説明

ミクロポーラス沈降シリカ

以下の物理化学的パラメータを有するミクロポーラス沈降シリカが本明細書に記載される:CTAB表面積50から300平方メートル/グラム、BET/CTAB比≧1.3、細孔径分布の相対幅γ≦3.5。上記沈降シリカは、Sears数10から28及びSears数/CTAB比≦0.16も有することができる。上記ミクロポーラス沈降シリカを含む、加硫可能及び加硫されたエラストマー組成物、例えばタイヤも本明細書に記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2009年5月4日に出願された米国特許出願番号第61/175,188号に対する優先権を主張し、この出願はその全体が本明細書において参照として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、増加された量のミクロポロシティを有する沈降シリカに関する。本発明は、さらに、ミクロポーラス沈降シリカがエラストマーのための強化用充填剤として使用された加硫可能及び加硫されたエラストマー混合物、並びにミクロポーラス沈降シリカを生成するプロセスにも関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
沈降シリカは、ゴム用途、例えばタイヤに使用される加硫可能なエラストマー組成物に使用される周知の白色強化用充填剤である。一般に、最適な強化特性を得るためには、エラストマー混合物に使用される充填剤は、エラストマー混合物中に微細な形で存在し、均一に分布すべきであることが知られている。エラストマーに使用される初期の沈降シリカ材料の多くは、加硫可能なエラストマー混合物に添加中に凝集し、そのため、かかるシリカによってエラストマーに付与される強化レベルは制限される傾向にあった。
【0004】
最近、沈降シリカは、当業界で「グリーンタイヤ」として知られるものに使用するために開発され、かかるタイヤの転がり抵抗を、タイヤに使用されたそれまでのシリカ強化エラストマーよりも減少させた。しかし、「グリーンタイヤ」の摩耗性能は、カーボンブラックのみで強化されたタイヤのレベル程度のままであった。原材料コスト及び環境的圧力の高まりと共に、同等又は改善された耐摩耗性を付与しながら、タイヤの転がり抵抗の更なる改善が引き続き必要とされている。
【0005】
沈降シリカのCTAB表面積は、エラストマー混合物において強化関連特性と直接相関することが示された。CTAB表面積が大きいほど耐摩耗性が改善されることが一般に認められている。しかし、CTAB表面積の増加は、硬化エラストマー混合物のヒステリシス特性を増大させることも示された。すなわち、硬化エラストマー混合物の機械的力学的負荷が、タイヤの場合には、発熱の増加をもたらし、その結果、転がり抵抗が増加して、燃料効率が悪化する。
【0006】
沈降シリカの調製中に沈降シリカ内に形成される構造、すなわち細孔が、性能に影響を及ぼし得ることも示唆された。この構造の二つの測定値は、沈降シリカのBET/CTAB表面積比、及び沈降シリカの細孔径分布の相対幅(γ)である。BET/CTAB比率は、窒素などのより小さい分子のみが接触可能な細孔に含まれる表面積を含めた沈降シリカ表面積全体(BET)と、シリカが添加されるエラストマー、例えばゴムが接触可能な外表面積(CTAB)との比である。この比は、典型的には、ミクロポロシティの尺度と称される。高いミクロポロシティ値、すなわち高いBET/CTAB比率数は、エラストマーが接触可能な外表面(CTAB)に対して、小さい窒素分子が接触可能であるが(BET表面積)エラストマーが接触不可能な内表面の割合が高い。細孔径分布の相対幅(γ)は、孔径が沈降シリカ粒子内にどれだけ広範に分布しているかの指標である。γ値が低いほど、沈降シリカ粒子内の細孔の細孔径分布は狭い。
【0007】
最後に、沈降シリカ表面のシラノール基は、エラストマー混合物においてその性能に影響を及ぼし得ることも知られている。Sears数は、沈降シリカ上のシラノール基濃度を記述する尺度である。沈降シリカの提案されている一パラメータは、所与のレベルのCTAB表面積に対するシラノール基の濃度である。沈降シリカ表面のシラノール基は、シリカとエラストマー(ゴム)マトリックスをカップリングさせるカップリング試薬に対する潜在的化学反応部位として機能し、強化特性、例えば耐摩耗性を改善することができる。エラストマー混合物におけるシリカ表面のシラノール基は、粒子と粒子の相互作用部位としても機能する。粒子と粒子の相互作用の増大によって、ヒステリシス特性が増大する。すなわち、硬化エラストマー混合物の機械的力学的負荷は、発熱の増加をもたらし、その結果の一例としてタイヤの転がり抵抗が増加して、燃料効率が悪化する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の簡単な要旨)
特定の組合せの物理化学的パラメータを有する沈降シリカは、エラストマーの適用に関連した諸特性を改善することが今回見いだされた。より具体的には、所与のレベルの強化関連特性をもたらす所与のCTAB表面積と、高いミクロポロシティと、比較的狭い細孔径分布との組合せを有する沈降シリカは、意外なことに、低いヒステリシス特性をもたらすことが見いだされた。さらに、特定の範囲のシラノール基、特に所与の外表面積(CTAB)に対して最小数のシラノール基は、ヒステリシス/強化比の最適化、すなわち燃料効率/耐摩耗性比の最適化に有利であることも見いだされた。より具体的には、かかる沈降シリカを、加硫可能なエラストマー組成物、例えばタイヤなどのゴム用途に意図されたエラストマー混合物に充填剤として添加すると、より低レベルのヒステリシスをもたらし、その結果、かかるエラストマー混合物から調製されたタイヤの転がり抵抗が低下することが見いだされた。さらに、かかるシリカの物理化学的パラメータは、より高レベルのエラストマー強化を達成することができ、これはより低いタイヤ摩耗をもたらす。
【0009】
本発明によれば、CTAB表面積が50から300m/グラム、BET/CTAB表面積比が≧1.3、及び細孔径分布の相対幅γが≦3.5である、ミクロポーラス沈降シリカが提供される。沈降シリカは、さらに、Sears数10から28及びSears数/CTAB比≦0.16を有することによって特徴づけることができる。
【0010】
本発明の別の一態様によれば、前記ミクロポーラス沈降シリカがエラストマー組成物強化用充填剤として使用される、加硫可能又は加硫されたエラストマー組成物が提供される。加硫されたエラストマー組成物は、タイヤ、例えばタイヤトレッドの製造に使用することができる。このタイヤは、低い転がり抵抗及び許容される耐摩耗性を有する。本発明の更に別の一態様においては、前記ミクロポーラス沈降シリカは、エラストマー組成物の主要な強化用充填剤として使用される。
【0011】
本発明の更に別の一態様によれば、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液の酸性化によって、前記ミクロポーラス沈降シリカを調製するプロセスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
(実施例以外の)本明細書では、別段の記載がない限り、成分、プロセス条件などの量及び範囲を表すすべての数は、すべての場合において「約」という語によって修飾されると理解すべきである。したがって、それに反しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の結果に応じて変わり得る近似値である。いずれにせよ、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものではないが、各数値パラメータは、少なくとも、報告する有効桁数に照らして、さらに、通常の丸め法を適用することによって、解釈すべきである。さらに、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、ひとつの指示対象に明示的かつ明確に限定されない限り、複数の指示対象を含むことが意図される。
【0013】
本発明の広範な範囲を記述した数値範囲及びパラメータは近似ではあるが、具体例で示した数値はできるだけ正確に報告している。しかし、どの数値も、測定器で見られる誤差を含めて、それぞれの試験測定で見られる標準偏差に必然的に起因するある程度の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書に列挙するどの数値範囲も、それに包含されるすべての部分的範囲を含むように意図されることを理解すべきである。例えば、「1から10」の範囲は、示した最小値1と最大値10を含めて、最小値1と最大値10の間のすべての部分的範囲、すなわち、1以上の最小値と10以下の最大値の範囲を含むものとする。開示した数値範囲は連続しているので、それらは最小値と最大値の間のあらゆる値を含む。別段の記載がない限り、本明細書で指定する種々の数値範囲は近似である。
【0014】
本発明の沈降シリカのCTAB表面積は、50から300m/グラムとすることができる。より具体的には、CTAB表面積は、150から250m/グラム、例えば180から220m/グラムの範囲とすることができる。本明細書で報告する沈降シリカのCTAB表面積値は、改変されたASTM D6845−02法に従って測定された。この方法は、陰イオン界面活性剤AerosolOT(登録商標)溶液を滴定液として使用して、pH9.6でシリカによって吸着される臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)の量を決定することによって外部比表面積を測定する。改変ASTM D6845−02法では、CTAB溶液とシリカを(40分間ではなく)35分間混合する。この方法は、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)を使用しない。さらに、シリカとCTAB溶液の分離にろ過を使用する他の公知のCTAB測定方法とは異なり、改変ASTM D6845−02法は遠心分離を使用する。所与の重量のシリカが吸着するCTABの量、及びCTAB分子によって占有される空間を使用して、シリカの外部比表面積を計算する。
【0015】
本明細書の実施例で報告するシリカCTAB値は、CTAB溶液及び下記方法を使用して測定された。分析は、Metrohm Interchangeable ”Snap−In”50ミリリットルビュレットと550nmフィルターを備えたBrinkmann Probe Colorimeter Model PC 910とを備えた、Metrohm 751 Titrino自動滴定装置を使用して実施された。さらに、Mettler Toledo HB43又は同等品を使用して、シリカの105℃水分損失を測定し、Fisher Scientific Centrific(商標)Centrifuge Model 225を使用して、シリカと残留CTAB溶液を分離した。過剰のCTABは、最大濁度に達するまでAerosolOT(登録商標)溶液を使用した自動滴定によって測定された。最大濁度は、プローブ比色計によって検出された。最大濁度ポイントは、150のミリボルト表示に対応すると解釈された。所与の重量のシリカが吸着するCTABの量及びCTAB分子によって占有される空間がわかると、シリカの外部比表面積が計算され、乾燥重量基準の平方メートル/グラムとして報告された。
【0016】
試験及び調製に必要な溶液は、pH9.6のバッファー、臭化セチル[ヘキサデシル]トリメチルアンモニウム(CTAB)、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(AerosolOT)及び1N水酸化ナトリウムを含んだ。pH9.6の緩衝液は、脱イオン水500ミリリットル及び塩化カリウム固体(Fisher Scientific,Inc.、技術グレード、結晶性)3.708グラムを含む1リットルメスフラスコ中にオルトホウ酸(99%;Fisher Scientific,Inc.、技術グレード、結晶性)3.101gを溶解させることによって調製された。ビュレットを使用して、1N水酸化ナトリウム溶液36.85ミリリットルを添加した。溶液を混合し、所定体積に希釈した。
【0017】
CTAB溶液は、CTAB(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとしても知られる臭化セチルトリメチルアンモニウム、Fisher Scientific Inc.、技術グレード)粉末11.0g±0.005gを使用して秤量皿上に調製された。CTAB粉末を2リットルビーカーに移し、秤量皿を脱イオン水でリンスした。pH9.6緩衝液約700ミリリットル及び蒸留又は脱イオン水1000ミリリットルを2リットルビーカーに添加し、磁気撹拌子で撹拌した。大きい時計皿をビーカーに載せ、CTAB粉末が完全に溶解するまでビーカーを室温で撹拌した。溶液を2リットルメスフラスコに移し、ビーカー及び撹拌子を脱イオン水でリンスした。気泡を消散させ、溶液を脱イオン水で所定体積に希釈した。大きい撹拌子を追加し、溶液をマグネチックスターラ上で約10時間混合した。CTAB溶液は、24時間後に使用することができるが、15日間しか使用できない。AerosolOT(商標)(スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、Fisher Scientific Inc.、100%固体)溶液は、秤量皿上に置かれた3.46g±0.005gを使用して調製された。秤量皿上のAerosolOTを、脱イオン水約1500ミリリットル及び大きい撹拌子を含む2リットルビーカー中にリンスした。AerosolOT溶液を溶解し、2リットルメスフラスコにリンスした。溶液をメスフラスコ中で2リットル体積の標線まで希釈した。AerosolOT(商標)溶液を、使用前に最低12日間熟成させた。AerosolOT溶液の品質保持期間は、調製日から2か月である。
【0018】
表面積試料調製前に、CTAB溶液のpHを確認し、1N水酸化ナトリウム溶液を使用してpH9.6±0.1に調節した。試験計算のために、ブランク試料を調製し、分析した。CTAB溶液5ミリリットルをピペットで取り、脱イオン水55ミリリットルを150ミリリットルビーカーに添加し、Metrohm751Titrino自動滴定装置で分析した。自動滴定装置は、以下のパラメータでブランク及び試料の測定用にプログラムされた:測定点密度=2、信号ドリフト=20、平衡時間=20秒、開始体積=0ml、停止体積=35ml及び固定終点=150mV。ビュレット先端及び比色計プローブは、溶液表面直下に置かれ、先端及び光プローブパス長が完全に沈むように配置された。先端と光プローブの両方は、ビーカーの底から本質的に等距離であり、互いに接触していなかった。最低限の撹拌(Metrohm728撹拌機で1の設定)をしながら、比色計を100%Tに設定した。その後、どのブランク及び試料の測定及び滴定もAerosolOT(登録商標)溶液を使用して開始された。終点を150mVにおける滴定液の体積(ml)として記録した。
【0019】
試験試料調製のために、シリカ粉末約0.30グラムを、撹拌子を含む50ミリリットル容器に計量した。シリカ顆粒試料を(粉砕及び計量する前に)切りまぜて(riffled)、代表的な小口試料を得た。コーヒーミル方式の粉砕機を使用して、顆粒材料を粉砕した。次いで、pHを調節したCTAB溶液30ミリリットルを、シリカ粉末0.30グラムを含む試料容器にピペットで取った。次いで、シリカとCTAB溶液を撹拌機で35分間混合した。混合終了後、シリカとCTAB溶液を20分間遠心分離して、シリカと過剰のCTAB溶液を分離した。遠心分離終了後、CTAB溶液を、「遠心分離物」と称する、分離固体のない清浄な容器にピペットで取った。試料分析のために、脱イオン水50ミリリットルを、撹拌子を含む150ミリリットルビーカーに入れた。次いで、遠心分離物試料10ミリリットルを分析用に同じビーカーにピペットで取った。ブランク溶液に使用したのと同じ技術及びプログラム手順を使用して、試料を分析した。
【0020】
含水量を測定するために、シリカ約0.2グラムをMettler Toledo HB43上に計量し、同時にCTAB値を測定した。水分分析計を105℃にプログラムし、停止5乾燥判定基準を使用した。水分損失を最も近い値(the nearest)±0.1%まで記録した。
【0021】
外表面積を以下の式によって計算した。
【0022】
【化1】

式中、
Vo=ブランク滴定に使用したAerosolOT(登録商標)の体積(ml)
V=試料滴定に使用したAerosolOT(登録商標)の体積(ml)
W=試料重量(グラム)
Vol=水分損失%(Volは「揮発性物質」を表す)。
【0023】
本発明の沈降シリカのBET表面積は、例えば、170から380平方メートル/グラム(m/グラム)、例えば220から340m/グラムなど、65から600m/グラムの間で変動し得る。本発明の一態様によれば、沈降シリカのBET値は、BET表面積(平方メートル/グラム)とCTAB表面積(平方メートル/グラム)の比率が1.3以上であるような値である。
【0024】
本出願の実施例で報告するBET表面積値は、ASTM D1993−03に準拠したBrunauer−Emmet−Teller(BET)法に従って測定された。BET表面積は、Micromeritics TriStar3000(商標)装置を使用して作製された窒素吸着等温線測定から5個の相対圧力ポイントをフィッティングすることによって決定することができる。Flow Prep−060(商標)ステーションは、熱及び連続ガス流を供給して、分析用試料を調製する。窒素吸着前に、シリカ試料は、流通窒素(P5グレード)中で温度160℃に少なくとも1時間加熱することによって乾燥される。
【0025】
本発明の沈降シリカの細孔径分布の相対幅γは、≦3.5、例えば2.0から3.5、より具体的には2.8から3.5である。細孔径分布の相対γの測定に使用される方法の記述は、米国特許第7,566,433号B2第3欄1〜31行及び第16欄6〜63行に見いだすことができる。この開示を参照によりその全体を本明細書に援用する。沈降シリカの細孔容積は、水銀ポロシメトリーによって測定される。この方法は、Micromeritics Autopore IV9500装置を使用したDIN66133(表面張力480mN/m及び接触角140°)へのHg(水銀)圧入に基づく。細孔径分布の相対幅γを測定する分析手順の記述は、本明細書の実施例の項に見いだすことができる。
【0026】
沈降シリカの細孔の性質、すなわち、シリカが添加されたエラストマー、例えばゴムが細孔に接触可能かどうかは、BET/CTAB比によって記述することができる。高い比率はミクロポロシティを表し、したがって、小さい窒素分子が接触可能であるが(BET表面積)、ゴムが接触不可能である内表面の高い割合を表す。本発明のミクロポーラス沈降シリカのBET/CTAB比は≧1.3、例えば1.3から2.0、より具体的には1.4から1.8である。
【0027】
本発明の更に別の一態様においては、本発明のミクロポーラス沈降シリカの改変Sears数は、10から28、例えば15から25である。改変Sears数は、シリカのシラノール基数の尺度である。例えば、テキスト”The Chemistry of Silica”、R.K.Iler、page 473、John Wiley&Sons(1979)を参照されたい。本明細書の実施例で報告する改変Sears値は、本明細書の実施例の項に記載した方法によって得られた。
【0028】
本発明の沈降シリカのSears数とCTAB表面積の比は、導入された外表面積1単位当たり、したがってシリカと一緒に使用されたカップリング剤が接触可能な比表面積1単位当たりのシリカのシラノール基によって生成される強化潜在能力、並びに充填剤−充填剤相互作用を生成する潜在能力を表すと見なされる。本明細書に記載の沈降シリカのSears数/CTAB比率は≦0.16、例えば0.08から0.16、より具体的には0.12から0.15である。
【0029】
本発明の沈降シリカは、以下の連続ステップを含むプロセスによって生成することができる。
【0030】
(a)所望のアルカリ度を有するアルカリ金属ケイ酸塩水溶液の最初の原液を調製し、反応器の内容物を加熱する手段を備えた反応器に添加し(又は反応器中で調製し)、
(b)反応器内の最初の原液を所望の反応温度に加熱し、
(c)反応器の内容物のアルカリ度及び温度を所望の値に維持しながら、酸性化剤と追加のアルカリ金属ケイ酸塩溶液を撹拌しながら同時に反応器に添加し、
(d)反応器へのアルカリ金属ケイ酸塩の添加を停止し、追加の酸性化剤を添加して、生成した沈降シリカ懸濁液のpHを所望の酸価に調節し、
(e)反応器中の沈降シリカを反応混合物から分離し、洗浄して副生成物の塩を除去し、
(f)乾燥させて、本発明の沈降シリカを形成する。
【0031】
前記プロセスで使用されるアルカリ金属ケイ酸塩は、典型的には、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムから選択され、通常はケイ酸ナトリウムである。アルカリ金属ケイ酸塩の溶液は、SiO0.1から20重量%、例えばSiO0.3から10重量%などのSiO0.2から15重量%を含むことができる。言い換えると、アルカリ金属ケイ酸塩溶液は、シリカとして表して、40から330g/l、例えば60から250g/lSiOの濃度を有することができる。アルカリ金属ケイ酸塩原液のSiO/MOモル比は、0.1から3.9、例えば2.9から3.5、3.1から3.4などの1.6から3.9である。式中、Mはナトリウム又はカリウムである。ケイ酸ナトリウムを使用すると、原液は、一般に、SiO/NaO比が2から4、例えば3.2などの3.0から3.7である。
【0032】
アルカリ金属ケイ酸塩溶液のアルカリ度は変わり得る。例えば、(AZ値として表される)アルカリ度は、5から40、例えば10から30の間で変わり得る。より具体的には、AZ値は、15から25、例えば20とすることができる。アルカリ金属ケイ酸塩溶液、例えばケイ酸ナトリウム溶液のアルカリ度、すなわち、AZ値の測定は、本明細書の実施例の項に見いだすことができる。
【0033】
沈殿反応器に添加される最初のアルカリ金属溶液は、反応器外で調製し、次いで反応器に添加することができる。あるいは、水を反応器に添加し、アルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムを、所望の濃度のアルカリ金属ケイ酸塩が得られるまで、反応器に添加することができる。沈殿反応器中で確立される最初のアルカリ金属ケイ酸塩溶液は、フォアショット(foreshot)と称されることがある。
【0034】
最初のアルカリ金属ケイ酸塩溶液は、更なる電解質、例えばアルカリ金属塩を含むこともできる。一般に、電解質は、存在する場合、酸性化剤として使用される酸のアルカリ金属塩である。例えば、ケイ酸ナトリウムと硫酸が、使用される反応物である場合、電解質は硫酸ナトリウムである。塩酸とケイ酸ナトリウムが、使用される反応物である場合、電解質は塩化ナトリウムである。使用される電解質が硫酸ナトリウムである場合、最初の原液におけるその濃度は、12から20g/l、例えば15から20g/lとすることができる。本方法では、最初の原液は、(無機又は有機)アルミニウム塩を実質的に含まない。
【0035】
反応器は、アルカリ金属ケイ酸塩を所望の反応温度に加熱する加熱手段を備える。例えば、反応器は、蒸気コイル又は外部電気バンドを備えることができる。反応器内容物を加熱する温度は変わり得るが、一般にその温度は20℃から100℃未満の範囲、例えば65℃から98℃などの30℃から100℃未満、特に75℃から95℃、例えば80℃である。
【0036】
アルカリ金属ケイ酸塩との反応に使用される酸性化剤は、一般に、硫酸、硝酸、塩酸などの強い無機酸であるが、(通常、反応媒体へのガス状二酸化炭素の添加による)炭酸などの有機酸を使用することができる。典型的には、硫酸又は塩酸が使用される。酸は、希釈又は濃縮することができるが、酸の規定度は、一般に0.4から8規定、例えば0.6から1.5規定である。硫酸を使用するときには、その濃度は、通常、40から180g/l、例えば60から130glである。上記プロセスの一態様においては、98重量%硫酸水溶液を使用する。
【0037】
選択された反応温度において、本発明の沈降シリカを調製する本明細書に記載のプロセスに従って、反応器中でアルカリ金属ケイ酸塩溶液フォアショットを確立した後、アルカリ金属ケイ酸塩反応物、例えばケイ酸ナトリウムと、酸性化剤、例えば硫酸を反応器中の最初のアルカリ金属ケイ酸塩溶液に激しく撹拌しながら同時に添加する。アルカリ金属ケイ酸塩溶液反応物のアルカリ度は、一般に、反応器中で確立された最初のアルカリ金属ケイ酸塩フォアショットの調製に使用されたものと同じである。このステップにおいて反応器に添加されるアルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムと、酸性化剤、例えば硫酸の体積比は、変わり得るが、一般に、アルカリ金属ケイ酸塩5部からアルカリ金属ケイ酸塩25部に対して酸、例えば硫酸1部、すなわち5:1から25:1の範囲である。別の一態様においては、アルカリ金属ケイ酸塩と酸性化剤の体積比は、アルカリ金属ケイ酸塩10から18部に対して酸1部、すなわち、10:1から18:1の間で変わり得る。このステップ中に反応器に添加されるアルカリ金属ケイ酸塩の量は、例えば、フォアショット中のアルカリ金属ケイ酸塩の量の1から6倍の間で変わり得る。
【0038】
反応器へのアルカリ金属ケイ酸塩反応物と酸性化剤の同時添加中は、反応混合物の温度は、ほぼ一定温度、例えば実質的に所望の反応温度、すなわち、最初のアルカリ金属ケイ酸塩溶液が加熱された初期温度に維持される。さらに、アルカリ金属ケイ酸塩と酸性化剤は、同時に、ただし反応器中の内容物のアルカリ度(AZ値)が最初のアルカリ金属ケイ酸塩溶液、すなわち、フォアショットと実質的に同じアルカリ度値(AZ値)で一般に0.25から1.5時間、例えば0.25から0.75時間維持されるように添加される。この時間は、同時添加ステップの開始から測定される。プロセスのこのポイント以降、アルカリ金属ケイ酸塩と酸性化剤の添加は、反応混合物のpHに基づいて制御される。
【0039】
アルカリ金属ケイ酸塩と酸性化剤の添加は、選択されたアルカリ金属ケイ酸塩反応物量を反応器に添加するまで続けられ、その間、酸性化剤添加速度は、反応混合物のpHが同時添加ステップの所望の最終pH以上であるように調節される。前記プロセスの一態様においては、pHは、プロセスのこの期間中はpH9以上のままである。通常、反応混合物の最終pHは9から9.7、例えば約9.5である。
【0040】
反応器へのアルカリ金属ケイ酸塩と酸性化剤の同時添加は、通常0.5から5時間、例えば1.5時間などの1から3時間実施される。アルカリ金属ケイ酸塩反応物と酸性化剤の同時添加中、反応器の内容物のpHは徐々に低下する。反応混合物のpHが約9から9.7、例えば約9.5に低下し、追加の所望の量のアルカリ金属ケイ酸塩が反応器に添加されない場合には、追加のアルカリ金属ケイ酸塩のすべてが添加されるまで、酸性化剤添加速度が、この最終pHを所望のレベルに維持するように調節される。追加のアルカリ金属ケイ酸塩のすべてが添加されると、酸とアルカリ金属ケイ酸塩反応物を反応器に同時に添加するステップが完結する。アルカリ金属ケイ酸塩反応物の添加はこの時点で中断されるが、反応器への酸性化剤の添加は、反応混合物のpHが2.5から5、例えば4に低下するまで、強く(激しく)撹拌しながら続けられる。
【0041】
得られる沈降シリカスラリーは、例えば、液体/固体分離ステップによって、沈降シリカ固形物を液体反応混合物から実質的に分離する従来の液体−固体分離装置及び技術を使用して、分離される。分離技術の非限定的例としては、ろ過、遠心分離、デカンテーションなどが挙げられる。プロセスの特定の一態様においては、使用される液体/固体分離技術は、ろ過、例えばフィルタープレスである。分離後、分離されたシリカ固体を、例えば水で洗浄し、アルカリ金属ケイ酸塩の酸性化に起因する副生成物の塩を除去する。洗浄は、回収された洗浄液、例えばろ液の伝導率が2000マイクロモー/cm未満、例えば500から1000マイクロモー/cmになるまで実施することができる。
【0042】
次いで、洗浄されたシリカ固体を従来の乾燥技術を使用して乾燥させる。かかる技術の非限定的例としては、オーブン乾燥、真空乾燥機乾燥、回転乾燥機、噴霧乾燥又はスピンフラッシュ乾燥が挙げられる。噴霧乾燥機の非限定的例としては、回転噴霧器及びノズル噴霧乾燥機が挙げられる。噴霧乾燥は、任意の適切なタイプの噴霧器、特にタービン、ノズル、液圧又は2流体噴霧器を使用して実施することができる。
【0043】
洗浄されたシリカ固体は、噴霧乾燥に適切な条件にないこともある。例えば、洗浄されたシリカ固体は、濃すぎて噴霧乾燥できないこともある。上記プロセスの一態様においては、洗浄されたシリカ固体、例えば洗浄されたろ過ケーキを水と混合して、液体懸濁液を形成する。懸濁液のpHは、必要に応じて、希酸又は希アルカリ、例えば水酸化ナトリウムで、6から7、例えば6.5に調節される。次いで、噴霧乾燥機の入口ノズルに供給される。
【0044】
シリカの乾燥温度は、広範に変わり得るが、シリカの融解温度未満である。典型的には、乾燥温度は、50℃超から700℃未満、例えば、100℃超、例えば200℃から、500℃の範囲である。上記プロセスの一態様においては、シリカ固体を入口温度約400℃及び出口温度約105℃の噴霧乾燥機で乾燥させる。乾燥シリカの遊離水含量は変わり得るが、通常、約1から10重量%、例えば4から7重量%の範囲である。本明細書では遊離水という用語は、100℃から200℃、例えば105℃で24時間加熱することによってシリカから除去することができる水を意味する。
【0045】
本明細書に記載のプロセスの一態様においては、乾燥シリカを造粒機に直接送り、そこで圧縮し、顆粒化して、顆粒状生成物を得る。乾燥シリカを、例えば粉砕及び微粉砕によって例示される、従来のサイズ縮小技術にかけることもできる。空気又は過熱蒸気を動作流体として使用した流体エネルギーミリングを使用することもできる。得られる沈降シリカは、通常、粉末の形である。
【0046】
造粒機を出たシリカ生成物は、例えば−5から+325メッシュの広い粒径分布を有し得る。サイズ縮小操作に供する場合、シリカ生成物を分級操作に供し、例えば、例えば適切なメッシュサイズの振動ふるいによって、適合及び不適合サイズ材料に分離することができる。不適合生成物は、サイズ縮小又は圧縮プロセスに再利用することができる。分級されたシリカ生成物は、−18から+230メッシュ、例えば−60から+100メッシュのサイズ範囲を有する生成物に分離することができる。メッシュサイズは、ASTM E11 ASDに従う。
【0047】
本発明の特定の一態様においては、上記沈降シリカは、例えばゴム用途において、加硫可能又は加硫されたエラストマー混合物における充填剤として使用される。本明細書ではエラストマーとゴムという用語は、同じとみなされる。エラストマー混合物に使用するときには、シリカをオルガノシラン材料と組み合わせて使用することができる。かかるオルガノシランの使用は一般に行われており、ゴム/シリカ分野の当業者にはよく知られている。典型的なオルガノシラン材料の記述は、米国特許第5,705,137号第3欄17から53行に見いだすことができる。その記述を参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0048】
本発明の沈降シリカ及びエラストマー混合物と一緒に使用することができるオルガノシランの非限定的例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0049】
オルガノシラン材料は、エラストマー混合物に添加する前に、当業者に既知の方法でオルガノシランをシリカ表面と反応させて改質前シリカを形成することによって、シリカに添加することができる。一般に、シリカ100部当たり0.5から50部、例えば1から15部のオルガノシランを使用して、シリカ表面を処理する。オルガノシランと沈降シリカの反応は、エラストマー混合物の調製中に実施することができ、又は噴霧の適用とそれに続く混合物の熱的コンディショニングによって外部で実施することができる。あるいは、オルガノシランをシリカと一緒にエラストマー混合物に添加することができる。後者の場合、オルガノシランは、混合プロセス中にシリカ表面とin situで反応する。
【0050】
本発明の沈降シリカは、加硫可能なエラストマー混合物に、エラストマー100部に対してシリカ5から100部、例えば15から60部の量で添加することができる。シリカは、シラン修飾のある、又はない、粉末、マイクロビーズ又は顆粒の形とすることができる。シリカと混合されるエラストマーは、DIN/ISO1629に記載のように、促進物質/硫黄又はペルオキシドで架橋(加硫/硬化)することができる(油展又は非油展の)天然及び合成エラストマーとすることができる。かかるエラストマーの非限定的例としては、天然及び合成ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブタジエン/スチレンコポリマーゴム、例えば、SBRゴム、ブタジエン/アクリロニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンのターポリマー、例えばEPDMゴム、ハロゲン化ブチルゴム、シリコーンゴム、並びに2−クロロブタジエンゴムが挙げられる。かかるエラストマーの混合物も本明細書で企図される。
【0051】
シリカ/エラストマー混合物は、さらに、別の充填剤、例えば強化及び非強化用充填剤を含むことができる。かかる充填剤の非限定的例としては、カーボンブラック、例えば、ファーネスブラック、ガスブラック、ランプブラック及びアセチレンブラック、クレイ及び珪質チョークなどの天然充填剤、カオリンなどの天然ケイ酸塩、及び他の天然二酸化ケイ素化合物、熱分解法シリカ、並びに本発明のミクロポーラス沈降シリカ以外の沈降シリカを挙げることができる。本発明の一態様においては、本明細書に記載のミクロポーラス沈降シリカをエラストマー混合物の主要な強化用充填剤として使用することが企図される。しかし、それを、主要な強化用充填剤(単数又は複数)として使用される別の充填剤(単数又は複数)を補充するのに使用することができる。
【0052】
同様に、シリカ/エラストマー混合物は、さらに、特定のエラストマー(ゴム)混合物に従来使用されている量の可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、熱安定剤、光保護剤、酸化防止剤、活性化剤、反応促進剤、色素、着色剤、老化防止剤、遅延剤、及び加工助剤などの当業者に既知のアジュバントを含むことができる。通常の量は、例えば、エラストマーに対して0.1から50重量%の量である。
【0053】
硫黄又は硫黄供与性材料を(エラストマー量に基づいて0.1から10重量%、例えば1から3重量%の量の)加硫剤として使用することができる。加硫促進剤の非限定的例としては、(0.5から3重量%の量の)メルカプトベンゾチアゾール、スルホンアミド、及びチウラム、ジチオカルバマートが挙げられる。共促進剤(co−accelerant)の非限定的例は、(0.5から5重量%の量の)グアニジエン(guanidienes)、チオ尿素及びチオカルボナートである。
【0054】
加硫シリカ/エラストマー組成物は、タイヤ、例えば自動車、実用車、オートバイ、バス、トラック及びトレーラー用タイヤ、建設、農業、鉱業車両などのオフロード車用タイヤ、コンベヤベルト、シール、Vベルト、ホース、靴底、ローラーカバー、ケーブル外筒、制振部品などの従来のゴム用途に使用することができる。加硫されたシリカ/エラストマー組成物は、タイヤの任意の適切な部分、例えば、トレッド、側壁又はタイヤカーカスの別の部分を調製するのに使用することができる。ゴム加硫物は、ゴム産業において一般に使用される方法によって、すなわち、エラストマー、充填剤及び助剤を密閉式混合機、混合機−押出機又は開放式ロールミルで、通常、温度100℃から200℃、例えば130から180℃で混合することによって、調製することができる。
【0055】
本発明を以下の実施例でより具体的に記述するが、実施例は、その多数の改変及び変更が当業者には明らかであるので、単なる説明のためのものにすぎない。別段の記載がない限り、すべての部及びすべての割合は、重量基準である。
【実施例】
【0056】
実施例の第一部では、本発明のミクロポーラス沈降シリカの調製を、表1及び2に詳述する「フォアショット」段階及び「同時添加」段階で述べる。最終pH調節及び沈殿後処理条件を表3に記述する。
【0057】
実施例の第二部では、シリカの諸性質及び試験方法を表4に記述する。
【0058】
実施例の第三部では、モデル乗用タイヤ配合物の調製を表5に記述し、詳述し、タンジェントデルタ@60℃のタイヤ試験結果を表6に示す。
【0059】
第一部 沈降シリカ調製
実施例1〜4及び4Aの生成に重要な変数の概要を表1、2及び3に示す。1リットル当たり70グラムのNaOを含み、SiO:NaOモル比が3.2:1である、ケイ酸ナトリウム(SS)水溶液原液を調製した。表1の「フォアショット」段階として記述した合成条件を、加熱用蒸気コイルを備えた150リットル反応器、又は加熱用電気バンドを備えた757リットル反応器で実施した。両方の反応器は、ケイ酸ナトリウム溶液用入口、酸用入口、出口、一次撹拌機、及び酸添加部位近くに位置する補助高速撹拌機も備えた。
【0060】
「フォアショット」は、指定水量を反応器に充填し、それを記載温度に加熱することによって確立された。30分間にわたって、AZ数及び反応器中の溶液のNaO濃度が表1に報告された値に等しくなるように、ケイ酸ナトリウム(SS)水溶液原液量を一次撹拌機によって撹拌しながら添加した。
【0061】
「同時添加」段階は、各反応器のケイ酸ナトリウム溶液を指定温度に維持しながら始まった。両方の撹拌機を運転しながら、別々の流れのケイ酸ナトリウム(SS)水溶液原液と96重量%硫酸水溶液を90分間同時に添加した。この段階で添加されたケイ酸ナトリウム水溶液原液と96重量%硫酸水溶液の各量を表2に示す。表2に示したAZ値は、ケイ酸ナトリウム水溶液原液と96重量%硫酸水溶液の両方の添加開始の10、20及び30分後に測定された同じレベルであった。ケイ酸ナトリウム水溶液原液と96重量%硫酸水溶液の両方の添加終了後、補助高速撹拌機を停止した。この時点における溶液のpHは、各実施例で9.5であった。
【0062】
補助高速撹拌機が動作した状態で最終pH調節を行った。96重量%硫酸水溶液の量を一定期間(添加時間)添加して、表3に示した反応混合物のpHを得た。反応混合物をフィルタープレスろ過した。ろ液の伝導率が記載伝導率に低下するまで、ろ過ケーキを水で洗浄した。水を湿ったろ過ケーキの各々に添加し、生成した組合せをCowlesブレードで混合して、表3に示した固形重量パーセントを含む固体懸濁液を形成した。この懸濁液のpHを、必要に応じて希薄な苛性酸又は硫酸を使用して、「噴霧乾燥」で示した値に調節した。懸濁液をNiro噴霧乾燥機で乾燥させた(入口温度約400℃、出口温度約105℃)。実施例4のシリカの一部を噴霧乾燥ステップにおいて実施例4Aに記載の異なる条件下で処理して、追加の実施例を生成した。噴霧乾燥粉末の水分は4〜7重量%の範囲であった。Alexanderwerk WP 120X40 Roller Compactorを使用して、供給スクリュー速度54.5rpm、ロール圧縮機速度4.6rpm、粉砕機速度55.0rpm、スクリーン間隙1.5mm、減圧26.2BAR、及び表3に記載の顆粒化圧力で噴霧乾燥粉末を顆粒化した。
【0063】
【表1】

(1)AZ値は、反応器からの試料のアルカリ度の尺度であり、以下の方法によって得られる。試料50mLを磁気撹拌子を含む400mLビーカーに移し、脱イオン水約100mLを添加した。生成した混合物を磁気撹拌プレート上で穏やかに撹拌し、6滴のフェノールフタレイン指示薬[カタログSP62−1、Fisher Scientific]を添加した。溶液の色はピンクであった。溶液の色が消えるまで、50mLビュレットから0.645N HClで溶液を滴定した。滴定液のmLを記録し、以下の式に使用してAZ値を求めた。
【0064】
【化2】

(2)NaOは、ケイ酸ナトリウムのアルカリ部分である。試料内のNaOのグラム/リットルの測定は、メチルオレンジ−キシレンシアノール指示薬を使用して以下の手順に従って滴定によって求められた。20mL試料を磁気撹拌子を含む400mLビーカーに移し、脱イオン水100mLを添加した。ビーカーを磁気撹拌プレート上に置き、試料を適度な速度で撹拌した。約10滴のAcros Organics製メチルオレンジ−キシレンシアノール指示薬を添加すると、溶液の色は緑になった。溶液の色が紫になるまで、50mlビュレットから0.645N HClで溶液を滴定した。添加した0.645N HClのミリリットル量は、試料中のNaOのグラム/リットル値に等しい。
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

第二部 実施例諸性質
比較例(CE)1から3はPPG Industries,Inc.から入手可能である。比較例1はHi−Sil(登録商標)EZ160G−Dである。比較例2は、PPG Industries,Inc.によってDXR−194として識別される非売シリカ製品である。比較例3はHi−Sil(登録商標)190Gである。
【0067】
【表4】

(3)記号「γ」は、シリカの細孔径分布の相対幅である。それは、水銀ポロシメトリーによって以下の手順で求められた。シリカ材料を手動プレスによって約1メートルトンの力に供することによって各試料をまず調製した。直径16mmのステンレス鋼圧縮容器を使用したCarver Manualプレスモデル「C」(SN#RMS3947)及び「受入れたままの」試料約0.25gを使用して圧縮を実施した。試料を1メートルトンで約5秒間圧縮した。圧縮したシリカを圧縮容器から試料容器に出し、水銀ポロシメトリー分析のためにMicromeritics Analytical Services,Norcross,GAに発送した。分析用に発送した全圧縮試料重量は約1.25gであった。試料を分析前に105±2℃で少なくとも4時間乾燥させた。検査室では、水銀ポロシメトリー測定用AutoPore(登録商標)IV9500を利用し、ソフトウェアバージョン1.09、水銀表面張力480mN/m及び水銀接触角140°を使用した。
【0068】
10型Penetrometer中に置かれたシリカの開始重量は、0.001gの精度であり、測定が良好に再現されるように選択され、「使用ステム体積(stem volume)」、すなわちPenetrometerの充填に使用されたHg体積割合は20%から40%であった。次いで、PenetrometerをHg50μmまで徐々に排気し、この圧力で5分間維持した。
【0069】
AutoPore(登録商標)装置をソフトウェアバージョンIV1.09を使用して操作した。各測定値を空状態のPenetrometerの測定値によって補正した。測定範囲は、0.0025から420MPaであり、少なくとも136平衡測定ポイント(装置固有の基準10s)を使用した(0.0025から0.25MPaの範囲:30ポイント、0.25から15MPaの範囲:53ポイント、15から150MPaの範囲:40ポイント、150から420MPaの範囲:13ポイント)。圧入体積増分が>0.04ml/gである場合には、適宜、ソフトウェアは更なる測定ポイントを導入した。圧入曲線は、装置ソフトウェアの「smooth differentials」機能によって平滑化された。
【0070】
Micromeriticsによって提供されたLog Differential Intrusion(mL/g)対孔径データを3.5nmから5μmの孔径範囲で解析した。細孔径分布の相対幅γを決定するために、大きい孔径から出発し、ポイントを経由する放物線を描くLog Differential Intrusion曲線の3個の連続測定ポイントで構成される、可動ウィンドウを利用するアルゴリズム。放物線の最大値は、孔径「a」に対する要求最大値「A」として定義された。ポイント「a」が必要な孔径範囲内であるかどうか、さらにLog Differential Intrusion曲線全体の最大値であるかどうか調べた。そうでない場合、ウィンドウを1ポイント移動し、新しい放物線を各ポイントを経由して描き、この手順を両方の基準が満たされるまで繰り返した。次いで、「B」を0.300×「A」と定義した。「b」は、「a」より小さく、「B」値が初めて達成される、曲線の孔径を表した。最後に、細孔径分布の相対幅γをγ=(a−b)/(A−B)=(a−b)/(0.7×A)と定義した。式中、a及びbはナノメートル単位であり、γは(g nm)/ml単位である。
【0071】
(4)改変Sears数は、以下の手順に従ってpH6からpH9の範囲の水酸化カリウム溶液を用いたシリカの滴定によって決定される遊離シラノール基数の尺度である。各々水分レベルが5±1%である実施例1〜4、4A及びCE1〜3 10.00gを適切なガラス容器に移し、105℃の乾燥器中に2時間置いた。容器を乾燥器から取り出し、分析までデシケータ中に置いた。得られた処理シリカ2.50gを室温で250mL滴定容器に計量し、メタノール(分析グレード)60.0mLと混合した。試料を完全に湿らせた後、脱イオン水40.0mLを添加した。テフロン(登録商標)被覆撹拌子を滴定容器に添加し、容器を撹拌プレート上に30秒間置いて、シリカとメタノール/水溶液を分散させた。脱イオン水(100mL)を使用して、容器の縁に付着した試料粒子を懸濁液中に洗い流した。試料温度を測定し、室温にした。
【0072】
pH測定装置(Orion 720A+Advanced ISE/pH/mV/ORP Meter S/N 091957 Thermo Electro Corporation)及びpH電極(Orion Ross pH Electrode 5600)を緩衝液(pH4.00、7.00及び9.00)を使用して室温で較正した。pHメーターをまず使用して、懸濁液の出発pH値を室温で測定した。次いで、その結果に応じて、水酸化カリウム溶液(0.1N)又は塩酸溶液(0.1N)を使用して、pH値を6.00に調節した。動力学的滴定方法を以下のパラメータで使用した:漸増的滴定体積Vmin=0.05mlからVmax=1.0ml、体積添加間の待ち時間tmin=2.0秒からtmax=20.0秒。Brinkman 665 Dosimat w/デジタル出力S/N 6F7/276 Calibration Exp.11/18/10及びBrinkman 806 Buret w/20mlビュレットS/N 77687 Calibration Exp.11/19/10を動力学的滴定に使用した。pHを6.00に調節後、塩化ナトリウム溶液20.0ml(脱イオン水で1LにしたNaCl(分析グレード)250.00gを添加した。次いで、KOH(0.1N)をpH値9.00までの滴定に使用した。pH9.00までのKOH溶液の消費(mL)はV2’である。0.1N KOHを使用した滴定を、溶液のpHが60秒間維持されるまで続けた。KOHの体積を記録し、Sears数を以下の計算によって求めた。体積V2’をまず理論出発重量1gに対して標準化し、次いで5を掛けて、mL/(5g)単位のSears数Vを得た。
【0073】
(5)CTAB値は、陰イオン界面活性剤Aerosol(登録商標)OT溶液を滴定液として使用して、pH9.6における吸着後のCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)量を測定することによる、外部比表面積の尺度である。本明細書で報告されたCTAB値は、改変ASTM D6845−02法に従って測定された。改変ASTM D6845−02は、CTABとシリカ溶液を40ではなく35分間混合し、Triton(登録商標)X−100として知られるオクチルフェノキシポリエトキシエタノールを使用しない。
【0074】
(6)BET値は、ASTM D1993−03に従ってBrunauer、Emmett及びTeller(BET)法によって測定される表面積の尺度である。BET表面積は、Micromeritics TriStar3000装置を使用して作製された窒素吸着等温線測定値から5個の相対圧力ポイントをフィッティングすることによって求められた。FlowPrep−060(商標)ステーションは、熱及び連続ガス流を供給して、分析用試料を調製した。窒素吸着前に、シリカ試料を流通窒素(P5グレード)中で温度160℃に少なくとも1時間加熱することによって乾燥した。
【0075】
第三部 タイヤ配合物試験
実施例1〜4及び4Aを比較例1〜3と比較するのに使用したモデル乗用トレッド配合物を表5に示す。各実施例及び比較例の一部をパス1においてシリカ1及びシリカ2として個々に添加して、表6に報告されたタンジェントデルタ@60℃試験に供されるゴム試料を作製した。
【0076】
4枚羽根ローターを備えた1.89リットル(L)Kobelco Stewart Bolling Inc.混合機(モデル「00」)及びFarrel 12インチ二本ロールゴムミルを使用して、ASTM D3182−89に従って成分を混合した。配合物を2回の非生産パスを使用して混合し、各パスの間に0.085インチ(2.16mm)のシートにして取り出した。材料を各パスの間に少なくとも1時間冷却し、続いて二本ロールミルでミル仕上した。
【0077】
第1パスでは、混合機速度を85rpmに調節し、LANXESSから商業的に得られた溶液SBR、Buna VSL 5228−2(ビニル含有量:52%;スチレン含有量:28%;TDAEオイル含有量:37.5phr;Mooney粘度(ML(1+4)100℃):50)と、The Goodyear Tire&Rubber Companyから商業的に得られたBR、Budene(商標)1208(ビニル含有量:1.5%;シス1,4含有量98%;Mooney粘度(ML(1+4)100℃):46)の両方のポリマーを混合機に添加した。混合サイクルの50秒後、混合機速度を70rpmに低下させた。混合サイクルのさらに50秒後、シリカ1としての試験シリカの約2/3、及びPalmer Hollandから商業的に得られた3,3’−ビス(トリエトキシ−シリルプロピル)テトラスルフィドとカーボンブラックの50/50混合物であるX50−Sのすべてを混合機に添加する。混合サイクルのさらに25秒後、ラムを上げ、シュートを掃いた。すなわち、入口シュートのカバーを上げ、シュート中にあるあらゆる材料を掃いて混合機に戻した。混合サイクルのさらに45秒後、試験シリカの残り約1/3、R.E.Carrol Inc.から商業的に得られたSundex(登録商標)790芳香族炭化水素加工オイルのすべて、R.E.Carrolから商業的に得られたゴムグレードステアリン酸のすべて、Sovereign Chemical Companyから商業的に得られたOkerin(登録商標)7240微結晶性蝋/パラフィン蝋混合物のすべてを混合機に添加する。さらに10秒後、ラムを上げ、シュートを掃いた。さらに90秒後、又は混合温度が320°F(160℃)に達したときに、速度を105rpmに増加させた。排出温度160℃に達したときに、第1パスを排出させた。このとき、約300秒の全混合時間であった。
【0078】
第2パスでは、混合機速度を105rpmに調節し、冷却した第1パスマスターバッチを添加した。この第2混合サイクルの50秒後、Flexsysから商業的に得られた、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンと記述されたSantoflex(登録商標)13オゾン分解防止剤のすべて、及びZinc Corporation of Americaから商業的に得られたKadox(登録商標)表面処理酸化亜鉛のすべてを混合機に添加した。この第2混合サイクルのさらに50秒後、ラムを上げ、シュートを掃き、混合機速度を120rpmに調節した。排出温度160℃に達したときに、第2パスを排出させた。このとき、約240から260秒の全第2パス混合時間であった。
【0079】
Taber,Inc.から商業的に得られたRubber Makers(RM)硫黄、100%活性のすべて、Solutia Inc.の一部門であるFlexsysから商業的に得られたn−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドであるSantocure CBSのすべて、及びHarwick Standard Inc.から商業的に得られたジフェニルグアニジンのすべてを、冷却された第2パスマスターバッチに二本ロールゴムミルで混合した。ミリングを約5分間行い、5回のサイドカット及び5回のエンドパスを実施した。
【0080】
ミルから収集したシート素材を平坦な清浄表面に置いた。ステンシルを使用して、矩形試料203.2mm×152.4mm(8インチ×6インチ)をシート素材から切り取った。試料を慣らした。すなわち、清浄ポリエチレンシートの間に保存し、温度23℃±2℃及び相対湿度50%±5%で15から18時間維持した。
【0081】
慣らした後、研磨表面を有する203.2mm×152.4mm×2.286mm(8インチ×6インチ×0.09インチ)標準フレーム機械スチール圧縮型に試料を入れた。試料をASTM D−2084に従って61センチメートル×61センチメートル(24インチ×24インチ)890キロニュートン(100トン)4ポスト電気加熱圧縮プレス中でT90、すなわち90パーセントの硬化が起こるのに要する時間、プラス5分間、150℃(302°F)、圧力13.79メガパスカル(2000ポンド/平方インチ)で硬化させた。典型的には、硬化は約10分以内に終了した。生成した硬化ゴムシートを型から取り出し、タンジェントデルタ試験前に温度23℃±2℃(73.4±3.6°F)、相対湿度50%±5%で15から18時間維持した。
【0082】
タンジェントデルタ@60℃をASTM D5992−96に従って求め、並行してRheometrics Dynamic Spectrometer(RDS−II)を使用して1ヘルツ及び2%歪みでプレート形状を求めた。試験試料をT90+10分間硬化させた。タンジェントデルタ@60℃の結果を表6に示した。
【0083】
【表5】

【0084】
【表6】

タイヤ用途では、転がり抵抗は、特定の振動数と温度における変形に対応し、一方、横滑り又はウエットグリップは、道路表面からの抵抗、及び異なる振動数と温度におけるタイヤトレッド表面又はその近くのゴムの動きによって発生することが十分立証されている。ある種のタイヤ特性は、高すぎて測定できない振動数を含むので、時間−温度等価原理を使用して、実際の現場条件を実験室で測定可能な速度と温度に変換する。歴史的に、タンジェントデルタは、ヒステリシスエネルギー損失プロセス用材料の関連動力学的性質として最も頻繁に使用されてきた。より高温、例えば60℃及び測定可能な振動数におけるタンジェントデルタは、転がり抵抗の予測にしばしば使用されてきた。
【0085】
60℃におけるタンジェントデルタ(tanデルタ)の結果を表6に示す。これらの結果の解析を以下に示す。
【0086】
・実施例CE−1とCE−2のtanデルタ結果を比較すると、比較的一定したミクロポロシティにおける表面積の増加、例えば、高いCTAB表面積がヒステリシス特性の増大、すなわち、燃料効率の低下を招く転がり抵抗の増加をもたらすという予想された結果が確認される。
【0087】
・実施例1及び2と実施例CE−1(並びに、実施例3、4及び4Aと実施例CE−2)のtanデルタ結果を比較すると、比較的狭い幅の細孔径分布を有するミクロポロシティの増加及び最小のシラノール濃度がヒステリシス特性を低下させ、それによって所与の量の表面積(CTAB)における燃料効率が向上し、一定した強化、例えば耐摩耗性を予測するという、予想外の結果を示す。
【0088】
・実施例3及び4と実施例CE−1のtanデルタ結果を比較すると、高い表面積(CTAB)を高いミクロポロシティ、比較的狭い幅の細孔径分布及び最小シラノール濃度と組み合わせて、同等の転がり抵抗又は燃料効率を予測する同等のヒステリシス特性(tanデルタ@60℃で示される)を与えるという予想外の結果を示す。
【0089】
・実施例4Aと実施例CE−1のtanデルタ結果を比較すると、強化、例えば耐摩耗性の増大を予測する高い表面積(CTAB)を高いミクロポロシティ、比較的狭い幅の細孔径分布及び最小シラノール濃度と組み合わせて、より低い同等の転がり抵抗又はより良好な燃料効率を予測するより低いヒステリシス特性を(tanデルタ@60℃で示される)与えるという予想外の結果を示す。
【0090】
本発明をその特定の実施形態の具体的詳細に関連して記述した。しかし、かかる詳細は、それらが添付の特許請求の範囲に含まれる場合及び程度を除いて、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の物理化学的パラメータによって特徴づけられる沈降シリカ:
CTAB表面積:50〜300
BET/CTAB比:≧1.3
細孔径分布の相対幅γ:≦3.5。
【請求項2】
さらに以下の物理化学的パラメータによって特徴づけられる、請求項1に記載の沈降シリカ:
a.Sears数:10〜28
b.Sears数/CTAB比:≦0.16。
【請求項3】
前記物理化学的パラメータが、
a.CTAB表面積:150〜250
b.BET/CTAB比:1.3〜2.0
c.細孔径分布の相対幅γ:2.0〜3.5
である、請求項1に記載の沈降シリカ。
【請求項4】
さらに以下の物理化学的パラメータによって特徴づけられる、請求項3に記載の沈降シリカ:
a.Sears数:15〜25
b.Sears数/CTAB比:0.08〜0.16。
【請求項5】
前記CTAB表面積が180から220であり、前記BET/CTAB比が1.4から1.8であり、前記細孔径分布の相対幅γが2.8から3.5であり、前記Sears数/CTAB比が0.12から0.15である、請求項4に記載の沈降シリカ。
【請求項6】
強化用充填剤を含む、加硫されたエラストマー組成物であって、該強化用充填剤が、請求項1に記載の物理化学的パラメータを有する沈降シリカである、加硫されたエラストマー組成物。
【請求項7】
強化用充填剤を含む、加硫されたエラストマー組成物であって、該強化用充填剤が、請求項2に記載の物理化学的パラメータを有する沈降シリカである、加硫されたエラストマー組成物。
【請求項8】
前記沈降シリカが主要な強化用充填剤として使用される、請求項1に記載の加硫されたエラストマー組成物。
【請求項9】
強化用充填剤を含む、加硫されたエラストマー組成物であって、該強化用充填剤が、請求項3に記載の物理化学的パラメータを有する沈降シリカである、加硫されたエラストマー組成物。
【請求項10】
強化用充填剤を含む、加硫されたエラストマー組成物であって、該強化用充填剤が、請求項4に記載の物理化学的パラメータを有する沈降シリカである、加硫されたエラストマー組成物。
【請求項11】
強化用充填剤を含む、加硫されたエラストマー組成物であって、該強化用充填剤が、請求項5に記載の物理化学的パラメータを有する沈降シリカである、加硫されたエラストマー組成物。
【請求項12】
低い転がり抵抗を有する道路用タイヤであって、該タイヤの少なくとも一部が、請求項6に記載の加硫されたエラストマーから調製される、道路用タイヤ。
【請求項13】
前記道路用タイヤのタイヤトレッドが、請求項6に記載の加硫されたエラストマーから調製される、請求項12に記載の道路用タイヤ。
【請求項14】
ミクロポーラス沈降シリカを調製する方法であって、
a.反応器中に最初のアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を確立するステップであって、該アルカリ金属ケイ酸塩溶液は、AZアルカリ度が5から40、温度が20℃から100℃未満である、ステップ、
b.アルカリ金属ケイ酸塩と酸性化剤を、生成する反応混合物のpHが9から9.7の間になるまで、該反応器に同時に、撹拌しながら添加するステップであって、このステップ(b)で添加されるアルカリ金属ケイ酸塩の量が、ステップ(a)の該最初のアルカリ金属ケイ酸塩溶液中に存在する量の1から6倍である、ステップ、
c.該反応器へのアルカリ金属ケイ酸塩の添加を停止するステップ、
d.反応混合物のpHが2.5から5の間になるまで、酸性化剤の添加を続けるステップ、
e.沈降シリカ固形物を該反応混合物から分離するステップ、
f.回収された該沈降シリカ固形物を洗浄液の伝導率が2000マイクロモー/cm未満になるまで洗浄するステップ、及び
g.洗浄された該沈降シリカを乾燥させるステップ
を含む、方法。
【請求項15】
前記アルカリ金属ケイ酸塩がケイ酸ナトリウムであり、このケイ酸ナトリウム溶液のアルカリ度が15から25であり、前記酸性化剤が硫酸であり、該溶液の温度が75℃から95℃である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記アルカリ金属ケイ酸塩と酸性化剤が、酸性化剤1部に対してアルカリ金属ケイ酸塩5から25部の体積比で0.5から5時間同時に添加される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記アルカリ金属ケイ酸塩と酸性化剤の同時添加中の前記反応器の内容物の温度及びAZアルカリ度が、前記最初のAZアルカリ度及び温度で0.25から1.5時間実質的に維持される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ケイ酸ナトリウムと硫酸が前記反応器に約1.5から3時間同時に添加され、ケイ酸ナトリウムと硫酸の体積比がケイ酸ナトリウム10から18部対硫酸1部であり、同時添加中の前記反応混合物の温度及びAZアルカリ度が前記最初のAZアルカリ度及び温度で0.25から1.5時間実質的に維持される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
生成された前記沈降シリカが前記反応混合物からろ過によって分離され、前記洗浄液の伝導率が500から1000マイクロモー/cmになるまで水で洗浄され、洗浄された沈降シリカが噴霧乾燥によって乾燥される、請求項18に記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−526038(P2012−526038A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509892(P2012−509892)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/033498
【国際公開番号】WO2010/129518
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ,インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】