説明

マークチューブ

【課題】 配管時には識別の為のマーキング部が固着されているが、配管後には該マーキング部が容易に除去され、搬送される液体の視認を円滑となるようなマークチューブを提供する。全体として細径化され、しかも、コア群が安定化された配置状態を呈する多芯型撚糸構造体を提供する。
【解決手段】 透明チューブ本体の外表面に、該チューブの横断面方向の曲げ応力に対しては剥離しないが、長手方向に沿っては円滑な剥離性を呈するようなマーキング部を固着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、特に薬液等の搬送用マークチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液等の搬送用チューブとしては、フッ素樹脂からなる透明チューブが汎用されている。この透明チューブは通常その複数本が同時に配管されるので、配管ミスが生じやすい欠点がある。この欠点を解消するため、該透明チューブ本体外表面にマーキング部が固着されたマークチューブが用いられる。ただ、このマーキング部はマークチューブ配管後には、各チューブ中の液体の搬送状態を視認する妨げになる。このことから、配管後の各マークチューブは全体として元の透明チューブに復帰することが好ましい。
【0003】
ところが、これまでのマーキング部は透明チューブ外表面の一部に塗布したインクを熱固着するか、レーザー加工により透明チューブ外表面の一部を失透させることにより付与されてきた。したがって、配管後のマークチューブからこれらインク部や失透部を除去することは実質的に不可能に近い。
【0004】
もし、上記マーキング部が容易に除去されるようなマークチューブが実現すれば、チューブ配管作業の効率は格段に向上する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、配管時には識別の為のマーキング部が固着されているが、配管後には該マーキング部が容易に除去され、搬送される液体の視認を円滑となるようなマークチューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、透明チューブ本体の外表面に、該チューブの横断面方向の曲げ応力に対しては剥離しないが、長手方向に沿っては円滑な剥離性を呈するようなマーキング部を固着することにより達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下のような顕著な効果が奏される。
(1) マークチューブに繰り返し曲げ応力が加わっても、マーキング部の剥離現象は皆無に等しいほど、それら樹脂の接着界面は安定している。しかしながら、該チューブの切り込み部または端部でマーキング部の端部を指で掴んでマークチューブから引き上げると、このマーキング部は円滑且つ連続的に剥離していく。したがって、配管後にはマーキング部のみが容易にしかも一括して剥離されるため、配管後の作業効率が改善されるばかりか液体の視認も楽になる。
(2) 透明チューブ本体とマーキング部とは、同時押出し工程を利用して形成できるため、殊更のマーキング付与工程が割愛され、マークチューブ製造のコストダウンが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のマークチューブについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るマークチューブの好ましい一例を示す横断面図である。
図2は、本発明に係るマークチューブのマーキング部を剥離した状態の一例を示す横断面図である。
【0009】
図1および図2において、(1)はマークチューブ、(2)は透明チューブ本体、(3)はマーキング部である。この例では、マーキング部(3)は、透明チューブ本体(2)の横断面方向で対峙する2箇所の外表面に固着され、且つ細幅状薄膜体として透明チューブ本体(2)の長手方向に延在している。マーキング部(3)の寸法については、透明チューブ本体(2)の寸法にもよるが、一般的には、巾が1.00mm以上、深さが0.05〜0.50mmの間にあればよい。また、その本数については、識別機能の面から1〜3本程度で十分である。
【0010】
上述のマークチューブ(1)に特徴的なことは、その特異な接着挙動にある。つまり、マークチューブ(1)を繰り返し折り曲げても、マーキング部(3)が剥離することはないが、該チューブ本体(1)の切り込み部または端部でマーキング部(3)の端部を指で掴んで透明チューブ本体(2)から引き上げると、マーキング部は円滑且つ連続的に剥離していく。したがって、このマークチューブ(1)はそれが有する識別性の故に配管作業を確実にするばかりか、配管後にはマーキング部(3)の一括剥離ひいては液体の円滑な視認をも保証している。
【0011】
ここで、透明チューブ本体(2)を構成するフッ素樹脂(ベース樹脂)としては、その使用時の耐熱温度等を考慮しながら透明な樹脂を適宜選択すればよい。ここで言う“透明”とは、チューブ内の液体の色や搬送ないし流動状態が容易に視認できる程度の透明度を言う。一方、マーキング部(3)を構成する樹脂は、ベース樹脂の色相とコントラストをなす色相を呈し且つベース樹脂とは異なる樹脂、すなわち該ベース樹脂に対して非相溶性の樹脂であればよい。もちろん、この非相溶性の樹脂も、チューブ使用時の耐熱温度やベース樹脂の融点等を考慮しながら適宜選択される。具体的な樹脂の組み合わせとしては、該ベース樹脂として、例えばテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(FEP)を用いる場合、該非相溶性の樹脂としては、該FEPとはグレードや分子構造を異にし且つ融点が±50℃程度のフッ素樹脂(例えばエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、さらには該FEPとの融点が±100℃程度のポリエステル、ナイロン等のフッ素樹脂以外の樹脂が用いられる。そして、マークチューブ(1)は、このようにして選択された2種の樹脂を同時押出し工程にて形成される。
【0012】
このようにして得られたマークチューブ(1)を使用する配管作業の例について述べる。配管されるチューブが2本の場合は、マーキング部無しの透明チューブと本発明のマークチューブ(1)を組み合わせるか、本発明のマークチューブの2本、例えば、マーキング部(2)が異色の有彩色、例えば赤色と青色のマークチューブを組み合わせてもよい。同様に、配管されるチューブが3本以上の場合は、そのうちの1本をマーキング部無しの透明チューブとし、残りのチューブ間でマーキング部(2)の色相が互いに異なるマークチューブ(1)を組み合わせてもよいし、全本数を、互いに異なる色のマーキング部からなるマークチューブとしてもよい。
【実施例】
【0013】
透明チューブ本体(2)を構成するベース樹脂として、融点が310℃のPFAを100重量部に対して、マーキング部(3)を構成する非相溶性樹脂として、融点が275℃のFEPに青色顔料を添加したものを10量部、夫々に秤量して、同時押し出し機に投入した。その際、同時押し出し機の金型は図1の横断面形状に対応するものを使用した。また、溶融温度は350℃、および押し出し速度は1.5m/分として、外径が6mmで肉厚が1mmの透明チューブ本体(2)の外表面に、巾が3mm、深さが0.3mmのマーキング部(3)が固着されたマークチューブ(1)を得た。
【0014】
得られたマークチューブ(1)を手で30回繰り返し屈曲してみたが、マーキング部(3)は剥離することはなかった。このことから、ボビン巻で梱包されるマークチューブ(1)は、梱包時にもマーキング部(3)の剥離の懸念がないことが確認された。一方、該チューブ(1)の端部でマーキング部(3)の端部を指で掴んでチューブ本体(1)から引き上げると、マーキング部(3)は円滑且つ連続的に剥離していった。その結果、マーキング部(3)の剥離作業は格段に向上し、しかも視認性が拡大された透明チューブが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のマークチューブは、液体の搬送用として有用であるが、同様に、電線の保護カバー用としても有効に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るマークチューブの一例を示す横断面図である。
【図2】本発明に係るマークチューブのマーキング部を剥離した状態の一例を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 マークチューブ
2 透明チューブ本体
3 マーキング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂からなる透明チューブ本体の外表面にマーキング部が固着されてなるマークチューブにおいて、該マーキング部は、該透明チューブ本体を構成するフッ素樹脂とは異なる色の樹脂で構成され且つ該透明チューブ本体からその長手方向に沿って剥離自在に固着されていることを特徴とするマークチューブ。
【請求項2】
該マーキング部が細巾状薄膜体である請求項1に記載のマークチューブ。
【請求項3】
該細巾状薄膜体が、該マークチューブの長手方向に延在してなる請求項2に記載のマークチューブ。
【請求項4】
該マーキング部を構成する樹脂が有彩色に着色されている請求項1〜3のいずれかに記載のマークチューブ。
【請求項5】
該マーキング部を構成する樹脂が、該フッ素樹脂に非相溶性である請求項1〜4のいずれかに記載のマークチューブ。

【図1】
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【図2】
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