説明

マルチ型空気調和機

【課題】
室外機と複数の室内機とが同一冷媒配管と通信線で接続され、異なる系統のAC電源で構成されるマルチ型空気調和機において、一部の室内機の電源が遮断されても空調運転を継続することができるマルチ型空気調和機を提供する。
【解決手段】
室内機2は自らの系統のAC電源4の電圧を監視することにより電源遮断を検出し、制御可能な電力が残る時間以内に室外機1へ電源遮断信号を送信する。一方、電源遮断信号を受信した室外機1は、各室内機へ通信停止信号を送信後、通信・電源切換リレー10を30秒間だけ室外機電源部15側へ切り換え、電源遮断の室内機へ電源供給を開始する。電源遮断の室内機は室外機1からの一時的な電源供給を受けて、電源遮断前の運転モードに応じ電子膨張弁を所定の開度に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の室内機と室外機とで構成されるマルチ型空気調和機に係わり、より詳細には、一部の室内機の意図しない電源遮断時に一時的に室外機から室内機へ通信線を利用して給電することにより、電源遮断が発生した室内機の電子膨張弁を所定開度に制御する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチ型空気調和機では、圧縮機、四方弁、室外機熱交換器、室外機電子膨張弁とを順次接続し、さらに、室内機熱交換器と室内機電子膨張弁とを室内機の数だけ順次接続して冷凍サイクルを構成している。
このため、運転中の室内機に意図しない電源遮断が発生し、室内機電子膨張弁が運転中の開度のまま停止した場合、液バック現象による圧縮機の破損や冷媒配管内で冷媒の寝込み現象による冷媒不足を招いてしまう虞があった。
【0003】
上記のような問題を解決するために、電源が遮断された室内機が室外機による伝送線からの供給電力で、自らの制御部を動作させて電子膨張弁を閉止し、冷媒配管を主たる冷媒配管から分離する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、室内機の電源遮断時に電池などの補助電源からの供給電力で、電子膨張弁を閉止する技術、電源遮断時に慣性で回転するファンモータの回生電力により、電子膨張弁を閉止する技術、弁体を閉止方向に付勢するばね部材を備えた膨張弁閉止技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−77056号公報(第5〜6頁、図1〜3)
【特許文献2】特開2005−121333号公報(第6〜11頁、図1〜7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1は、室外機が伝送線を介して常に室内機への非常用電力供給を行い、かつ通信可能とした冗長構成であることから、製品、伝送線のコストアップの要因となる。
また、通信線の設置において誤接続の可能性がある。
【0007】
上記特許文献2における補助電源からの供給電力で電子膨張弁を閉止する技術では、補助電源となる電池を、蓄電池や太陽電池などを用いることで、点検や交換作業などの軽減を図る事ができると記されているが、いづれも電池切れによる制御不能、メンテナンス性の低下、製品のコストアップの要因となることに変わりない。
また、電池切れの場合には、動作不良や圧縮機の破損を防止するために、空気調和機全体を停止させる必要がある。
【0008】
上記特許文献2における電源遮断時に慣性で回転するファンモータの回生電力により電子膨張弁を閉止する技術では、空気調和機の運転モードにより電源遮断の直前にファンモータが充分な回生電力を得られる回転が行われていない状態が想定され、電子膨張弁を閉止できない虞がある。この場合にも動作不良や圧縮機の破損を防止するために、空気調和機全体を停止させる必要がある。
【0009】
上記特許文献2における弁体を閉止方向に付勢するばね部材を備えた膨張弁閉止技術では、ばね部材による付勢が通常運転中にも常時行われることから、この膨張弁の開度維持と開度を広げる制御には、通常の電子膨張弁では不要な電力を消費する。
【0010】
本発明は以上述べた問題点を解決し、室外機と接続された通信線を一定時間のみ非常用電源の供給線として利用することで、電源遮断された室内機の電子膨張弁を所定の開度に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、室外機と、熱交換器と同熱交換器の冷媒量を調節する電子膨張弁とを備えた複数の室内機とが冷媒管と通信線とで接続されると共に、前記室外機と前記室内機とが独立した電源系統に接続されたマルチ型空気調和機において、
前記室外機は、前記通信線に接続される室外機通信部と、直流電源を出力する室外機電源部と、前記通信線を前記室外機通信部と前記室外機電源部の出力とのいずれかに切り換えて接続する通信・電源切換手段と、前記通信部と前記通信・電源切換手段とを制御する室外機制御部とを備え、
前記室内機は、前記通信線に接続される室内機通信部と、直流電源を出力する室内機電源部と、前記室内機電源部へ供給される交流電源を検出する交流電源検出手段と、前記通信線を介して供給される前記室外機電源部の直流電源、又は前記室内機電源の直流電源を選択して出力する電源選択手段と、同電源選択手段で選択された電源を用いて動作すると共に、前記電子膨張弁を制御し、前記交流電源検出手段を介して前記交流電源の遮断を監視する室内機制御部とを備え、
前記交流電源の遮断を検出した前記室内機制御部は、前記室外機制御部へ該当室内機の電源遮断発生を通知する電源遮断信号を送信し、一方、前記室外機制御部は前記電源遮断信号を受信した場合、前記通信・電源切換手段を前記室外機電源部側に切換えて前記室外機電源部の直流電源を前記通信線から前記室内機へ供給し、所定時間経過後に前記通信・電源切換手段を前記室外機通信部側に切換えて前記通信線を前記室外機通信部に接続し、前記通信線を介して前記直流電源が供給された前記室内機制御部は、前記交流電源の遮断を検出した時の運転モードに対応して前記電子膨張弁を所定の開度にすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、前記室内機制御部は前記交流電源の遮断を検出した時の運転モードに対応し、前記運転モードが冷房運転の場合には前記電子膨張弁を全閉に、前記運転モードが暖房運転の場合には電子膨張弁を少なくとも冷媒が循環する開度にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上の手段を用いることにより、本発明による空気調和機によれば、請求項1に係わる発明は、室内機で意図しない電源遮断が生じても、室外機から所定時間のみ供給される通信線を介した直流電源の供給により、電源遮断中の室内機制御部は電子膨張弁の開度を制御することができる。このため、通信線に電源を重畳させる回路と補助電源となる電池が不要となり、コストダウンを図ることができる。また電池切れによる制御不能やメンテナンス性の低下を招く虞が無い。
【0014】
請求項2に係わる発明は、通信線を介して直流電源の供給を受けた電源遮断中の室内機制御部は、自らが電源遮断される直前の運転モードに応じて、直前の運転モ−ドが冷房運転の場合には電子膨張弁を全閉することで、室内機熱交換器で吸熱、気化されていない低温低圧の冷媒液が、そのまま冷媒配管へ吐出され室外機の圧縮器へ流れ込む液バック現象を抑制し、一方、直前の運転モードが暖房運転の場合には電子膨張弁を少なくとも冷媒が循環する開度とするとで、室内機熱交換器で放熱、液化されていない高温高圧の冷媒蒸気が電源遮断中である室内機の冷媒配管内で循環されずに残留する冷媒寝込みを抑制することができる。
従って電源遮断される直前の運転モードに応じて電子膨張弁の開度を制御することで、液バック現象による圧縮機の破損と、冷媒寝込みによる空気調和機の動作不良を防止し空気調和機全体を停止することなく運転を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による空気調和機の、概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による空気調和機の、動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明による室内機と室外機の制御部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明による空気調和機の実施例の概略構成を示すブロック図である。尚、本発明と直接関係ない構成と、同一の構成となる3台目以降の室内機については図示と説明を省略している。
本発明の特徴は、マルチ型空気調和機で複数の室内機を運転中に意図しない電源遮断が発生し、運転中の室内機と電源が遮断された室内機とが同時に存在した場合、室外機と室内機との通信線の接続を一時的に切り換えて、電源が遮断された室内機の制御部へ室外機から通信線を介して電源供給し、この室内機制御部が電子膨張弁を所定の開度にする。その後、通信線の接続を元の状態に戻して電源が遮断されていない室内機の運転を継続することである。
【0018】
本実施形態のマルチ型空気調和機は、図1に示すように、室外機1と少なくとも2台以上の室内機2、室内機3が同一の冷媒配管5a、5bと通信線6で接続され、室外機1はAC電源4からの配線に備えられるブレーカー100を介して接続され、室内機2は前記AC電源4からの配線に備えられるブレーカー200を介して接続され、室内機3は前記AC電源4からの配線に備えられるブレーカー300を介して接続され、室外機1と室内機2と室内機3がそれぞれ異なる系統で前記AC電源4からの電源供給を受けるよう設置されている。
【0019】
まず室外機1の冷媒系統について説明する。
室外機1には圧縮機13と、圧縮機13から吐出/吸入される冷媒の循環方向を切り換える四方弁14と、四方弁14の一方の切換口に接続された室外機熱交換器12と、室外機熱交換器12の他方に一方が接続された室外機電子膨張弁11とを備えている。
また、四方弁14の他方には冷媒配管5aが接続され、室外機電子膨張弁11の他方には冷媒配管5bが接続されている。
【0020】
次に室外機1の制御系統について説明する。
室外機1にはブレーカー100を介してAC電源4を入力し直流電源Vccを出力する室外機電源部15と、室外機電子膨張弁11を駆動する室外機電子膨張弁駆動部16と、通信線6の正極側線6aに接続される通信・電源切換リレー10と、通信・電源切換リレー10を介して接続される室外機通信部18と、室外機電子膨張弁駆動部16と室外機通信部18と通信・電源切換リレー10と圧縮機13と、四方弁14とを制御する室外機制御部17とを備えている。
また、正極側線6aに接続されている通信・電源切換リレー10は、室外機通信部18か室外機電源部15から出力される直流電源出力電圧Vccかのいずれかに切り換えて接続する通信・電源切換手段である。
【0021】
続いて室内機2の冷媒系統について説明する。
室内機2には、室内機熱交換器22と室内機熱交換器22の一方に一方を接続された室内機電子膨張弁21とを備えている。
また、室内機熱交換器22の他方には冷媒配管5aが接続され、室内機電子膨張弁21の他方には冷媒配管5bが接続されている。
【0022】
次に室内機2の制御系統について説明する。
室内機2はブレーカー200を介してAC電源4を入力し、直流電源電圧Vccを出力する室内機電源部25と、室内機電源部25の入力電圧により、電源遮断を検出する交流電源検出手段である室内機電圧検出部24と、室内機2動作時の運転情報などを不揮発性の媒体に記憶する室内機記憶部23と、室内機電子膨張弁21を駆動する室内機電子膨張弁駆動部26と、通信線6の正極側線6aに接続される室内機通信部28と、正極側線6aと室内機通信部28との通信接続を開閉する開閉手段である通信接続リレー20と、室内機電子膨張弁駆動部26と室内機電圧検出部24と室内機記憶部23と室内機通信部28と通信接続リレー20とを制御する室内機制御部27と、アノード側を室内機電源部25の直流電源出力端に、カソード側を室内機制御部27側に接続され室内機制御部27と室内機電子膨張弁駆動部26とへ電源を供給するダイオード29aと、アノード側を正極側線6aに、カソード側を室内機制御部27側に接続され室内機制御部27と室内機電子膨張弁駆動部26とへ電源を供給するダイオード29bとを備えている。
【0023】
室内機2に備えられている電源選択手段であるダイオード29a、29bは、室内機電源部25の直流電源出力電圧Vccと、室外機電源部15の直流電源出力電圧Vccとのいずれかにより、互いのカソード側に接続される室内機制御部27と室内機電子膨張弁駆動部26とへ電力が供給され、それぞれが動作するように構成されている。
【0024】
なお、本実施例では、室内機2及び3の正極側線6aと室内機通信部28及び38の間に通信接続リレー20及び30を備えているが、通信線6の正極側線6aを介して室外機電源部15からの直流電源出力電圧Vccを受ける際に、室内機通信部28及び38がこの直流出力電圧電源Vccに対する耐圧性能を有するように設計されている場合には不要な構成となる。
【0025】
また、室内機3及び図示しない3台目以降の室内機については、室内機2の冷媒系統及び制御系統と同様の構成である。
【0026】
次に、図2のタイミングチャートを用いて、室内機2に供給される交流電源が遮断された場合の室外機1と、通常運転中の室内機3の各部動作を説明する。図2(1)から(6)は電源遮断が生じた室内機2の各部動作を、図2(7)と(8)はこの時の室外機1の各部動作を、図2(9)と(10)はこの時に通常運転中の室内機3の各部動作を、それぞれ大別して示している。
【0027】
さらに室内機2の動作として、図2(1)は室内機電源部25の出力電圧の状態を、図2(2)は室内機電圧検出部24の出力状態を、図2(3)は室内機通信部28の通信状態を、図2(4)は室内機制御部27の動作を、図2(5)は通信接続リレー20の状態を、図2(6)は室内機電子膨張弁21の動作をそれぞれ示している。
室外機1の動作として、図2(7)は室外機通信部18の通信処理を、図2(8)は通信・電源切換リレー10の状態を、室内機3の動作として、図2(9)は室内機通信部38の通信状態を、図2(10)は通信接続リレー30の状態をそれぞれ示している。
【0028】
説明開始の条件として、空気調和機全体が通常運転中であることを前提とし、室外機1の通信・電源切換リレー10により正極側線6aが、室外機1の室外機通信部18側に接続され、室内機2の通信接続リレー20により正極側線6aが室内機通信部28に接続され、室内機3の通信接続リレー30により正極側線6aが室内機通信部38に接続され、さらに室外機1及び室内機2と室内機3は、それぞれ異なる系統からAC電源4の供給を受けて動作中の状態とする。
【0029】
また、この説明では室内機2で電源遮断が生じた際の動作を説明するが、室内機3及び
、図示しない3台目以降の室内機で電源遮断が生じた場合においても同様の動作となる。
【0030】
室内機2で例えばブレーカー200が落ちて電源遮断が生じた場合、図2(1)に示すように室内機電源部25の直流電源出力電圧Vccは徐々に低下した後0Vになる。図2(2)に示すように室内機制御部27は室内機電圧検出部24を介して室内機電源部25に供給される交流電圧を監視しており、この電圧が室内機2の動作保障電圧幅の下方値を基準とした閾値たとえば定格が100Vの機器であれば90Vより下回った場合にAC電源4の遮断が発生したと判断する。
【0031】
次に、室内機制御部27はAC電源4の遮断を検出すると、直流電源出力電圧Vccから、室内機制御部27が動作不能となる直流電源出力電圧Vcc値が、たとえば5Vから4.5Vまで低下するまでに要する時間の1秒以内に、図2(3)に示すように室内機通信部28から室外機1へ電源遮断信号を送信し、通信接続リレー20によって室内機通信部28を正極側線6aから切断する。やがて電源遮断から1秒経過後に室内機電源部25の直流電源出力電圧Vccが、室内機制御部27の動作可能電圧の4.5Vを下回り室内機2全体が停止する。
【0032】
一方、図2(7)に示すように室外機制御部17は室外機通信部18を介して、室内機2からの電源遮断信号を受信すると、各室内機へ通信停止信号を送信後、図2(8)に示すように通信・電源切換リレー10を室外機電源部15側へ切り替え、正極側線6aへ室外機1の直流電源出力電圧Vccの供給を開始し、30秒経過後に元の状態に復帰させる。
【0033】
また、図2(9)に示すように、通常運転中の室内機3の室内機制御部37は室内機通信部38を介して室外機1からの通信停止信号を受信すると自らの通信を休止し、図2(10)に示すように、通信接続リレー30によって室内機通信部38を正極側線6aから切断する。そして30秒経過後に元の状態に復帰させる。
【0034】
次に、図2(4)に示すように室内機制御部27は正極側線6aを介して供給される室外機1からの直流電源出力電圧Vccを得て動作可能となり、起動時のイニシャライズを実施した後、図2(6)に示すように室内機電子膨張弁21を電源遮断前の運転モードに応じた開度に制御する。
【0035】
この、図2(4)に示す室内機制御部27の動作時間は本実施例の場合、起動時のイニシャライズの10.2秒と室内機電子膨張弁21の最大可動時間である11.13秒を足した、最大21.33秒で完了することから、室外機1の通信・電源切換リレー10及び
、通常運転中の室内機3の通信接続リレー30は30秒のみ切り換え又は切断することで
、室内機電子膨張弁21の制御完了に不足することのない時間としている。
【0036】
続いて、室内機2が電源遮断から復旧した場合の動作を説明する。図2(1)に示すようにAC電源4の供給により室内機電源部25の直流電源出力電圧Vccは、0Vから5Vまで上昇する。
【0037】
図2(4)に示すように室内機制御部27は、室内機電源部25からの直流電源出力電圧Vccを得て動作可能となり起動時のイニシャライズを行うと、図2(5)に示すように通信接続リレー20を介して正極側線6aを室内機通信部28側に接続し元の状態とした後に、図2(3)に示すように室内機通信部28から室外機1へ復電信号を送信し、以降は通常運転に復帰する
【0038】
また、図2(7)に示すようにの室外機通信部は、室内機2からの復電信号を受信し、室内機2が通常運転可能となったことを認識する。
【0039】
次に、図3のフローチャートを用いて、室内機を代表して室内機制御部27の処理(1)と、室外機制御部17の処理(2)を説明する。また図3の(1)及び図3(2)に記載のSTはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を、また、YはYesを
、NはNoをそれぞれ表している。
【0040】
また、図3(1)の室内機制御部27の処理の開始については、室内機制御部27が室内機2の直流電源出力電圧Vccもしくは、正極側線6aを介して室外機1からの直流電源出力電圧Vccが供給された後、制御が開始されるものとする。
【0041】
図3(1)の室内機制御部27の処理において、室内機制御部27は直流電源出力電圧Vccが供給されて動作を開始するとまず最初にイニシャライズを実行する(ST1)。
【0042】
次に、室内機2の室内機記憶部23に格納された電源遮断前運転情報の有無により、電源遮断直後の再起動、つまり、図2のT3のタイミングであるかを確認する(ST2)。電源遮断前運転情報とは電源遮断検出時に室内機制御部27から不揮発性の室内機記憶部23に記憶される現在の運転モードの種別であり、この電源遮断前運転情報が存在しない場合(ST2−N)、室内機電圧検出部24を介して電源遮断検出の有無、つまり、図2のT1のタイミングを確認する(ST3)。電源遮断を検出している場合(ST3−Y)
、室内機通信部28から室外機1に対し電源遮断信号を送信する(ST4)。続いて室内機記憶部23に電源遮断前運転情報を記憶する(ST5)。通信接続リレー20を介して正極側線6aを切断する(ST6)。やがて電源遮断から1秒経過後に室内機電源部25の直流電源出力電圧Vccが、室内機制御部27が動作可能な電圧を下回り制御不能となり、室内機制御部27は停止する。つまり、図2のT2〜T3の期間は停止状態となる。
【0043】
一方、電源遮断前運転情報が存在する場合(ST2−Y)、室内機記憶部23に格納された電源遮断前運転情報を読出す(ST7)。電源遮断前の運転情報、つまり、運転モードが冷房運転であるか、暖房運転であるかを確認する(ST−8)。電源遮断前の運転情報が冷房運転の場合(ST8−冷房)室内機電子膨張弁21を全閉に制御する(ST9)

【0044】
次に室内機2の室内機記憶部23に記憶されている電源遮断前運転情報を削除する(ST11)。そして室内機2の不揮発性の室内機記憶部23に復電待ち情報を記憶する(ST12)。そして室外機1の直流電源出力電圧Vcc供給の開始から30秒経過後に供給が停止され、やがて室内機電源部25の直流電源出力電圧Vccが、室内機制御部27が動作可能な電圧を下回り制御不能となるが、それまでの間、つまり、図2のT4〜T5の期間に室内機電圧検出部24を介して復電検出の有無を確認する(ST22)。複電を検出していない場合(ST22−N)、再びST22へジャンプし制御不能となるまで繰り返して待機する。
一方、電源遮断前の運転情報が暖房運転の場合(ST8−暖房)室内機電子膨張弁21を少なくとも冷媒が循環する開度に制御する(ST10)。そしてST11へジャンプする。
【0045】
一方、電源遮断を検出していない場合、つまり、図2のT6のタイミングの場合(ST3−N)、不揮発性の室内機記憶部23に格納された復電待ち情報の有無により、電源遮断後のAC電源復旧による再起動であるかを確認する(ST13)。復電待ち情報とは室外機1からの直流電源出力電圧Vccの供給により室内機制御部27が電子膨張弁21を制御した後に、不揮発性の室内機記憶部23に記憶される情報であり、自らのAC電源が復旧した時に復電信号の送信を行うための判断に用いるものである。
復電待ち情報が存在する場合(ST13−Y)。通信接続リレー20を接続する(ST14)。室外機1へ復電信号を送信する(ST15)。室内機記憶部23に記憶されている復電待ち情報を削除する(ST16)。その後室内機2の通常運転を再開する(ST21)。そしてST2へジャンプする。
【0046】
一方、復電待ち情報が存在しない場合、つまり、電源遮断が発生した室内機以外の室内機は(ST13−N)、室内機通信部28を介して通信停止信号が有るかを確認する(ST17)。通信停止信号を受信している場合、つまり、図2のT2aのタイミングの場合(ST17−Y)、室内機通信部28からの通信を休止する(ST18)。続いて通信接続リレー20を介して室内機通信部28から正極側線6aを30秒切断する(ST19)
。30秒経過後に通信接続リレー20を接続し室内機通信部28からの通信を再開する(ST20)。そしてST21へジャンプする。
一方、通信停止信号を受信していない場合(ST17−N)ST21へジャンプする。
以上、説明したST1〜ST22が室内機制御部27の処理である。
【0047】
変わって、図3(2)室外機制御部17の処理について説明する。室外機制御部17は各室内機から室外機通信部18への受信データの有無を確認する(ST30)。受信データが有る場合(ST30−Y)。受信データの内容が電源遮断信号であるか否かを確認する(ST31)。受信データの内容が電源遮断信号の場合(ST31−Y)、室外機通信部18から通常運転中の室内機3へ通信休止信号を送信する(ST32)。その後、通信・電源切換手段である通信・電源切換リレー10を室外機電源部15側に接続し、正極側線6aを介して電源遮断の室内機2へ室外機1の直流電源出力Vccを供給し、30秒後に室外機通信部18側に接続する(ST33)。そしてST30へジャンプする。
【0048】
一方、各室内機からの受信データが無い場合(ST30−N)、室外機1は現在の運転を継続する(ST34)。そしてST30へジャンプする。
また、各室内機からの受信データの内容が電源遮断信号ではない場合(ST31−N)
、受信データの内容に従い運転を行う(ST35)。そしてST30へジャンプする。
以上、説明したST30〜ST35が室外機制御部17の処理である。
【0049】
なお、本実施例では室内機電源遮断前の運転モードを、冷房運転、暖房運転の2種類としているが、これ以外の運転モードが存在する場合や、さらにその運転モードにより電源遮断室内機の電子膨張弁の制御として最適な開度がある場合には、運転モードの判断に分岐し制御を追加することも可能である。
このようにすることで、空気調和機の冷媒配管で生じる液バック現象による圧縮機の破損や、冷媒寝込みによる動作不良等の現象をより高度に防止することができる。
【0050】
また、本実施例では電源遮断が起きた室内機2からの電源遮断信号を、室外機1に対して発信し、電源遮断信号を受信した室外機1から通常運転中の室内機3へ通信休止信号を発信する通信処理を行っているが、これに限るものではなく、電源遮断が起きた室内機2からの電源遮断信号を室外機1と通常運転中の室内機3へ送信し、室内機2からの電源遮断信号を受信した通常運転中の室内機3は、本実施例で説明した室外機1からの通信休止信号を受信した場合と同様の処理を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 室外機
2 室内機
3 室内機
4 AC電源
5a 冷媒配管
5b 冷媒配管
6 通信線
6a 正極側線
6b 負極側線
10 通信・電源切換リレー
11 室外機電子膨張弁
12 室外機熱交換機
13 圧縮機
14 四方弁
15 室外機電源部
16 室外機電子膨張弁駆動部
17 室外機制御部
18 室外機通信部
20 通信接続リレー
21 室内機電子膨張弁
22 室内機熱交換機
23 室内機記憶部
24 室内機電圧検出部
25 室内機電源部
26 室内機電子膨張弁駆動部
27 室内機制御部
28 室内機通信部
29a ダイオード
29b ダイオード
30 通信接続リレー
31 室内機電子膨張弁
32 室内機熱交換機
33 室内機記憶部
34 室内機電圧検出部
35 室内機電源部
36 室内機電子膨張弁駆動部
37 室内機制御部
38 室内機通信部
39a ダイオード
39b ダイオード
100 室外機ブレーカー
200 室内機ブレーカー
300 室内機ブレーカー

















































【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と、熱交換器と同熱交換器の冷媒量を調節する電子膨張弁とを備えた複数の室内機とが冷媒管と通信線とで接続されると共に、前記室外機と前記室内機とが独立した電源系統に接続されたマルチ型空気調和機において、
前記室外機は、前記通信線に接続される室外機通信部と、直流電源を出力する室外機電源部と、前記通信線を前記室外機通信部と前記室外機電源部の出力とのいずれかに切り換えて接続する通信・電源切換手段と、前記通信部と前記通信・電源切換手段とを制御する室外機制御部とを備え、
前記室内機は、前記通信線に接続される室内機通信部と、直流電源を出力する室内機電源部と、前記室内機電源部へ供給される交流電源を検出する交流電源検出手段と、前記通信線を介して供給される前記室外機電源部の直流電源、又は前記室内機電源の直流電源を選択して出力する電源選択手段と、同電源選択手段で選択された電源を用いて動作すると共に、前記電子膨張弁を制御し、前記交流電源検出手段を介して前記交流電源の遮断を監視する室内機制御部とを備え、
前記交流電源の遮断を検出した前記室内機制御部は、前記室外機制御部へ該当室内機の電源遮断発生を通知する電源遮断信号を送信し、一方、前記室外機制御部は前記電源遮断信号を受信した場合、前記通信・電源切換手段を前記室外機電源部側に切換えて前記室外機電源部の直流電源を前記通信線から前記室内機へ供給し、所定時間経過後に前記通信・電源切換手段を前記室外機通信部側に切換えて前記通信線を前記室外機通信部に接続し、前記通信線を介して前記直流電源が供給された前記室内機制御部は、前記交流電源の遮断を検出した時の運転モードに対応して前記電子膨張弁を所定の開度にすることを特徴とする。
【請求項2】
前記室内機制御部は前記交流電源の遮断を検出した時の運転モードに対応し、前記運転モードが冷房運転の場合には前記電子膨張弁を全閉に、前記運転モードが暖房運転の場合には電子膨張弁を少なくとも冷媒が循環する開度にすることを特徴とする、請求項1のマルチ型空気調和機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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