説明

マンホールの浮上防止構造及びその設計方法

【課題】構成が簡単で材料費が安価で、腐食の心配がなく、地震時の液状化による浮揚力がマンホールに作用しても外周に配置した浮上防止環状体で浮上を防止できる浮上防止構造と設計方法を提供する。
【解決手段】マンホールの外周部に径方向の外周面が下方側に広がるテーパ面12aを有する係合ブロック12と、係合ブロック12に対応する位置に離間して配置され、所定の重量を有する浮上防止環状体14は、係合ブロック12のテーパ面12aに当接し得る径方向の内周面が下方側に広がる内側テーパ面14aと、浮上防止環状体14の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面14bとを有し、マンホールに作用する浮揚力が係合ブロック12を介して浮上防止環状体14に作用した際に外側テーパ面14bに作用する土圧により浮上防止環状体14を径方向内側に押圧することで係合ブロック12に固定されたマンホールの浮上を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時などに発生する液状化現象によりマンホールの浮上りを防止するマンホールの浮上防止構造及びその設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地震などにより発生した液状化現象によりマンホールやこれに接続された配管等の地下構造物が路面から浮上って破壊され、避難経路を塞ぎ、緊急車両の障害となって復興支援活動に支障をきたすため地震時の液状化現象によりマンホールが浮上らない地震対策が望まれている。
【0003】
例えば、特許第4182130号公報(特許文献1)の技術では、マンホール本体の外周面に鋼製の張出バンドを取り付け、この張出バンドを覆うように浮上抑制体が設置される。そして、マンホールの自重と、浮上抑制体の重量、浮上抑制体上面の土砂重量により地震時の液状化により発生する浮揚力に抵抗し、マンホールの浮上を抑制しようとするものである。
【0004】
また、特開2008−127919号公報(特許文献2)の技術では、マンホール本体に逆円錐状のかご部材を取り付け、該かご部材の内部に路盤材等を充填して荷重ブロック体を形成する。そして、荷重ブロック体の重量、マンホールの自重により地震時の液状化により発生する浮揚力に抵抗し、マンホールの浮上を抑制しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4182130号公報
【特許文献2】特開2008−127919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1の技術では、張出バンドの材料を鋼製(亜鉛メッキを施した鉄製またはステンレス製)としているため、亜鉛メッキを施した鉄製の場合は液状化が予想される高地下水の水位面下において長期間土中に埋設される状態を考えると腐食の心配がある。また、ステンレス製の場合は材料費が高価となり、マンホールのように道路上に多数点在するような構造物には膨大な費用がかかり不経済である。
【0007】
また、特許文献2の技術では、マンホール本体に逆円錐状のかご部材を取り付けるため、埋め戻し時において、かご周辺部に転圧不足が生じる可能性がある。また、かご部材が鋳鉄製の場合は液状化が予想される高地下水の水位面下において長期間土中に埋設される状態を考えると腐食の心配がある。
【0008】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、構成が簡単で材料費が安価で済み、腐食の心配がなく、地震時の液状化により発生する浮揚力がマンホールに作用しても該マンホールの外周に離間して配置した浮上防止環状体が周囲土壌に及ぼす浮揚力を最小限に軽減し、周囲土壌のせん断破壊を防止してマンホールの浮上を防止することができるマンホールの浮上防止構造及びその設計方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明に係るマンホールの浮上防止構造の第1の構成は、筒状管からなるマンホールの外周部に突設され、その径方向の外周面が下方側に広がるテーパ面を有する係合部と、前記マンホールの外周で前記係合部に対応する位置に離間して配置され、所定の重量を有する浮上防止環状体とを有し、前記浮上防止環状体は、前記係合部のテーパ面に当接し得る径方向の内周面が下方側に広がる内側テーパ面と、前記浮上防止環状体の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面とを有し、前記マンホールに作用する浮揚力が前記係合部を介して前記浮上防止環状体に作用した際に前記外側テーパ面に作用する土圧により該浮上防止環状体を径方向内側に押圧することで前記係合部に固定された前記マンホールの浮上を防止することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るマンホールの浮上防止構造の第2の構成は、前記第1の構成において、前記浮上防止環状体は、更に径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面を有し、前記浮上防止環状体の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面の軸方向に対する投影面積をA、前記浮上防止環状体の径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面の軸方向に対する投影面積をB、前記外側テーパ面と前記内側上部テーパ面とを接続する前記浮上防止環状体の天面の面積をC、前記外側テーパ面の水平面に対する傾斜角度をθ、前記内側上部テーパ面の水平面に対する傾斜角度をθ、前記浮上防止環状体の一部の縦断面の図心をmとし、該図心mを原点として、前記マンホールに作用する浮揚力が前記係合部を介して前記浮上防止環状体に作用した際に、前記外側テーパ面に作用する力をベクトルFとし、前記内部上部テーパ面に作用する力をベクトルFとし、前記天面に作用する力をベクトルFとし、前記ベクトルFと前記ベクトルFと前記ベクトルFとを合成した力をベクトルFとするとき、以下の数1式により求められるFが最小値となるように設定されることを特徴とする。
【0011】
【数1】

【0012】
また、本発明に係るマンホールの浮上防止構造の設計方法は、前記マンホールの浮上防止構造の第2の構成の設計方法であって、前記浮上防止環状体の外径直径φo及び内径直径φiをそれぞれ所定の値に固定すると共に、前記浮上防止環状体の前記外側テーパ面の鉛直方向の高さh1及び前記内側上部テーパ面の鉛直方向の高さh2をそれぞれ所定の値に固定し、前記浮上防止環状体の前記外側テーパ面の上端部と、前記内側上部テーパ面の上端部とに接続される前記浮上防止環状体の天面の幅を所定の値に固定した状態で該天面の位置を水平方向に移動した時に変化する前記投影面積A,B、前記傾斜角度θ,θ、のそれぞれの値に基づいて、前記数1式により求められるFの値を複数算出し、その算出した複数のFの値の最小値に対応する前記投影面積A,B、前記傾斜角度θ,θに基づいて前記浮上防止環状体を設計することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るマンホールの浮上防止構造の第1の構成によれば、地震による液状化現象によりマンホールに作用する浮揚力が係合部を介して浮上防止環状体に作用した際に該浮上防止環状体の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面に作用する土圧により該浮上防止環状体を径方向内側に押圧することで前記係合部に固定されたマンホールの浮上を防止することができる。
【0014】
本発明に係るマンホールの浮上防止構造の第2の構成によれば、浮上防止環状体の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面の軸方向に対する投影面積をA、該浮上防止環状体の径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面の軸方向に対する投影面積をB、外側テーパ面と内側上部テーパ面とを接続する浮上防止環状体の天面の面積をC、外側テーパ面の水平面に対する傾斜角度をθ、内側上部テーパ面の水平面に対する傾斜角度をθ、浮上防止環状体の一部の縦断面の図心をmとし、該図心mを原点として、前記マンホールに作用する浮揚力が前記係合部を介して前記浮上防止環状体に作用した際に、外側テーパ面に作用する力をベクトルFとし、内部上部テーパ面に作用する力をベクトルFとし、天面に作用する力をベクトルFとし、ベクトルFとベクトルFとベクトルFとを合成した力をベクトルFとするとき、以下の数1式により求められるFが最小値となるように設定することで、地震による液状化現象によりマンホールに作用する浮揚力が係合部を介して浮上防止環状体に作用した際に該浮上防止環状体が周囲土壌に及ぼす浮揚力を最小限に軽減し、周囲土壌のせん断破壊を防止し得る条件とすることが出来る。
【0015】
【数1】

【0016】
本発明に係るマンホールの浮上防止構造の設計方法によれば、上記数1式により求められるFの最小値を求める方法として、便宜的に浮上防止環状体の外径直径φo及び内径直径φiをそれぞれ所定の値に固定すると共に、該浮上防止環状体の外側テーパ面の鉛直方向の高さh1及び内側上部テーパ面の鉛直方向の高さh2をそれぞれ所定の値に固定し、前記浮上防止環状体の前記外側テーパ面の上端部と、前記内側上部テーパ面の上端部とに接続される前記浮上防止環状体の天面の幅を所定の値に固定した状態で該天面の位置を水平方向に移動した時に変化する投影面積A,B、傾斜角度θ,θ、のそれぞれの値に基づいて、前記数1式により求められるFの値を複数算出し、その算出した複数のFの値の最小値を前記数1式により求められるFの最小値として便宜的に採用することができ、そのFの最小値に対応する投影面積A,B、傾斜角度θ,θに基づいて浮上防止環状体を容易に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明に係るマンホールの浮上防止構造を説明する断面説明図、(b)は本発明に係るマンホールの浮上防止構造を説明する平面図である。
【図2】(a)は浮上防止環状体に1個のウエイトリングを取り付けた場合、(b)は浮上防止環状体に2個のウエイトリングを取り付けた場合のそれぞれの構成を示す断面説明図である。
【図3】(a)はマンホールの外周部に突設される係合部の構成を示す平面図、(b)は(a)のI−I断面図で、マンホールの外周部に突設される係合部の構成を示す断面図である。
【図4】(a)はマンホールの外周で係合部に対応する位置に離間して配置され、所定の重量を有する浮上防止環状体の構成を示す平面図、(b)は(a)のJ−J断面図、(c)は(a)のD−D断面図、(d)は(a)のE−E断面図である。
【図5】(a)は浮上防止環状体の下部に連結されるウエイトリングの構成を示す平面図、(b)は(a)のK−K断面図、(c)は(a)のG−G断面図、(d)は(a)のH−H断面図である。
【図6】(a),(b)は地震による液状化現象によりマンホールに作用する浮揚力が係合部を介して浮上防止環状体に作用した際に該浮上防止環状体の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面に作用する力と、浮上防止環状体の径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面に作用する力と、外側テーパ面と内側上部テーパ面とを接続する浮上防止環状体の天面に作用する力との合成力をベクトル化して説明する図、(c)は外側テーパ面と内側上部テーパ面と天面とにより浮上防止環状体の周囲の土壌に作用する力を分散させる様子を示す図、(d)は内側上部テーパ面により周囲の土壌に作用する力をベクトルFが該内側上部テーパ面の面積に比例すると考えて、該ベクトルFを傾斜角度θの三角形の斜辺の長さに設定し、該内側上部テーパ面の軸方向に対する投影面積Bをその三角形の底辺の長さに設定して三角関数によりベクトルFのX−Y座標を該内側上部テーパ面の軸方向に対する投影面積Bと、該内側上部テーパ面の水平面に対する傾斜角度θとにより定義する様子を説明する図である。
【図7】(a)は外側テーパ面の鉛直方向の高さh1が内側上部テーパ面の鉛直方向の高さh2よりも大きい場合の浮上防止環状体の形状及び寸法を説明する図、(b)は外側テーパ面の鉛直方向の高さh1と内側上部テーパ面の鉛直方向の高さh2とが等しい場合の浮上防止環状体の形状及び寸法を説明する図である。
【図8】0号、1号、2号マンホール用浮上防止環状体で外側テーパ面の鉛直方向の高さh1が内側上部テーパ面の鉛直方向の高さh2よりも50mm高い場合の浮上防止環状体の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面の軸方向に対する投影面積A、該浮上防止環状体の径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面の軸方向に対する投影面積B、外側テーパ面と内側上部テーパ面とを接続する浮上防止環状体の天面の面積C、外側テーパ面の水平面に対する傾斜角度θ、内側上部テーパ面の水平面に対する傾斜角度θ、浮上防止環状体の一部の縦断面の図心をmとし、該図心mを原点として、前記マンホールに作用する浮揚力が前記係合部を介して前記浮上防止環状体に作用した際に、外側テーパ面に作用する力をベクトルFとし、内部上部テーパ面に作用する力をベクトルFとし、天面に作用する力をベクトルFとし、各ベクトルのX成分であるFAX,FBX,FCX、各ベクトルのY成分であるFAY,FBY,FCY、ベクトルFとベクトルFとベクトルFとを合成した力となる合成ベクトルFの絶対値(長さ)を示す図である。
【図9】0号、1号、2号マンホール用浮上防止環状体で外側テーパ面の鉛直方向の高さh1と、内側上部テーパ面の鉛直方向の高さh2とが等しい場合の浮上防止環状体の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面の軸方向に対する投影面積A、該浮上防止環状体の径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面の軸方向に対する投影面積B、外側テーパ面と内側上部テーパ面とを接続する浮上防止環状体の天面の面積C、外側テーパ面の水平面に対する傾斜角度θ、内側上部テーパ面の水平面に対する傾斜角度θ、浮上防止環状体の一部の縦断面の図心をmとし、該図心mを原点として、前記マンホールに作用する浮揚力が前記係合部を介して前記浮上防止環状体に作用した際に、外側テーパ面に作用する力をベクトルFとし、内部上部テーパ面に作用する力をベクトルFとし、天面に作用する力をベクトルFとし、各ベクトルのX成分であるFAX,FBX,FCX、各ベクトルのY成分であるFAY,FBY,FCY、ベクトルFとベクトルFとベクトルFとを合成した力となる合成ベクトルFの絶対値(長さ)を示す図である。
【図10】本発明に係るマンホールの浮上防止構造の設計方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図により本発明に係るマンホールの浮上防止構造及びその設計方法の一実施形態を具体的に説明する。図1において、1は地盤9内に埋設されるコンクリート製筒状管からなるマンホールであり、底版2、直壁管3,4、斜壁管5、高さ及び角度調整リング6,7、マンホール蓋受けリング8を有している。マンホール蓋受けリング8には図示しないマンホール蓋が取り付けられる。直壁管3には排水管10が接続されている。
【0019】
マンホール1の直壁管4の外周部にはアンカーボルト11により固定された係合部となるコンクリート製の係合ブロック12が連結して突設される。本実施形態では図3に示すように、2個の係合ブロック12が直壁管4の外周面上に180度ずれた位置に対向して配置された一例であるが、他の所定の筒状管の外周面で他の所定の角度で所定の個数を配置することでも良い。マンホール1の外周部に突設された係合ブロック12の径方向の外周面は下方側に広がるテーパ面12aを有する。アンカーボルト11はテーパ面12aの一部に形成されたボルト挿入口12bから挿入して直壁管4内に埋設されたインサートナット13に螺合締結され、係合ブロック12が直壁管4に固定される。係合ブロック12を直壁管4に固定した後は、図示していないが、ボルト挿入口12bの開口部をモルタル等により塞ぐ。これにより土中内における腐食や劣化などの影響を受け難い。
【0020】
既設のマンホール1に対して係合ブロック12を取り付ける場合には地盤9を開削して直壁管4を露出させる。そして、該直壁管4に予めインサートナット13が既に取り付けられている場合には係合ブロック12の内壁面を直壁管4の外周面に当接すると共に、アンカーボルト11を該係合ブロック12のボルト挿入口12bから挿入して直壁管4に取り付けられたインサートナット13に螺合締結して係合ブロック12を直壁管4に接合し、ボルト挿入口12bをモルタルにより閉塞固定する。また、直壁管4にインサートナット13が取り付けられていない既設マンホール1の場合には、ボルト型アンカーボルト又はナット型アンカーボルトを既設マンホール1の直壁管4に設置した後、ナット又はボルトにて係合ブロック12を直壁管4に接合し、ボルト挿入口12bをモルタルにより閉塞固定する。
【0021】
地盤9内で且つマンホール1の外周には係合ブロック12に対応する位置に離間して所定の重量を有し、直壁管4の外形よりも大きな内径を有するコンクリート製の浮上防止環状体14が配置して埋設される。浮上防止環状体14は、係合ブロック12のテーパ面12aに当接し得る径方向の内周面が下方側に広がる内側テーパ面14aと、該浮上防止環状体14の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面14bと、該浮上防止環状体14の径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面14cと、底面14d、側面14e及び天面14fとを有する断面6角形状で構成される。内側テーパ面14aは図4(a)に示すように、浮上防止環状体14の内周面で、マンホール1の直壁管4の外周部に突設された係合ブロック12に対応する位置に設けられている。
【0022】
図6(a)において、浮上防止環状体14の一部の縦断面の図心(図6(a)に示す6角形断面図上の重心)をmとし、図心mを原点として、前記マンホールに作用する浮揚力が前記係合部を介して前記浮上防止環状体に作用した際に、外側テーパ面14bに作用する力をベクトルFとし、内部上部テーパ面14cに作用する力をベクトルFとし、天面14fに作用する力をベクトルFとし、ベクトルFとベクトルFとベクトルFとを合成した力をベクトルFとする。ベクトルFとベクトルFの大きさは、浮上防止環状体14に土砂が載荷する外側テーパ面14b及び内側上部テーパ面14cの鉛直方向(図6(a)の上下方向)におけるそれぞれの投影面積A,B(図1(b)参照)に比例すると考えることが出来、ベクトルFの大きさは天面14fの面積に比例すると考えることが出来る。
【0023】
そして、図6(a),(b)に示すように、各ベクトルF,F,FのX成分であるFAX,FBX,FCX、各ベクトルF,F,FのY成分であるFAY,FBY,FCYを用いて以下の数2式に示す合成ベクトルFのスカラー量(絶対値の大きさ;長さ)が最小値となるように設定することで、地震による液状化現象によりマンホール1に作用する浮揚力が係合部となる係合ブロック12を介して浮上防止環状体14に作用した際に、該浮上防止環状体14が周囲土壌に及ぼす浮揚力を最小限に軽減し、周囲土壌のせん断破壊を防止して係合部となる係合ブロック12に固定されたマンホール1の浮上を効果的に防止することができる。
【0024】
【数2】

【0025】
図6(c)に示すように、浮上防止環状体14に作用する上向きの浮上がり力が同じである場合、コンクリート製品からなる浮上防止環状体14と周囲の土壌との接触面に作用する力(有効応力)を小さくすれば見掛け上の土のせん断抵抗力は増加する。そこで、本実施形態の浮上防止環状体14は、その上部形状を外側テーパ面14bと内側上部テーパ面14cと天面14fとにより構成したことで、浮上防止環状体14と周囲の土壌との接触面に作用する力(有効応力)を3方向に分散させて周囲の土壌に作用する力を軽減し、見掛け上の土壌の抵抗力を増加させ、その結果として浮上抑制効果を高めることが出来る。このため、外側テーパ面14bと内側上部テーパ面14cと天面14fにそれぞれ作用する力となる各ベクトルF,F,Fの合成ベクトルFが最小値となるように設定することにより浮上防止環状体14の周囲の土壌に作用する力を最小とし、その結果、浮上抑制効果を高めることが出来る。
【0026】
次に上記数2式に示される各ベクトルF,F,FのX成分であるFAX,FBX,FCX、各ベクトルF,F,FのY成分であるFAY,FBY,FCYを上記数1式のように、外側テーパ面14bの軸方向に対する投影面積A、内側上部テーパ面14cの軸方向に対する投影面積B、天面14fの面積C、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θ、内側上部テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θにより定義する方法について図6(d)を用いて以下に説明する。
【0027】
ここで、図6(b)に示すように、ベクトルFをX−Y座標で表すと以下の数3式で表すことが出来る。
【0028】
[数3]
(X,Y)=(Fsinθ,Fcosθ
【0029】
次に図6(d)を用いてベクトルFと投影面積Bとの関係について考察する。ベクトルFは内側上部テーパ面14cが該内側上部テーパ面14cに対向する周囲の土壌に作用する力であるから該内側上部テーパ面14cの面積に比例すると考えると、図6(d)に示すように、該ベクトルFを傾斜角度θの三角形の斜辺の長さに設定し、該内側上部テーパ面14cの軸方向に対する投影面積Bをその三角形の底辺の長さに設定して三角関数により以下の数4式で表すことが出来る。
【0030】
[数4]
B/F=cosθ
だから
=B/cosθ
【0031】
従って、上記数4式を上記数3式に代入してFのX−Y座標を求めると以下の数5式で表すことが出来る。
【0032】
[数5]
(X,Y)=(Fsinθ,Fcosθ)=(Bsinθ/cosθ,B)
【0033】
同様にしてF,FのそれぞれのX−Y座標は以下の数6式で表すことが出来る。
【0034】
[数6]
(X,Y)=(Fsinθ,Fcosθ)=(Asinθ/cosθ,A)
(X,Y)=(0,F)=(0,C)
【0035】
このようにして求めたF,F,FのそれぞれのX−Y座標を前記数2式に代入して以下の数1式を求めることが出来る。これにより、ベクトルF,F,Fの大きさを浮上防止環状体14の土砂が載荷する外側テーパ面14b及び内側上部テーパ面14cの鉛直方向(図6(a)の上下方向)におけるそれぞれの投影面積A,B(図1(b)参照)、天面14fの面積Cと、該外側テーパ面14bの水平面(図6(a)の左右方向)に対する傾斜角度θ、該内側上部テーパ面14cの水平面(図6の左右方向)に対する傾斜角度θを用いて簡易に換算することが出来るものである。
【0036】
【数1】

【0037】
そして、ベクトルFとベクトルFとベクトルFとを合成した上記数1式により求められるベクトルFのスカラー量(絶対値の大きさ;長さ)が最小値になるように設定することで、地震による液状化現象によりマンホール1に作用する浮揚力が係合部となる係合ブロック12を介して浮上防止環状体14に作用した際に、該浮上防止環状体14が周囲土壌に及ぼす浮揚力を最小限に軽減し、周囲土壌のせん断破壊を防止して係合部となる係合ブロック12に固定されたマンホール1の浮上を効果的に防止することができる。
【0038】
マンホール1に作用する浮揚力は浮上防止環状体14の外側テーパ面14b、天面14f、内部上部テーパ面14c、側面14eによりそれぞれ周囲の土壌に分散して伝達され、地盤9のせん断破壊を軽減し、マンホール1の浮上り抵抗力を高める。
【0039】
本実施形態では、図6(a)に示すように、浮上防止環状体14の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面14bの軸方向(図6(a)の上下方向)に対する投影面積をA、該浮上防止環状体14の径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面14cの軸方向に対する投影面積をB、外側テーパ面14bと内側上部テーパ面14cとを接続する浮上防止環状体14の天面14fの面積をC、該外側テーパ面14bの水平面(図6(a)の左右方向)に対する傾斜角度をθ、該内側上部テーパ面14cの水平面(図6の左右方向)に対する傾斜角度をθとすると、上記数1式に示されるベクトルFのスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)が最小値となるように図8及び図9に示す実施例1〜24に示すように適宜設定される。
【0040】
ここで、図6(b)に示すように、水平方向をX軸、鉛直方向をY軸とし、浮上防止環状体14の一部の縦断面の図心(図6(a)に示す6角形断面図上の重心)をmとし、該図心mを原点とすると、ベクトルFのX軸成分は、−Fsinθとなり、Y軸成分は、+Fcosθとなり、ベクトルFのX軸成分は、+Fsinθとなり、Y軸成分は、+Fcosθとなり、ベクトルFのX軸成分は、「0」となり、Y軸成分は、+Fとなる。そして、合成ベクトルFのスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)は上記数1式により求められ、そのFが最小値となれば浮揚力を最小とすることができる。
【0041】
以下に具体例における試算結果について図7〜図9を用いて説明する。具体例として0号、1号、2号組立てマンホール1に使用する0号、1号、2号マンホール用浮上防止環状体14についてそれぞれ試算を行う。例えば、図7(a)に示す具体例では、外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2よりも大きい場合の0号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが1550mm、内径直径φiが1050mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が150mm、水平方向の幅w1が100mm、内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が300mm、該浮上防止環状体14の天面14fの水平方向の幅w4が50mmとした。同様に1号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが1800mm、内径直径φiが1200mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が150mm、水平方向の幅w1が100mm、内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が300mm、該浮上防止環状体14の天面14fの水平方向の幅w4が50mmとした。同様に2号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが2300mm、内径直径φiが1550mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が150mm、水平方向の幅w1が100mm、内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が300mm、該浮上防止環状体14の天面14fの水平方向の幅w4が50mmとした。
【0042】
また、図7(b)に示す具体例では、外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1と、内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2とが等しい場合の0号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが1550mm、内径直径φiが1050mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が100mm、水平方向の幅w1が100mm、内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が300mm、該浮上防止環状体14の天面14fの水平方向の幅w4が50mmとした。同様に1号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが1800mm、内径直径φiが1200mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が100mm、水平方向の幅w1が100mm、内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が300mm、該浮上防止環状体14の天面14fの水平方向の幅w4が50mmとした。同様に2号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが2300mm、内径直径φiが1550mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が100mm、水平方向の幅w1が100mm、内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が300mm、該浮上防止環状体14の天面14fの水平方向の幅w4が50mmとした。
【0043】
そして、図7(a),(b)に示す内側上部テーパ面14cの外径直径をφa、外側テーパ面14bの内径直径をφbとして、当該外径直径φa,内径直径φbを適宜変更した場合の浮上防止環状体14の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面14bの軸方向に対する投影面積A、浮上防止環状体14の径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面14cの軸方向に対する投影面積B、天面14fの面積C、外側テーパ面14bの水平面(図6(a)の左右方向)に対する傾斜角度θ、該内側上部テーパ面14cの水平面(図6の左右方向)に対する傾斜角度θ、該傾斜角度θから傾斜角度θを引いた角度差(θ−θ)、図6(b)に示す各ベクトルF,F,Fの各X軸成分FAX,FBX,FCX、合成ベクトルFのX軸成分(FAX+FBX+FCX)、各ベクトルF,F,Fの各Y軸成分FAY,FBY,FCY、合成ベクトルFのY軸成分(FAY+FBY+FCY)、合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をそれぞれ図8及び図9に示す。
【0044】
図8及び図9に示す実施例1〜24は、前記数1式のFの最小値を求める際に、便宜的に図7(a),(b)に示す浮上防止環状体14の外径直径φo及び内径直径φiをそれぞれ所定の値に固定すると共に、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1及び内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2をそれぞれ所定の値に固定し、図10(a)〜(d)、或いは図10(e)〜(h)に示すように、浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの上端部と、内側上部テーパ面14cの上端部とに接続される該浮上防止環状体14の天面14fの幅w4を所定の値(図10では50mm)に固定した状態で該天面14fの位置を水平方向(図10の天面14fに沿った左右方向)に移動した時に変化する投影面積A,B(図4(a)参照)、傾斜角度θ,θ、のそれぞれの値に基づいて、前記数1式により求められるFの値を複数算出し、その算出した複数のFの値の最小値に対応する投影面積A,B、傾斜角度θ,θに基づいて浮上防止環状体14を設計した場合の一例を示す。
【0045】
尚、図10(a)〜(d)は外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2よりも50mm高い場合で傾斜角度θをそれぞれ31°、45°、56°、90°に設定した場合の形状を示し、図10(e)〜(h)は外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1と、内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2とが等しい場合で傾斜角度θをそれぞれ22°、34°、45°、90°に設定した場合の形状を示す。この場合、傾斜角度θ、外側テーパ面14bの水平方向の幅w1、内側上部テーパ面14cの水平方向の幅w2は傾斜角度θに連動して変化する。
【0046】
このような設計方法によれば、上記数1式により求められるFの最小値を求める方法として、便宜的に浮上防止環状体14の外径直径φo及び内径直径φiをそれぞれ所定の値に固定すると共に、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1及び内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2をそれぞれ所定の値に固定し、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの上端部と、内側上部テーパ面14cの上端部とに接続される該浮上防止環状体14の天面14fの幅を所定の値に固定した状態で該天面14fの位置を水平方向に移動した時に変化する投影面積A,B、傾斜角度θ,θ、のそれぞれの値に基づいて、上記数1式により求められるFの値を複数算出し、その算出した複数のFの値の最小値を上記数1式により求められるFの最小値として便宜的に採用することができ、そのFの最小値に対応する投影面積A,B、固定された面積C、傾斜角度θ,θに基づいて浮上防止環状体14を容易に設計することができるものである。
【0047】
図8に示すように、浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2よりも50mm大きい場合において、マンホール1の外径が950mm(0号マンホール)の場合には、実施例2に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θから内側上部テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θを引いた角度差(θ−θ)を11°に設定した場合には、0号マンホールについて合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例1〜3の中では実施例2が合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
【0048】
また、マンホール1の外径が1050mm(1号マンホール)の場合には、実施例6に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θから内側上部テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θを引いた角度差(θ−θ)を22°に設定した場合には、1号マンホールについても合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例4〜7の中では実施例6が合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
【0049】
また、マンホール1の外径が1400mm(2号マンホール)の場合には、実施例8〜12に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θから内側上部テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θを引いた角度差(θ−θ)を−22°以上、且つ32°以下の範囲で設定した場合には、2号マンホールについても合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例8〜12の中では実施例8が合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
【0050】
図9に示すように、浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1と、内側上部テーパ面14cの鉛直方向の高さh2とが等しい場合において、マンホール1の外径が950mm(0号マンホール)の場合には、実施例15に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θから内側上部テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θを引いた角度差(θ−θ)を29°に設定した場合には、0号マンホールについて合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例13〜15の中では実施例15が合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
【0051】
また、マンホール1の外径が1050mm(1号マンホール)の場合には、実施例19に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θから内側上部テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θを引いた角度差(θ−θ)を36°に設定した場合には、1号マンホールについても合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例16〜19の中では実施例19が合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
【0052】
また、マンホール1の外径が1400mm(2号マンホール)の場合には、実施例24に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θから内側上部テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θを引いた角度差(θ−θ)を43°に設定した場合には、2号マンホールについても合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例20〜24の中では実施例24が合成ベクトルFの上記数1式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
【0053】
図2(a)は浮上防止環状体14の下部に所定の重量を有する1個のウエイトリング15を取り付けた場合、図2(b)は浮上防止環状体14に2個のウエイトリング15を取り付けた場合のそれぞれの構成を示す。図4(a),(d)に示すように、浮上防止環状体14の外周部の所定位置には内側テーパ面14aからずれた位置で互いに180度ずれた位置に2箇所の連結ボルト挿入孔14gが貫通して設けられており、浮上防止環状体14の下部に取り付けられる図5に示すウエイトリング15の外周部にも互いに90度ずつずれた位置に4箇所の連結ボルト挿入孔15aが貫通して設けられている。なお、図4及び図5中の浮上防止環状体14とウエイトリング15のそれぞれの側面外周部に水平に埋設されたインサートナット13はクレーン等の吊り下げ用フックを螺合締結するためのものである。
【0054】
そして、浮上防止環状体14の下面にウエイトリング15の上面を当接させ、対応する2箇所の連結ボルト挿入孔14g,15aに連結ボルト16をそれぞれ挿入し、ナット止めにより浮上防止環状体14とウエイトリング15とを連結固定することが出来る。また、そのウエイトリング15の下部に更に別のウエイトリング15を取り付ける場合には、図2(b)に示すように、別のウエイトリング15を円周方向に90度ずらして、その上面を先に取り付けたウエイトリング15の下面に当接し、先に取り付けたウエイトリング15の残り2箇所の連結ボルト挿入孔15aと、後から取り付けるウエイトリング15の対応する2箇所の連結ボルト挿入孔15aに連結ボルト16をそれぞれ挿入し、ナット止めによりウエイトリング15相互を連結固定することが出来る。更にウエイトリング15を増設したい場合には同様にして増設することが出来る。
【0055】
ウエイトリング15は互いに周方向に位置を90度ずらすことにより順次重ね合わせが出来る構造であるのでマンホール1に作用する浮揚力の程度に応じてウエイトリング15の取り付け枚数を適宜調整することが出来、経済的で最適な浮上防止構造を構築することが出来る。
【0056】
マンホール1に浮揚力が作用していない状態では、該マンホール1の直壁管4の外周部に突設された係合部となる係合ブロック12のテーパ面12aと、浮上防止環状体14の内側テーパ面14aとの間には隙間17が設けられており、マンホール1と浮上防止環状体14とは分離した構造となっている。このため、通常時は浮上防止環状体14及びウエイトリング15の重量がマンホール1に荷重としてかからず、マンホール1の沈下に悪影響を与えない構成とされる。また、地震時においてもマンホール1の慣性力を増大させないため、マンホール1の耐震性能は当初の設計通りに維持できる。
【0057】
マンホール1に特殊な加工を施すことなく簡易な方法により低コストで施工できるため、新規のマンホール1のみならず、既設のマンホール1に対しても容易に浮上り抑制対策を施すことが出来る。
【0058】
浮上防止環状体14に使用するアンカーボルト11はモルタルやコンクリートで覆われるため、地中構造物としては耐久性が高い。また、浮上防止環状体14の使用材料は市販のアンカーボルト11とプレキャストコンクリート製品であるため経済的である。また、浮上防止環状体14は、転圧した地盤9の上に載せるだけの単純な構造であるため特殊な施工作業が必要でなく、施工性が良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の活用例として、地震時などに発生する液状化現象によりマンホールの浮上りを防止するマンホールの浮上防止構造及びその設計方法に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
A,B …投影面積
C…面積
m …図心
w1〜w4 …幅
,F,F,F…ベクトル
h1,h2…高さ
φa…内側上部テーパ面の外径直径
φb…外側テーパ面の内径直径
φo…浮上防止環状体の外径直径
φi…浮上防止環状体の内径直径
θ…外側テーパ面の水平面に対する傾斜角度
θ…内側上部テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度
1 …マンホール
2 …底版
3,4 …直壁管
5 …斜壁管
6,7 …高さ調整リング
8 …マンホール蓋受けリング
9 …地盤
10 …排水管
11 …アンカーボルト
12 …係合ブロック(係合部)
12a …テーパ面
12b …ボルト挿入口
13 …インサートナット
14 …浮上防止環状体
14a …内側テーパ面
14b …外側テーパ面
14c …内側上部テーパ面
14d …底面
14e …側面
14f …天面
14g …連結ボルト挿入孔
15 …ウエイトリング
15a …連結ボルト挿入孔
16 …連結ボルト
17 …隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状管からなるマンホールの外周部に突設され、その径方向の外周面が下方側に広がるテーパ面を有する係合部と、
前記マンホールの外周で前記係合部に対応する位置に離間して配置され、所定の重量を有する浮上防止環状体と、
を有し、
前記浮上防止環状体は、
前記係合部のテーパ面に当接し得る径方向の内周面が下方側に広がる内側テーパ面と、
前記浮上防止環状体の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面と、
を有し、
前記マンホールに作用する浮揚力が前記係合部を介して前記浮上防止環状体に作用した際に前記外側テーパ面に作用する土圧により該浮上防止環状体を径方向内側に押圧することで前記係合部に固定された前記マンホールの浮上を防止することを特徴とするマンホールの浮上防止構造。
【請求項2】
前記浮上防止環状体は、更に径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面を有し、
前記浮上防止環状体の径方向の外周面が下方側に広がる外側テーパ面の軸方向に対する投影面積をA、前記浮上防止環状体の径方向の内周面が上方側に広がる内側上部テーパ面の軸方向に対する投影面積をB、前記外側テーパ面と前記内側上部テーパ面とを接続する前記浮上防止環状体の天面の面積をC、前記外側テーパ面の水平面に対する傾斜角度をθ、前記内側上部テーパ面の水平面に対する傾斜角度をθ、前記浮上防止環状体の一部の縦断面の図心をmとし、該図心mを原点として、前記マンホールに作用する浮揚力が前記係合部を介して前記浮上防止環状体に作用した際に、前記外側テーパ面に作用する力をベクトルFとし、前記内部上部テーパ面に作用する力をベクトルFとし、前記天面に作用する力をベクトルFとし、前記ベクトルFと前記ベクトルFと前記ベクトルFとを合成した力をベクトルFとするとき、
【数1】

により求められるFが最小値となるように設定されることを特徴とする請求項1に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項3】
請求項2に記載のマンホールの浮上防止構造の設計方法であって、
前記浮上防止環状体の外径直径φo及び内径直径φiをそれぞれ所定の値に固定すると共に、前記浮上防止環状体の前記外側テーパ面の鉛直方向の高さh1及び前記内側上部テーパ面の鉛直方向の高さh2をそれぞれ所定の値に固定し、
前記浮上防止環状体の前記外側テーパ面の上端部と、前記内側上部テーパ面の上端部とに接続される前記浮上防止環状体の天面の幅を所定の値に固定した状態で該天面の位置を水平方向に移動した時に変化する前記投影面積A,B、前記傾斜角度θ,θ、のそれぞれの値に基づいて、前記数1式により求められるFの値を複数算出し、その算出した複数のFの値の最小値に対応する前記投影面積A,B、前記傾斜角度θ,θに基づいて前記浮上防止環状体を設計することを特徴とするマンホールの浮上防止構造の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−1742(P2011−1742A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145370(P2009−145370)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000120146)株式会社ハネックス (56)
【Fターム(参考)】