説明

ミクロ洗浄器

【課題】安全かつ簡単に被洗浄対象部の洗浄が可能なミクロ洗浄器を提供すること。
【解決手段】ミクロ洗浄器10は、被洗浄対象部12内へ洗浄液を注入する洗浄液注入シリンジ14と、被洗浄対象部12内から廃液を吸引する廃液吸引シリンジ16とが並列に連結して構成される。そして、各シリンジ14、16は、シリンダ本体18、32と、ピストン20,34と、ニードル管22、36と、液体の逆流を防ぐ逆止弁28、30、42、44と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学測定用のミクロ洗浄器に関する。
【背景技術】
【0002】
光学測定用に使用されるミクロセルや光路長1mm程度の薄いセルは、溶液試料を入れるスペースが狭いため、入っている液を捨てたり、洗浄液を入れたりすることが困難で、非常に洗浄がしづらい。従来、これらのセル等の被洗浄対象部を洗浄するための専用の機器はなく、例えば、汎用の超音波洗浄機で洗浄を行なっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、超音波洗浄機では多量の洗浄溶媒が必要であり、また、洗浄溶媒が揮発しやすく、洗浄後にセルを取り出したり拭いたりするときに手に溶媒が触れるため溶媒の種類によっては危険であった。そのため、より安全かつ簡単にセル等の被洗浄対象部の洗浄を行なうことのできる洗浄器具が望まれていた。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は安全かつ簡単に被洗浄対象部の洗浄が可能なミクロ洗浄器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明にかかるミクロ洗浄器は、被洗浄対象容部内へ洗浄液を注入する洗浄液注入シリンジと、前記被洗浄対象部内から廃液を吸引する廃液吸引シリンジと、を備える。洗浄液注入シリンジは、シリンダ本体と、シリンダ本体内で往復移動可能に保持されたピストンと、シリンダ本体と接続され、被洗浄対象部内に洗浄液を注入する洗浄液注入ニードル管と、シリンダ本体と洗浄液注入ニードル管の間に設けられ、洗浄液吐出ニードル管からシリンダ本体への洗浄液の逆流を防ぐ逆止弁と、シリンダ本体と連結され、シリンダ本体内へ洗浄液を導く洗浄液吸引チューブと、洗浄液注入チューブとシリンダ本体との間に設けられ、シリンダ本体から洗浄液吸引チューブへの洗浄液の逆流を防ぐ逆止弁と、を含む。また、廃液吸引シリンジは、シリンダ本体と、該シリンダ本体内で往復移動可能に保持されたピストンと、シリンダ本体と接続され、被洗浄対象部内から廃液を吸引する廃液吸引ニードル管と、シリンダ本体と廃液吸引ニードル管の間に設けられ、シリンダ本体から廃液吸引ニードル管への廃液の逆流を防ぐ逆止弁と、シリンダ本体と連結され、シリンダ本体から廃液を排出する廃液排出チューブと、廃液吸引チューブとシリンダ本体との間に設けられ、廃液排出チューブからシリンダ本体への廃液の逆流を防ぐ逆止弁と、を含む。そして、洗浄液注入シリンジのシリンダ本体と、前記廃液吸引シリンジのシリンダ本体とは、並列に連結されている。
【0005】
上記のミクロ洗浄器において、前記洗浄液注入シリンジは、ピストンへ外部から力が加わっていないときに、該ピストンを押し出した状態に保つ付勢部材を備え、また、前記廃液吸引シリンジは、ピストンへ外部から力が加わっていないときに、該ピストンをシリンジから押し出した状態に保つ付勢部材を備えることが好適である。
【0006】
本発明の被洗浄対象部としては、ミクロセルや薄いセルが特に好ましいが、これらのセル以外にも、洗浄の必要な狭いところや局所等が含まれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかるミクロ洗浄器によれば、簡単な操作で安全に被洗浄対象部の洗浄を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかるミクロ洗浄器の概略構成図である。ミクロ洗浄器10は、洗浄対象のセル(被洗浄対象部)12へ洗浄液を注入するための洗浄液注入シリンジ14と、セル12内から、試料溶液や使用後の洗浄液等の廃液を吸引するための廃液吸引シリンジ16と、が並列に並んだ形で連結されて構成されたものである
【0009】
洗浄液注入シリンジ14は、シリンダ本体18と、ピストン20と、洗浄液注入ニードル管22と、洗浄液吸引チューブ24と、を備えている。ピストン20はシリンダ本体18内で往復運動可能に保持され、ピストン20の移動によりシリンダ本体18内からの洗浄液の吐出、シリンダ本体18内への洗浄液の注入を行なう。シリンダ本体14には洗浄液注入ニードル22管が接続され、このニードル管22をセル12内に挿入して洗浄液を注入する。また、シリンダ本体18に接続された洗浄液吸引チューブ24を通して、洗浄液が貯えられた洗浄液ビン26内からシリンダ本体18内へ洗浄液を導入する。
【0010】
シリンダ本体18と洗浄液注入ニードル管22の間には逆止弁28が設けられており、洗浄液吐出ニードル管22からシリンダ本体18への洗浄液の逆流を防ぐ。また、洗浄液注入チューブ24とシリンダ本体18の間にも逆止弁30が設けられ、シリンダ本体18から洗浄液吸引チューブ24への洗浄液の逆流を防いでいる。
【0011】
これらの逆止弁28、30はそれぞれ、例えばゴム弾性素材よりなるダックビル式逆止弁であり、流路と接続される筒部28a,30aと、ダックビル状のリップ部28b,30bとで構成されている。リップ部28b,30bはそれぞれ、一対のテーパ部28c,30cと、テーパ部28c,30cの先端に孔28d,30dと、備えている。
そして、これらの逆止弁28、30はそれぞれ、順方向の差圧下ではテーパ部28c,30cが互いに離隔するので、孔28d,30dを開口し、開弁することができる。一方、逆止弁28、30はそれぞれ、逆方向の差圧下ではテーパ部28c,30cが互いに密着し、孔28d,30dを閉塞するので閉弁することができる。
【0012】
廃液吸引シリンジ16は、シリンダ本体32と、シリンダ本体32内で往復移動可能に保持されたピストン34と、シリンダ本体32と接続された廃液吸引ニードル管36と、シリンダ本体32と連結された廃液排出チューブ36と、を備える。廃液吸引ニードル管36はセル12に挿入され、ニードル管36を通してセル12内から廃液が吸引される。シリンダ本体32内に吸引された廃液は廃液排出チューブ36を通して、廃液ビン40へ排出される。
【0013】
シリンダ本体36と廃液吸引ニードル管36の間に逆止弁42が設けられており、シリンダ本体36から廃液吸引ニードル管36への廃液の逆流を防いでいる。また、廃液吸引チューブ38とシリンダ本体32との間にも逆止弁44が設けられており、廃液排出チューブ38からシリンダ本体32への廃液の逆流を防いでいる。これらの逆止弁42、44は、上記の逆止弁28等と同様に、例えばゴム弾性素材よりなるダックビル式逆止弁であり、流路と接続される筒部42a,44aと、ダックビル状のリップ部42b,44bとで構成されている。リップ部42b,44bはそれぞれ、一対のテーパ部42c,44cと、テーパ部42c,44cの先端に孔42d,42dと、備えている。
【0014】
洗浄液注入シリンジ14のシリンダ本体18と、廃液吸引シリンジ16のシリンダ本体32とは側面が合わさった形で連結されている。そして、洗浄液注入ニードル管22と廃液吸引ニードル管36も並列に配列される。なお、シリンダ本体18とシリンダ本体32とを一体形成してもよい。また、洗浄液注入ニードル管22と廃液吸引ニードル管36とを並列に束ねた形とすることも好適である。
【0015】
さらに、洗浄液注入シリンジ14のピストン20に対して、ピストン20へ外部から力が加わっていないときに、ピストン20を押し出した状態に保つように、圧縮ばね46(付勢部材)が設けられている。圧縮ばね46は、シリンジ本体18内部に設けられ、内部からピストン20を押し上げている。こうすることで、使用者がピストンへ加える力を除くと、圧縮ばね20により自動的にピストン20が押し出された状態に戻る。
同様に、廃液吸引シリンジ34のピストン34に対しても、ピストン34を押し出した状態に保つ圧縮ばね48が設けられている。
【0016】
また、幅色い液体試料、洗浄溶媒に対応するために、シリンダ本体、ニードル管、チューブ等の接液部分には、耐溶媒性の高い材質、例えばフッ素樹脂等を用いることが好適である。
【0017】
以上が本実施形態のミクロ洗浄器の概略構成であり、以下にその作用を説明する。
図2A、2Bは洗浄液をセル内に注入する工程を示したものである。図2Aに示すように、シリンダ本体18内からピストン20を引き出す(圧縮ばね46により押し出される)と、逆止弁30が開放し、洗浄液ビン26から洗浄液が洗浄液吸引チューブ24を通ってシリンダ本体18内に導入される。このとき、シリンダ本体18と洗浄液注入ニードル管22との間の逆止弁28は閉じた状態にあるので、セル12から洗浄液注入ニードル管22へ廃液が流れ込むことはない。
【0018】
次に図2Bに示すように、使用者がピストン20をシリンダ本体18内に押し込むと、逆止弁28が開き、シリンダ本体18内に貯えられた洗浄液が洗浄液注入ニードル管22を通ってセル12内に注入される。このときは、シリンダ本体18と洗浄液吸引チューブ24の間の逆止弁30は閉じた状態にあるので、シリンダ本体18から流れ出す洗浄液が洗浄液吸引チューブ24へ逆流することはない。
【0019】
図3A、3Bは、セル内から廃液を吸引する工程を示したものである。図3Aに示すように、シリンダ本体32内からピストン34を引き出す(圧縮ばね48により押し出される)と、逆止弁42が開放し、セル12内の廃液が廃液吸引ニードル管36を通してシリンダ本体32内に吸引される。このとき、シリンダ本体32と廃液排出チューブ38との間の逆止弁44は閉じた状態にあり、廃液排出チューブ38からシリンダ本体32へ廃液が逆流することはない。
【0020】
次に使用者がピストン34をシリンダ本体32内に押し込むと、図3Bに示すように、逆止弁44が開き、シリンダ本体32内の廃液が廃液排出チューブ38を通って廃液ビン40へ排出される。このとき、シリンダ本体32と廃液吸引ニードル管26の間の逆止弁42は閉じており、シリンダ本体32内の廃液が廃液吸引ニードル管26へ逆流するのを防いでいる。
【0021】
使用者は、上記図2A、2B、3A、3Bに示した操作を繰り返すことで、セル内への洗浄液の注入、セル内の廃液の吸引を行い、セルの洗浄を行なう。このように、本実施形態のミクロ洗浄器によれば、使用者は洗浄液等に直接手を触れることなく安全かつ簡単にセルの洗浄を行なうことができる。また、セル内への洗浄液の注入、セル内からの廃液の吸引のために、洗浄液注入ニードル管、廃液吸引ニードル管を設けているため、小さなセルに対しても効率良く洗浄を行なうことができ、また、超音波洗浄と比較して少量の洗浄液での洗浄が可能である。
また、ピストンを押し出した状態に保つ付勢部材を備えているため、使用者は洗浄液注入シリンジのピストン、もしくは廃液吸引シリンジのピストンを押すという簡単な操作のみでセルの洗浄を行うことができ、操作性にも優れている。
【0022】
なお、本実施形態では、図1等に示したセルの洗浄を行った例について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、ミクロセルや薄いセルをはじめ、洗浄の必要な狭いところや局所であれば任意のところの洗浄を、従来方式に比較し、より好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態にかかるミクロ洗浄器の概略構成図である。
【図2A】本発明の実施形態にかかるミクロ洗浄器の動作の説明図であって、洗浄液ビンから洗浄液を吸引しているときの状態を示している。
【図2B】本発明の実施形態にかかるミクロ洗浄器の動作の説明図であって、洗浄液を被洗浄対象部に注入しているときの状態を示している。
【図3A】本発明の実施形態にかかるミクロ洗浄器の動作の説明図であって、被洗浄対象部から廃液を吸引しているときの状態を示している。
【図3B】本発明の実施形態にかかるミクロ洗浄器の動作の説明図であって、廃液ビンへ廃液を吐出しているときの状態を示している。
【符号の説明】
【0024】
10 ミクロ洗浄器
12 セル(被洗浄対象部)
14 洗浄液注入シリンジ
16 廃液吸引シリンジ
18 シリンダ本体
20 ピストン
22 洗浄液注入ニードル管
24 洗浄液吸引チューブ
26 洗浄液ビン
28 逆止弁
30 逆止弁
32 シリンダ本体32
34 ピストン
36 廃液吸引ニードル管
38 廃液排出チューブ
40 廃液ビン
42 逆止弁
44 逆止弁
46 圧縮ばね
48 圧縮ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄対象部内へ洗浄液を注入する洗浄液注入シリンジと、
前記被洗浄対象部内から廃液を吸引する廃液吸引シリンジと、
を備え、
洗浄液注入シリンジは、
シリンダ本体と、
シリンダ本体内で往復移動可能に保持されたピストンと、
シリンダ本体と接続され、被洗浄対象部内に洗浄液を注入する洗浄液注入ニードル管と、
シリンダ本体と洗浄液注入ニードル管の間に設けられ、洗浄液吐出ニードル管からシリンダ本体への洗浄液の逆流を防ぐ逆止弁と、
シリンダ本体と連結され、シリンダ本体内へ洗浄液を導く洗浄液吸引チューブと、
洗浄液注入チューブとシリンダ本体との間に設けられ、シリンダ本体から洗浄液吸引チューブへの洗浄液の逆流を防ぐ逆止弁と、を含み、
廃液吸引シリンジは、
シリンダ本体と、
該シリンダ本体内で往復移動可能に保持されたピストンと、
シリンダ本体と接続され、被洗浄対象部内から廃液を吸引する廃液吸引ニードル管と、
シリンダ本体と廃液吸引ニードル管の間に設けられ、シリンダ本体から廃液吸引ニードル管への廃液の逆流を防ぐ逆止弁と、
シリンダ本体と連結され、シリンダ本体から廃液を排出する廃液排出チューブと、
廃液吸引チューブとシリンダ本体との間に設けられ、廃液排出チューブからシリンダ本体への廃液の逆流を防ぐ逆止弁と、を含み、
前記洗浄液注入シリンジのシリンダ本体と、前記廃液吸引シリンジのシリンダ本体とが並列に連結されていることを特徴とするミクロ洗浄器。
【請求項2】
請求項1記載のミクロ洗浄器において、
前記洗浄液注入シリンジは、ピストンへ外部から力が加わっていないときに、該ピストンを押し出した状態に保つ付勢部材を備え、
前記廃液吸引シリンジは、ピストンへ外部から力が加わっていないときに、該ピストンをシリンジから押し出した状態に保つ付勢部材を備えたことを特徴とするミクロ洗浄器。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate