説明

マンノースプロモーターを含むベクター及びマンノースプロモーター

本発明は、バシラス・サチリスのマンノースオペロンのマンノースで誘導可能なプロモーターを含む原核性の宿主において発現可能なベクター及び核酸配列であって、前記ベクター及び核酸配列のそれぞれは、ポリペプチドをコードする異種の核酸配列を、特に高細胞密度発酵において発現させるための、宿主細胞を形質転換するために好適に使用できるベクター及び核酸配列に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば組み換えタンパク質などのポリペプチドをコードする核酸の異種発現のための、マンノースで誘導可能なプロモーターを含む原核性の宿主細胞において発現可能なベクターに関する。
【0002】
特に、本発明は、宿主における異種発現のための新規のベクターであって、前記宿主に対して異種である核酸配列を含む転写ユニットに作動的に連結されたマンノースオペロンのプロモーター領域を含み、前記核酸配列の発現が前記マンノースオペロンのプロモーター領域によって制御されている前記ベクターに関する。更に、本発明は、これらのベクターを、例えば組み換えタンパク質などのポリペプチドをコードする核酸の異種発現のために用いる使用に関する。
【0003】
原核性の系における、例えばポリペプチドをコードする核酸(構造遺伝子)の異種発現のために多くの系が記載されている。このために、宿主は、関心が持たれる構造遺伝子の核酸配列を含み、該核酸配列が構造遺伝子を転写させうる核酸配列であるプロモーターに作動的に連結されているベクターで形質転換される。好適な誘導によって、該プロモーターは活性化され、構造遺伝子の転写を可能にする。誘導は、ネガティブな制御下又はポジティブな制御下であってよい。
【0004】
ネガティブな制御の誘導においては、リプレッサーが前記プロモーターに結合されて、構造遺伝子の転写を妨げる。好適なインデューサーが存在するのであれば、リプレッサーは不活性化されて、転写が許容される。
【0005】
ポジティブな制御の誘導においては、プロモーターは、アクチベーターが結合されると活性化され、その際に、該アクチベーターのプロモーターへの結合は、好適なインデューサーによって媒介される。
【0006】
典型的なインデューサーは、原核性の宿主が代謝のために必要な基質、例えば種々のタイプの糖類であってよい。
【0007】
本発明は、好適な基質、すなわちインデューサーの存在下に、アクチベーターが、前記プロモーターに作動可能に連結された遺伝子の転写を開始するプロモーターに結合する、ポジティブに誘導可能な系に関する。
【0008】
今までに、原核性の宿主系における殆どの異種遺伝子発現系は、限られた組の細菌性プロモーターにもっぱら頼っていた。結果的に、インデューサーとして使用できる基質の数も同様に限られている。
【0009】
更に、異種発現系の収率は、利用可能な形質転換された原核性の宿主の数に依存する。このように、高い細胞密度にまで増殖できる原核性の宿主系、つまり細胞分裂時にベクターを脱着することなく迅速な増殖を可能にする原核性の宿主系が必要とされる。
【0010】
発明の要旨
本発明によれば、前記課題と以下の詳細な説明から明らかな課題の他の課題は、前記宿主に対して異種である核酸配列を含む転写ユニットに作動的に連結されたマンノースオペロンのプロモーター領域を含み、前記核酸配列の発現が、前記のマンノースオペロンのプロモーター領域によって制御される新規ベクターを提供することによって解決された。
【0011】
また、前記の新規のベクターを原核性の宿主における核酸配列の調節された異種発現のために用いる使用;マンノースオペロンのプロモーター領域を含む、宿主において発現可能な単離され精製された核酸配列;前記のベクター又は前記の単離され精製された核酸配列で形質転換された原核性の宿主;前記のベクター又は前記の単離され精製された核酸配列を使用して宿主においてポリペプチドを産生する方法;並びに前記のベクター又は前記の単離され精製された核酸配列で形質転換された原核性の宿主を発酵において、特に高い細胞密度の発酵において用いる使用も提供される。
【0012】
他の課題及び利点は、当業者には、以下の詳細な説明の検討から、関連する図面及び付属の特許請求の範囲を参照して明らかになる。
【0013】
図面の簡単な説明
以下の図面に以下のことが示されている。
【0014】
図1には、manPプロモーターの転写開始部位のマッピングにおいて使用されるB.サチリスからの核酸配列が示されており、その際、アデニンヌクレオチドでの転写開始部位は、強調表示され、推定−35ボックスと推定−10ボックスは、イタリック体で表示され、manRの終わりとlys遺伝子の開始は、矢印によって印され、制限部位BglII、XbaI、AflII及びNdeIには下線が引かれている。
【0015】
図2には、manRプロモーターを含むプロモーター領域の核酸配列が示されており、その際、グアニンヌクレオチドでの転写開始部位は、強調表示され、推定−10ボックスと推定−35ボックスは、イタリック体で表示され、manRの開始は、矢印によって印され、HindIII制限部位と推定cre配列には下線が引かれている。
【0016】
図3には、それぞれpSUN291、pSUN384.1及びpSUN385.2に含まれるmanRプロモーターのプロモーター領域を含むB.サチリスから得られた核酸配列が示されており、その際、lacZの開始は、矢印によって示されており、制限部位には下線が引かれている。
【0017】
図4には、本発明による発現ベクターpSUN279.2のプラスミドマップが示されている。
【0018】
図5には、本発明によるプラスミドpSUN279.2、pSUN284.1及びpSUN291をそれぞれ含むB.サチリス3NAのβ−ガラクトシダーゼ活性が示されている。
【0019】
図6には、manRのC末端を含むB.サチリス由来のmanPプロモーターのプロモーター領域を含むB.サチリスから得られる核酸配列が示されており、その際、manRとmanPとの間の遺伝子間領域は、ここではレポーター遺伝子lacZによって置き換えられており、転写開始部位、推定−35ボックスと推定−10ボックスは、太字で表示され、manRの終わりとlacZの開始は、矢印によって印され、制限部位には下線が引かれている。
【0020】
図7には、プラスミドpSUN279.2と、図6に示される種々の長さの核酸配列の断片を含む更なるプラスミドとを含んだB.サチリス3NAのβ−ガラクトシダーゼ活性が示されている。
【0021】
図8には、図3に示される核酸配列を有するベクターpSUN291、pSUN384.1及びpSUN345.2を含むB.サチリス3NAのβ−ガラクトシダーゼ活性が示されている。
【0022】
図9には、本発明による発現ベクターpMW168.1のプラスミドマップが示されている。
【0023】
図10には、B.サチリス3NA中のpMW168.1のプラスミド安定性試験の結果に関する図が示されており、その際、該プラスミドを含んだ細胞のパーセント割合が、世代数にわたってプロットされている。
【0024】
図11〜14には、発酵行程1〜4の期間にわたってプロットされた乾燥バイオマス濃度を対数表示した図と、発酵行程1〜4の発酵の間にわたってプロットされた蛍光シグナル(RFU)に関する図が示されている。
【0025】
図15及び16には、発酵行程5及び6の発酵の期間にわたってプロットされた蛍光シグナルの図が示されている。
【0026】
図17には、実験4の(a)プラスミドpMW168.1の構築に従って得られたプロモーター開始の概略構造が示されている。
【0027】
図18には、プラスミドpMW168.1の構築のフローチャートが示されている。
【0028】
図19には、SDSページが示されている。
【0029】
本発明の詳細な説明
本願で使用される場合に、以下の定義は、本発明の理解を容易にするために提供される。
【0030】
"宿主中で発現可能なベクター"又は"発現ベクター"は、宿主細胞中で特定の核酸配列の転写を可能にする一連の特定のポリ核酸エレメントを用いて組み換えにより又は合成により作成されたポリ核酸構築物である。一般に、このベクターには、転写されるべき特定の核酸配列を、プロモーターに作動的に連結されて含む転写ユニットが含まれる。宿主中で発現可能なベクターは、例えば自律複製又は自己複製をするプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス又はレトロウイルスであってよい。
【0031】
用語"宿主"、"宿主細胞"及び"組み換え宿主細胞"は、本発明の1もしくはそれより多くのベクター又は単離され精製された核酸配列が導入された原核性の細胞を示すために本願では互換的に使用される。かかる用語は、特定の対象細胞のみならず、かかる細胞の後代又は潜在的後代をも指すものと解される。ある程度の改変は、後の世代において、突然変異又は環境による影響のいずれかにより生ずることがあるので、かかる後代は、事実上、親細胞と同一でないかもしれないが、依然として、本願で使用される用語の範囲内に含まれる。
【0032】
用語"含む(comprise)"は、一般に、包含する(include)の意味で使用される。つまり、1つ以上の更なる特徴又は要素の存在を許容する。
【0033】
本願で使用される"プロモーター"は、転写ユニットの発現を制御する核酸配列を指す。"プロモーター領域"は、細胞におけるRNAポリメラーゼの結合を可能にし、かつ下流(3′方向)のコーディング配列の転写を開始する調節領域である。プロモーター領域内に、RNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメイン、例えば推定−35ボックス及びプリブナウボックス(−10ボックス)が見出される。更に、プロモーター領域は、転写開始部位と、調節タンパク質のための結合部位を含んでよい。
【0034】
"マンノースオペロン"は、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)のマンノースオペロンを指す。
【0035】
マンノースオペロンにおいて3つの遺伝子が同定された(Kunst F.N.et al.,"The complete genome sequence of gram−positive bacterium Bacillus subtilis".Nature 390,第249頁〜第256頁(1997))。
【0036】
第一の遺伝子のmanPは、フルクトースパーミアーゼファミリーに属するマンノース特異的酵素成分(トランスポーター)をコードする。第二の遺伝子のmanAは、マンノース−6−ホスフェートイソメラーゼをコードするが、一方で、第三の遺伝子のyjdFの機能は知られていない。上流で、前記の3つの遺伝子の同じ方向において、ManR、つまりマンノースオペロンのアクチベーターをコードする調節遺伝子であるmanRが位置している。
【0037】
3つの遺伝子からなるマンノースオペロンmanP−manA−yjdF(以下にまとめて"manP"と呼ぶ)は、manPプロモーターの制御下にあり、そのプロモーター自体は、ポジティブに調節されている。もう一つのプロモーターのmanRプロモーターは、manP−プロモーターのマンノース依存性誘導のために必須のmanRの発現を担っている。
【0038】
manRプロモーター領域は、更に、manR遺伝子のカタボライト調節タンパク質結合部位(カタボライト応答エレメント(cre))を含む。
【0039】
"cre配列"は、異化遺伝子の上流(5′方向)に位置する核酸配列を指す。前記のcre配列は、カタボライト制御タンパク質(CCP)を結合し、炭素カタボライト抑制(CCR)における異化遺伝子の発現を妨げる。
【0040】
"マンノースオペロンのプロモーター領域"とは、manPの発現と、cre配列を伴う又は伴わないmanRの発現を調節するプロモーター領域を意味する。
【0041】
本願で呼称される"manPプロモーター"は、少なくとも、−35領域、プリブナウボックス及びManR結合部位を含む。
【0042】
本願で呼称される"manRプロモーター"は、少なくとも、推定−35領域、プリブナウボックス、ManR結合部位及び場合によりcre配列を含む。
【0043】
D−マンノースは"マンノース"とも呼ばれ、それはグルコースの2−エピマーであって、マンナン多糖類及びヘテロマンナン多糖類、糖タンパク質類並びに多くの複合多糖類において存在する。
【0044】
"CcpA"は、"カタボライト制御タンパク質A"を意味し、それはグローバル調節タンパク質であって、幾つかの異化代謝オペロンを活性化又は抑制することができる。マンノースオペロンの場合に、CcpAは、cre配列への結合によって抑制の役割を担う。
【0045】
"エンハンサー"は、転写ユニットのアイデンティティー、該配列の転写ユニットに対する位置又は該配列の方向とは無関係に、転写ユニットの転写の増強作用をもたらす核酸配列である。本発明のベクターは、場合によりエンハンサーを含んでよい。
【0046】
本願で使用される"転写ユニット"は、一般に単独のRNA分子へと転写される核酸配列を指す。該転写ユニットは、1つの遺伝子(モノシストロン性)又は機能的に関連したポリペプチド分子をコードする2つの遺伝子(ジシストロン性)もしくはそれより多くの遺伝子(ポリシストロン性)を含んでよい。
【0047】
核酸配列は、それが別の核酸配列と機能的な関係に位置している場合に、"作動可能に連結されている"とする。例えば、プロモーターがコーディング配列へと作動可能に連結されているというのは、前記プロモーターが前記配列の転写に影響を及ぼす場合であり、又はリボソーム結合部位などの転写開始領域が、例えばポリペプチドをコードする核酸配列へと作動可能に連結されているというのは、前記プロモーターが前記ポリペプチドの翻訳を促進するように配置されている場合である。連結は、適当な制限部位でのライゲーションによって達成できる。かかる部位が存在しなければ、合成型のオリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーは、通例に従って使用される。
【0048】
本発明で呼称される"核酸"もしくは"核酸配列"又は"単離され精製された核酸又は核酸配列"は、DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッドであってよい。核酸又は核酸配列がベクター上に位置している場合には、それは通常はDNAである。本願で呼称されるDNAは、例えば二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖DNAであって一方のもしくは両方の鎖が2つ以上の断片から構成されているもの、二本鎖DNAであって一方のもしくは両方の鎖が中断されていないホスホジエステル骨格を有するもの、1つ以上の一本鎖部分と1つ以上の二本鎖部分とを含むDNA、二本鎖DNAであってそれらのDNA鎖が完全に相補的であるもの、二本鎖DNAであってそれらのDNA鎖が部分的にのみ相補的であるもの、環状DNA、共有結合的に閉じたDNA、鎖状DNA、共有結合的に架橋されたDNA、cDNA、化学合成されたDNA、半合成DNA、生合成DNA、単離されたままのDNA、酵素消化されたDNA、切断されたDNA、標識されたDNA、例えば放射線標識されたDNA及び蛍光色素標識されたDNA、1つ以上の天然起源でない種類の核酸を含むDNAを含んだ任意のポリデオキシヌクレオチド配列であってよい。DNA配列は、標準的な化学的技術によって、例えばリン酸トリエステル法によって又は自動合成法及びPCR法を介して合成することができる。精製され単離されたDNA配列は、酵素的な技術によって製造することもできる。
【0049】
本願で呼称されるRNAは、例えば一本鎖RNA、cRNA、二本鎖RNA、二本鎖RNAであって一方のもしくは両方の鎖が2つ以上の断片から構成されているもの、二本鎖RNAであって一方のもしくは両方の鎖が中断されていないホスホジエステル骨格を有するもの、1つ以上の一本鎖部分と1つ以上の二本鎖部分とを含むRNA、二本鎖RNAであってそれらのRNA鎖が完全に相補的であるもの、二本鎖RNAであってそれらのRNA鎖が部分的にのみ相補的であるもの、共有結合的に架橋されたRNA、酵素消化されたRNA、切断されたRNA、mRNA、化学合成されたRNA、半合成RNA、生合成RNA、単離されたままのRNA、標識されたRNA、例えば放射線標識されたRNA及び蛍光色素標識されたRNA、1つ以上の天然起源でない種類の核酸を含むRNAであってよい。
【0050】
"変異体"又は"配列の変異体"とは、保存的な核酸置換によって参照配列とは異なる核酸配列であって、1つ以上の核酸が同じ特性を有する別のものによって置換されているものを意味する。変異体は、同様に、縮重配列、欠失及び挿入を有する配列を、かかる改変された配列が、参照配列と同じ機能(機能的に等価)を示す限りは含んでいる。
【0051】
本願で使用される場合に、用語"ポリペプチド"、"ペプチド"、"タンパク質"、"ポリペプチド性"及び"ペプチド性"は、複数の一連のアミノ酸残基が隣接する残基のα−アミノ基とカルボキシ基との間でペプチド結合によって他のアミノ酸と連結されたものを示すために互換的に使用される。
【0052】
用語"単離され精製された核酸配列"は、該核酸配列が本発明によるものである状態を指す。前記の核酸配列は、天然に付随している物質、例えばその天然の環境で見出される他の核酸又は調製がインビトロもしくはインビボで行われる組み換え技術によるものである場合には調製環境(例えば細胞培養)で見出される他の核酸を含まないかもしくは本質的に含まない。
【0053】
用語"形質転換"、"形質転換された"又は"宿主細胞中に核酸を導入する"とは、ベクターなどの細胞外核酸が、付随する物質を伴って又は伴わずに、宿主細胞に入る任意のプロセスを示している。用語"形質転換された細胞"又は"形質転換細胞"は、細胞外核酸が導入されて、細胞外核酸を保有する細胞又はその後代を意味する。前記核酸は、その核酸が染色体内組み込み物か染色体外エレメントのいずれかとして複製可能であるように細胞内に導入されてよい。好適な宿主細胞を、例えば発現ベクターで形質転換することは、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、粒子衝撃などのよく知られた方法によって、又は例えばManiatis et al.1982,Molecular Cloning,A laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory又はAusubel et al.1994,Current protocols in molecular biology,John Wiley and Sonsに記載されるリン酸カルシウムに媒介される形質転換などの化学的な方法によって達成できる。
【0054】
"異種の核酸配列"又は"宿主に対して異種の核酸配列"は、宿主にとって異物であるポリペプチドなどの発現産物("異種発現"もしくは"異種産物")を例えばコードする核酸配列、すなわち宿主とは異なるドナーに由来する核酸配列又は宿主にとって異物であるポリペプチドなどの発現産物を例えばコードする化学合成された核酸配列を意味する。前記宿主が特定の原核生物種である場合に、異種の核酸配列は、好ましくは、異なる生物の属もしくは科に、より好ましくは、異なる生物の目もしくは綱に、特に、異なる生物の門(ディビジョン)に、最も特別には、異なる生物のドメイン(エンパイア)に由来する。
【0055】
宿主とは異なるドナーに由来する異種の核酸配列は、それを宿主細胞中へと組み込む前に、前記異種の核酸配列の単一の核酸又は一部の突然変異、挿入、欠失又は置換によって、改変された配列が参照配列と同じ機能を示す(機能的に等価である)限りは改変することができる。本願で呼称される異種の核酸配列は、同様に、異なる生物のドメイン(エンパイア)に由来する、例えば真核生物に由来する(真核生物由来の)核酸配列、例えばファージディスプレイライブラリーで使用されているヒト抗体を含み、そのうち該核酸配列の単一の核酸又は一部は、原核性の宿主の"コドン使用頻度"に従って改変されている。
【0056】
本発明の意味範囲内では、用語"異種の核酸配列"又は"宿主に対して異種の核酸配列"は、宿主から誘導され該宿主によって本来発現されるポリペプチドをコードする核酸配列であって該核酸配列が本発明のベクター中に挿入されかつ本発明のマンノースオペロンのプロモーター領域の制御下にあるものも含む。
【0057】
"転写開始領域"は、転写開始を促進するシグナル領域であって、シャイン・ダルガーノ配列などのリボソーム結合部位のための配列を含む領域である。
【0058】
一般に、転写開始領域は、転写開始部位の下流に位置しており、発現されるべき遺伝子に作動的に連結されている。
【0059】
"転写終結領域"とは、RNAポリメラーゼが転写の終結を引き起こす配列を指す。該転写終結領域は、通常は、他の隣接遺伝子の望ましくない転写又は他の潜在的なプロモーターからの転写を回避でき、かつmRNAの安定性を高めることができる転写ユニットの部分である。
【0060】
"抗体"とは、抗原による刺激の後に免疫系のB細胞によって産生される血漿タンパク質のクラスを指す。哺乳類(すなわちヒト)抗体は、IgG、IgM、IgA、IgE又はIgDのクラスの免疫グロブリンである。本発明の目的のために使用される用語"抗体"は、それらに制限されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体と、糖尿病、多発性硬化症及びリウマチ様関節炎などの自己免疫疾患において存在する自己抗体と、キメラ抗体とを含む。
【0061】
一態様においては、本発明は、宿主に対して異種である核酸配列を含む転写ユニットに作動的に連結されたマンノースオペロンのプロモーター領域を含み、前記核酸配列の発現が、前記マンノースオペロンのプロモーター領域によって制御されている、宿主において発現可能なベクターを提供する。
【0062】
本発明によるベクターは、好ましくは、自律複製又は自己複製をするプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス又はレトロウイルスである。広範囲の様々な宿主とベクターとの組み合わせを、本発明の核酸配列の発現において使用してよい。
【0063】
通常の発現ベクターは、例えば、染色体の、非染色体の及び/又は合成の核酸配列のセグメントからなってよい。好適なベクターは、特定の宿主範囲を有するベクター、例えばB.サチリス及びE.コリ(E.coli)のそれぞれに特異的なベクターなどのベクター並びに広域宿主のベクター、例えばグラム陽性細菌及びグラム陰性最近に有用なベクターを含む。"低コピー"、"中コピー"並びに"高コピー"のプラスミドを使用することができる。
【0064】
例えば、バシラス・サチリスにおいて、低コピーのプラスミドは、pAMbeta1、中コピーのプラスミドは、pBS72誘導体であり、かつ高コピーのプラスミドは、pUB110である。
【0065】
本発明によれば、マンノースオペロンのプロモーター領域は、manRプロモーター領域とmanPプロモーター領域のそれぞれを含む。
【0066】
manRのC末端と、manRとmanPとの間の遺伝子間領域と、それに続いてレポーター遺伝子としてのリソスタフィン遺伝子lysとを含むB.サチリスからの核酸は、図1に示されている。manPのプロモーター領域を含む本発明の核酸は、好ましくは、図1の核酸配列のbp−80からlysの開始コドンまで(配列番号1)を含み、より好ましくは図1の核酸配列のbp−80からbp−1までを含み、すなわちbp+1の転写開始部位Aの上流(配列番号2)を含む。
【0067】
manRのプロモーター領域と、bp+1の転写開始部位Gと、推定cre配列と、bp+1とmanRとの間の転写開始領域と、manRの部分とを含むB.サチリスからの核酸配列は、図2及び図3において示されており、図3においては、manRはlacZによって置き換えられている。manRのプロモーター領域を含む本発明の核酸配列は、好ましくは、図3の核酸配列のbp−122からlacZの開始コドンまで(配列番号3)を含み、より好ましくは、図3の核酸配列のbp−122からbp+7まで、すなわち推定cre配列まで(配列番号4)を含み、特に、図3の核酸配列のbp−122からbp−1まで、すなわちbp+1の転写開始部位Gの上流(配列番号5)を含む。
【0068】
manP及びmanRのプロモーター領域の両者は、ManRのための結合部位を含む。本発明は、また、配列番号1〜5のいずれかに相補的な配列及びそれらの変異体を含む。
【0069】
本発明において使用されるマンノースオペロンのプロモーター領域、例えばmanPプロモーター領域、manRプロモーター領域(cre配列を有する又は有さない)並びに配列番号1〜5の配列によるプロモーター領域、それらに相補的な配列又はそれらの変異体は、通常は、B.サチリスのマンノースオペロンに由来するか、又は他の原核生物の、バシラス科の生物の機能的に等価なプロモーター領域に由来する。他の原核生物の機能的に等価なプロモーター領域は、D−マンノースによって誘導可能なプロモーター領域、すなわちマンノースの不在時よりもその存在時での発現活性がより高いプロモーター領域を含む。
【0070】
B.サチリスのようなファーミキューテスなどの多くの原核生物において、マンノースオペロンは、D−マンノースの代謝に関与している。B.サチリスは、多くの種々の糖類を炭素源として使用できる。グルコース及びD−マンノースなどのヘキソースは、主に、ホスホエノールピルビン酸:炭水化物ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)を介して吸収される。そのPTSにおいて、それぞれのヘキソースは、同時にリン酸化され、かつ取り込みの間に細胞中に輸送される。特定の糖基質の取り込みと利用は、炭素カタボライト抑制(CCR)の支配下にある。グルコースの存在において、つまりB.サチリスの好ましい糖基質の存在において、他の基質の取り込みと利用のための遺伝子、例えばマンノースオペロンの転写は抑制される。B.サチリスにおけるグルコース依存性CCRのメカニズムは、広く研究され、当業者に知られている(Stuelke J.et al.,"Regulation of carbon catabolism in Bacillus species",in Annu.Rev.Microbiol.54,2000,pages 849−880)。
【0071】
本発明による転写ユニットは、通常は更に、前記の転写ユニットの翻訳の開始点(開始コドン)の上流に翻訳開始領域を含み、該翻訳開始領域は、核酸配列に作動的に連結されている。翻訳開始領域は、通常は、ATG、GTG又はTTGでありうる転写ユニットの翻訳の開始点の直近の上流に位置している。
【0072】
翻訳開始領域は、マンノースオペロンにおけるmanP遺伝子又はmanR遺伝子の転写ユニットの翻訳開始領域であってよい。
【0073】
マンノースオペロンのmanP又はmanRの遺伝子の翻訳開始領域は、部分的に又は完全に、他の翻訳開始領域によって置き換えられていてよい。
【0074】
例えば、tufA(延長因子Tu)及びgsiB(ストレスタンパク質;Juergen et al.,1998,Mol.Gen.Genet.258,538−545)の両者ともB.サチリス由来の翻訳開始領域を使用することができる。
【0075】
tufA及びgsiBのそれぞれの核酸配列は以下に示されており、そこでは、開始コドンは太字で示され、制限部位には下線が引かれており、シャインダルガーノ配列は強調表示されている。
【0076】

【0077】
転写開始領域の好適な選択によって、mRNAの安定性は高められ、それは遺伝子発現における重要な特徴である。mRNAの安定性は、その特定の半減期によって特徴付けられる。
【0078】
転写開始領域に加えて、翻訳の開始点も並びに場合により開始点に続く遺伝子のコドンの数、例えば約5〜6コドンは、例えばtufA及びgsiBのそれぞれの核酸配列で前記に示したように置き換えられていてよい。
【0079】
翻訳開始領域は、更に、本発明の異種核酸配列に作動的に連結されたシグナル配列をコードする配列を含んでよい。該シグナル配列は、通常は、ATG、GTG又はTTGでありうる転写ユニットの翻訳の開始点の直近の上流に位置している。
【0080】
ジシストロン性又はポリシストロン性の転写ユニットが使用される場合に、それぞれのシストロンに作動的に連結された異なる又は同一のシグナル配列を適用できる。好ましくは、かかる場合には異なるシグナル配列が使用される。使用されるシグナル配列は、原核性の又は真核性のシグナル配列であってよい。通常は、原核性のシグナル配列が適用される。
【0081】
本発明の発現ベクターで使用されるべきシグナル配列をコードするDNA配列は、市場で入手できるか、又は化学合成することができる。例えば、シグナル配列は、例えばBeaucage & Caruthers,1981,Tetrahedron LeHs.22,1859−1862に記載される固相ホスホラミダイトトリエステル(trimester)法に従って、Van Devanter et.Al.,Nucleic Acids Res.12:6159−6168(1984)に記載されるようにして合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、本来のアクリルアミドゲル電気泳動か又はアニオン交換HPLCのいずれかによって、Pearson & Reanier,J.Chrom.255:137−149(1983)に記載されるようにして実施することができる。
【0082】
通常は、転写ユニットは、更に、転写終結領域を含む。
【0083】
好ましくは、強力な転写終結領域は、転写ユニットから隣接する(flanking)プラスミド配列への、並びに他のプラスミドプロモーターから転写ユニットへの、該プロモーターによる"読み過ごし"を避けるために使用される。mRNAの更なる安定化は、かかる転写終結領域の存在で観察された。
【0084】
強力な転写終結領域の好適な一例は、B.サチリス168由来のtufAの3′領域からの核酸配列5′−CGAGACCCCTGTGGGTCTCG−3′を有し、それは市販されている。
【0085】
本発明による異種核酸配列は、宿主に対して異物である発現産物をコードする。宿主がB.サチリス又はE.コリなどの原核性の種である場合に、関心が持たれる核酸配列は、より好ましくは、ガンマ−プロテオバクテリアのような他のクラスに、例えばブルクホルデリア(Burkholderia)の種などに、特に古細菌などの異なる門に、最も特別には哺乳動物などの真核生物に、特にヒトに由来してよい。しかしながら、該異種の核酸配列は、宿主の"コドン使用頻度"に従って改変してよい。本発明による異種の配列は、通常は、関心が持たれる遺伝子である。関心が持たれる遺伝子は、好ましくは、異種のポリペプチドを、例えば構造タンパク質、調節タンパク質又は治療タンパク質を、又は構造タンパク質、調節タンパク質又は治療タンパク質と他のタンパク質("タグ")、例えば緑色蛍光タンパク質とのN末端融合もしくはC末端融合又は他の融合タンパク質を包括(enclose)している。異種の核酸配列は、同様に、例えばアンチセンスRNAなどのRNAの形態で使用できる転写物をコードしてよい。
【0086】
該タンパク質は、宿主細胞の細胞質もしくはペリプラズム間隙に存在する及び/又は細胞外媒体中に存在する不溶性アグリゲートもしくは可溶性タンパク質として産生されうる。好ましくは、該タンパク質は、宿主細胞のペリプラズム間隙に存在する及び/又は細胞外媒体中に存在する可溶性タンパク質として産生される。
【0087】
関心が持たれる異種のタンパク質は、ヒト由来、哺乳動物由来又は原核生物由来であってよい。他のタンパク質は、微生物病原体由来の、ウイルス性と抗菌性の両方の由来の、及び腫瘍由来の抗原、例えば糖タンパク質及び炭水化物である。他のタンパク質は、キモシン、プロテアーゼ、ポリメラーゼ、デヒドロゲナーゼ、ヌクレアーゼ、グルカナーゼ、オキシダーゼ、α−アミラーゼ、オキシドレダクターゼ、リパーゼ、アミダーゼ、ニトリルヒドラターゼ、エステラーゼ又はニトリラーゼのような酵素である。
【0088】
本発明においては、シグナル配列及び異種の核酸配列が発現ベクター内で配置される順序と距離は様々であってよい。好ましい実施態様においては、シグナル配列は、例えば関心が持たれるポリペプチドをコードする核酸配列の5′側(上流)にある。シグナル配列と、例えば関心が持たれるポリペプチドをコードする核酸配列とは、0個〜約1000個のアミノ酸によって分離されていてよい。好ましい実施態様においては、シグナル配列と、例えば関心が持たれるポリペプチドをコードする核酸配列とは、互いに直接的に隣接している、すなわち0個の核酸によって分離されている。
【0089】
好ましくは、本発明のベクターは、配列番号1〜5の配列のいずれかによる核酸配列、それらに相補的な配列及びそれらの変異体を含む。
【0090】
また、本発明に含まれるのは、本発明によるベクターを、原核性の宿主における核酸配列の調節された異種の発現のために用いる使用である。
【0091】
発現は、好適なインデューサーの添加によって開始される。マンノースオペロンのインデューサーは、マンノース又はマンノースオペロンのmanRプロモーター領域もしくはmanPプロモーター領域を誘導できるその誘導体である。発現は、原核性の宿主に利用できるインデューサーの量によって調節することができる。
【0092】
更にもう一つの態様においては、本発明は、マンノースオペロンのプロモーター領域を含む単離され精製された核酸配列を提供する。好ましくは、前記の単離され精製された核酸配列は、マンノースオペロンのmanPプロモーター及び/又はmanRプロモーターを含む。より好ましくは、前記の単離され精製された核酸配列は、配列番号1〜5のいずれかを含む。マンノースオペロンのプロモーター領域を含む単離され精製された核酸配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列を含む転写ユニットに作動的に連結されていてよく、その際、前記ポリペプチドをコードする核酸配列の発現は、マンノースオペロンのプロモーター領域の制御下にある。
【0093】
本発明による単離され精製された核酸配列は、調節遺伝子manRの完全な又は部分的な配列を含んでよい。
【0094】
少なくとも、manRプロモーターの単離され精製された核酸配列は、cre配列を含む。
【0095】
本発明の単離され精製された核酸配列は、標準的なPCRプロトコールに従って、当業者によく知られた方法に従って単離することができる。前記の精製された単離されたDNA配列は、更に、核酸配列によりコードされる産物の発現に通常使用される当該技術分野で公知の1つ以上の調節配列、例えばエンハンサーを含んでよい。
【0096】
本発明のベクター又は本発明の単離され精製された核酸配列で効果的にかつ安定的に形質転換された宿主細胞を選択するために、選択可能なマーカー(抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を、関心が持たれる核酸配列と一緒に宿主細胞中に導入することができる。選択可能なマーカーをコードする遺伝子は、前記ベクター上に又は単離された精製された核酸配列上に位置してよく、又は場合により分かれた形で、例えば別個のベクター上で同時導入してよい。スペクチノマイシン、ハイグロマイシン、アンピシリン及びテトラサイクリンなどの抗生物質に対する耐性を付与するものを含んだ様々な選択可能なマーカーを使用することができる。抗生物質の量は、選択条件をもたらすのに望ましいように適合することができる。通常は、1種の選択可能なマーカーが使用される。
【0097】
該ベクターがシャトルベクターである場合に、複数の好適な宿主に共通のマーカーを使用してよい。例えば、前記のベクターが、E.コリとB.サチリスの両方で複製可能なシャトルベクターである場合に、エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)のスペクチノマイシン−アデニルトランスフェラーゼをコードするスペクチノマイシンに対する耐性を付与する耐性マーカー遺伝子を使用することができる。
【0098】
同様に、蛍光タンパク質などのレポーター遺伝子は、形質転換の効率を測定するために、関心が持たれる核酸配列と一緒に宿主細胞中に導入することができる。
【0099】
好適なレポーター遺伝子は、例えば増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードする遺伝子及びβ−ガラクトシダーゼをコードするlacZである。両者のレポーター遺伝子は市販されており、かつ広範に使用されている。
【0100】
本発明のもう一つの態様は、本発明のベクターで形質転換された原核性の宿主であって、該ベクターがマンノースオペロンのプロモーター領域を含む宿主を提供することである。好ましくは、前記のベクターは、配列番号1〜5のいずれか、それらに相補的な配列又はそれらの変異体を含む。
【0101】
広範な様々な原核性の宿主細胞は、本発明によるマンノースオペロンのマンノースで誘導可能なプロモーター領域で形質転換するために有用である。これらの宿主は、グラム陽性細胞の菌株、例えばバシラス及びストレプトマイセス又はグラム陰性細胞、例えばE.コリ及びシュードモナスを含んでよい。好ましくは、前記の宿主細胞は、グラム陽性細胞、特にファーミキューテス門のグラム陽性細胞であり、より好ましくは、前記の宿主細胞は、バシラスである。
【0102】
使用できるバシラスは、例えば菌株のB.サチリス、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.ナットウ(B.natto)、B.メガテリウム(B.megaterium)などである。好ましくは、前記の宿主細胞は、B.サチリス、例えばB.サチリス3NA及びB.サチリス168である。
【0103】
使用できるE.コリは、例えば菌株のTG1、W3110、DH1、XL1−Blue及びOrigamiであり、それらは市販されている。
【0104】
好適な宿主細胞は、例えば菌株保存機関、例えばDSMZ(ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)、ブラウンシュバイク、ドイツ)から商業的に入手できる。例えば、バシラスは、バシラス・ジェネティック・ストック・センター(Bacillus Genetic Stock Center)から得ることができる。
【0105】
宿主細胞は、マンノースを代謝できても代謝できなくてもよい。通常はマンノースを取り込み代謝することができるB.サチリスのような宿主細胞は、マンノースの取り込み及び/又は代謝に関連する1つ以上の機能において欠落するように改変されていてよい。マンノースの取り込み及び/又は代謝に関連する1つ以上の機能における欠落は、マンノース−6−ホスフェート−イソメラーゼをコードするmanA遺伝子などのタンパク質をコードする遺伝子の発現を例えば抑制又は遮断することによって達成できる。これは、トランスポゾンにサポートされた突然変異誘発又はノックアウト突然変異などの公知の技術によって行うことができる。
【0106】
通常は、原核性の宿主は、選択されたシグナル配列に相応するものである。例えばバシラスのシグナル配列が使用される場合には、宿主細胞は、通常は、同じバシラス科のメンバーであり、より好ましくは宿主細胞は、バシラス菌株である。
【0107】
好ましくは、ホスホエノールピルビン酸:炭水化物ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)を有する宿主が使用される。特に、PTS系を有する宿主は、バシラス目の、特にバシラス属の、より好ましくはバシラス・サチリス種の微生物又はエンテロバクテリア目の、好ましくはエシェリキア属の、より好ましくはE.コリ種の微生物である。
【0108】
CCRの主要なエレメントは、カタボライト制御タンパク質A(CcpA)であり、それはcre配列、例えば配列番号3及び4の推定cre配列に結合できる。それぞれの遺伝子のCcpA転写の結合状態において、ここではmanRが抑制される。
【0109】
グルコースの不在下で、かつD−マンノースなどのインデューサーの存在下において、CcpAの結合による抑制はなく、かつマンノースオペロンの遺伝子の転写は、マンノースオペロンのプロモーター領域のそれぞれの結合部位に調節タンパク質(ManR)が結合することによって開始される。驚くべきことに、本発明者によって、ManRは、manPプロモーター領域のための調節タンパク質であるのみならず、manRそれ自体のための自己レギュレーターであることが見出された。
【0110】
更に、本発明により、宿主細胞におけるポリペプチドの生産方法であって、
a)ベクターを構築する工程、
b)原核性の宿主を前記のベクターで形質転換する工程、
c)前記ポリペプチドを細胞培養系中で好適な条件下で発現させる工程、
d)前記のポリペプチドを細胞培養系から回収する工程
を含む前記方法が提供される。
【0111】
使用されるベクター並びにその構築及び原核性の宿主の形質転換は前記定義の通りであり、一方で、ベクターに含まれる異種の核酸配列は、ポリペプチドをコードする。
【0112】
細胞培養系として、連続的な又は不連続的な培養、例えば回分培養又は流加培養を、培養管、振盪フラスコ又は細菌発酵器で適用できる。
【0113】
宿主細胞の培養のためには、当該技術分野で公知の慣用の培地、例えば"栄養酵母ブロス培地(nutrient yeast broth medium)"、つまりKortz et al.1995,J.Biotechnol.39,59−65によって記載されるグリセロール含有培地、Kulla et al.,1983,Arch.Microbiol,135,1によって記載される無機塩培地、Wilms et al.,2001,Biotechnol.Bioeng.73,95−103によって記載されるE.コリ発酵用のバッチ培地又はBertram et al,1051,J.Bacteriol.62,293−300によって記載されるLB培地のような複合培地を使用することができる。
【0114】
該培地は、好適な炭素源、例えば糖、例えばグルコースを増殖されるべき宿主細胞のための基質として含む。基質として使用される炭素源は、インデューサーとは異なる。
【0115】
該培地は、適宜、例えば更なる成分、例えば当業者に一般に知られる緩衝剤、塩、ビタミン、アミノ酸、抗生物質又は他の微量栄養素を添加することによって改変してよい。
【0116】
同様に、細胞の培養の間に異なる培地又は培地の組合せ物を使用することができる。
【0117】
好ましくは、基礎培地として使用される培地は、マンノースプロモーター領域のしっかりとした調節を達成するためにインデューサーを含むべきでない。
【0118】
インデューサーの添加は、培養が測定パラメータに達した後に開始することができる。かかる測定パラメータのための例は、培養の細胞濃度を示す光学密度(OD)又はインデューサーとは異なる炭素源の濃度である。
【0119】
例えば、本発明の方法において、インデューサーは、培養が特定の培養系に依存して好適なODに達した後に添加することができる。振盪フラスコにおける回分培養のためには、測定パラメータとしての一般的なOD600は、約0.3以上である。
【0120】
通常は、原核性の宿主の培養の培地中のマンノースなどのインデューサーの量は、約10g/l、好ましくは約5g/l、より好ましくは約2g/lであるように調整される。
【0121】
しかしながら、添加されるインデューサーの量は、特定の発酵法の要求に適合させることができる。
【0122】
インデューサーの添加の様式(誘導レジーム)は、特定の培養系に従って選択することができる。
【0123】
添加の様式によって、宿主細胞の増殖速度及び発現速度は、更に調節することができる。
【0124】
例えば、マンノースは、断続的に又は連続的に、好適な時間にわたって添加することができる。断続的な様式(インパクト誘導)においては、添加は、誘導の時点のみの一回であってよく、又は好適なインターバルで2回あるいは数回でさえあってもよい。好適な様式は培養系に依存し、そして当業者によって簡単に決定することができる。
【0125】
例えば、連続的な様式においては、マンノースは、一定速度で、又は低下する速度/増加する速度で添加してよい。
【0126】
連続的な添加は、更に選択された培養の時間インターバル内であってよく、培養の指数増殖の間の選択された時間インターバル内であってもよい。
【0127】
更に、断続的及び連続的な誘導レジームの組み合わせは、可能である。
【0128】
回分段階における本発明の流加培養の一実施態様によれば、細胞は、20〜30のOD600の細胞密度にまで増殖され、次いで培養は、第一の炭素源とマンノースの混合物の添加をもって供給段階に切り換えられる。供給段階において、第一の炭素源:マンノースの比率は様々であってよく、好適な比率は、3:1〜1:3である。第一の炭素源:マンノースの比率の変動によって、発現速度を制御できる。
【0129】
好適なpH範囲は、例えば6〜8であり、好ましくは7〜7.5であり、好適な培養温度は、10〜40℃、好ましくは30〜37℃である。
【0130】
細胞は、通常は、必要である限りは、発現された産物及び/又はバイオマスの最大量が累積されるまで、好ましくは1時間から20日まで、より好ましくは5時間から3日までインキュベートされる。
【0131】
バイオマスの収量としては、発現された産物の量は、使用される培養系に依存する。
【0132】
振盪フラスコ培養において、通常は、発現される産物は、培養培地1リットルあたり0.5gの量で、本発明のベクターで形質転換された宿主によって産生させることができる。回分様式及び/又は流加様式での発酵器での培養を使用して、発現された産物は、通常は1リットルの発酵ブロスあたり0.5g超の量で、好ましくは1g/l超の量で、より好ましくは1.3g/l超の量で得ることができる。
【0133】
更に、本発明の宿主細胞を使用した本発明の発酵法においては、高い細胞密度は、少なくとも10〜30のOD600で、特に少なくとも50のOD600で、好ましくは約250以上のOD600で、より好ましくは少なくとも500のOD600で、最も好ましくは少なくとも1000のOD600で得ることができる。特に、本発明による流加法においては、50のOD600以上で、1000超のOD600までの細胞密度を得ることができる。
【0134】
説明のために、1のOD600は、平均して、1リットル当たり約0.322gの乾燥質量に相当する。従って、100のOD600値は、1リットル当たり32.2gの乾燥質量に相当し、そして500のOD600は、1リットル当たり161gの乾燥質量に相当する。
【0135】
更に、本発明による宿主細胞は、ベクターの損失なくして高い複製速度を可能にする。
【0136】
宿主細胞における発現の後に、発現された産物、例えば関心が持たれるポリペプチドは、宿主細胞の培養から回収することができる。発現された産物の最大の収率を得るために、それらの細胞は、通常は、培養の終わりに収穫し溶解され、例えばリソザイム処理、超音波処理もしくはフレンチプレスによって溶解される。このように、該ポリペプチドは、通常はまず、宿主細胞の粗製溶解物として得られる。次いで、それらは、当該技術分野で知られる標準的なタンパク質精製手順によって精製できる。前記手順は、分別沈殿、モレキュラーシーブクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、等電点電気泳動、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー及びイムノアフィニティークロマトグラフィーを含んでよい。これらのよく知られた通常に実施される方法は、例えばAusubel et al.(前出)及びWu et al.(eds.),Academic Press Inc.,N.Y.;Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biologyに記載されている。例えば、組み換え的に製造された免疫グロブリンの精製のためには、該グロブリンは、イムノアフィニティークロマトグラフィーを用いて、発現されたイムノグロブリンが特異的に結合できる標的分子が結合された樹脂を含むカラムに通すことによって精製することができる。
【0137】
本発明は、また、例えば原核性の宿主におけるポリペプチドをコードする核酸の細胞内の異種発現のための方法及び手段に関する。特に、本発明は、ベクター並びにかかるベクターを、原核性の宿主における異種のポリペプチドを本発明のベクターを使用して細胞内発現させるために用いる使用に関する。細胞内発現において、該ポリペプチドは、細胞質内で発現され、細胞質から非細胞質位置へと輸送されない。該ポリペプチドは、細胞質内で、封入体又は可溶化形で発現される。細胞からの、特に細胞抽出物からのポリペプチドの単離及び精製のための手順は、またよく知られている。
【0138】
本発明のマンノースプロモーターは、それらが通常の非毒性の従って産業上有用な化合物によってしっかりと調節でき、誘導できるという点で好ましい。
【0139】
更に、本発明のマンノースプロモーター並びに該マンノースプロモーターを含むベクターは、細胞内で安定であり、複数回の細胞の複製の後でさえも失われない。このように、本発明により形質転換された宿主細胞を用いた高細胞密度発酵が可能である。
【0140】
当業者は、本願に記載される発明は、特別に記載されたもの以外の変化及び変更が可能であると理解する。本発明は、本発明の主旨又は必須の特徴から逸脱することのない全てのかかる変化及び変更を含むと解されるべきである。本発明は、また、個別に又はまとめて本願明細書で言及され又はそこで指摘されている全ての工程、特徴、組成物及び化合物並びに任意の及び全ての組み合わせ又は前記の工程もしくは特徴の任意の2種以上を含む。従って、本願の開示は、説明される全ての態様で考慮されるべきであって、制限するものではなく、その際、本発明の範囲は、付随する特許請求の範囲によって示され、かつ均等の意味及び範囲内のあらゆる変更は、そこに含まれるものと意図される。様々な参考文献が本願明細書を通して引用されているが、そのそれぞれは、参照をもってその全内容が開示されたものとする。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1には、manPプロモーターの転写開始部位のマッピングにおいて使用されるB.サチリスからの核酸配列が示されている。
【図2】図2には、manRプロモーターを含むプロモーター領域の核酸配列が示されている。
【図3】図3には、それぞれpSUN291、pSUN384.1及びpSUN385.2に含まれるmanRプロモーターのプロモーター領域を含むB.サチリスから得られた核酸配列が示されている。
【図4】図4には、本発明による発現ベクターpSUN279.2のプラスミドマップが示されている。
【図5】図5には、本発明によるプラスミドpSUN279.2、pSUN284.1及びpSUN291をそれぞれ含むB.サチリス3NAのβ−ガラクトシダーゼ活性が示されている。
【図6】図6には、manRのC末端を含むB.サチリス由来のmanPプロモーターのプロモーター領域を含むB.サチリスから得られる核酸配列が示されている。
【図7】図7には、プラスミドpSUN279.2と、図6に示される種々の長さの核酸配列の断片を含む更なるプラスミドとを含んだB.サチリス3NAのβ−ガラクトシダーゼ活性が示されている。
【図8】図8には、図3に示される核酸配列を有するベクターpSUN291、pSUN384.1及びpSUN345.2を含むB.サチリス3NAのβ−ガラクトシダーゼ活性が示されている。
【図9】図9には、本発明による発現ベクターpMW168.1のプラスミドマップが示されている。
【図10】図10には、B.サチリス3NA中のpMW168.1のプラスミド安定性試験の結果に関する図が示されている。
【図11a】図11aには、発酵行程1の期間にわたってプロットされた乾燥バイオマス濃度を対数表示した図が示されている。
【図11b】図11bには、発酵行程1の期間にわたってプロットされた蛍光シグナル(RFU)に関する図が示されている。
【図12a】図12aには、発酵行程2の期間にわたってプロットされた乾燥バイオマス濃度を対数表示した図が示されている。
【図12b】図12bには、発酵行程2の期間にわたってプロットされた蛍光シグナル(RFU)に関する図が示されている。
【図13a】図13aには、発酵行程3の期間にわたってプロットされた乾燥バイオマス濃度を対数表示した図が示されている。
【図13b】図13bには、発酵行程3の期間にわたってプロットされた蛍光シグナル(RFU)に関する図が示されている。
【図14a】図14aには、発酵行程4の期間にわたってプロットされた乾燥バイオマス濃度を対数表示した図が示されている。
【図14b】図14bには、発酵行程4の期間にわたってプロットされた蛍光シグナル(RFU)に関する図が示されている。
【図15】図15には、発酵行程5の発酵の期間にわたってプロットされた蛍光シグナルの図が示されている。
【図16】図16には、発酵行程6の発酵の期間にわたってプロットされた蛍光シグナルの図が示されている。
【図17】図17には、実験4の(a)プラスミドpMW168.1の構築に従って得られたプロモーター開始の概略構造が示されている。
【図18】図18には、プラスミドpMW168.1の構築のフローチャートが示されている。
【図19】図19には、SDSページが示されている。
【0142】
前記の詳細な説明は、以下の実施例を参照してより完全に理解される。しかしながら、かかる実施例は、本発明の実施方法の例示であって、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0143】
I) マンノースオペロンのmanRプロモーター及びmanPプロモーターのプロモーター領域の単離及び同定
特に規定されない限りは、以下の材料及び方法を使用している:
細菌菌株及び増殖条件
E.コリJM109(Yanisch−Perron C.et.al.,Gene 33,1985,103−119)及びバシラス・サチリス3NA(Michel J.F.et al.,J.Appl.Bacteriol.33,1970,220−227)を、クローニング及び発現のための主要な宿主として使用した。E.コリは、LB液体培地(Luria S.E.et al.,Virology 12,1960,348−390)及びLB寒天プレートであって、100μg ml-1のアンピシリン又はスペクチノマイシンを補ったものにおいて37℃で増殖させた。B.サチリスは、LB液体培地及びC最少培地もしくはS最少培地において37℃で増殖させた(Martin−Verstraete I.et al.,J.Mol.Biol.214,1990,657−671)。液体培地及び寒天プレートには、100μg ml-1のスペクチノマイシン、10μg ml-1のカナマイシン又は5μg ml-1のエリスロマイシンのそれぞれを補った。マンノースプロモーターの誘導のために、滅菌濾過した又はオートクレーブにかけたD−マンノースを添加して、0.2%(w/v)の最終濃度にした。
【0144】
材料
全ての化学物質は、Sigma−Aldrich(Taufkrichen、ドイツ)、Fluka(Buchs、ドイツ)又はMerck(Darmstadt、ドイツ)から入手した。合成DNAオリゴヌクレオチドは、Eurofins MWG Operon(Ebersberg、ドイツ)から入手した。制限酵素及びDNA改変酵素は、Roche Applied Science(Mannheim、ドイツ)又はNew England Biolabs.(Frankfurt am Main、ドイツ)から入手した。PCRは、Biozym社製のMiniCycler上で、Fermentas社製(ST.Leon−Rot、ドイツ)の高忠実度DNAポリメラーゼを用いて実施した。
【0145】
DNAの調製と形質転換
E.コリ及びB.サチリスからの又はアガロースゲルからのDNA単離は、Qiagen(Hilden、ドイツ)又はRoche(Mannheim、ドイツ)のDNA調製キットを用いて製造元の指示に従って実施した。実施例を通じて標準的な分子的技術を使用した。
【0146】
E.コリは、プラスミドDNAによってChung C.T.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,1989,2172−2175に記載されるようにして形質転換させた。B.サチリスは、プラスミドDNAによって改変された"パリ法(Paris method)"(Harwood C.R.Molecular Biological Methods for Bacillus,1990,John Wiley&Sons Ltd.,England)に従って形質転換させた。
【0147】
β−ガラクトシダーゼ活性測定
試験されるべき細胞0.1mlをZバッファー0.9ml中で10μlのトルエンで37℃において30分間にわたり処理した。β−ガラクトシダーゼ活性は、o−ニトロフェニル−β−ガラクトピラノシドを用いて22℃でMiller法(Miller J.H.,1972,experiments in molecular genetics,Cold Spring Harbor,NY)に従って測定した。
【0148】
使用したオリゴヌクレオチド
第1表
【表1】

【0149】
実験1:
マンノースオペロンのプロモーター領域を有するDNA断片の単離及びmanRプロモーター及びmanPプロモーターの転写開始部位の決定
バシラス・サチリス168の染色体DNAを、Qiagen(Hilden、ドイツ)のDNeasy Blood&Tissueキットを使用することにより単離した。
【0150】
推定manRプロモーターを有する完全なmanRと、manRとmanPとの間の遺伝子間領域とを有する約2.3kbのDNA断片を、前記の得られたDNAからプライマーs4693/s4694を使用したPCRによって増幅させた。
【0151】
得られた約2.3kbのDNA断片を、manRプロモーター及びmanPプロモーターの転写開始部位の決定のためのプライマー伸長実験のために使用した。
【0152】
プライマー伸長のためのmRNAの単離のために、シャトルファクター(shuttle factor)を、E.コリのベクターpIC20HE(Altenbuchner et al.,1992,Methods Enzymol.216,457−466)及びB.サチリスのベクターpUB110(MacKenzie et al.,1986,Plasmid 15,93−103)から構築した。それらのベクターは、レポーター遺伝子としてlys遺伝子を含み、前記遺伝子は、スタフィロコッカス・シミュランス(Staphylococcus simulans)由来のリソスタフィンの成熟形をコードしている(Recsai et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,1127−1131)。この高コピーのpUB110誘導体中に、前記の2.3kbのDNA断片を、リソスタフィン遺伝子の上流にクローニングした。得られたプラスミドをpSUN178.4と名付け、バシラス・サチリス3NA中に導入した。
【0153】
プラスミドpSUN178.4を有するバシラス・サチリス3NAを、カナマイシンを有するLB培地中で増殖させた。指数増殖期において、培養を0.2%のマンノースで誘導した。37℃での1時間の増殖の後に、誘導された細胞と誘導されていない細胞を収穫した。全RNAをQiagen−RNeasy Miniキットで単離した。
【0154】
5′末端でCy5標識されたプライマーであるs5006、s5007、s5097及びs5098を使用した。
【0155】
プライマーのs5006及びs5007は、それぞれ、リソスタフィン遺伝子の開始コドンに対して+21から+50までと+76から+105まででハイブリダイズした。プライマーのs5097及びs5098は、それぞれ、manRの開始コドンに対して+81から+101までと+131から+153まででハイブリダイズした。
【0156】
サイズスタンダードとしての役割を担うpSUN178.4のプラスミドDNAのシーケンシング反応のために同じプライマーを使用した。Roche社製のAMV−リバーストランスクリプターゼ及びT7−DNAポリメラーゼを、それぞれ逆転写とDNAシーケンシングのために使用した。逆転写及びシーケンシングの産物を、変性ポリアクリルアミドシーケンシングゲル(GE healthcare)上で解析した。使用した全ての他の試薬は、Amersham Pharmacia Biotech AutoRead Sequencingキットによって提供された。
【0157】
manPプロモーターの転写開始部位は、プライマーのs5006を使用することにより決定した。プラスミドpSUN178.4のDNA配列反応を、同じプライマーを用いて、比較のために同じ変性ゲルで準備し行った。図1は、manPプロモーターの周辺のDNA配列が示されており、その際、A(アデニンヌクレオチド)にある転写開始部位は強調表示されている。推定−10ボックス及び−35ボックスはイタリック体で示し、manR遺伝子の終わりとlys遺伝子の始まりを矢印によって表示し、Bgl−II、XbaI、AflII及びNdeIのための制限部位に下線を引いた。
【0158】
manRプロモーターの転写開始部位は、RNA単離とDNAシーケンシングで決定した。それは、manR遺伝子に結合するプライマーのs5098を使用したことを除いて、manPプロモーターに関して前記のように実施した。
【0159】
図2及び図3において、manRプロモーター領域のDNA配列が示されており、その際、G(グアニンヌクレオチド)にある転写開始部位は、強調表示され、推定−10ボックス及び−35ボックスはイタリック体で、かつlys遺伝子の始まりとmanR遺伝子の始まりは、それぞれ矢印によって示されている。制限部位と推定cre配列に下線を引いている。
【0160】
manRプロモーターからの転写と、特にmanPプロモーターからの転写は、マンノースにより細胞が誘導された場合には、プライマー伸長実験でより強力なシグナルによって理解されるように、大きく増加した。
【0161】
使用されるプライマーは、前記の第1表に示されている。
【0162】
実験2
実験1によるプライマー伸長実験により、manPプロモーターの転写開始部位は、manRとmanPの開始との間の遺伝子間領域の3′末端付近に位置づけられた。manPプロモーター領域をより厳密に決定するためには、前記の2.3kbのDNA断片を、PCR増幅によって段階的に短くし、得られた異なる長さの配列断片を、同じ基礎発現ベクターにクローニングし戻して発現を研究した。
【0163】
a) 基礎発現ベクターの構築
レポーター遺伝子としてのプロモーターレスのlacZを有する発現ベクターを構築した。該発現ベクターは、B.サチリスとE.コリの両方で複製できるシャトルベクターとして設計され、それはpSUN272.1と名付けた。
【0164】
レポーター遺伝子であるlacZをpLA2(Haldimann A.et al,2001,J.Bacteriol.183,6384−6393)からNdeI及びXmaIを用いて切断し、そしてpJOE5531.1、つまりラムノースで誘導可能な発現ベクターpWA21(Wegerer et al.,2008,BMC.Biotechnol.8,2)の誘導体であってXmaI部位にB.サチリスのtufA転写ターミネーターを含むものにライゲーションした。このプラスミド中に、オリゴヌクレオチド対のs4956/4957を、lacZの上流に同じtufA転写ターミネーターを付加するために、AfIII/MunI制限部位の間に挿入した。ここで、プラスミドプロモーターからのlacZへの"読み過ごし"並びにlacZから隣接するプラスミド配列への"読み過ごし"は、前記ターミネーターによって回避された。E.コリとB.サチリスの両方に特異的なスペクチノマイシン耐性遺伝子を、プラスミドのpDG1730(Geurout−Fleury et al.,1996,Gene 180,57−61)からオリゴヌクレオチドのs4833/4835を用いて増幅させ、それを前記に得られたプラスミド中に挿入した。加えて、E.コリベクターの部分を、BspHI/HindIII断片の欠失によって短くした。引き続き、B.サチリスのpMTLBS72(Lagodich et al.,2005,Mol.Biol.(Mosk)39,345−348)の複製領域を有するEcoRI/SphI断片を前記プラスミド中にライゲーションした。
【0165】
実験1で得られた2.3kbのDNA断片を、pSUN272.1中にlacZの前方においてAfIIIとNheIでの消化とライゲーションによって挿入し、それにより発現ベクターpSUN279.2が得られ、該プラスミドのマップを図4に示す。使用されるプライマーは、前記の第1表に示されている。
【0166】
b) ベクターpSUN279.2の発現効率の測定
前記のa)で得られたプラスミドであるpSUN279.2及びpSUN272.1をB.サチリス3NA中に導入した。後者のプラスミドは、バックグラウンドコントロールとして用いた。一方のプラスミド又は他方のプラスミドを有するB.サチリス3NA菌株をスペクチノマイシンを有するLB培地中で増殖させ、そして指数増殖期において、0.2%のマンノースを誘導のために培養に添加するか、0.2%のマンノースと0.2%のグルコースを誘導のために培養に添加するか、あるいは糖を培養に添加しない(誘導されていないコントロール)か、のいずれかとした。誘導1時間後に、細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性を、Millerのアッセイにより測定した。結果は、図5及び図7に示されている。
【0167】
pSUN279.2を含むB.サチリスの誘導されていない培養は、既に相当高いβ−ガラクトシダーゼ活性の基底レベルを示した。マンノースが存在すると、β−ガラクトシダーゼ活性の更なる4倍の増加が得られ、一方で、マンノース及びグルコースにより前記活性は低減されるが、依然として基底レベルをかなり上回っていた。それらの結果は、明らかに、pSUN279.2で見られるプロモーター活性が、manRとmanPとの間の領域からか、manRの上流の領域からか、又はその両方から生じ得たことを示している。
【0168】
従って、manRの上流領域並びにmanRの殆どの部分の両方を、pSUN279.2から、図4に示されるpSUN279.2のSfoIとNruIとの間の2.3kbのDNA断片を切断することによって欠失させて、プラスミドpSUN284.1を得た。
【0169】
pSUN284.1の得られる核酸配列は、図6に示されている。
【0170】
B.サチリス3NAを、プラスミドpSUN284.1で形質転換させ、そして発現効率を前記規定のように測定した。結果は図5に示されている。図5から理解できるように、B.サチリス3NAにおける前記のmanR欠失ベクターpSUN284.1は、B.サチリス3NAにおけるpSUN279.2と比較して、ほぼたったの半分の基底レベルのβ−ガラクトシダーゼ活性しか示さず、マンノース誘導によって一層強い増加を示すが、グルコースの存在で再びより大きい低減を示した。これらの結果は、manPプロモーターがmanRとmanPとの間に位置していることの証明であり、manRの染色体コピーが、低コピープラスミドにおいて全てのmanPプロモーターコピーを調節するのに十分であることを示している。
【0171】
c) manPプロモーター領域の位置決め
pSUN284.1の短くされたDNA断片に加えてmanPのプロモーター領域を局在化するために、更に短くされた配列断片を、前記の2.3kbのDNA断片から、manPプロモーターの転写開始部位の上流にある種々の位置の制限部位でかつ図6に示される制限酵素によって切断することによって調製した。
【0172】
manPの転写開始部位の上流のbp−81とbp−80へと下る欠失により、配列番号1を含む第二の欠失配列をもたらした。更なる欠失を、manPの転写開始部位の上流のbp−41とbp−40へと下って実施した(第三の欠失配列)。
【0173】
第二の欠失配列を含むプラスミドであるpSUN290及び第三の欠失配列を含むプラスミドであるpSUN297.5を、前記の2b)でのプラスミドpSUN284.1と同様にして、プライマーs4802/s5203及びs5262/s5203のそれぞれを用いて増幅されたPCR産物をpSUN272.1中に制限酵素EcoRV及びNheIを介して挿入することによって構築した。
【0174】
それらのプラスミドを、B.サチリス3NA中に挿入し、前記のb)で示したように培養し、1時間の誘導後に、該細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性を、前記のb)で示したように測定した。それらの結果は、図7に示されている。
【0175】
図7に示されているように、pSUN290及びpSUN284.1を有する菌株のいずれも、マンノースによるlacZの誘導に関して大きな差異を示さなかった。しかしながら、pSUN297.5を含む第三の欠失配列を有するB.サチリス3NAにおいて、マンノースによる誘導を完全に廃止したところ、基底発現レベルはほぼ0であった。これらの結果から、manPマンノースプロモーター領域のManR結合部位は、manPの転写開始部位に対してbp−80とbp−35の間に位置している。
【0176】
実験3: manRプロモーターの決定
a) cre配列の同定
殆どのCCRはカタボライト制御タンパク質A(CcpA)を通じて媒介されるので、各々の結合部位(cre配列)の調査は、マンノースオペロン全体で、Clone ManagerプログラムにおけるDNAアラインメント機能を使用して実施した。該アラインメントのために、creコンセンサス配列5′−WWTGNAARCGNWWWCAWW−3′を使用した。
【0177】
manRのプロモーター領域だけで、1つの推定cre配列が、図2及び3に示されるように見出され、それは−10ボックスの下流に位置している。
【0178】
本発明の配列番号3は、bp−122から始まってlacZの開始コドンにまで下る領域を含み、配列番号4は、bp−122から始まってbp+7(含む)までの領域を含み、そして本発明の配列番号5は、図3に示される配列のbp−122から始まってbp−1(含む)までの領域を含む。
【0179】
b) manRプロモーターの発現効率の評価
manRプロモーターの発現効率を評価するために、pSUN284.1のような発現ベクターを、前記のように構築し、それをpSUN291と名付けた。このために、推定manRプロモーターとmanRの上流の約600bpを含むDNA断片を、プライマーs5208/s5209と、直鎖化したプラスミドDNAのpSUN279.2を鋳型として用いて増幅させ、それをlacZの前方でプラスミドのpSUN272.1中に、KpnI及びAflIIIでの消化とライゲーションとによって挿入した。該DNA配列は、図3に示されている。
【0180】
プラスミドのpSUN291を、B.サチリス中に導入し、そしてβ−ガラクトシダーゼ活性を、実験2b)で示したようにして測定した。
【0181】
結果は図5に示されている。ここで、基底発現は既に比較的高く、かつ0.2%のマンノースの添加によって約3倍だけさらに高められた。
【0182】
グルコースの添加によって、ほぼ基底発現レベルまでのβ−ガラクトシダーゼ活性の抑制がもたらされた。
【0183】
その結果は、manRプロモーターがまさに弱い構成的プロモーターではなく、マンノースとCCRの調節を受けやすいプロモーターであることを示している。
【0184】
c) manRプロモーター領域の位置決め
実験2c)と同様に、manRのDNA配列のプロモーター領域の更なる位置決めのために、種々の長さのDNA断片を、pSUN291に含まれるDNA配列から、manRプロモーターの転写開始位置の上流の種々の位置で制限部位で、かつ図3に示される制限酵素によって切断することによって調製した。第一の欠失配列は、図3に示される配列を、転写開始部位Gの上流のbp−100及びbp−99にまで下って切断することによって得られ、第二の欠失配列は、転写開始部位Gの上流のbp−83及びbp−82にまで下って切断することによって得られた。
【0185】
実験2c)と同様にして、得られた第一の及び第二の欠失配列を、pSUN272.1中に導入し、そして得られたプラスミドを、pSUN384.1とpSUN385.2とそれぞれ名付けた。
【0186】
各プラスミドを、B.サチリス3NA中に挿入し、実験2bに示されるようにして培養した。誘導1時間後に、細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性を、実験2b)に示されるようにして測定した。それらの結果は、図8に示されている。pSUN384.1のマンノースによるlacZの誘導に関して、pSUN291と比較して大きな差異はない。しかしながら、pSUN385.2を含む第二の欠失配列を有するB.サチリス3NAにおいて、マンノースによる誘導を完全に廃止したところ、基底発現レベルはほぼ0であった。これらの結果から、manRプロモーター領域のManR結合部位は、manRの転写開始部位に対してbp−99とbp−35の間に位置している。
【0187】
II) 高い細胞密度発酵におけるマンノースオペロンのプロモーター領域の使用
実験4: 形質転換
本発明のプロモーター領域を有するモデル宿主を、その増殖と発現能力について試験した。図6に示される実験2cで使用されるプラスミドpSUN284.1に導入されるmanPプロモーター領域による核酸配列を使用して、プラスミドpMW168.1を、以下に示されるように構築し、宿主としてのB.サチリス3NA中に形質転換によって導入した。
【0188】
a) プラスミドpMW168.1の構築
E.コリとB.サチリスの両方で複製可能なシャトルベクターは、実験2a)に示されるようにして設計したが、但し、lacZの代わりにレポーター遺伝子としてeGFPを使用した。また、manPの転写開始領域を、遺伝子gsiB(ストレスタンパク質;Juergen et al.、上記)の転写開始領域で置き換えた。
【0189】
更に、eGFPの開始コドンと開始コドン後の6つのコドンを置き換えた。
【0190】
得られたプロモーター領域及び転写開始領域の概略的構造は、図17に示されている。
【0191】
遺伝子(矢印)及び領域(ボックス)の配置が関連の制限部位と一緒に示されている。
【0192】
一般に、プラスミドpMW168.1は、図18によるフローチャートに示されるようにして得られた。
【0193】
該フローチャートにおいて、使用されるベクターDNA、挿入DNA及び相補的オリゴヌクレオチドの名称はボックス中に示される通りであって、PCRの産物に関して、プライマーと鋳型DNAは、括弧内にある通りであり、使用された制限酵素は、それぞれの部位で指摘されている。
【0194】
クローニング工程は、E.コリJM109を用いて実施した。使用されるプラスミドは、pUC18、つまりamp耐性を有するPCR産物用の陽性選択及びクローニングのベクター(Yanosch−Perron et al.,上記);pWA21、つまりamp耐性を有するE.コリ用の発現及びクローニングのベクター(Wegerer et al.,2008,BMC Biotechnol.8,2);pSUN202.4、つまりmanPプロモーター領域とamp耐性及びkan耐性を有するpUB110誘導体(これは、E.コリとB.サチリスのためのシャトルベクターである);並びにpSUN266.1、つまりter配列とspc耐性及びamp耐性との間に組み込み部位を有するpUC18誘導体であった。
【0195】
使用されるプライマーの配列は、以下の通りであった:
【表2】

【0196】
開始コドンと開始コドンに続く複数のコドンを含む転写開始領域の置き換えを、相補的オリゴヌクレオチドを使用して、単独の制限部位BglII、AflII及びBamHIを介して実施した。ベクターの構築は、ベクターpWA21(Wegerer et al.、上記)のT7遺伝子10の転写開始領域の置き換えと一緒に、B.サチリス由来のtufAの翻訳開始領域によって、相補的ヌクレオチドs5019及びs5020のそれぞれを介して開始した。更なるクローニング工程において、この転写開始領域を、gsiBの転写開始領域によって置き換えた。この最終的なプラスミドpMW168.1は、pUB110由来のori+を含むrep遺伝子を含んでいた。pMW168.1のプラスミドマップは、図9に示されている。
【0197】
b) 構造安定性と分配の測定
B.サチリス3NAを、ベクターpMW168.1で形質転換させ、そして該ベクターの細胞分裂における構造安定性並びに安定な伝播(分配)を測定した。
【0198】
pMW168.1で形質転換されたB.サチリス3NAをLBSpc培地中で前培養し、次いで選択圧を有さないLB0培地中に移した。インキュベーションは、37℃で実施した。指数増殖期の終わりに、それぞれの培養を新たなLB0培地中に接種した。この手順を、新たな培地中に移す間に得られる測定されたOD値に基づいて計算して100世代目が得られるまで、Harwood et al.,1990,Molecular Biological Methods for Bacillus,John Wiley&Sons Ltd.の改変された方法に従って繰り返した。結果は図10に示されている。
【0199】
約15世代の後で、細胞の99.9%超が前記ベクターを依然として有しており、20世代後でさえも、細胞の約90%が前記ベクターを依然として有している。ほぼ第25世代以降にのみ、ますます細胞がベクターを失っていく。
【0200】
プラスミドの構造安定性の測定のために、20個のコロニーからプラスミドを15世代の後に単離した。それぞれ単離されたプラスミド約0.5μgを、コントロールとしてのE.コリから単離したpMW168.1と、アガロースゲル電気泳動によって比較した。プラスミドとコントロールのランにおいて差異は観察されず、それは構造の変動が生じなかったことを示している。
【0201】
これらの結果は、プラスミドpMW168.1が高い構造安定性を有するだけでなく、発酵に望ましい安定的な分配をも有することを示している。
【0202】
実験5: 発酵
6つの発酵行程を、レポーター遺伝子eGFPを含むプラスミドpMW168.1で形質転換されたB.サチリス3NAで、異なる誘導レジームを用いて実施し、eGFPの蛍光シグナルの観察によってオンラインでモニタリングした。発酵培地としては、Wilms et al.,2001,Biotechnol.Bioeng.73,95−103に開示されるE.コリの高細胞密度発酵用の以下に示されるような公知の培地を使用した。
【0203】
材料及び方法
一般に、発酵実験のためにも、特に記載がない限りは、標準的な分子的技術を使用した。
【0204】
光学密度
光学密度(OD)の測定のために、Amersham Bioscience CompanyのスペクトロフォトメーターUltrospec 1100proを、製造元のプロトコールに従って600nmで使用した。
【0205】
乾燥バイオマス濃度の測定
乾燥バイオマス濃度cxの測定のために、Ohaus CompanyのモイスチャーメーターMB835Halogenを使用した。
【0206】
蛍光の分光測光的な測定
eGFPの発現と蛍光のそれぞれを、TECAN Companyの多機能リーダーGENiosによってリーダーソフトウェアX Fluor 4(バージョンV4.11)を使用して以下の測定パラメータで解析した:
【表3】

【0207】
発酵器におけるオンライン蛍光測定
発酵の間に、eGFPの発現を、蛍光プローブ(Micropack HPX−2000,High Power Xenon Lightsource of Ocean Optics,Inc.;S2000 fiber optic spectrometer)を使用してオンラインでモニタリングした。
【0208】
測定パラメータは以下の通り:励起フィルタ485nm、発光フィルタ535nm、フィルタ0.6)。記録と記憶のために、Ocean Optics SpectraSuiteソフトウェアを使用した。
【0209】
蛍光は、相対蛍光単位(RFU)として示される。4.000RFUが得られる直前に、50msの積分時間を、25msに変更し、次いで10msに変更した。これらの場合に、測定値を、それぞれ2倍及び5倍に乗算した。
【0210】
前培養の培養
1つのシングルコロニーをLB寒天プレート上に置き、0.02%(w/v)のカザミノ酸(CA)と抗生物質を含む5mlのSpizizensの最少培地(SMM)中で一晩培養した。1mlのオーバーナイト培養を、0.02%(w/v)のCAと抗生物質を有する20mlのSMMに添加し、そして250mlのエルレンマイヤーフラスコ中で37℃で5〜6時間インキュベートした(前培養1)。
【0211】
10mlの前培養1を、5g/lのグルコースを含む200mlのバッチ培地に添加し、そして1lのエルレンマイヤーフラスコ中で37℃で8時間までインキュベートした(前培養2)。
【0212】
発酵器の接種のために、1.2〜2.2のOD600を有する前培養2を使用した。
【0213】
発酵
一般に、発酵は、Wilms et al.,2001,Biotechnol.Bioeng.73,95−103の原理に従って実施した。
【0214】
炭素源のグルコースが完全に消費されたらすぐに、回分様式を流加様式に切り換えた。
【0215】
流加段階において指数的に供給溶液を添加することによって、μ=0.10h-1の一定の増殖速度を得ることができ、そして同時にグルコースによるカタボライト抑制が回避される。それというのも、グルコースは細胞によって直ちに消費されるからである。
【0216】
タンパク質分析
収穫した細胞の粗製タンパク質抽出物を、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、以下の組成を有する3%のスタッキングゲル及び12%の分離ゲルからなるポリアクリルアミドゲルを用いて分析した:
【表4】

【0217】
Biometra companyのTwin Mini gelチャンバーを使用した。
【0218】
変性のために、タンパク質混合物の粗製抽出物12μlを、5×SDSアプリケーションバッファー3μlと混合し、そしてEppendorf companyのThermomixer 5438で95℃で5分間にわたりインキュベートした。室温に冷却した後に、試料を遠心分離によって分離し、完全にゲルに載せた。
【0219】
スタッキングゲル中での分離の間に電流は10mAであり、ブロモフェノールの最前線がスタッキングゲルに達した後に20mAに高めた。1×SDSランニングバッファー及びRoth companyの長さスタンダードROTI(C)−Markを分離のために使用した。電気泳動は、ブロモフェノールの最前線がゲルの外に出て行ったらすぐに終了させた。明確なタンパク質バンドの検出のために、ゲルをクーマシーブルー染色溶液と一緒に室温で30分にわたりインキュベートし、引き続き室温で更に30分にわたって脱色溶液で処理した。残りの帯青色のバックグラウンドをゲルから取り除くために、ゲルを7.5%酢酸中で数時間にわたりインキュベートした。
【0220】
バッファー溶液の組成及び染色溶液並びに脱色溶液の組成は以下の通りであった:
【表5】

TRIS: トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
SDS: ドデシル硫酸ナトリウム
APS: 過硫酸アンモニウム
TEMED: N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン
EDTA: エチレンジアミン四酢酸
【0221】
遺伝子発現の誘導
遺伝子発現の誘導のために、インデューサー溶液の様々な様式の添加(誘導レジーム)を評価した:
1. 所定の時点での単一部での添加(インパクト誘導)
2. インパクト誘導と、ある時間インターバルにわたる更なる誘導との組み合わせ、その際、
− 更なる添加は、一定速度で段階的に増加する量で、又は
− 更なる添加は、指数関数的に増加する速度で
3. 所定の細胞密度に達した後にインデューサー溶液の添加の開始
【0222】
第2表: 使用される培地
【表6】

* 別個にオートクレーブされるべき
【0223】
pHは、2MのNaOHと1MのHCl溶液のそれぞれで調整した。寒天プレートのために、BD company社製の15g/lのEuroagarを更に添加した。全ての培地を121℃で約30分間にわたりオートクレーブにかけた。
【0224】
発酵行程1: インパクト誘導
発酵行程1を、30lのリアクター(BioengineeringのD598及びD596)中で実施した。回分容量は8lであった。OD600に応じて、200〜400mlの前培養2を接種して、0.1の開始OD600に調整した。
【0225】
回分段階の間に、温度を30℃で一晩であり、12時間後に37℃に高めた。24%(v/v)のNH4OHの添加によって、全発酵の間、pHを約7.0に調整した。エアレーション速度は、30l/分までに調整できた。回分段階の開始時に、エアレーション速度は、10l/分であった。
【0226】
供給培地I及びIIの組成は、第3表で以下のように示される。
【0227】
第3表: 供給培地I及びIIの組成
【表7】

【0228】
培地I及びIIを、それらの全容量との割合で、すなわち4.2:1.0で添加した(全供給Fの80.8%の培地I及び19.2%の培地IIに相当する)。
【0229】
流加段階の開始時の誘導のために、0.2%(w/v)のD−マンノース溶液を一回で添加した。
【0230】
乾燥バイオマス濃度及びモニタリングされた蛍光シグナルは、図11a及び図11bのそれぞれに示されている。
【0231】
該図面において、乾燥バイオマスの濃度cxが、培養の期間にわたって対数的にプロットされている。回分段階と流加段階とは、垂線によって分離されている。
【0232】
535nmの発光波長でのモニタリングされた蛍光シグナルは、培養期間にわたってプロットされている。矢印は、誘導の時点を示している。
【0233】
図11aの結果から、最大乾燥バイオマス(DM)濃度82.75gのDM/lが得られ、それは11.7lの反応容量に対して約970gのDMに相当する。
【0234】
全体で71.5gのインデューサーのD−マンノースは、最初の添加において16gで消費された。
【0235】
比増殖速度μは、全流加段階の間に0.10h-1であった。
【0236】
図11bに示されるように、D−マンノースの最初の添加の後に、流加段階の最初の5時間以内で約2,200のRFUの最大値まで蛍光シグナルは大きく増大した。次いで、該シグナルは連続的に減少した。この発現速度の低下は、インデューサーの消費によるもの及び/又は細胞質量の増加による遮蔽効果によるものであると推測される。37時間後の更なる0.5%(w/v)のマンノース溶液の添加は、蛍光シグナルの新たな増加を2,100RFUの値にまでもたらした。
【0237】
発酵行程2: 一定速度との組み合わされた誘導
発酵行程1と同様の手順を繰り返すが、インデューサーの添加の様式を変更した。発酵行程1と同様に、0.2%(w/v)のD−マンノース溶液を単一部で流加段階の開始時点に添加した。インデューサーの第二部の添加は、発酵行程1の蛍光シグナルの曲線の転換点の1,500のRFUに達したらすぐに開始した。
【0238】
第二の添加工程の間に、20%(w/v)のマンノース溶液を、一定の速度で、平均速度0.39g/分で段階的に増加する量で、第二部の全てが添加されるまで添加した。
【0239】
それらの結果は、図12a及び図12bに示されており、それは、乾燥バイオマス濃度と蛍光シグナルの曲線を示しており、その際、表示は、図11a及び図11bのものと同じである。図12bにおいては、第一部の添加の時点と、第二部の添加の開始と終わりが、矢印によって示されている。
【0240】
図12aから結論されるように、乾燥バイオマスの最大濃度は、67.6gDM/lであり、それは、11.9lの反応容量に基づいて約804gのDMに相当する。全体で(第一の添加と第二の添加)、70gのD−マンノースを添加した。バイオマスの収率は、発酵行程1と比較して17%だけ低下した。これは、流加段階の間の低い比増殖速度μ=0.09h-1と相関するが、回分段階の間の比増殖速度は、0.43h-1であった。
【0241】
図12bから結論されるように、蛍光シグナルの最大値は、25時間後に約4,900RFUで到達し、連続的に約2500RFUに減少した。
【0242】
発酵行程1と比較して、発酵行程2においては、発現速度は、バイオマス濃度の僅かな低下に伴い120%だけ高めることができた。
【0243】
発酵行程3及び4: 指数関数的速度と組み合わされた誘導
3.7lの小さい研究室用の発酵器(Bioengineering Companyの小さい研究室用発酵器)を、発酵行程3及び4で使用した。回分容量(バッチ培地と接種物とを足したもの)は、全体で1.5lであった。OD600に応じて、100〜200mlの前培養2を接種して、約0.1に開始OD600を調整した。回分段階と流加段階の両方の温度は、37℃であった。発酵の間に、pHを、24%(v/v)のNH4OHによって7.0に調整した。エアレーション速度は、発酵の間に一定で2l/分であった。酸素導入は、撹拌機の回転速度によって調整した。発酵圧力は開始時に1.3バールであり、次いで必要に応じて酸素導入を高めるために1.5バールに高めた。炭素源であるグルコースの完全な消費の後に、回分運転を流加運転に切り換えた。
【0244】
発酵行程2とは異なり、発酵行程3及び4においては、インデューサー溶液は、指数関数的に増大させた速度で供給した。更に、グルコース含有培地Iを、インデューサー含有培地IIと一緒に同時供給した。供給培地I及びIIの組成は、第4表で以下のように示される:
第4表: 供給培地I及びIIの組成
【表8】

【0245】
培地I及びIIの全ての成分は、個別にオートクレーブにかけ、成分の溶解性のため、pH値は、85%(v/v)のH3PO4を用いて両方の培地において3.3に調整した。
【0246】
時間tにおける全供給Fは、以下の式:
【数1】

[式中、
mは、維持係数・(0.04g g-1-1)であり、
x/sは、基質に関連したバイオマスの比収率係数(グルコースについては0.5)であり、
x0は、流加段階の開始時のバイオマス濃度であり、
0は、流加段階の開始時のリアクター容量(=回分容量)であり、
s0は、供給溶液におけるグルコース濃度である]によって計算した。
【0247】
計算のために、D−マンノースは、B.サチリスによって、匹敵する収率係数Yx/sのグルコースで消費されると仮定した。
【0248】
KLFにおいて、培地I及びIIを別個に供給し、割合比率を変更できた。
【0249】
a) 発酵行程3
バイオマス濃度及びモニタリングされた蛍光シグナルは、図13a及び13bに示されており、その際、図面の表示は、発酵行程1と同じである。
【0250】
流加段階の開始時に、0.2%(w/v)のマンノース溶液の部分(全体で16gのマンノース)を添加し、そして培地I及びIIの指数関数的供給を、50:50の比率で開始した(インターバルI)。傾斜の減少において、マンノース含有培地IIの部分が60%まで高められ、そして全体の供給F(培地I及びII)は、グルコースを基礎とする増殖を維持するために125%まで高められた(インターバルII)。約2時間後に、再び傾斜の低下がモニタリングされ、そして培地IIの部分が66.6%にまで増大し、同時に全体の供給Fが150%にまで高まった(インターバルIII)。培地IIの全体の消費の後に、発酵を、供給培地Iを用いて100%の全供給で継続した(図10に示さず)。
【0251】
発酵行程3の進行とデータを、以下に第5表でまとめる:
第5表:
【表9】

【0252】
全体で50gのマンノースが添加された。
【0253】
12時間の時点と、20時間の時点と、24時間の時点のそれぞれで、試料を採取し、全体で10のOD600の細胞の可溶性タンパク質フラクションを基礎としてSDSゲルでの発現を解析した。
【0254】
得られたSDSページは、図19に示されている。
【0255】
左から、(M)は長さスタンダード(ROTI(登録商標)−Mark)を示し、(1)は、12時間後の非誘導を示し、(2)は20時間後の8時間の誘導を示し、(3)は24時間後の12時間の誘導を示す。20時間後と24時間後に、約27kDaにeGFPの発現を示す(矢印)明らかなレーンが現れる。
【0256】
b) 発酵行程4
発酵行程3と同じ手順を繰り返すが、培地II(マンノース)の供給容量を全体で1.0lにまで高めた。
【0257】
乾燥バイオマス濃度及び蛍光シグナルは、図14a及び12bに示されており、その際、表示は、発酵行程1と同じである。進行とデータは、以下の第6表にまとめられている:
第6表:
【表10】

【0258】
全体で200gのマンノースが添加された。
【0259】
約15時間の発酵期間の後に観察される窒素不足を補うために、(NH42HPO4を一定速度で追加供給した。インターバルIIにおいて、10000の最大RFUに達し、それはインターバルIIの期間内に7800RFUに低下した。
【0260】
a) 発酵行程5及び6: インパクト誘導なし
両方の発酵は、30lの発酵器中で実施した。
【0261】
両方の発酵行程において、細胞を高細胞密度までグルコースの供給速度を指数関数的に増大させつつ増殖させ、高細胞密度に達した後に、それをマンノースの一定供給に置き換えた。
【0262】
使用される供給培地I、II及びIIIを、以下の第7表に示す:
第7表:
【表11】

【0263】
発酵行程5
培地I及びIIを、それらの全体容量に対する割合4.2:1.0で指数関数的に増大する速度で添加した。高細胞密度に達したら、培地I及びIIから構成される供給物を、培地II及びIIIから構成される供給物によって20:80の割合比率で、培地I及びIIの最後の指数関数的な供給速度の容量に相当する一定容量で置き換えた。
【0264】
蛍光シグナルは、図15に示されており、その際、表示は、発酵行程1と同じである。
【0265】
約17時間の発酵期間の後の図15における蛍光シグナルの最小の増加は、培地IIIの短期間漏洩によるものであったと推測される。
【0266】
発酵行程5の進行とデータを、以下に第8表でまとめる:
第8表:
【表12】

【0267】
b) 発酵行程6
発酵行程5と同じ手順を繰り返したが、全体で600gのマンノースを0.2(w/v)マンノース溶液(全体で16gのマンノース)のインパクト誘導で添加し、それから高細胞密度に達したら培地II及びIIIから構成される供給物の一定の添加を行った。
【0268】
蛍光シグナルは、図16に示されており、その際、表示は、発酵行程1と同じである。
【0269】
発酵行程6の進行とデータを、以下に第9表でまとめる:
第9表:
【表13】

【0270】
発酵行程1〜6の評価
最大蛍光の時点での評価のために、乾燥バイオマス濃度cx、反応器容量VR、消費されたマンノース及び誘導開始からの期間を測定し、以下の第10表にまとめた。
【0271】
第10表:
【表14】

【0272】
各発酵行程についての第10表に示されるプロセスデータに基づき、1リットル及び1時間当たりの最大蛍光RFUに関する生産性を計算した。更に、発現効率を、絶対バイオマス(gDM)とインデューサー濃度(gman/L)を基礎として最大蛍光から計算された相対蛍光として表現した。それらの結果を、以下の第11表に示す:
第11表:
【表15】

【0273】
これらの結果は、明らかに、マンノースプロモーターを有するプラスミドを使用した本発明は、高細胞密度発酵法で効率的に使用でき、かつインデューサーであるD−マンノースの添加によるポジティブに制御される発現において効率的に使用できることを示している。
【0274】
更に、誘導レジームの選択によって、発酵の焦点は、必要に応じて、バイオマス、発現産物及びインデューサー消費のそれぞれの観点で出力を最大にするように変更してよい。
【0275】
下流のプロセシングの促進の点で、インパクト誘導と指数関数的供給が組み合わされた発酵行程3による誘導レジームが特に好ましい。
【0276】
ここでは、バイオマスに対して高い生成された発現産物は、精製工程などの更なる処理をより効率的にし、こうして時間と費用が削減される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)のマンノースオペロンのマンノースで誘導可能なプロモーターを含み、該プロモーターがポリペプチドをコードする異種の核酸配列を含む転写ユニットに作動的に連結されている、原核性の宿主細胞において発現可能なベクター。
【請求項2】
調節遺伝子manRの完全な配列又は部分的な配列を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
前記プロモーターがmanPプロモーターである、請求項1又は2に記載のベクター。
【請求項4】
manPプロモーターが、配列番号1及び配列番号2から選択される配列、それらに相補的な配列又はそれらの変異体を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載のベクター。
【請求項5】
前記プロモーターがmanRプロモーターである、請求項1に記載のベクター。
【請求項6】
manRプロモーターが、配列番号3、配列番号4及び配列番号5から選択される配列、それらに相補的な配列又はそれらの変異体を含む、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
異種の核酸配列の上流にカタボライト応答エレメントを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載のベクター。
【請求項8】
転写終結配列を含み、それが異種の核酸配列から下流に位置している、請求項1から7までのいずれか1項に記載のベクター。
【請求項9】
転写終結配列が、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)のtufA遺伝子の3′領域から得られる、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
エシェリキア・コリ(Escherichia coli)及びバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)中で複製可能なシャトルベクターである、請求項1から9までのいずれか1項に記載のベクター。
【請求項11】
プラスミドpUC18及び/又はpBS72レプリコン又はrep遺伝子の複製起点と一緒に、プラスミドpUB110の複製起点を含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載のベクター。
【請求項12】
異種の核酸配列が、抗体又はそのフラグメントをコードする、請求項1から11までのいずれか1項に記載のベクター。
【請求項13】
manP遺伝子又はmanR遺伝子の転写開始領域が、別の遺伝子の転写開始領域によって置き換えられている、請求項1から12までのいずれか1項に記載のベクター。
【請求項14】
manP遺伝子又はmanR遺伝子の転写開始領域が、tufA遺伝子又はgsiB遺伝子の転写開始領域によって置き換えられている、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)のマンノースオペロンのマンノースで誘導可能なプロモーター領域の単離され精製された核酸、それらに相補的な配列又はそれらの変異体。
【請求項16】
配列番号1から5のいずれかの配列、それらに相補的な配列又はそれらの変異体を含む、請求項15に記載の単離され精製された核酸配列。
【請求項17】
請求項1から14までのいずれか1項に記載のベクター又は請求項15又は16に記載の核酸配列で形質転換された原核性の宿主細胞。
【請求項18】
原核性の宿主細胞が、炭素カタボライト抑制の支配下にあり、かつホスホエノールピルビン酸:炭水化物ホスホトランスフェラーゼ系を含む、請求項17に記載の原核性の宿主細胞。
【請求項19】
原核性の宿主細胞が、グラム陽性である、請求項17又は18に記載の原核性の宿主細胞。
【請求項20】
宿主細胞が、ファーミキューテス門に属する、請求項18又は19に記載の原核性の宿主細胞。
【請求項21】
原核性の宿主細胞においてポリペプチドを生産する方法であって、請求項1から14までのいずれか1項に記載のベクターを構築する工程と、前記ベクターで原核性の宿主細胞を形質転換する工程と、好適な条件下で細胞培養培地中で前記形質転換された宿主細胞を増殖させることによって前記ポリペプチドを発現させる工程と、前記細胞又は細胞培養からポリペプチドを回収する工程とを含む前記方法。
【請求項22】
宿主細胞を、まずインデューサーとは異なる炭素源の存在下で増殖させ、次いで第二工程で、インデューサーの存在下で増殖させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から14までのいずれか1項に記載のベクター又は請求項15及び16のいずれかに記載の単離され精製された核酸配列を、原核性の宿主細胞におけるポリペプチドをコードする異種の核酸配列の調節された発現のために用いる使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−501510(P2013−501510A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524191(P2012−524191)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061193
【国際公開番号】WO2011/018376
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(502177174)ロンザ・アーゲー (3)
【Fターム(参考)】