説明

マルトース産生アルファアミラーゼ変異体

【課題】新規マルトース産生アルファアミラーゼ変異体の提供。
【解決手段】マルトース産生アルファアミラーゼのアミノ酸配列が修飾された変異体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルトース産生アルファアミラーゼの変異体及びその様な変異体の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルトース産生アルファアミラーゼ(グルカン 1,4−α−マルトハイドロラーゼ、E.C.3.2.1.133)は、アミロース及びアミロペクチンをα−配置においてマルトースに加水分解することができ、そしてマルトトリオース及びシクロデキストリンもまた加水分解することができる。
【0003】
バチルス(Bacillus)由来のマルトース産生アルファアミラーゼ(欧州特許第120693号)は商品名Novamyl(登録商標)(DenmarkのNovo Nordisk A/Sの製品)のもと、商業的に入手可能であり、そしてその澱粉の凝集(retrogradation)を減少させる能力により、抗劣化剤としてベーキング薬において幅広く使用されている。Novamyl(登録商標)はシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTアーゼ)と、配列の相同性(Henrissat B., Bairoch A. 1996)及びトランスグリコシル化生成物(Christophersen, C., et al., 1997, Starch, vol.50, No.1, 39〜45) の構成を含む、いくつかの特徴を分かち合う。
【0004】
シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ又はシクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼとしても称され、本明細書ではCGTアーゼとして省略されるシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(E.C.2.4.1.19)は、澱粉及び類似の基質のシクロマルトデキストリンへの変換を触媒し、これは分子内トランスグリコシル化反応を介し、それによって様々なサイズのシクロマルトデキストリン(又はCD)を形成する。
【0005】
CGTアーゼは幅広く分布し、そしていくつかの異なる細菌源に由来し、これは文献に詳細に記述されてきたバチルス、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、クレブシエラ(Klebsiella)、ミクロコッカス(Micrococcus)、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)及びサーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)を含む。サーモアナエロバクター・スペーシスによって産生したCGTアーゼは、Norman B B, Jorgersen S T ;Denpun Kagaku 1992 39 99 〜106 、及び国際公開第89/03421号において報告され、そしてアミノ酸配列が国際公開第96/33267号に開示された。サーモアナエロバクテリウム・サーモスルフリジェネス(thermosulfurigenes)由来及びバチルス・サーキュランシス(circulansis)由来のCGTアーゼの配列はpdfファイル1CIUとしてインターネット(SCOP又はPDFのホームページ)上で入手可能であり、そしてB.サーキュランス(circulans)由来のCGTアーゼの配列は、pdfファイル1CDGとして入手可能である。
【0006】
Tachibana, Y., Journal of Fermentation and Bioengineering, 83 (6), 540〜548 (1997)は、CGTアーゼのクローニング及び発現を記載している。CGTアーゼの変異体はKim, Y. H., Biochemistry and Molecular Biology International, 41 (2), 227 〜234 (1997) ; Sin K-A, Journal of Biotechnology, 32 (3), 283 〜288 (1994) ; D Penninga, Biochemistry, 34 (10), 3368〜3376 (1995) ; 及び国際公開第96/33267号によって記載されてきた。
【0007】
近年、いくつかのCGTアーゼの三次構造が報告されてきた。Hofman等〔Hofman B E, Bender H, Schuitz G E ; J. Mol. Biol. 1989 209 793〜800 〕及びKlein とSchultz [Klein C, Schultz G E ; J. Mol. Biol. 1991 217 737〜750]はバチルス・サーキュランスの菌株8由来のCGTアーゼの三次構造を報告し、Kubota等〔Kubota M, Matsuura Y, Sakai S and Katsube Y ; Denpun Kagaku 1991 38 141 〜146 〕はバチルス・ステアロサーモフィラス(stearothermophilus)のTC−91由来のCGTアーゼの三次構造を報告し、Lawson等〔Lawson C L, van Montfort R, Strokopytov B, Rozeboom H J, Kalk K H, de Vries G E, Peaninga D, Dijkhuizen L, and Dijkstra B W ; J. Mol. Biol 1994 236 590 〜600 〕はバチルス・サーキュランスの菌株251由来のCGTアーゼの三次構造を報告し、Strokopytov 等〔Strokopytov B, Penninqa D, Rozeboom H J ; Kalk K H, Dijkhuizen L and Dijkstra B W ; Biochemistry 1995 34 2234 〜2240〕はバチルス・サーキュランスの菌株251由来のCGTアーゼの三次構造を報告し、このCGTアーゼはアカルボース(acarbose)、効果的なCGTアーゼ阻害剤と共に複合されており、そしてKnegtel 等〔Knegtel R M A, Wind R D, Rozeboom H J, Kalk K H, Buitelaar R M, Dijkhaizen L and Dijkstra B W ; J. Mol. Biol. 1996 256 611〜622 〕はサーモアナエロバクテリウム・サーモスルフリジェネス由来のCGTアーゼの三次構造を報告している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、前記のマルトース産生アルファアミラーゼの三次元構造に基づき、向上した特性を有する変異体を得るために、マルトース産生アルファアミラーゼのアミノ酸配列を修飾した。前記変異体は、変化した物理化学的特性、例えば変化した至適pH、向上した熱安定性、向上した比活性、変化した開裂パターン又は澱粉の凝集若しくはパンの劣化を減少させることの増大した能力を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体の構築方法を提供し、ここで前記変異体は、前記の親マルトース産生アルファアミラーゼと比較して少なくとも1つの変化した特性を有し、この方法は:
i)構造的配位の評価に基づき、前記の特性の変化に関係する、前記マルトース産生アルファアミラーゼの少なくとも1つのアミノ酸残基又は少なくとも1つの構造的領域を同定するために、前記マルトース産生アルファアミラーゼの構造を解析し;
ii)前記の親と比較して、前記の特性を変えるために、アミノ酸残基又はi)において同定される構造的な部分において修飾された、前記マルトース産生アルファアミラーゼの変異体を構築し;そして
iii)前記の生じたマルトース産生アルファアミラーゼ変異体を前記特性について試験する、
ことを含んで成る。
【0010】
本発明の上述した方法によって変化することができる特性は、例えば安定性、pH依存活性、澱粉又はパンの劣化を減少させる能力、比活性、あるいは基質特異性であることができる。従って、前記変異体は、例えば増大した熱安定性若しくはより低いpHでのより高い活性である変化した至適pH、向上した熱安定性、増大した比活性又は澱粉の凝集若しくはパンの劣化を減少させることの増大した能力を有することができる。
【0011】
より更なる観点において、本発明はマルトース産生アルファアミラーゼの変異体、その様な変異体をコードするDNA及び前記変異体の製造方法に関する。最終的に、本発明は様々な工業用の目的、特にベーキングのための、前記変異体の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1はpLBei010を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
マルトース産生アルファアミラーゼ
前記マルトース産生アルファアミラーゼはEC3.2.1.133に分類される酵素である。酵素活性は基質の非還元末端を必要とせず、そして主な酵素活性はマルトース及び長鎖マルトデキストリンへのアミロペクチン及びアミロースの分解を引き起こす。アミロース及びアミロペクチンをアルファ配置においてマルトースに加水分解することが可能であり、そしてマルトトリオース及びシクロデキストリンを加水分解することもまた可能である。
【0014】
特に好ましいマルトース産生アルファアミラーゼは、欧州特許第120693号に記載の、バチルスからクローン化したアミラーゼである(以後Novamylとして言及する)。Novamylは配列番号1の1〜686のアミノ酸に記載のアミノ酸配列を有する。Novamylは配列番号1に記載の核酸配列を有するバチルスの菌株NCIB 11837に宿されている遺伝子においてコードされる。Novamylの三次元構造を下文に記載する。
【0015】
一般に、好ましいマルトース産生アルファアミラーゼは1又は複数の以下の特徴を有するべきである:
i)Novamylに対する三次元構造の相同性、
ii)配列番号1に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%又は90%、例えば95%又は98%の同一性を有するアミノ酸配列、
iii)配列番号1に記載のDNA配列又はバチルスの菌株NCIB11837に宿されるNovamylをコードするDNA配列にハイブリダイズするDNA配列;
iv)付表1に位置を示した、Asn77からの主鎖のカルボニル原子、Glu102からの側鎖の原子OE2及びOE1、Asp79からの側鎖の原子OD1、Asp76からの側鎖の原子OD1、及びGlu101からの側鎖の原子OE1、並びに水分子WAT V21、原子OW0に相当する配位を含んで成るカルシウム結合部位;
v)配列番号1に示すアミノ酸配列の残基191〜195に等しい位置における、Pro−Ala−Gly−Phe−Serに相当する5個のアミノ酸の配列;そして
上述のi)で言及される構造の相同性は、他の配列の相同性、疎水性クラスター解析に基づき、あるいはreverse threading (Huber, T ; Torda, AE,PROTEIN SCIENCE Vol.7, No.1 pp.142〜149 (1998)) により、そしてこれらの方法のいずれかによってNovamylと同じ三次構造を持つことが予想され、ここで前記の三次構造は全体のフォールディング又は更に好ましくはドメインDを含み、そして最も好ましくはドメインEを含むドメインA,B、及びCのフォールディングを言及する。あるいは、Novamylとマルトース産生アルファアミラーゼとの間の構造の配列合わせは、等しい位置を同定するために使用することができる。
【0016】
上述のiv)で言及したカルシウム結合部位はNovamylの三次元構造において定義されるカルシウム結合部位に基づき、そして下文の“カルシウム結合部位”の項目において議論される。
上述のv)で言及した“等しい位置”は当業界で知られている方法を用いる、アミノ酸若しくはDNA配列の配列合わせ又は構造の相同性に基づいている。
マルトース産生アルファアミラーゼの三次元構造
Novamylを本発明の基礎を形成する三次元構造を解明するために使用した。
【0017】
Novamylの構造をX線結晶学法の原理に従い、例えば、X-Ray Structure Determination, Stout, G. K. and Jersen, L. H., John Wiley & Sons, Inc. NY, 1989 に与えられている様に解決した。
同形置換法を用いる2,2Åの分離での、Novamylの解決された結晶構造の構造配置を、付表1に記載した標準的なPDB形式(Protein Data Bank, Brookhaven National Laboratory, Brookhaven, CT)に与える。付表1が本出願の一部を形成することが理解される。付表1の文脈において、以下の略語を使用する:CAはカルシウムイオン又はポリペプチド主鎖のアルファ炭素原子を意味し、WATは水又はカルシウムを意味し、MALはマルトースを意味し、HEXは基質類似体の炭水化物単位を意味し、そしてSULは硫酸イオンを意味する。
【0018】
前記酵素のアミノ酸残基は、それら各自の一又は三文字アミノ酸コードによって、本明細書で同定される。
前記マルトース産生アルファアミラーゼの構造は、A,B,C,D及びEに整理される5つの球状ドメインから構成される。前記ドメインは、ドメインAが残基1〜132及び204〜403、ドメインBが残基133〜203、ドメインCが残基404〜496、ドメインDが残基497〜579、そしてドメインEの残基580〜686であるとして定義され、ここで前記の番号付けは配列番号1のアミノ酸配列を言及する。
ドメインA
ドメインAは最大のドメインであり、そして前記酵素の表面における割れ目の底で空間的に配置される、3つのアミノ酸残基D329,D228及びE256のクラスターを含んで成る活性部位を含む。ドメインAの構造は、構造が知られている前記のαアミラーゼと共通の、全体の折りたたみを示し、すなわち8個の中心のベータストランド(1〜8と番号を付けた)を有する(ベータ/アルファ)の8個のバレル(barrel)及び8個の側面に位置するα−ヘリックスの構造である。前記のβ−バレルは引用書のMcGregorによって定義される。前記のベータストランド1のC末端の端はループ1と表わされるループによって、ヘリックス1に連結し、そして同一のパターンが他のループで見出されるが、前記ループはサイズのいくつかの変化を示し、そしていくつかは極めて長いことがある。
【0019】
前記の(ベータ/アルファ)の8個のバレルにおける8個の中心のベータストランドは、CGTアーゼの知られている構造と、合理的によく重なり合う。前記のベータストランドのC末端に位置する活性部位の近辺を含む、前記の構造の一部は、CGTアーゼと、高い値の同一性を示す。
対照的に、ベータストランド及びアルファヘリックスに連結するループは、CGTアーゼの知られている構造から、高い値の変化を示す。これらのループは、前記活性部位の構造的な前後関係を構成し、そして前記の基質に接触する大部分が、これらのループ内に位置する残基の間で見出される。基質特異性、基質結合、pH活性プロファイル、基質開裂パターンなどの様な特徴の識別は、特異的なアミノ酸、及びこれらのループ内でそれらが占める位置によって決定される。Novamylにおいて、ドメインAは2つのカルシウム結合部位を含み、この1つはCGTアーゼにおけるカルシウム結合部位と相同性があり;他方はNovamylに独特である。前記のカルシウム結合部位の構造は、下文の“カルシウム結合部位”の項目において更に議論される。
ドメインB
ドメインBは、前記の(ベータ/アルファ)の8個のバレルのループ3としても言及され、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸残基133〜203を含んで成る。前記の構造はCGTアーゼ内のドメインBの構造に、部分的に相同であり、最も目立つ差異は、CGTアーゼに見られない、配列番号1に示すアミノ酸配列における191〜195位に相当する5個のアミノ酸挿入の存在である。この挿入は前記活性部位の近くに、及び基質との接触の近くに、空間的に位置する。
ドメインC
NovamylのドメインCは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸残基404〜496を含んで成る。ドメインCは自身の背後を折りたたむ、単一の8個のストランドシート構造を形成する、β−ストランドの全体から構成され、そしてその結果β−サンドイッチ構造として記述されることがある。前記β−シートの一部分はドメインAの界面を形成する。
カルシウム結合部位
前記のマルトース産生アルファアミラーゼの構造は、3つのカルシウム結合部位を示し;それはカルシウムイオンが前記の構造内に存在することが見出されているということである。知られているファミリーの13の構造の多くと共通して、付表1の1つのカルシウムイオン、WAT693は、ドメインAとBとの間に位置する。このカルシウムイオンは、Glu184及びHis232の主鎖のカルボニル原子、Asp198の側鎖の原子OD2及びOD1、Asn131の側鎖のOD1、並びに3つの水分子WAT V1,WAT V5及びWAT V8によって配位する。
【0020】
第2のカルシウムイオンはAのドメイン内に位置し、そしてCGTアーゼに共通しているが、α−アミラーゼ内には見出されない。カルシウムイオンWAT694が、Gly48及びAsp23の主鎖のカルボニル原子、Asp50の側鎖の原子OD2、Asp21の側鎖の原子OD1、Asn26の側鎖のOD1、並びにAsn27の側鎖の原子のOD1、並びに1つの水分子WAT V62によって配位する。
【0021】
第3のカルシウムイオンはAのドメイン内に位置し、そしてNovamylに独特である。そのカルシウムイオンはWAT692であり、そしてその配位はAsn77の主鎖のカルボニル原子、Glu102の側鎖の原子OE2及びOE1、Asp79の側鎖の原子OD1、Asp76の側鎖の原子OD1、並びにGlu101の側鎖の原子OE1、並びに1つの水分子WAT V21を含んで成る。
基質結合部位
ドメインA及びBの前後における、上文で議論したループの一部は、それぞれ基質の相互作用及び活性部位との特定の注目がある。特に、ドメインAにおける、ループ1内の残基37〜45、ループ5内の残基261〜266、ループ7内の残基327〜330及びループ8内の残基370〜376であり;ドメインBにおける、ループ3内の残基135〜145、ループ3内の残基173〜180及び188〜196であり、ここで残基の位置は配列番号1のアミノ酸配列中のアミノ酸に相当する。
【0022】
あらゆる理論に限定されることなしに、前記の基質分子と酵素との間の4〜6Åの範囲内に見出される有利な相互作用、例えば水素結合及び/又は強い静電的相互作用によって、基質と酵素との間の結合が支持されると現在信じられている。Novamyl(配列番号1)の以下の残基は、基質のHEXの6Åの距離以内にあり、そしてその結果前記の基質との相互作用に関わることが信じられている:
44,89,90,92,93,127,129,132,135,177,178,188,191,194,196,226,228,229,230,231,232,256,258〜261,288,328,329,371,372,373,376、及び690。
【0023】
Novamylの以下の残基は、基質のHEXの4Åの距離以内にあり、そしてその結果、前記の基質との相互作用に関わることが信じられている:
90,92,93,129,132,177,188,189,190,191,196,226,228,229,231,232,256,258,259,260,261,328,329,372,376、及び690。
Novamyl(登録商標)の相同性構築
Novamyl(登録商標)の構造は、本明細書の付表1に開示した構造上に構築されたモデルであった。他のマルトース産生アルファアミラーゼの構造を相似的に構築することができる。
【0024】
マルトース産生アルファアミラーゼのモデル構造は、相同性プログラム又は比較プログラム、例えばModeller(共にMolecular Simulations, Inc., San Diego, CA) を用いて構築することができる。知られている構造を有するマルトース産生アルファアミラーゼの配列と、モデル構造が構築されるべきマルトース産生アルファアミラーゼのそれとを配列合わせすることが原理である。次に構造的に保存されている領域を、共通配列を基にして構築することができる。相同性を欠く領域において、例えばプログラムの相同性を用いてループ構造を挿入することができ、あるいは配列が、必要な残基に続く結合を欠失することができる。前記構造の続く弛緩及び最適化は相同性又は別の分子のシミュレーションプログラムのいずれか、例えば分子のシミュレーションからのCHARMmを行うべきである。
【0025】
新規マルトース産生アルファアミラーゼ変異体の設計方法
第1の観点において、本発明は親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体の構築方法に関し、ここで前記変異体は前記の親α−アミラーゼと比較して、少なくとも1つの変化した特徴を有し、この方法は:
i)構造又は機能の考察に基づき、前記の親マルトース産生アルファアミラーゼの前記の特徴の変化に最適であることが決定される、前記α−アミラーゼの少なくとも1つのアミノ酸又は構造的領域を同定するための前記のマルトース産生アルファアミラーゼの構造解析;
ii)前記の親と比較して、i)において同定されたアミノ酸残基又は構造的な領域において修飾され、前記の特徴を変化させるために修飾された、マルトース産生アルファアミラーゼの変異体の構築;及び
iii)前記特徴のための、生じた変異体の試験、
を含んで成る。
【0026】
本発明の方法の段階i)において同定される構造部分を、1つのアミノ酸残基から構成することができる。しかしながら、通常、前記構造部分は1以上のアミノ酸残基を含んで成り、これは典型的に前記のマルトース産生アルファアミラーゼ構造の上述の部分の1つ、例えばA,B,C,D又はEのドメイン、これらのドメインのいずれかの間の界面、カルシウム結合部位、ループ構造、基質結合部位などを構成している。
【0027】
前記の構造又は機能の考察は、関連のある構造又は構造部分、及び前記酵素の機能上のその予期される影響に関与することができる。例えば、マルトース産生アルファアミラーゼと、様々なCGTアーゼとの間の機能の差異の解析は、Novamylのある特徴がNovamylのある部分に原因があるとするために、又はその様な関係を予期するために使用することができる。例えば、前記の活性部位の周辺のループのパターン又は構造における差異は、基質の活性部位への接近における差異、そしてその結果、基質特異性及び/又は開裂パターンにおける差異を生むことができる。
【0028】
更に、基質の結合、並びにこの様な、例えば基質特異性及び/又は開裂、カルシウムイオンの結合、輸送、例えば前記酵素のカルシウム依存性などに関わるマルトース産生アルファアミラーゼの部分が、同定されてきた(以下を参照とのこと)。
構造領域のアミノ酸残基の修飾は、典型的に問題の親ペプチドをコードするDNA配列の適当な修飾によって達成される。前記の修飾は、アミノ酸残基又は構造部分の置換、欠失又は挿入であることができる。
【0029】
修飾されるべき特性は安定性(例えば熱安定性)、pH依存活性、基質特異性、比活性あるいは澱粉の凝集又はパンの劣化を減少させる能力であることができる。従って、変化した特徴は与えられたpHでの変化した比活性及び/又は変化した基質特異性、例えば基質の開裂の変化したパターン若しくは基質の阻害の変化したパターンであることができる。
【0030】
本発明に従う方法の段階ii)において、同定されるべき構造の部分は、好ましくは折りたたまれた酵素における基質と接触することが信じられており(上文の“基質結合部位”と題した項目を参照とのこと)、あるいは基質特異性及び/又は開裂パターンに関わるものであり、並びに/あるいはカルシウムイオンの1つと接触するもの、並びに/あるいは前記酵素のpH若しくは温度のプロファイルに寄与し、又はさもなければ前記のマルトース産生アルファアミラーゼの特徴に責任のあるものである。
【0031】
以下に記載するのは、本発明の方法の使用によって設計された変異体の具体的な型である。
本発明の変異体は、本明細書に記載の修飾に加えて、更なる修飾を含んで成ることができる。前記変異体は、配列番号1と70%以上、好ましくは80%以上、特に90%以上、とりわけ95%以上、例えば98%以上の同一性を有するアミノ酸を有する。
変化したpH依存活性プロファイルを有するマルトース産生アルファアミラーゼ
pH依存活性プロファイルは、前記のマルトース産生アルファアミラーゼの活性部位の10Å以内の残基のpKa を変化させることによって変化することができる。前記の活性部位のpKa の変化は、例えば与えられるアミノ酸残基のアミノ酸側鎖の官能基と、その近辺との間の静電的相互作用又は疎水性相互作用を変化させることによって達成される。より高いpHにおいて、より高い活性を得るために、負電荷の残基が水素を提供する酸の近くに位置するのに対し、正電荷の残基が求核性の酸の近くに位置することで、低いpHでのより高い活性が引き起こされるだろう。また、前記のpKa の減少は水の接近しやすさの減少又は周囲の疎水性の増大によって得ることができる。
【0032】
従って、本発明の別の観点は親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体に関し、ここで前記変異体は、前記の親と比較して変化したpH依存活性プロファイルを有し、ここで前記変異体は以下の方法によって得ることができる:
i)前記親マルトース産生アルファアミラーゼの三次元構造における、マルトース産生アルファアミラーゼの活性部位の残基から15Å、特に活性部位の残基から10Å以内のアミノ酸残基の同定であって、活性部位の残基との静電的又は疎水性的相互作用に関わることが予期される前記アミノ酸残基の同定;
ii)前記の構造における、活性部位の残基の静電的及び/又は疎水性的環境を変化させるアミノ酸残基による、前記のアミノ酸残基の置換、及び前記構造におけるアミノ酸残基の適応の評価、
iii)アミノ酸の置換が前記構造内に適応されたことを確認するまでの、循環的な、段階i)及び/又はii)の任意な繰り返し、
iv)段階i)及びii)、並びに任意にiii)から生じるマルトース産生アルファアミラーゼ変異体の構築、並びに前記変異体のpH依存酵素活性の試験。
【0033】
好ましい態様において、前記の親マルトース産生アルファアミラーゼと比較して、変化したpH依存活性プロファイルを有するマルトース産生アルファアミラーゼの変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の1又は複数の以下の残基に相当するアミノ酸残基の修飾を含んで成る:
D127,V129,F188,A229,Y258,V281,F284,T288,N327,M330,G370,N371、及びD372、
L71,S72,V74,L75,L78,T80,L81,G83,T84,D85,N86,T87,G88,Y89,H90,G91,T94,R95,D 96,F 97,I174,S 175,N176,D178,D179,R180,Y181,E182,A183,Q184,K186,N187,F188,T189,D190,A192,G193,F194,S195,L196。
【0034】
更に好ましい態様において、前記変異体は配列番号1に記載のアミノ酸配列における1又は複数の以下の修飾に相当する修飾を含んで成る:
【0035】
【化1】

【0036】
同様の修飾を他のマルトース産生アルファアミラーゼの等しい位置において導入することができる。特定の注目がある変異体は、本明細書で開示した他の修飾のいずれかと、1又は複数の上述したものとの組合わせを有する。
変化した安定性を有するマルトース産生アルファアミラーゼ変異体
向上した安定性(典型的に増大した安定性)を有する変異体を、カルシウム結合の安定化、プロリンによる置換、別のアミノ酸によるヒスチジンの置換、ドメイン間ジスルフィド結合の導入、脱アミド化部位の除去、水素結合の接触の変化、より大きな側鎖の基を有する1又は複数のアミノ酸による、内部構造の穴の充填、電荷分布の変化、ヘリックスのキャッピング、あるいは塩橋の導入によって得ることができる。
カルシウム結合
本発明は、親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体を提供し、これは変化したカルシウム(Ca2+)結合の安定性により、変化した安定性を有する。前記の酵素変異体は変化した熱安定性又はpH依存安定性を有することができ、あるいはそれは低濃度のカルシウムイオンの存在下でのマルトース産生アルファアミラーゼ活性を有することができる。現在、カルシウムイオンから10Å以内に位置するアミノ酸残基が関与し、あるいは前記酵素のCa2+結合能力にとって重要であることが信じられている。
【0037】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するマルトース産生アルファアミラーゼのCa2+結合部位から10Åの距離以内に見出されるアミノ酸残基は、例2に記載した様に決定され、そして以下の様である:
16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,35,36,40,46,47,48,49,50,51,52,53,54,56,73,74,75,76,77,78,79,80,81,87,88,89,91,93,94,95,96,99,100,101,102,103,104,105,109,129,130,131,132,133,134,145,150,167,168,169,170,171,172,174,177,180,181,182,183,184,185,186,187,188,189,196,197,198,199,200,201,202,206,210,228,229,230,231,232,233,234,235,237,378、及び637。
【0038】
本発明のこの観点に従う変異体を構築するために、少なくとも1つの上述したアミノ酸残基を置換することが望ましく、これは前記変異体酵素のCa2+結合親和性を向上する他のアミノ酸残基のいずれかにより、至適でないカルシウム結合に関わることを決定する。従って、本発明の別の観点は親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体の構築方法に関し、ここで前記変異体は前記の親と比較して、安定化したCa2+結合を有し、この方法は:
i)構造又は機能の考察から、至適でないカルシウムイオンの相互作用の原因であることが決定される前記α−アミラーゼの三次元構造のモデルにおける、マルトース産生アルファアミラーゼのCa2+結合部位から10Å以内のアミノ酸残基の同定;
ii)前記アミノ酸残基が、構造又は機能の考察から、変化したCa2+結合親和性を確立するために重要であることが決定される別のアミノ酸残基と置換される変異体の構築;及び
iii)生じたマルトース産生アルファアミラーゼ変異体の、Ca2+結合の試験、
を含んで成る。
【0039】
別の残基による、至適でないカルシウムイオンの相互作用の原因であるアミノ酸残基の置換は、前記酵素のカルシウムイオン結合相互作用を変えることができる。例えば、問題のアミノ酸残基は1又は複数の以下の目的を基本として選択することができる:
a)前記のマルトース産生アルファアミラーゼの構造から同定した様な、カルシウムイオンとアミノ酸残基との間の向上した相互作用を得るため。例えば、問題のアミノ酸残基が周囲の溶媒にさらされているならば、前記アミノ酸残基とカルシウムイオンとの間の相互作用を安定化させるために、溶媒からの前記アミノ酸残基の遮へいを増大することは有利であることができる。このことは、前記アミノ酸、又は前記の遮へいに寄与する前記のアミノ酸残基の近傍のアミノ酸残基を、より大きな側鎖の基を有するか又は向上した遮へい効果を生む他の状態のアミノ酸残基で置換することによって達成することができる。
【0040】
b)例えば前記マルトース産生アルファアミラーゼの構造を安定化することによりカルシウム結合部位を安定化させるためであって、例えば2又はそれ以上の5個のドメインの間の接触を安定化すること、又は1又は複数の個々のドメイン自身を安定化することによる。このことは、例えばアミノ酸側鎖により良い配位を提供することによって達成することができ、これは例えばカルシウム結合部位の、例えば10Å以内、及び好ましくは3又は4Å以内のN残基をD残基によって、そして/あるいはQ残基をE残基によって置換することで達成することができる。
【0041】
c)前記カルシウムイオンと前記カルシウム結合残基との間の配位を向上するためであって、例えば、これは前記イオンと前記配位残基との間の相互作用を向上させるか又は配位している水をアミノ酸の側鎖で置換することによって側鎖の配位数を増大させることによる。
d)アミノ酸残基にカルシウムを配位させることにより、水を置換するため。
【0042】
好ましくは、修飾されるべきアミノ酸残基はCa2+イオンの8Å以内、好ましくはCa2+イオンの5Å以内に位置する。8Å及び5Å以内のアミノ酸残基はそれぞれ、10Å以内のアミノ酸残基を同定するために使用される類似の方法によって容易に同定することができる(例2を参照のこと)。
好ましい態様において、前記の親マルトース産生アルファアミラーゼと比較したときに、変化したCa2+結合を有するマルトース産生アルファアミラーゼの変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の1又は複数の以下の残基に相当するアミノ酸残基の置換を含んで成る;
D17,A30,S32,R95,H103,N131,Q201,I174、及び/又はH169、
V74,L75,L78,T80,L81,T87,G88,Y89,H90,G91,T94,R95,D96,F97,Y167,F168,H169,H170,N171,G172,D173,I174,S175,N176,D178,D179,R180,Y181,E182,A183,Q184,K186,N187,F188,T189。
【0043】
更に好ましい態様において、マルトース産生アルファアミラーゼの前記変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列における1又は複数の以下の置換に相当する置換を含んで成る:
【0044】
【化2】

【0045】
マルトース産生アルファアミラーゼのCa2+結合を変化させることに関する、本発明の別の好ましい態様において、配列番号1に記載の部分配列N28−P29−A30−K31−S32−Y33−G34が修飾される。
同様の置換を、他のマルトース産生アルファアミラーゼの等しい位置において導入することができる。特定の注目がある修飾は、本明細書に開示した他の修飾のいずれかと、1又は複数の上述したものとの組合わせのいずれかである。
他の置換
前記酵素の向上した安定性を有する変異体は、新規のドメイン間及びドメイン内の接触の存在又は導入を向上することによって達成することができる。その様な向上した安定性は、以下に記載する修飾によって達成することができる。
【0046】
配列番号1に示すアミノ酸配列を有するマルトース産生アルファアミラーゼは、1又は複数のドメイン間ジスルフィド結合の導入によって安定化することができる。従って、本発明の別の好ましい態様は、前記の親と比較したときに向上した安定性及び少なくとも1又は複数のジスルフィド結合を有する親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体に関し、ここで前記の変異体は配列番号1の位置の少なくとも1つの以下の対に相当する位置の修飾を含んで成る:
G236+S583,G618+R272,T252+V433及び/又はA348+V487。
【0047】
更に好ましい態様において、前記の置換は少なくとも1つの前記の以下の対に相当する:
G236C+S583C,G618C+R272C,T252C+V433C及び/又はA348C+V487C。
本発明の別の好ましい態様は前記の親と比較したときに向上した安定性及び変化したドメイン間相互作用を有する親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体に関し、ここで前記変異体は配列番号1の位置の、少なくとも1つの以下の組合わせに相当する位置の置換を含んで成る:
i)F143,F194,L78;
ii)A341,A348,L398,I415,T439,L464,L465;
iii)L557;
iv)S240,L268;
v)Q208,L628;
vi)F427,Q500,N507,M508,S573;及び
vii)I510,V620。
【0048】
更に好ましい態様において、前記の置換は少なくとも1つの以下の組合わせに相当する:
i)F143Y,F194Y,L78Y/F/W/E/Q;
ii)A341S/D/N,A348V/I/L,L398E/Q/N/D,I415E/Q,T439D/E/Q/N,L464D/E,L465D/E/N/Q/R/K;
iii)L557Q/E/N/D;
iv)S240D/E/N/Q,L268D/E/N/Q/R/K;
v)Q208D/E/Q,L628E/Q/N/D;
vi)F427E/Q/R/K/Y,Q500Y,N507Q/E/D,M508K/R/E/Q,S573D/E/N/Q;及び/又は
vii)I510D/E/N/Q/S,V620D/E/N/Q。
【0049】
本発明の別の好ましい態様は、前記の親と比較したときに向上した安定性及び1又は複数の塩橋を有する親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体に関し、ここで前記変異体は配列番号1の位置の少なくとも1つの以下の組合わせに相当する位置の置換を含んで成る:
N106,N320及びQ624。
【0050】
更に好ましい態様において、前記のマルトース産生アルファアミラーゼの変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の以下の置換に相当する置換を含んで成る:
N106R,N320E/D及び/又はQ624E。
本発明の別の態様は、向上した安定性を有する親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体に関し、そしてここで、前記変異体は配列番号1の少なくとも1つの以下の組合わせに相当する位置の置換を含んで成る:
K40,V74,S141,T142,F188,N234,K249,D261,D261,L268,V279,N342,G397,A403,K425,S442,S479,S493,T494,S495,A496,S497,A498,Q500,K520,A555及びN595。
【0051】
更に好ましい態様において、前記のマルトース産生アルファアミラーゼの変異体は配列番号1に記載のアミノ酸配列において、プロリンによる1又は複数の以下の置換に相当する置換を含んで成る:
V74P,S141P,N234P,K249P,L268P,V279P,N342P,G397P,A403P,S442P,S479P,S493P,T494P,S495P,A496P,S497P,A498P,Q500P、及び/又はA555P。
【0052】
他の好ましい置換はK40R,T142A,F188I/L,D261G,K425E,K520R、及び/又はN595I。
同様に、前記の親マルトース産生アルファアミラーゼに存在する1又は複数のヒスチジン残基が、非ヒスチジン残基、例えばY,V,I,L,F,M,E,Q,N、又はDで置換されることは好ましいことがある。従って、別の好ましい態様において、前記のマルトース産生アルファアミラーゼの変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の1又は複数の以下の残基に相当するアミノ酸残基の置換を含んで成る:
H103,H220、及びH344。
【0053】
更に好ましい態様において、前記のマルトース産生アルファアミラーゼの変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の1又は複数の以下の置換に相当する置換を含んで成る:
H013Y/V/I/L/F/Y,H220Y/L/M、及びH344E/Q/N/D/Y。
【0054】
前記の親マルトース産生アルファアミラーゼに存在する1又は複数のアスパラギン又はグルタミン残基が、側鎖上のアミドを欠く残基で置換されることは好ましいことがある。従って、別の好ましい態様において、Novamyl様の変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の、1又は複数の以下の残基に相当するアミノ酸残基を含んで成る:
Q13,N26,N77,N86,N99,Q119,N120,N131,N152,N171,N176,N187,Q201,N203,N234,Q247,N266,N275,N276,N280,N287,Q299,N320,N327,N342,Q365,N371,N375,N401,N436,N454,N468,N474,Q500,N507,N513,Q526,N575,Q581,N621,Q624及びN664。
【0055】
更に好ましい態様において、前記のマルトース産生アルファアミラーゼの変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の1又は複数の以下の残基に相当するアミノ酸残基の置換を含んで成る:
【0056】
【化3】

【0057】
本発明の別の態様は、前記の親と比較して向上した安定性及び向上した水素結合の接触を有する親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体に関し、ここで前記変異体は配列番号1の1又は複数の以下の位置に相当する位置の修飾を含んで成る:
I16,L35,M45,P73,D76,D79,A192,I100,A148,A163+G172,L268,V281,D285,L321,F297,N305,K316,S573,A341,M378,A381,F389,A483,A486,I510,A564,F586,K589,F636,K645,A629、及び/又はT681。
【0058】
好ましい態様において、前記修飾は1又は複数の以下のものに相当する:
【0059】
【化4】

【0060】
同様の置換を、他のマルトース産生アルファアミラーゼの等しい位置に導入することができる。特定の注目がある置換は、本明細書に開示した他の修飾のいずれかと、1又は複数の上述したものとの組合わせのいずれかである。
上述した目的のいずれかを達成するための、マルトース産生アルファアミラーゼ変異体を正確に構築する前に、前記の予期されるアミノ酸修飾が前記マルトース産生アルファアミラーゼ構造内に、例えば前記の親マルトース産生アルファアミラーゼの三次元構造内に適応されることができるかどうかを評価することは都合がよい。
変化した熱安定性及び/又は変化した温度依存活性プロファイルを有するマルトース産生アルファアミラーゼ変異体
本発明は更に、変化した熱安定性又は温度依存活性プロファイルを有する変異体を得るための、1又は複数のアミノ酸残基の置換、欠失又は挿入により生じる、親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体に関する。
【0061】
前記のマルトース産生アルファアミラーゼの構造は、水及びいくつかの割れ目を含むことがある、いくつかの独特の内部の穴を含む。前記ポリペプチドの熱安定性を増大させるために、前記の穴及び割れ目の数又はサイズを減少させることは望ましいことがあり、例えばこれは1又は複数の疎水性の接触を導入すること、好ましくは前記の穴の近傍又は周辺において、より大きな側鎖の基を有するアミノ酸を導入することによって達成される。例えば、修飾されるべきアミノ酸残基は、前記の穴の形成に関わるものである。
【0062】
従って、更なる観点において本発明は、親マルトース産生アルファアミラーゼの、熱安定性を増大させ、そして/又は温度依存活性プロファイルを変化させる方法に関し、この方法は:
i)前記ポリペプチドの三次元構造における、前記の親マルトース産生アルファアミラーゼの、内部の穴又は割れ目の同定;
ii)前記の構造における、段階i)で同定した穴又は割れ目の近傍の1又は複数のアミノ酸残基の、構造又は機能の考察から疎水性相互作用を増大させ、そして前記の穴又は割れ目のサイズを埋めるか又は減少させることが決定される別のアミノ酸残基による置換;そして
iii)段階ii)から生じる前記の親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体の構築並びに前記変異体の熱安定性及び/又は温度依存活性の試験、
を含んで成る。
【0063】
付表1で同定される構造は、前記の親マルトース産生アルファアミラーゼの穴又は割れ目を同定するために使用することができる。
前記の穴又は割れ目が、前記の穴又は割れ目を囲むアミノ酸残基によって同定され、そして前記のアミノ酸残基の修飾が、前記の穴又は割れ目のサイズを埋めるか又は減少させるのに重要であることは理解されるだろう。好ましくは、前記の修飾は、より大きなアミノ酸残基、すなわち、より大きな側鎖のかさを有するものによる置換である。例えば、全てのアミノ酸がGlyよりも大きいのに対し、Tyr及びTrpはPheより大きい。以下に言及される特定のアミノ酸残基は、結晶構造において問題の穴又は割れ目の側面に位置することが見出されたものである。
【0064】
好ましい態様において、前記のマルトース産生アルファアミラーゼの変異体は、前記構造の内部に位置する穴を完全にか又は部分的にかのいずれかで埋めるために、配列番号1に記載のアミノ酸配列の1又は複数の残基に相当するアミノ酸残基の置換を含んで成る:
【0065】
【化5】

【0066】
更に好ましい態様において、前記のマルトース産生アルファアミラーゼは、配列番号1に記載のアミノ酸配列における以下の置換に相当する1又は複数の置換を含んで成る:
L75と組合わせたL217(例えば、L75F/Yと組合わせたL217F/Y)、
【0067】
【化6】

【0068】
同様の置換を、他のマルトース産生アルファアミラーゼの等しい位置に導入することができる。特定の注目がある変異体は、本明細書に開示した他の修飾のいずれかと、1又は複数の上述したものとの組合わせを有する。
変化した開裂パターンを有するマルトース産生アルファアミラーゼ変異体
本発明の目的の1つは、マルトース産生アルファアミラーゼの分解特性を変化させることである。従って、Novamylは澱粉を加水分解して、支配的にマルトース(G2)及び少量のグルコース(G1)を形成するが、事実上それ以上のオリゴ糖(G3+)は形成しない。例えば、より多くの量のより大きなオリゴ糖、例えばマルトトリオース(G3)、マルトテトラオース(G4)及びマルトペンタオース(G5)を形成するために、この開裂パターンを変化させることは望ましいことがある。
【0069】
前記の親と比較して、基質の開裂パターンが変化する、親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体は、以下のことを含んで成る方法によって構築することができる:
i)前記の三次元構造のモデルにおける、前記マルトース産生アルファアミラーゼの基質結合領域、例えば“基質結合部位”と題した上述の項目において定義した、基質結合部位から4Åの範囲内の同定;
ii)構造又は機能の考察から、変化した基質の開裂パターンを起こすことが信じられている別のアミノ酸による、前記の親の開裂パターンの原因であると信じられている、i)で定義した割れ目の基質結合領域の、前記のモデルにおける1若しくは複数のアミノ酸残基の置換、又は前記の基質に好ましい相互作用を導入することが予想される基質結合領域の1若しくは複数のアミノ酸残基の欠失、又は前記の基質に好ましい相互作用を導入することが予想される基質結合領域への1若しくは複数のアミノ酸残基の付加;並びに
iii)段階ii)から生じるマルトース産生アルファアミラーゼ変異体の構築、及び前記変異体の基質開裂パターンの試験。
【0070】
従って、本発明の別の観点は、前記の親と比較して変化した基質結合部位を有する親マルトース産生アルファアミラーゼに関し、この変異体は配列番号1の1又は両方の以下の位置に相当する位置の修飾を含んで成る:
V281及び/又はA629。
好ましい態様において、前記変異体は:V281Q及び/又はA629N/D/E/Qに相当する修飾を含んで成る。
【0071】
同様の修飾を、他のマルトース産生アルファアミラーゼの等しい位置に導入することができる。特定の注目がある置換は、本明細書に開示した他の修飾のいずれかと、1又は両方の上述したものとの組合わせのいずれかである。
澱粉の凝集及び/又はパンの劣化を減少させる能力が向上したマルトース産生アルファアミラーゼ変異体
本発明は、澱粉の凝集及び/又はパンの劣化を減少させる能力が向上したマルトース産生アルファアミラーゼ変異体を提供する。好ましい変異体は、配列番号1の以下のアミノ酸残基に相当する、1又は複数の位置での置換を含んで成る:
A30,K40,N115,T142,F188,T189,P191,A192,G193,F194,S195,D261,N327,K425,K520及びN595。
【0072】
更に好ましい態様において、前記変異体は配列番号1の以下のものに相当する、1又は複数の修飾を含んで成る:
A30D,K40R,N115D,T142A,F188L,T189Y,Δ(191−195),D261G,D261G,N327S,K425E,K520R及びN595I。
カルシウムイオンから10Å以内の残基の決定
付表1の配位はINS(登録商標)IGHTプログラム(BIOSYM Technologies)で読み込まれる。空間的な配位を、原子間の結合を示すことで提示する。前記イオンを、水分子と同様に提示する。部分集合を作製するためのプログラムパッケージの一部を、コマンドZONEを用いて前記構造におけるカルシウムイオンの周辺の10Åの部分集合を作製するために使用した。カルシウムイオンから指定の10Åの距離以内の原子を有するとして定義される全ての残基は、コマンドLIST MOLECULEを用いることによって編集され、そして列挙される。配位ファイルにおいて、“VAT CA”の名前を前記のイオンに与えることで、“VAT CA”と称される全ての原子の周りの10Åの空間が編集される。この方法で同定される特定の残基は、更に上文の“カルシウム結合”と題した項目において与えられる。
穴の決定
付表1に記載の構造的な配位を有するNovamylの解決した構造は、多くの内部の割れ目及び穴を明らかにした。その様な穴を解析するとき、通常Connollyプログラムが使用される(Lee, B. and Richards, F. M. (1971) J. Mol. Biol. 55 : 379 〜400)。前記プログラムは、前記タンパク質の外部及び内部の面を探索するために、半径を有するプローブを使用する。この方法において観察できる最も小さい割れ目は、プローブ半径を有する。
【0073】
前記の解決した構造を解析するために、INS(登録商標)IGHTのプログラムを含むConnlyプログラムの修正版を使用した。最初の段階において、前記の水分子及びイオンは、前記の解決した構造からこれらの原子を取り出すことで除去した。コマンドMOLECULE SURFACE SOLVENTを用いることで、前記溶媒に接近可能な領域を、1.4Åのプローブ半径を用いて全ての原子及び残基のために計算し、そして前記の解決した構造のモデルと一緒に写実的に示した。次に前記の内部の穴を、前記の外部の面に関係しないドットの面として見る。
【0074】
前記の穴を埋めるための具体的な修飾の提案を、“変化した熱安定性及び/又は変化した温度依存活性プロファイルを有する変異体”と題した上文の項目に与える。構築した構造の相同性又は/及び配列合わせに基づく比較を用いることによって、マルトース産生アルファアミラーゼの相同性構造の変異を作製することができる。
アミノ酸修飾のための命名
変異を定義するために本明細書で使用した命名は、本質的に国際公開第92/05249号に記載されている。従って、F188Hは、アミノ酸H(His)による、188位のアミノ酸F(Phe)の置換を示す。V129S/T/G/Vは、S,T,G又はVによるV129の置換を示す。Δ(191−195)又はΔ(191−195)は、191−195位のアミノ酸の欠失を示す。192−A−193は、192と193のアミノ酸の間のAの挿入を示す。
ポリペプチド配列の同一性
本発明の目的のため、同一性の値を、Needleman, S. B and wunsch, C. D., (1970), Journal of Molecular Biology, 48, 443-45 に記載の方法に従い適当に決定することができ、ここでポリペプチド配列の比較のために以下の設定を用いる:3.0のGAPクリエイション ペナルティー(creation penalty)及び0.1のGAPエクステンション ペナルティー(extension penalty)。GCGプログラムパッケージ(Program Manual for the Wisconsin Package, Version 8, August 1994, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711)において提供されるGAPの様な知られているコンピュータープログラムによって、前記の決定を行うことができる。
【0075】
本発明の変異体は、配列番号1のアミノ酸1〜686と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、例えば少なくとも90%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%のアミノ酸同一性を有する。
ハイブリダイゼーション
核酸プローブと相同性のDNA又はRNA配列との間のハイブリダイゼーションを決定するための適当な実験条件は、5×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム、Sambrook, et al., 1989) 中で10分間ハイブリダイズするための、前記のDNAフラグメント又はRNAを含むフィルターの予備浸漬、並びに5×SSC、5×デンハルト溶液(Sambrook, et al., 1989) 、0.5%SDS及び100μg/mlの変性音波処理サケ精子DNA(Sambrook, et al., 1989) の溶液中でのプレハイブリダイゼーション、続くランダムプライミング(Feinberg, A. P. and Vogelstein, B. (1983) Anal. Biochem. 132 : 6〜13) した、32P−dCTP標識(比活性>1×109 cpm /μg)プローブを含む前記溶液中での、約45℃、12時間のハイブリダイゼーションを含む。次に前記フィルターを少なくとも55℃(低い厳密さ)、好ましくは少なくとも60℃(中間の厳密さ)、更に好ましくは少なくとも65℃(中間の/高い厳密さ)、更に好ましくは少なくとも70℃(高い厳密さ)、より更に好ましくは少なくとも75℃(非常に高い厳密さ)で、2×SSC、0.5%SDS中で30分間、2回洗浄した。
【0076】
これらの条件下で、前記のオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズする分子は、X線フィルムにさらすことによって検出される。
マルトース産生アルファアミラーゼの変異体の製造方法
Novamyl様ポリペプチドをコードするDNA配列のクローニング
親マルトース産生アルファアミラーゼをコードする前記DNA配列は、問題のマルトース産生アルファアミラーゼを産生する細胞又は微生物のいずれかから単離することができ、これには当業界で公知の様々な方法、例えば、バチルスの菌株NCIB11837を用いる。
【0077】
はじめに、研究されるべきマルトース産生アルファアミラーゼを産生する生物からの染色体DNA又はメッセンジャーRNAを用いて、ゲノムDNA及び/又はcDNAライブラリーを構築すべきである。次に、前記α−アミラーゼのアミノ酸配列が知られているならば、問題の生物から調製したゲノムライブラリー由来のマルトース産生アルファアミラーゼをコードするクローンを同定するために、相同性、標識オリゴヌクレオチドプローブを合成し、そして使用することができる。あるいは知られているα−アミラーゼ遺伝子に相同性がある配列を含む標識オリゴヌクレオチドプローブを、低い厳密さのハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を用いて、マルトース産生アルファアミラーゼをコードするクローンを同定するためのプローブとして使用することができる。
【0078】
マルトース産生アルファアミラーゼをコードするクローンを同定するための別の方法は、発現ベクター、例えばプラスミドにゲノムDNAのフラグメントを挿入すること、前記の生じたゲノムDNAライブラリーによりα−アミラーゼ陰性細菌を形質転換すること、及び続く、マルトース産生アルファアミラーゼのための基質を含む寒天上に前記の形質転換細菌をプレーティングすること、それにより同定すべきマルトース産生アルファアミラーゼ活性を、クローンに発現させることを含む。
【0079】
あるいは、前記酵素をコードするDNA配列を、確立された標準的な方法によって合成的に調製することができ、例えばS. L. Beaucage及びM. H. Caruthers (1981)によって記載されたホスホロアミダイト法又はMatthes 等によって記載された方法(1984)である。ホスホロアミダイト法において、オリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成機において合成され、精製され、アニールされ、ライゲーションされ、そして適当なベクターにおいてクローン化される。
【0080】
最終的に、前記DNA配列は、混合されたゲノム及び合成起源のもの、混合された合成及びcDNA起源のもの、又は混合されたゲノム及びcDNA起源のものから、合成、ゲノム若しくはcDNA起源のもののフラグメントをライゲーションすることによって調製することができ、ここで前記のフラグメントは、前記の全DNA配列の様々な部分に相当し、これは当業界で公知の方法に従う。前記DNA配列はまた、得意的なプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって調製することができ、例えばこれは米国特許第4,683,202号又はR. K. Saiki et al. (1988) に記載されている。
【0081】
部位指定変異導入法
一度、マルトース産生アルファアミラーゼをコードするDNA配列が単離され、そして修飾のための所望の部位が同定されたならば、合成オリゴヌクレオチドを用いて修飾を導入することができる。これらのオリゴヌクレオチドは前記の所望の修飾部に隣接するヌクレオチド配列を含み; 変異体ヌクレオチドはオリゴヌクレオチドの合成の間に挿入される。具体的な方法において、マルトース産生アルファアミラーゼをコードする配列を架橋する、DNAの一本鎖のギャップが、前記のマルトース産生アルファアミラーゼ遺伝子を有するベクターにおいて作製される。次に、前記の所望の修飾を生む合成ヌクレオチドが、前記の一本鎖DNAの相同性部分にアニールされる。次に残っているギャップをDNAポリメラーゼI(クレノウ断片)で埋め、そして前記のコンストラクトをT4リガーゼを用いてライゲーションする。この方法の具体的な例は、Morinaga et al. (1984)に記載である。米国特許第4,760,025号は、カセットのわずかな改変を行うことによる、複数の修飾をコードするオリゴヌクレオチドの導入を開示している。しかしながら、より多くの変化がある修飾を、前記のMorinagaの方法によって同時に導入することができるのは、様々な長さの多数のオリゴヌクレオチドを導入することができるからである。
【0082】
マルトース産生アルファアミラーゼをコードするDNA配列に修飾を導入する別の方法は、Nelson and Long (1989)に記載されている。それはPCRフラグメントの3段階産生(3−Step generation)を伴ない、これは前記のPCR反応におけるプライマーの1つとして、化学的に合成したDNA鎖を用いて導入される、前記の所望の修飾を含む。前記のPCRで産生したフラグメントから、前記の修飾を有するDNAフラグメントを、制限エンドヌクレアーゼを用いる開裂によって単離し、そして発現プラスミドに再挿入することができる。
無作為変異導入法
無作為変異導入法は、問題の示されたアミノ酸配列に翻訳される遺伝子の少なくとも3つの部分、又は前記の全遺伝子内で、局所的若しくは領域特異的、いずれかの無作為変異導入法で適当に行われる。
【0083】
親マルトース産生アルファアミラーゼをコードするDNA配列の無作為変異導入法は、当業界で知られている方法のいずれかの使用によって、都合よく行うことができる。
上述したものに関して、本発明の更なる観点は親Novamyl様α−アミラーゼの変異体の製造方法に関し、ここで前記変異体は、前記の親と比較して、低pH及び低カルシウム濃度で、増大した安定性を示し、前記方法は:
(a)無作為変異導入法への前記Novamyl様α−アミラーゼをコードするDNA配列の適用、
(b)宿主細胞における、段階(a)で得られる変異DNA配列の発現、及び
(c)前記の親Novamyl様α−アミラーゼと比較して、変化した特性を有するNovamyl様α−アミラーゼ変異体を発現する宿主細胞のスクリーニング、
を含んで成る。
【0084】
本発明の上述の方法の段階(a)は、好ましくは、本明細書の実施例(以下を参照のこと)に記載の、ドープ(doped)されたプライマーを用いて行われる。
例えば、前記の無作為変異導入法は、適当な物理的又は化学的変異導入剤の使用によって、適当なオリゴヌクレオチドの使用によって、又は変異を生むPCRに前記のDNAをかけることによって行うことができる。更に、前記の無作為変更導入法は、これらの変異導入剤のいずれかの組合わせの使用によって行うことができる。前記の変異導入剤は、例えば転移、転換、転化、混合、欠失、及び/又は挿入を含むものであることができる。
【0085】
本目的に適した物理的又は化学的変異導入剤の例は、紫外線(UV)照射、ヒドロキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、O−メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、エチルメタンスルホネート(EMS)、重亜硫酸ナトリウム、ギ酸、及びヌクレオチド類似体を含む。その様な導入剤を使用するとき、前記の変異導入法は、起きるべき変異のための適当な条件下、選択の変更導入剤の存在において、変異化されるべき前記の親酵素をコードするDNA配列をインキュベートすること、及び前記の所望の特性を有する変異したDNAを選択することによって典型的に行われる。
【0086】
前記変異導入法をオリゴヌクレオチドの使用によって行うとき、前記のオリゴヌクレオチドを、変化すべき位置でのオリゴヌクレオチドの合成の間、3つの非親ヌクレオチドによってドープするか又はスパイク(spike)することができる。前記のドープ化又はスパイク化は、不所望のアミノ酸のコドンを防ぐために行うことができる。前記のドープ化又はスパイク化オリゴヌクレオチドを、公の技術のいずれかによって前記のマルトース産生アルファアミラーゼ酵素をコードするDNAに組込むことができ、これは、例えば、PCR,LCR、又は適当だと思われるDNAポリメラーゼ及びリガーゼのいずれかを用いる。
【0087】
好ましくは、前記のドープ化は各位置における野生型及び修飾のパーセンテージがあらかじめ決定される、“一定の無作為ドープ化”を用いて行われる。更に前記のドープ化は、あるヌクレオチドの導入を好む、そしてそれにより1又は複数の特異的なアミノ酸残基の導入を好む方向へと向かわせることができる。前記のドープ化は、例えば、各位置において、90%の野生型及び10%の修飾の導入を行わせる様に行うことができる。ドープ化の計画の選択における、更に考慮すべきことは、遺伝的及びタンパク質的な構造の制約に基づく。前記のドープ化計画は、とりわけ終止コドンの導入を避けることを確実にする、DOPEプログラムを用いて作製される。
【0088】
PCRによる変異導入法を用いるとき、化学的処理又は無処理の遺伝子のいずれかである、親マルトース産生アルファアミラーゼ酵素をコードする遺伝子は、ヌクレオチドの誤った組込みを増大させる条件下でPCRにかけられる(Deshler 1992 ; Leung et al., Technique, Vol. 1, 1989, pp.11 〜15) 。
E.コリ(coli) (Fowler et al., Molec. Gen. Genet., 133, 1974, pp179〜191)、S.セレビシアエ(セレビシアエ)又は他の微生物のいずれかの変異誘発菌株を、前記マルトース産生アルファアミラーゼをコードするDNAの、前記の無作為変異導入法のために使用することができ、これは、例えば前記親酵素を含むプラスミドが前記の変異誘発菌株に形質転換させること、前記プラスミドと共に前記の変異誘発菌株を生育すること、及び前記の変異誘発菌株から変異したプラスミドを単離することによる。前記の変異したプラスミドは、続けて発現生物に形質転換させることができる。
【0089】
変異導入されるべきDNA配列は、前記の親マルトース産生アルファアミラーゼを発現する生物から調製されるゲノム又はcDNAライブラリーに都合よく存在することができる。あるいは、前記DNA配列は適当なベクター、例えばプラスミド又はバクテリオファージ上に存在することができ、これはそれ自身を前記の変異導入剤とインキュベートするか、あるいは前記の変異導入剤にさらすことができる。変異導入されるべきDNAはまた、宿主細胞内に存在することができ、これは前記細胞のゲノムに組込まれるか、又は前記細胞内に宿されるベクター上に存在するかのいずれかによる。最終的に、変異導入されるべきDNA配列は、単離型において存在することができる。無作為変異導入法にかけられるべきDNA配列が、好ましくはcDNA又はゲノムDNA配列であることが理解されるだろう。
【0090】
いくつかの場合において、前記の発現段階b)又は前記のスクリーニング段階c)を行う前に、前記の変異したDNA配列を増幅することは、都合がよいことがある。その様な増幅を当業界で知られている方法に従い行うことができ、現在好まれている方法は、前記親酵素のDNA又はアミノ酸配列を基に調製したオリゴヌクレオチドプライマーを用いる、PCRによる増幅である。
【0091】
前記の変異導入剤とのインキュベーション又はそれへの曝露に続けて、前記の変異したDNAは、発現を起こさせる条件下、前記DNA配列を有する適当な宿主細胞を培養することによって発現する。この目的のために使用する宿主細胞は、任意にベクター上に存在する、前記の変異したDNA配列により形質転換したものか、又は前記の変異導入処理の間に前記の親酵素をコードするDNA配列を有するものであることができる。適当な宿主細胞の例は、以下のものである:グラム陽性細菌、例えばバチルス・ズブチリス(subtilis)、バチルス・リチェニホルミス(licheniformis)、バチルス・レンタス(lentus)、バチルス・ブレビス(brevis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィラス(alkalophilus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(amyloliquefaciens)、バチルス・コアグランス(coagulans)、バチルス・サーキュランス(circulans)、バチルス・ラウツス(lautus)、バチルス・メガテリウム(megaterium)、バチルス・スリンジエンシス(thuringiensis)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトマイセス・ムリナス(murinus);及びグラム陰性細菌、例えばE.コリ。
【0092】
前記の変異したDNA配列は更に、前記の変異したDNA配列に発現をさせる機能をコードするDNA配列を含んで成ることができる。
局所的無作為変異導入法
前記の無作為変異導入法は、問題の親マルトース産生アルファアミラーゼの一部に、有利に集中することができる。これは、例えば以下のときに有利であることができ、それは前記の酵素のある領域が前記の酵素の与えられた特性に特に重要であると同定されたとき、及び修飾が向上した特性を有する変異体を生じることが予期されるときである。その様な領域は、通常前記の親酵素の三次構造が解明され、そして前記酵素の機能に関与しているとき、同定することができる。
【0093】
前記の局所的、又は領域特異的無作為変異導入法は、上述のPCRによる変異導入法技術又は当業界で知られている他の適当な技術のいずれかの使用によって行うことができる。あるいは、修飾されるべきDNA配列の一部をコードするDNA配列を、例えば、適当なベクターへの挿入によって単離することができ、そして前記の一部を、上文で議論した変異導入法のいずれかの使用によって、続けて変異導入法にかけることができる。
【0094】
親マルトース産生アルファアミラーゼのカルシウム結合安定性を向上させるための領域特異的無作為変異導入法のため、配列番号1に記載のアミノ酸配列由来の以下のアミノ酸残基に相当する位置のコドンを、適当に標的にすることができる:
残基領域
16〜33、35〜36、40:16〜40
46〜54、56:46〜56
73〜81:73〜81
87〜89、91、93〜96、99〜105、109:87〜109
129〜134、(145、150):129〜134
167〜172、174、177、180〜189:167〜189
196〜202、206〜210:196〜210
228〜235、237:228〜237
378
637
向上した基質の結合、すなわち向上した炭水化物の種類、例えばアミロース又はアミロペクチンの結合を、以下の修飾を有するマルトース産生アルファアミラーゼによって達成するために(ここで修飾は、例えばより高い基質特異性及び/又は、例えば基質の開裂、すなわち加水分解に関する、より高い特異性である)、配列番号1に示すアミノ酸配列の以下の領域の位置のコドンを、領域特異的変異導入法によって、修飾のために特に適当に標的にすることができることは明らかである:
70〜97、127〜143、174〜198、226〜233、255〜270、282〜292、324〜331、370〜376。
【0095】
基質特異体及び/又はpH依存活性プロファイルを変えるための領域特異的無作為変異導入法のため、配列番号1の以下の領域を標的にすることができる:70〜97、174〜198。
熱安定性を向上するために、以下の領域を標的にすることができる:70〜109、167〜200。
【0096】
DOPEプログラムの使用による無作為変異導入法のための一般的方法
前記の無作為変異導入法は、以下の段階によって行うことができる。
1.前記酵素の修飾のための、注目の領域の選択
2.前記の選択領域の、変異部位及び非変異部位の決定
3.例えば前記の所望の安定性及び/又は構築されるべき変異体の性能に関する、実行されるべき変異の種類の決定
4.構造的に無理のない変異の選択
5.段階4に関する、段階3によって選択された残基の調整。
【0097】
6.適当なドープアルゴリズムの使用による前記ヌクレオチドの分布の解析。
7.必要な場合の、遺伝子コードのリアリズムへの所望の残基の調整(例えば前記の遺伝子コードから生じる制約を考慮に入れることであり、例えば終止コドンの導入を避けるためである):当業者は、いくつかのコドンの組合わせを慣行において使用できず、そして適応することが必要であろうことを認識するだろう。
【0098】
8.プライマーの作製
9.前記プライマーの使用による無作為変異導入法の実行
10.前記の所望の向上した特性のスクリーニングによる、生じるα−アミラーゼ変異体の選択。
段階6における使用のための適当なドープアルゴリズムは、当業界で公知である。その様なアルゴリズムの1つは、Tomandl, D. et al., 1997, Journal of Computer-Aided Molecular Design 11 : 29〜38に記載されている。別のアルゴリズムはDOPEである(Jersen, LJ, Andersen, KV, Svendsen, A, and Kretzschmar, T (1998) Nucleic Acids Research 26 : 697〜702)。
【0099】
マルトース産生アルファアミラーゼ変異体の発現
注目の変異体の構築は、前記変異体の産生に誘導的である条件下の、前記変異体をコードするDNA配列を含んで成る微生物の培養、及びそれに続く、生じた培養液からの前記変異体の任意な回収によって達成される。これを以下に、更に詳細に記述する。
【0100】
本発明に従い、上述した方法によって、又は当業界で知られている代わりの方法のいずれかによって産生する変異体をコードするDNA配列は、タンパク質又はポリペプチドの形態で発現することができ、これは典型的にプロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナルをコードする調節配列、及び任意にリプレッサー遺伝子又は様々なアクチベーター遺伝子を含む発現ベクターを使用する。
【0101】
本発明のマルトース産生アルファアミラーゼ変異体をコードするDNA配列を有する組換え発現ベクターは、組換えDNAの方法に都合よく適用することができるベクターのいずれかであることができ、そしてベクターの選択はそれを導入すべき宿主細胞にしばしば依存するであろう。従って、前記ベクターは自律複製ベクター、すなわち染色体外の存在物として存在するベクターであることができ、染色体複製から独立的である複製をするもの、例えばプラスミド、バクテリオファージ又は染色体外の因子、ミニクロモソームあるいは人工的な染色体である。あるいは、前記ベクターは、宿主細胞に導入されるとき、宿主細胞のゲノムに組込まれ、そして組込まれた染色体と一緒に複製されるものであることができる。
【0102】
前記ベクターにおいて、本DNA配列は適当なプロモーター配列に作用可能に連結する。前記プロモーターは、選択の宿主細胞において転写活性を示すDNA配列のいずれかであることができ、そして宿主細胞に対して相同性か又は非相同性かのどちらかであるタンパク質をコードする遺伝子に由来することができる。特に細菌の宿主における、本発明のマルトース産生アルファアミラーゼ変異体をコードするDNA配列の転写を方向づけるのに適当なプロモーターの例は、E.コリのlacオペロンのプロモーター、ストレプトマイセス・コエリコローのアガラーゼ遺伝子dagAプロモーター、バチルス・リチェニホルミスのα−アミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモーター、バチルス・ステアロサーモフィラスのマルトース産生アミラーゼ遺伝子(amyM)のプロモーター、バチルス・アミロリクエファシエンスのα−アミラーゼ(amyQ)のプロモーター、バチルス・ズブチリス(subtilis)のxylA及びxylB遺伝子のプロモーターなどである。菌類の宿主における転写のために、有用なプロモーターの例は、A.オリザエ(oryzae)のタカアミラーゼ、リゾムコール・ミエーイ(Rhizomucor miehei)のアスパラギン酸プロテイナーゼ、A.ニガーの中性α−アミラーゼ、A.ニガーの酸安定α−アミラーゼ、A.ニガーのグルコアミラーゼ、リゾムコール・ミエーイのリパーゼ、A.オリザエのアルカリ性プロテアーゼ、A.オリザエのトリオースリン酸イソメラーゼ又はA.ニジュランス(nidulans)のアセトアミダーゼをコードする遺伝子に由来するものである。
【0103】
本発明の発現ベクターはまた、適当な転写ターミネーター及び、真核生物における、本発明のマルトース産生アルファアミラーゼ変異体をコードするDNA配列に作用可能に連結したポリアデニル化配列を含んで成ることができる。終結及びポリアデニル化配列は、前記プロモーターと同一の供給源に適当に由来することができる。
【0104】
更に、前記ベクターは、問題の宿主細胞において前記ベクターが複製することを可能にするDNA配列を含んで成ることができる。その様な配列の例は、プラスミドpUC19,pACYC177,pUB110,pE194,pAMB1及びpIJ702の複製起点である。
前記ベクターはまた、選択マーカー、例えば宿主細胞の欠損を補完する生成物の遺伝子、例えばB.ズブチリス又はB.リチェニホルミス由来のdal遺伝子、あるいは抗生物質耐性、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリン耐性を与えるものを含んで成ることができる。更に、前記ベクターはアスペルギルス選択マーカー、例えばamdS,argB,niaD及びsC、ハイグロマイシン耐性を引き起こすマーカーを含んで成ることができ、あるいは前記選択を共同形質転換によって、例えば国際公開第91/17243号に記載の様に達成することができる。
【0105】
細胞内発現はいくつかの点、例えば宿主細胞としてある細菌を使用するとき、において有利であることができるが、細胞外での発現が一般に好ましい。一般に、本明細書で述べたバチルスのα−アミラーゼは、前記の培養培地に、発現したプロテアーゼを分泌させるプレ領域を含んで成る。所望ならば、このプレ領域を異なるプレ領域又はシグナル配列によって置換することができ、これは、それぞれのプレ領域をコードするDNA配列の置換によって都合よく達成される。
【0106】
マルトース産生アルファアミラーゼ変異体をコードする本発明のDNAコンストラクトを、前記プロモーター、ターミネーター及び他の因子に、それぞれライゲーションするために、そして複製に必要な情報を含む適当なベクターにそれらを挿入するために使用する方法は、当業者に公知である(例えばSambrook et al. (1989)を参照のこと)。
【0107】
上文で定義した本発明のDNAコンストラクト又は発現ベクターのいずれかを含んで成る、本発明の細胞は、本発明のマルトース産生アルファアミラーゼ変異体の組換え体生成において宿主細胞として有利に使用される。宿主細胞のクロモソームにおける、(1又は複数のコピーにおける)前記DNAコンストラクトが都合よく組込まれることによって、前記細胞を前記変異体をコードする本発明のDNAコンストラクトで形質転換することができる。この組込みは、宿主細胞内で安定に維持されやすいDNA配列ほど有利であると一般に考えられている。宿主のクロモソームへのDNAコンストラクトの組込みは、従来の方法に従い、例えば相同性又は非相同性組換えによって行うことができる。あるいは、異なる型の宿主細胞に関連する、上述の発現ベクターによって、前記細胞は形質転換することができる。
【0108】
本発明の細胞は、高等生物、例えば哺乳類又は昆虫の細胞であることができるが、好ましくは微生物細胞、例えば細菌類又は菌類(酵母を含む)の細胞である。
培養において、本発明の酵素を製造することができる微生物の宿主細胞の例は、グラム陽性細菌、例えばバチルスの菌株、例えばB.ズブチリス、B.リチェニホルミス、B.レンタス、B.ブレビス、B.ステアロサーモファラス、B.アルカロフィラス、B.アミロリクエファシエンス、B.コアグランス、B.サーキュランス、B.ラウツス、B.メガテリウム又はB.サーリンジエンシス、あるいはストレプトマイセス・リビダンス(lividans)又はストレプトマイセス・ムリヌス(murinus)、あるいはグラム陰性細菌、例えばE.コリである。前記細菌の形質転換は、例えば、プロトプラスト形質転換か、又は本質的に知られている方法におけるコンピテント細胞を用いることによって果たすことができる。
【0109】
酵母生物はサッカロミセス又はシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)の種、例えばサッカロミセス・セレビシアエ(cerevisiae)から都合よく選択することができる。糸状菌はアスペルギルスに都合よく属することができ、例えばアスペルギルス・オリザエ又はアスペルギルス・ニガーである。菌類細胞を、プロトプラストの形成を含む方法によって形質転換することができ、プロトプラストの形質転換に、本質的に知られている方法における前記の細胞壁の再生が続く。アスペルギルスの宿主細胞の形質転換のための適当な方法は、欧州特許第238023号に記載されている。
【0110】
より更なる観点において、本発明は本発明のマルトース産生アルファアミラーゼ変異体の製造方法に関し、この方法は前記変異体の産生に誘導的である条件下での、上述した宿主細胞培養、及び前記細胞及び/又は培養培地からの前記変異体の回収を含んで成る。
前記細胞を培養するために使用する培地は、問題の宿主細胞の成育、及び本発明のマルトース産生アルファアミラーゼ変異体の発現の獲得に適当な、従来の培地のいずれかであることができる。適当な培地は商業的提供者から入手可能であり、そして公表された方法(例えばAmerican Type Culture Collectionのカタログに記載されている)に従い調製することができる。
【0111】
前記宿主細胞から分泌されるマルトース産生アルファアミラーゼ変異体は、公知の方法によって培養培地から都合よく回収することができ、これは遠心若しくは濾過により前記の培地から細胞を分離すること、及び塩、例えば硫安によって前記の培地からタンパク質成分を沈澱させること、それに続くクロマトグラフィー法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーなどの使用を含む。
【0112】
マルトース産生アルファアミラーゼ変異体の試験
上述した方法のいずれかによって製造したマルトース産生アルファアミラーゼを、精製の前又は後のいずれかに、スクリーニングアッセイにおいてアミロース分解活性の試験を行うことができ、これは前記変異体の澱粉を分解する能力を測定する。本発明の、上述した無作為変異導入法の段階10におけるスクリーニングは、以下の方法に基づくフィルターアッセイの使用によって都合よく行うことができる:注目の変異したマルトース産生アルファアミラーゼを発現することができる微生物を、適当な培地で、及び前記酵素の分泌のための適当な条件下でインキュベートし、ここで前記の培地は2枚のフィルターによって覆われ、これは低いタンパク質結合能を示す第2のフィルターの下に据えられたタンパク質結合フィルターを含んで成る。前記微生物は、第2の、上側のフィルター上で成育する。インキュベーションに続いて、微生物から分泌された酵素を含んで成る、底側のタンパク質結合フィルターを、前記微生物を含んで成る第2のフィルターから分離する。次に、前記のタンパク質結合フィルターを所望の酵素活性のスクリーニングにかけ、そして第2のフィルター上に存在する、相当する微生物のコロニーを同定する。前記酵素活性の結合のために使用した第1のフィルターは、タンパク質結合フィルターのいずれか、例えばナイロン又はニトロセルロースであることができる。前記の発現生物のコロニーを有する第2のフィルターは、タンパク質に結合する親和性を持たないか、又は低い親和性を持つフィルターのいずれか、例えば酢酸セルロース若しくはDurapore(登録商標)であることができる。
【0113】
スクリーニングは、α−アミラーゼ活性の検出をする基質と、前記の分泌タンパク質が結合している第1のフィルターの処理から成る。前記酵素活性は、染色、蛍光、沈澱、pH指示薬、IR−吸収、又は酵素活性の検出のための他の知られている技術のいずれかによって検出することができる。前記の検出化合物を固定化剤のいずれかによって固定化することができ、例えばアガロース、寒天、ゼラチン、ポリアクリルアミド、澱粉、濾紙、布;又は固定化剤の組合わせのいずれかである。例えば、α−アミラーゼ活性を、アガロースに固定される、シバクロンレッドで標識したアミロペクチンによって検出することができる。この基質上でのα−アミラーゼ活性は、赤色の強度の減少による、前記のプレート上のゾーンを提供する。
【0114】
増大した安定性を有する変異体のスクリーニングのために、結合したマルトース産生アルファアミラーゼ変異体を有するフィルターを、上述の検出段階の前にあらかじめ処理することができ、これは前記の親マルトース産生アルファアミラーゼと比べて向上した安定性を持たない変異体を不活性化するためである。この不活性化段階は、限定しないが、pH2〜12のいずれかのpHでの、緩衝化した溶液の存在下における、及び/あるいは安定性の変化に寄与することが知られているか、又は考えられている別の化合物、例えば界面活性剤、EDTA,EGTA、小麦粉の成分、若しくは他の関連する添加物のいずれかを含む緩衝液における、上昇する温度でのインキュベーションから成る。次に、指定時間処理したフィルターを脱イオン水中で簡単にすすぎ、そして上述した様な活性の検出のためのプレートに据える。安定化した変異体が、検出培地上でのインキュベーション後、前記の親と比較して増大した酵素活性を示す様に、前記の条件は選択される。
【0115】
変化した熱安定性を有する変異体のスクリーニングのために、結合した変異体を有するフィルターを、ほぼ全ての前記の親マルトース産生アルファアミラーゼを不活性化するための緩衝液中で、与えられたpH(例えばpH2〜12の範囲)で、上昇する温度(例えば50°〜110℃の範囲)で、ある時間の区切り(例えば1〜20分)でインキュベートし、水の中ですすぎ、続けて固定化シバルコンレッド標識アミロペクチンを含む検出プレート上に直接据え、そして活性が検出されるまでインキュベートする。同様に、pH依存安定性を、前記の親マルトース産生アルファアミラーゼが不活性化されるような、上文の不活性化段階における緩衝液のpHに調節することによってスクリーニングすることができ、これによって問題のpHで増大した安定性を有する変異体のみの検出を行う。増大したカルシウム依存安定性を有する変異体のスクリーニングのために、カルシウムキレート剤、例えばエチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)を、不活性化緩衝液に加え、これは、更に定義される条件、例えば緩衝液のpH、温度又はインキュベーションの指示される長さのもと、前記の親マルトース産生アルファアミラーゼが不活性化される様な濃度で加えられる。
【0116】
本発明の変異体を、前記変異体の澱粉分解活性をアッセイすることによって適当に試験することができ、これは例えば澱粉を含むアガロースプレート上での、変異体をコードするDNA配列により形質転換した宿主細胞の成育及び上述した様な澱粉分解宿主細胞の同定による。更に、比活性、基質特異性、開裂パターン、熱による活性化、熱安定性、pH依存活性又は至適pH、pH依存安定性、温度依存活性又は至適温度、トランスグリコシル化活性、安定性、並びに注目の他のパラメーターのいずれかを含む、変化した特性に関する試験を、下文に記載する、当業界で知られている方法に従い精製した変異体で行うことができる。
【0117】
マルトース産生アルファアミラーゼによるβ−限界デキストリンの分解
マルトース産生アルファアミラーゼ変異体の基質特異性の評価における、別の重要なパラメーターは、その様な酵素がエキソグリコシラーゼβ−アミラーゼによって徹底的に処理された澱粉を分解することができる度合であることができる。前記の親マルトース産生アルファアミラーゼによって生まれるパターンと異なる、その様な基質上での分解のパターンを示す変異体のスクリーニングのために、以下のアッセイを行う:β−限界デキストリンをMcllvane緩衝液(48.5mMクエン酸及び193mMリン酸ナトリウム、pH5.0)中の25mlの1%アミロペクチンを24μg/mlβ−アミラーゼと30℃で一晩インキュベートすることによって調製する。加水分解されないアミロペクチン(すなわちβ−限界デキストリン)を、1体積の98%エタノールで沈澱させ、水の中で洗浄し、そして再溶解する。1mlのβ−限界デキストリンを、18μlの酵素(2.2mg/ml)及び100μlの0:2Mクエン酸−リン酸pH5.0と、30℃で2時間インキュベーションし、そして上述した様にHPLCによって解析する。β−限界デキストリンの全加水分解を、2MのHCl中、95℃で行う。還元末端の濃度を当業界で知られている方法によって測定する。
【0118】
カルシウム結合親和性
熱又はグアニジン塩酸の様な変性剤にさらすことによるマルトース産生アルファアミラーゼの変性は、蛍光の減少を伴い、そしてカルシウムイオンの損失は変性を引き起こす。従って、カルシウムへのマルトース産生アルファアミラーゼ変異体の親和性を、蛍光測定によって測定することができ、これは異なる濃度のカルシウム(例えば1mM〜100mMの範囲)又はEGTA(例えば1〜1000mMの範囲)と一緒の、充分に長い時間(例えば55℃で22時間)での、緩衝液(例えば50mM HEPES,pH7)中の前記変異体(例えば10mg/mlの濃度)のインキュベーションの前及び後に行う。
【0119】
測定される蛍光、下は前記酵素の未変性及び変性の寄与形態から成る。以下の方程式を、カルシウム濃度(〔Ca〕)へのFの依存を記述することで導くことができる:
F=〔Ca〕/(Kdiss+〔Ca〕)(aN −bN log(〔Ca〕))+Kdiss/(Kdiss+〔Ca〕)(au −bu log(〔Ca〕))
ここで、aN は前記酵素の天然(未変性)の蛍光であり、bN はカルシウム濃度(実験的に観測したもの)の対数への一次従属性であり、au は変性形態の蛍光であり、そしてbu はカルシウム濃度の対数への、au の一次従属性である。Kdissは以下の平行過程の、見かけのカルシウム結合定数である:
diss
N−Ca<<U+Ca(N=天然の酵素;U=変性酵素)
事実、変性は極度にゆっくりと進行し、そして不可逆性である。変性の速度はカルシウム濃度に依存し、そしてその様な、与えられる酵素の依存性は、前記酵素のカルシウム結合親和性の測定を提供する。反応条件(例えば55℃で22時間)の標準的な組合わせを定義することによって、異なるマルトース産生アルファアミラーゼ変異体のためのKdissの、意味のある比較を行うことができる。
【0120】
工業的適用
本発明のマルトース産生アルファアミラーゼ変異体は価値のある特性を有しており、これを様々な工業的適用において有利に使用することができる。特に、前記酵素は、澱粉を基にした食品、例えばベーキング工業で一般的なものの、退行、及びそれに従う劣化の遅延又は維持のための潜在的適用を見出す。
【0121】
前記変異体を、当業界で知られている従来の技術に従い、パン及び他のパン製品の製造に使用することができる。
本発明の使用による前記の澱粉画分の修飾が、パン製品のかさの増大、及び器官感覚受容性の質、例えば風味、口当たり、美味しさ、香味及びパンの皮の色の向上をもたらすことが信じられている。
【0122】
前記のマルトース産生アルファアミラーゼを、その唯一の酵素として、あるいは1又は複数の追加の酵素、例えばキシラナーゼ、リパーゼ、グルコースオキシダーゼ及び他のオキシドレダクターゼ、若しくはアミロース分解酵素と組合わせての主な酵素活性として使用することができる。
本発明の酵素変異体はまた、洗濯、皿洗い及び固い表面の清掃用洗剤の成分としての工業用適用性を見出す。いくつかの変異体は直鎖オリゴ糖の製造方法、又は澱粉からの甘味料及びエタノールの製造、並びに/あるいは織物のデサイジングのために特に有用である。澱粉の液化及び/又は糖化方法を含む、従来の澱粉変換方法は、例えば米国特許第3,912,590号及び欧州特許公開第252,730号及び第63,909号に記載されている。
【0123】
本発明を以下の例に関して更に例示し、これは請求した本発明の範囲を限定するあらゆる方法におけるものであることを意図しない。
MANUにおけるマルトース産生アルファアミラーゼの決定
1マルトース産生アルファアミラーゼNovoユニット(MANU)は、スタンダードのもと1分当たり1μmol のマルトトリオースを開裂する酵素量である。前記のスタンダードの条件は、10mg/mlのマルトトリオース、37℃、pH5.0、30分の反応時間である。
【0124】
pH依存性は、前記の同じ条件で、しかし異なるpH値で、この測定を繰り返すことによって見出される。

例1:変化したpH依存活性を有するNovamylの変異体の構築
Novamylを、本明細書でpLBei010として表されるプラスミドから、バチルス・ズブチリスにおいて発現させる。このプラスミドはamyMを含み、ここでamyMの発現はそれ自身のプロモーターによって方向づけられ、そして、例えばDSM11837の菌株に含まれる、Novamylをコードする完全な遺伝子を含む。前記プラスミドはプラスミドpUB110由来の複製起点、ori及び選択目的のためのカナマイシン耐性マーカーを含む。pLBei010を図1に示す。
【0125】
プライマー配列
Novamylの部位指定変異導入体を、本質的にKamman等によって記述されているメガプライマー法(1989)によって構築した。簡単に言うと、変異オリゴヌクレオチドプライマーを、予備的なPCR産物を作製するためにPCR反応中で適当な反対のDNA鎖エンド(end)プライマーと一緒に使用する。次に、この産物をメガプライマーとして、二本鎖DNA産物を作製するために、別の反対のDNA鎖エンドプライマーと一緒に使用する。前記の最終PCR反応産物を、標準的なクローニング法によって、pLBei010プラスミドの相当するDNAフラグメントを置換するために、常用通りに使用した。バチルス・ズブチリスの菌株SHa273、apr- ,npr- ,amyE- ,amyR2- であり、当業界で知られている方法によって調製したバチルス・ズブチリスの誘導体168に変異体を直接形質転換させた。
【0126】
記載した変異体の構築において使用したオリゴヌクレオチドプライマーを以下に列挙する:
変異体配列(5’→3’)
F188H:配列番号3
F188E:配列番号4
F284E:配列番号5
F284D:配列番号6
F284K:配列番号7
H327D:配列番号8
変異体配列(3’→5’)
T288K:配列番号9
T288R:配列番号10
F284,T288及びN327のアスペラギン酸変異体を、エンドプライマーとしてプライマーA189(配列番号11)及びB649(配列番号12)を用いて得た。
【0127】
F188変異体F188L,T189Yを、エンドプライマーとしてプライマーA82(配列番号13)及びB346(配列番号14)を用いて得た。
所望の修飾を有するPCR産物を精製し、適当な酵素で消化し、アガロースゲル電気泳動で分離し、抽出し、グリコーゲンの存在下、エタノール沈澱し、H2 O中で再懸濁し、前記と同一の酵素で消化したpLBei010にライゲーションし、そしてバチルス・ズブチリスのSHa273を形質転換させた。形質転換体を、コロニーPCRでサイズ、並びに制限酵素消化によって特定の制限部位の挿入又は除去を調べた。ポジティブなコロニーを、当業界で知られているDNA配列決定法で確かめた。
【0128】
発酵
前記のB.ズブチリスSHa273変異体クローンをLB−カナマイシン(10μg/ml)−澱粉プレート上で、37℃で一晩成育させた。前記プレートからのコロニーを10mlのルリア液中で再懸濁した。前記懸濁液の6分の1ずつを、500mlの振盪フラスコ中に接腫し、これは100mlのPS−1培地、大豆半分/ショ糖を基にした培地、最終濃度10μg/mlのカナマイシン及び100μlの5M NaOHを含む。接腫の前に、pHをNaOHによって、7.5に調整した。前記培養液を270〜300rpm の振盪により、30℃で5日間インキュベートした。
【0129】
酵素精製
前記培地由来の大きな粒子を、親和性クロマトグラフィーの前に凝結によって除去した。陽イオン性凝結剤としてSuperfloc C521 (American Cyanmide Company)を使用し、陰イオン性凝結剤としてSuperfloc A130 (American Cyanmide Company)を使用した。
【0130】
前記の培養懸濁液を脱イオン水で1:1に希釈し、そしてpHを約7.5に調整した。希釈した培養液のml当たり、0.01mlの量の50w/w%CaCl2 を撹拌している間に加えた。希釈した培養液のml当たり、0.015mlの量の20w/w%Na−アルミン酸塩を、pHを7と8の間に保ちながら、20%ギ酸と一緒に滴下した。撹拌しながら、希釈した培養液のml当たり、0.025mlの10v/v%のC521を加え、続けて希釈した培養液のml当たり、1w/v%のA130を0.05ml、又は凝結が確認されるまで加えた。前記溶液を4500rpm で30分間遠心した。より大きな粒子及びあらゆる残っている細菌を排除するために、孔のサイズが0.45μmのフィルターを用いて、濾過を行った。前記の濾過溶液を−20℃で保存した。
【0131】
DSVアガロースへのα−シクロデキストリンの固定化
分子量972.86g/mol (Fluka28705)の100mgのα−シクロデキストリンを、20mlの結合緩衝液(0.5M Na2 CO3 pH11)に溶解した。10mlのDSVアガロース(ジビニルスルホン活性化したアガロース(Kem−En−Tec)のMini−Leak,Medium 10〜20mmol/l)を脱イオン水で入念に洗浄し、次に吸込みによって乾燥させ、そしてα−シクロデキストリン溶液に移した。混合液を周囲温度で24時間撹拌した後、ゲルを脱イオン水、それに続き0.5M KHCO3 で洗浄した。前記のゲルをブロッキング緩衝液(20ml 0.5M KHCO3 +1mlメルカプトエタノール)に移し、周囲温度で2時間撹拌し、続いて脱イオン水で洗浄した。
【0132】
親和性クロマトグラフィー
前記変異体を、Pharmacia FPLCシステムを用いる親和性クロマトグラフィーによって精製した。0.04体積のpH5,1M酢酸ナトリウムを、pHを調整するために、凝結によって得られた前記濾液に加え、そしてCaCl2 を最終濃度10-10 Mになるまで加えた。前記溶液を濾過し、そして脱気した。Pharmacia XK16カラムを10mlの固定化α−シクロデキストリンを用いて調製し、次に平衡化緩衝液(pH5の25mM酢酸ナトリウム)中、約10倍のカラム体積で洗浄することによって平衡化した。洗浄液中でもはやタンパク質が検出されなくなるまで、前記の平衡化緩衝液で続けて洗浄されるXK16カラムに、前記の濾液をかけた。非特異的材料を溶出するために、 0.5 M NaClを含む平衡緩衝液で洗浄し、続けてカラム体積の2〜3倍の前記平衡化緩衝液でもう1度洗浄した。全ての洗浄を10ml/分の流速を用いて行った。特異的に結合した材料を2%α−シクロデキストリン/前記洗浄緩衝液の溶液を用いて溶出し、そして5ml/分の流速を用いて、Pharmaciaの液体クロマトグラフィーコレクターLCC−500 Plusを用いて回収した。
【0133】
例2:変異体のpH依存活性
上述の例において調製した変異体を、以下の様々なpH値で活性を試験した。
マルトトリオース又はアミロペクチンから遊離されるグルコースのための比色グルコースオキシダーゼ−ペルオキシダーゼアッセイを、前記酵素変異体のpH活性プロファイルを決定するために使用した(グルコース/GOD−Perid(登録商標)法、Boehringer Mannheim, Indianapolis IN) 。25mMのクエン酸−リン酸緩衝液中、2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5,8及び8.6のpH値で、活性をアッセイした。前記緩衝液のpHをNaOHを用いて調整し、そして酵素をpH5,25mMのクエン酸−リン酸中で希釈した。測定を、平均値を得るために2回1組で行った。全ての値は、最も高いレベルの活性が見られるpHに関する。
【0134】
以下の表に示す結果は、前記の親Novamyl(登録商標)と比較したときに、前記の各変異体がpH依存活性プロファイルにおける変化を有していることを示している。各変異体の活性の最も高いレベルを、100%で表わし、そして他に示すpH値で測定される変異体の活性は、その最大の相対的パーセンテージである。
【0135】
【表1】

【0136】
更に、いくつかのNovamyl変異体を、pH4.0及び5.0のpHで活性試験し、100%として同じpHでのNovamylの活性を採用した。前記活性を、60℃、50mM酢酸ナトリウム、1mM CaCl2 でのマルトトリオースの加水分解によって決定した。結果をpH5.0とpH4.0の活性の間の比率として表わす。
【0137】
【表2】

【0138】
本発明に従い、より高い又はより低い至適pHを有する変異体が得られることを前記結果は示している。
例3:変異体の熱安定性
80℃でのインキュベーション
いくつかのNovamyl変異体の熱安定性を、80℃及びpH4.3で水溶液をインキュベートし、そして様々な時間で残留アミラーゼ活性を測定することによって試験した。前記親酵素、Novamylを比較のために含めた。結果を、最初の活性のパーセントにおいて、様々な時間での残留活性として表わす。
【0139】
【表3】

【0140】
上述の結果は、前記の親アミラーゼと比較して前記変異体の熱安定性が明らかに向上したことを示している。
カルシウムとの85℃でのインキュベーション
前記Novamyl変異体S32Eを、85℃での1mM Ca++との15分間のインキュベーションによって試験した。前記変異体は48%の残留活性を示し、一方前記親酵素(Novamyl)は同じ条件で32%の残留活性を示した。
【0141】
DSC
更に、pH4.3又は5.5でのDSC(示差走査熱量測定)によって、いくつかのNovamyl変異体の熱安定性を試験した。再び、前記親アミラーゼを比較のために含めた。結果を変性温度(Tm)として表わす:
【0142】
【表4】

【0143】
両変異体の熱安定性の向上を前記の結果は示している。
例4:変異体の比活性
pH5.0及び60℃でのファデバス板(phadebas Tablet)への作用の後、比色分析によってアミラーゼ活性を決定した。Novamylに関する、2つのNovamyl変異体の結果は以下の様であった:
【0144】
【表5】

【0145】
上述したMANU法による、pH4.0,60℃でのマルトトリオースへの作用によって、前記の比活性を更に試験した。前記変異体G370N,N371Gが、Novamylと比較して106%のマルトトリオース活性を有することを前記結果は示した。
例5:凝集の阻害
凝集を阻害するNovamyl及びNovamyl変異体の効率を、以下の様に決定した:
選択したpH(3.7,4.3又は5.5)での、730mgの50%(w/w)アミロペクチンスラリーを、20μlの酵素試料と混合し、そして前記混合物を、封をしたアンプル中、40℃で1時間インキュベートし、続けて前記試料をゼラチン化するために100℃で1時間インキュベートした。前記アミロペクチンを再結晶化させるために、次に前記試料を室温で7日間熟成した。酵素無しのコントロールを含めた。
【0146】
熟成の後、90℃/時間の、一定の走査速度で、5℃から95℃までを走査することによって、DSCを前記の試料で行った。温度記録図の最初の吸熱ピークのもとの領域を、凝集したアミロペクチンの量を表わすために採用し、そして相対的な凝集の阻害を、酵素無しのコントロールと比較する、領域の減少(%)として採用した。
【0147】
以下の表において、前記酵素の投与量(MANU/ml)に対する相対的な凝集の阻害として、前記酵素の効率を表わした。
【0148】
【表6】

【0149】
多くの変異体が、凝集を阻害することにおいて前記親アミラーゼよりもより効率的であることを前記の結果は示している。
例6:変異体の抗劣化効果
パンを、欧州のストレート生地法(Straight Dough method)によって、あるいは酵素の添加有り又は無しの酸性の生地から製造し、そして焼きパンを、増大効果を防ぐために、ふたのある平鍋で焼いた。前記のパンを2時間冷やし、そして質感を解析した。次に、残っている焼きパンを、プラスチックバッグに包み、そして1,4及び7日後の質感解析のために室温で保存した。
【0150】
各焼きパンの質感解析を、4枚に切ることで行った;力を25%圧縮(P1)、40%圧縮(P2)、及び30秒間の40%一定圧縮後(P3)で測定した。P1を固さとして採用し、そして比率(P3/P2)を、パンの中味の弾力性として採用した。7日間の保存後の凝集の範囲を、例7に記載した様にDSCによって決定した。
【0151】
欧州のストレート生地(pH5.5〜6.0)
Novamyl変異体(T142A+N327S+K425E+K520R+N595I)を、0〜2mgの酵素/kg小麦粉の範囲内の投与量で試験し、そして前記の親酵素(Novamyl)を比較のために使用した。
等しい投与量で、前記変異体が2時間及び1日後に、前記親酵素よりもより良い弾力性(P3/P2)を与えることを前記の結果は示した。1〜2mg/kgの投与量で、前記変異体が、同じ投与量の前記の親酵素よりも有意に柔かいパンの中身(より低い固さ、P1)を与えることを、7日後の結果は示している。従って、前記変異体は7日間の保存期間中、より良い抗劣化作用を有する。
【0152】
酸性生地(pH約4.5)
Novamyl変異体(F188L+D261G+T288P)を酸性生地において試験し、そして前記の親酵素(Novamyl)を比較のために使用した。以下の結果を7日後の固さ(P1)、4及び7日後の弾力性(P3/P2)並びに7日後の凝集から得た。
【0153】
【表7】

【0154】
【表8】

【0155】
【表9】

【0156】
前記結果は、前記変異体がpH4.5の酸性生地において固さ及び弾力性として評価される質感に対する、著しく向上した作用を有することを示している。前記変異体の1〜3mg/kgの投与量は、試験された全てのパラメーター上で、13mg/kgの前記親酵素よりも優れており、そして前記変異体により達成される弾力性に、あらゆる濃度で親酵素は匹敵しなかった。
【0157】
例7:変異体の開裂パターン
澱粉の加水分解における開裂パターンを、2つの変異体及び前記親酵素、Novamylと比較した。
以下の結果は各オリゴ糖(G1〜G8)の重量%を示し、これは50℃で、pH5.0の50mM酢酸ナトリウム、1mM CaCl2 、を用いる1%(w/v)澱粉溶液中での24時間のインキュベーション後に形したものである。前記のオリゴ糖をHPLCを用いて同定し、そして定量した。
【0158】
【表10】

【0159】
前記結果は、有意に変化した開裂パターンを示している。24時間後、Novamylは主にマルトースを産生し、そして事実上それ以上のオリゴ糖は産生しない。対照的に、前記の2つの変異体は、有意な量のマルトース及びそれ以上のオリゴ糖を産生する。
参考文献
【0160】
【表11】

【0161】
【表12】

【0162】
【表13】

【0163】
【表14】

【0164】
【表15】

【0165】
【表16】

【0166】
【表17】

【0167】
【表18】

【0168】
【表19】

【0169】
【表20】

【0170】
【表21】

【0171】
【表22】

【0172】
【表23】

【0173】
【表24】

【0174】
【表25】

【0175】
【表26】

【0176】
【表27】

【0177】
【表28】

【0178】
【表29】

【0179】
【表30】

【0180】
【表31】

【0181】
【表32】

【0182】
【表33】

【0183】
【表34】

【0184】
【表35】

【0185】
【表36】

【0186】
【表37】

【0187】
【表38】

【0188】
【表39】

【0189】
【表40】

【0190】
【表41】

【0191】
【表42】

【0192】
【表43】

【0193】
【表44】

【0194】
【表45】

【0195】
【表46】

【0196】
【表47】

【0197】
【表48】

【0198】
【表49】

【0199】
【表50】

【0200】
【表51】

【0201】
【表52】

【0202】
【表53】

【0203】
【表54】

【0204】
【表55】

【0205】
【表56】

【0206】
【表57】

【0207】
【表58】

【0208】
【表59】

【0209】
【表60】

【0210】
【表61】

【0211】
【表62】

【0212】
【表63】

【0213】
【表64】

【0214】
【表65】

【0215】
【表66】

【0216】
【表67】

【0217】
【表68】

【0218】
【表69】

【0219】
【表70】

【0220】
【表71】

【0221】
【表72】

【0222】
【表73】

【0223】
【表74】

【0224】
【表75】

【0225】
【表76】

【0226】
【表77】

【0227】
【表78】

【0228】
【表79】

【0229】
【表80】

【0230】
【表81】

【0231】
【表82】

【0232】
【表83】

【0233】
【表84】

【0234】
【表85】

【0235】
【表86】

【0236】
【表87】

【0237】
【表88】

【0238】
【表89】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
親マルトース産生アルファアミラーゼ変異体の製造方法であって、
a)前記の親アルファアミラーゼの三次元構造を産み出すための、付表において表わされる配列番号1の三次元構造上での前記親アルファアミラーゼのモデリング;
b)段階a)において得られる三次元構造における前記の親の少なくとも1つの構造的部分の同定であって、前記の構造的部分における変化が前記の変化した特性を生むことを予測する同定;
c)前記の構造的部分に相当する位置での1又は複数のアミノ酸の欠失、挿入、又は置換をコードする核酸を産生するための、前記の親アルファアミラーゼをコードする核酸の修飾;及び
d)前記の変異体アルファアミラーゼを産生するための、宿主細胞における、前記の修飾された核酸の発現、
を含んで成る前記方法
(ここで前記変異体はアルファアミラーゼの酵素活性を有し、そして前記の親と比較して、変化した特性を少なくとも1つ有する)。
【請求項2】
前記の変化した特性がpH依存活性、熱安定性、基質開裂パターン、開裂の比活性、トランスグリコシル化、澱粉の凝集を減少させる能力、パンの劣化を減少させる能力、基質特異性、基質との結合又はカルシウムとの結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体の構築方法であって;
a)前記の親の三次元構造における前記親アミラーゼの活性部位の残基から、15Å (特に10Å)以内にあり、そして活性部位の残基と静電性又は疎水性の相互作用に関与するアミノ酸残基の同定;
b)活性部位の残基の静電性及び/又は疎水性の環境を変化させ、そして前記構造において適応できる、別のアミノ酸残基による前記アミノ酸残基の置換;
c)循環的な、段階a)及びb)の任意な繰り返し;
d)b)以外の、1又は複数の位置でのアミノ酸残基の挿入、欠失又は置換のうちの、いずれかの変化の任意な作製;
e)段階a)〜d)から生じる前記変異体の調製;
f)前記変異体のpH依存活性の試験;及び
g)循環的な、段階a)〜f)の任意な繰り返し;及び
h)前記の親アミラーゼと比較して、変化したpH依存活性を有する変異体の選択、
を含んで成る方法。
【請求項4】
親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体の構築方法であって;
a)前記の親の三次元構造における内部の穴又は割れ目の同定;
b)前記の穴又は割れ目に近いアミノ酸残基の別のアミノ酸残基による置換であって、前記の疎水性相互作用を増大させ、そして/あるいは前記の穴若しくは割れ目のサイズを大きくし、又は減少させる置換;
c)循環的な、段階a)及びb)の任意な繰り返し;
d)b)以外の、1又は複数の位置でのアミノ酸残基の挿入、欠失又は置換のうちの、いずれかの変化の任意な作製;
e)段階a)〜d)から生じる前記変異体の調製;
f)前記変異体の熱安定性の試験;及び
g)循環的な、段階a)〜f)の任意な繰り返し;及び
h)前記の親アミラーゼと比較して、増大した熱安定性を有する変異体の選択、
を含んで成る方法。
【請求項5】
前記のアミノ酸残基の置換が前記の疎水性相互作用の増大、プロリンによる置換、別のアミノ酸によるヒスチジンの置換、カルシウム結合の安定化、ドメイン間のジスルフィド結合の導入、脱アミド化部位の除去、水素結合の接触の変化、より大きな側鎖の基を有するアミノ酸による内部構造の穴の充填、ドメイン間の相互作用の導入、電荷分布の変化、ヘリックスのキャッピング、又は塩橋の導入をもたらす、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体の構築方法であって:
a)前記アミラーゼの三次元構造におけるカルシウム結合部位から、10Å以内のアミノ酸残基の同定;
b)カルシウムイオンとの相互作用を向上するための、別のアミノ酸による前記アミノ酸の置換;
c)循環的な、段階a)及びb)の任意な繰り返し;
d)b)以外の、1又は複数の位置でのアミノ酸残基の挿入、欠失又は置換のうちの、いずれかの変化の任意な作製;
e)段階a)〜d)から生じる前記変異体の調製;
f)前記変異体の熱安定性の試験;及び
g)循環的な、段階a)〜f)の任意な繰り返し;及び
h)前記の親アミラーゼと比較して、増大した熱安定性を有する変異体の選択、
を含んで成る方法。
【請求項7】
親マルトース産生アルファアミラーゼの変異体の構築方法であって:
a)前記の親アミラーゼの三次元構造のモデルにおける、基質結合領域の同定;
b)アミノ酸の置換、欠失又は挿入による、基質結合領域の修飾;
c)循環的な、段階b)の任意な繰り返し;及び
d)b)以外の、1又は複数の位置でのアミノ酸残基の挿入、欠失又は置換のうちの、いずれかの変化の任意な作製;
e)段階a)〜d)から生じる前記変異体の調製;
f)前記変異体の基質開裂パターンの試験;及び
g)循環的な、段階a)〜f)の任意な繰り返し;及び
h)前記の親アミラーゼと比較して、変化した基質開裂パターンを有する変異体の選択、
を含んで成る方法。
【請求項8】
マルトース産生アルファアミラーゼ変異体の産生方法であって;
a)請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法による前記変異体の構築;
b)前記変異体をコードするDNA配列による、微生物の形質転換;
c)前記変異体の産生にとって誘導的な条件下での、前記の形質転換した微生物の培養;及び
d)生じた培養液からの前記変異体の任意な回収;
を含んで成る方法。
【請求項9】
a)マルトース産生アルファアミラーゼ活性を有し;
b)配列番号1と少なくとも70%の同一性を有し;
c)D127,V129,F188,A229,Y258,V281,F284,T288,N327,M330,G370,N371、及び/又はD372に相当する位置で、配列番号1と比較されるアミノ酸修飾を含んで成り;そして
d)配列番号1のポリペプチドと比較して、変化したpH依存活性を有する、
ポリペプチド。
【請求項10】
前記修飾がD127N/L,V129S/T/G/V,F188E/K/H,A229S/T/G/V,Y258E/D/K/R/F/N,V281L/T,F284K/H/D/E/Y,T288E/K/R,N327D,M330L/F/I/D/E/K,G370N,N371D/E/G/K、及び/又はD372N/Vに相当する置換を含んで成る請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
a)マルトース産生アルファアミラーゼ活性を有し;
b)配列番号1に少なくとも70%の同一性を有し;そして
c)
【化1】

に相当する位置で、配列番号1と比較されるアミノ酸修飾を含んで成り;そして
d)配列番号1のポリペプチドと比較して向上した安定性を有する、
ポリペプチド。
【請求項12】
前記修飾がK40,V74,H103,S141,T142,F188,H220,N234,K249,D261,L268,V279,N342,H344,G397,A403,K425,S442,S479,S493,T494,S495,A496,S497,A498,Q500,K520,A555及び/又はN595に相当する位置で;好ましくはK40R,V74P,H103Y/V/I/L/F/Y,S141P,T142A,F188I/L,H220Y/L/M,N234P,K249P,D261G,L268P,V279P,N342P,H344E/Q/N/D/Y,G397P,A403P,K425E,S442P,S479P,S493P,T494P,S495P,A496P,S497P,A498P,Q500P,K520R,A555P及び/又はN595Iに相当する置換を含んで成る、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記修飾が、カルシウム配位を向上する様な、D17,N28,P29,A30,S32,Y33,G34,R95,H103,N131,H169,I174及び/又はQ201に相当する位置で、好ましくはD17Q/E,A30D/M/L/A/V/I/E/Q,S32D/E/N/Q,R95M/L/A/V/I/E/Q,H103Y/N/Q/D/E,N131D,H169N/D/E/Q,I174E/Q,Q201Eに相当する置換を含んで成る、請求項11又は12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記修飾が、脱アミド化部位を除去する様な、Q13,N26,N77,N86,N99,Q119,N120,N131,N152,N171,N176,N187,Q201,N203,N234,Q247,N266,N275,N276,N280,N287,Q299,N320,N327,N342,Q365,N371,N375,N401,N436,N454,N468,N474,Q500,N507,N513,Q526,N575,Q581,N621,Q624及び/又はN664に相当する位置で、
【化2】

に相当する置換を含んで成る、請求項11〜13のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記修飾が、水素結合の接触を向上する様な、I16,L35,M45,P73,D76,D79,A192,I100,A148,A163+G172,L268,V281,D285,L321,F297,N305,K316,S573,A341,M378,A381,F389,A483,A486,I510,A564,F586,K589,F636,K645,A629、及び/又はT681に相当する位置での置換、好ましくは
【化3】

に相当する置換を含んで成る、請求項11〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記修飾が1又は複数のドメイン間のジスルフィド結合を導入する様な、好ましくはG236C+S583C,G618C+R272C、及び/又はA348C+V487Cに相当する置換を含んで成る、請求項11〜15のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記の内部の穴又は割れ目を埋める様なL51,L75,L78,G88,G91,T94,V114,I125,V126,T134,G157,L217,S235,G236,V254,V279,V281,L286,V289,I290,V308,L321,I325,D326,L343,F349,S353,I359,I405,L448,Q449,L452,I470,G509,V515,S583,G625,L627,L628及び/又はA670に相当する位置での置換、好ましくは
【化4】

及び/又はW75と組合わせたL217(例えばL75F/Yと組合わせたL217F/Y)に相当する置換を有する、請求項11〜16のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記の修飾が、塩橋を形成する様な、N106,N320及びQ624に相当する位置での置換、好ましくはN106R,N320E/D及び/又はQ624Eに相当する置換を含んで成る、請求項11〜17のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記修飾が、電荷分布を変える様な、K244及び/又はK316に相当する位置での置換、好ましくはK244S及び/又はK316G/N/Dに相当する置換を含んで成る、請求項11〜18のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記修飾が、前記結合部位を変える様な、V281及び/又はA629に相当する位置での置換、好ましくはV281Q及び/又はA629N/D/E/Qに相当する置換を含んで成る、請求項11〜19のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記修飾がF143+F194+L78,A341+A348+L398+I415+T439+L464+L465,L557,S240+L268,Q208+L628,F427+Q500+N507+M508+S573及び/又はI510+V620に相当する位置で前記のドメイン間の相互作用を変える様な置換、好ましくは
【化5】

に相当する置換を含んで成る、請求項11〜20のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
a)マルトース産生アルファアミラーゼ活性を有し;
b)配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有し;
c)P191,A192,G193,F194及び/又はS195に相当する位置で、配列番号1と比較されるアミノ酸修飾を含んで成り;そして
d)配列番号1のポリペプチドよりも、高いアミラーゼ比活性を有する、
ポリペプチド。
【請求項23】
前記修飾が欠失、好ましくは欠失Δ(191〜195)を含んで成る、請求項22に記載のポリペプチド。
【請求項24】
前記修飾が挿入、好ましくは192−A−193を含んで成る、請求項22に記載のポリペプチド。
【請求項25】
a)マルトース産生アルファアミラーゼ活性を有し;
b)配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有し;
c)A30,K40,N115,T142,F188,T189,P191,A192,G193,F194,S195,D261,T288,N327,K425,K520及び/又はN595に相当する位置で、配列番号1と比較されるアミノ酸修飾を含んで成り;そして
d)配列番号1のポリペプチドより、澱粉の凝集及び/又はパンの劣化を減少させる高い能力を有する、
ポリペプチド。
【請求項26】
前記修飾が、A30D,K40R,N115D,T142A,F188L,T189Y,Δ(191〜195),D261G,T288P,N327S,K425E,K520R及び/又はN595Iを含んで成る、請求項26に記載のポリペプチド。
【請求項27】
適当な発現宿主において、前記変異体の発現を方向づける、1又は複数の調節配列に好ましくは作用可能に連結した、請求項9〜26のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列。
【請求項28】
請求項27に記載の核酸配列、プロモーター、並びに転写及び翻訳終結シグナルを含んで成り、そして好ましくは更に選択マーカーを含んで成る組換え発現ベクター。
【請求項29】
請求項27に記載の核酸配列又は請求項28に記載のベクターを含んで成る、形質転換される宿主細胞。
【請求項30】
a)前記変異体の発現を誘導する条件下で、請求項29に記載の形質転換した宿主細胞の培養;及び
b)前記変異体の回収、
を含んで成る、請求項9〜26のいずれか1項に記載のポリペプチドを製造する方法。
【請求項31】
請求項9〜26のいずれか1項に記載のポリペプチド、又は請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって製造した変異体を、パンの劣化を遅らせるのに効果的である量において、生地に加えることを含んで成る、生地又は前記の生地から製造した焼いた産物の製造方法。
【請求項32】
前記変異体が、小麦粉のkg当たり0.1〜5mg、好ましくは0.5〜2mg/kgの量において加えられる請求項31に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−148525(P2010−148525A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85577(P2010−85577)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【分割の表示】特願2000−533534(P2000−533534)の分割
【原出願日】平成11年2月26日(1999.2.26)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】