説明

マーク付き用紙の搬送距離の補正方法、サーマルプリンタ及びプログラム

【課題】安価且つ容易に印刷位置のずれを補正することができるマーク付き用紙の搬送距離の補正方法、サーマルプリンタ及びプログラムを提供する。
【解決手段】サーマルプリンタは、マーク付き用紙のマークを検出し、当該マークの検出後、予め決められた距離だけマーク付き用紙を搬送し、マーク付き用紙に複数の罫線を印刷し、基準位置に印刷されるべき罫線の識別子と実際に基準位置に印刷された罫線の識別子との差分に各罫線の印刷間隔を乗算することによって、マーク付き用紙の搬送距離の補正値を取得すると共にデータを印刷する際に、マーク付き用紙の搬送距離に補正値を加算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーク付き用紙の搬送距離の補正方法、サーマルプリンタ及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レシートや控え(ジャーナル)用途に使用されるサーマルプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、用紙内のマークを検出し、自動的に用紙を搬送する位置補正機能を有するサーマルプリンタが知られている。このサーマルプリンタは、罫線の印刷を行う。そして、ユーザが罫線と基準位置との間の距離を定規で測定し、サーマルプリンタは、その測定結果に基づいて、印刷位置のずれを補正している。
【0004】
また、位置補正機能を有していないサーマルプリンタが知られている。このサーマルプリンタは、印刷機構とマーク検出センサを備え、印刷機構とマーク検出機構との間の距離を構造的に調整することで、印刷位置のずれを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−255348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、罫線と基準位置との間の距離を定規で測定する場合、印刷位置のずれを補正するために定規が必ず必要になる。また、罫線と基準位置との間の距離を定規で測定するのはユーザにとって煩わしい。一方、印刷機構とマーク検出機構との間の距離を構造的に調整する場合、調整機構が必要になり、サーマルプリンタの製造コストが上昇する。
【0007】
本発明の目的は、安価且つ容易に印刷位置のずれを補正することができるマーク付き用紙の搬送距離の補正方法、サーマルプリンタ及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、マーク付き用紙の搬送距離の補正方法は、マーク付き用紙のマークを検出し、当該マークの検出後、予め決められた距離だけ前記マーク付き用紙を搬送し、前記マーク付き用紙に複数の罫線を印刷し、基準位置に印刷されるべき罫線の識別子と実際に基準位置に印刷された罫線の識別子との差分に各罫線の印刷間隔を乗算することによって、マーク付き用紙の搬送距離の補正値を取得し、データを印刷する際に、前記マーク付き用紙の搬送距離に前記補正値を加算することを特徴とする。かかる構成によれば、安価且つ容易に印刷位置のずれを補正することができる。
【0009】
好ましくは、前記補正値を不揮発性メモリに保存することを特徴とする。かかる構成によれば、装置の電源が切断された後でも、補正値を保存することができる。
【0010】
好ましくは、前記基準位置は、前記マーク付き用紙の搬送方向における前記マークの下端、前記マーク付き用紙にプレ印刷された罫線、及び前記マーク付き用紙に含まれる複数のラベルの切れ目のいずれか1つであることを特徴とする。かかる構成によれば、安価且つ容易に印刷位置のずれを補正することができる。
【0011】
より好ましくは、前記プレ印刷された罫線の色は、前記マーク付き用紙に印刷される複数の罫線の色と異なることを特徴とする。かかる構成によれば、プレ印刷された罫線に重なる罫線を容易に判断することができる。
【0012】
好ましくは、前記複数の罫線は、前記マーク付き用紙の搬送方向に各罫線の幅に対応する間隔だけずらされ、且つ前記マーク付き用紙の幅方向に罫線同士が重ならないようにずらされていることを特徴とする。かかる構成によれば、ユーザが定規を使用せずに目視で補正値を把握することができる。
【0013】
好ましくは、前記複数の罫線は、前記マーク付き用紙の搬送方向に、罫線と当該罫線の幅に対応する間隔とが交互に繰り返されるように印刷されることを特徴とする。かかる構成によれば、ユーザが定規を使用せずに目視で補正値を把握することができる。
【0014】
好ましくは、前記複数の罫線は、前記マーク付き用紙の幅方向の長さが異なる複数の罫線であり、当該長さが異なる複数の罫線が前記マーク付き用紙の搬送方向に、交互に繰り返されていることを特徴とする。かかる構成によれば、ユーザが定規を使用せずに目視で補正値を把握することができる。
【0015】
好ましくは、前記複数の罫線の近傍に各罫線を識別する識別子を印刷することを特徴とする。かかる構成によれば、基準位置に重なっている罫線を容易に識別することができる。
【0016】
上記目的を達成するため、サーマルプリンタは、マーク付き用紙のマークを検出する検出手段と、当該マークの検出後、予め決められた距離だけ前記マーク付き用紙を搬送する搬送手段と、前記マーク付き用紙に複数の罫線を印刷する印刷手段と、基準位置に印刷されるべき罫線の識別子と実際に基準位置に印刷された罫線の識別子との差分に各罫線の印刷間隔を乗算することによって、マーク付き用紙の搬送距離の補正値を取得する取得手段と、データを印刷する際に、前記マーク付き用紙の搬送距離に前記補正値を加算する加算手段とを備えることを特徴とする。かかる構成によれば、安価且つ容易に印刷位置のずれを補正することができる。
【0017】
上記目的を達成するため、プログラムは、コンピュータを、マーク付き用紙のマークを検出する検出手段、当該マークの検出後、予め決められた距離だけ前記マーク付き用紙を搬送する搬送手段、前記マーク付き用紙に複数の罫線を印刷する印刷手段、基準位置に印刷されるべき罫線の識別子と実際に基準位置に印刷された罫線の識別子との差分に各罫線の印刷間隔を乗算することによって、マーク付き用紙の搬送距離の補正値を取得する取得手段、及びデータを印刷する際に、前記マーク付き用紙の搬送距離に前記補正値を加算する加算手段として機能させることを特徴とする。かかる構成によれば、安価且つ容易に印刷位置のずれを補正することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安価且つ容易に印刷位置のずれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係るサーマルプリンタの概略構成図である。
【図2】(A)は、印刷前のマーク付き用紙30の一例を示す図である。(B)は、印刷後に位置ずれが生じていない場合のマーク付き用紙30の一例を示す図である。(C)は、印刷後に位置ずれが生じている場合のマーク付き用紙30の一例を示す図である。
【図3】(A)は、罫線の印刷結果の一例を示す図である。(B)は、印刷されるべき罫線の一例を示す図である。(C)は、マーク付き用紙30上に印刷された罫線の一例を示す図である。(D)は、罫線及び罫線の番号が印刷される例を示す図である。
【図4】第1の補正処理を示すフローチャートである。
【図5】印刷処理を示すフローチャートである。
【図6】(A)はマーク付き用紙30上にプレ印刷された罫線の一例を示す図である。(B)は、(A)のプレ印刷された罫線上に印刷位置を補正するための罫線が印刷される例を示す図である。
【図7】第2の補正処理を示すフローチャートである。
【図8】マーク付き用紙30上に印刷された罫線の一例を示す図である。
【図9】第3の補正処理を示すフローチャートである。
【図10】(A)〜(C)は、マーク付き用紙30に印刷される罫線の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係るサーマルプリンタの概略構成図である。
【0022】
図1では、サーマルプリンタ1は、印刷手段として機能する印刷機構11、搬送手段として機能する用紙搬送機構12、検出手段として機能するマーク検出機構13、及び制御回路20を備えている。印刷機構11は、用紙搬送方向と垂直な方向(即ち、マーク付き用紙30の幅方向)に、感熱用紙であるマーク付き用紙30を発色させる複数の発熱体11Aを有している。用紙搬送機構12は、ローラ12A及びステッピングモータ12Bを有している。マーク検出機構13は、赤外線の発光ダイオードと赤外線を受光して電流を増幅させるフォトトランジスタとで構成される反射型フォトセンサ13Aをマーク検出センサとして備えている。
【0023】
サーマルプリンタ1の制御回路20は、MCU(Micro Controller Unit)21、印刷制御部22、用紙搬送制御部23、マーク検出制御部24、不揮発性メモリ25、及び入力部27を有している。MCU21は、サーマルプリンタ1の全体の動作を制御する。また、MCU21は、取得手段及び加算手段の一例として機能する。印刷制御部22は、印刷機構11の複数の発光体11Aに流す電流を制御することで、印刷データを印刷機構11に送信する。用紙搬送制御部23は、MCU21から指令に応じて、用紙搬送機構12のステッピングモータ12Bの動作を制御する。マーク検出制御部24は、反射型フォトセンサ13Aの出力電流を電圧に変換する。不挿発性メモリ25は、後述する印刷位置のずれを補正するための補正値を格納する。入力部27は、データを入力するためのインターフェースであり、表示装置とボタンとを含むインターフェース又はコンピュータ35に接続されるインターフェースである。
【0024】
印刷動作は、印刷機構11と用紙搬送機構12によって行われ、マーク付き用紙30が印刷機構11と用紙搬送機構12との間で搬送される。MCU21の指令によって印刷制御部22が複数の発熱体11Aに電流を流すことで、印刷機構11は、マーク付き用紙30の幅方向にドット形状の印刷を行う。用紙搬送機構12は、用紙搬送制御部23を介してMCU21の指令を受信し、1ドットの画素に相当する距離の用紙搬送を繰り返して、画像や文字を形成する。
【0025】
一方、マーク検出動作は用紙搬送機構12とマーク検出機構13によって行われる。マーク検出機構13は、マーク付き用紙30に赤外光を反射し、フォトダイオードで発生した電流量を検知することで、マーク付き用紙30のマークが反射型フォトセンサ13A上を通過したか否かを検出する。
【0026】
また、マーク付き用紙30では、マークが黒色であり、用紙自体は白色である。反射型フォトセンサ13Aでは、用紙の白部に対応する出力電力が大きくなり、用紙の黒部(即ちマーク)に対応する出力電力が小さくなる。反射型フォトセンサ13Aの出力電流はマーク検出制御部24によって電圧に変換され、当該電圧はMCU21に含まれるAD変換器26によってデジタル値として読み込まれる。これにより、MCU21はマークの通過を検知している。同時に、MCU21は、用紙搬送制御部23を介してマーク付き用紙30の搬送距離を認識しながら、マーク付き用紙30の搬送制御を行っている。従って、MCU21は、マークの通過を検知した後のマーク付き用紙30の搬送距離を認識することが可能である。
【0027】
図2(A)は、印刷前のマーク付き用紙30の一例を示す図である。図2(B)は、印刷後に位置ずれが生じていない場合のマーク付き用紙30の一例を示す図である。図2(C)は、印刷後に位置ずれが生じている場合のマーク付き用紙30の一例を示す図である。
【0028】
図2(A)に示すように、マーク付き用紙30には、所定のフォーマットでマーク31と表32のような下地が予め印刷されている。マーク付き用紙30は、マークによって決められている位置に停止される。表32には、図2(B)に示すように、予め決められたデータが印刷される。尚、下地は、表32に限定されず、下地はなくてもよい。
【0029】
ところで、同一機種のサーマルプリンタでもマーク検出機構13と印刷機構11との間の距離が異なる場合がある。これは、サーマルプリンタの製造工程において、マーク検出機構13、印刷機構11、又は反射型フォトセンサ13Aなどの取り付け位置がわずかにずれることがあるからである。このため、図2(C)に示すように、データが適正な位置に印刷されない場合がある。
【0030】
そこで、本実施の形態のサーマルプリンタ1では、安価で且つ容易な方法で印刷位置のずれを補正する。
【0031】
まず、従来の印刷位置のずれを補正する方法を説明する。
【0032】
従来の印刷位置のずれを補正する方法では、ユーザが罫線を書く位置をサーマルプリンタ1に設定する。例えば、ユーザは、マーク31から1cm離れた位置をサーマルプリンタ1に設定する。その後、サーマルプリンタ1は、実際にマーク付き用紙30に罫線を印刷する。具体的には、サーマルプリンタ1は、マーク31を検出した後、マーク付き用紙30を1cm搬送して、罫線を印刷する。罫線の印刷結果の一例を図3(A)に示す。ユーザは、マーク31と罫線との距離を定規で計測する。
【0033】
例えば、計測値が0.9cmである場合には、上記の設定値(1cm)と計測値(例えば、0.9cm)との差分が補正値(0.1cm)になる。また、計測値が1.1cmである場合には、補正値は−0.1cmになる。ユーザは、補正値をサーマルプリンタ1に設定する。これにより、サーマルプリンタ1は、マーク検出時に、用紙搬送距離に補正値を加算してマーク付き用紙30を搬送するので、印刷位置のずれが補正される。
【0034】
次に、本実施の形態の印刷位置のずれを補正する方法を説明する。
【0035】
図4は、第1の補正処理を示すフローチャートである。ここでは、マーク検出機構13と印刷機構11との間の距離をXaとする。
【0036】
まず、マーク検出機構13がマーク31を検出すると(ステップS1)、用紙搬送機構12がMCU21からの指令によってマーク付き用紙30を(Xa−1)mmだけ搬送する(ステップS2)。その後、用紙搬送機構12がマーク付き用紙30を0.125mm間隔で搬送しながら、印刷機構11は罫線を0.125mm間隔でマーク付き用紙30上に印刷する(ステップS3)。
【0037】
ここで、印刷されるべき罫線の一例を図3(B)に示す。マーク付き用紙30上に印刷された罫線の一例を図3(C)に示す。図3(B)では、16本の罫線51A〜51Pがマーク付き用紙30上に印刷されている。マーク31及び罫線51A〜51Pは黒色である。また、罫線51A〜51Pは用紙搬送方向に0.125mm間隔でずれており、用紙幅方向に罫線同士が重ならないようにずらされている。
【0038】
また、図3(C)ではマーク31の下端が基準位置になる。基準位置とは、印刷位置のずれを検出するための位置である。上述したように、マーク付き用紙30が(Xa−1)mmだけ搬送された後に、罫線が0.125mm間隔で印刷されるので、印刷位置のずれがない場合には、罫線51Hがマーク31の下端(即ち、基準位置)と重なる。しなかしながら、図3(C)では、基準位置が罫線51Fに重なっている。従って、距離Xaよりも罫線2本分だけ短い位置に罫線が印刷されているので、0.25mm(=0.125mm*2)が補正値となる。このように、罫線51A〜51Pは、用紙搬送方向に等間隔で印刷され、且つ用紙幅方向に罫線同士が重ならないように印刷されるので、ユーザは定規を使用せずに、目視で補正値を把握することができる。尚、図3(C)では、罫線51Fを説明のために白色で表示しているが、実際の罫線51Fは、他の罫線と同じように黒色である。
【0039】
図4に戻り、ユーザは、基準位置に重なっている罫線の番号を入力部27を介してMCU21に設定する(ステップS4)。尚、罫線51A〜51Pには、予め1〜16の番号がそれぞれ割り当てられている。図3(C)では、基準位置が罫線51Fに重なっているので、ユーザは罫線51Fの番号「6」をMCU21に設定する。尚、図3(D)に示すように、罫線の印刷時に、各罫線の上又は下に罫線を識別する識別子(例えば番号又は記号)を印刷してもよい。また、罫線の印刷時に、各罫線の左又は右に罫線を識別する識別子(例えば番号又は記号)を印刷してもよい。これにより、基準位置に重なっている罫線の番号を容易に識別することができる。
【0040】
その後、MCU21は、設定された番号に基づいて、用紙搬送距離の補正値を算出する(ステップS5)。具体的には、MCU21は、基準位置に印刷されるべき罫線の番号(罫線51Hの番号8)と実際に基準位置に印刷された罫線の番号(罫線51Fの番号6)との差分に各罫線の印刷間隔(0.125mm)を乗算することにより、用紙搬送距離の補正値を算出する。MCU21は、算出された補正値(図3(C)では、0.25mm)を不揮発性メモリ25に保存し(ステップS6)、本処理は終了する。尚、MCU21は、用紙搬送距離の補正値を算出する際に、基準位置に印刷されるべき罫線の番号と実際に基準位置に印刷された罫線の番号との差分を利用するが、基準位置に印刷されるべき罫線の記号(例えば、H)と実際に基準位置に印刷された罫線の記号(例えば、F)との差分を利用してもよい。この場合、記号Fと記号Hの差分は2になる。
【0041】
図4の第1の補正処理では、MCU21が用紙搬送距離の補正値を算出しているが、コンピュータ35が、用紙搬送距離の補正値を算出してもよい。この場合、ユーザは、基準位置に重なっている罫線の番号をコンピュータ35に設定し、コンピュータ35が、用紙搬送距離の補正値を算出し、算出された補正値を入力部27を介してMCU21に送信する。
【0042】
図5は、印刷処理を示すフローチャートである。ここでは、サーマルプリンタ1は、マーク31の下端(基準位置)からXb及びXcmmだけ離れた位置に複数のデータを印刷するものとする。
【0043】
まず、MCU21は補正値を不揮発性メモリ25から読み出す(ステップS11)。マーク検出機構13がマーク31を検出すると(ステップS12)、用紙搬送機構12がMCU21からの指令によってマーク付き用紙30を(Xa+Xb+補正値)mmだけ搬送する(ステップS13)。用紙搬送機構12はマーク付き用紙30上に最初のデータを印刷する(ステップS14)。その後、用紙搬送機構12はMCU21からの指令によってマーク付き用紙30をXcmmだけ搬送する(ステップS15)。用紙搬送機構12はマーク付き用紙30上に次のデータを印刷する(ステップS16)。このように、最初のデータを印刷する際に(ステップS13)、用紙搬送距離(ここではXa+Xb)に補正値が付加されるので、最初のデータ及び次のデータの印刷位置は正確に補正される。
【0044】
そして、MCU21は印刷終了の条件を満たすか否かを判断する(ステップS17)。印刷終了の条件は、例えば、予め設定された部数の印刷が完了したこと、又は印刷終了指示がMCU21に入力されたことである。ステップS17でYESの場合には、本処理を終了する。一方、ステップS17でNOの場合には、手順はステップS12に戻る。
【0045】
次に、第2の補正処理を説明する。第2の補正処理は、基準位置がプレ印刷された淡い色の罫線である点で第1の補正処理とは異なる。
【0046】
マーク付き用紙30上にプレ印刷された罫線の一例を図6(A)に示す。また、図6(A)のプレ印刷された罫線上に印刷位置を補正するための罫線が印刷される例を図6(B)に示す。図6(A)に示すマーク31は黒色であり、プレ印刷された罫線61は淡い色(例えば、薄い青色)である。また、図6(B)に示す16本の罫線は、黒色であり、図3(B)の罫線51A〜51Pと同様である。プレ印刷された罫線61は、基準位置を示し、マーク31の下端から一定距離Xdだけ(例えば1cm)離れた位置に予め印刷されているものとする。
【0047】
図7は、第2の補正処理を示すフローチャートである。ここでは、マーク検出機構13と印刷機構11との間の距離をXaとする。
【0048】
まず、マーク検出機構13がマーク31を検出すると(ステップS31)、用紙搬送機構12がMCU21からの指令によってマーク付き用紙30を(Xa+Xd−1)mmだけ搬送する(ステップS32)。その後、用紙搬送機構12がマーク付き用紙30を0.125mm間隔で搬送しながら、印刷機構11は罫線を0.125mm間隔でマーク付き用紙30上に印刷する(ステップS33)。
【0049】
上述したように、マーク付き用紙30が(Xa+Xd−1)mmだけ搬送された後に、罫線が0.125mm間隔で印刷されるので、印刷位置のずれがない場合には、罫線51Hがプレ印刷された罫線61(基準位置)と重なる。しなかしながら、図6(B)では、基準位置が罫線51Fに重なっている。従って、距離Xa+Xdよりも罫線2本分だけ短い位置に罫線が印刷されているので、0.25mm(=0.125mm*2)が補正値となる。図7に戻り、ユーザは、基準位置に重なっている罫線の番号を入力部27を介してMCU21に設定する(ステップS34)。尚、罫線51A〜51Pには、予め1〜16の番号がそれぞれ割り当てられている。図6(B)では、基準位置が罫線51Fに重なっているので、ユーザは罫線51Fの番号「6」をMCU21に設定する。尚、図3(D)に示すように、罫線の印刷時に、各罫線の上又は下に罫線を識別する識別子(例えば番号又は記号)を印刷してもよい。また、罫線の印刷時に、各罫線の左又は右に罫線を識別する識別子(例えば番号又は記号)を印刷してもよい。これにより、基準位置に重なっている罫線の番号を容易に識別することができる。
【0050】
その後、MCU21は、設定された番号に基づいて、用紙搬送距離の補正値を算出する(ステップS35)。具体的には、MCU21は、基準位置に印刷されるべき罫線の番号(罫線51Hの番号8)と実際に基準位置に印刷された罫線の番号(罫線51Fの番号6)との差分に各罫線の印刷間隔(0.125mm)を乗算することにより、用紙搬送距離の補正値を算出する。MCU21は、算出された補正値(図6(B)では、0.25mm)を不揮発性メモリ25に保存し(ステップS36)、本処理は終了する。尚、MCU21は、用紙搬送距離の補正値を算出する際に、基準位置に印刷されるべき罫線の番号と実際に基準位置に印刷された罫線の番号との差分を利用するが、基準位置に印刷されるべき罫線の記号(例えば、H)と実際に基準位置に印刷された罫線の記号(例えば、F)との差分を利用してもよい。この場合、記号Fと記号Hの差分は2になる。
【0051】
図7の第2の補正処理では、MCU21が用紙搬送距離の補正値を算出しているが、コンピュータ35が、用紙搬送距離の補正値を算出してもよい。この場合、ユーザは、基準位置に重なっている罫線の番号をコンピュータ35に設定し、コンピュータ35が、用紙搬送距離の補正値を算出し、算出された補正値を入力部27を介してMCU21に送信する。
【0052】
また、第2の補正処理では、罫線61は淡い色(例えば、薄い青色)であり、罫線51A〜51Pは黒色であるので、罫線61に重なる罫線を容易に判断することができる。また、第2の補正処理では、マーク付き用紙30に罫線61がプレ印刷されるので、マーク31が用紙の裏面に印刷され、罫線51A〜51P及び罫線61が用紙の表面に印刷される場合でも、基準位置を規定することができる。
【0053】
次に、第3の補正処理を説明する。第3の補正処理は、基準位置がマーク付き用紙30上のラベルの切れ目である点で第1の補正処理とは異なる。
【0054】
マーク付き用紙30上に印刷された罫線の一例を図8に示す。図8のマーク付き用紙30は、下地が剥離紙であり、印刷領域がラベル34である。このマーク付き用紙30には、一定長のラベル34が繰り返し形成されている。第3の補正処理では、ラベル34間の切れ目71を基準位置とする。ラベル34間の切れ目71は、マーク31の下端から一定距離Xeだけ(例えば6cm)離れた位置にあるものとする。図8に示す16本の罫線は、黒色であり、図3(B)の罫線51A〜51Pと同様である。
【0055】
図9は、第3の補正処理を示すフローチャートである。ここでは、マーク検出機構13と印刷機構11との間の距離をXaとする。
【0056】
まず、マーク検出機構13がマーク31を検出すると(ステップS41)、用紙搬送機構12がMCU21からの指令によってマーク付き用紙30を(Xa+Xe−1)mmだけ搬送する(ステップS42)。その後、用紙搬送機構12がマーク付き用紙30を0.125mm間隔で搬送しながら、印刷機構11は罫線を0.125mm間隔でマーク付き用紙30上に印刷する(ステップS43)。
【0057】
上述したように、マーク付き用紙30が(Xa+Xe−1)mmだけ搬送された後に、罫線が0.125mm間隔で印刷されるので、印刷位置のずれがない場合には、罫線51Hがラベル34間の切れ目71(基準位置)と重なる。しなかしながら、図8では、基準位置が罫線51Fに重なっている。従って、距離Xa+Xeよりも罫線2本分だけ短い位置に罫線が印刷されているので、0.25mm(=0.125mm*2)が補正値となる。 図9に戻り、ユーザは、基準位置に重なっている罫線の番号を入力部27を介してMCU21に設定する(ステップS44)。尚、罫線51A〜51Pには、予め1〜16の番号がそれぞれ割り当てられている。図8では、基準位置が罫線51Fに重なっているので、ユーザは罫線51Fの番号「6」をMCU21に設定する。尚、図3(D)に示すように、罫線の印刷時に、各罫線の上又は下に罫線を識別する識別子(例えば番号又は記号)を印刷してもよい。また、罫線の印刷時に、各罫線の左又は右に罫線を識別する識別子(例えば番号又は記号)を印刷してもよい。これにより、基準位置に重なっている罫線の番号を容易に識別することができる。
【0058】
その後、MCU21は、設定された番号に基づいて、用紙搬送距離の補正値を算出する(ステップS45)。具体的には、MCU21は、基準位置に印刷されるべき罫線の番号(罫線51Hの番号8)と実際に基準位置に印刷された罫線の番号(罫線51Fの番号6)との差分に各罫線の印刷間隔(0.125mm)を乗算することにより、用紙搬送距離の補正値を算出する。MCU21は、算出された補正値(図8では、0.25mm)を不揮発性メモリ25に保存し(ステップS46)、本処理は終了する。尚、MCU21は、用紙搬送距離の補正値を算出する際に、基準位置に印刷されるべき罫線の番号と実際に基準位置に印刷された罫線の番号との差分を利用するが、基準位置に印刷されるべき罫線の記号(例えば、H)と実際に基準位置に印刷された罫線の記号(例えば、F)との差分を利用してもよい。この場合、記号Fと記号Hの差分は2になる。
【0059】
図9の第3の補正処理では、MCU21が用紙搬送距離の補正値を算出しているが、コンピュータ35が、用紙搬送距離の補正値を算出してもよい。この場合、ユーザは、基準位置に重なっている罫線の番号をコンピュータ35に設定し、コンピュータ35が、用紙搬送距離の補正値を算出し、算出された補正値を入力部27を介してMCU21に送信する。
【0060】
また、第3の補正処理では、ラベル34間の切れ目71を基準位置として利用するので、第2の補正処理に示す淡い色の罫線のプレ印刷が不要である。また、第3の補正処理では、マーク31が用紙の裏面に印刷され、罫線51A〜51Pが用紙の表面に印刷される場合でも、基準位置を規定することができる。
【0061】
第1〜第3の補正処理では、図3(B)、図6(B)及び図8に示すように、罫線51A〜51Pが用紙幅方向にずれるようにマーク付き用紙30に印刷されている。マーク付き用紙30に印刷される罫線は、例えば、図10(A)に示すように、0.125mm間隔で印刷される部分と印刷されない部分が繰り返される構成でもよい。また、図10(B)に示すように、マーク付き用紙30に印刷される罫線は、千鳥格子状に形成されてもよい。さらに、図10(C)に示すように、マーク付き用紙30に印刷される罫線は、長さの違う罫線が繰り返されるように形成されてもよい、即ち、櫛歯状に形成されてもよい。
【0062】
また、第1〜第3の補正処理では、各罫線の幅は0.125mmであるが、これに限定されるものではない。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態によれば、サーマルプリンタ1は、マーク付き用紙のマークを検出するマーク検出機構13と、当該マークの検出後、予め決められた距離だけマーク付き用紙を搬送する用紙搬送機構12と、マーク付き用紙に複数の罫線を印刷する印刷機構11と、基準位置に印刷されるべき罫線の識別子と実際に基準位置に印刷された罫線の識別子との差分に各罫線の印刷間隔を乗算することによって、マーク付き用紙の搬送距離の補正値を取得すると共にデータを印刷する際に、マーク付き用紙の搬送距離に補正値を加算するMCU21とを備える。よって、印刷位置のずれを定規で計測することなく、安価且つ容易に印刷位置のずれを補正することができる。
【0064】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 サーマルプリンタ
11 印刷機構
11A 発熱体
12 用紙搬送機構
12A ローラ
12B ステッピングモータ
13 マーク検出機構
13A 反射型フォトセンサ
20 制御回路
21 MCU
22 印刷制御部
23 用紙搬送制御部
24 マーク検出制御部
25 不揮発性メモリ
26 AD変換器
27 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーク付き用紙のマークを検出し、
当該マークの検出後、予め決められた距離だけ前記マーク付き用紙を搬送し、
前記マーク付き用紙に複数の罫線を印刷し、
基準位置に印刷されるべき罫線の識別子と実際に基準位置に印刷された罫線の識別子との差分に各罫線の印刷間隔を乗算することによって、マーク付き用紙の搬送距離の補正値を取得し、
データを印刷する際に、前記マーク付き用紙の搬送距離に前記補正値を加算する
ことを特徴とするマーク付き用紙の搬送距離の補正方法。
【請求項2】
前記補正値を不揮発性メモリに保存することを特徴とする請求項1に記載のマーク付き用紙の搬送距離の補正方法。
【請求項3】
前記基準位置は、前記マーク付き用紙の搬送方向における前記マークの下端、前記マーク付き用紙にプレ印刷された罫線、及び前記マーク付き用紙に含まれる複数のラベルの切れ目のいずれか1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載のマーク付き用紙の搬送距離の補正方法。
【請求項4】
前記プレ印刷された罫線の色は、前記マーク付き用紙に印刷される複数の罫線の色と異なることを特徴とする請求項3に記載のマーク付き用紙の搬送距離の補正方法。
【請求項5】
前記複数の罫線は、前記マーク付き用紙の搬送方向に各罫線の幅に対応する間隔だけずらされ、且つ前記マーク付き用紙の幅方向に罫線同士が重ならないようにずらされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマーク付き用紙の搬送距離の補正方法。
【請求項6】
前記複数の罫線は、前記マーク付き用紙の搬送方向に、罫線と当該罫線の幅に対応する間隔とが交互に繰り返されるように印刷されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマーク付き用紙の搬送距離の補正方法。
【請求項7】
前記複数の罫線は、前記マーク付き用紙の幅方向の長さが異なる複数の罫線であり、当該長さが異なる複数の罫線が前記マーク付き用紙の搬送方向に、交互に繰り返されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマーク付き用紙の搬送距離の補正方法。
【請求項8】
前記複数の罫線の近傍に各罫線を識別する識別子を印刷することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマーク付き用紙の搬送距離の補正方法。
【請求項9】
マーク付き用紙のマークを検出する検出手段と、
当該マークの検出後、予め決められた距離だけ前記マーク付き用紙を搬送する搬送手段と、
前記マーク付き用紙に複数の罫線を印刷する印刷手段と、
基準位置に印刷されるべき罫線の識別子と実際に基準位置に印刷された罫線の識別子との差分に各罫線の印刷間隔を乗算することによって、マーク付き用紙の搬送距離の補正値を取得する取得手段と、
データを印刷する際に、前記マーク付き用紙の搬送距離に前記補正値を加算する加算手段と
を備えることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項10】
コンピュータを、
マーク付き用紙のマークを検出する検出手段、
当該マークの検出後、予め決められた距離だけ前記マーク付き用紙を搬送する搬送手段、
前記マーク付き用紙に複数の罫線を印刷する印刷手段、
基準位置に印刷されるべき罫線の識別子と実際に基準位置に印刷された罫線の識別子との差分に各罫線の印刷間隔を乗算することによって、マーク付き用紙の搬送距離の補正値を取得する取得手段、及び
データを印刷する際に、前記マーク付き用紙の搬送距離に前記補正値を加算する加算手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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