
また、この発明の請求項4記載のマルチリーフコリメータは、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記リーフのピッチおよび幅を代え、前記段数分の1ずつピッチをずらすとともに、同一の前記照射像幅となるよう構成したことを特徴とするものである。
【0025】
このマルチリーフコリメータによれば、前記リーフのピッチおよび幅を代え、前記段数分の1ずつピッチをずらすとともに、同一の前記照射像幅となるよう構成しており、照射線が円錐状であっても、多段のリーフによる照射野の輪郭を最も高精度にできるようにしている。
【0026】
さらに、この発明の請求項5記載のマルチリーフコリメータは、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記コリメータブロックを2段で構成するとともに、前記リーフを、前記アイソセンタ上の照射像で2段のリーフによる照射像が半ピッチずつずれる構成としたことを特徴とするものである。
【0027】
このマルチリーフコリメータによれば、前記コリメータブロックを2段で構成するとともに、前記リーフを、前記アイソセンタ上の照射像で2段のリーフによる照射像が半ピッチずつずれる構成としており、2段のリーフにより照射線が円錐状であっても平行なビームの場合と同様な照射野の輪郭形状の精度を確保できるようになる。
ここで、リーフピッチとは、隣接するリーフの幅中心間の距離をいい、照射面上のピッチとは、リーフの照射像での幅中心間の距離をいう。
【発明の効果】
【0028】
この発明の請求項1記載のマルチリーフコリメータによれば、複数枚のリーフで構成されるコリメータブロックを照射線の照射方向に複数段備えたマルチリーフコリメータにおいて、それぞれの段のコリメータブロックを構成する前記リーフを、照射線によってアイソセンタ上に投影される当該リーフの照射像で所定ピッチ分ずつずれるように構成したので、粒子線などの照射線が平行でなく円錐状であっても、アイソセンタ上に投影される照射像で所定ピッチずれるようにすることができ、実際に照射される像の輪郭を高精度にすることができる。
【0029】
また、この発明の請求項2記載のマルチリーフコリメータによれば、前記照射線の照射方向下流側の段のコリメータブロックの前記リーフを、上流側の段のコリメータブロックの前記リーフに比べてリーフのピッチを広くして、アイソセンタ上での同一照射方向のリーフの照射像を同じ大きさに構成したので、上流側と下流側のリーフの照射像をアイソセンタ上で同一の大きさとなるようにすることができ、照射線の角度の影響を受けずに高精度の照射野の輪郭形状にすることができる。
【0030】
さらに、この発明の請求項3記載のマルチリーフコリメータによれば、前記照射線を、頂点から円錐状に広がるビームで構成し、前記リーフを、このビームの広がりに基づき前記アイソセンタ上の照射像で前記段数分の1ずつピッチがずれるように構成したので、照射線が円錐状であっても、多段のリーフを照射像上で段数分の1ずつずれるピッチとすることで、多段のリーフによる照射野の輪郭を最も高精度にすることができる。
【0031】
また、この発明の請求項4記載のマルチリーフコリメータによれば、前記リーフのピッチおよび幅を代え、前記段数分の1ずつピッチをずらすとともに、同一の前記照射像幅となるよう構成したので、リーフのピッチや幅を変えることで、照射線が円錐状であっても、多段のリーフによる照射野の輪郭を最も高精度にすることができる。
【0032】
さらに、この発明の請求項5記載のマルチリーフコリメータによれば、前記コリメータブロックを2段で構成するとともに、前記リーフを、前記アイソセンタ上の照射像で2段のリーフによる照射像が半ピッチずつずれる構成としたので、2段のリーフにより照射線が円錐状であっても平行なビームの場合と同様な半ピッチずれた照射野の輪郭形状の精度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、この発明のマルチリーフコリメータの一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2はこの発明のマルチリーフコリメータを2段のリーフコリメータブロックで構成した一実施の形態にかかり、図1は照射線の軸直角方向からリーフコリメータブロックの片側のリーフ端面を見た場合の説明図、図2はリーフコリメータブロックの側面から見た(図1の紙面直角方向から両側のリーフを見た)場合を従来例(b)と比較して示す説明図である。
【0034】
この発明のマルチリーフコリメータ10では、上下2段のリーフコリメータブロック11,12を構成するそれぞれのリーフ13,14により形成されるアイソセンタ15上での照射像16,17が半ピッチずつずれるように上下のリーフピッチp1、p2を異なるものとしてある。
【0035】
照射線である粒子線のビームBは、ワブラ電磁石を頂点とする円錐状となるため、図1に示すように、上段のリーフ13が遮蔽した照射像16は下段のリーフ14が遮蔽した照射像17よりも大きくなるが、ワブラ電磁石の頂点Oからの距離に応じて上段のリーフ13のピッチp1に比べて下段のリーフ14のピッチp2を広くとることで、それぞれのリーフ13,14による照射像16(大きさA1),17(大きさA2)がアイソセンタ15上で同じ大きさA1=A2となるようにする。
【0036】
また、このマルチリーフコリメータ10では、上段のリーフ13と下段のリーフ14は、リーフ13同士およびリーフ14同士の対向面間では、図2(a)に示すように、下段のリーフ14を上段のリーフ13よりも円錐状のビームの広がりおよび規制すべき照射像16,17の大きさA1,A2に応じて外側に位置させ、図2(b)に示した従来例のように、ビームBが平行に照射されるとした場合の上下のリーフ4,5を同一位置に配置し、上段のリーフ4で形作られた照射像6の外側を下段のリーフ5でさえぎることがないようにする。
【0037】
このように構成したマルチリーフコリメータ10では、ワブラ電磁石の中心Oから円錐状に放出されたビームBは、上段のリーフ13と下段のリーフ14により遮蔽され、対向するリーフ13同士およびリーフ14同士の間隔と位置とを調整することでがん患部の形状に対応した空間形に形作られる。
【0038】
このとき、下段のリーフ14を上段のリーフ13より、図2(a)に示すように、リーフ14の移動方向に、ある距離分だけ外側に位置決めする。
【0039】
また、下段のリーフ14のピッチp2は上段のリーフ13のピッチp1より大きくしてあるので、(従来のマルチリーフコリメータでは下段のリーフ4が作る照射像7は上段のリーフ3が作る照射像6よりも大きくなるが、)上段のリーフ13と下段のリーフ14それぞれで形作られるビームは照射像16,17はアイソセンタ15上で同じ大きさA1=A2となって照射像16,17を形作る。
【0040】
そして、上段のリーフ13と下段のリーフ14は照射像16,17がこの照射像で半ピッチずれるように配置してあるため、照射像の輪郭の精密さは1段の場合に比べ向上し、2倍の精度となる。
【0041】
なお、マルチリーフコリメータでは、同一厚さのリーフ13,14を用いてそれぞれのピッチp1,p2を変えるだけでなく、ピッチp1,p2およびリーフ13,14の厚さを変えるようにして照射像上で、半ピッチなど所定ピッチずれるようにしても良い。
【0042】
また、コリメータブロック11,12を上下2段で構成する場合に限らず、さらに多段にしても良く、この場合にはその段数分の1ずつ照射像上でピッチがずれるようにすれば、一層輪郭精度を向上することができる。
【0043】
次に、このような多段のリーフの具体的なピッチの算出方法について、上下2段のリーフを例に説明する。
ここでは、粒子ビームの広がり角を考慮し、1/2リーフピッチの投影像を得るための条件を求める。
【0044】
(1)リーフ配置方法
まず、リーフ配置方法として、ビームBの広がりに対応し、患者照射面(アイソセンタ)15上に形状Aを投影するための条件を求める。
【0045】
図3に示すように、上段、下段リーフ13,14で作成した照射形状A3、A4はビームの広がり角により拡大した大きさAで、照射面15上に投影される。
【0046】
なお、ここでは、輪郭を形成する部分は、リーフ13,14下端ではなく、リーフ13,14厚方向の中央部分とした。
【0047】
アイソセンタ15上に形状Aを得るためには、A3、A4による投影像をアイソセンタ上で同じ大きさにする必要がある。
【0048】
そこで、A3、A4の形状をビーム頂点からの距離に応じて照射形状Aを縮小したものとして合成する。それぞれの縮小率をr1、r2とすると、次式1となる。
【0049】
【数1】

【0050】
実際の装置では、マルチリーフコリメータ(MLC)の位置を変えることができるようにしてあり、アイソセンタから、例えば200〜700mmの範囲で位置を変えることができるようにする。
【0051】
このようなマルチリーフコリメータでは、リーフ送り方向の拡大率の違いは、上下リーフ13,14の送り量を変えて対応できるが、リーフピッチp1,p2方向では、拡大率の違いによる照射面15上のリーフピッチが異なるため、合成した照射形状に干渉パターンが生じる。
【0052】
このため照射野の両端部付近で1/2ピッチの輪郭形成ができないことになる。
【0053】
そこで、以上のような条件に基づく作図から、干渉が起こる位置は、マルチリーフコリメータ(MLC)のアイソセンタ15からの距離によって若干移動することがわかった。
【0054】
(2) 干渉解析
次に、干渉パターンを解析し、アイソセンタ15上の投影像に干渉の起こらない寸法条件を求める。
【0055】
図4に示すように、照射面上に投影した上下リーフ13,14のピッチを、P1、P2とする。前項の縮小率から、P1、P2は以下のようになる。なお、p1、p2は上下のリーフ自体のピッチであり、次式2で表すことができる。
【0056】
【数2】

【0057】
P1は拡大率の違いにより、P2よりδだけ大きくなる。
したがって、
δ=P1−P2
∴P1=P2+δ
となる。
【0058】
マルチリーフコリメータ(MLC)の中央では、図5に示すように、上下段のリーフ13,14は1/2ピッチずらした配置となっているとすると、リーフピッチ方向で上下のリーフでずれが生じ、1/2ピッチとならない部分が生じる。
【0059】
そこで、図6に示すように、中央からn枚目の上下段のリーフの位置をP1(n)、P2(n)とすると、それぞれの位置を次式3のように表すことができる。
【0060】
【数3】

【0061】
そして、図6より、P1(n)>P2(n)となる位置で干渉が起こることになる。
そこで、下記のレイアウト条件のある装置で、干渉の起こるnを求める。
【0062】
レイアウト条件
L = 4748.82 mm
l = 4425.82 / 3925.82 mm (MLC位置200/700)
h = 88 mm
p1 = p2 = 4.5mm
ここで、Lはビーム広がりの頂点(下流側電磁石の中心)からアイソセンタまでの距離、
lはビーム広がりの頂点(下流側電磁石の中心)から MLCまでの位置
h は上下間リーフピッチ
p1、p2は上下段それぞれのリーフピッチ、である。
これらの条件を用いるとともに、干渉が生じる条件P1(n)>P2(n)を用いて、nについて解くと、次式4のように求めることができる。
【0063】
【数4】

【0064】
この結果、マルチリーフコリメータ(MLC)の位置により干渉する位置が変わるが、中央から23〜24枚目で干渉が起こることがわかる。
【0065】
(3) 干渉の回避
次に、アイソセンタ上で、上下段のリーフの投影ピッチが同じになる条件を干渉が起こらない条件として求める。
干渉の位置は、マルチリーフコリメータ(MLC)の位置により異なるため、図より判断し、干渉の影響が大きいマルチリーフコリメータ(MLC)が700mmの位置の場合で干渉を回避する条件を求める。
アイソセンタ上で1/2ピッチの照射像が得られる条件は、次式5で表すことができる。
【0066】
【数5】

【0067】
そして、上段のリーフピッチp1を4.5mmとして、干渉の起きない下段のリーフピッチp2を求めると、次式6のように求めることができる。
【0068】
【数6】

【0069】
この結果から、上段のリーフピッチp1=4.5に対し、下段のリーフピッチp2=4.6とすれば干渉パターンを回避できる。
【0070】
なお、マルチリーフコリメータの位置を200mmとした場合には、リーフピッチを変更することができないため、干渉の回避条件が異なるが、700mmで求めたピッチとした場合でも、作図によりほぼ、干渉を回避することができることを確認している。
【0071】
また、照射野の大きさによっては、外周部で上下段のリーフ隙間が重なる可能性があるが、この場合には、上下段のリーフを千鳥状に配置するのに加え、外周部では、迷路状(ラビリンス形状やコルゲーション構造など)を組み合わせるようにすれば良い。
【0072】
以上のように、上記レイアウト条件の上下2段のマルチリーフコリメータでは、上段のリーフピッチp1を4.5mm、下段のリーフピッチp2を4.6mmとすることで、照射ビームが円錐状になる場合でもアイソセンタ15上の照射像で半ピッチずれた輪郭形状を得ることができ、照射野の形状精度を向上することができる。
【0073】
同様にレイアウト条件が定まれば、照射ビームが円錐状に広がる場合を考慮したアイソセンタ上での輪郭精度を確保するリーフのピッチを求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明のマルチリーフコリメータを2段のリーフコリメータブロックで構成した一実施の形態にかかる照射線の軸直角方向からリーフコリメータブロックの片側のリーフ端面を見た場合の説明図およびアイソセンタ上での照射像のずれの説明図である。
【図2】この発明のマルチリーフコリメータを2段のリーフコリメータブロックで構成した一実施の形態にかかるリーフコリメータブロックの側面から見た(図1の紙面直角方向から両側のリーフを見た)場合を従来例(b)と比較して示す説明図である。
【図3】この発明のマルチリーフコリメータを2段のリーフコリメータブロックで構成した一実施の形態にかかるリーフの配置と照射形状の関係の説明図である。
【図4】この発明のマルチリーフコリメータを2段のリーフコリメータブロックで構成した一実施の形態にかかるリーフピッチと照射像のピッチの説明図である。
【図5】この発明のマルチリーフコリメータを2段のリーフコリメータブロックで構成した一実施の形態にかかる上下のリーフピッチが異なる場合の中央部での配置の説明図である。
【図6】この発明のマルチリーフコリメータを2段のリーフコリメータブロックで構成した一実施の形態にかかる上下のリーフピッチが異なる場合の中央からn枚目の配置の説明図である。
【図7】従来の1段のリーフコリメータの側面図および平面図である。
【図8】従来の2段のリーフコリメータの側面図および平面図である。
【図9】従来の2段のリーフコリメータのリーフピッチと照射像の大きさの関係の説明図である。
【符号の説明】
【0075】
10 マルチリーフコリメータ
11,12 上下リーフコリメータブロック
13,14 上下のリーフ
15 アイソセンタ
16,17 照射像
p1、p2 上下のリーフピッチ
A1、A2 上下のリーフの照射像の大きさ
O ワブラ電磁石の頂点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のリーフで構成されるコリメータブロックを照射線の照射方向に複数段備えたマルチリーフコリメータにおいて、
それぞれの段のコリメータブロックを構成する前記リーフを、照射線によってアイソセンタ上に投影される当該リーフの照射像で所定ピッチ分ずつずれるように構成したことを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項2】
前記照射線の照射方向下流側の段のコリメータブロックの前記リーフを、上流側の段のコリメータブロックの前記リーフに比べてリーフのピッチを広くして、アイソセンタ上での同一照射方向のリーフの照射像を同じ大きさに構成したことを特徴とする請求項1記載のマルチリーフコリメータ。
【請求項3】
前記照射線を、頂点から円錐状に広がるビームで構成し、前記リーフを、このビームの広がりに基づき前記アイソセンタ上の照射像で前記段数分の1ずつピッチがずれるように構成したことを特徴とする請求項1または2記載のマルチリーフコリメータ。
【請求項4】
前記リーフのピッチおよび幅を代え、前記段数分の1ずつピッチをずらすとともに、同一の前記照射像幅となるよう構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマルチリーフコリメータ。
【請求項5】
前記コリメータブロックを2段で構成するとともに、前記リーフを、前記アイソセンタ上の照射像で2段のリーフによる照射像が半ピッチずつずれる構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマルチリーフコリメータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−220(P2006−220A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177392(P2004−177392)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】