マンホールの浮上防止構造およびマンホールの浮上防止方法
【課題】マンホール形状に左右されずに、マンホールの浮上抑制を実現する。
【解決手段】マンホールの浮上抑制構造として、有底筒状構成のマンホールの外周壁に張出し体2を設け、更に張出し体2の上方を覆う浮上抑制体3を配置する。張出し体2は、マンホールの外周壁に固定される基台領域20と、基台領域20の内周面側にに突設されて、外周壁上方の傾斜部の段差と係合する凸部21を有するように構成する。一方、浮上抑制体3は、張出し体2に対して上下方向に空隙4を形成した状態で配置する。地震時において、張出し体2を浮上抑制体3に接触させることで、浮上抑制体3の重量および浮上抑制体上の埋め戻し土の重量によって、マンホール1の浮き上がりを抑止する。その際、傾斜部と凸部21が係合することにより、張出し体2とマンホールとの結合力を高めるようにした。
【解決手段】マンホールの浮上抑制構造として、有底筒状構成のマンホールの外周壁に張出し体2を設け、更に張出し体2の上方を覆う浮上抑制体3を配置する。張出し体2は、マンホールの外周壁に固定される基台領域20と、基台領域20の内周面側にに突設されて、外周壁上方の傾斜部の段差と係合する凸部21を有するように構成する。一方、浮上抑制体3は、張出し体2に対して上下方向に空隙4を形成した状態で配置する。地震時において、張出し体2を浮上抑制体3に接触させることで、浮上抑制体3の重量および浮上抑制体上の埋め戻し土の重量によって、マンホール1の浮き上がりを抑止する。その際、傾斜部と凸部21が係合することにより、張出し体2とマンホールとの結合力を高めるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールの浮上防止構造およびマンホールの浮上防止方法に関し、特に、液状化現象などによるマンホールの浮き上がりを防止するために適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地震などにより発生した液状化現象によって、マンホールやこれに接続された管渠などの地下構造物が浮き上がって破壊されることが相次ぎ、大きな問題となっている。とりわけ、地震などの災害時にマンホールが浮き上がると、道路などの路面からマンホールが突き出て交通の妨げとなり、その結果、避難経路の確保や緊急車両の通行が困難になるなど、復興支援活動に重大な支障をもたらす原因となる。
【0003】
そのため、地震によって液状化現象が発生したとしても、マンホールが浮き上がらないように未然に防止することが地震対策として必要となる。特に、マンホールは人口の多い都市部ほど普及率が高いことから、既に設置されているマンホールに対して早急に対応することが重要である。このような、既設のマンホールの浮き上がりを防止する方法として、例えば特許文献1、2の技術が知られている。
【0004】
かかる特許文献1、2に記載の方法は、マンホールの外周部に張出し体を設置し、この張出し体を所定の空間(隙間)を設けて浮上抑制体で覆うようにする。このとき、張出し体は、一つまたは複数の部材をボルト等によってそれぞれ締結することにより、マンホール外周部に固定されている。そして、浮上抑制体は、所定の単位体積重量を有すると共に受圧面を有し、この受圧面を所定の深さに配置して埋め戻し材で埋めることで、浮上抑制体の重量および受圧面にかかる埋め戻し材の重量により、マンホールの浮き上がりを防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−115681号公報
【特許文献2】特許第4326586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、現在、使用されているマンホールには様々な種類・形状のものが存在する。例えば、代表的な種類としては、外周壁に凹凸(リブ)を有するJIS形の1〜7号マンホールや、外周壁に凹凸(リブ)の無いJIS形の0号組立マンホール等がある。また、各形状としては、最上部の出入口における開口の径に対して、地中側の筒状の直壁部の径が大きく形成され、開口と直壁部との間に略円錐形状の斜壁部が全周にわたって設けられている両斜壁形状や、該斜壁部が略半周に設けられている片斜壁形状のマンホールがある。
【0007】
ここで、0号組立マンホールと1〜7号マンホール(それぞれ、一般的な片斜壁形状のもの)について比較して説明する。前者の場合、特許文献1における張出し体は、締結状態の安定性から0号組立マンホールの直壁部に固定することが好ましい。
【0008】
これは、組立マンホールの浮上を抑制する機構において、張出し体の内周面と、組立マンホール側の直壁部が面接触できるので、張出し体の締付け力によって、張出し体と組立マンホールとの間に生じる摩擦力が大きくなり、組立マンホールを浮上させる浮力に抵抗できるためである。
【0009】
これに対し、1〜7号マンホールにおいては、0号組立マンホールと比較して、外周壁にリブが形成されている。具体的に、最上部のマンホールでは、円錐形状の斜壁筒の上下端に、径方向外側に拡張するような環状のリブが形成されている。上述の通り傾斜筒には張出し体を固定することが困難であることから、この1〜7号マンホールには、特許文献1、2の技術をそのまま適用することが難しいという問題があった。
【0010】
一方、積み上げられる中の最上部の1〜7号の斜壁マンホールでなく、下部側に配置される1〜7号直壁マンホールであれば、斜壁部ではない直壁部を備えている。しかし、これらの下部側のマンホールは、直壁部が地下1メートルより深い範囲に埋設されることが多い。このため、マンホールの周囲を地下1メートル以上掘り下げて直壁部を露出させ、そこに張出し体を固定しなければならず、作業効率が著しく悪化するという問題があった。
【0011】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、マンホールの種類・形状や、設置する周囲の環境に柔軟に対応可能で、一段と簡易に施工することができ、且つ、実用上十分に浮上を防止し得るマンホールの浮上防止構造およびマンホールの浮上防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、有底筒状構成のマンホールの外周壁に設けた張出し体と、前記張出し体の上方を所定の空隙を形成した状態で覆うように前記マンホールの周囲に設置される浮上抑制体とを備え、非常時、前記浮上抑制体が前記張出し体に接触することで、前記浮上抑制体の重量および前記浮上抑制体上に載置される埋め戻し土の重量によって、前記マンホールの浮き上がりを抑止するマンホールの浮上防止構造であって、前記張出し体は、前記マンホールにおいて、径方向に縮小する傾斜部を有する外周壁に固定される基台領域と、前記基台領域から前記マンホールの前記傾斜部へ向けて突設され、当該外周壁における前記斜壁部の段差に係合させる凸部と、前記基台領域の外周側に外方へ向けて突設され、非常時、前記浮上抑制体と接触させるための突出領域とを有することを特徴とするマンホールの浮上防止構造である。
【0013】
(2)本発明はまた、前記基台領域の凸部が、当該基台領域の内周における上方側に突設されることを特徴とする前記(1)記載のマンホールの浮上防止構造である。
【0014】
(3)本発明はさらに、前記基台領域の凸部が、前記マンホールにおける前記斜壁部の形状に沿った形状で成形されることを特徴とする前記(1)または(2)記載のマンホールの浮上防止構造である。
【0015】
(4)本発明はさらに、前記浮上抑制体の内周面と前記傾斜部の間に、前記空隙に土砂が流入することを防止する前記土砂流入防止壁を備えることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のマンホールの浮上防止構造である。
【0016】
(5)本発明は、設置されたマンホールの周囲を掘り起して坑を形成する掘削工程と、前記マンホールの外周壁に対して、該マンホールと係合する基台領域を配置することで、張出し体を形成する張出し体形成工程と、前記張出し体の上方を覆う浮上抑制体を設置する抑制体形成工程と、前記坑を完全に埋め戻す埋戻し工程と、を有するマンホールの浮上防止方法であって、前記張出し体が、前記マンホールにおいて、径方向に縮小する傾斜部を有する外周壁に固定される基台領域と、前記基台領域から前記マンホールの前記傾斜部へ向けて突設され、当該外周壁における前記斜壁部の段差に係合させる凸部と、前記基台領域の外周側に外方へ向けて突設され、非常時、前記浮上抑制体と接触させるための突出領域とを有し、前記張出し体形成工程では、前記基台領域の凸部が前記マンホールの外周壁における前記斜壁部との段差に係合するように前記基台領域を配置することを特徴とするマンホールの浮上防止方法である。
【0017】
(6)本発明はまた、前記基台領域の凸部を、当該基台領域の内周における上方側に突設することを特徴とする前記(5)記載のマンホールの浮上防止方法である。
【0018】
(7)本発明はさらに、前記基台領域の凸部を、前記マンホールにおける斜壁部の形状に沿った形状で成形することを特徴とする前記(5)または(6)記載のマンホールの浮上防止方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、張出し体の基台領域において、マンホールのリブ等に形成される傾斜部へ向けて内周方向に突設される凸部を設けるようにしたことにより、該張出し体の設置位置を該マンホールの斜壁部近傍にすることが可能となる。更に、この傾斜部の段差に対して凸部を係合させることができるため、上下方向に対する耐荷重性を高めることができる。従って、この凸部による耐荷重性向上によって、張出し体の基台領域とマンホールの外周壁との接触面積を小さくすることが可能となり、例えば、マンホールにおけるリブの外周壁に固定することができる。この結果、マンホールの種類や形状に関係なく、張出し体を柔軟に設置することができる。しかも、張出し体の設置位置を地表に近づけることができるため、施工時における設置作業を格段と簡易化することができる。かくして、マンホールの種類・形状や、周囲の環境に柔軟に対応可能で、一段と簡易に施工することができ、且つ、実用上十分に浮上を防止し得るマンホールの浮上防止構造およびマンホールの浮上防止方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係る浮上防止構造を備えたマンホールの部分断面側面図である。
【図2】同浮上防止構造における張出し体の環状バンドの斜視図である。
【図3】同浮上防止構造における浮上抑制体を示す斜視図である。
【図4】同浮上抑制体の他の例を示す斜視図である。
【図5】同浮上防止構造の要部拡大断面図である。
【図6】同浮上防止構造における張出し体の環状バンドの拡大斜視図である。
【図7】同浮上防止構造における張出し体の環状バンドの他の例を示す拡大斜視図である。
【図8】同浮上防止構造における張出し体の環状バンドの他の例を示す拡大斜視図である。
【図9】同浮上防止構造における張出し体の環状バンドの他の例を示す拡大斜視図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る浮上防止構造を備えたマンホールの部分断面側面図である。
【図11】本発明の他の実施例に係る浮上防止構造を備えたマンホールの部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、以下の説明において、周知の手法、周知の手順、周知の構造等(以下、これらを総じて周知事項と称す)については、その細部にわたる説明を割愛するが、これは説明を簡潔にするためであって、これら周知事項のすべてまたは一部を意図的に排除するものではない。かかる周知事項は、本発明の出願時点で当業者の知り得るところであるので、以下の説明に当然含まれている。
【0022】
以下、図1〜図6を参照して本発明の実施形態にかかるマンホールの浮上防止構造およびその浮上防止方法について、組立マンホールの一般的な両斜壁形状のものを用いて説明する。図1は、浮上防止構造を有するマンホールの部分断面側面図であり、マンホールの周囲の地面Gを所定深さだけ掘り起して、マンホールの直壁部を露出させた状態を示している。
【0023】
図1において、最上段のマンホール1は例えばJIS形の斜壁マンホールの一般的な形状であり、円筒形状となっている。なお、このマンホール1の下側には、JIS形の直壁マンホール1Aがその深さに応じて複数段積み上げられている。この直壁マンホール1Aは、直壁部10Aを備えており、作業空間を確保するための所定の広さを有している。最下部は有底の筒状体となっており、下水管などの管渠13が接続される。
【0024】
最上段のマンホール1は、上端の頂部に形成される出入口9と、マンホール1の内径を下方に向かって拡張する斜壁を備えた斜壁筒11を備える。この斜壁筒11は、頭部がカットされたような円錐形状となっている。
【0025】
出入口9は、斜壁筒11の上端が開口することで形成されており、この出入口9には蓋12が設置されている。また、特に図示しないが、マンホール1の内壁には作業員が昇降するためのはしご体が設けられている。
【0026】
斜壁筒11の下端及び上端には、径方向外側に拡張するリブ11A、11Bが形成されている。下側のリブ11Aは、外周壁が鉛直となる直壁部11A−1と、この直壁部11A−1の上側に形成されて外周壁が径方向内側に傾斜する傾斜部11A−2を備えている。なお、上側のリブ11Bは、直壁部11B−1の下側に傾斜部11B−2が形成されている。
【0027】
このマンホール1のリブ11Aに、張出し体2が設けられている。この張出し体2は、環状バンド20、凸部21、及び突出部22を備えている。図2に示されるように、環状バンド20は、マンホール1のリブ11Aにおける直壁部11A−1に取り付けられて基台領域となる。凸部21は、この環状バンド20の内周面20a側において、リブ11Aの傾斜部11A−2側へ向けて突設される。突出部22は、環状バンド20の外周側20bに径方向外方に向けて突設されて、非常時に、後述する浮上抑制体3と接触させるための突出領域となる。凸部21は、例えば直径9mmの棒鋼を環状バンド20の内周面に沿って周方向に溶接することで形成する。なお、詳細は後述するが、凸部21は直壁部11A−1と傾斜部11A−2によって形成される段差と係合する。なお、設置時には、凸部21を傾斜部11A−2に密接させておくことが好ましい。
【0028】
かかる環状バンド20は、例えば円弧状に湾曲した複数の帯状の板材を連結して環状に形成されており、各々両端が折り曲げられることで突出部22、22が形成されている。そして、各突出部22、22には、ボルト23を通す貫通孔22a(後述する図6参照)が設けられており、ボルト23およびナット24によって締結されることにより、突出部22、22を連結部として機能させるようになっている。また、突出部22は、地震等の非常時において、マンホール1と共に浮上しようとすると、後述する浮上抑制体3に当接するようになっている。
【0029】
環状バンド20は、ボルト23とナット24の締結力により、マンホール1のリブ11Aに締付け固定される。この環状バンド20は、ステンレスや、亜鉛メッキを施した鉄板などにより形成するとよい。なお、本実施例では、三枚の帯状の板材を連結して環状バンド20を形成しているが、一枚又は二枚の帯状の板材により環状バンドを形成するように構成してもよく、四枚以上の帯状の板材を連結して環状バンドを形成するようにしてもよい。
【0030】
図1に戻って、マンホール1の周囲には浮上抑制体3が設置される。この浮上抑制体3は、張出し体2の上方を覆うようになっており、さらに、張出し体2の突出部22に対して上下方向に空隙4が形成されている。
【0031】
浮上抑制体3は、マンホール1とは別体であり、図3に示されるように、分周した重錘部材30を並べて連結することで環状構造となる。この結果、マンホール1のリブ11Aの近辺を囲むようになっている。重錘部材30は、地下水や液状化した地盤により生じる浮力に対抗しうる単位体積重量を有する材質を用いて、この浮力によって浮き上がらない形状に形成する。材質としては、例えば、コンクリートを使用するとよい。
【0032】
また、重錘部材30は、充分な重量を有する厚さに形成すると共に、その上面を受圧面32とする。この受圧面32が地面に露出しない深さに浮上抑制体3を配置する。受圧面32は、上載される土砂(埋め戻し土)によって充分な荷重を受けると共に、マンホール1の浮き上がりを抑制可能な流体抵抗を受ける。そのために、受圧面32は、相応の上面投影面積を持つように形成する。重錘部材30の内径は、マンホール1の外径よりも大きく形成して、マンホール1と接触しないようにする。一方で、重錘部材30の下面側は、張出し体2の突出部22と係合(当接)する必要があるため、この突出部22よりも、重錘部材30の内径が内側となるようにする。
【0033】
なお、本実施例では、半円環状に分周した二個の重錘部材30を並べて環状の浮上抑制体3を形成しているが、一個の円環状の重錘部材により浮上抑制体を構成してもよく、三個以上に分周した扇形の重錘部材を並べて環状の浮上抑制体を形成する構成としてもよい。また、重錘部材30の受圧面32は平らに形成しているが、凹凸を形成したり、円環の中心側に向かって低く傾斜して形成したりしてもよい。更に本実施例では、図4(A)に示すように、各重錘部材30の下面側において、張出し体2の突出部22に対応する位置に凹状の収容部31を形成する。また、図4(B)に示すように、重錘部材30の内周側下部に環状の収容用段部33を形成してもよい。このように、各重錘部材30の下面側に段差を形成することで、浮上抑制体3と張出し体2の突出部22が、上下方向に加えて半径方向や周方向に係合可能となる。なお、本発明はこれに限定されず、各重錘部材30の下面側を平面としても良い。
【0034】
図5は、本実施例の浮上防止構造の要部拡大断面図である。図5では、マンホール1の斜壁筒11に拡張して形成されるリブ11Aと、このリブ11Aが備える直壁部11A−1と、この直壁部11Aの上側に形成される傾斜部11A−2と、直壁部11A−1と傾斜部11A−2の双方にまたがるようにして設けられた張出し体2と、リブ11Aの周囲に配置された浮上抑制体3を拡大して示している。
【0035】
張出し体2における環境バンド20は、その内周面が、直壁部11A−1の外周面と面接触するようにして固定される。更にこの環状バンド20の上側は、直壁部11A−1から上方にはみ出るようになっている。従って、環状バンド20の内周面の上側に突設される凸部21は、直壁部11A−1の外周面よりも半径方向内側に突出するので、凸部21を傾斜部11A−2の傾斜面に密着させることができる。この結果、凸部21は、直壁部11A−1と傾斜部11A−2の段差に対して上下方向に係合する。
【0036】
浮上抑制体3は、張出し体2における突出部22の上方に配置される。なお、この浮上抑制体3は、地盤を固めることで形成される支持部S2の上に設置される。また、張出し体2の突出部22と浮上抑制体3の間には、地面と地下方向における上下方向の空隙4が形成されるようにする。この空隙4により、地震等の災害が生じていない定常時は、浮上抑制体3や上方の埋め戻し土の荷重が、張出し体2に作用しないようになっている。
【0037】
更に、浮上抑制体3の内周面には、鉛直方向に延びる環状の土砂流入防止壁80が設置される。リブ11Aの上側は径方向に縮小する傾斜部11A−2となることから、リブ11Aに張出し体2を固定する場合、浮上抑制体3と張出し体2の間の上下方向の隙間4が開口してしまい、この空隙4に土砂が流入し易い。従って、この土砂流入防止壁80は、環状バンド20の外周面に沿うと共に、空隙4の浮上抑制体3の内周側を覆うようにして配置される。この結果、リブ11Aの上に埋め戻される土砂82が空隙4に進入できないようになる。
【0038】
また、浮上抑制体3、土砂流入防止壁80及びリブ11Aの上方を覆うようにして、土砂流出防止ネット86が配置される。これは、リブ11Aの傾斜部11A−2の上に一旦敷き詰めた土砂82が移動しないように固定する機能を有する。
【0039】
本発明において、凸部21の形成方法は、これに限ることはなく、要は環状バンド20をマンホール1の傾斜部11A−2近傍に取り付ける際に、凸部21がこの傾斜部11A−2の傾斜に係合すべく当接するものであれば、凸部21の形成方法は種々の手法を広く適用することができる。例えば、図6は、本実施例の他の例となる張出し体2における環状バンド20を拡大して示す拡大図である。図6に示すように、環状バンド20の内周20a側には、取付対象となるマンホール1の外壁(図1参照)へ向けて、例えば断面が半円形状に突出した凸部21が突設されている。この場合、凸部21は、断面が半円形状となる棒状部材を溶接や接着等の手法を用いて固着することで形成される。
【0040】
また例えば、図6との対応部分に同一符号を付した図7乃至9に示すように、断面が真円形状となるパイプを用いて凸部21を形成してもよく(図7)、また、傾斜部11A−2の傾斜に沿って密着するような傾斜面を有するように、断面が三角形となるよう棒状部材を環状バンド20の内周面20aに固定用いてもよく(図8)、図8とほぼ同様な傾斜を有するが、断面が略台形状となる角柱を用いてもよい(図9)。
【0041】
本実施例の浮上抑制構造は、張出し体2が、マンホール1におけるリブ11Aの傾斜部11A−2近傍に固定される。更に、環状バンド20の内周面20a側に突設された凸部21が、この傾斜部11A−2の傾斜に係合可能に配設されている。従って、地震等の非常時においてマンホール1が浮上して、張出し体2が浮上抑制体3と係合した場合でも、その荷重を、凸部21と傾斜部11A−2の係合構造によって受け止めることができる。従って、マンホール1が浮上する勢いによって、環状バンド20がリブ11Aから下側にずれそうになっても、この凸部21によって環状バンド20のずれを防止できる。この結果、鉛直方向の幅が少ないリブ11Aの直壁部11A−1に対して、張出し体2を確実に固定することが可能になる。
【0042】
更に、張出し体2を、このマンホール1の下側に積み重ねられる直壁マンホール1A側に固定する必要もなくなり、この分だけ浮上抑制体3を上方の高い位置に設けることが可能となる。この結果、地中の深い所に通信回線や上水道等の地下埋設物が存在する場合であっても、それを回避して浮上抑制体3を設置できる。なお、地震等の非常時には、マンホール1が浮上しようとして、浮上抑制体3と張出し体2(特に突出部22)が接触するが、この張出し体2は、その凸部21がマンホール1の傾斜部11A−2に対して密着するので、凸部21が傾斜部11A−2を下方に向けて押し下げるように作用するので、浮上抑制体2の荷重をリブ11Aに効率的に伝達することにより、マンホール1の浮上をより一段と確実に抑制することができる。
【0043】
また、浮上抑制体3と、リブ11Aの傾斜部11A−2との間には環状の空間が形成され、そこには土砂82が敷き詰められる。この土砂82は、地震時の振動(横揺れ)によるマンホール1の慣性力の増加を抑制する。一方、この土砂82の外側には、土砂流入防止壁80が配置されているので、この土砂82が空隙4に進入してしまうことも防止できる。なお、この土砂流入防止壁80は、ゴムやウレタンなどの弾性材やプラスチック等の樹脂により形成することが好ましい。この土砂流入防止壁80は、地震時の揺れにより浮上抑制体3とリブ11Aが直接衝突して破損することを未然に防ぐ機能も備えている。
【0044】
次に、本実施例の浮上防止構造の施工手順を、図1を参照して説明する。
【0045】
まず、設置されているマンホール1の周囲の地面Gを掘り起して、マンホール1の傾斜筒11を露出させる(掘削工程)。マンホールの周囲などを掘り起す場合、一般的には方形の坑を掘削する。ここでは、マンホール1の周囲となる第1坑を掘削する。第1坑の掘り起す範囲は、例えば、マンホール1の周囲200cm×200cm程度とし、120cm程度の深さまでとする。これにより、第1坑ではマンホール1の下側のリブ11Aまで露出する。
【0046】
リブ11Aが露出したら、掘り起した第1坑の底面である地盤を平らにならし、充分に締め固めて支持部S2を形成する。支持部S2は、張出し体2を固定する際に利用される。具体的に、支持部S2上において、環状バンド20を連結することで、これをリブ11Aの直壁部11A−1の外周面に固定する。この際、環状バンド20の内周面に突設される凸部21は、リブ11Aの傾斜部11A−2に沿って密着させるように取り付ける。
【0047】
なお、環状バンド20は、ボルト23およびナット24によりリブ11Aに締付固定する。また、張出し体2の突出部22は、マンホール1から半径方向外側に5cm乃至15cmほど拡張している。なお、環状バンド20をリブ11Aに取り付ける際に、環状バンド20とリブ11Aとの間にゴム板などの弾性部材(図示せず)を挟むようにして取り付けてもよい。弾性部材を介することで、簡便な方法により、環状バンド20をより一層確実に締付固定して、マンホール1とのずれを防止することができる。この手順により、マンホール1に張出し体2が形成される(張出部形成工程)。
【0048】
張出し体2を形成した後、更にこの支持部S2に浮上抑制体3を配置する。具体的には、支持部S2に重錘部材30を設置して連結することで、環状の浮上抑制体3を構成する(浮上抑制体設置工程)。この際、充分に締め固めた支持部S2により、浮上抑制体3が沈下するのを防止すると共に、浮上抑制体3の高さ位置を規定する。この結果、浮上抑制体3の下面側と、張出し体2の突出部22の間に上下方向の空隙4が形成される。なお、この空隙4の高さは1cm乃至5cm程度に設定する。この結果、浮上抑制体3は、張出し体2の上方を覆う状態となる。
【0049】
このとき、重錘部材30の下面側に凹凸を形成しておくと、締め固めた土砂又は砕石からなる支持部S2とかみ合って、浮上抑制体3の設置時の安定性がより一層向上する。
【0050】
その後、浮上抑制体3の内周側に土砂流入防止壁80を設置してから、その内側に土砂82を埋め戻す。その後、土砂流出防止ネット86でこれらの全体を覆い、最後に、埋め戻し土や下層路盤、上層路盤などを、それぞれ充分に締め固めながら順に埋め戻していく(埋め戻し工程)。このシート状の土砂流出防止ネット86は、不織布等の布体や繊維網等の網体などにより形成する。これにより、埋め戻し土の外部への流失を防止する。
【0051】
なお、ここでは特に図示しないが、空隙4に、弾性変形可能なパッキン材などを挿入してもよい。
【0052】
このようにして埋設した浮上抑制体3の重量と、浮上抑制体3の受圧面(上面)32に上載される土砂の荷重などの力により、マンホール1の浮上を抑制する。
【0053】
また、受圧面32に上載した土砂が液状化して上載土砂による荷重が減少し、浮上抑制体3が浮き上がろうとしても、所定の上面投影面積を有する受圧面32が流体抵抗を受けて浮上が抑制される。
【0054】
例えば、マンホール1の外径が約120cmの1号マンホールの場合、浮上抑制体3の受圧面32が、少なくとも地面より80cm程度の深さになるように配置する。また、円環状の浮上抑制体3の内径は、マンホール1や張出し体2との間に径方向に数cm以上の隙間が空くようにする。なお、浮上抑制体3の外径は180cm乃至250cm程度に形成するとよい。このとき、浮上抑制体3の上面投影面積は約1.6m2乃至2.2m2となる。
【0055】
さらに、浮上抑制体3が充分な重量と強度を有するように、重錘部材30はコンクリートで形成し、その厚さを少なくとも20cm乃至30cm程度に形成するとよい。このとき、浮上抑制体3の重量は約700kg乃至1500kgとなる(コンクリートの単位体積重量を2.35t/m3とした)。
【0056】
上述した構成によれば、地下水位の上昇や地震の際の液状化現象によってマンホール1などが浮力を受けても、張出し体2の突出部22が浮上抑制体3と上下方向に衝突する。浮上抑制体3の重量からそれにかかる浮力を相殺した荷重に加えて、地面に露出しない所定の深さに配置された受圧面32に上載する土砂等の荷重が、当該張出し体2の締結力と凸部21の係合力を介してマンホール1に掛かる。これらの荷重により確実にマンホール1の浮き上がりを抑制することができる。また、張出し体2が浮上抑制体3に衝突した際の衝撃により、浮上抑制体3が浮き上がりそうになっても、所定の上面投影面積に比例した流体抵抗が浮上抑制体3にかかるため、この流体抵抗によってもマンホール1の浮き上がりを抑制することができる。
【0057】
特に、上述した構成によれば、環状バンド20の内周側20aに凸部21を設けている。これにより、リブ11Aにおける直壁部11A−1の外周面に対して張出し体2を締結しても、この凸部21が傾斜部11A−2と上下方向に係合するので、張出し体2とリブ11Aとのズレを防止できる。この結果、マンホール1の様々な形状に柔軟に適応することが可能となる。
【0058】
また、本構造によれば、JIS形の斜壁マンホールに対しても、張出し体2を地面から浅い位置に設置することが出来るので、掘削作業負担が軽減され、工期を短縮することも可能になる。さらに、上述した方法によれば、特別な機械や特殊な技術を用いることなく、簡易な施工方法によりマンホールの浮き上がりを抑制でき、作業負担を軽減することができる。
【0059】
以上、本実施例では、周方向に均等に傾斜した両傾斜形マンホール1に対して張出し体2を締結する場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図1との対応部分に同一符号を付した図10に示すように、JIS形の片斜壁形マンホール100に適用することも可能である。このように、片斜壁筒11におけるリブ11Aに対しても、張出し体2をマンホール1と同様に設置することができる。
【0060】
因みに、形状も片斜壁形状に限ることはなく、図1との対応部分に同一符号を付し図11に示すように、いわゆるリブを有しないようなJIS形の組立マンホール200に対して適用することも可能である。この組立マンホール200は、傾斜筒11と直壁筒10が連続するようにして一体的に構成される。この場合は、傾斜筒11と直壁筒10の境界に張出し体2を締結する。この結果、張出し体2の凸部21が、傾斜筒11と直壁筒11の段差に係合できるので、同様に上下方向にズレを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、マンホールの浮上抑制技術に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1、100、200…マンホール
2…張出し体
3…浮上抑制体
10…直壁筒
11…斜壁筒
11A…リブ
11A−1…直壁部
11A−2…傾斜部
20…環状バンド(基台領域)
20a…内周
21…凸部
22…突出部
32…受圧面
G…地面
S2…支持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールの浮上防止構造およびマンホールの浮上防止方法に関し、特に、液状化現象などによるマンホールの浮き上がりを防止するために適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地震などにより発生した液状化現象によって、マンホールやこれに接続された管渠などの地下構造物が浮き上がって破壊されることが相次ぎ、大きな問題となっている。とりわけ、地震などの災害時にマンホールが浮き上がると、道路などの路面からマンホールが突き出て交通の妨げとなり、その結果、避難経路の確保や緊急車両の通行が困難になるなど、復興支援活動に重大な支障をもたらす原因となる。
【0003】
そのため、地震によって液状化現象が発生したとしても、マンホールが浮き上がらないように未然に防止することが地震対策として必要となる。特に、マンホールは人口の多い都市部ほど普及率が高いことから、既に設置されているマンホールに対して早急に対応することが重要である。このような、既設のマンホールの浮き上がりを防止する方法として、例えば特許文献1、2の技術が知られている。
【0004】
かかる特許文献1、2に記載の方法は、マンホールの外周部に張出し体を設置し、この張出し体を所定の空間(隙間)を設けて浮上抑制体で覆うようにする。このとき、張出し体は、一つまたは複数の部材をボルト等によってそれぞれ締結することにより、マンホール外周部に固定されている。そして、浮上抑制体は、所定の単位体積重量を有すると共に受圧面を有し、この受圧面を所定の深さに配置して埋め戻し材で埋めることで、浮上抑制体の重量および受圧面にかかる埋め戻し材の重量により、マンホールの浮き上がりを防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−115681号公報
【特許文献2】特許第4326586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、現在、使用されているマンホールには様々な種類・形状のものが存在する。例えば、代表的な種類としては、外周壁に凹凸(リブ)を有するJIS形の1〜7号マンホールや、外周壁に凹凸(リブ)の無いJIS形の0号組立マンホール等がある。また、各形状としては、最上部の出入口における開口の径に対して、地中側の筒状の直壁部の径が大きく形成され、開口と直壁部との間に略円錐形状の斜壁部が全周にわたって設けられている両斜壁形状や、該斜壁部が略半周に設けられている片斜壁形状のマンホールがある。
【0007】
ここで、0号組立マンホールと1〜7号マンホール(それぞれ、一般的な片斜壁形状のもの)について比較して説明する。前者の場合、特許文献1における張出し体は、締結状態の安定性から0号組立マンホールの直壁部に固定することが好ましい。
【0008】
これは、組立マンホールの浮上を抑制する機構において、張出し体の内周面と、組立マンホール側の直壁部が面接触できるので、張出し体の締付け力によって、張出し体と組立マンホールとの間に生じる摩擦力が大きくなり、組立マンホールを浮上させる浮力に抵抗できるためである。
【0009】
これに対し、1〜7号マンホールにおいては、0号組立マンホールと比較して、外周壁にリブが形成されている。具体的に、最上部のマンホールでは、円錐形状の斜壁筒の上下端に、径方向外側に拡張するような環状のリブが形成されている。上述の通り傾斜筒には張出し体を固定することが困難であることから、この1〜7号マンホールには、特許文献1、2の技術をそのまま適用することが難しいという問題があった。
【0010】
一方、積み上げられる中の最上部の1〜7号の斜壁マンホールでなく、下部側に配置される1〜7号直壁マンホールであれば、斜壁部ではない直壁部を備えている。しかし、これらの下部側のマンホールは、直壁部が地下1メートルより深い範囲に埋設されることが多い。このため、マンホールの周囲を地下1メートル以上掘り下げて直壁部を露出させ、そこに張出し体を固定しなければならず、作業効率が著しく悪化するという問題があった。
【0011】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、マンホールの種類・形状や、設置する周囲の環境に柔軟に対応可能で、一段と簡易に施工することができ、且つ、実用上十分に浮上を防止し得るマンホールの浮上防止構造およびマンホールの浮上防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、有底筒状構成のマンホールの外周壁に設けた張出し体と、前記張出し体の上方を所定の空隙を形成した状態で覆うように前記マンホールの周囲に設置される浮上抑制体とを備え、非常時、前記浮上抑制体が前記張出し体に接触することで、前記浮上抑制体の重量および前記浮上抑制体上に載置される埋め戻し土の重量によって、前記マンホールの浮き上がりを抑止するマンホールの浮上防止構造であって、前記張出し体は、前記マンホールにおいて、径方向に縮小する傾斜部を有する外周壁に固定される基台領域と、前記基台領域から前記マンホールの前記傾斜部へ向けて突設され、当該外周壁における前記斜壁部の段差に係合させる凸部と、前記基台領域の外周側に外方へ向けて突設され、非常時、前記浮上抑制体と接触させるための突出領域とを有することを特徴とするマンホールの浮上防止構造である。
【0013】
(2)本発明はまた、前記基台領域の凸部が、当該基台領域の内周における上方側に突設されることを特徴とする前記(1)記載のマンホールの浮上防止構造である。
【0014】
(3)本発明はさらに、前記基台領域の凸部が、前記マンホールにおける前記斜壁部の形状に沿った形状で成形されることを特徴とする前記(1)または(2)記載のマンホールの浮上防止構造である。
【0015】
(4)本発明はさらに、前記浮上抑制体の内周面と前記傾斜部の間に、前記空隙に土砂が流入することを防止する前記土砂流入防止壁を備えることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のマンホールの浮上防止構造である。
【0016】
(5)本発明は、設置されたマンホールの周囲を掘り起して坑を形成する掘削工程と、前記マンホールの外周壁に対して、該マンホールと係合する基台領域を配置することで、張出し体を形成する張出し体形成工程と、前記張出し体の上方を覆う浮上抑制体を設置する抑制体形成工程と、前記坑を完全に埋め戻す埋戻し工程と、を有するマンホールの浮上防止方法であって、前記張出し体が、前記マンホールにおいて、径方向に縮小する傾斜部を有する外周壁に固定される基台領域と、前記基台領域から前記マンホールの前記傾斜部へ向けて突設され、当該外周壁における前記斜壁部の段差に係合させる凸部と、前記基台領域の外周側に外方へ向けて突設され、非常時、前記浮上抑制体と接触させるための突出領域とを有し、前記張出し体形成工程では、前記基台領域の凸部が前記マンホールの外周壁における前記斜壁部との段差に係合するように前記基台領域を配置することを特徴とするマンホールの浮上防止方法である。
【0017】
(6)本発明はまた、前記基台領域の凸部を、当該基台領域の内周における上方側に突設することを特徴とする前記(5)記載のマンホールの浮上防止方法である。
【0018】
(7)本発明はさらに、前記基台領域の凸部を、前記マンホールにおける斜壁部の形状に沿った形状で成形することを特徴とする前記(5)または(6)記載のマンホールの浮上防止方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、張出し体の基台領域において、マンホールのリブ等に形成される傾斜部へ向けて内周方向に突設される凸部を設けるようにしたことにより、該張出し体の設置位置を該マンホールの斜壁部近傍にすることが可能となる。更に、この傾斜部の段差に対して凸部を係合させることができるため、上下方向に対する耐荷重性を高めることができる。従って、この凸部による耐荷重性向上によって、張出し体の基台領域とマンホールの外周壁との接触面積を小さくすることが可能となり、例えば、マンホールにおけるリブの外周壁に固定することができる。この結果、マンホールの種類や形状に関係なく、張出し体を柔軟に設置することができる。しかも、張出し体の設置位置を地表に近づけることができるため、施工時における設置作業を格段と簡易化することができる。かくして、マンホールの種類・形状や、周囲の環境に柔軟に対応可能で、一段と簡易に施工することができ、且つ、実用上十分に浮上を防止し得るマンホールの浮上防止構造およびマンホールの浮上防止方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係る浮上防止構造を備えたマンホールの部分断面側面図である。
【図2】同浮上防止構造における張出し体の環状バンドの斜視図である。
【図3】同浮上防止構造における浮上抑制体を示す斜視図である。
【図4】同浮上抑制体の他の例を示す斜視図である。
【図5】同浮上防止構造の要部拡大断面図である。
【図6】同浮上防止構造における張出し体の環状バンドの拡大斜視図である。
【図7】同浮上防止構造における張出し体の環状バンドの他の例を示す拡大斜視図である。
【図8】同浮上防止構造における張出し体の環状バンドの他の例を示す拡大斜視図である。
【図9】同浮上防止構造における張出し体の環状バンドの他の例を示す拡大斜視図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る浮上防止構造を備えたマンホールの部分断面側面図である。
【図11】本発明の他の実施例に係る浮上防止構造を備えたマンホールの部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、以下の説明において、周知の手法、周知の手順、周知の構造等(以下、これらを総じて周知事項と称す)については、その細部にわたる説明を割愛するが、これは説明を簡潔にするためであって、これら周知事項のすべてまたは一部を意図的に排除するものではない。かかる周知事項は、本発明の出願時点で当業者の知り得るところであるので、以下の説明に当然含まれている。
【0022】
以下、図1〜図6を参照して本発明の実施形態にかかるマンホールの浮上防止構造およびその浮上防止方法について、組立マンホールの一般的な両斜壁形状のものを用いて説明する。図1は、浮上防止構造を有するマンホールの部分断面側面図であり、マンホールの周囲の地面Gを所定深さだけ掘り起して、マンホールの直壁部を露出させた状態を示している。
【0023】
図1において、最上段のマンホール1は例えばJIS形の斜壁マンホールの一般的な形状であり、円筒形状となっている。なお、このマンホール1の下側には、JIS形の直壁マンホール1Aがその深さに応じて複数段積み上げられている。この直壁マンホール1Aは、直壁部10Aを備えており、作業空間を確保するための所定の広さを有している。最下部は有底の筒状体となっており、下水管などの管渠13が接続される。
【0024】
最上段のマンホール1は、上端の頂部に形成される出入口9と、マンホール1の内径を下方に向かって拡張する斜壁を備えた斜壁筒11を備える。この斜壁筒11は、頭部がカットされたような円錐形状となっている。
【0025】
出入口9は、斜壁筒11の上端が開口することで形成されており、この出入口9には蓋12が設置されている。また、特に図示しないが、マンホール1の内壁には作業員が昇降するためのはしご体が設けられている。
【0026】
斜壁筒11の下端及び上端には、径方向外側に拡張するリブ11A、11Bが形成されている。下側のリブ11Aは、外周壁が鉛直となる直壁部11A−1と、この直壁部11A−1の上側に形成されて外周壁が径方向内側に傾斜する傾斜部11A−2を備えている。なお、上側のリブ11Bは、直壁部11B−1の下側に傾斜部11B−2が形成されている。
【0027】
このマンホール1のリブ11Aに、張出し体2が設けられている。この張出し体2は、環状バンド20、凸部21、及び突出部22を備えている。図2に示されるように、環状バンド20は、マンホール1のリブ11Aにおける直壁部11A−1に取り付けられて基台領域となる。凸部21は、この環状バンド20の内周面20a側において、リブ11Aの傾斜部11A−2側へ向けて突設される。突出部22は、環状バンド20の外周側20bに径方向外方に向けて突設されて、非常時に、後述する浮上抑制体3と接触させるための突出領域となる。凸部21は、例えば直径9mmの棒鋼を環状バンド20の内周面に沿って周方向に溶接することで形成する。なお、詳細は後述するが、凸部21は直壁部11A−1と傾斜部11A−2によって形成される段差と係合する。なお、設置時には、凸部21を傾斜部11A−2に密接させておくことが好ましい。
【0028】
かかる環状バンド20は、例えば円弧状に湾曲した複数の帯状の板材を連結して環状に形成されており、各々両端が折り曲げられることで突出部22、22が形成されている。そして、各突出部22、22には、ボルト23を通す貫通孔22a(後述する図6参照)が設けられており、ボルト23およびナット24によって締結されることにより、突出部22、22を連結部として機能させるようになっている。また、突出部22は、地震等の非常時において、マンホール1と共に浮上しようとすると、後述する浮上抑制体3に当接するようになっている。
【0029】
環状バンド20は、ボルト23とナット24の締結力により、マンホール1のリブ11Aに締付け固定される。この環状バンド20は、ステンレスや、亜鉛メッキを施した鉄板などにより形成するとよい。なお、本実施例では、三枚の帯状の板材を連結して環状バンド20を形成しているが、一枚又は二枚の帯状の板材により環状バンドを形成するように構成してもよく、四枚以上の帯状の板材を連結して環状バンドを形成するようにしてもよい。
【0030】
図1に戻って、マンホール1の周囲には浮上抑制体3が設置される。この浮上抑制体3は、張出し体2の上方を覆うようになっており、さらに、張出し体2の突出部22に対して上下方向に空隙4が形成されている。
【0031】
浮上抑制体3は、マンホール1とは別体であり、図3に示されるように、分周した重錘部材30を並べて連結することで環状構造となる。この結果、マンホール1のリブ11Aの近辺を囲むようになっている。重錘部材30は、地下水や液状化した地盤により生じる浮力に対抗しうる単位体積重量を有する材質を用いて、この浮力によって浮き上がらない形状に形成する。材質としては、例えば、コンクリートを使用するとよい。
【0032】
また、重錘部材30は、充分な重量を有する厚さに形成すると共に、その上面を受圧面32とする。この受圧面32が地面に露出しない深さに浮上抑制体3を配置する。受圧面32は、上載される土砂(埋め戻し土)によって充分な荷重を受けると共に、マンホール1の浮き上がりを抑制可能な流体抵抗を受ける。そのために、受圧面32は、相応の上面投影面積を持つように形成する。重錘部材30の内径は、マンホール1の外径よりも大きく形成して、マンホール1と接触しないようにする。一方で、重錘部材30の下面側は、張出し体2の突出部22と係合(当接)する必要があるため、この突出部22よりも、重錘部材30の内径が内側となるようにする。
【0033】
なお、本実施例では、半円環状に分周した二個の重錘部材30を並べて環状の浮上抑制体3を形成しているが、一個の円環状の重錘部材により浮上抑制体を構成してもよく、三個以上に分周した扇形の重錘部材を並べて環状の浮上抑制体を形成する構成としてもよい。また、重錘部材30の受圧面32は平らに形成しているが、凹凸を形成したり、円環の中心側に向かって低く傾斜して形成したりしてもよい。更に本実施例では、図4(A)に示すように、各重錘部材30の下面側において、張出し体2の突出部22に対応する位置に凹状の収容部31を形成する。また、図4(B)に示すように、重錘部材30の内周側下部に環状の収容用段部33を形成してもよい。このように、各重錘部材30の下面側に段差を形成することで、浮上抑制体3と張出し体2の突出部22が、上下方向に加えて半径方向や周方向に係合可能となる。なお、本発明はこれに限定されず、各重錘部材30の下面側を平面としても良い。
【0034】
図5は、本実施例の浮上防止構造の要部拡大断面図である。図5では、マンホール1の斜壁筒11に拡張して形成されるリブ11Aと、このリブ11Aが備える直壁部11A−1と、この直壁部11Aの上側に形成される傾斜部11A−2と、直壁部11A−1と傾斜部11A−2の双方にまたがるようにして設けられた張出し体2と、リブ11Aの周囲に配置された浮上抑制体3を拡大して示している。
【0035】
張出し体2における環境バンド20は、その内周面が、直壁部11A−1の外周面と面接触するようにして固定される。更にこの環状バンド20の上側は、直壁部11A−1から上方にはみ出るようになっている。従って、環状バンド20の内周面の上側に突設される凸部21は、直壁部11A−1の外周面よりも半径方向内側に突出するので、凸部21を傾斜部11A−2の傾斜面に密着させることができる。この結果、凸部21は、直壁部11A−1と傾斜部11A−2の段差に対して上下方向に係合する。
【0036】
浮上抑制体3は、張出し体2における突出部22の上方に配置される。なお、この浮上抑制体3は、地盤を固めることで形成される支持部S2の上に設置される。また、張出し体2の突出部22と浮上抑制体3の間には、地面と地下方向における上下方向の空隙4が形成されるようにする。この空隙4により、地震等の災害が生じていない定常時は、浮上抑制体3や上方の埋め戻し土の荷重が、張出し体2に作用しないようになっている。
【0037】
更に、浮上抑制体3の内周面には、鉛直方向に延びる環状の土砂流入防止壁80が設置される。リブ11Aの上側は径方向に縮小する傾斜部11A−2となることから、リブ11Aに張出し体2を固定する場合、浮上抑制体3と張出し体2の間の上下方向の隙間4が開口してしまい、この空隙4に土砂が流入し易い。従って、この土砂流入防止壁80は、環状バンド20の外周面に沿うと共に、空隙4の浮上抑制体3の内周側を覆うようにして配置される。この結果、リブ11Aの上に埋め戻される土砂82が空隙4に進入できないようになる。
【0038】
また、浮上抑制体3、土砂流入防止壁80及びリブ11Aの上方を覆うようにして、土砂流出防止ネット86が配置される。これは、リブ11Aの傾斜部11A−2の上に一旦敷き詰めた土砂82が移動しないように固定する機能を有する。
【0039】
本発明において、凸部21の形成方法は、これに限ることはなく、要は環状バンド20をマンホール1の傾斜部11A−2近傍に取り付ける際に、凸部21がこの傾斜部11A−2の傾斜に係合すべく当接するものであれば、凸部21の形成方法は種々の手法を広く適用することができる。例えば、図6は、本実施例の他の例となる張出し体2における環状バンド20を拡大して示す拡大図である。図6に示すように、環状バンド20の内周20a側には、取付対象となるマンホール1の外壁(図1参照)へ向けて、例えば断面が半円形状に突出した凸部21が突設されている。この場合、凸部21は、断面が半円形状となる棒状部材を溶接や接着等の手法を用いて固着することで形成される。
【0040】
また例えば、図6との対応部分に同一符号を付した図7乃至9に示すように、断面が真円形状となるパイプを用いて凸部21を形成してもよく(図7)、また、傾斜部11A−2の傾斜に沿って密着するような傾斜面を有するように、断面が三角形となるよう棒状部材を環状バンド20の内周面20aに固定用いてもよく(図8)、図8とほぼ同様な傾斜を有するが、断面が略台形状となる角柱を用いてもよい(図9)。
【0041】
本実施例の浮上抑制構造は、張出し体2が、マンホール1におけるリブ11Aの傾斜部11A−2近傍に固定される。更に、環状バンド20の内周面20a側に突設された凸部21が、この傾斜部11A−2の傾斜に係合可能に配設されている。従って、地震等の非常時においてマンホール1が浮上して、張出し体2が浮上抑制体3と係合した場合でも、その荷重を、凸部21と傾斜部11A−2の係合構造によって受け止めることができる。従って、マンホール1が浮上する勢いによって、環状バンド20がリブ11Aから下側にずれそうになっても、この凸部21によって環状バンド20のずれを防止できる。この結果、鉛直方向の幅が少ないリブ11Aの直壁部11A−1に対して、張出し体2を確実に固定することが可能になる。
【0042】
更に、張出し体2を、このマンホール1の下側に積み重ねられる直壁マンホール1A側に固定する必要もなくなり、この分だけ浮上抑制体3を上方の高い位置に設けることが可能となる。この結果、地中の深い所に通信回線や上水道等の地下埋設物が存在する場合であっても、それを回避して浮上抑制体3を設置できる。なお、地震等の非常時には、マンホール1が浮上しようとして、浮上抑制体3と張出し体2(特に突出部22)が接触するが、この張出し体2は、その凸部21がマンホール1の傾斜部11A−2に対して密着するので、凸部21が傾斜部11A−2を下方に向けて押し下げるように作用するので、浮上抑制体2の荷重をリブ11Aに効率的に伝達することにより、マンホール1の浮上をより一段と確実に抑制することができる。
【0043】
また、浮上抑制体3と、リブ11Aの傾斜部11A−2との間には環状の空間が形成され、そこには土砂82が敷き詰められる。この土砂82は、地震時の振動(横揺れ)によるマンホール1の慣性力の増加を抑制する。一方、この土砂82の外側には、土砂流入防止壁80が配置されているので、この土砂82が空隙4に進入してしまうことも防止できる。なお、この土砂流入防止壁80は、ゴムやウレタンなどの弾性材やプラスチック等の樹脂により形成することが好ましい。この土砂流入防止壁80は、地震時の揺れにより浮上抑制体3とリブ11Aが直接衝突して破損することを未然に防ぐ機能も備えている。
【0044】
次に、本実施例の浮上防止構造の施工手順を、図1を参照して説明する。
【0045】
まず、設置されているマンホール1の周囲の地面Gを掘り起して、マンホール1の傾斜筒11を露出させる(掘削工程)。マンホールの周囲などを掘り起す場合、一般的には方形の坑を掘削する。ここでは、マンホール1の周囲となる第1坑を掘削する。第1坑の掘り起す範囲は、例えば、マンホール1の周囲200cm×200cm程度とし、120cm程度の深さまでとする。これにより、第1坑ではマンホール1の下側のリブ11Aまで露出する。
【0046】
リブ11Aが露出したら、掘り起した第1坑の底面である地盤を平らにならし、充分に締め固めて支持部S2を形成する。支持部S2は、張出し体2を固定する際に利用される。具体的に、支持部S2上において、環状バンド20を連結することで、これをリブ11Aの直壁部11A−1の外周面に固定する。この際、環状バンド20の内周面に突設される凸部21は、リブ11Aの傾斜部11A−2に沿って密着させるように取り付ける。
【0047】
なお、環状バンド20は、ボルト23およびナット24によりリブ11Aに締付固定する。また、張出し体2の突出部22は、マンホール1から半径方向外側に5cm乃至15cmほど拡張している。なお、環状バンド20をリブ11Aに取り付ける際に、環状バンド20とリブ11Aとの間にゴム板などの弾性部材(図示せず)を挟むようにして取り付けてもよい。弾性部材を介することで、簡便な方法により、環状バンド20をより一層確実に締付固定して、マンホール1とのずれを防止することができる。この手順により、マンホール1に張出し体2が形成される(張出部形成工程)。
【0048】
張出し体2を形成した後、更にこの支持部S2に浮上抑制体3を配置する。具体的には、支持部S2に重錘部材30を設置して連結することで、環状の浮上抑制体3を構成する(浮上抑制体設置工程)。この際、充分に締め固めた支持部S2により、浮上抑制体3が沈下するのを防止すると共に、浮上抑制体3の高さ位置を規定する。この結果、浮上抑制体3の下面側と、張出し体2の突出部22の間に上下方向の空隙4が形成される。なお、この空隙4の高さは1cm乃至5cm程度に設定する。この結果、浮上抑制体3は、張出し体2の上方を覆う状態となる。
【0049】
このとき、重錘部材30の下面側に凹凸を形成しておくと、締め固めた土砂又は砕石からなる支持部S2とかみ合って、浮上抑制体3の設置時の安定性がより一層向上する。
【0050】
その後、浮上抑制体3の内周側に土砂流入防止壁80を設置してから、その内側に土砂82を埋め戻す。その後、土砂流出防止ネット86でこれらの全体を覆い、最後に、埋め戻し土や下層路盤、上層路盤などを、それぞれ充分に締め固めながら順に埋め戻していく(埋め戻し工程)。このシート状の土砂流出防止ネット86は、不織布等の布体や繊維網等の網体などにより形成する。これにより、埋め戻し土の外部への流失を防止する。
【0051】
なお、ここでは特に図示しないが、空隙4に、弾性変形可能なパッキン材などを挿入してもよい。
【0052】
このようにして埋設した浮上抑制体3の重量と、浮上抑制体3の受圧面(上面)32に上載される土砂の荷重などの力により、マンホール1の浮上を抑制する。
【0053】
また、受圧面32に上載した土砂が液状化して上載土砂による荷重が減少し、浮上抑制体3が浮き上がろうとしても、所定の上面投影面積を有する受圧面32が流体抵抗を受けて浮上が抑制される。
【0054】
例えば、マンホール1の外径が約120cmの1号マンホールの場合、浮上抑制体3の受圧面32が、少なくとも地面より80cm程度の深さになるように配置する。また、円環状の浮上抑制体3の内径は、マンホール1や張出し体2との間に径方向に数cm以上の隙間が空くようにする。なお、浮上抑制体3の外径は180cm乃至250cm程度に形成するとよい。このとき、浮上抑制体3の上面投影面積は約1.6m2乃至2.2m2となる。
【0055】
さらに、浮上抑制体3が充分な重量と強度を有するように、重錘部材30はコンクリートで形成し、その厚さを少なくとも20cm乃至30cm程度に形成するとよい。このとき、浮上抑制体3の重量は約700kg乃至1500kgとなる(コンクリートの単位体積重量を2.35t/m3とした)。
【0056】
上述した構成によれば、地下水位の上昇や地震の際の液状化現象によってマンホール1などが浮力を受けても、張出し体2の突出部22が浮上抑制体3と上下方向に衝突する。浮上抑制体3の重量からそれにかかる浮力を相殺した荷重に加えて、地面に露出しない所定の深さに配置された受圧面32に上載する土砂等の荷重が、当該張出し体2の締結力と凸部21の係合力を介してマンホール1に掛かる。これらの荷重により確実にマンホール1の浮き上がりを抑制することができる。また、張出し体2が浮上抑制体3に衝突した際の衝撃により、浮上抑制体3が浮き上がりそうになっても、所定の上面投影面積に比例した流体抵抗が浮上抑制体3にかかるため、この流体抵抗によってもマンホール1の浮き上がりを抑制することができる。
【0057】
特に、上述した構成によれば、環状バンド20の内周側20aに凸部21を設けている。これにより、リブ11Aにおける直壁部11A−1の外周面に対して張出し体2を締結しても、この凸部21が傾斜部11A−2と上下方向に係合するので、張出し体2とリブ11Aとのズレを防止できる。この結果、マンホール1の様々な形状に柔軟に適応することが可能となる。
【0058】
また、本構造によれば、JIS形の斜壁マンホールに対しても、張出し体2を地面から浅い位置に設置することが出来るので、掘削作業負担が軽減され、工期を短縮することも可能になる。さらに、上述した方法によれば、特別な機械や特殊な技術を用いることなく、簡易な施工方法によりマンホールの浮き上がりを抑制でき、作業負担を軽減することができる。
【0059】
以上、本実施例では、周方向に均等に傾斜した両傾斜形マンホール1に対して張出し体2を締結する場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図1との対応部分に同一符号を付した図10に示すように、JIS形の片斜壁形マンホール100に適用することも可能である。このように、片斜壁筒11におけるリブ11Aに対しても、張出し体2をマンホール1と同様に設置することができる。
【0060】
因みに、形状も片斜壁形状に限ることはなく、図1との対応部分に同一符号を付し図11に示すように、いわゆるリブを有しないようなJIS形の組立マンホール200に対して適用することも可能である。この組立マンホール200は、傾斜筒11と直壁筒10が連続するようにして一体的に構成される。この場合は、傾斜筒11と直壁筒10の境界に張出し体2を締結する。この結果、張出し体2の凸部21が、傾斜筒11と直壁筒11の段差に係合できるので、同様に上下方向にズレを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、マンホールの浮上抑制技術に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1、100、200…マンホール
2…張出し体
3…浮上抑制体
10…直壁筒
11…斜壁筒
11A…リブ
11A−1…直壁部
11A−2…傾斜部
20…環状バンド(基台領域)
20a…内周
21…凸部
22…突出部
32…受圧面
G…地面
S2…支持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状構成のマンホールの外周壁に設けた張出し体と、前記張出し体の上方を所定の空隙を形成した状態で覆うように前記マンホールの周囲に設置される浮上抑制体とを備え、非常時、前記浮上抑制体が前記張出し体に接触することで、前記浮上抑制体の重量および前記浮上抑制体上に載置される埋め戻し土の重量によって、前記マンホールの浮き上がりを抑止するマンホールの浮上防止構造であって、
前記張出し体は、
前記マンホールにおいて、径方向に縮小する傾斜部を有する外周壁に固定される基台領域と、
前記基台領域から前記マンホールの前記傾斜部へ向けて突設され、当該外周壁における前記斜壁部の段差に係合させる凸部と、
前記基台領域の外周側に外方へ向けて突設され、非常時、前記浮上抑制体と接触させるための突出領域と
を有することを特徴とするマンホールの浮上防止構造。
【請求項2】
前記基台領域の凸部が、当該基台領域の内周における上方側に突設される
ことを特徴とする請求項1に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項3】
前記基台領域の凸部が、前記マンホールにおける前記斜壁部の形状に沿った形状で成形される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項4】
前記浮上抑制体の内周面と前記傾斜部の間に、前記空隙に土砂が流入することを防止する前記土砂流入防止壁を備える
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項5】
設置されたマンホールの周囲を掘り起して坑を形成する掘削工程と、
前記マンホールの外周壁に対して、該マンホールと係合する基台領域を配置することで、張出し体を形成する張出し体形成工程と、
前記張出し体の上方を覆う浮上抑制体を設置する抑制体形成工程と、
前記坑を完全に埋め戻す埋戻し工程と、を有するマンホールの浮上防止方法であって、
前記張出し体が、
前記マンホールにおいて、径方向に縮小する傾斜部を有する外周壁に固定される基台領域と、
前記基台領域から前記マンホールの前記傾斜部へ向けて突設され、当該外周壁における前記斜壁部の段差に係合させる凸部と、
前記基台領域の外周側に外方へ向けて突設され、非常時、前記浮上抑制体と接触させるための突出領域とを有し、
前記張出し体形成工程では、前記基台領域の凸部が前記マンホールの外周壁における前記斜壁部との段差に係合するように前記基台領域を配置する
ことを特徴とするマンホールの浮上防止方法。
【請求項6】
前記基台領域の凸部を、当該基台領域の内周における上方側に突設する
ことを特徴とする請求項5に記載のマンホールの浮上防止方法。
【請求項7】
前記基台領域の凸部を、前記マンホールにおける前記斜壁部の形状に沿った形状で成形する
ことを特徴とする請求項5または6に記載のマンホールの浮上防止方法。
【請求項1】
有底筒状構成のマンホールの外周壁に設けた張出し体と、前記張出し体の上方を所定の空隙を形成した状態で覆うように前記マンホールの周囲に設置される浮上抑制体とを備え、非常時、前記浮上抑制体が前記張出し体に接触することで、前記浮上抑制体の重量および前記浮上抑制体上に載置される埋め戻し土の重量によって、前記マンホールの浮き上がりを抑止するマンホールの浮上防止構造であって、
前記張出し体は、
前記マンホールにおいて、径方向に縮小する傾斜部を有する外周壁に固定される基台領域と、
前記基台領域から前記マンホールの前記傾斜部へ向けて突設され、当該外周壁における前記斜壁部の段差に係合させる凸部と、
前記基台領域の外周側に外方へ向けて突設され、非常時、前記浮上抑制体と接触させるための突出領域と
を有することを特徴とするマンホールの浮上防止構造。
【請求項2】
前記基台領域の凸部が、当該基台領域の内周における上方側に突設される
ことを特徴とする請求項1に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項3】
前記基台領域の凸部が、前記マンホールにおける前記斜壁部の形状に沿った形状で成形される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項4】
前記浮上抑制体の内周面と前記傾斜部の間に、前記空隙に土砂が流入することを防止する前記土砂流入防止壁を備える
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項5】
設置されたマンホールの周囲を掘り起して坑を形成する掘削工程と、
前記マンホールの外周壁に対して、該マンホールと係合する基台領域を配置することで、張出し体を形成する張出し体形成工程と、
前記張出し体の上方を覆う浮上抑制体を設置する抑制体形成工程と、
前記坑を完全に埋め戻す埋戻し工程と、を有するマンホールの浮上防止方法であって、
前記張出し体が、
前記マンホールにおいて、径方向に縮小する傾斜部を有する外周壁に固定される基台領域と、
前記基台領域から前記マンホールの前記傾斜部へ向けて突設され、当該外周壁における前記斜壁部の段差に係合させる凸部と、
前記基台領域の外周側に外方へ向けて突設され、非常時、前記浮上抑制体と接触させるための突出領域とを有し、
前記張出し体形成工程では、前記基台領域の凸部が前記マンホールの外周壁における前記斜壁部との段差に係合するように前記基台領域を配置する
ことを特徴とするマンホールの浮上防止方法。
【請求項6】
前記基台領域の凸部を、当該基台領域の内周における上方側に突設する
ことを特徴とする請求項5に記載のマンホールの浮上防止方法。
【請求項7】
前記基台領域の凸部を、前記マンホールにおける前記斜壁部の形状に沿った形状で成形する
ことを特徴とする請求項5または6に記載のマンホールの浮上防止方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−162986(P2011−162986A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26032(P2010−26032)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【特許番号】特許第4601714号(P4601714)
【特許公報発行日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(592221218)株式会社シーエスエンジニアズ (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【特許番号】特許第4601714号(P4601714)
【特許公報発行日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(592221218)株式会社シーエスエンジニアズ (7)
【Fターム(参考)】
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