説明

マンドレルの制御装置

【課題】マンドレルの起動時に駆動モータを最適な回転数で駆動する。
【解決手段】プレス機の送り装置にコイル材を繰り出すマンドレルはコイル材のループの上限位置への接触・離間を検出するループセンサと組合わされる。マンドレルの起動直後の動作時にマンドレルの駆動モータはループセンサにコイル材が接触した後、一定の比率で回転数が上昇する。そしてループセンサからコイル材が離間した際にその直前の回転数で定常運転する。不必要な回転数の上昇を回避してコイル材の突っ張り・床への接触・バラケ等の不具合を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル材の保持部を駆動モータで回転駆動することにより、加工機に送り手段を介して供給されるコイル材を供給量に応じて繰り出し、または加工機から排出されるコイル材を巻取るためのマンドレルに係わり、特に前記マンドレルにおけるコイル材の繰り出し又は巻き取り速度を制御するための制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレス加工等において、略円筒状に巻回された細長い帯状の素材であるコイル材が用いられる場合には、このコイル材を保持する手段としては一般にマンドレルが使用される。
【0003】
図6に、マンドレルを含むプレスラインの一例を示す。1はプレス機、2は上型、下型からなる金型である。3は送り装置であり、上下一対のロール間にコイル材6を挟持し、プレス機1の加工速度にあわせて所定の長さでコイル材6を間欠的に供給する。また、4はコイル材6のループの上限位置と下限位置を検出する上下一対のループセンサである。
【0004】
5はマンドレルである。このマンドレルは、保持部5aにコイル材を巻回した状態で保持することができる。この保持部5aは図示しないモータによって回転駆動され、前記コイル材を繰り出すことができる。モータは、前記ループセンサ4からの検出信号に基づいて制御装置5bが制御する。
【0005】
前記制御装置5bは、前記検出手段4の出力信号に応じて、モータの運転・停止を切り替えるように構成されている。ここでモータの運転はモータの起動及びモータの回転数を段階的に切り替えることをいう。
【0006】
図7に制御部5bの構成を示す。制御部5bは、演算部12とクロック13とRAM14と設定スイッチ15とインバータ16を有しており、検出手段17とスイッチ18からの信号を受け、駆動モータ19を制御するように構成されている。
【0007】
前記検出手段17は、ループセンサ4の出力によりコイル材のループの上限位置及び下限位置を検出して、前記演算部12にそれぞれ起動信号及び停止信号を出力する。
【0008】
前記スイッチ18は制御部11による駆動モータ19の運転態様を自動運転・手動運転・寸動運転のなかから選択する。
【0009】
まず、前記演算部12は、インバータ16を介して駆動モータ19の回転数を周波数制御するものであり、図8に示すように前記起動信号が入力された時に駆動モータ19の回転数を所定の定常運転周波数Rstまで一定割合Rincで徐徐に増加させて、停止信号が入力された時に駆動モータ19の回転数を一定割合Rdec徐徐に減少させて停止させる。
【0010】
次に、前記演算部12は、運転中にコイル材が上限位置から下限位置に到達する時間を測定する時間測定部としての機能を有している。即ち演算部12は、前記検出手段17から連続して入力された起動信号と停止信号の時間間隔(測定時間t)を、クロック13が発生する信号に基づいて測定する。
【0011】
さらに、前記演算部12は、前記設定スイッチ15及びRAM14とともに、運転中にコイル材が上限位置から下限位置に到達する目標時間Tを設定するための時間設定部を構成している。即ち、設定スイッチ15で入力した目標時間Tは、演算部12を介してRAM14に格納される。
【0012】
前記時間設定部の設定スイッチ15においては、始動時の定常運転周波数として駆動モータ19の最高回転周波数F1 が設定される。また、駆動モータ19の回転数の調整幅Δfも設定される。両者は前記目標時間Tと共にRAM14に格納される。
【0013】
そして前記演算部12は、前記目標時間Tと測定時間tを比較し、T>tの時には駆動モータ19の定常運転周波数をΔf小さくし、T<tならばΔf大きくし、T=tならば現状の定常運転周波数を維持し、この定常運転周波数をもって次の起動時に駆動モータ19を起動させるように構成されている。
【0014】
本実施例における目標時間Tの設定は、検出手段17、マンドレル本体又は送り装置等の実際の設置状態に応じた適切な値に定めることができる。そして、回転速度の制御が小きざみに行なわれるので、コイル材の巻径や加工ラインの作業速度に機敏に対応した適切なコイル材の繰り出しを行うことができる。
【特許文献1】特開平7−033301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のマンドレルの制御では制御開始後に初回の運転信号が入力されたとき、駆動モータ19の回転数は保持部5aの巻き径に関係なく、予め設定された最高回転周波数F1まで上昇していた。
【0016】
このため、保持部5aの巻き径が大きい場合は、この大きな巻き径と最高回転周波数の駆動でマンドレルの繰り出し・巻き取り量が過多となり次のような問題があった。
まずマンドレルをコイル材の繰り出しに用いて起動した場合、コイル材のループがループセンサ4の下限検出センサに接触して停止信号が出力されてからマンドレルが回転停止するまでに材料が床に触れてしまうことがあった。また、巻取り使用時にはループセンサ4の上限の停止側検出センサにコイル材のループが接触して停止信号が出力されてからマンドレルが回転停止するまでに材料が突っ張ってしまうことがあった。
【0017】
また駆動モータの回転数の増加・減少率は設定が一種類であり、マンドレルの巻き径が小さいときも一定量の繰り出しができる駆動モータの回転数の増加・減少率を採用する必要があった。そのため保持部5aのコイル材の巻径が大きいときは運転条件に余裕があるにも拘らず、必要以上の加減速と必要以上の最高回転数で運転していた。
【0018】
そのため上述の不具合が発生しない場合でもコイル材の慣性モーメントが大きいことも影響してコイル材がゆるんで巻き乱れる事態(バラケ)が生じたり、コイル材に傷が付くことがあった。駆動モータにも必要以上に負荷がかかる問題もあった。
【0019】
また巻取り使用時に巻き径が大きくなった段階で、ラインの非常停止や、寸動運転などが発生して、回転数制御が初期値に戻ってしまうことがある。速度設定を巻き径に合わせて設定しなければ、上限の停止側検出センサで材料が突っ張ってしまい、連続運転に入ることが不可能となってしまう問題もあった。
【0020】
更に近年プレスラインは高速化が進み、これに伴いマンドレルからのコイル材の繰り出し能力もより高いものが求められている。ここで装置の使用者は都度の運転条件の調整を嫌い、最大回転数に設定したまま装置を使用することが多いため以上の問題はより深刻になっていた。
【0021】
本発明は、マンドレルの起動時に駆動モータの最適な定常運転時の回転数と回転数の増加・減少率で駆動し、上述のコイル材の突っ張り・床への接触・バラケ等の問題を回避するマンドレルの制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るマンドレルの制御装置は、駆動モータの回動駆動により、加工機に送り手段を介して供給されるコイル材を供給量に応じて繰り出すマンドレルの制御装置であって、コイル材のループの上限位置への到達及び当該上限位置からの離間を検出し、それぞれON信号、OFF信号を出力する第1の検出部と、前記コイル材のループの下限位置への到達を検出し停止信号を出力する第2の検出部を有し、前記ON信号によりマンドレルの駆動モータの回転数を上昇させ、前記OFF信号により前記駆動モータの回転数を当該OFF信号を受ける直前の回転数に維持し、前記停止信号により前記駆動モータの回転数を下降させる制御が、マンドレルの起動後、少なくとも一回目の動作時に可能な制御部を設けたことを特徴としている。
【0023】
本発明に係るマンドレルの制御装置は駆動モータの回動駆動により、加工機から排出されるコイル材を巻取るマンドレルの制御装置であって、コイル材のループの下限位置への到達及び当該下限位置からの離間を検出し、それぞれON信号、OFF信号を出力する第1の検出部と、前記コイル材のループの上限位置への到達を検出し停止信号を出力する第2の検出部を有し、前記ON信号によりマンドレルの駆動モータの回転数を上昇させ、前記OFF信号により前記駆動モータの回転数を当該OFF信号を受ける直前の回転数に維持し、前記停止信号により前記駆動モータの回転数を下降させる制御が、マンドレルの起動後、少なくとも一回目の動作時に可能な制御部を設けたことを特徴としている。
【0024】
本発明に係るマンドレルの制御装置は更に前記駆動モータの運転周波数範囲を複数の周波数領域として設定する周波数領域設定部と、前記駆動モータの定常運転周波数を設定する周波数設定部と、前記周波数設定領域に対応した運転周波数の変化率を設定する変化率設定部とを有することを特徴としている。
【0025】
本発明に係るマンドレルの制御装置は更に前記第1の検出部が一端が回転支持されたスイングバー又弾性部材に支持された接触型センサ又は感圧スイッチ、若しくは非接触型ラインセンサにより構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によればマンドレルの起動直後の駆動モータの定常運転回転数を最適に制御し、駆動モータの加減速を不必要に急激に行なう事態を回避することで、特にコイル材の巻き径が大きいときにコイル材の突っ張り・床への接触・バラケ等を防止する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の一実施例であるマンドレルの制御装置10を図1及び図2を参照して説明する。なお、マンドレルとしては、図6に示したようなプレス加工ラインにおけるアンコイラを例にとる。本実施例において、マンドレル及びループセンサ4以外の構成部分は図6を参照して説明した従来例と同一である。
【0028】
ループセンサ4はコイル材が上限センサに接触した際に起動信号のONを出力するのに加え、コイル材が上限センサから離間した際に起動信号のOFFを出力する。
【0029】
また本実施例のマンドレルは、コイル材を扱うための機構的な構成については従来と同一であるが、検出部からの信号を受けて駆動モータを制御する制御部の構成が従来と異なる。
【0030】
図1に示すように、制御部11は図7に示す従来技術と比較し、設定スイッチ15、RAM14、演算部12の構成が異なる。
【0031】
設定スイッチ15は図1分図(b)に示すように従来技術の目標時間T、調整幅Δfに加えてマンドレルの駆動モータの回転数範囲を複数の領域に定義する周波数領域F、駆動モータの加減速の度合いを定義する周波数変化率Rが設定される。また従来技術の駆動モータ19の最高回転周波数F1に代わりマンドレルの駆動モータの定常運転時の周波数を定義する定常運転周波数Rstが設定される。
【0032】
RAM14には図1分図(c)に示すように従来技術の調整幅Δfに加えてマンドレルの駆動モータの定常運転周波数Rstと周波数領域F毎に目標時間と駆動モータの周波数変化率が格納される。図1分図(c)では周波数領域が高回転領域(F(H))、中間回転領域(F(M))、低回転領域(F(L))の三領域として格納され、それぞれの周波数領域に対して目標時間と駆動モータの周波数変化率が格納される。また図示しないが中間回転領域(F(M))、低回転領域(F(L))はその上限値が格納される。
【0033】
図2に周波数領域毎のマンドレルの駆動モータ運転時の回転数の変化を示す。Rstが高回転領域(F(H))の場合を太い実線及び破線、その他の場合を一点鎖線で示す。ここではループセンサ4の上限位置検出スイッチの起動信号のON時点を揃えて表示してある。いずれの場合もモータの回転周波数は一定の比率で上昇し、所定の周波数に達した時点で一定となり、ループセンサ4の下限位置検出スイッチのON(停止信号)時点から一定の比率で減少する。
【0034】
各周波数領域F毎にモータの回転周波数上昇率が異なっており、図2では高回転領域に対する周波数上昇率(Rinc(H))、中間回転領域に対する周波数上昇率(Rinc(M))、低回転領域に対する周波数上昇率(Rinc(L))を比較するとRinc(H)>Rinc(M)>Rinc(L)である。
【0035】
モータの回転周波数変化率R、定常運転周波数Rstは装置起動時は設定スイッチより入力された定常運転周波数Rstと周波数領域の基準値たる周波数領域の上限値との比較演算により決定され、2回目以降の起動時は前回動作時の定常運転周波数Rstに所定の演算を行った値と周波数領域の上限値との比較演算により決定される。
【0036】
図2の太線で示す場合は設定スイッチより入力された定常運転周波数(Rst)は中間回転領域の上限値より高いため高回転領域に対する周波数上昇率(Rinc(H))で駆動モータ19の回転数は上昇する。駆動モータ19の運転周波数がRstに到達する前に起動信号のOFFを検出したときは駆動モータ19は運転周波数Rst'で定常運転に入る。そして停止信号を検出すると周波数減少率(Rdec(H))で減速する。
【0037】
制御部11による駆動モータ19の制御作用について、図3及び図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
図3及び図4に示す制御処理は演算部12がRAM14内のコンピュータプログラムを実行することにより行なわれる。
【0039】
図3に示すように、ステップS1で定常運転周波数(Rst)が読み込まれる。Rstは起動時は設定スイッチより入力された値である。Rstが読み込まれたならばステップS2で低回転領域(F(L))の上限値より小さいかチェックされる。大きければ制御はステップS4へ進む。小さければステップS3で駆動モータの周波数上昇率をRinc(L)、周波数減少率をRdec(L)、目標時間をT(L)に設定する。
【0040】
ステップS4では中間回転領域(F(M))の上限値より小さいかチェックされる。小さければステップS5で駆動モータの周波数上昇率をRinc(M)、周波数減少率をRdec(M)、目標時間をT(M)に設定する。大きければ制御はステップS6で駆動モータの周波数上昇率をRinc(H)、周波数減少率をRdec(H)、目標時間をT(H)に設定する。
【0041】
図6で送り装置3が動作を開始すると、コイル材のループが減り、コイル材が上側のループセンサ4に接触し、これによって起動信号ONが出力される。ステップS7で起動信号ONの検出を行い、ステップS8でON信号が入力されたかチェックし、ON信号を検出したときに駆動モータ19が起動すると同時にステップS9でタイマーが計測を開始する。
【0042】
駆動モータ19はステップS10で一定の回転数上昇率(例えばRinc(H))で運転する。コイル材のループが増えてコイル材が上側のループセンサ4から離間すると起動信号のOFFが出力される。この間ステップS11で起動信号OFFを検出し、ステップS12でOFF信号が入力されたかチェックし、OFF信号を検出したときにステップS13でその周波数を維持して運転を継続するとともに、その運転周波数をステップS14で検出しRAM14に定常運転周波数Rstとして記憶する。
【0043】
送り装置3の起動後、駆動モータ19の回転によって繰り出されたコイル材が下側のループセンサ4に接触すると停止信号が出力される。ステップS15で停止信号の検出を行い、ステップS16で停止信号が入力されたかチェックし、停止信号を検出したときにステップS17でタイマーが計測を終了し測定時間tを算出する。これと同時に駆動モータ19はステップ18で一定の回転数減少率(例えばRdec(H))運転に移行する。
【0044】
ステップS19で運転周波数を検出し、ステップS20でその運転周波数がゼロと一致するかチェックする。一致したときはステップS21で駆動モータ19の運転を停止する。
【0045】
ステップS22で当該運転時の目標時間Tより測定時間tが小さいかチェックされる。小さくなければ制御はステップS24へ進む。小さければステップS23でRAM14に記憶された定常運転周波数Rstから調整幅Δfを引いた値を新たなRstとして算出しRAM14に記憶させる。
【0046】
ステップS24では目標時間Tと測定時間tが等しいかチェックされる。等しければステップS25でRAM14に記憶された定常運転周波数Rstをそのまま維持する。等しくなければステップS26でRAM14に記憶された定常運転周波数Rstに調整幅Δfを加えた値を新たなRstとして算出しRAM14に記憶させる。ここでRAM14に記憶されたRstに基づいて次回の駆動モータ19の起動時に駆動モータ19の回転数上昇率Rinc、目標時間T等が決定される。
【0047】
図4に2回目以降の動作のフローチャートを示す。ここではステップS11、S12のみ図3と異なる。図4ではステップS10で駆動モータ19が運転を開始し、ステップS11で駆動モータ19の運転周波数を検出する。そしてステップS12で運転周波数がRAM14に記憶されたRstと一致するか判断し、一致するとステップS13で運転周波数一定運転に移行する。
【実施例1】
【0048】
図6に示したようなプレス加工ラインにおけるアンコイラの動作中における駆動モータ19の回転数推移の概念を図6・図2に沿ってに示す。保持部5aの外径は800mm程度であり、内径は200mm程度、コイル材の幅は100mm程度である。起動時は保持部5aへのコイル材の巻径が大きいが定常運転周波数(Rst)は高回転領域(F(H))の値(50Hz)が入力され、駆動モータ19は高回転領域(F(H))の周波数上昇率Rinc(H)=100Hz/sec等の条件を設定したとする。
【0049】
図5に上側のループセンサ4の一例を示し、分図(a)に正面図、(b)に側面図を示す。ループセンサ4はベース21に垂設されたスタンド部22を有し、当該スタンド部22には当該スタンド部22に平行にガイドレール23が固定される。当該ガイドレール23には回転軸24がその軸方向をスタンド部22及びガイドレール23の長軸方向に垂直として、ガイドレールに沿って摺動・固定自在に組み付けられる。前記回転軸24は略L字型の上限検出バー25のアーム部26を回転自在に支持する。また前記回転軸には上限検出バーの旋回によりON信号を出力する感圧スイッチ27が固定される。
【0050】
図6で送り装置3が動作を開始すると、コイル材のループが減ってコイル材が上限検出バー25に接触する。上限検出バー25がコイル材との接触により回転軸24を中心に旋回すると前記感圧スイッチ26は起動信号のONを出力し、これを受けた制御装置10により駆動モータ19が起動する。
【0051】
駆動モータ19はRinc(H)で回転数が上昇するが当初は回転数は小さくコイル材の繰り出し量はあまり多くない。その間コイル材がプレス機に供給されるためコイル材のループはより小さくなり、分図(b)に示すように上限検出バー25をより旋回させ、この間感圧スイッチ26はON信号を出力し続ける。
【0052】
駆動モータ19の回転数が高くなるとコイル材がプレス機に供給される量よりマンドレルからのコイル材の繰り出し量が多くなり上限検出バー25は旋回量が小さくなる。そしてコイル材が上限検出バー25から離間して上限検出バー25が初期の位置に戻り感圧スイッチ26がON信号の出力を止めると、これを受けた制御装置10により駆動モータ19は当初設定した定常運転周波数(Rst)に拘らず定常運転に移行する。かかる制御により特にコイル材の巻き径が大きい場合にコイル材のバラケ、コイル材の床への接触等の問題を効果的に回避できる。
【0053】
送り装置3の送り出し量より駆動モータ19の回転によって繰り出されたコイル材が多くなるとコイル材のループは大きくなる。コイル材がループセンサ4の下限検出バー28に接触すると停止信号が出力され、これを受けた制御装置10により駆動モータ19の回転周波数が一定の割合(例えばRdec(H))で減少しやがて停止する。これ以降の動作は図3及び図4に示すフローチャートに従う。
【0054】
上記実施例では定常運転周波数(Rst)は高回転領域(F(H))の値を入力した場合について示したが、定常運転周波数(Rst)は中間回転領域(F(M))、低回転領域(F(L))の値を入力しても良い。この場合はそれぞれの回転領域に応じた回転数上昇率で駆動モータ19の回転数は上昇するのでバラケ等の不具合の発生をより回避しやすい。
【0055】
上記実施形態ではコイル材を繰り出す場合について説明しているが、マンドレルをコイル材の巻き取りに用いる場合も同様の制御が適用できる。巻き取りの場合はループセンサの下限へのコイル材のループの接触により起動信号ONを検出し、ループセンサの下限からのコイル材のループの離間により起動信号OFFを検出する。ループセンサの上限で停止信号を検出する。
巻き取り時の材料の突っ張りは加工後の製品に変形やキズなど重大なダメージを与えてしまい、一個のコイル全てが不良とみなされることもある。これらをなくすことで加工ラインの信頼性を向上させる点で特に有効である。
【0056】
また上記実施形態ではループセンサとして一端が回転支持された検出バーと感圧スイッチを組み合せた例を示したが、ループセンサはこれに限るものではない。導電性のコイル材と検出バーと電源・検出部を用いてこれらが電気的閉回路を形成するように回路を構成し、導電性のコイル材と検出バーの通電により接触を判断する接触センサを用いたり、感圧センサをつるまきバネ等の弾性部材で支持したり、非接触型ラインセンサ等により構成することもできる。
要はコイル材ループの所定位置への到達、離間を検出できるものであれば良く、コイル材の繰り出しに用いる場合はこの間にコイル材が突っ張ってもコイル材に過剰な張力を与えないような逃げ機構があればよい。
【0057】
また上記実施形態では駆動モータ19の運転周波数領域を3領域としているが、運転周波数領域の分割はこれに限るものではなくより多くの周波数領域・運転条件を定義してもよい。実施例に示す具体的な値は例示でありこれに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る制御装置のブロック図である。
【図2】本発明に係る制御の駆動モータの回転数の変化を示す図である。
【図3】本発明に係る制御処理の起動直後の流れの説明図である。
【図4】本発明に係る制御処理の2回目以降の流れの説明図である。
【図5】本発明に係るループセンサの一例である。
【図6】従来のプレスラインの一例を示す図である。
【図7】従来の制御装置のブロック図である。
【図8】従来の制御の駆動モータの回転数の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 加工機としてのプレス機
3 送り手段としての送り装置
5 マンドレル
5b 制御装置
6 コイル材
10 本発明に係る制御装置
11 時間測定部及び時間設定部をかねる制御部
17 検出部
19 駆動モータ
21 ベース
22 スタンド部
23 ガイドレール
24 回転軸
25 上限検出バー
26 アーム部
27 感圧スイッチ
28 下限検出バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータの回動駆動により、加工機に送り手段を介して供給されるコイル材を供給量に応じて繰り出すマンドレルの制御装置であって、
コイル材のループの上限位置への到達及び当該上限位置からの離間を検出し、それぞれON信号、OFF信号を出力する第1の検出部と、前記コイル材のループの下限位置への到達を検出し停止信号を出力する第2の検出部を有し、
前記ON信号によりマンドレルの駆動モータの回転数を上昇させ、前記OFF信号により前記駆動モータの回転数を当該OFF信号を受ける直前の回転数に維持し、
前記停止信号により前記駆動モータの回転数を下降させる制御が、
マンドレルの起動後、少なくとも一回目の動作時に可能な制御部を設けたことを特徴とするマンドレルの制御装置。
【請求項2】
駆動モータの回動駆動により、加工機から排出されるコイル材を巻取るマンドレルの制御装置であって、
コイル材のループの下限位置への到達及び当該下限位置からの離間を検出し、それぞれON信号、OFF信号を出力する第1の検出部と、前記コイル材のループの上限位置への到達を検出し停止信号を出力する第2の検出部を有し、
前記ON信号によりマンドレルの駆動モータの回転数を上昇させ、前記OFF信号により前記駆動モータの回転数を当該OFF信号を受ける直前の回転数に維持し、
前記停止信号により前記駆動モータの回転数を下降させる制御が、
マンドレルの起動後、少なくとも一回目の動作時に可能な制御部を設けたことを特徴とするマンドレルの制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は前記駆動モータの運転周波数範囲を複数の周波数領域として設定する周波数領域設定部と、
前記駆動モータの定常運転周波数を設定する周波数設定部と、
前記周波数設定領域に対応した運転周波数の変化率を設定する変化率設定部とを有することを特徴とする請求項1又は2記載のマンドレルの制御装置。
【請求項4】
前記第1の検出部が一端が回転支持された検出バー又は弾性部材に支持された接触型センサ又は感圧センサ、若しくは非接触型ラインセンサにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至3記載のマンドレルの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−1701(P2007−1701A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182825(P2005−182825)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000201814)双葉電子工業株式会社 (201)
【Fターム(参考)】